忍者ブログ

ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
忍者ブログ [PR]
(10/31)
(09/07)
(09/07)
(09/07)
(09/07)
(09/07)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/26)
(08/22)
(08/08)
(08/05)
(08/05)
(08/05)
(08/05)
(08/05)
(08/03)
12 2026/01 1 2 34 5 6 7 8 9 1011 12 13 14 15 16 1718 19 20 21 22 23 2425 26 27 28 29 30 31 02

:2026:01/22/06:37  ++  [PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

:2007:10/10/13:06  ++  【正論】日中国交正常化35年 慶応大学名誉教授・中村勝範

■21世紀は「中国の世紀」か

 ■大気汚染など追及できない独裁体制

 ≪2010年代に日本抜く?≫

 中国の経済成長が好調であるということから「21世紀は中国の世紀」という声がある。

 昨年の中国の国内総生産(GDP)はアメリカ、日本についで世界第3位である。日中両国の経済成長率が現状のままつづけば、2010年代の中頃には中国のGDPは日本を抜くといわれている。

 中国経済の急成長は他面において自然破壊、環境汚染、格差の超拡大を伴い、その害は世界に及んでいる。

 わが国もまた高度成長期には「21世紀は日本の世紀」と得意であったが、環境破壊、公害患者を続出させた。

 幸いにして、わが国は民主主義国家であった。汚染水をたれ流す企業を追及する言論の自由があった。林立する煙突から吐き出すスス、微粒子を大きく写して知らせる報道の自由があった。公害病の根源に迫る大衆集会、抗議デモを展開できる行動の自由があった。他方、中央の議会壇上で為政者の監督責任を追及する野党があった。公害問題を採り上げれば票になることを知った与党は野党に負けじと公害の元凶である企業と企業に甘い自党為政者に噛(か)みついた。

 ひるがえって中国である。

 今年3月、温家宝首相は全国人民代表大会での政治活動報告において、貧しい者でも買える住宅を整備し、農民が汚染されていない水を飲めるようにし、農地収用で立ち退きなどによる民衆の権利侵害を禁じることを保証する、と「和諧社会」の構築を提唱した。

 言葉は明快であったが、なに一つ実現されなくとも中国には公約違反を追及するマスメディアがない。野党は存在しない。大衆抗議は官憲により蹴散らされる。すなわち共産党独裁国家である。

 ≪長年に及ぶ「価値観の真空」≫

 今年7月、経済協力開発機構(OECD)が中国の一部の都市における大気汚染は世界最悪である、と報告した。来年、オリンピックが開催される北京では選手が大気汚染でやられてしまうという危惧(きぐ)が世界のオリンピック関係者から漏れている。

 わが国でも1970年代の大気汚染は世界最悪であった。光化学スモッグの注意報は年間延べ300日を超えたが、排ガス規制により、延べ100日を下回るようになった。

 ところが、2000年以降、延べ100日を超え、200日を突破するようになった。今年は過去5年に比べ、10倍超のハイペースで注意報が頻発されている。中国の光化学オキシダントが西風に乗って飛来しているからだという(読売新聞6月25日)。

 中国で起きている大気汚染を含む環境、食品、医薬品の毒物禍、労働者の悲哀、汚職、収賄は共産党独裁の必然的産物である(本欄拙稿6月23日)。アメリカはプリンストン大学の中国問題研究の学者が学術会議で、中国の有害産品問題は中国共産党の長年にわたってもたらした「価値観の真空」から生じた結果だ、と発表した(産経新聞7月20日)。

 むろん、中国共産党の指導者たちも中国にはびこる諸悪とその根源には気づいている。諸悪を克服する道もわかっている。日本に学ぶことである。

 しかし、それはできない。メンツの問題ではない。原理として不可能である。日本の民主主義を受け入れたならば、独裁を本質とする共産党はたちまち霧消する。

 ≪複数政党制導入の声に鉄槌≫

 6月25日、胡錦濤総書記は党政治局常務委員、政治局員の全員、中央委員、同委員候補を集め、「党の思想路線の本質」と題する演説をした。いわく共産党の本質は独裁である、この基本路線への異論は許されない、としたうえで「全党員は党中央の周りに、より固く団結せよ」と厳命した。今年2月、中国人民大学の元副校長が複数政党制導入を促すに等しい論文を発表した。改革派からは一定の評価を得ていた。

 総書記の演説は「西側の三権分立や多党制を行わず」、欧米式の民主政治の導入を全面的に否定していたが、総書記の念頭には、人民大学元副校長の論文とそれに共鳴する支持者たちに鉄槌(てっつい)を加えようとする意図があった。

 複数政党制の否定は、人間は顔が違うごとく考え方も異なるとする人間性の本質を無視するものである。中国の勤労者は、共産党員、官僚、軍幹部、富裕者と利害関係を異にする。虐げられている民衆の味方である政党、団体、マスメディアを欠く中国の暗部は一層拡大する。

 かかる様相にもかかわらず「21世紀は中国の世紀」となるならば、世界は闇である。(なかむら かつのり)

PR

:2007:10/10/13:04  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(12)

■「国益より言い訳の技術」

 2006年初夏、日米当局者による安保協議が米国で開かれ、北朝鮮の不穏な動きをめぐって対応を協議した。北朝鮮がミサイル連続発射に踏み切る少し前のことだ。

 万が一、北のミサイルが日本の領域内に落下したり、周辺海域の漁船などに被害が出たら、大変な事態になる。米政府、米軍はどう動くか。日本政府は真っ先に何をすべきか。さまざまな不測の事態に備えて、日米の緊急対応を入念に検討しておくことが協議の狙いだった。

 ところが、日本側は周辺事態法の適用について「あれはできない」「ここまでが限界」といった法律の解釈論を長々と始めた。すると、米側の一人があきれたような顔で言い放った。

 「いったん有事になれば、国民の被害を最小限にし、敵の損失を最大にして一刻も早く紛争を終わらせることが至高の目的のはずだ。それが国益というものでしょう」

 だが、日本側からは答えがなかった、と出席者の一人が証言する。「日本の当局者は国会で追及されないように、言い訳を重ねる技術にしか目がいかない。国民の安全や国益を政府として、どうとらえているかを深刻に考えさせられるやりとりだった」という。

 国益が定まらなければ国家戦略も決まらない。何が国家の利益になるのかを国会や国民に説明することもできないのではないか。官僚だけではない。

 ここ10年間、日本の政治は官主導から政治主導への転換が叫ばれてきた。

 国民の安全を守る、国土保全を図る、エネルギーを確保する、環境を浄化する-といった漠然とした「国益」なら、政治家の誰もが口にする。にもかかわらず、それらを総合して優先度を示し、いかに整合性を持たせるかの政策的展開が官僚も政治家もスッポリと抜け落ちているのだ。

 自衛隊のイラク派遣やテロ対策特別措置法の問題でもそうした一面があった、と外務省幹部が振り返る。

 当時の小泉純一郎首相は「日米同盟と国際協力の両立だ」と述べたが、イラクに出ていくことが具体的に日本のどんな国益になるのかを十分に説明できたとは言い切れない。

 テロ特措法にしても、(1)中東・湾岸の安定が日本の安全と平和に不可欠(2)石油などエネルギー安保(3)日米協力の具体化-などに日本の国益があるのは当時も明白だった。「だが、政治指導者がそれを明示して論理的に説得する努力が欠けていた」とその幹部は言う。

 「国益を誰がどう決めるのかが、戦後日本ではずっとあいまいにされてきた。土台となる国益をきちんと定義し、その上に政策や戦略を築いていかなければ21世紀の国家戦略も描けない」と、森本敏・拓殖大学大学院教授(65)も指摘する。

 その証拠に、日本には「国家戦略」にあたる文書がない。「国防の基本方針」とかエネルギー、環境戦略といったものはある。だが、より高次の観点から外交、軍事、エネルギー、環境など個別政策を定める指針ともなる国家戦略文書が、政府や国会の了解の下にまとめられたことはない。

 「国益を明示した国家の総合戦略がないだけでなく、たとえ戦略ができても、それを実現する制度もない。日本が国家の心棒を欠いているのはまさにそこだ」と森本氏は言う。

 ■国家戦略の優先順位付けを

 米国には「アメリカの国益に関する委員会」という風変わりな超党派組織がある。設立されたのは1995年だ。

 冷戦終結直後、米国民は外交への関心を急速に失い、政治指導者も内政や目先の経済利益に目を奪われがちだった。

 世界では旧ユーゴなどの地域紛争、大量破壊兵器拡散とテロ、中国の台頭など新たな脅威や課題が浮上し、米外交に場当たり的な対応が目立つようになった時期だ。

 こうした情勢に、「半世紀間の冷戦戦略に代わる目標を定めなければ、新たな平和秩序を築く機会が失われる。米外交を漂流させてはならない」と危機感を抱いたハーバード大学のグレアム・アリソン教授らが提案し、民主、共和党議員や国家安全保障専門家など十数人を集めて発足した。

 主なメンバーには、クルーグマン・スタンフォード大学教授、ナン民主党上院議員、スコウクロフト元大統領国家安全保障担当補佐官、ライス現国務長官、アーミテージ前国務副長官らの名前も見える。

 彼らが1996年と2000年に公表した報告書は、米国がめざすべき国益を(1)死活的国益(2)きわめて重要な国益(3)重要な国益(4)二義的な国益-の4レベルに分類し、明確な優先順位を示している点が特徴だ。

 「死活的国益」には大量破壊兵器の脅威、主要地域での覇権国家の台頭防止、国際通商・経済制度の維持などを挙げ、これに次ぐレベルの国益には米国の技術優位の堅持などを示している。

 地域別の国益も、例えば東アジアでは「敵対的覇権国の台頭阻止」「日韓の自由と繁栄、対米同盟を維持」などを最優先する。中国を国際システムに組み込んだり、朝鮮半島や台湾海峡の紛争防止などをその次に位置づけている。

 もちろんすべてが公式政策となったわけではない。

 だが、委員会の提言は議会や政府、世論に活発な国益論議を喚起し、その後の米外交や国家戦略立案に多くの建設的な刺激を与えてきた。

 森本氏は、政治と国民が共有できる具体的な国益を描くために「日本でも米国のような組織を設けて論議をすべきだ」と提案している。

 日本版国家安全保障会議(NSC)創設を目指し、昨年末から今春にかけて開かれた「官邸機能強化会議」で、東シナ海のガス油田開発問題が論じられたことがある。

 中国は国家戦略として軍も動員してガス田開発を推進する。日本側は開発は民間、警備は海上保安庁、対中協議は外務省任せという実情だ。

 「トータルな外交、資源、経済、防衛の問題なのに、国家戦略がないために効果的な対応が決められない」。安倍晋三首相(当時)もいる前で、こう指摘する声が相次いだという。

 集団的自衛権の行使論議、核保有論議、東シナ海のガス田開発などのエネルギー戦略、環境問題など、日本が直面している国家安全保障上の課題は数多い。個別の課題を活発に論議しても、いずれを最優先するかが決まらない。

 「国益とは何か」を具体的にわかりやすく定義づけてその実現に優先順位をつける。それを国民に提示して、理解を求める。そんな作業は官僚組織にはできない。政治指導者がやらなければならないことだ。(高畑昭男

:2007:10/09/22:27  ++  【正論】日中国交正常化35年 帝塚山大学名誉教授・伊原吉之助

□日本の“秀才外交”の大失敗

 ■中国の土俵に乗り、台湾を見捨てる

 ≪対中平和条約の複雑さ≫

 日本は蒋介石政権と戦い、蒋政権を一員とする連合国に降伏した。従って対中平和条約は蒋政権と結べば足りたはずだが、その段階で大陸に中共政権が成立しており、台湾の蒋政権と正統性を争っていた。冷戦構造の中で、日本に中華人民共和国と平和条約を結ぶ選択肢はなかった。だから日本はサンフランシスコ講和条約のあと、台湾の中華民国と日華平和条約を結んで「中国との戦争」に決着をつけた。

 ただし、日華平和条約の適用範囲は「中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域」(交換公文)に限定された。だから中華人民共和国との国交や平和条約締結が懸案として残ったのである。

 その機会がニクソン訪中で巡ってきた。だが東西冷戦を背景に「一中を争う二中」の双方と国交を結ぶのは至難の業であった。

 日本外交には、戦前戦後を通じて一大欠点がある。原則がなく、相手の原則に振り回されるのである。昭和16年の日米交渉で門戸開放・善隣友好・主権領土尊重の原則を出す米外交に「特殊権益」で対抗した日本がどれだけ振り回されたことか。

 日中国交交渉でも中国は「復交三原則」を持ち出した。中華人民共和国政府は中国を代表する唯一の合法政府▽台湾はその不可分の領土▽日華平和条約は不法・無効-である。

 ここで日本外交は健闘した。第1項は承認、第2項は「理解し尊重する」が承認せず。第3項では日華条約有効論を貫いた。

 ≪日本外交の誤認と拙速≫

 問題はこの先である。日本側は状況誤認と拙速で、台湾切り捨ての汚名を残すのである。

 誤認の第1。ニクソン訪中の意味を読み誤る。敗戦後、日本人は経済一辺倒となり、各国の行動も経済動機でしか判断しなくなった。ニクソン訪中は中ソ対立に乗じて中国と結び、ソ連を牽制(けんせい)するのが目的である。それを「米国が中国市場に目をつけた」と読み、財界が「バスに乗り遅れるな」と逸(はや)った。

 日本の世論は日中国交に賛成だが、中華民国とも国交継続を望んでいた。それを財界は「中国市場は大きいから、台湾を切ってでも中国と国交せよ」と政治家に迫った。中国の意向に沿え、というのだ。

 中国が台湾との断交を迫るなら、せめて一度は破談にして帰国すれば良かった。これで日本は信義に厚い国という実績が残せた。

 誤認の第2。中国の内情を察知せず。中ソ対立が高じてソ連の核先制攻撃の危機に曝されていたから「敵の敵」の西側との連携が焦眉の急だった。こういう相手の実情を把握しなかったため「中国に国交をお願いする」形になった。

 秀才外交は物分かりが良すぎて粘りが足りない。「中国と国交を結ぶには、台湾と断交するほかない」と先回りして考え、道義を捨てた。そうであっても「新しい友を作るため古い友を捨てはしない」と言い続け、断交は相手にさすべきだった。

 「中国は一つ」は中国と蒋政権の立場である。日本は「どの国とも友好を貫く」と言い続ければ良かった。

 ≪台湾にも「友好」貫け≫

 清朝は台湾を「化外の地」としていた。中華民国も中華人民共和国も建国時に台湾は日本領だったから、請求根拠を持たない。カイロでルーズベルト大統領と蒋介石総統の間で台湾領有の口約束ができたのは蒋総統に対日戦を継続させるためだった。1945年10月の台湾占領は講和条約までの管理を委ねただけだからサンフランシスコ講和条約でも日華平和条約でも、日本は台湾・澎湖諸島の「すべての権利、権原及び請求権を放棄」したが、帰属先を明示しなかった。明示できなかったのである。

