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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2011:09/07/10:43  ++  第7部液晶パネル大統合(5)サムスン独走許すな(電機の選択)終。

有機EL開発へ覚悟
 「堂々とは配れないのですが」。今年8月、シャープ幹部が液晶製造装置メーカーの社長に手渡した名刺には意外な部署名が記されていた。「有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)開発推進本部」
ひっそりと準備
 有機ELは自発光の有機材料を使うパネル技術。液晶で必要なバックライトやカラーフィルターが不要で、液晶よりも薄型・高精細化が可能と言われる。ただ、量産技術の確立が難しく本格普及が遅れている。
 だからこそ、シャープは「液晶の次は液晶」と公言し続けてきた。その姿勢に変化が表れたのは4月。液晶パネルの組織を、テレビ用の大型と、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)などに使う中小型に分けた。その際、中小型を扱う組織名は「ディスプレイデバイス開発本部」と「同事業本部」となった。「液晶」の言葉を外したのだ。
 シャープが有機ELを開発していることは、かねて噂されていた。今春、ひっそりと専門部署を立ち上げた事実は、事業化準備へとステージを一段引き上げたことを意味する。
 「液晶の次」をにらんで動くのはシャープだけではない。ある有機EL製造装置大手の幹部は「ここ2~3カ月で国内外のパネルメーカーからの引き合いが急増した」と明かす。東芝、日立製作所、ソニーの3社が2012年春に設立する中小型液晶の新会社も有機ELの量産をにらむ。
 有機ELの量産機運が急速に高まってきた背景には、韓国サムスン電子の成功がある。
 「画面がきれいで動作が速い」。都内の家電量販店で、サムスンの「ギャラクシーSII」を購入した女性は理由をこう話す。有機ELを搭載したSIIの世界販売台数は、4月末の発売からわずか85日間で500万台を突破。4~6月期のスマホの世界販売台数では米アップルの「iPhone」(2023万台)に次ぐ2位に浮上した。
 9月2日にベルリンで開幕した独家電見本市「IFA」でもサムスンは有機ELを採用したタブレット端末など新製品を発表。同社のブースは多くの来場者でにぎわった。今や世界の有機ELパネル市場の8割を握り、「有機ELといえばサムスン」のイメージを作り上げつつある。
 バックライトにLED(発光ダイオード)を採用した液晶テレビを「LEDテレビ」と命名し、世界的にヒットさせた手法をほうふつさせる。
技術の補完カギ
 出遅れた日本勢は挽回できるのか。そのカギを握るのはやはり3社連合による新会社だ。高精細で消費電力の少ないパネルをつくるための要素技術を3社がそれぞれ蓄積しており、相互に補完性があるからだ。
 東芝の強みは「低温ポリシリコン」と呼ぶ電極材料を効率良く生産する技術。ガラス基板上に配列する電極を小さくできるため、光の透過率を高め美しい映像を表示できる。日立はキヤノンと有機EL技術を共同で開発してきた。キヤノンの100%子会社のトッキは有機ELパネルの装置開発で最先端を行く。
 ソニーは07年に世界初となる11型の有機ELテレビを発売した。テレビの国内販売は終了したが、放送局などで使う25型と17型の有機ELモニターを生産しており、コスト削減のメドさえ立てばいつでも事業化できる技術はある。
 東芝の佐々木則夫社長は「サムスンより低消費電力技術で優れている。相当の覚悟で臨む」と話す。かつてシャープは液晶の用途をパソコンやテレビだけでなく、ゲームや携帯電話などに広げて普及をけん引した。将来は紙のように薄くしたり、折り曲げたりできる有機ELも、液晶の単純な置き換えにとどまらせない発想が求められる。
(第7部おわり)

:2011:09/07/10:31  ++  第7部液晶パネル大統合(4)中国、供給過剰の震源地に(電機の選択)

日韓の優位脅かす
 「新工場の建設計画を白紙撤回するのでは…」。中国の液晶パネル部材メーカーの関係者はこんな見方を示す。テレビ用の大型液晶パネルで世界2位の韓国LGディスプレーが、広東省広州市で計画している「第8世代」の大型ガラス基板を使う新工場のことだ。
 11年に着工、12年をメドに生産を始める予定だったが、今春、製造装置の発注をキャンセルした。LGは13年以降の稼働を目指しているとされるが、今も着工時期は示されていない。
 ほぼ同時期に世界首位の韓国サムスン電子も、江蘇省蘇州市に建設している大型パネル工場の稼働時期を13年へと1年先送りした。積極的な投資を続けてきた韓国2社がそろって、新工場をためらうのはなぜか。
 「2012年問題」。液晶業界では来年、深刻な供給過剰が懸念されている。その震源地が中国なのだ。
12年に生産2倍
 米ディスプレイサーチによると、国別の大型パネル生産量(出荷面積ベース)は11年1~3月期に中国が日本を抜いた。まだ韓国、台湾には及ばないが、今夏に中国最大手の京東方科技集団(BOE)と、TCL集団が相次いで大型パネル工場を稼働。来年も増産するため、12年の中国の液晶生産量は今年の2倍に達するとの予測もある。
 一方、液晶テレビの需要は伸び悩んでいる。10年の中国の液晶テレビ出荷台数は補助金効果で前年比3割増えたが、今年1~3月期は前年同期比5%増にとどまった。「農村での需要に一服感が出ている」(中国の証券アナリスト)うえ、北米向けの輸出も低迷。新工場を建設し採算を確保するのは容易でない。
 13億人を抱える中国は長期的に見れば巨大市場に育つ。進出したくても中国政府の認可を得なければならないパネル産業と違い、現地企業からも受注が狙える日本の装置や部材メーカーにとっては大きな魅力だ。
 「ここには液晶産業に必要なものがすべて、そろっています」。7月25日、都内のホテルで開かれた投資説明会に、50社を超える装置や部材など液晶関連企業が駆けつけた。主催したのはパネル産業の集積が進む崑山市政府。上海に近い好立地で、すでに東京エレクトロンや旭硝子も工場を構える。投資を呼びかけたのは、世界最高水準の技術力を取り込むのが狙いだ。
 出席した装置メーカーの幹部は「パネルの投資意欲が薄れてきた日本にとどまる意味はない」と話す。日本の液晶技術を下支えしてきた装置や部材メーカーが中国に引き寄せられ、技術力の差が縮まっていくのは確実だ。
 スマートフォン(高機能携帯電話)などに使う中小型パネルは、テレビ用の大型パネルより高精細な画質を求められる。映像表示の基になる画素を高密度で並べる必要があり、開発や製造技術では日本の電機メーカーに一日の長がある。
中小型に転用も
 とは言え、中小型液晶もいずれ中国発の供給過剰問題に直面する。大型パネル工場を稼働させた中国のBOEとTCLは需給調整もにらんで、旧世代の既存工場を一部、中小型用に転用する考えだ。中小型液晶の市況悪化要因となるのは間違いない。
 東芝と日立製作所、ソニーが統合する中小型液晶パネルの新会社の世界シェアは20%強で世界1位。価格競争に巻き込まれないためには規模の優位を維持するだけでなく、技術でリードし続けるしかない。高精細で電力消費の少ない有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)など、次世代パネルの開発が急務だ。

:2011:09/07/10:27  ++  第7部液晶パネル大統合(3)光明見えぬ「大型」生産(電機の選択)

シャープ、堺の誤算
 「ロス・シェアリング(損失分担)の観点から単価は従来の半分で注文書を書かせて頂けないでしょうか」。4月中旬、大阪市内のシャープ本社で経営幹部が切り出した。積み上がった在庫を減らすため4月初めからテレビ用液晶パネルの生産を中断、大幅な収益悪化が不可避の状況だった。
 「昨年末にも同じことを言われたばかりなのに」。集まった液晶部材事業者は不満を募らせながらも、数社が一定の値引きに応じた。それでもパネル単価の下落や円高が響き、シャープの大型液晶パネル事業は2011年度に赤字転落する見通しだ。
営業益3分の1に
 液晶事業全体の営業利益は、携帯端末に使う中小型液晶の好調に支えられ320億円と前期比9割近く増える。それでも4年前に比べれば約3分の1。パネル生産中断に伴う損失約260億円は特別損失扱いのため実態はさらに厳しい。
 液晶テレビの先駆者であるシャープがここまで追い込まれたのは、09年10月に稼働を始めた堺工場(堺市)の誤算が大きい。世界シェアで韓国、台湾勢との差が広がりつつあった07年、一気に差を詰めようと当初想定で3800億円の投資を決めたのが堺工場だ。
 だが、その後4年余りで円は対ドルで3割強上昇。投資の時期や規模、場所はいずれも裏目に出た。価格競争力が低下しソニーや東芝といった大口顧客は離れていった。土地を確保済みの2期工事が実施される可能性はゼロに近い。
 「韓国サムスン電子が安値でのパネル供給を増やしている」(テレビメーカー幹部)。液晶パネルの平均価格はこの1年で3割前後下落した。サムスンが「価格破壊」のリード役になっているのはほぼ確実だ。
 サムスンも液晶事業では11年1~3月期から2期連続で150億円以上の部門赤字に陥った。だが、液晶パネル用ガラス基板を作る米コーニングとの合弁会社は10年度に連結営業利益3兆5800億ウォン(約2600億円)を計上した。パネルが不採算でもその部材で稼ぐ構図だ。
 事業規模と収益構造の両面で強みを持つサムスンは、「ライバルを撤退に追い込み残存者利益を得る、半導体と同じパターンを狙っているのではないか」と国内勢は危機感を強める。
亀山は中小型に
 「環境変化に対応するため、二つの切り口で構造改革に取り組む」。シャープの片山幹雄社長は6月、生産体制の再編を表明した。2つある大型液晶用の工場のうち、亀山工場(三重県亀山市)は大部分を中小型用に転換。収益性は大幅に改善する見通しだ。
 問題はもう一つの工場、堺工場だ。世界最大のガラス基板からパネルを作れる強みを生かすため、60型以上の超大型パネルの生産構成比引き上げを目指すという。ただ、超大型テレビや電子看板市場が拡大しなければ再び戦略見直しを余儀なくされる。
 大型液晶を巡る苦境はパナソニックも同じ。10年に兵庫県姫路市で稼働した新工場などが業績の重しとなり、パネル生産を含むテレビ事業は10年度まで3期連続の赤字。今期もテレビの世界販売は2割増の2500万台を見込むが赤字の見込みで「数を作っても利益が出ないことがはっきりした」(大坪文雄社長)。
 東芝、日立製作所、ソニーの3社が統合する中小型液晶の世界シェアは20%強とシャープを抜き1位となる。テレビの轍(てつ)を踏まない戦略が問われる。