 こういう土地は、大西洋憲章でも国連憲章でも、世界人権宣言でも、住民の自決で前途が決まる。

 台湾では、蒋家外来政権のあと、台湾人・李登輝が国民党独裁を「台湾住民による、台湾住民のための台湾統治」に変えた。台湾は自由民主国に生まれ変り、「一中」争いから離脱したのである。

 米国がこの新事態を無視して冷戦期の「一中」政策を墨守しているのは奇怪というほかない。自由民主国の台湾を国際的村八分扱いしているのは、21世紀の世の中にあるまじき不祥事である。

 日本政府が憲法前文にいうように「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」のなら、この事態の改善に努力する義務がある。(いはら きちのすけ)

:2007:10/09/22:17  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(11)

■中国に握られたITの「鍵」

 インターネットによりカネ、モノ、ヒト、資産のすべてがデジタル情報に置き換えられ、世界中を光速で移動する。

 それは「サイバー空間」と呼ばれる。「今やサイバー経済こそが経済だ。ネットワークが攻撃されて障害が起これば、その国の経済が崩壊しかねない」。ライス米国務長官国家安全保障担当大統領補佐官だった2001年3月、こう警告した。

 サイバー攻撃の脅威に危機感を募らせる米国の対極にあるのが日本である。

 今年5月、中国政府のある対外通告について、日本政府は気にも留めなかった。それは「中国国家暗号管理局は外国で生産された暗号付き製品の使用を禁止する」という規定である。

 日本など外国企業はコンピューター暗号を解除する「鍵」を当局に渡すか、暗号を解除していないと、中国にソフト、ハードを持ち込めない。IT業界大手の幹部は言う。「われわれが中国で委託生産するソフトの中身はすべて中国当局に知られてしまい、一元管理される」

 野村総合研究所の推計では05年で中国人のソフト技術者のうち約6万人が、日本のIT企業向けサービスに従事している。その業務内容は、中国で委託生産される日本企業の製品設計、各種システムや金融機関のネットワークから、日本政府の「電子政府プログラム」まで多岐にわたる。中国当局により玄関から金庫の鍵まで開けられても、黙って従うしかない。

 「中国一辺倒がまずいのはわかっているが、中国はとにかく便利」と情報システム大手幹部はいう。

 本紙記者が最近訪ねた大連の現地企業は社内の「公用語」を雑談まで含め日本語にするほど日本化に努めていた。

 対中依存が進んだ背景には、日本政府によるIT業界への「丸投げ」の構造がある。

 政府は01年に「電子政府プロジェクト」を打ち出したが、実態はプロジェクト設計からプログラム作成、保守管理まで、すべて発注先まかせだ。

 業界各社は「1円入札」までして受注し、コストを浮かすために、中国にさらに投げる。

 電子政府推進官庁である経済産業省自身、同省の電子政府ソフトを東芝に発注、東芝はさらに提携先の瀋陽の企業に基本設計段階からすべてを委託した。

 保守管理も同じだ。官庁の大半はセキュリティー責任者を設置したが、多くは素人で、「われわれに会うたびに『頼んだよ』といわれる」(IT業界幹部)。中国が関与する余地は果てしなく続く。「この世界は性善説に立つしかない」(内閣官房のスタッフ)と言うのが本音である。

 だが、中国を「善」とは中国当局ですら認めないだろう。

 中国の公安当局は9月26日、今年5月までの1年間で中国国内のネットワークのセキュリティーのトラブル発生率は65・7%で、ウイルスに感染したコンピューターが過去最高の91・4%に達したと発表した。

 警察庁が検知した中国からの発信元によるハッカー攻撃は今年上期、1日当たり2112件に達した。

 冒頭のライス長官発言にある通り、サイバー攻撃はむしろ防御の弱い経済に向けられる。8月にはドイツの経済技術省などの経済情報が人民解放軍により侵入され、メルケル首相がたまりかねて8月末の訪中で温家宝首相に抗議した。

 それに比べ、すき間だらけな日本の官庁は被害を受けた形跡が見当たらない。「ひょっとして奥の院まで知り尽くしたハッカーが痕跡を消してしまい、われわれは気がついていないだけかもしれない」とIT業界関係者は声を潜めて言った。

 米国では、サイバー攻撃を「ブラック・アイス(高速道路に薄く張った氷)」と呼ぶ。だれも気が付かず、いったん事故が起きるとパニックになるからだ。(田村秀男)

 ■防衛と警察の連携見えず

 この8月から9月にかけて世界中を騒がせた米国防総省や独、仏、英政府の中枢部門へのハッカー攻撃は、米欧の専門機関により中国人民解放軍の犯行濃厚と判断された。

 狙いは米軍などの情報奪取にあるとされるが、一国の軍が組織的に行動したとすれば、サイバー戦争時代の開幕とみておかしくない。

 金融取引が停止し、工場の操業がストップ、ダムからの大量放水で下流の都市が洪水に見舞われる-こんな悪夢のような攻撃も起こり得る。

 北京市西郊の西山には中国人民解放軍の本部がある。日中軍事関係筋によれば、市販の地図に載っていない軍本部ビルにコンピューターなどのハイテク機器を中心にしたサイバー戦を想定した総参謀部第3部が入っている。

 第3部は「網軍」と呼ばれる。1600人以上のサイバー部隊を擁し、フロアには数百台も最新鋭のパソコンがずらりと並んでいる。

 解放軍の7大軍区に拠点を設置し、本部と各拠点を光ファイバーで結び、サイバー戦争を想定した軍事作戦訓練を頻繁に行い、米国への留学生を含め人材をさらに募っている。

 中国国内でソフト工学の学部学科を持つ大学は400に上り、在籍学生数は40万人。その中からハッカーも生まれ、その技術向上を競う。

 日本はIT技術者不足をその中国で補い、暗号を解除してまで中国に設計内容を伝え、プログラマーを養成している。相手が解放軍でなくても、日本が中国の各地からサイバー攻撃を受けやすい条件がますます整っていることになる。

 ところが、日本側の防御意識は低い。

 まず政府の体制は縦割りの域を出ない。情報セキュリティーを統括する内閣官房情報セキュリティセンターは「政府横断的な情報収集や情報共有、攻撃の分析・解析のための統合組織を整備する」と言うが、掛け声だけである。

 演習を実施しても「実際に海外からの攻撃や犯罪が発生した場合、対処すべき任務を担う自衛隊や警察は演習に加わっていない」と元総務省幹部は言う。

 警察庁は各警察機関に設置した情報を「サイバーフォースセンター」に集約し、攻撃の端緒を24時間体制で監視して対応する緊急対処チーム「サイバーフォース」を擁している。

 防衛省も今年度の組織改編にあわせて、自衛隊通信システムなどへのサイバー攻撃に迅速に対処できる統合的な通信部隊「指揮通信システム隊」を設置するが、警察庁のサイバーフォースとの連携は見えてこない。

 日本の官庁などはこれまで首相の靖国参拝など「歴史問題」が浮上するたびに集中的に中国各地から攻撃されたが、「ホームページ書き換えなどはどうってことない」(内閣官房筋)と問題視すらしない政府関係者が少なくない。

 自らの省の電子政府プロジェクトまで中国に丸投げしても無頓着なのは、サイバーテロへの危機感が希薄なためだろう。経済が崩壊したら、日本がどうなるかを考えれば、国の総力を挙げて防御の道を取るしかない。それなのに、この国の官僚組織は動こうとしない。(相馬勝)

:2007:10/09/22:11  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(10)「国防の神経」ずたずた

「あり得ないことだ。何かの間違いではないか」。一昨年12月、防衛庁(当時)の電波関係者は、「周波数の再編方針」などと書かれた総務省のホームページ(HP)を何度も何度も読み返したという。

 それは防衛庁が「国防の神経」と位置づける最重要周波数帯を次世代携帯電話に割り当てる方針と、その周波数帯に通信事業者を募る内容が掲載されていたからだ。しかも防衛庁との事前協議もなかった。電波関係者の怒声に同僚が集まり、衝撃が広がった。

 この周波数帯は、全国28カ所にある警戒管制レーダーと、迎撃戦闘機・ミサイル部隊などが捕捉情報を交換し合い、領空侵犯機などに総合的に対処する通信網として使用されている。いわば国防の「目」と「脳」をつなぐ「神経」だ。

 実際に通信事業者が携帯電話用の電波枠を拡大し続ければ、国防の神経はダメージを受ける。例えて言えば、テレビ画像は見えるのに、スピーカーからは当該テレビとラジオの音声が入り交じって聞こえてくる-そんな機能不全の状態になる。

 これでは国は守れないが、総務省の意識は違うようだ。

 総務省がHPに前記方針を載せたのは、防衛庁が気付く2年以上も前の2003年10月だ。05年11月にはアイピーモバイルなど通信事業3社に周波数帯の利用が認められた。

 総務省は「どの省庁とも事前協議をしていない」とした上で「電波政策ビジョンを出すに当たり、事前に意見を募集した。関心のある省庁はHPを見ているはずだし、報道発表もしている」と主張する。

 不思議なことに防衛省は今も総務省に対し、抗議はもちろん、交渉すらできないでいる。

 電波の許認可・監督権限を握る総務省による、防衛省使用電波に対する“さじ加減”が脅威なのである。通常1カ月以内で認められる、日常的に使っている電波使用が許可までに3カ月もかかったり、新規電波がなかなか割り当てられなかったりするからだ。

 総務省は強気だ。「電波の有効利用の観点から、防衛省であれ民間であれ、既存周波数帯からの立ち退きの可能性を検討している」ともいう。

 いわば、HPで示したような防衛省の周波数帯への割り込みではなく、防衛省が使用している周波数そのものの変更すら視野に入れているのである。

 同じような電波問題を抱える国土交通省の幹部は、総務省の狙いについて「新たな資金源開拓と許認可権限の強化に向けた電波再編」と牽制(けんせい)する。

 実は超短波のVHF帯より波長が短い、この周波数帯は、これまで“空き状態”だった。設備投資が割高だったからだ。防衛庁発足当時の郵政省が国防用無線として許可したのも、空きがあったためだ。

 それがデジタル黄金期を迎え、動画像やゲーム端末などの大きなデータ量が、この周波数帯で送受信可能となった。

 総務省としては国の防衛より、新たな電波使用料を課すことを優先したわけだ。実際、国内外の通信事業者からの電波利用料は年間650億円(今年度)が見込まれている。

 仮に総務省により、周波数そのものを変えられてしまうと、防衛省・自衛隊は通信機やアンテナを含め施設を造り直さなければならない。防衛費削減で四苦八苦する防衛省は、さらなる巨額の出費を強いられる。

 携帯電話やテレビは国民の生活・娯楽にとり不可欠な存在である。しかし、主権が侵害されれば、国民生活は根底から覆される。いかにして国民の生命・財産を確保するかが国家の責務なのに、電波の世界では優先順位が逆転している。当然、有事の対応も危うい。

                   ◇

 ■「優先権」認められない自衛隊

 有事の場合、防衛省は電波を優先的に使用できる権利を持っている。「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律」で決まっていることだ。

 だが、どの電波に防衛省の優先権を認めるか、などを盛り込む同法に基づく対処基本方針の大枠は定まっているものの、具体的な手順は詰められていない。

 総務省が「法律上、きな臭くなってから決めるようになっている」と解釈しているためだ。

 だが、「きな臭くなってから」決める余裕が果たしてあるのか。

 さらに対処基本方針の手順ができたにしても、運用はまた別だ。

 平時では、防衛省の電波といえども「他に影響のない範囲」(電波法56条)での使用にとどめられており事実上、有事事態を想定した訓練ができない。説明しよう。

 有事となると、敵は自衛隊が使用している周波数に妨害電波を故意に照射し、レーダーをマヒさせるのが近代戦の定石だ。これに対し、自衛隊は、違う周波数に切り替えてレーダー機能を確保することになる。

 ところが、現状では認可されている周波数帯が狭く、民間の電波に割り込まない限り他の周波数へ回避できない。

 従って、自衛隊がもし、電波妨害回避訓練を行っても、割り込みができないため、妨害をまともに受け、レーダー表示画像は真っ白になる。

 これについて、防衛省と総務省は「訓練を経ずに、有事でいきなり新規の電波を使うのは不可能」と認識している。

 しかし、総務省は「電波法に例外は設けない」との姿勢を貫いている。ここに総務省だけでなく、有事を考えようとしない日本国の問題点が横たわっている。

 実は、日本も批准した「国際電気通信連合憲章」条約では「軍用無線設備」の「完全な自由」は担保されている。

 米軍の電波は民間はもとより、他官庁にも先駆けて割り当てられている。これが世界の常識だ。

 日本の電波法も、同条約を受けて定められたが、電波の許認可を握る総務省は防衛省に電波使用の優先権を与えていない。総務省が「自衛隊は軍ではない」と認定しているためだ。

 これらは自衛隊に大きな制約を課している。

 自衛隊が数百基保有する各種防衛用レーダーの国内配置は綱渡りである。同じ周波数帯のレーダーが近くに在ると、互いに干渉し合い、実在しない機影が映し出されることがあるからだ。

 可能な限り南北・東西と引き離しているが、レーダー電波同士の干渉=つぶし合いは起きている。これも、防衛省に許されている周波数帯が狭いことに起因する。

 「有事の電波」はむろん、「平時の電波」も十分に機能していない。それを問題と思っていない国家は心棒が抜けていると言わざるをえない。(野口裕之)

:2007:10/09/22:08  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(9)

■ハブ港は中韓に奪われた

 下の写真をみていただきたい。広大な貨物置き場には肝心の貨物がほとんどない。着岸している船も少ない。

 これは北九州市や国などが、「北東アジアのハブ(中継)港」を目指して約900億円を投じて、2年半前に建設した最新鋭の「ひびきコンテナターミナル」(HCT)でほぼ毎日みられる光景だ。日本海側で唯一、大型貨物船の入港が可能な水深15メートル、長さ約700メートルの岸壁を持ち、3基の巨大クレーンがそびえ立っている。が、開港1年目の貨物取扱量はコンテナ換算で10万個を予想したものの、約6000個にとどまった。

 これに対して、対照的なのは約200キロメートル先対岸の韓国・釜山港だ。大型コンテナ船が頻繁に行き交い、活気をみせる。釜山港が取り扱うコンテナの約半数は、世界中から集まる積み替えコンテナだ。