:2011:09/07/10:23  ++  第7部液晶パネル大統合(2)革新機構、産業再生のひな型に(電機の選択)

消耗戦防ぎ競争力
 産業革新機構のナンバー2の朝倉陽保専務は、昨年初めに大手電機の液晶子会社幹部が漏らした一言が忘れられない。「我々はずっと飼い殺しでしたから」
国民負担の恐れ
 大企業の傘下ゆえに迅速な意思決定ができず競争力を失う悪循環。企業数が多すぎて全員が消耗する過剰プレーヤー問題。液晶産業は、こうした構造を抱える日本経済の縮図といえる。
 これを再生し、日本の産業活性化のひな型にしたい。そんな思いもあって、東芝・日立製作所・ソニーの中小型液晶統合プロジェクトはこの日から、革新機構の本命中の本命案件と位置付けられた。
 だが、革新機構が実際に買収するのは、債務超過の解消にメドが立たず電機大手の手に余った課題事業。勝算はあるのか。
 「前例のない巨額の成長資金を投入する。過去の産業再編とはここが違う」。革新機構の能見公一社長が勝てる根拠に挙げるのが2000億円の出資金。主に政府保証を付けて民間金融機関から集めた。液晶統合新会社が立ちゆかなくなれば税金を使って返済する性格の資金。いわば国民がリスクを分担するお金だ。
 「先端技術が国内にとどまっている今なら間に合う。3社統合で国際競争力を高められる」。8月31日の記者会見で能見社長は力説した。出資金のうち約1000億円を使って最先端ラインを新設。新会社の売上高を2015年度までの4年間で3割強増やして7500億円以上にし、株式公開を目指す。
 朝倉専務も「総合電機から切り離して専業化すれば環境変化にも迅速に対応できる」と統合の効用を説く。
 だが、革新機構の人材は金融畑が中心で液晶産業についてはいわば素人集団。新会社には、収益変動が激しく数年ごとに1000億円単位の設備投資を迫られる産業特性に精通し、実行力を備えた執行責任者を据える必要がある。時には3社のエゴを抑え込むことも不可欠。いまだ白紙の新工場の建設場所などを迅速に決めなければならない。
3年後に正念場
 統合会社の進む道が平たんでないことは、7月19日に来日した米グーグルのエリック・シュミット会長の発言が暗示する。「スマートフォン(高機能携帯電話)は500ドルするが、すぐ200ドルになり将来は大量生産で50ドルになる」。真っ先に影響を受けるのが主要部材の液晶パネルにほかならない。
 「液晶は長期契約が多いので3年先までは見える」(朝倉専務)。裏を返せばその先の段階で統合会社は正念場を迎える。ちょうど2本目のライン新設投資を迫られるころだ。株式公開を目指す時期でもある。
 9000億円もの投資枠を持つ革新機構には、安易な投資案件を持ち込む企業が引きも切らない。「500社が来たが400社はすぐ断った」(能見社長)。先端分野の育成など民間が手を出しにくい機能も求められてはいるが、政府保証のばらまきは、企業のモラルハザード(倫理の欠如)を助長しかねない。
 ある民間ファンドの運用責任者は、革新機構の投資基準が自分たちに比べて甘い現実を冷静に見つめる。「機構の投資案件が失敗し、売りに出される機会を待ってる」と打ち明ける。
 革新機構にとって過去最大案件となる液晶事業への投資を、単なる大企業のリストラ支援に終わらせてはならない。統合会社を成功に導く責任の重さが、革新機構と大手電機3社にのしかかっているはずだ。

:2011:09/07/10:17  ++  第7部液晶パネル大統合(1)ガラス細工の起死回生策(電機の選択)

揺れた日立、東芝と溝
 東芝、日立製作所、ソニーが中小型液晶パネルの事業統合を決断した。韓国・台湾勢を交えた競争は激しく、わずかな戦略ミスでも命取りになる。官民ファンドの産業革新機構が2千億円を投じる大がかりな再編計画は、日本の電機産業再生のモデルとなるのか。液晶再編の最終章は波乱含みのまま幕を開けた。
食い違ったまま
 3社統合を発表する2日前の8月29日。都内の法律事務所で缶詰め状態となった交渉担当者らは革新機構の幹部にこう詰め寄った。「何も決まっていない状況で会見なんてできるんですか」。
 新工場の立地、統合前の人員削減計画、新会社の社長人事……。今後の競争力を左右する重要案件の多くで各社の主張が食い違ったままだった。
 結局、2012年春の新会社設立後も当面は組織を完全統合せず、3社がそれぞれの拠点を従来通り運営するという妥協案がひそかに示される。これで交渉決裂は回避したが、誰もが先行きに不安を抱く船出となった。
 関係者によると、革新機構が3社に統合を呼びかけたのは10年2月にさかのぼる。1年半を経た今も、なぜここまで調整が難航するのか。
 6月29日夜。日立の中西宏明社長は都内の料亭でEMS(電子機器の受託製造サービス)最大手、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘董事長と向き合っていた。締めの稲庭うどんを口にしながら郭氏が切り出した。「あの件はもう少し待ってくれませんか」
 あの件とは、日立の液晶パネル子会社を鴻海が傘下に収める案のこと。日立の高精細技術が欲しい鴻海が持ちかけ、10年秋から本格交渉に入っていた。日立は米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone」などを生産し急成長する鴻海と組むことが、液晶子会社の発展につながると判断。今年5月には中西社長が経済産業省に出向き、3社統合交渉からの離脱を伝えた。
 だが、業績が悪化し大型投資に慎重になり始めた鴻海との交渉は予想以上に難航。一方で東芝とソニーの統合協議は進み、2社連合が形成されつつあった。孤立を恐れた日立は再び合流することを決断する。協議の継続を求める郭董事長に中西社長は「もう待てない」と返答。日立と鴻海の交渉は決裂した。これが迷走の始まりでもあった。
 「なぜ今ごろ茂原案を持ち込むんだ」。ある東芝の幹部はこうぼやく。7月から交渉のテーブルに戻った日立が千葉県茂原市にあるパナソニックのテレビ用の大型液晶パネル工場を買収して、中小型向けに転換することを主張したのだ。
 米アップルにパネルを供給する東芝は、主力拠点の石川県に新工場を建設するシナリオを描く。革新機構は日立とパナソニックが磨き上げてきた「IPS」と呼ぶ高精細技術を、成長に向けた基盤技術と位置付ける。明るく視野角の広いパネルをつくれる。それだけに日立の主張にも一定の説得力はあるが、折り合いはついていない。
「最後のとりで」
 日本の液晶メーカーは世界最高水準の技術力を持ちながら、激しい価格下落と巨額の投資負担に耐えきれず、次々と韓国・台湾勢に追い抜かれた。
 世界初の液晶電卓や20型液晶テレビを開発したシャープも年々シェアを落とし、収益低迷に苦しむ。シャープが三重県亀山市で大型パネルとテレビの一貫生産工場を立ち上げた04年時点で日本勢の存在感はピークに達していたといえる。
 03年にはソニーが経産省の反対を押し切って韓国サムスン電子とテレビ用液晶の合弁生産を決定。この時期から経産省は韓台勢に対抗するため、液晶の「日の丸連合」形成に動く。04年には「シャープ―パナソニック―東芝」の組み合わせも打診した。しかし、官主導の再編案はことごとく民間企業に拒否された。
 中小型パネルは日本のディスプレー産業の「最後のとりで」だ。15年の世界市場は昨年比2・6倍の4兆2000億円にまで膨らむとの予測もある。これだけの成長市場に身を置きながら、国の支援を仰がなければ事業を続けられないほど、日本勢は瀬戸際まで追い込まれていたわけだ。
 官民が手を組んだ液晶再編は起死回生の一打となるのだろうか。「世界のリーディングカンパニーになる」(革新機構の能見公一社長)という理想像と、水面下で起きている関係者のつばぜり合い。その落差はあまりにも大きい。
【表】液晶産業の主な出来事            
   1968年      米RCAが世界で初めて液晶ディスプレーを開発   
      73年   シャープが世界初の液晶電卓を開発   
      90年   パナソニック、日立製作所、シャープなど電機大手がパネル量産設備の大型投資を決定   
      95年   日立が高精細化につながるIPS技術を開発   
      99年   シャープが世界初の20型液晶テレビを発売   
   2002年      東芝とパナソニックが共同出資で液晶事業会社(09年に東芝が完全子会社化、東芝モバイルディスプレイに)   
      03年   ソニーと韓国サムスン電子がテレビ用パネルの合弁生産決定(05年に韓国で稼働)   
      04年   シャープが三重県亀山市に第6世代の大型基板を使ったパネルとテレビの一貫生産工場を稼働。「世界の亀山モデル」として売り出す   
      05年   日立、パナソニック、東芝が千葉県茂原市に共同出資のテレビ用パネル生産会社(日立が筆頭)を設立   
      06年   シャープが亀山市で第8世代工場を稼働   
      07年   パナソニックが日立のテレビ用大型液晶子会社、キヤノンが日立の中小型液晶子会社をそれぞれ傘下に収めることを決定(その後、キヤノンは子会社化方針を撤回)   
      09年   シャープが中国企業に亀山第1工場の生産設備売却を決定   
      シャープが堺市で世界最大の第10世代工場を稼働      
      11年   東芝、日立、ソニーが産業革新機構の支援を受け、中小型液晶子会社の統合を決定

:2011:08/26/11:03  ++  日本は原発生かす責任、IEA事務局長に聞く、「事故克服し安全策を」。

 世界がエネルギーで揺れている。日本は原発の利用縮小が避けられず、資源の調達コストも膨らむ。先行きのエネルギー政策をどう考えるべきか。国際エネルギー機関(IEA)の田中伸男事務局長に聞いた。
 ――“脱原発”という声が出ている。
 「日本は世界に向けて“核”を持たないと宣言し、そのうえで原子力技術に向き合ってきた。国際的に存在感を高めるため『核兵器が必要』と考える国が多い中で、そうでない形で日本は原子力大国として認められている。安全じゃなきゃやめればいいというのは簡単。原子力の『平和利用』というファクトはとてつもなく重い。それを担っているのが日本だ」
 ――世界はエネルギー問題に一段と敏感だ。
 「例えば海外からガスを買ってくる場合、原子力があるとないとでは大きな違いがある。ハンガリーやポーランドなど東欧は脱ロシアのために原発を導入する。原子力抜きを掲げるドイツに対して、欧州諸国は『勝手にやめないでくれ』と怒っている。ロシアに足元をみられる危険が大きいからだ。コストは上がるし対ロ関係も弱くなる。欧州から学べる教訓だ」
 ――欧州は複数の国でエネルギーの相互依存体制を組める。
 「欧州は大きい。国が近い。信頼が深い。エネルギー統一市場をイメージできる。ドイツは石炭、フランスは原発、イタリアはガスというようにバランスを取れる。イタリアはロシアやリビアから買っていたガスが途絶したことがある。単一なものに依存できないという教訓を重ね、欧州全体で多様性を保つ」
 「まだまだ再生可能エネルギーは不安定だ。だから市場を大きくして平準化する。欧州は北アフリカでも太陽光を手掛けている。距離が遠くコストはかかるが、エネルギーの平和利用を具体化する試みだ。北アフリカにはお金が入り、欧州には電力が行く。世界は地政学的な戦略の中でエネルギーのポートフォリオを考えている」
 ――その意味で欧州は恵まれている。
 「その理解は正しくない。エネルギー安全保障を考えていない国はない。スペインの会社は世界一の風力発電を誇る。イタリアは原発技術を保とうと東欧に原発を建設している。みな歯を食いしばっている。日本は脱原発を言いながら再生可能エネルギーの戦略をきちんと組み立てているわけでもない」
 「アジアでも、タイ、マレーシア、シンガポールがエネルギーの共同備蓄に動いている。エネルギー安保はそれほど重要で、練りに練った国家戦略が必要な課題なのだ」
 ――日本の取るべき戦略は。
 「日本海を地中海に見立て、ロシアや韓国と送電線を結ぶ環日本海グリッドというのはあり得る。ロシアはガスではなく電力の形で売ってもいいと言っているようだ。国内の電力市場改革も不可欠だ。日本は東西で断絶していて、各社の間も接続が弱い。国内がつながっていないのに国際送電線をつなげるわけがない。競わないから国際化する力も高まらない。これから考えるべきなのは国際的な広域連系線のマーケットだ」
 ――エネルギーを日本だけで考えてはダメと。
 「日本の首相が脱原発を選ぶとは思わなかった。日本が撤退すればライバル国は大喜びだ。他国が日本に協力を申し出るのは福島原発の情報が貴重だからだ。日本は未曽有の大事故を自分の力で克服し、安全な原発のための解を拾い上げる義務を負っている」(聞き手は横田祐介)
 たなか・のぶお 事務局長として中印など新興国と石油備蓄などでの協力拡大に尽力。6月には中東情勢の混乱や日本の原発事故を受け、石油備蓄放出を決断した。07年から現職。61歳

:2011:08/26/10:54  ++  特集―菅政権の1年3ヵ月、政策調査会復活、権限あいまい混乱。

首相は昨年6月、民主党の政策調査会を復活させた。政策決定を政府に一元化する民主党政権の基本方針を維持しつつ、政府の役職を持たない民主党議員を政策に関与させ、党の活性化をめざした。だが、復活後の政調の権限と位置付けはあいまいで、重要政策の決定過程が混乱する一因となった。
 首相が党政調を復活させたのは、鳩山政権時代の政策決定システムへの反発が強かったからだ。各省の政務三役が重要政策を決定し、党に残った議員は事後説明を受ける程度だった。
 ただ、政策決定を政府に一元化する建前は変えなかった。与党の事前承認がなければ、政府が法案を提出できないという自民党政権の「事前承認制」を厳しく批判してきた経緯があるためだ。党政調会長には閣僚を兼務させた。
 この結果、党政調は事前承認に近い機能を発揮した。環太平洋経済連携協定(TPP)の基本方針や、社会保障と税の一体改革などの重要政策で、政府は党の慎重論に配慮せざるを得なくなり、重要政策になるほど、決定に至るまでの混乱が目立った。

:2011:08/26/10:45  ++  特集―菅政権の1年3ヵ月、政策調査会復活、権限あいまい混乱。

首相は昨年6月、民主党の政策調査会を復活させた。政策決定を政府に一元化する民主党政権の基本方針を維持しつつ、政府の役職を持たない民主党議員を政策に関与させ、党の活性化をめざした。だが、復活後の政調の権限と位置付けはあいまいで、重要政策の決定過程が混乱する一因となった。
 首相が党政調を復活させたのは、鳩山政権時代の政策決定システムへの反発が強かったからだ。各省の政務三役が重要政策を決定し、党に残った議員は事後説明を受ける程度だった。
 ただ、政策決定を政府に一元化する建前は変えなかった。与党の事前承認がなければ、政府が法案を提出できないという自民党政権の「事前承認制」を厳しく批判してきた経緯があるためだ。党政調会長には閣僚を兼務させた。
 この結果、党政調は事前承認に近い機能を発揮した。環太平洋経済連携協定(TPP)の基本方針や、社会保障と税の一体改革などの重要政策で、政府は党の慎重論に配慮せざるを得なくなり、重要政策になるほど、決定に至るまでの混乱が目立った。

:2011:08/26/10:44  ++  特集――菅政権の1年3ヵ月、菅―仙谷関係、「蜜月」から対立へ。

首相と仙谷氏の関係は「蜜月」から「対立」に変わった。首相は政権発足当時、仙谷氏を政権の屋台骨として頼りながら、途中で遠ざけた。東日本大震災後に官邸に戻したものの意思疎通を欠き、6月以降の「退陣政局」で不仲は決定的となった。
 「煙たい存在だが、力のある人」。首相は昨年6月、官房長官に迎えた仙谷氏を評した。転機は9月に発生した尖閣諸島沖の漁船衝突事件。参院で問責決議を受けた仙谷氏は「中央突破して野党の出方をみるべきだ」と進言したが、首相は今年1月の内閣改造で仙谷氏を辞めさせ、後任に枝野氏を据えた。
 「あんな人間とは思わなかった」。仙谷氏は周囲に漏らした。その後、自民党の大島理森副総裁とのパイプづくりを進めたことも、首相側からは離反と受け止められた。
 首相「あんた、情報を漏らしているだろう」
 仙谷氏「失敬なことを言うな。だから中央突破しろと言ったんだ」
 6月20日、政権幹部の協議の場で、首相と仙谷氏は激しくやりあった。7月以降、2人きりの会談は松本龍復興担当相が辞任した日だけだった。