 国土交通省によれば、日本発着のコンテナ貨物のうち、アジア主要港で積み替えられて海外に輸出されたり、逆に海外からそんな港を経て日本に運ばれるコンテナ貨物の割合は1993年、2・1%にすぎなかった。

 それが2003年には15・5%に上昇した。北米における現地生産比率が3割を超える日本の自動車生産向け部品も、釜山経由で米国などに運ばれる。

 残念なことに、日本は欧米とアジアとを結ぶ主要航路便からはずれている。

 世界のコンテナ取扱量(2006年)の1位から6位までを占めるのはアジアの主要港だ。日本の最高は東京の23位。東京、横浜、大阪などの主要港の取扱量を足しても世界1位のシンガポール、2位・香港、3位・上海にとても及ばない。

 なぜこうなったか。中韓などアジアのライバル港が巨額の資金を投じて大規模化を急ピッチで進めた一方で、日本がそうしなかった結果である。

 北九州市港湾空港局の片山憲一局長は「いまの日本に中韓の政策決定のスピードはまねできない」と唇をかみしめる。

 貨物輸送の集積基地であるハブ港になれば、寄港する船が増え、自国を発着地としない貨物が数多く集積される。これによって、岸壁使用料などの料金を海外から獲得できるうえ、地元の就業拡大にもつながる。シンガポールや韓国などはハブ港戦略を明確に打ち出して国内1、2港に絞って投資した。

 これに対し、日本はこれまでに全国六十数カ所のコンテナ港を整備してきたが、いずれかを選択し、投資を集中してこなかった。「近隣港の間では貨物を取り合うが、協力や連携はない」(企業の物流担当者)という。

 地方自治体の港湾政策の問題も大きい。港湾法の下、建設と港湾経営の主体は自治体だ。だが、そこは政治家や建設業者らが結びつく公共事業のバラマキ投資の温床でもある。

 さらに港湾労働者らの権利意識の強さやおかしな労働慣行も阻害要因だ。

 港湾運営の民営委託で「24時間365日稼働」「日本一安い経費」を標榜(ひようぼう)したHCTも例外ではなかった。港湾労働者らでつくる組合が労働条件悪化に加え、HCTが開港することで周辺港に集まる貨物が減少し、「雇用の安定が脅かされる」と、港で抗議集会などを行った。

 ある北九州市関係者は「暴力団につながる『口入れ屋』からも、圧力があった」と打ち明ける。北九州市は結局、一定量の貨物がHCTに集まるようになれば、周辺の港湾労働者らに協力を求めることにした。

 これらは港湾コストの高さや手続きの煩雑さに結びつく。

 コンテナ1個を運ぶ総料金を比べると、東京港を100とした場合、釜山港は64、台湾・高雄港は65だ。入港から行政手続きを経て貨物を引き渡すまでにかかる時間も、シンガポールが24時間以内なのに対し、日本の港は2、3日かかる。

 こうした旧弊によって、日本の港が凋落(ちょうらく)しているだけではない。国際競争力が低下し、国民の生活に影響を与えていることが問題なのである。

 

■中継料で輸入品アップ 国際競争力ダウン

 日本の港湾問題は国民生活にも直結している。

 東大大学院の家田仁教授は「(日本の港の空洞化で)輸入品の価格高騰や輸出競争力の弱体化を招き、日本経済は国際競争力を失う。その結果、国民負担が増す」と指摘する。

 日本が主要航路から外れ、日本-北米・欧州の間に海外の中継港が入れば、その中継港にいったん貨物を運ぶコストが商品価格などに転嫁されるからだ。「実感はわきにくいが、病状は確実に進んでいる」と家田教授は警告する。

 国土交通省の試算によれば、完全に海外のハブ港を経由しなければならないとすると、日本に入ってくる食料品で2・3%、繊維製品で3・7%、輸送機械で4・4%それぞれ輸入価格が上昇する。

 また、日本からの輸出品が高くなることで、製品の国際競争力が落ち、輸出額は10年間で3、4兆円減少する。

 しかも「もし中継港が政治情勢やストライキで凍結されれば、生鮮食品類などが日本国内に届かなくなる可能性もある」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング国土・地域政策部の原田昌彦主任研究員)という。

 食料の約6割を輸入に頼る日本にとっては命綱を他国に握られることになるわけだ。

 こんな日本に挽回(ばんかい)のチャンスはあるのか。国がようやく重い腰を上げたのはここ数年だ。国交省が旗振り役となって進めている「スーパー中枢港湾プロジェクト」がそれだ。高いと不評の港湾コストを3割削減し、貨物の陸揚げから引き取りまでの所要時間を従来の2、3日から1日に短縮するのが目標だ。

 そして、整備費を東京湾(東京、横浜港)、伊勢湾(名古屋、四日市港)、大阪湾(神戸、大阪港)に集中投入する。

 税関や入国管理局など各省庁の管轄が分かれ、船会社から煩雑だと批判が強い輸出入や港の利用にかかわる手続きに関しても改善の動きがある。

 政府が今年5月に決定した「アジア・ゲートウェイ構想」の最重要項目として挙げた「貿易手続改革プログラム」だ。今後は港湾ごとに異なる手続きの使用様式の統一や簡素化などが進められるという。

 最近、日本企業の国内回帰の動きが目立っている。生産効率や品質管理の面で工場を日本国内に設置する方が有利と判断する企業が増加しているのだ。北九州市のひびきコンテナターミナル(HCT)周辺でもトヨタ自動車をはじめ自動車メーカーの工場が稼働する。

 HCTの運営会社「ひびきコンテナターミナル」顧問を務めた新日本製鉄八幡製作所総務部開発企画グループの楠雅之マネジャーは「この機をのがせば、中国などからのUターン現象で国内に戻りつつある生産機能が再び流出しかねない。今が日本が挽回をめざす、ぎりぎりのタイミング」と指摘する。

 生き残りをかけて打って出るのかどうか。日本の港湾政策はいま、大きな分水嶺(ぶんすいれい)に立たされている。(橋本亮)

:2007:10/05/16:05  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(8)

 ■「核の傘」が消える悪夢の日

 2009年X月。北朝鮮は長距離弾道ミサイル「テポドン2」の発射実験に成功した。その上で「米国を直撃可能。核弾頭も搭載できる」と宣言した。米国は国連に北朝鮮制裁を呼びかけるが、中国は「制裁は不要」と動かない。沖縄の米軍基地では偵察機の動きが急だ…。

 このシナリオはむろん現実ではない。今年7月、日米の安全保障専門家が東京で、朝鮮半島の近未来を想定して危機に対応するシミュレーションを行った際のものだ。

 実際にも北朝鮮は昨年7月にミサイルを連射し、10月に核実験を強行した。最近は「ムスダン」と呼ばれる新型ミサイルも開発中と伝えられ、国際社会への挑戦的な行動は終わらない。現実と仮想現実とのギャップは間違いなく埋まりつつある。

 シミュレーションを企画した防衛大学校の太田文雄教授は「北朝鮮の核やミサイルの危機に、米国や中韓がどう対応し、日本がどうすべきかを考えたかった」とその趣旨を説明する。

 シミュレーションでは、冒頭の想定に加えて(1)北朝鮮がムスダン・ミサイルの実験準備を始めたら日米中がどう対応するか(2)北で軍事クーデターが起きたとき、米中はどう動くか-についても検討した。

 防衛関係者らがもっとも心配しているのは、北朝鮮が米国を直撃できる核弾道ミサイルを完成したときである。

 日本の安全は在日米軍の存在に加えて、究極的に米国の「核の傘」によって保障されていると考えられてきた。しかし、中国や北朝鮮が核ミサイルで米本土をたたけるようになった場合、「米国は本気で日本の安全を守るために動くか?」という疑問がつきまとう。

 昨年2月、太田氏が米元高官にこの点を尋ねると、「イエスともノーとも言えない」という答えが返ってきた。「それは衝撃的だった」と彼は振り返る。

 もともと米国の「核の傘」への疑問は、中国の戦略核戦力の増強をきっかけに論議された経緯がある。さらに、北朝鮮が太平洋を飛び越える長射程の弾道ミサイルを開発すれば、理論的には同じことになる。

 やはり安全と水はタダではない。日米安保条約でさえ、無条件に米国の武力行使を約束しているわけではないのだ。条約の第5条をみると、日本の防衛についてはあくまでも米国の利益であると判断されたときのみに限られる。

 北の核は、中国と違って金正日総書記体制の「生き残り」をかけた兵器だから、いざとなれば日本を攻撃することによって自滅の道に踏み出す危険がある。北は容赦なく不法行為を犯す独裁国家であり、冷戦時のように核抑止が正常に働かない可能性さえあるのだ。

 こうした条件の中で、米国は本当にカリフォルニアなど西海岸の国民を犠牲にしてまで、日本を核攻撃した北への報復ができるだろうか。

 実は、7月のシミュレーションで主催者側は「米国が核の傘を放棄するかもしれない」という大胆な近未来シナリオを追加しようとした。これに日本の首相と米大統領がどんな行動をとるか。しかし、それは関係方面に与えるショックが大きく、直前に削除された。日本にとって核の傘が消える日-それは考えたくもない前提なのだ。

 ≪他人任せ「抑止」の危うさ≫

 北朝鮮が核実験を強行した直後から、北京は北が再び6カ国協議に復帰するよう猛烈な圧力をかけていた。

 米国に対北の性急な軍事行動を起こさせないためというのが最大の理由だろう。米軍が北攻撃に動けば、難民が数十万単位で大陸に流れ込むし、米軍による北の軍事占領は中国の安全保障上の悪夢である。

 一方で、中国が警戒するのは、日本といういびつな経済大国が核開発に踏み切り、「核大国」に変身してしまうことである。北京にとっては「北朝鮮の核保有」よりも「日本の核開発」の方がよほど怖い。

 こうした日米の動きを封じるためにも、中国は6カ国協議を主導していかねばならない。ところが、日本が「普通の国」でさえないことはすぐに明らかになる。日本の実情は北京が警戒するほど核戦略にはなじんでいないのだ。

 昨年10月、当時の中川昭一自民党政調会長が「議論はあってもいい」と発言しただけで、非難ごうごうであった。核論議に理解があるはずの安倍晋三首相でさえ、政府や党の機関で「正式議題にはしない」と封印せざるを得なかった。

 日本人の国防観にしたがえば、自国の「防衛」は許容できても「抑止」は他人任せということである。

 米核戦力の権威であるケネス・ウォルツ氏は、彼の論考「核の平和へ」の中で、「欧州の強い防衛力がソ連の攻撃を抑止する」との俗説を否定する。ウォルツ氏によれば、抑止力とは防衛能力を通して達成されるのではなく、相手を罰することのできる能力によってこそ可能なのだという。

 逆にいうと、いくら攻撃能力のない「防衛力」を整備したところで、少しも「抑止力」たりえないということだ。従って、核の脅威には核でしか抑止できないという過酷なテーゼが成立する。

 では、日本に「核の傘」が機能しなくなったとき、核を独自に開発する以外にどんなシナリオが残されているのか。米国の核戦略専門家らとの討論を通じて、浮かび上がるオプションは次の3つである。

 第1は日米同盟を維持し、米国の核実験場を借りて独自核を保有する(英国型)、第2は米国の核を国内に持ち込んで「核の傘」を補強する(旧西独型)、第3は核は持たず北の核、中国の核とひたすら共存する(共生型)。

 太田氏は「あらゆる事態に備えて対応を詰めておかないと日米同盟が自壊し、分断される恐れすらある」と警告する。北朝鮮の核放棄は進まず、逆に米政府が北朝鮮の核保有をあいまいに容認しかねない空気すら漂っている。

 核論議も許さない「不思議の国」という前提に立つなら、日本の為政者は当面、米国からの核抑止の“共同幻想”をより確実なものにするしかない。日米首脳会談で「核の傘」を公式議題に取り上げ、「北が核計画を続ける限り日本は核のオプションを放棄しない」との表明をする。

 それにより米国から破れにくい「核の傘」を引き出すしかない。目的は日本の抑止力の強化であり、国民の安全と繁栄を守るためである。(高畑昭男、湯浅博)

                   ◇

【用語解説】安保条約第5条

 「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」

:2007:10/04/13:38  ++  【正論】ノンフィクション作家・上坂冬子 ロシア漁師の密入国が不問?

■日本人漁師が殺されたのと大違い

 ≪ビールを買いに根室まで≫

 最初は笑い話かと聞き流していた。だが途中から私は怒り心頭に発したのである。

 さきごろ4年ぶりで北方領土に渡るべく、根室で1泊して地元の新聞を読み返していたときのことであった。

 4月の記事として、ウニ採りのロシア人漁師とカニ採りの日本人漁師が、根室沖でばったり出会ったという。ゴムボートに乗ったロシア人漁師は日本人漁師に何やら話しかけてきたが、言葉が通じるはずもなく日本人はロシア人に手まねで早くここから立ち去れと合図した。場所はロシア側が勝手に決めた境界線を越えたあたりで、日本側の海上である。

 もっとはっきりいうと1年前の夏、この線を越えてロシア側に入ったという理由で日本人漁師が銃撃殺害された事件のあったあたりだ。

 ロシア人漁師は、日本人の制止を振り切って根室の納沙布岬に向かった。拿捕(だほ)事件や漁師殺害事件などで、こりごりしている日本人はこれを見逃すわけにいかない。さっそく携帯電話で漁師仲間に知らせた。

 漁師仲間から漁協を通じて根室警察および根室海上保安部に連絡がいったものと思われる。そして日本人漁師がカニ漁を終えて岬にもどったまさにその時、ロシア人漁師は岬の飲食店で買い求めた箱入りビール2ダースを抱えてゴムボートに乗り込む寸前で、根室署の警官に身柄を取り押さえられたのであった。地元の商店はロシア人の求めに応じて販売したが、根室ではロシア人は珍しくないから無理もない。

 ≪地元警察に拘束はされたが≫

 要するにロシア人漁師はビールを買いたい一心で納沙布岬に突っ走ってきたのである。しかもウニ採りの母船から離れて4人乗りのゴムボートに乗り、仲間の3人が海に潜って仕事をしているすきに、ちょっと一っ走り日本の岬でビールを買ってこようと思ったらしい。たまたま前夜は息子の誕生日で仲間に盛大に祝ってもらったから、せめてものお返しに日本のビールをと考えたという。その限りではたわいなくほほえましい話である。

 もっともロシア人は職場放棄して日本にきたのだから、事と次第によっては海に潜ってウニ採りに励んでいた仲間の漁師たちは船に戻れず大事件となるところであった。日本側からロシア側に連絡して事なきを得たという。

 警察に通報したお手柄日本人漁師3人の写真は釧路新聞に大きく掲載されているから(4月17日付)、管内漁協と警察と海保との連携による不審者の侵入阻止に大役を果たしたのはまちがいない。