:2011:08/26/10:40  ++  特集――菅政権の1年3ヵ月、「古い政治」批判、「脱小沢」は一貫。

「しばらくは静かにしていただいた方がいい」
 昨年6月3日、民主党代表選への出馬を表明した記者会見で、菅副総理・財務相(当時)は、小沢元代表と決別する「脱小沢」路線を鮮明に打ち出した。
 首相になってまず取り組んだのが、元代表が敷いた人事・組織の一新だった。幹事長に枝野幸男氏、官房長官に仙谷氏という元代表に距離を置く人材を起用。小沢体制で廃止した党政策調査会も復活させた。
□  ■
 7月の参院選大敗を受け、首相は「脱小沢」を徹底する。9月の代表選は2人の一騎打ちに。告示日の共同記者会見で、元代表は「選挙結果は国民の意思表示として重大に受け止めなければならない」と退陣を促し、首相は自らの原点が元代表の師、田中角栄元首相のロッキード事件だったとして「古い政治からは脱却しなければいけない」と批判した。
 首相は代表再選を果たし、元代表は「一兵卒」のまま。10月4日、東京第5検察審査会の2回目の議決で、元代表の強制起訴が決まった。
 12月20日、首相と元代表は首相官邸で直接、向かい合った。「国会が決めれば衆院政治倫理審査会にいつでも出ると言っていたではないか」。強い口調で詰め寄る首相に、元代表は「出る必要性が無い」。2人の会談は決裂した。
 岡田氏はそれから1カ月以上かけ、2011年2月15日の党常任幹事会で元代表の党員資格停止を決めた。最も軽い処分で、元代表の影響力は温存された。
□  ■
 震災対応を巡り、民主党内にも首相への不信感が広がり、対立は再び表面化する。小沢グループを中心に、野党提出の菅内閣不信任決議案に大量造反が見込まれる状況になった。首相は採決直前に退陣を表明、不信任案可決を封じたが「小沢か脱小沢か」の対立は決着しないままだった。

:2011:08/26/10:37  ++  特集――菅政権の1年3ヵ月、揺れた政権枠組み、大連立も頓挫。

民主党は昨年7月の参院選で大敗し、参院で与党が過半数割れした「逆転国会」に直面した。首相は安定した政権枠組みを求めて揺れた。
 首相が参院選後、最初に提唱したのは、個別の政策ごとに連携する「部分連合」だったが、野党の反発を招く。それでも首相が9月の党代表選で小沢一郎元代表を破り、内閣支持率が上向くと、野党にも「小沢抜き」の連携機運が生じた。首相と執行部は公明党との協力に照準を絞る。
□  □
 シナリオは景気対策の補正予算を秋の臨時国会に提出し、公明党の協力を得て成立させるというもの。首相も公明党の支持母体、創価学会の池田大作名誉会長が設立した「東京富士美術館」を訪れ、秋波を送った。
 公明党・創価学会の選択は対決路線だった。内閣支持率は再び低下し、信頼できる人脈もなく、今年春には統一地方選が控えていたためだ。
 12月以降、首相は衆院で再可決が可能になる「3分の2」以上の確保を模索する。まず鳩山政権で連立を組んだ社民党に声をかけたが、沖縄問題で頓挫した。たちあがれ日本の平沼赳夫代表への入閣要請も断られた。最後は今年1月の内閣改造で、たちあがれ日本を離党した無所属の与謝野馨氏を入閣させたが、同党はもちろん、かつて与謝野氏を除名した自民党の神経も逆なでした。
 自民党は民主党攻撃を強め、外国人献金問題で追及を受けた前原誠司外相が3月に辞任。首相自身の献金問題も発覚したが、東日本大震災の発生でうやむやになった。
□  □
 震災復旧と原発事故対応を機に、首相は自民党との大連立を思いつく。しかし、首相が電話で自民党の谷垣禎一総裁に入閣を要請したことなどで、すぐに失敗する。
 この後、岡田克也幹事長ら民主党執行部は震災対応の協議を通じ、自民、公明両党と複線的なパイプづくりを続けた。岡田氏は自民党の石原伸晃幹事長、玄葉光一郎政調会長は石破茂政調会長と連絡を密にした。
 「自民党執行部は参院を制御できない」。首相は自民党を疑い続けた。通常国会の延長幅を巡っては、岡田氏が自公両党と合意した50日間を首相が覆し、70日間に改めた。復興基本法成立に伴う人事では、参院自民党から浜田和幸氏を総務政務官に一本釣り。岡田氏はその都度、頭を下げて回った。
 岡田氏の努力が実ったのは8月9日。民自公3党幹事長が赤字国債発行法案の成立で合意、退陣条件が整ったのだ。岡田氏は「新しい体制で公明党や自民党と色々な形で協力関係を深めていく礎になる」と胸を張った。ただ、早期の衆院解散・総選挙を期待する自民党からは「協力できるのは秋の臨時国会で、今年度第3次補正予算案が成立するまで」との声も漏れる。

:2011:08/26/10:37  ++  特集――菅政権の1年3ヵ月、揺れた政権枠組み、大連立も頓挫。

民主党は昨年7月の参院選で大敗し、参院で与党が過半数割れした「逆転国会」に直面した。首相は安定した政権枠組みを求めて揺れた。
 首相が参院選後、最初に提唱したのは、個別の政策ごとに連携する「部分連合」だったが、野党の反発を招く。それでも首相が9月の党代表選で小沢一郎元代表を破り、内閣支持率が上向くと、野党にも「小沢抜き」の連携機運が生じた。首相と執行部は公明党との協力に照準を絞る。
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 シナリオは景気対策の補正予算を秋の臨時国会に提出し、公明党の協力を得て成立させるというもの。首相も公明党の支持母体、創価学会の池田大作名誉会長が設立した「東京富士美術館」を訪れ、秋波を送った。
 公明党・創価学会の選択は対決路線だった。内閣支持率は再び低下し、信頼できる人脈もなく、今年春には統一地方選が控えていたためだ。
 12月以降、首相は衆院で再可決が可能になる「3分の2」以上の確保を模索する。まず鳩山政権で連立を組んだ社民党に声をかけたが、沖縄問題で頓挫した。たちあがれ日本の平沼赳夫代表への入閣要請も断られた。最後は今年1月の内閣改造で、たちあがれ日本を離党した無所属の与謝野馨氏を入閣させたが、同党はもちろん、かつて与謝野氏を除名した自民党の神経も逆なでした。
 自民党は民主党攻撃を強め、外国人献金問題で追及を受けた前原誠司外相が3月に辞任。首相自身の献金問題も発覚したが、東日本大震災の発生でうやむやになった。
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 震災復旧と原発事故対応を機に、首相は自民党との大連立を思いつく。しかし、首相が電話で自民党の谷垣禎一総裁に入閣を要請したことなどで、すぐに失敗する。
 この後、岡田克也幹事長ら民主党執行部は震災対応の協議を通じ、自民、公明両党と複線的なパイプづくりを続けた。岡田氏は自民党の石原伸晃幹事長、玄葉光一郎政調会長は石破茂政調会長と連絡を密にした。
 「自民党執行部は参院を制御できない」。首相は自民党を疑い続けた。通常国会の延長幅を巡っては、岡田氏が自公両党と合意した50日間を首相が覆し、70日間に改めた。復興基本法成立に伴う人事では、参院自民党から浜田和幸氏を総務政務官に一本釣り。岡田氏はその都度、頭を下げて回った。
 岡田氏の努力が実ったのは8月9日。民自公3党幹事長が赤字国債発行法案の成立で合意、退陣条件が整ったのだ。岡田氏は「新しい体制で公明党や自民党と色々な形で協力関係を深めていく礎になる」と胸を張った。ただ、早期の衆院解散・総選挙を期待する自民党からは「協力できるのは秋の臨時国会で、今年度第3次補正予算案が成立するまで」との声も漏れる。

:2011:08/26/10:34  ++  特集――菅政権の1年3ヵ月、「首相主導」固執の果て。

唐突な発言次々…成果は乏しく
 菅直人首相は26日の記者会見で、正式に退陣を表明する。就任後しばらくは「脱小沢」路線で支持を集めたが、次々に打ち出した政策はほとんど成果につながらなかった。参院で野党が多数を占める「逆転国会」対策にも一貫性がなく、東日本大震災の復興、原発事故対応では首相主導に固執し、孤立を深めた。菅政権の1年3カ月を振り返る。
 「自民党が提案している10%という数字を一つの参考にする」
 首相は就任直後の昨年6月17日、民主党の参院選マニフェスト(政権公約)を発表する記者会見で、消費税率の引き上げに言及した。マニフェストでは一切、触れていなかったため、野党だけでなく、民主党内からも批判を浴びた。
 約1年後、政府・与党は社会保障と税の一体改革案をまとめたが、党内の反発で引き上げ時期を明確にできず、閣議決定にも至らなかった。党内論議を軽視して唐突に新政策を打ち出し、まとめきれずに終わる――。同じような構図はその後も繰り返された。
■  ■
 一例は環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題だ。首相は10月の臨時国会の所信表明演説で「交渉への参加を検討する」と提唱したが、政府・与党内で詰めた議論はしていなかった。
 民主党の農林水産関係議員は「国内農業が壊滅する」などと反発。TPPに理解を示す議員も少なからずいたが、積極的な空気は生まれず、首相が調整に乗り出すこともなかった。東日本大震災の影響もあり、結論は次期政権に持ち越した。
 外交にも悪影響が及んだ。沖縄県の尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船との衝突事件では、いったん中国人船長を逮捕しながら、処分保留で釈放するというちぐはぐな対応に批判が集中。参院で仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相(いずれも当時)の問責決議が可決し、両氏が詰め腹を切らされた。
 米軍普天間基地の移設問題は沖縄との調整が進まず、今年春に予定していた日米首脳会談は延期。ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問には手をこまぬくばかりだった。
■  ■
 3月の東日本大震災や東京電力福島第1原子力発電所事故への対応は後手に回った。首相周辺は「首相が陣頭指揮で危機を救った」と強調するが、首相の口出しによって、現場がかえって混乱したという指摘は根強い。原発周辺以外の被災地の救援作業の遅れを招いたという声もある。
 中部電力浜岡原発の運転停止を巡っては、海江田万里経済産業相と擦り合わせていなかったことが判明。稼働中の原発へのストレステスト(耐性調査)の導入や「脱原発依存」発言で、閣内不一致は白日の下にさらされた。
 首相の念頭にあったのは経産省や電力会社の「原子力ムラ」の解体だ。経産省を仮想敵とし、世論を味方につけようとしたが、中長期的なエネルギー戦略の転換を進めるための準備や調整をした形跡は見当たらない。
 「本当に自らの実力を認識していたのか。政権を取ったことに浮かれて謙虚さを忘れてはいなかったか」。側近議員の一人は首相の1年3カ月をこう総括した。

:2011:08/26/10:27  ++  カリスマ去りIT乱戦、ジョブズ・アップルCEO辞任、次の盟主へ各社攻勢。

【シリコンバレー=岡田信行】病気休養中の米アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO、56)が24日辞任した。スマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」などを次々とヒットさせ、アップルを株式時価総額で世界一のIT(情報技術)企業に育てあげたカリスマ経営者の退場で、同社の経営は転換点を迎える。IT業界の次の盟主を巡る乱戦にも拍車をかけそうだ。
 ジョブズ氏は会長に就任し、後任のCEOにはジョブズ氏の3度にわたる病気療養で代行を務めたティム・クック最高執行責任者(COO、50)が昇格した。
「供給網の達人」
 CEOに就任したクック氏は米IBMからコンパック(現ヒューレット・パッカード)を経て1998年にアップル入り。「サプライチェーンの達人」といわれ、在庫や調達、生産など管理分野で手腕を発揮した。
 アップルを特徴づける製品デザインにも鋭い注文を出すといわれ、ジョブズ氏の信頼が厚い。ただその物腰は柔らかく、ジムでのトレーニングを欠かさないバランス感覚を持つ。時にむちゃな注文を出しながら、製品の完成度を高めたジョブズ氏とはタイプが異なる。
 アップルは秋以降、スマートフォン「アイフォーン」や多機能携帯端末「iPad」の新製品を投入するといわれている。足元の収益は拡大しており、「交代でも当面の工程表には影響ない」(証券アナリスト)とみられる。問題はその先だ。
 インターネット上でソフトや機能を提供する「クラウドコンピューティング」や、交流サイト(SNS)への取り組みはまだ始まったばかり。カリスマ不在の後、クック氏が進路をどこに向けるのかは未知数だ。
若い世代と競争
 クック氏は販売や開発担当者などとの集団指導体制で事業拡大を目指すが、より若い世代の経営者との競合が激しさを増している。
 米グーグルとはスマートフォン用の基本ソフト(OS)などで激しく競合。今では端末のOSシェアはグーグルの方が上回っている。4月にグーグルCEOに就任したラリー・ペイジ氏(38)は、125億ドル(約9600億円)を投じたモトローラの携帯事業買収などで一段の攻勢をかける。
 SNSではマーク・ザッカーバーグCEO(28)が率いるフェイスブックが先行し、7億人以上のユーザーを抱える。アップルが2010年に始めたSNSは存在感を発揮できずにいる。
 電子書籍や音楽などコンテンツ(情報の内容)配信分野では米ネット小売り大手のアマゾン・ドット・コムと競合する。アップルの収益源となっているタブレット(多機能携帯端末)でも韓国サムスンなどが激しく追い上げている。
 かつて、パソコン用OSを巡って争ったマイクロソフトも、クラウドやスマートフォンに注力。IT業界の盟主の座を狙う争いは乱戦状態で、ジョブズ氏の辞任で拍車がかかる可能性がある。
 いつでも、どこでもネットにつながる時代、満足度が低ければ、ユーザーはすぐに他社の機器やサービスに乗り換える。ユーザーの時間とお金をどのように囲い込むかが、次の盟主を決める。

:2011:08/26/10:23  ++  権力の真ん中で「市民運動」続けた菅首相(社説)

菅直人首相がいよいよ退陣する。6月2日の民主党代議士会での退陣表明から、もうじき3カ月。異常な事態に、いちおうのケリがつく。
 小泉純一郎首相のあと、ほぼ1年交代だった自民党の安倍晋三、福田康夫、麻生太郎の各氏。政権交代からわずか8カ月半で首相の座を去った鳩山由紀夫氏。それに比べると、30日に交代するとして在任449日は、けっこう長い。
 現行憲法下での30人の首相の中では、森喜朗氏を抜き、故大平正芳氏に次いで19番目だ。それにしても毎年、首相が定期異動のように交代するいびつな政治がつづいている。
「脱」で世論の支持狙う
 残念ながら、菅首相の政権運営に高い評価は与えられない。
 円高は歴史的な水準で推移し、株価は低迷、電力の供給不安から産業の空洞化への懸念が強まる。沖縄の米軍普天間基地の移設で何の進展もなく、昨年9月の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件でも外交力の弱さを見せつけた。
 もちろん最大の問題は3月11日の東日本大震災の発生で、東京電力福島第1原子力発電所の事故をはじめ、その対応に追われたわけだが、みるべき成果が思い当たらない。対応のまずさばかりが目立った。
 なぜだろうかとふり返ると、政治手法に問題があったことが指摘できる。権力のど真ん中にいても、権力をチェックする役割である市民運動の行動様式をつづけ、統治側のトップになれなかったとみえるからだ。
 菅首相の政治手法の特徴は「脱」にある。3つの脱だ。脱とは、既成のものをチェックし、取り除き、のがれる現状否定の考え方である。
 まず「脱官僚依存」を徹底したのが1つ目。次は福島原発の事故を受けて打ち出した「脱原発依存」だ。もうひとつ、やや角度は異なるが、党運営での小沢一郎元代表を排除する「脱小沢」路線もある。
 脱官僚依存は、自民党政権下で官僚が主導してきた統治の仕組みを改めて、国会議員が中心となり、内閣主導でものごとを決定していこうという政治主導の考え方だ。それは決して間違っていない。
 ところが、官僚排除に動いてしまい、官僚組織の機能を大きく低下させた。運用の失敗である。大震災のあと、政府の対応が後手に回ったひとつの理由だ。
 脱原発依存も結局、首相の「個人的な考え方」になってしまった。5月に中部電力の浜岡原発の全面的な運転停止を求め、7月にはさらに原発依存からの脱却と、原発のない社会の実現にまで踏み込んだ。
 しかし、閣内からも異論が相次ぎ、内閣としての方針は「減原発」におちついた。首相の言動が政府・与党を戸惑わせ、経済界に混乱をもたらす結果となった。
 なぜ脱路線なのか。それは世論の支持が得られるとの読みからである。脱官僚にしても脱原発にしても、脱小沢にしても、みなそうだ。
 市民運動家としてのしあがってきた首相は、常にメディアがどう取り上げ、有権者がどんな反応をするかに関心がゆき、それが政治判断の基準になっている――首相のもとで政権運営に当たったある党幹部が分析する通りだ。
 政権運営にも市民運動家の思想と行動を持ち込んだ、といえる。
 もうひとつ、首相の政治手法の特徴は、次から次へと政策の課題設定を変えていくことにある。昨年7月の参院選では、消費税の引き上げであり、次は環太平洋経済連携協定(TPP)への参加であり、大震災のあとは脱原発である。
統治の機能不全を招く
 財政や社会保障の将来を展望すれば負担増大は避けがたく、消費税改革の旗は間違っていない。だが選挙に敗れると、とりあえず旗を巻く。
 TPPにしても方向性は正しいのだが、党内をはじめ関係団体などからの強い反発にあうと、腰が引ける。こうしたテーマを実現していくためには、反対派の説得など周到な調整なしに、うまくいくわけがない。
 政治リーダーに必要な情熱と責任感と判断力が、菅首相にはどこまであったのだろうか。
 浜岡原発の運転停止や脱原発依存も、手続きなどお構いなしに発信する。組織を動かす発想ではない。常に動いていることで組織の求心力を維持する運動体の発想だ。ここにも市民運動家の顔がのぞく。
 忘れてならないのは、昨年の参院選での敗北で衆参ねじれ状況となった中、法案処理への与野党の枠組みを最後までつくることができなかった点だ。政策実現にスピード感がなかったもうひとつの理由である。
 民主党は鳩山政権で安全保障問題を危うくし、菅政権で統治の機能不全を招き、政治不信を助長した。今回の代表選を通じても変化がなければ、次の総選挙で有権者が突きつけるのは「脱民主」だろう。