 だが、私が憤慨したのはこのあとだ。

 あれから半年もたっているのに、ビール買い事件のその後が報道されていない。これは単なる旅券不所持ではなく、密入国、あるいは領海侵犯という大罪に問われるべき事例である。1年前、ロシア側が勝手に決めた境界線をわずかに越えたとして日本人漁師は撃たれて死亡し、船長はロシアの裁判を受けて48日後に214万円の罰金を支払って釈放されたというのに、同種の事件を起こしたロシア人の結末があいまいでいいはずがない。

 ≪地元は業を煮やした≫

 私なりにその後を調べたところによると、ロシア人漁師は釧路地検に送られたようだが、結果として入国管理局の判断でロシア側に身柄を返されたらしい。領海にかかわる不法に関して、日本人漁師は殺されロシア人漁師は不問に付されたとすれば怒り心頭に発せざるを得ないではないか。漁師がテロリストだったらどうなるか。これでいいのか日本、と声を荒立てずにいられない。

 ただし憤慨しているのは私だけではなかった。地元では新しい動きが胎動している。根室市と隣接する1市4町の協議会(略称・北隣協)が、今年12月1日に大挙して上京し北方領土返還のデモ行進を行うことを決議した。敗戦の年の12月1日に、当時の根室町長、安藤石典氏はGHQ(連合国軍総司令部)に出向いて、マッカーサー元帥に「4島は日本の領土でありスターリンの軍隊による不法占領を撤回させてほしい」と陳情している。

 日本人が最初に領土返還を国際社会に訴えた日にちなんで、地元の人々はデモを計画したのだ。

 拉致も地球温暖化も大問題だが、もう1つ日本独自の重要な問題が残っているのを忘れてはなるまい。新政権にこのことをあらためて訴えるべく、いよいよ地元は原点に立ち戻って腰を据えたと私は見ている。(かみさか ふゆこ)

:2007:10/04/13:20  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(7)

■総連のドン揺さぶる意見書

 今年7月23日、東京・富士見の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部(会館)に元幹部が乗り込み、許宗萬責任副議長の辞任を直接求めるという前代未聞の出来事があった。

 徐萬述議長を訪ねて文書を手渡したのは朴応星・朝日経済交流促進会顧問(元総連経済局副局長)だった。文書は「総連中央会館の売買事態に対する我々の意見」であり、朴氏のほか、鄭文策・元総連中央監査委員会副委員長、李範洛・元在日本朝鮮信用組合協会会長、崔益佑・元隆興貿易社長の総連元幹部計4人の署名があった。

 朴氏は議長室で文書をとうとうと読み上げた。

 「責任副議長は総連の財産が山のように他人の手に渡っていったこの期間、総連の財産部門を担当、指揮したうえ、朝銀信用組合の正常な経営を危機に瀕(ひん)するよう不法的な手段で金を捻出(ねんしゅつ)し、破産に追い込んだ」

 「総連の威信を堕落させた全責任は許宗萬責任副議長にある。許責任副議長は退くか自粛せよ」

 朴氏に対し、徐議長は声を荒らげて激怒した。「おまえらは何を言っているんだ」

 しかし、朴氏はひるまず、「いまさら何を言っても同胞をだましたことに変わりない。責任をとらないなら、われわれは行動を起こすだけだ」と言い放ち、中央会館を後にしたと総連関係者はいう。

 過去に総連執行部を批判する匿名文書が出回ることは少なくなかったが、元幹部たちの公然たる造反に総連中央はかつてない衝撃を受けたとされる。

 徐議長は8月3、4の両日、総連本部で地方本部委員長や傘下団体・事業体責任者を招集した。公安当局の内部報告書はこう伝える。徐議長は席上、「許責任副議長を守ることは金正日将軍様を守ることだ」と言明し「総連は父なる首領(故金日成主席)の高貴な遺産である。われわれは総連を守り強化するために固く団結しなければならない」と呼びかけた。

 その3カ月前、平壌を訪れた南昇祐副議長は本国から「敵の弾圧から許責任副議長を守れ」と直々に指示されたという。

 「実質的な最高実力者」(公安関係者)といわれる許責任副議長が東京地検から事情聴取されたのは今年6月だった。これと相前後して、総連本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件で、総連を監視対象とする公安調査庁の元長官、緒方重威(しげたけ)被告ら3人が東京地検に逮捕された。

 一件落着にみえるが、総連を“被害者”とし、その総連が「だまされたという認識はない」(南副議長)と明言する事件の構図はあまりに不可思議だった。捜査関係者の一人はこう感想を漏らす。

 「なぜ、警察・検察幹部は許宗萬を野放しにし続けているのか。仮装売買事件という総連本部にメスを入れる千載一遇のチャンスまで逃してしまった」

 こうした結果をもたらした背景に見え隠れしているのは、許責任副議長が日本の政界と強力な人脈を築いていることだ。

 許責任副議長の中央本部での振り出しは1971年、日本の政界工作を担当する国際局だった。そこで地歩を固め、1986年に財政担当副議長に抜擢(ばつてき)された。総連はこのあと、北朝鮮への忠実な献金団体の色彩を濃くしていく。

 元総連関係者はこう語る。「責任副議長に司直の手が伸びないのは、ひとえに30年以上にわたる政界工作の成果だ」

                   ◇

 ■「パーティー代 払ってやった」

 「10年ほど前、ある人の紹介で許宗萬責任副議長と新宿の韓国料理店で食事をした。会ったのは1回か2回だけ。親しいというわけではない。面識がある程度だ」

 加藤紘一元自民党幹事長は朝鮮総連の許責任副議長との交流をこう説明する。加藤氏は、元総連中央財政局副局長の韓光煕氏が自著「わが朝鮮総連の罪と罰」(文芸春秋社)で、許責任副議長と親しくしていた政治家たちの一人と記述されていた。

 加藤氏が北朝鮮との窓口役を務めていたのは1995年、自民党政調会長の時である。北への50万トンに及ぶコメ支援を主導していた。

 記者が工作資金を尋ねたところ、加藤氏は「総連はコメ支援の答礼パーティーを開くといって、政治家や関係省庁の役人を招いた。ところが総連は『カネがない』というので、私らが払ってやった。総連には配るカネなんかないよ」と語った。パーティー代を肩代わりする関係だったようだ。

 韓氏が記述した政治家たちには他に自民党や旧社会党の現・元幹部などが並ぶ。

 別の元総連幹部は「2002年9月の小泉純一郎首相の訪朝以来、許責任副議長は首相秘書官と親しくしていた。総裁派閥の森派(現町村派)幹部とも温泉地でこっそりゴルフをするなど、政権との関係強化に躍起だった」と明かす。

 許責任副議長はこうした政治家たちとのパイプを足がかりに総連の最高実力者に上りつめていった。最大の功績は本国からの総連中央に課せられた資金捻出(ねんしゅつ)に成功したこととされる。

 財政担当副議長に就いた80年代後半はバブル経済下で、都市部の地価は倍々ゲームで上がっていた。許氏が目を付けたのは、土地転がしであり、その対象は、日本全国で38組合、176店舗、預金総額2兆円超を有した朝銀信用組合だった。

 全国の朝銀は幹部人事を握る総連中央に命じられるままに、総連傘下団体の不動産を担保としてその価値を大幅に上回る過剰融資や無担保融資を繰り返し、乱脈経営の限りを尽くした。融資金の一部は、北朝鮮への献金として総連経由で横流しされた。

 しかしバブル崩壊とともに、97年5月の最大手の朝銀大阪を皮切りに次々と経営破綻(はたん)に追い込まれ、2002年12月までに朝銀破綻処理に日本国民の血税である公的資金1兆4000億円が投入されたのだ。

 ところが、巨額の公的資金をつぎ込んだ朝銀について、01年11月に警視庁が総連本部を強制捜査するまで不正は一切表面化しなかった。

 故金丸信元自民党副総裁が総連元幹部らによる外国人登録法違反事件に対し、捜査を拡大しないよう警察庁に求めたこともある。

 閣僚経験もあるベテラン国会議員は許責任副議長とのパイプに加え、朝鮮労働党で対南工作を仕切る金養建・統一戦線部長と20年来の親友であると披瀝(ひれき)して、こう豪語した。

 「私は北から最も信頼されている日本の政治家だ。拉致は後回しでいい。まず日朝の国交を正常化しないと何も始まらないよ」

 北朝鮮や朝鮮総連による工作で日本国は融解してしまっているとしかいいようがない。(高木桂一)

:2007:10/03/17:06  ++  第1部きしみを越えて(3)現場発――さらば早朝残業(働くニホン)

ムリ・ムラ・ムダに仕事革命
 東京・丸の内の高層ビルが、きょうも「オセロ」の舞台になる。午後八時十分、ビル下半分が一斉に暗転したかと思うと、多くの窓が数秒後にさっと黒から白へと変わる。
マイ電灯が頼り
 ここは大手保険会社の本部。三年前から強制消灯で残業削減に取り組むが、定時に帰れず再点灯を強いられる職場が続出した。保険金不払いの調査で他部門に駆り出される人も。
 「遅くまで明るいと、人事部が……」。中には「マイ電灯」を買って手元を照らす社員もいる。
 朝六時の東京駅。スーツ姿がみるみる増える。夜間残業を禁止した銀行などの社員は、会社の規制がかからない始業前の三時間に残務をこなす。会社法や金融商品取引法など移り変わる法制度、IT(情報技術)の進化や国際競争。仕事は増える一方だ。残業規制との板挟みで働き手は「早朝残業」に迷い込む。
 三十―四十歳代の働き盛りの男性社員で週六十時間以上働く人の割合はこの十年で軒並み上がり、四十歳代前半は二一%と約五ポイント上昇した。
 水面下のサービス残業も表に浮かび上がってくる。
 紳士服専門店のコナカは今年三月中間期の連結最終損益が約三千万円の赤字になった。昨年秋時点の予想は十八億九千万円の黒字。従業員や店長計千百人に時間外の未払い賃金など約十四億円を支払った結果だ。
 残業を頭ごなしに規制するのでは、早朝残業のように働き手に「ムリ」を強いるだけ。職場ではリーダーが個人とチーム全体の仕事量を把握し、仕事のムリ・・ムラ・ムダを省こうとする動きも出始めた。
 人材紹介最大手、リクルートエージェントの古川嘉弘(38)は「十一月は忙しいからね」と部下に念押しして、掲示板に「レベル(LV)3」の札を付けた。総勢五人の古川のグループでは六月から残業の「事前申告制」を始めた。
 1から5のレベルは毎月の各自の労働時間目標。数字が小さいほど残業時間は多い。真ん中の3より長くできるのは年六回限り。目標を達成すれば花飾り、未達成にはドクロが付く。
長時間労働に番付
 「互いの仕事量や負荷が分かり、自然と助け合う雰囲気になる」と古川は話す。同社は残業防止のアイデアをグループごとに考案する。残業時間の「長者番付」を作り、互いに長時間の勤務をしないようけん制し合う職場もある。
 関西電力は十月、社員が社内ネット上で入退室時間を管理したり、残業届を提出したりする仕組みを取り入れた。二万人の社員に自覚を促し、それぞれの考えで仕事の配分を決めてもらう。仕事の繁閑は人によってまちまち。情報を共有すれば「ムラ」をならすアイデアも出てくる。
 三井住友銀行は昨年、頭取の奥正之(62)の肝いりで、行内業務を見直すチームを設けた。本部と支店の間の膨大な報告資料など、顧客業務と関係のない事務の洗い出しを進めている。「一時間でやっていた仕事を三十分でできるようになれば」と執行役員人事部長の橘正喜(51)。長時間労働が常態化している金融界もようやく「ムダ」の削減へ手探りを始めた。
 日本の自動車産業はムリ・ムラ・ムダを省くことを意識し、世界の先頭に立つ生産性と競争力を身に付けた。労働生産性が低いと指摘されるホワイトカラーの現場も、製造業に学び、三つのムを削る「仕事革命」を進められるはずだ。それは単なるケチケチ作戦ではない。例えば個人の成果を勤務時間で割り算して評価し、仕事のやり方を変える工夫を取り入れるなど、働く仕組みそのものを見直すことが突破口になる。
 長時間労働者は米国など海外でも増える傾向にある。“残業大国”の日本は工夫次第で、より効率良く働ける余地が大きいとも言える。雇う側と働く側の知恵と努力が「働くニホン」の盛衰を左右する。=敬称略

:2007:10/03/17:00  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(6)

国連PKO局長に尻込み

 国連の中核ともいえる平和維持活動を仕切るPKO局トップは垂涎(すいぜん)の的だ。年間予算約50億ドル、スタッフ500人。世界で18のPKO、総要員10万人の展開を立案し、管理する。各国は局長ポストをめぐって水面下で激烈な競争を繰り広げる。

 今年1月、潘基文事務総長サイドは日本に対し、新PKO局長を非公式に打診してきた。

 これは国連の組織再編に伴うものだ。具体的には、当時日本が事務次長ポストを持っていた軍縮局を廃止、事務総長直轄の「室」にする代わりに、現在のPKO局を司令塔の「現場統括」と「財務・調達」部門の2つに分割するものだった。

 米国(26%)に次ぐ第二の分担金拠出国でもある日本(17%)は、国連事務局内の序列で事務総長、副事務総長に次ぐナンバー3、事務次長ポストを維持してきた。財務・調達部門の事務次長ポスト打診は軍縮局長廃止の見合いといえた。

 しかし、日本は断った。 

 日本政府関係者は、その理由について「当時はまだ新PKO局設立が総会で認められるかどうか分からない状況だった。それよりは確実に事務次長ポストを取ることを優先した」と話す。外務省筋も、軍縮局長と同格の事務次長ポストである広報局長を早くから狙う方向性が出ていたという。

 潘事務総長は結果的に2月、赤阪清隆・経済協力開発機構(OECD)事務次長を広報局長に任命した。

 だが、ある国連当局者は「日本政府からは『PKO全般に通じた人材がおらず、バックアップする態勢がない』という本音を聞いた。一体、何を考えているんだと思った」と話す。

 米保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)上級研究員のボルトン前国連大使も「日本はPKOに良く参加してきたけれども、広範ではなかった。それを考えるとこの部門のトップを務めることは背伸びの部分があったかもしれない」と多少の皮肉を込めて語る。

 日本が自らに課したPKO参加の制約が、花形ポスト獲得を躊躇(ちゆうちよ)させた大きな要因といってよい。

 兵員に限ってみた日本のPKO派遣要員数は現在わずか51人(ゴラン高原とネパールの2カ所)だ。要員数で1位のパキスタン(1万173人)の200分の1にしかならない。