:2011:08/26/10:08  ++  割安携帯、参入相次ぐ、利用料、大手の7~8割――年内100社超。

家電量販やベンチャー
 NTTドコモなどから回線を借り、大手より2~3割程度安い利用料金を売り物にする割安携帯電話会社が急増している。ドコモなどが1月以降に回線貸与料金を引き下げたため新規参入に弾みがつき、年内にも100社を超える。米欧では割安携帯電話利用が全体の10%を超える国もあるが日本は3%にとどまる。ベンチャー企業や家電量販店など異業種からの参入が増えれば、国際的に割高な日本の携帯電話料金の引き下げにつながる。(割安携帯電話会社は3面「きょうのことば」参照)
 割安携帯電話会社は自前の通信インフラを持たず大手から回線を借りて携帯電話サービスを提供する。仮想移動体通信事業者(MVNO)とも呼ばれる。ドコモなど大手は回線の開放を義務付けられている。日本のMVNOは現在、約90社。ヤマダ電機など家電量販も参入している。
 これまでは回線利用料が高く、サービスの品質にもばらつきがあったため、契約者は3月末で359万件と全契約者の約3%にとどまる。
 総務省は2010年3月に回線貸与に関するガイドラインを策定。これを受け1月から3月にかけてドコモなど大手各社が回線利用料を2~3割引き下げた。
 新規参入を希望する企業が増え、ドコモには120社以上、大手4社では200社強が回線貸与を申し込んでいる。大手4社は回線使用料の支払い能力など申込企業の実力を審査した上で契約を結ぶ。国内携帯電話市場が飽和に近づき、新規加入が頭打ちになる中、ドコモなど大手は回線利用料を新たな収益源とする思惑もある。
 今後数年は年10~20社のペースで増える見通しで、12~13年には割安携帯電話の加入者が全体の10%近い1000万件を超えるとの予測もある。
 新規参入はIT(情報技術)ベンチャーや小売り大手が目立つ。ジャスダック上場のソフィアホールディングスは子会社を通じて8月下旬に参入。ドコモから回線を借り、中国の華為技術からスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を調達する。月額料金は4200円で6000円弱の大手より3割近く安い。
 ベンチャー企業のアールストリーム(大阪市)は台湾企業から米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマホを調達する。ドコモから回線を借り、月額4680円。ヨドバシカメラやネット通販大手のアマゾンで販売を始めた。
 6月にはイオンがベンチャーの日本通信と組んでスマホに差し込むと月額1000円程度で利用できるSIMカードを売り出した。
 通話やデータ通信を頻繁に使う「ヘビーユーザー」の携帯電話利用料金は東京が月額約1万1000円でニューヨーク(約6800円)、ロンドン(約4500円)を大きく上回る(総務省調べ)。日本では回線利用料の高さに加え、通信会社ごとに専用の端末が必要だったため新規参入が進まなかった。
 海外では米ウォルマート・ストアーズや英テスコなど大手小売りも格安携帯電話に参入しており、英ヴァージン・モバイルのように1000万件近い加入者を持つ企業もある。

:2011:08/22/10:20  ++  炭素繊維、世界へ「離陸」、航空、50%採用機、秋に就航――高強度で軽量強み。

日本企業が高い競争力を誇る先端素材、炭素繊維が離陸の時を迎えた。機体に本格採用した米ボーイングの航空機が秋に就航、風力発電など環境分野でも世界的に市場が立ち上がってきた。強度が高く軽量という同繊維の次のターゲットは自動車。大量に採用されれば収益への貢献も大きいとみて、東レ、帝人など各社は低コストの加工技術などの開発に挑んでいる。
 7月3日、羽田空港に初めて飛来したボーイングの新型中型旅客機「787ドリームライナー」。東レで炭素繊維事業を率いる大西盛行常務は「事業を始めて40周年の節目に『黒い飛行機』を飛ばす夢を実現できた」と感慨深げだった。
 真っ黒な糸状の炭素繊維は鉄に比べて重さが4分の1だが、強度は10倍。実は1970年代から航空機に使われているが、用途は内装材で、重量では機体全体のわずか1%。787では胴体から主翼まで50%を占める。軽量化により燃費が2割改善するため、中型機でも日本から欧州や米国本土へ直行便を飛ばせる。
 航空機だけではない。三菱レイヨンの大竹事業所(広島県大竹市)では6月下旬、年2700トンを生産できる大型の新ラインが動き始めた。「納入先はほとんどが風力発電。需要がどんどん伸びている」と炭素繊維・複合材料事業部の坂下正人担当部長は話す。
 「脱原発」にかじを切ったドイツでは、電力供給に占める風力など自然エネルギーの比率を2倍に高める法案が成立した。三菱レイヨンは8月1日に同国で開発・マーケティング拠点を開き、膨らむ需要を取り込む。
 炭素繊維の世界需要は2008年秋の金融危機で1割以上落ち込んだが、10年には持ち直し、約3万トンと15%増えた。今年以降は年率15~20%の成長が続くとの予測が多い。
 東レは6月、13年1月の稼働を目指して工場を着工した韓国で、さらに将来の増産を見据えて東京ドーム約8個分の敷地を新たに取得した。「中国など需要が旺盛なアジア市場に向けた輸出の中核拠点とする」(日覚昭広社長)。
 炭素繊維はゴルフクラブのシャフトなどスポーツ用途から立ち上がり、航空・環境分野に広がった。これまで需要は先進国が中心だったが、今後はアジアなど新興国にも広がる見通しだ。

:2011:08/08/11:30  ++  サムスンやアップルに負けないためには(社説)

日本企業の世界市場でのシェアが様々な分野で揺らいでいる。理由は円高だけではない。原因を突き詰め、対応を進める必要がある。
 日本経済新聞が最近まとめた2010年の世界シェア調査では、32の製品・サービスのうち10品目で日本企業が1位を占めた。だが、自動車やIT(情報技術)関連など、そのうち6品目では、最大手メーカーがシェアを落としている。
多様な技術束ねる力を
 家電では日本企業が世界市場で圧倒的なシェアを握る製品が、ビデオカメラなどごく一部になった。薄型テレビでは韓国のサムスン電子、LG電子が1位、2位を続けている。国内のエコポイントの効果で日本企業もシェアを少し上げたが、ほとんどの企業は激しい価格競争の中で採算割れだという。シェアが取れないし、利益も出ない。そんな悪循環に日本企業は陥っている。
 新興国市場への食い込みで先行しウォン安の追い風も受けるサムスンなど韓国勢に加え、中国企業も台頭してきた。東大の小川紘一特任教授は、新興国企業が力を付けた結果、ハイテクの分野でも製品のコモディティー(市況商品)化が速くなってきたと指摘する。
 多くの日本企業で、売り上げのかなりの部分を市況商品化した製品が占めている。だが、利益が出にくいとわかっていても、売上高を確保するために、日本企業は製品をつくり続け、売り続けている。
 こうした状況から早く脱する必要がある。そのためにはビジネスモデルの見直しが欠かせない。
 米アップルはスマートフォン(多機能携帯電話)の「iPhone」やタブレット型端末の「iPad」が好調だ。これらの製品は音楽再生やパソコンの役割を担うとともに写真撮影やゲームの機能も取り込み、日本のデジタルカメラ、ゲーム機、カーナビメーカーの市場もじわじわと奪いつつある。
 多くの機能を束ねた製品を開発して、激しい価格競争にさらされるのを避け、高い収益を生む。さらにネットワークでつながり、音楽や映像、ゲーム配信などのサービスにもビジネスを広げる稼ぎ方だ。
 こうした経営のあり方を参考にできないか。重要なのは、最初にできるだけ大きな経営の絵を描き、足りないものは他の企業の手を借りるという考え方だ。アップルはスマートフォン生産を中国企業に委託し、ゲームも音楽もソフトは自分ではつくらない。だが、もうけの源泉になる端末技術は自ら押さえ、幅広いサービスも一手に管理している。
 これと共通する手法で成功した企業は日本にもある。
 例えば、三菱化学は映像やデータをDVDに安定的に記録するための色素を開発したが、すぐには売らなかった。まずは製造装置メーカーとこの色素を使ったDVDの量産技術を確立し、新規参入しようとする新興国の企業に作り方を教えて歩いた。材料そのものは三菱化学から買うことになる。その結果、DVDの9割は三菱化学の色素を使って生産されるようになったという。
 重要なのは大きな絵を描いて技術を束ね、付加価値を高める総合力だ。それは幅広く技術を蓄積する日本企業の活路にもなるはずである。
 消費財を単品で売らず、サービスやインフラなどとも組み合わせて売るといった発想も必要な時代だ。
 パナソニックは今年春、三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化した。日立製作所と三菱重工業も社会インフラや環境・エネルギー分野で事業統合を進める。
国の経営モデルも必要
 パナソニックは広範なニーズにまるごと応えられる製品やサービスのラインアップ作りを進める。テレビや照明を単品で売れば価格競争に陥るが、設計や施工、保守点検も含めて売れば、消費者も便利になりグループ全体の相乗効果も高まる。
 日立や三菱重工は電力や鉄道などで規模のメリットを目指す。世界のインフラ関連需要は2030年までに累計3000兆円以上に達するという。この巨大な需要を取り込もうと世界で再編巨大化が始まっており、経営基盤強化は待ったなしだ。
 日本は市場規模の割に家電や自動車などの社数が多く、国内勢同士の競争で企業は体力を消耗してきた。産業界が生き残りを懸け事業の選択と集中に取り組みだしたことは大きな進歩だ。こうした再編をもっと促し世界での存在感を高めたい。
 世界市場で戦えるビジネスの環境整備は国の重要な課題だ。世界中から人材や技術、資本を集め、産業の競争力を高めるには税制や規制の見直しも要る。官民ファンドも戦略的に使いたい。韓国は法人税や電気料金を政策的に下げ、自由貿易協定にも積極的だ。世界市場で競争するには、総力戦で負けないような「国の経営モデル」も問われる。

:2011:08/05/11:38  ++  ブームに乗る、自転車、自分仕様に――ペダルやサドル、個性演出、健康と両立。

車体やパーツの「自分仕様」にこだわりながら、日常的に自転車を乗りこなす消費者が増えてきた。頻繁に本格ツーリングに出掛けるでもなく、街乗り用のシティ車にも飽き足らない。ほどほどの出費で、個性の表現と健康や利便性を両立させる手段として、自転車が見直されているようだ。東日本大震災を境に一段と増加したこれらユーザーが、今後の市場拡大の原動力となりそうだ。
 自転車チェーン大手のあさひでは3~5月のスポーツ用自転車の販売台数が前年同期より39%増えた。震災で非常時の移動手段として注目されたのが引き金だが、6月以降も2桁増が続く。
 けん引役はクロスバイクという車種。首都圏中心に自転車専門店「ワイズロード」を展開するワイ・インターナショナル(埼玉県志木市)では、この1年間の売上高伸び率が前年比25%と全車種(20%)を上回る。
 クロスバイクはマウンテンバイクをベースに軽量化し、タイヤは細身。中心価格帯は5万~10万円で、「ママチャリ」と呼ばれるシティ車より高いが、「スタイリッシュな形状が人気で、乗り換える人も多い」(ワイ・インターナショナル)ほどのブームだ。
 ■クロスバイク多彩に 購入客は20~60代と幅広い。本格的なツーリング用で高価な「ロードバイク」より気軽に乗れ、ちょっとした遠乗りにも、街乗りや通勤にも使う消費者が増えているという。色柄や品ぞろえも多彩になり、購入層は女性に広がっている。
 東京都新宿区の30代の男性会社員は「通勤用に購入したがツーリングにも行きたい。ペダルなどを換えて自分だけの1台にしたい」と話す。
 愛車を自分仕様に変えて楽しむこうしたユーザーは増加傾向にあり、各店でも「パーツの売り上げが伸びてきた」という。通販サイト「自転車のQBEI」を運営するきゅうべえ(京都市)では、手軽に交換できるペダル(2000円~)やサドル(3000円~)は「米国やイタリアなど欧州部品メーカーの製品を注文する人が多い」。
 自転車人気はファッションにも波及。需要が膨らんでいるのは街着風のウエアだ。ワイズロード新宿ビギナー館(東京・新宿)では従来、競技用がベースの原色の商品が多かったが、今は通勤時にも着用できるグレーや紺色が人気。「競技用は機能的だが街中で目立ち過ぎる。普段も着られるタイプが売れている」(同館の小池桃太店長)
 ■自転車はファッション 国内自転車市場はシティ車の苦戦などで頭打ちが続き、2010年の生産台数と輸入台数の合計は945万台だった。ただ、健康志向を背景にクロスバイクを含む「スポーツ車の販売は伸びている」(自転車産業振興協会)。震災でこの傾向に拍車がかかった。
 自転車雑誌「サイクルスポーツ」の岩田淳雄編集長は「最近は自転車をファッションの一部と考える人が多い。10万円以上の車体を買う初心者も増えた」と語る。一部ユーザーのマナー違反などの課題もあるが、人気の裾野は広がりそうだ。

:2011:08/05/11:04  ++  特集――直流送電網、電力融通のカギ(エネルギーを問う)

東日本大震災による電力不足でクローズアップされたのが、日本は東西で周波数が異なるために、相互に電気をやり取りする融通がしにくいという問題だ。日本とは対照的に、世界では国境を越え、長い距離にわたって大規模な送電網を構築する動きが着々と進んでいる。
 日本の電気の周波数は富士川を境に東側で50ヘルツ、西側は60ヘルツ。東西で異なるのは明治時代に関東にドイツの発電機を、関西に米国の発電機を導入したためだ。融通し合うためには、長野県と静岡県にある3カ所の施設で周波数を変換する必要がある。
 ただ変換能力は約100万キロワットと東京電力のピーク電力の2%程度。経済産業省は融通能力を拡大する検討に乗り出しているが、コストの問題や電力会社間の思惑などが絡むため容易ではない。
 日本が小さな国土の中で電力融通に四苦八苦しているのとは対照的に、海外では中国、インドなど新興国を中心に、全長数百~1000キロメートルにもおよぶ長距離送電網の建設計画が相次いでいる。内陸部などにある発電所から、遠く離れた需要地へと効率よく電力を運ぶ必要があるためだ。こうした長距離の送電で利用されるのが「直流送電」と呼ばれる技術だ。
 電気には大きく分けて「直流」と「交流」がある。通常、日本では送電線で電気を送るとき交流を使う。電力の損失を少なくでき、効率が良いためだ。ただ送電距離が長くなれば直流送電のほうがコスト的に安くなる。
 直流送電の採算ラインについて、電力中央研究所の高崎昌洋・上席研究員は「架空線の場合で600~1000キロメートル、海底などに設置するケーブルだと50キロメートル前後」と説明する。国土の狭い日本はこれまで直流送電を使うケースはおのずと限られ、今のところ北海道・本州間や本州・四国間を結ぶケーブルがある程度だ。ただ日本でも今回の震災の経験を踏まえ、いざというときに備えて東西を結ぶ大規模な直流送電網の整備を求める声も上がっている。
 海外では北米や南米、アフリカなどにも大規模な直流送電網がある。近年はドイツで洋上風力発電設備の電力を送るために直流送電網が相次ぎ整備されている。北アフリカの砂漠地帯に太陽熱発電所や風力発電所を設置し、地中海を越えて電力を欧州に導く「デザーテック計画」でも、将来は国境をまたいで欧州全域を結ぶ大規模な直流送電網を構築する計画が提唱されている。
 こうした直流送電網ではスイスのABBや独シーメンス、仏アルストムなど欧州勢の存在感が圧倒的に大きい。日本でも大学レベルでは超電導と組み合わせた直流送電の研究などが実施されているが、世界における日本企業の影は薄く、受注実績などで水をあけられているのが現状だという。