 派遣するにしても(1)停戦の合意成立(2)紛争当事国の受け入れ-などが必要であり、それが満たされない場合、日本部隊は撤収するという原則がある。

 武器使用についても、国連の標準行動基準である「任務遂行を妨害する行為を実力で排除する行動」を認めていない。戦闘に巻き込まれた場合の応戦は、憲法第9条で禁じられる武力行使にあたり、武器使用は正当防衛・緊急避難以外は認められないと解釈しているためだ。

 いわば、仲間が攻撃されても助けに行けない。他国の軍隊には通用しないルール。国際共同行動の責任と義務をまともに担えない「特殊な国」なのだ。

 在日経験の長い外交筋は「憲法の解釈とか改正の是非は日本自身が決める問題だが、今のままでも日本はもっと多くの新たな役割を担えるはずです。それを阻んでいるのは、日本人が傷ついたり、死亡したりすることを恐れているからではないですか」と指摘する。

 「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」と憲法前文でうたった日本なのに、犠牲をひたすら忌避する道を歩み続けていこうとしている。

                  ◇

 ■国際標準に遠い「特殊な国」

 日本が「PKOを増やせない、出せない」と弁明するのを国際社会はどう見ているのか。

 世界ではあらゆる種類の紛争が起きている。それに伴い、平和維持活動や復興活動には、多様な職種の働き手が必要だ。インフラ復旧を助ける兵士、文民警察官、開発担当者、統治にかかわる法律専門家-などだ。日本にはそうした人材や力があるのに、いつまでためらっているのか-という意見は少なくない。

 例えばドイツは、日本と同様に1991年の湾岸戦争で人的貢献ができず、国際社会から批判された。

 しかし、94年に憲法裁判所判決を取り付けてNATO(北大西洋条約機構)域外への派兵を可能にした上で、積極的にPKO参加を進めた。これまでにアフガニスタンで展開する多国籍軍の国際治安支援部隊(ISAF)など8つの国際活動に兵員7300人と警察官250人(2004年現在)が参加し、日本より一歩も二歩も先を進んでいる。

 「PKOの生みの親」と呼ばれるカナダは、「国連の主な平和維持活動のすべてに参加してきた唯一の国」としてPKO以前の国際活動を含めて60の活動に参加してきた。アフガンでも率先してISAFを主導し、この夏にはカナダ兵士の死者が70人を超えた。アフガン以前のPKOなどの犠牲者(累計121人)に近づきつつあり、苦悩はにじむ。

 「国民の代表でもあるPKO参加兵士の犠牲を心から悲しむ気持ちはドイツ、カナダでも、日本でも変わりはない。だが、それを乗り越えて国際社会のためにつくす大義をきちんと位置づける仕組みと政治の営みが必要ではないか」と外交筋は語る。カナダやドイツはそれを果たしてきたのである。

 一方、国連PKO協力法が成立した1992年以降、日本は9つのPKOに参加してきた。このうち自衛隊派遣は▽カンボジア▽モザンビーク▽ゴラン高原▽東ティモール▽ネパールの5つだ。このほかPKOとは別枠の国連難民救済活動に自衛隊医療部隊などが派遣されたが、これらすべてを合わせても人的貢献としては国際水準に遠く及ばない。

 ある防衛省幹部は「PKOに参加できるところがあるならば、もっと出したいのは当然」というが、1面で紹介したPKO参加の原則などによって、がんじがらめに縛られている。

 94年、アフリカ・モザンビークPKOに派遣された陸上自衛隊部隊は、ウルグアイ人の現地司令官から、緊急事態に伴い民間の要員を警護するよう要請された。

 陸自部隊は警護任務を与えられていないと断ったところ、司令官は「なぜ、できないのか」と不快感を示した。日本の制約を説明した隊員は「あんなに恥ずかしいことはなかった」と述懐する。

 国連基準である任務遂行を妨害する行為を排除するための武器使用が認められていないため、自衛隊は他国と同じように治安維持や要員を守る警護任務などを担えない。

 これらは憲法第9条で禁じられている「国際紛争を解決する手段としての武力行使」でないことは明白なのに政府解釈見直しには至っていない。

 他国の軍隊と違うルールで国際平和活動に自衛隊を参加させ続けている政治の無責任さも問われるべきだ。

 93年、文民警察官らに犠牲者を出したカンボジアPKOで国民感情が動揺した経緯があるにせよ、日本の理屈は「身勝手」としか国際社会には映らないのではないか。(長戸雅子、高畑昭男)

:2007:10/03/16:58  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(5)

■自国通貨の支配力失う/日中GDP逆転は5年以内

 円安でしかも超低金利。日本株は不安定。主婦のへそくりから団塊世代の老後資金運用も「貯蓄から投資へ」の掛け声に日本市場は応えられない。

 香港の銀行口座相談窓口の前であたふたとスカートをたくしあげて、おなかに巻いた円の札束を取り出す中年日本人女性。2年ほど前から、銀行口座開設を求める日本人旅行者が週末に飛んできては、土曜日午後も営業する最大手の香港上海銀行の本店や支店で列をなしていた。

 ところが先の3連休の初日の9月22日土曜、知り合いの投資愛好家4人が空港から銀行窓口に駆けつけたが、口座開設に「ノー」の返事。香港在住の日本人投資コンサルタントは言う。「この7月あたりから断られる日本人が目立ちます。手間だけかかる数十万円単位の小口日本人預金者の殺到ぶりに香港の銀行は音を上げたのです」

 日本の証券会社のホームページ。「ハイイールド・アドバンテージ」「インカム・ストラテジー」などカタカナの外貨資産運用の投資信託がひしめく。いずれも外国の金融機関の販売代行である。この7月末の外貨投信の残高は1年前に比べて約16兆7000億円増え、個人預金の12兆2400億円増を大きく上回った。

 おかげで、ロンドンやニューヨークのヘッジファンド、銀行、証券は「円」を存分に調達できる。そして世界の外為取引の5割以上が集中するロンドン、ニューヨークで円資金を好きなようにたたき売っては、より金利の高い米国債やユーロ債などで運用する。

 ヘッジファンドは金融工学を駆使するというふれこみだが、原理は単純。元手の10倍の円資金を調達して金利が円より4・5%高いドルで運用するだけで、元手の45%を利益として稼げる。

 国際決済銀行(スイス・バーゼル)の集計によれば、今年4月時点の日本での外為取引額の世界シェアはわずか6%と過去12年間で最低。円の取引額はロンドンが東京を抜いた。円の運命はロンドン、ニューヨークが決めるようになった。

 この結果、グラフが示すように、円は1997年のアジア通貨危機以来、世界の主要通貨のうちで最も安く、不安定な通貨になった。円の真の値打ちを示す実質実効相場は過去10年間の最大下落幅が39・4%、「ドル安」と言うがドルは17・8%にとどまる。米国の低所得者向け住宅ローンの焦げ付きをきっかけにした最近の国際金融市場の不安で、もっとも翻弄(ほんろう)されたのは日本市場だった。

 震源地のニューヨークのダウ工業平均株価はこの8月16日に今年最高値に比べて9%強下落したが、日経平均株価は8月17日、16・5%も急落した。

 日本の金融機関のサブプライム関連商品への投資額は少なく財務面での影響はほとんど皆無とみられていたが、欧米の投資家の頭にあるのは「円相場」のみ。ヘッジファンドがサブプライム投資の損失を埋めるためにドル資産を売り、円返済に走ると円相場が上昇する。それを見た他の投資家は円安だけが取りえの日本株の売却に転じた。

 19世紀、大英帝国は低金利の資本を世界に供給し、その収益で栄えた。が、現代の債権大国日本はみずからの富を流出させる構造をつくってしまった。

 円という通貨の主権国日本が、円を支配する能力を失ったからである。

                   ◇

 ■「日中GDP逆転は5年以内」

 グローバル化が進んだ今、日本の市場が円を支配しなくてもやむをえないとの見方もある。

 だが、変動相場制でもその国が通貨安定に総力を挙げる。米国はドル価値維持のために外国投資家や政府機関がドル資産を買うようあらゆる手を打つ。欧州は金利を高めに設定し、統一通貨「ユーロ」を安定させて、景気を拡大させている。

 日本では、今春、大手、新興を問わず決算発表も満足にできない上場企業が続出した。売買シェアの7割を占める「外国人投資家」は短期売買に徹する。

 日銀は円相場安定につながるはずの超低金利是正の時機を見失った。

 有力経済紙がこう書く。「円安になれば外貨資産運用が有利」「多国籍化した日本企業は海外子会社を含め大幅増益」などと。

 だが、それらは通貨という国の血液をダンピングして売った代償でしかない。いわば円安によるバブルであり、円高になれば一夜にして損失に転じる恐れがある。円安の受益者も実際には限られ、その他大勢にしわ寄せされる。

 円安のために原材料調達コストが上がっても、ユーザーから値上げを認めてもらえない。自動車部品業界筋によると、1グラム当たりの自動車価格はこの20年来、1円から2円の間で不変。「完成車メーカーからの圧力で逆に値下げさせられる」。化学品メーカー筋は「プラスチック素材『ポリマー』の出荷価格は、0・2円で自動販売機のミネラル・ウオーターと同じ」と嘆く。円安下でのデフレ、格差が進む。

 国際通貨基金(IMF)の統計によると、日本のこうした交易条件の下落率は2000年以来の7年間で32%に上り、米国の4倍。これに伴い日本の国富喪失額は88兆円に上るという。

 中国は2006年、政府ベースでは米国債の最大の買い手になった。

 昨年日本を抜いた中国の外貨準備は毎月500億ドルも膨張し、外貨準備を支配・管理する北京の意思が直接、米金融市場に影響する。この4月から6月、中国はそれまで買い増しし続けてきた米国債を突如売りに出た。

 ワシントンでちょうど人民元対中制裁の動きが盛り上がった時期である。市場は動揺し、中国を筆頭にアジア各国が米国債離れをみせるのではないかという不安が流れ、7月には米国債相場が急落した。

 その後、米議会は軟化し、人民元問題を米政府に世界貿易機関(WTO)へ提訴させるという、実効性に乏しい法案でお茶を濁した。中国はマネーパワーの手応えをつかんだ。

 円安が進んだ2006年。IMFがドル建てで計算した日本の国内総生産世界シェアは2006年9・1%だ。1995年から半減した。対照的に中国は5・5%と倍増した。「日中の経済規模の逆転時期はこのままいけばあと5年以内に来る」との見方がウォール街では常識だ。

 対米関係、さらにアジアにおけるみずからの位置を考えるとき、弱々しく大きく振れる円は実は悲痛な目覚まし時計である。(田村秀男)

:2007:10/03/16:55  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(4)韓国の仮想敵に見なされた

韓国国会が昨年末に採択した国軍近代化のための「国防改革2020」。目を引くのは、13年後の韓国を取り巻く脅威認識だ。いわく「北朝鮮の軍事脅威は減少」「地域内の潜在的脅威が現実化している」。

 潜在的脅威とは何を指しているのか。軍事専門家によると、(1)ロシア(2)日本(3)中国である。

 韓国国防省庁舎内の壁には、日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)がペンキで描かれている。「独島」は韓国人の国防意識や国民感情の鼓舞に一番、効果的なのだ。日本は「仮想敵」なのである。

 「日本は独島奪還を企ててくる」との脅威論は、今年8月就役した韓国初の大型揚陸艦が「独島艦」と名付けられたように国民の潜在意識に植え付けられている。

 国防改革2020は、2020年までに兵力18万人を削減して50万人とする。世界トップ級の少子化に対応したものだ。

 もう一つの目玉は620兆ウォン(約79兆円)をかけて軍備を精鋭化することだ。それは米軍再編(トランスフォーメーション)を受けた米韓関係の変化による「自主防衛への選択」と説明されている。特に海軍、空軍力の整備では独島守備が説得力を持つ。

 今年5月、韓国は初のイージス艦「世宗大王」を進水させた。2012年までに計3隻を建造、将来は6隻保有を計画しているが、これは日本と同等(海自は現在4隻)のイージス艦保有を目標にしている。潜水艦16隻も日本並み(海自16隻)が目標だ。
日本が次期主力戦闘機(FX)に最新鋭のステルス戦闘機「F22Aラプター」導入計画を打ち出したことにも韓国は神経をとがらせた。「独島」の制空権に絡むからだ。実際昨春に竹島付近海域で日本が計画していた海洋調査に対し、韓国側は一時、日本の調査船の拿捕(だほ)、体当たりも辞せずとの強硬姿勢をみせた。

 もちろん、日韓は北東アジアで価値観を共有する友好国として防衛交流を推進している。部隊・艦艇の相互訪問、救命部隊の共同訓練なども幅広く行われている。

 だが、韓国から見る世界は、目前に日本、その向こうに米国、背後に中露と「周辺4強」に囲まれ、「韓国の防衛政策が日本を意識するのは当然」(関係筋)なのだ。日本からすれば、韓国内に日本を潜在的脅威とみなす動きがあるのに無関心でいられない。

 昨秋の北朝鮮の核実験直後、韓国のインターネットに、核実験を「民族の慶事」とたたえ「北が核兵器をつくれば米国は勝手に戦争を起こせない。統一されれば(韓国も)核保有して強国になる」などの書き込みが広がり、話題になった。

 北朝鮮シンパか北朝鮮の宣伝工作の仕業とみられるが、こうした発想に韓国の若い世代は「えーっ」といった大きな抵抗感はみせない。南北融和の進む中、韓国の「安保不感症」は強まる傾向をみせている。

 華やかな韓流人気や人的交流の陰となりがちな隣国のこうした潮流の変化を、日本はどの程度正確に把握しているのだろうか。(久保田るり子)

 

                   ◇

 ■「核付き統一」への備えはあるか

 夏のなごりを残す韓国東部・江陵の海岸線。高さ1・5メートルほどの鉄条網が張り巡らされている。だが途中で鉄条網は寸断され、一部は撤去されていた。

 江陵といえば、11年前、北朝鮮の工作潜水艦が座礁し、26人の工作員のうち、11人が集団自決、13人が射殺され、1人が北に逃亡、1人が逮捕された。今も展示されている潜水艦を見にくる観光客が絶えない。その江陵の鉄条網8キロは2年後にすべてなくなる。

 鉄条網は北朝鮮工作員の上陸防止用である。1960年代から韓国全土の海、川べり約650キロに張り巡らされた。

 盧武鉉政権はこれを「変化する南北の安保状況に合わなくなった」と今春から撤去を始めた。人々の目から「北の脅威」が消えていく。

 軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)付近の民間人統制区域のなかに韓国側の「都羅山駅」がある。北朝鮮にある南北経済共同事業「開城工業団地」につながる鉄路、道路の要衝だ。

 駅前は約33万平方メートルの物流基地と出入国管理事務所が今年11月の完成を目指し、急ピッチで建設中だ。物流基地は「メード・イン開城」の集積場となる。京義線の鉄路は試運転(今年5月)段階だが、開城への道路は毎日、数十台のバスやトラックが北上、数百人の韓国人が開城工団へ通勤する。最前線の緊張感はどこにも感じられない。

 10月2日予定の南北首脳会談に向け、盧武鉉大統領は「(金正日総書記と)平和協定締結に向けた交渉開始もありうる」といい、「南北経済共同体(経済圏の統合)建設の対話を始めたい」と考えている。
この経済共同体構想に盧政権は、向こう10年の中長期支援計画では約60兆ウォン(約7兆3000億円)の投資を見込んでいる。こうした構想は、年末の大統領選挙で野党ハンナラ党が勝利すれば、修正されよう。

 しかし、今のところ、ハンナラ党候補の李明博前ソウル市長は「北朝鮮が核廃棄すれば次期政権で経済共同体協定を締結させる」と前向きだ。

 今の南北平和ムードに水を差せば、盧政権や北朝鮮に「保守野党は戦争勢力」との格好の攻撃材料を与えることになる-と野党側は考えている。

 金大中前政権から続いた親北勢力の「平和攻勢」と心理的武装解除の拡大が隣国の日常の風景となった。

 問題は、将来の統一を視野に「核保有国」の北朝鮮と韓国が早期に和解し、「核付き統一」はあるのかどうか。「北朝鮮の核放棄なしで南北が統一過程に入ることは絶対にあり得ない。日米はじめ周辺国の理解が得られない」(高麗大南北経済研究所所長、南成旭教授)と韓国側の専門家は一様に否定する。

 だが、日本の防衛専門家の間では「核付き統一の可能性は思ったよりも高いのではないか」と懸念する意見がある。

 第一に、6カ国協議に臨むブッシュ米政権の姿勢変化によって、北朝鮮が核を完全放棄せずにあいまいな決着に終わる恐れがにじみ出てきた。

 また米国が進める在韓米軍再編は、効率的な配置と運用を掲げながら、「当事国の責任」を重視するプロセスにほかならないとの指摘もある。

 さらに朴正煕軍事政権時の韓国には「核を持ちたい」との潜在的願望があったが、それが完全に払拭(ふっしょく)された保証はない。

 ただ、これも専門家の見方にすぎない。深刻なのは、「朝鮮半島の核」を想定して、日本の安全保障をどうするのかという政策論議が日本政府部内で繰り広げられた形跡はみられないことだ。現実の変化を見ようとせず、すべてを米国任せにしているためだ。これでは韓国内の「安保不感症」と変わりはない。(久保田るり子、高畑昭男)

:2007:10/03/16:47  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(3)

 おかしなことをすれば、痛い目に遭うと相手に思わせる抑止力が防衛の大原則だ。それが日本では大きく揺らいでいる。

 経済産業省は一昨年夏、防衛産業各社から新たな装備品に関するヒアリングを行った。ある関係者は「東シナ海などの浅い海域で使用できる魚雷を開発したい」と述べたところ、担当官は突然、「大国になりつつある中国を脅威とみているのか」と激高した。「万一に備える防波堤は必要でしょう」と反論し、結局は来年度から研究開発することが決まったが、その関係者は、国を守る意識のない人が防衛力整備を担当していることに愕然(がくぜん)としたという。

 国全体に弛緩(しかん)がみえるが、日本が抑止行動をとって外国による領空侵犯を未然に防止したことがある。

 1996年10月7日、台湾、香港などの活動家は漁船で、日本固有の領土である尖閣諸島海域に侵入し、うち4人が魚釣島に中国と台湾の国旗を立てた。少し前には香港の活動家が近くで水死した。これらに刺激された台湾空軍の元将校らは、2機のヘリコプターで尖閣に侵入して上陸する計画をぶちあげた。

 那覇市に司令部がある航空自衛隊南西航空混成団の佐藤守司令(空将)はこれを知るや、領空侵犯を阻止するため、警戒行動を取ることにした。

 F4ファントム戦闘機で常時、尖閣周辺空域をパトロールさせるには早期警戒管制機E2Cが不可欠だ。E2C5機は非常呼集され、青森県三沢基地から飛来した。19日、F4とE2C延べ29機が飛び立った。

 佐藤司令は中国もにらんでいた。上空6000メートルで待機するE2Cを中国空軍がレーダーでとらえることを確信していた。日本の空の守りが鉄壁と示すチャンスでもあった。

 警戒行動は10日間にわたり、台北管制部が那覇管制部に対し「F4は何をしているのか」と問い詰める一幕もあった。台湾行政院はヘリによる尖閣上空飛行を許可しないと発表した。

 だが、佐藤司令に高揚感はなかった。ヘリが実際に侵入した場合、阻止できたかとなると内情は危うかったからだ。上部機関の航空総隊の指示は「武器は一切使うな」「ヘリに近づきすぎるな」だった。
対領空侵犯措置とは、領空侵犯した航空機に対し、緊急発進した戦闘機が、着陸か退去させるために必要な措置を取ることだ。場合によっては侵犯機の進路を妨害したり、前方に曳光(えいこう)弾を撃つなどしなければならない。それが許されないのでは必要な任務は遂行できない。無防備は犠牲者すら出かねない。

 「警告射撃するなとはどういうことか」。佐藤司令が声を荒らげると、総隊は首相官邸の意向と説明したという。当時の橋本龍太郎首相は7月に靖国神社を参拝し、中国から猛烈な抗議を受けていた。

 結局、佐藤司令は航空幕僚長と粛々と行うことを確認し、規定通りの措置を取ったものの、主権侵害行為阻止という当たり前の行動を実施することがいかに難しいかを痛感した。

 「毅然(きぜん)とした対応をしなければ、不法な侵害を逆に呼び込んでしまいかねない」。退官した佐藤氏は、抑止力という国の心棒の重要性を訴え続けている。

 

 

 

無力さは見透かされていた

 

 北朝鮮工作員による拉致事件も、日本の抑止力が機能していないことを見透かされたことが大きい。

 本紙ソウル支局の久保田るり子特派員が北朝鮮の幹部工作員だった金東赫氏を取材、編集した「金日成の秘密教示」(2004年発行)によると、金日成は「日本は迂回(うかい)工作を拡大することのできる『黄金の漁場』なのだ」(1983年、対南工作員らとの談話)と、日本の弱さをつく工作を求めた。

 以下は1969年、三号庁舎拡大幹部会議での教示である。

 「興味深い対象国は日本だ。日本は過去36年間、わが国を植民地として支配し略奪した罪のため、わが共和国に対して力を行使できない」

 「日本は国内法上、スパイ防止法や反国家行為に対する法的・制度的規制措置がない。日本を舞台に活動して発見されても外国人登録法や出入国管理法違反などの軽い処罰にしかならない」

 「必要なら日本人を包摂工作し拉致工作もすることができるのだ」

 金日成が「力を行使できない」と見た通り、自衛隊は領土や領海を不法に侵害する行為を排除する規定をもっていない。
外国の武装部隊の不法行為を排除する強制措置は、国際法上、正規の武装部隊が受け持つのが世界の常識だが、日本だけが違うのである。

 排除規定があるのは領空侵犯だけだ。自衛隊法84条に基づく対領空侵犯措置は、侵犯機に対し、着陸や退去のための「必要な措置」を講じるとしているが、肝心の武器使用基準はあいまいだ。

 これは本格的な武力行使となる防衛出動以外の武器使用は、相手の攻撃の程度に応じた反撃しか許されない「警察比例の原則」が適用されているからだ。パイロットが武器を使用できるのは正当防衛・緊急避難に限られる。相手の攻撃を待って、対処するしかないことが、いかに過重な負担を最前線の隊員に強いていることか。

 このことを自衛隊員は身にしみて感じているからこそ、相手につけこまれないような精強な組織を作り上げるのだという。

 陸上自衛隊イラク復興支援群長だった、番匠幸一郎陸将補(幹部候補生学校長)は帰国した直後の2004年夏、こう語った。

 「自分たちが脇をしっかり締めて、われわれを襲ったら痛い目に遭うぞ、という構えをしっかりみせることが重要だという態度で臨んだ」

 こうした奇っ怪な防衛の現実を見直すべきだとする超党派の「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」(武見敬三代表世話人)は2001年末に設立されて以来、専守防衛の考え方の再構築や安全保障法制の再検討が急務だ、などと訴えてきた。

 民主党内でも、細野豪志長島昭久両氏によって、「武器使用基準をめぐっては任務防護を含む『マイナー自衛権』(注)を認め、国際基準に合わせるよう政府解釈を変更すべきだ」とする報告が、2004年12月の領土及び海洋権益プロジェクトチームで了承された。

 ただこれらは問題提起にとどまっている。日本の領土、領海、領空を守るための実効的な法整備は据え置かれたままだ。抑止力が機能しているかどうかを試される事態は悪夢であることを、日本人は拉致事件で気が付いたのではなかったか。(中静敬一郎

 

 

【用語解説】マイナー自衛権

 部隊などが任務遂行にあたって行使する自衛権。「部隊自衛」ともいわれ、国際社会が認める平時の自衛の概念である。

:2007:10/03/16:39  ++  【やばいぞ日本】第3部 心棒を欠いている(2)

■「関与すれば南西諸島攻撃」

 日本が北朝鮮の核問題に目を奪われている間に、台湾海峡のパワーバランスが大きく変わりつつある。

 「われわれは台湾独立を阻止するためなら武力行使も辞さない。その際、日本は絶対に関与すべきではない。関与すれば南西諸島を攻撃せざるをえなくなる」。昨年11月、東京で開いた民間団体主催の日中軍事フォーラム(非公開)で、人民解放軍のある将官はこう警告したという。「用意したペーパーにもとづく発言だった」(参加者筋)から、その場限りの脅しではない。南西諸島は九州南端から台湾近くまで続く島々だ。

 中国は10年以上前から台湾の武力統一を想定した準備を進めてきたのである。

 中国軍は1995年夏から翌春にかけて、台湾近海へのミサイル発射や上陸演習で台湾を威嚇した。しかし米国が空母2隻を派遣したため、演習中断を余儀なくされる屈辱を味わった。

 中国軍の動向を注視してきた自衛隊の退役将官によると、中国はそれ以来、台湾侵攻に対する米軍介入を阻む目的で南西諸島から小笠原諸島に至る海域での海洋調査を本格化させた。

 在日米軍が台湾防衛のため南下し、日本が米軍の後方支援に動いた場合、中国軍は南西諸島を占領、「機雷の敷設や潜水艦による待ち伏せ攻撃によって日米の台湾支援を遮断する狙いから」(退役将官)とみられる。

 あわせて台湾上陸の拠点を確保する。「台湾本島への侵攻には東からの正面攻撃と背後(西側)からの挟撃作戦が想定シナリオ」(台湾軍筋)だ。南西諸島西端の与那国島から、台湾本島まで110キロしかない。
先の将官発言は、こうした中国の軍事統一作戦の準備に一定の手応えを得たうえでの日米分断策と受け取れる。

 台北市街北端、松山飛行場の北側に「衡山指揮所」と呼ばれる軍の秘密基地がある。核攻撃に耐えられる地下要塞(ようさい)で、中国軍の攻撃時には総統をはじめとする政府・軍首脳が立てこもる作戦本部となる。内部は光ファイバーの通信網が縦横に走り、中国軍の侵攻時は超大型液晶スクリーンを通じて敵の動向を一望できるハイテク装備が満載されているという。ハワイの米太平洋軍司令部ともホットラインで結ばれた台湾防衛の中枢だ。

 ところがこのハイテク基地が「網軍」と呼ばれる中国のハッカー攻撃に振り回されている。台湾軍は衡山指揮所を中心に中国軍の侵攻に備えた軍事演習や情報戦の演習を毎年行っている。しかし、近年はその内容が網軍に根こそぎ盗まれ、システムが破壊されるなどの重大事件が頻発している。台湾軍は中国軍に装備や作戦システムの質的優位で対抗してきたが、この面でも次第に怪しくなってきたわけだ。

 中国軍の台湾侵攻は通信システム網の攪乱(かくらん)、破壊から始まり、ミサイル攻撃、上陸作戦に進むとみられている。しかし現状では緒戦の情報・心理戦で、台湾が大きな痛手を負う懸念が強まってきた。

 危機感を強める陳水扁政権は、「北京五輪までは中国も台湾を攻撃できない」とみて独立志向の動きを加速させている。

 陳総統は来春の総統選挙にあわせて台湾の名義による国連加盟の是非を問う住民投票を計画、中国はこれを「台湾独立の動き」と激しく反発している。お互いが相手の意思を読み違えると、台湾有事はいつ起きても不思議ではない。それは日本有事の事態でもある。
■米中のはざまで思考停止

 台湾が来春の総統選挙と住民投票を無事乗り越えたとしても、その後はさらに多難だ。中国軍の戦力が台湾軍を大きく引き離し始める2010年以降は戦争の危険がさらに増す可能性が大きい。

 中国は2000年から台湾に武力行使するケースの一つとして、「台湾当局が(中台)統一に向けた平和交渉を無期限に拒否する場合」を掲げ始めた。さらに05年3月には武力行使を合法化する「反国家分裂法」を制定、中国が国家分裂行為とみなす行為に対してはいつでも台湾を攻撃できる態勢を敷いた。中台戦争が勃発(ぼっぱつ)し、米軍が台湾支援に動き、日本が米軍の後方支援に回れば、日米中台を巻き込む大戦争にエスカレートする恐れがある。

 ところがこれほど重大な問題を前にしながら、日本国内は奇妙な沈黙に包まれている。「台湾問題は中国の内政問題であり、外国の介入は許さない」という中国の強硬な姿勢に圧倒されてか、政官各界は思考停止状態に陥っている。

 しかし、日本はこの難題の部外者では到底ありえない。台湾が一方的に独立宣言した場合を除き、中国が台湾武力統一に動けば、米国は台湾の安全への「重大な関心」を明記した台湾関係法に基づいて、台湾支援に乗り出すことはまず間違いない。

 在日米軍が動けば中国軍は沖縄や本土の米軍基地をミサイル攻撃するだろうし、日本が周辺事態法に基づいて米軍を後方支援すれば中国との交戦状態に入ることも避けられない。

 かといって日本が米軍支援を拒めば日米同盟は直ちに崩壊する。中国が台湾統一に成功すれば、日本のシーレーンは中国に抑えられ、東シナ海は中国の内海と化す。もちろん尖閣諸島も保てない。
日本は台湾問題の重大性を直視し、自国の安全保障と地域の平和維持のために米中両国や台湾との対話、連携を強化すべき時を迎えている。しかし、現状はお寒い限りである。