:2011:08/05/10:53  ++  日立・三菱重工が統合協議、新興国インフラに活路、総合力高め反攻。

日立製作所と三菱重工業が将来の経営統合を視野に、社会インフラなど主力事業の統合に向けた協議を始める。両社が狙うのは、新興国を中心に急拡大する社会インフラ市場。日本を代表する製造業といえども、単独では勝ち抜けないとの危機感がある。米欧大手が先行して市場を開拓するほか、中国・韓国勢も急成長が続く。研究開発力では有数の実力を持つ2社だが、世界で戦うには総合力に一段の磨きをかける必要がある。(1面参照)
 日立製作所と三菱重工が今後の成長領域と見定めるのは、世界のインフラ市場だ。
 例えば発電分野。経済協力開発機構(OECD)によると世界の発電量は2035年に30兆キロワット時を超え、08年実績より8割増える。10~35年の発電インフラ投資は1300兆円に及ぶ見通しで、その4分の1は中国(約320兆円)が占める。
 だが、現実の商談では欧米大手に競り負けることが多い。
 今年3月。三菱重工業は東南アジア最大規模のマレーシアにおける石炭火力発電所の受注合戦で、仏アルストムに敗れた。この案件には日立製作所も初期段階で参加していた。10年9月には日立製作所がブラジル・サンパウロ市のモノレール建設で、カナダ・ボンバルディアを中心とする企業グループに敗れた。
 海外大手は基盤とする欧州や米国市場が成熟し始めると、いち早く新興国に進出。日立や三菱重工は出遅れた。例えばガスタービン分野では米ゼネラル・エレクトリック(GE)が世界シェアの44%、独シーメンスが28%を占める。3位の三菱重工のシェアは8%と大差をつけられている。
 鉄道分野でもボンバルディア、仏アルストム、独シーメンスの「ビッグ3」で世界シェア5割を超える。3社は世界各地に製造・保守の拠点を持つ体制を構築。日立のシェアは5%に満たない。
 日立は09年3月期に製造業最大の連結最終赤字を計上して以降、収益が安定している社会インフラ事業に経営資源をシフト。11年3月期には20年ぶりに過去最高純利益を更新するV字回復を果たした。三菱重工は発電所を中心とした原動機事業で全体の7割を稼ぐ構造。両社の11年3月期の連結売上高を単純に合計すると、12兆2千億円と米GE(金融部門含む)に規模で並ぶが、最終利益では見劣りする。
 日立と三菱重工が手を組むことで強みが発揮できる分野も多い。日立は社会インフラとIT(情報技術)システムの両方を手がける。三菱重工は風力や地熱など再生エネルギーで世界有数の技術を持つ。風力や太陽光などを中心に使いながら、ITを駆使してエネルギーを効率的に利用する「スマートシティ」事業などでの成長が見込める。両社の技術や得意分野を早期に結集できれば、GEやシーメンスにない強みにつながる可能性もある。

:2011:08/05/10:49  ++  「日立・三菱重」統合を産業再興の一歩に(社説)

日立製作所と三菱重工業の決断を日本の産業力復活の呼び水にしたい。保守的とされてきた両社が将来の経営統合を視野に主力事業の統合協議を始める。今回の大型再編の動きを機に、他の企業も競争力強化へ思い切った手を打ってほしい。
 両社は2013年春に新会社を設立し、ともに得意とする社会インフラや環境・エネルギー事業などの統合をめざす。発電プラントや鉄道車両などが対象になるとみられる。
 社会インフラやエネルギー分野は新興国を中心に世界で成長が見込め、それだけに競争が激しい。強みの事業を統合し、磨きをかけようという両社の動きは、国際競争力向上を狙ったものだ。
 日立も三菱重工もこれまで、一部事業やグループ企業の再編成は進めてきたが、親会社の中核的な事業を対象とした再編には踏み込んでこなかった。バブル崩壊後に企業合併や事業統合が広がり、景気低迷が長引いて産業界で事業の「選択と集中」が加速するなかでも、中核事業の再編は避けてきた。
 戦後、両社は国内の電力会社や鉄道会社などと太いパイプを築き、そうした特定顧客との長期で安定した取引を成長の原動力にしてきた。
 日本経済が停滞したこの20年間、大胆な企業再編に消極的だったのは、過去の成功体験を捨て去れなかったからとも言えるだろう。
 だが経営環境は様変わりした。福島第1原子力発電所の事故で国内の原発稼働が不透明になり、有力顧客の電力会社を取り巻く状況は一変した。世界の企業との競争も事業分野を問わず激しくなるばかりだ。
 日立も三菱重工も成長のためには海外で競争に勝つことがいよいよ不可欠になった。両社の統合への動きはどの企業も国際競争力強化へ変革を迫られるようになった表れだ。
 両社にほかの企業も続いてほしい。日本企業の収益力は世界のなかで低く、自己資本利益率(ROE)は2桁が当たり前の米欧や中国企業に対し、昨年度6%しかない。
 世界経済の先行きが不透明なだけに、企業の「稼ぐ力」の再構築は急務だ。雇用確保や経済の活性化にもつながる。企業や事業の再編をもっと活発にする必要がある。
 国内は家電、自動車、建設などの分野で、限られた市場を多くのメーカーで奪い合う過当競争が続く。国内で消耗戦を繰り広げていることが国際競争力を高めにくい一因だ。過当競争から脱却するための企業再編も、今回の統合の動きを機に広がることを期待したい。

:2011:08/05/10:36  ++  日立と三菱重工、統合協議、産業構造、大きな転換期――消えゆく「肥沃な内需」。

日本経済のエンジンである製造業で再編の号砲が鳴った。日立製作所と三菱重工業は将来の経営統合を視野に社会インフラなど主力事業の統合に向けた協議に入り、パナソニックは完全子会社化した三洋電機の白物家電部門を中国企業に売却する。日本の製造業は歴史的な転換点を迎えた。
突出する企業数
 電機8社(準大手を含めれば12社)。三菱重工業など重工・重電専業が5社。自動車も8社(トラックを含めれば12社)。製造業を代表する電機、重工・重電、自動車業界で、日本の企業数は突出している。
 表向きは12社だが自動車は再編が進んだ。他社から出資を受けていない「独立メーカー」はトヨタ自動車、ホンダの2社しかない。市場環境は厳しさを増しており資本提携からM&A(合併・買収)にいつ踏み込んでも不思議はない。鉄鋼では新日本製鉄と住友金属工業が合併を決めた。
 一方、再編が遅れ戦後の業界地図がそのまま残ったのが電機だ。プラザ合意後の円高不況、バブル崩壊と危機は何度もあったが、各社が本格的な再編に踏み込まなかったのは「ある種の安心感があったから」(JPモルガン証券の和泉美治シニアアナリスト)。
 安心の源は2つ。電力と通信だ。東京電力を筆頭に電力10社の設備投資はピークの1993年度、約4兆9000億円。NTTの設備投資はピークの98年度、約3兆円に達した。
 東電やNTTに連なる重電・電機各社は、総額8兆円の市場を山分けすることでベースの利益を確保できた。半導体で韓国企業に敗れても、造船不況に見舞われても再編せずにすんだのは「2つの安心」に守られてきたからだ。
 だが、もう「お守り」には頼れない。電力10社の2010年度の設備投資は約2兆1200億円。NTTは約1兆8700億円。総額4兆円に半減した。自由化で競争の海に放り込まれた東電やNTTに「ファミリー」を養うゆとりはない。
世界で勝負へ
 NTTはソフトバンクなどとの競争を勝ち抜くため、米メーカーの通信機器や韓国製の携帯電話端末をためらいなく扱うようになった。福島第1原発の事故で巨額の賠償責任を負った東電に気前のいい投資を期待できるはずもない。
 日本の電機産業は戦後最大の危機を迎えた。だがこの危機は、電機・重工が戦後体制から抜け出すチャンスでもある。
 「日本のIT(情報技術)を支えてきたのはNECでも富士通でもない。NTTなんですよ」。かつてNTTグループ会社の社長はこう言い切った。「日の丸IT」の雄である富士通、NECもNTTから見れば下請け。NTTが規格を決め、NTTが投資する環境では、アップルやグーグルに対抗する自由な発想が生まれない。
 「日本には技術はあるが市場がない」。海外でスマートグリッド(次世代送電網)の実験に乗り出す重電大手のトップは嘆く。競争を拒む「電力10社体制」が崩れれば、国内に要素技術のすべてを持つ日本はスマートグリッドの先頭に立つ力がある。
 原発事故にかき消されたが、海外には、甚大な被害を受けながら人身事故を防いだ鉄道や短時間で復旧した水道など日本のインフラ技術を再評価する声もある。再編で国内の過当競争を抜け出し海外で戦う陣形を整えれば、日本の製造業はもう一度、世界で勝負できるはずだ。

:2011:08/03/11:39  ++  海底資源メタンハイドレート、試掘、愛知県沖に決定、経産省。

経済産業省は2日、メタンハイドレートと呼ばれる海底資源の開発に関する検討会を開き、天然ガスとして産出するための試験に向けた掘削地点を愛知県の南方沖70~80キロの海底とすることを決めた。地層の強さや断層がないことなどが産出に適していると判断した。
 2012年2月に掘削作業に着手する。石油資源開発(JAPEX)が実施する。海洋研究開発機構の探査船「ちきゅう」を使って計4坑を掘削し、1年かけてデータを詳細に分析する。13年1~3月に海底と海面を結ぶパイプを設置して天然ガスの産出試験を始める。
 検討会は当初、静岡県南方沖40~50キロの水深722メートルと、愛知県南方沖70~80キロの水深1007メートルの2つの海底を試掘候補とした。このうち愛知県南方沖のほうが地層が強い。断層がないため、水がメタンハイドレート層にしみこんだり、ガス産出の際に漏れたりするリスクも小さい。
 経産省は03~06年度の掘削調査で和歌山県沖から静岡県沖にかけての「東部南海トラフ海域」に日本の天然ガス消費量の13年分の資源量があることを確認。メタンハイドレートから天然ガスを取り出せれば海底からの世界初の産出となる。