 まず台湾有事に日米がどう備えるかについて両国外交、防衛当局の協議がほとんどなされていない。「米軍は中国の潜水艦対策で日本の支援を望んでいるはずだが、情報漏れを恐れてか何も言ってこない」(自衛隊筋)

 台湾は現役の軍人を日本に常駐させて防衛省、自衛隊との接触を働きかけているが、中国を刺激することを恐れる日本側の固い壁に阻まれている。米国は現役武官を台北に常駐させ、米台の軍事交流も活発だが、日本は蚊帳の外だ。日本にとって台湾有事はまさに「出たとこ勝負」(退役将官)の状態にある。

 一つの明るい材料は8月末の曹剛川・中国国防相の訪日で、日中が不測の事態回避に向けて防衛当局間のホットライン開設に原則合意したことだ。

 日本は東シナ海や台湾海峡の危機回避のために中国との信頼醸成に努める一方で、米台との安保対話や連携を強めるべきだろう。これからアジア太平洋地域の覇権をめぐる米中のパワーゲームがさらに先鋭化する。そのはざまで、日本には両大国にはできない独自の役割があるはずだ。(山本勲)

:2007:10/03/16:32  ++  【正論】新内閣へ 聖学院大学・大学院教授・真野輝彦

■首相交代と格差問題

 ■格差の原因と内容の検証が不可欠

 ≪実質の比較で格差論議を≫

 安倍首相の突然の辞任を受け、福田元官房長官が後任首相に選出された。自民党内の首相交代であり、基本的内外政策が大きく変わることはなかろうし、日本の財政がばら撒(ま)き政策を許す余裕がないことはいうまでもない。しかし個別問題では軌道修正も行われよう。特に参院選の敗北の原因と指摘されている格差問題に、新首相がどのように対応するかが注目される。9月7日、厚生労働省は都道府県別最低賃金の改定状況を発表した。格差問題の一つの具体例として、この最低賃金の県別格差を考えたい。

 最低賃金は、雇用の形態を問わず、すべての労働者の最低限度の賃金(時給)である。今年の引き上げ額は、全国平均で14円と前年の5円に比べ大幅なアップとなり、全国平均は687円となった。都道府県別の上げ幅は7~20円で、絶対額では最も高い東京都が739円、最も低い秋田、沖縄県は618円である。この差を都市と地方の格差拡大問題と結びつける論評が多いようだが、注意すべき点を4点指摘したい。

 第1は、名目賃金と実質的の違いである。生活コストの比較には、日常生活に必要な消費者物価とともに都市圏と地方で大きな逆格差がある土地、住宅などストックの購買力を調整する必要がある。因みに、8月1日に発表された県別路線価では、東京の17・1%上昇に対し、秋田は7・9%下落している。同じ円給与をもらっても、地方ほどいわば円高地域であり、実質購買力は大きいのである。老齢化が進む中で安い住居費、交通戦争が少ない地方の安全性、きれいな空気などをどう評価するかも考慮する必要がある。

 加えて、地方ほど1人当たりの国からの補助金は大きいことである。地方分権問題に関連し、交付税削減や税財源の地方への移転などが変更されたが、これらの移転を調整した後の比較が不可欠である。最近、ふるさと納税(都市部の住民などが自分の出身地に納税すること)問題が浮上しているが、所得から地方税など差し引いた実質可処分所得の比較が大切である。

 ≪政・官・民格差をなくせ≫

 第2は、給与の政・官・民格差である。バブルの崩壊や国際競争の激化もあり、ボーナスを含む民間給与は、この10年減少している。一方、中央、地方を問わず政・官の給与の調整は極めて小さい。しかも公務員は定年まで雇用保障が確保されているのである。年金のずさんな処理の背景には、新しい仕事をするには定員増が必要という民間ではあり得ない公務員意識が存在した。また民間では50歳前後になると雇用契約が見直され通常給与は減少するのだが、官では依然年功序列が続いている。

 政治家の不正経理問題が頻発しているが、民間と同じ収入と支出の透明化は当然のことである。支出を公表できない正当な政治活動などあり得ない。政・官改革が進まないことが、日本全体の生産性向上の足を引っぱっている。民との格差は当然という政・官の意識改革が不可欠である。

 ≪グローバルな視点で把握を≫

 第3は、賃金に関するもうひとつの法規制である残業時間限度の問題である。いわゆるサービス残業問題が後を絶つどころかむしろ増加しているのが現状である。終身雇用制の要素が残る企業ほど、この傾向が強いようである。パートタイマーなどの非正規雇用者比率が上昇している背景には、社会保障などの法律で決められた企業負担の回避がある。経営者が国際競争力劣化を避けるためコストを構成する通常賃金と残業料の圧縮を図ることは当然だが、法律に従い、支払うべきものを支払い、利益を極大化することが経営責任である。多くの提言を出している経済団体が、自らの問題を放置しているのは残念なことである。

 第4は、日本の格差は国際比較では極めて小さいことである。OECDが発表した20カ国(1995~2005年)の所得格差を見ると、日本の格差は米国、韓国、カナダ、スペイン、英国などより下に位置するのである。極めて小さいのである。平等が旗印である社会主義国、中国の巨大な格差とは比較すべくもない。

 福田首相は「希望と安心」の旗印を掲げたが、希望も安心も国の安全保障が大前提である。ミサイルが日本に撃ち込まれれば、年金問題どころではなくなる。日米関係と安全保障問題は憲法改正問題に繋(つな)がる。日本の財政状態が先進国中最悪なことを忘れず、グローバルな視点で、格差の原因は何かを正確に把握し、対策を実施することが新総理の責務である。(まの てるひこ)

:2007:10/02/14:42  ++  ヤフー、TV専用サイト、フルハイビジョン対応、高精細に―シャープと技術開発。

ヤフーはインターネットを利用したテレビ向けポータル(玄関)サイトを開設する。フルハイビジョン映像対応の大画面テレビに合わせて高精細な専用コンテンツを用意する。すでにシャープと共同で同社の液晶テレビ「アクオス」向けの技術開発を進めており、今年度中にもサービスを始める。ほかのテレビメーカーの機種にも順次対応していく。二〇〇八年末までに月間百万人の利用者獲得を目指す。
 ヤフーはこれまでも任天堂の家庭用ゲーム機「Wii(ウィー)」やソニーのテレビ向けに、検索やオークションなどの一部サービスを提供してきたが、テレビポータルへの本格参入は初めて。
 共同開発するのは高画質のフルハイビジョン映像に対応した大画面テレビ向け表示技術。これまでのテレビポータルが採用している閲覧ソフトに比べ約四倍高い解像度でコンテンツを表示できる。従来よりも高精細な静止画や文字のコンテンツを配信。地図上の地名や道路などの情報がより詳細に見やすくなる。
 開始当初のサービスは、地図やグルメ情報、書籍の売り上げランキングなど、静止画と文字による情報提供が中心。利用者の動向を見ながら、映像配信や利用者のコミュニティー参加を促すサービスも順次投入する。
 利用者がリモコンをほとんど使わずに「ながら」で閲覧できるよう自動で情報が切り替わる仕組みや、各情報に合わせたBGMを配信するなど、既存のパソコン向けポータルとは違う切り口での情報提供に取り組む。
 テレビポータルはソニーや松下電器産業、シャープなどテレビ大手五社の共同出資会社であるアクトビラ(東京・港)が二月にサービスを開始。NTTコミュニケーションズは「DoTV(ドゥー・ティー・ビー)」というサービスを手掛けている。ヤフーは、パソコン向けに提供している豊富なサービスとの連携を軸に優位性を打ち出し、利用者増につなげる。
 放送波経由とネット経由の両方のコンテンツを見るテレビの利用形態が徐々に広がるなか、テレビ向けのネットサービスの競争は今後、業界の垣根を越えて本格化しそう。シャープのテレビは今後アクトビラやヤフーなど複数のポータルを選べるようになり、人気の高低が明らかになる。一方アクトビラは九月にビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスを開始。ネット経由でもテレビを動画視聴に使ってもらおうとの戦略を打ち出した。
 ただ、ヤフーのテレビ向け新サービスやアクトビラは公式コンテンツしか見られず一般のウェブサイトは見られない仕組み。一方でWiiや「プレイステーション3(PS3)」を使えば一般ウェブサイトをテレビ画面で見られる。
 消費者がネット本来の自由度や利便性をテレビ画面上でも求めるのか、あるいはテレビ向けにはあくまで「テレビ的な」コンテンツだけで満足するのか。消費者動向によっても競争の構図は変化しそう。いずれにしても消費者の選択肢は着実に増えることになる

:2007:10/02/14:37  ++  第1部きしみを越えて(2)ライバルが同僚に(働くニホン現場発)

M&A 職をリセット
 九月三日午前十時前、松坂屋名古屋店。店長の本多洋治(58)は朝礼で社員に語りかけた。「私は特別な人間でも怖い人間でもありません。気軽に声をかけてください」。本多は前日まで大丸の神戸店長だった。
 同時刻、大阪市の大丸心斎橋店。朝礼で「皆さんの意見をどんどん聞かせてください」と呼びかけたのは店長の熊木敏(54)。松坂屋から転じたばかりだ。
 この日経営統合した大丸と松坂屋は、主要店の店長や管理職を大幅に入れ替えた。特に本多の責任は重い。名古屋店の売り上げは松坂屋単体の五割弱。大丸会長の奥田務(67)には「業績を落としたら、あかんぞ」と厳命された。
 だが競合他社から店長を迎える社員の心理は複雑だ。両社は仕事の進め方や店で使う用語も違う。本多はこの日、社員食堂を「喜左場(きざば)」と呼ぶ松坂屋の符丁を初めて聞いた。大丸では「玉(ぎょく)」と呼ぶ。松坂屋三百九十六年、大丸二百九十年。歴史を交差させるのは容易でない。
突然の解雇通知
 それでも摩擦やあつれきを覚悟で職場の融合に踏み切った。社員が互いの長所を吸収しなければ、会社も相乗効果を生み出せない。日本企業が乗り越えなければならないM&A(合併・買収)の難所だ。
 会社と社員が目指す方向が一致するとは限らない。中堅容器メーカー、旧三陽パックスの営業部長だった宮川弘(仮名、58)はM&Aを機に職場を追われた。
 二〇〇一年、同社は米容器大手ソロカップ社に買収された。米本社が送り込んだ社長は、利益率の高い製品の販売に注力せよ、と号令をかける。だが宮川は長年、取引先の食品会社に紙容器やストローなど多様な製品を納めてきた。急に「利益率の高い製品だけ買ってくれ」とは言えない。
 宮川は〇五年冬、部下七人とともに都内のホテルで米本社のトップに会い、「現社長の下では営業が立ちゆかなくなる」と訴えた。だが一カ月後、宮川は九州転勤を言い渡される。断ると「日本法人の社長を無視し、若手を扇動した」として懲戒解雇処分を受けた。宮川は不服として裁判を起こし、和解の末に退職。今はライバル会社に籍を置く。
 逆に会社が買われて社員が救われることもある。
 「なぜオレたちの事業を売るんだ」。旧カネボウで事業売却に奔走した平川功(52)は、同僚から詰め寄られた場面を思い出す。
 旧カネボウは〇四年、当時の産業再生機構の支援を仰いだ。企画部門を歩み、経営状況を熟知していた平川は「会社をつぶしても事業は残し雇用を守る」という機構の姿勢に共鳴。三十件を超す事業や工場の売却にかかわった。
 今夏、百二十年の歴史を閉じた旧カネボウの清算会社を退職。事業売却先の会社を訪問すると、かつて平川をなじった同僚から「お疲れさま」「ありがとう」と声をかけられた。再生機構の元専務、冨山和彦(47)も「我々は支援先の多くで“解放軍”として迎えられた」と振り返る。
いわば強制転職
 旧カネボウは従業員を「社員」と呼んだ日本初の会社といわれる。「パートタイマー」を初めて採用したのは大丸だ。職場の基本型をつくった二つの会社で働く形が一変する。それが時代の転換点に立つ「働くニホン」の現実だ。
 M&Aで職場がリセットされると「ウチの会社」だけでなく、昨日まで競争していた会社の尺度でも一人ひとりが器量を測られる。M&Aはいわば「強制転職」。避けようがないのなら、自分の働き方を見つめ直す好機にするしかない。
 M&Aは職場の数だけある。ぶつかり、悩み、認め合う。市場の風にさらされた一人ひとりがもたれ合いではない関係を築き、これまでにない価値を生む。日本の会社は二百五十八万社。新しい「働くニホン」をつくる動きが至る所で芽を吹き始めた。=敬称略
(「働くニホン」取材班)

:2007:10/02/14:33  ++  民営化初日のきのう、家の近所の小さな郵便局を何カ所か訪ねてみた(春秋)

民営化初日のきのう、家の近所の小さな郵便局を何カ所か訪ねてみた。局長は地元の名士、家業のように続いてきた元特定局である。心機一転、さぞ張り切っているかと思いきやそうでもない。入り口の「JP」マークだけが鮮やかだ。
▼ある局ではいらっしゃいませの声もなく、別の局でははがきを買うのに十分ほど待たされた。巨大組織だから急には変われまい。しかしこんな些(さ)細(さい)なことから変えていかないと民間企業の名が泣こう。日本郵政はこれから郵便局を「お店」と呼ぶらしいが、そう気持ちを切り替えた店員さんがどれだけいることか。
▼福田首相も国会の所信表明演説で民営化に触れたものの、ほんのひと言だった。それも「利用者の方に不便をおかけしないよう、着実に推進します」と妙に慎重な言い回しだ。あちこちに配慮したせいかもしれないが、改革は始まったばかりなのだからもう少し勢いがほしい。歴史的な節目だという気概がほしい。
▼あまり知られていないが、「官から民へ」を象徴するのが郵政監察官の廃止だ。司法警察権を持ち、身内の不始末を調べてきた職員が法令順守部門などに移った。新会社の規律を守らせる役回りだ。もっとも、本当の監視役は利用者だろう。古いお役所体質が温存されはしないか、しっかりと目を凝らしていたい。

:2007:10/02/14:22  ++  【正論】新内閣へ 評論家・西尾幹二 米国の仕組む米中経済同盟

■両大国の露骨な利己主義に日本は… 

 ≪王手をかけられかねぬ危機≫

 今回の政変を私は「日米軍事同盟」と「米中経済同盟」の矛盾と衝突の図とみている。安倍前首相は憲法改正を掲げたが、9条の見直しがなぜ国民の生死の問題にかかわるかをテレビの前などで切々と訴えたことがあっただろうか。米国の核の傘はすでにして今はもうないに等しいのだ、と果たして言ったか。日本海に中国の軍港ができたらどうするつもりか、諸君、考えたことはないのか、と声をあげたか。この2つの危機はすでに今の現実である。

 テロ支援国家との2国間協議は絶対にしないと言っていたブッシュ米政権が、北朝鮮と話し合いを開始した。そして国連の制裁決議をさえも無視した。これが同盟国日本に対する裏切りであることは間違いない。中国の北朝鮮制裁も口だけで、金正日にカネを払って鉱山開発権を手に入れ、ロジン、ソンボンという日本海の出口の港湾改修工事を中国の手でやり始めた。ここに中国の軍港ができて、核ミサイルを積んだ潜水艦が出入りするようになったら、わが国は王手がかかってしまったも同然である。

 日本海が米中対決の場になることを避けるためにも、米国は北朝鮮を取り込む必要がある。ブッシュ氏に安倍氏はシドニーの日米会談でずばりそう言われたかもしれない。「お前のやっている対北制裁一本槍(やり)では中国にしてやられるぞ」と。無論私の単なる推測である。ただそういう風にでも考えないと、米国の政策転換はあまりに理性を欠いた、利己主義でありすぎる。

 北朝鮮のほうが米国にすり寄りたい現実もある。北が一番嫌いで恐れているのは中国である。「韓国以上に親密な米国のパートナーになる」とブッシュ氏に伝えた金正日の謀略めいた(しかし半ばは本心の)メッセージがある(『産経新聞』8月10日付)。とはいえ中国も米国がイラクで泥沼にはまっている間に着々と台湾にも、朝鮮半島にも手を打っている。半島の南北首脳会談の開催はどうみても、中国の差し金である。

 韓国大統領選は現時点では民主主義の側に立つ野党ハンナラ党の候補が優位にある。それをくつがえすための南北会談である。盧武鉉韓国大統領は北朝鮮に全面譲歩し、南が北にのみこまれる統一を目指している。それでもハンナラ党の優位が崩れないなら、同党候補が北の手で暗殺される可能性があるという。韓国の法律では投票日の15日前を過ぎて候補者が死亡した場合には、新しい候補者は立てられないことになっているそうである。

 すさまじく激烈な半島情勢である。日米にとっても、中国にとっても、半島を相手側に渡せない瀬戸際である。ひょっとしたら日本は米国の本格的な援(たす)けなしで、独力でこの瀬戸際を乗り越えなければならないのかもしれない。

 安倍前首相がまるでヒステリーの子供が「もういや」と手荷物を投げ出すように政権をほうり出したのは、自分ではもうここを乗り越えることはできないという意思表示だったのかもしれない。

 ≪徹底的な中国庇護策≫

 他方、経済問題における米国の日本と中国に対する対応の仕方は、歴史を振り返ると、正反対といえるほどに異なっている。戦後日本が外貨を稼ぐ国になると、米国は一貫して円高政策を推進して、わが国輸出産業を潰(つぶ)しにかかった。1985年のプラザ合意は露骨なまでの日本叩(たた)きだったが、日本の企業が負けなかったのはなお記憶に新しい。

 ところが米国は中国に対しては完全に逆の対応をしている。1994年から2006年までの12年もの長期にわたり元は1ドル約8元という元安のまま変動させない。2001年から中国の外貨準備高は上昇し始め、昨年日本を追い越した。徹底的な中国庇護(ひご)政策である。

 それもそのはずである。中国で工場生産して外国に輸出している企業は中国の企業ではなく、米国の企業だからである。米国への輸出企業のトップ10社のうち7社は米国の企業である。

 経済は国境を越えグローバルになったという浮いた話ではなく、完璧(かんぺき)な米国のナショナルエゴイズムである。このことは他方、米国の30分の1で生産できる中国の労働力に米国経済が構造的に支配され、自由を失っていることを意味する。

 軍事的超大国の米国はそれでも中国が怖くはないが、以上の米中の関係は日本にとっては危険で、恐ろしい。福田政権が国益を見失い、軍事的にも経済的にも米中の利己主義に翻弄(ほんろう)されつづける可能性を暗示している。(にしお かんじ)

:2007:10/02/14:17  ++  【主張】所信表明演説 希望と安心へ道筋見えぬ

厳しい政治状況を踏まえながら国民や野党に低姿勢で臨み、急場をしのいでいく。福田康夫首相の初の所信表明演説からは、そんなねらいが濃厚に漂う。

 年金記録や政治資金の問題が政治不信を増大させ、参院選大敗を招いたと率直にわびる姿勢はよい。衆参のねじれ現象を踏まえ、国民生活を守るために野党と積極的に話し合うというのも妥当な考えだ。

 ただ、この国をどうしたいのか、肝心の柱が見あたらない。勇ましくこぶしを振り上げる必要はない。それは首相の流儀でもなかろう。しかし、国民に希望と安心を与えるというなら、進路を示すことが先決である。

 安倍晋三前首相が「主張する外交」を唱えたのに対し、福田首相は「平和を生み出す外交」を掲げた。

 日米同盟が外交の基本や要であると繰り返し、世界の平和構築のために「国力にふさわしい責任」を果たす必要性を強調した。単なる「親中派」ではなく、対米関係にも自分なりの自信があるという思いの表れだろう。

 その文脈で、インド洋での海上自衛隊による補給活動の延長を緊急の課題と位置づけたのは当然だが、今国会で必ず新法を制定するという決意も聞きたかった。

 さらなる国際貢献には自衛隊の力を生かすことが不可欠で、憲法問題を直視する必要がある。しかし、改正はもとより集団的自衛権行使をめぐる解釈変更の問題への言及はなかった。

 国際社会が懸念するミャンマー情勢について、邦人ジャーナリストの死亡に遺憾の意は示したが、「成長著しいアジアが脆弱(ぜいじゃく)性も抱えている」ことの事例として片付けた。僧侶や外国人ジャーナリストを標的にするような軍政に懸念も示さないのでは、外交のスローガンが泣くというものだろう。

 内政面では、2011年度に基礎的財政収支黒字化を確実に達成する財政再建目標を確認した。前政権は成長力強化をうたったが、福田首相は「安定した成長」と微妙に修正した。社会保障の安定的財源の確保には、税の自然増収ではなく消費税増税が避けられないと判断しているためとみられる。

 年金制度や抜本的な税制改正について、与野党協議機関の創設など具体的行動を起こすときだ。

:2007:10/02/14:10  ++  南北首脳7年ぶり握手、金総書記が韓国大統領出迎え

【ソウル=山口真典】韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は2日午前、金正日総書記との南北首脳会談に臨むため陸路で北朝鮮入りした。金総書記は平壌市内の歓迎式典会場「4.25文化会館」で大統領を出迎えた。南北首脳が笑顔で抱き合った前回とは異なり、両首脳は落ち着いた様子で対面。4日までの盧大統領の滞在中、両首脳は2回以上会談して朝鮮半島の平和体制構築や経済協力拡大などを議論する見通しだ。

 韓国大統領の訪朝は金大中大統領(当時)以来7年ぶり2回目。首脳会談の行方は核問題を巡る6カ国協議や日朝関係など東アジア情勢にも影響を与えることになる。

 北朝鮮は歓迎式典の会場を直前に変更。盧大統領は人民文化宮殿で待ち受けた金永南最高人民会議常任委員長と共に北朝鮮が用意したオープンカーに乗り換え、金総書記が待つ4.25文化会館に向かった。沿道では北朝鮮の市民らが花束を振り「万歳」「祖国統一」などと叫んだ。(13:49)

:2007:10/02/12:24  ++  「ネットを活用し新聞を断固維持」--戦略を模索する日経、朝日、読売が提携

UPDATE 日本経済新聞社、朝日新聞社、読売新聞グループ本社の3社は10月1日、インターネット分野の共同事業と新聞販売事業に関する提携を発表した。インターネット事業に関しては、同日に合意書も取り交わされた。

 3社は今後、共同で民法上の組合を設立する。事業費は数億円程度で、3社が均等に負担する。同組合では2008年はじめをめどに、3社が提供するニュースや社説などを読み比べできる新しいニュースサイトを開設する予定だ。

 サイトの詳細について現時点では明らかにされなかったが、新サイトでは各社の社説や記事を読み比べできるようになるという。また、記事の概要のみを公開し、詳細については各社がすでに運営しているサイト、「NIKKEI NET」「Asahi.com」「YOMIURI ONLINE」に誘導する仕組みになるという。利用は基本無料で、広告での収益により、設立3年での黒字化を目指す。各社が現在ヤフーなどのポータルサイトに記事を販売しているニュースについては、現時点では配信を中止する考えはないという。

 また、3社は新聞の販売事業での業務提携を行う。すでに朝日新聞社と読売新聞グループ本社は販売の乗り入れを北海道の山間部にて試験的に実施しているが、それを全国規模に広げていきたい考え。

 さらに、災害時の新聞発行についても協力体制をとる。通常、新聞社は災害時に備えてバックアップのシステム用意しているが、今後は紙面制作や印刷の代行、輸送の支援などを相互に行う予定。今後、2008年3月までに正式な協定を結ぶ。

 「ネットを活用して新聞を断固維持していく」――10月1日に都内で開催された会見で読売新聞代表取締役社長の内山斉氏はこう語った。

 先日、マイクロソフトと提携し、MSN産経ニュースの提供を発表した産経新聞グループでは「ウェブファースト」を標語に掲げてウェブと紙媒体の編集を統合する姿勢を打ち出したが、今回の発表はあくまで紙媒体の販路拡大のためにウェブを利用するという姿勢だ。

 日経新聞社代表取締役社長の杉田亮毅氏は、現在インターネットで数多くのニュースが公開されているが、新聞社の記者が書いたニュースが圧倒的に多いと主張。「ネットに新聞が負けるのではないかと言われるが、我々としてはネットにおける役割が大きいことを示す」と語る。杉田氏は新聞社がネット上でニュースを配信することにより、新聞への信頼、期待を高め新聞の購入につなげる「Paper with IT」というスローガンに掲げる。今後はそのスローガンを3社で推し進めたい考えだ。さらに、今回の提携については「新聞のポリティー(政治性)の維持、販売網の維持という2つの要素のための提携である」と意図を説明した。

 「若者の活字離れ」が取りざたされ、ニュースをネット上だけで閲覧するというケースも見られるが、内山氏によると「ネット経由で万単位の新聞申し込みがある」という。「ヤフーのニュースで満足する人もいるだろうがそれはそれでよい。だが3社でないとできないものを作るので、それを見て(ウェブで見られる概要だけでなく)フルの情報を欲しいと思う人たちも出てくる」(杉田氏)と期待を寄せる。

 販売については朝日新聞社と読売新聞グループの提携を拡大する形で進めていく。まずは年内に大阪西部で実施する予定で、2008年には鹿児島県をモデル地域として販売事業の乗り入れを進める予定だ。朝日新聞社代表取締役社長の秋山耿太郎氏も、都市部に人口が集中し、山間部をはじめとした地域で人口減少や高齢化が進んだことを説明、「配達網あっての日本の新聞」と重要性を説いた。地方では他社が併売していることの多い日経新聞社については「各社独自の販売サイクルを重視する。現在の取引の基本方針は変えない」(杉田氏)とし、長いスパンでの協力体制を検討していく。

 今回発表された提携は3社によるものだが、賛同する新聞社が出てきた場合、ネット事業、販売事業ともに「検討させていただく」(杉田氏)とした。

 すでにポータルサイトでさまざまな媒体のニュースが見られる中で、3社のニュースに限定したサイトを立ち上げる意味があるかという懸念もあるが、「中身次第。どうすればよりよいものができるのか、若い世代の人たちに考えてもらっているので楽しみに待って頂きたい」(秋山氏)。

提携を発表した朝日新聞社代表取締役社長の秋山耿太郎氏(左)、日経新聞社代表取締役社長の杉田亮毅氏(中)、読売新聞代表取締役社長の内山斉氏(右)
提携を発表した朝日新聞社代表取締役社長の秋山耿太郎氏(左)、日経新聞社代表取締役社長の杉田亮毅氏(中)、読売新聞代表取締役社長の内山斉氏(右)

:2007:10/01/14:16  ++  社員が感じる働きがいは、賃金より「自分の成長」、46%最多、出世、わずか5%。

賃金や出世より自分の成長――。「あなたが働きがいを感じる要素は何ですか」(複数回答)と聞いたところ、「自分の成長」と答えた人が四六%と最も多かった。企業が人事制度上重視している「賃金」は三一%で七番目だった。社員の意欲を引き出す手段は、目に見える「対価」だけではないようだ。
 二番目に多かったのは「達成感」(四三%)。以下「職場への貢献」「社会への貢献」「顧客からの評価」と続き、上位には数値で示しにくい項目が目立つ。「会社や組織の業績」は二三%と「賃金」より下。「出世」は五%しかいなかった。

:2007:10/01/14:12  ++  働きがい再設計課題に、社員「仕事増えた」過半、本社ネット調査(働くニホン現場発)

「働くニホン」取材班が連載開始に合わせて働く男女約三千四百人に聞いたところ、五割強の人が「仕事が増えている」と答えた。働く意欲については三二%が「低下」とする一方、二三%が「向上」と回答、人によって差が大きいことが分かった。個人と企業の双方にとって「働きがいの再設計」が課題になっている。(1面参照)
=調査の詳細を日経ネットPLUS(http://netplus.nikkei.co.jp)に
 「二―三年前に比べ仕事量は増えているか」と聞いたところ、「大幅に増加」「少し増加」が計五二%に達した。「変わらない」は二八%、「少し減少」「大幅に減少」は計二〇%にとどまり、景気拡大や人員スリム化に伴い、一人ひとりの負担感が高まっている。
 しかし働く意欲が同じように高まってるわけではない。「二―三年前に比べ意欲は高まっているか」と聞いたところ三人に一人が「低下している」(三二%)と答えた。一方「高まっている」も二三%あり、人によって差がある。仕事が原因で「精神の健康を害したことがあるか」という質問には五人に一人が「ある」と回答。持続的成長を目指す企業にとって、社員のやる気をどう引き出すかが重要な経営課題になっている。
 一方、管理職に限定して負荷を聞くと、二―三年前に比べ「非常に高まっている」「高まっている」が計五六%に達した。理由としては「仕事自体が増加」(五七%)「人員が減少」(四六%)「プレイングマネジャーとして管理以外の仕事を任される」(四六%)が多い。一九九〇年代以降の業績回復過程で管理職の役割が変わり、負担が増しているようだ。
 調査の方法 インターネット調査会社のマイボイスコム(東京・千代田)を通じ八月下旬に実施。日経ネットPLUS会員にメールで呼びかけ、十歳代から六十歳代以上までの男女三千四百五十二人から回答を得た。
【図・写真】企業側にとっては、社員の意欲をどう高めるかが課題になっている