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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2007:07/21/12:01  ++  【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(4)「あの貪欲さはもうない」

ニッポン製造業の象徴である半導体産業が、この20年間でいかに凋落(ちょうらく)したかは、下の半導体売上高ランキング世界10傑の比較表をみていただければ、一目瞭然(りょうぜん)だ。

 テレビやパソコンなど幅広い分野で使われる半導体、とくにメモリーと呼ばれる分野で、1980年代に世界の頂点に立っていた日本はいまや、世界シェアについても当時の半分以下の25%に落ち込んでいる。この没落の原因は何か。

 「半導体産業の盛衰にまでかかわっているという意識はなかった。とにかく米国の狼藉(ろうぜき)を思いとどまらせ、被害を最小限に抑えることが先決だった」

 日本製半導体の輸出を抑制するため、86年9月に結んだ「日米半導体協定」交渉で、「タフ・ネゴシエーター(手ごわい交渉人)」と呼ばれた元通産審議官、黒田眞(74)=現世界経済情報サービス理事長=はこう述懐する。

 当時、DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)で日本勢の圧倒的な強さに危機感を強めた米国は、日本に外国製半導体の輸入増を求める協定を迫り、貿易摩擦の激化を恐れた日本は受け入れた。

 だが、米国は協定が守られていないとして87年、日本製パソコンなどに100%関税を課す報復措置を決定した。

 その後、日本は米国製品の輸入増に取り組んだ。黒田は今になって「米国が日本の頭を押さえつけた分、韓国や台湾のメーカーが伸びる余地を作った面はあるかもしれない」と語る。

 しかし、日米協定は半導体凋落の序章にすぎなかった。

 低迷の原因はもっと根深いところにあった。日本企業、さらに国家としての産業戦略の不足だ。日本の半導体産業は90年代初頭のバブル崩壊とともに斜陽産業となった。半導体は進化を遂げるごとに設備投資が倍々ペースで膨らんでいく。バブル後の撤退戦を強いられていた当時の経営者は半導体事業を「浮き沈みの大きい金食い虫」と敬遠し、投資を一斉に手控えた。

 時を同じくして、韓国、台湾メーカーの攻勢が始まる。特に財閥系の韓国メーカーは、週末に日本の技術者を呼び寄せて高額な報酬と引き換えにして技術指導を依頼。当時、日本の大手半導体メーカーは金曜日の夜、羽田空港や伊丹空港に「見張り番」をひそかに置いた。週末を利用して韓国メーカーに技術指導に出向く技術者に思いとどまるよう説得するためだ。

 韓国メーカーは日本メーカーのリストラに乗じ、従来の年収の2~3倍という高待遇で日本の技術者を招き入れた。韓国大手メーカーに“転職”した日本人技術者は言う。「待遇面も大きいが、韓国人技術者たちがみな必死でやっていることに感動した。あの貪欲(どんよく)さはもう日本の現場にはない」。巨額投資を武器にした韓国・台湾勢が日本を追い抜くのに時間はかからなかった。

揺らぐ「ものづくり」

 「『WHAT TO MAKE(何を作るか)』で米国に負け、『HOW TO MAKE(どのように作るか)』でアジア勢に負けた」

 50年にわたる日本の半導体産業の栄華と没落を目の当たりにしてきた東芝元副社長の川西剛(78)=現半導体シニア協会長=はこう分析する。

 栄華を極めたDRAMで惨敗した日本メーカーは、家電の心臓部となるシステムLSI(高密度集積回路)に軸足を移した。しかし、LSIは顧客の要望に沿って開発する特注品だ。手堅く稼げるが量の確保が難しく、「開発費がかさむわりに量産効果が出にくい」(NECエレクトロニクス)。最大手の米インテルがパソコン向けMPU(超小型演算処理装置)で8割弱ものシェアを握ったのとは対照的だ。

 欧米には自社の生産設備を持たない「ファブレス」と呼ばれる半導体メーカーが多い。自らは製品の開発や販売などに特化し、生産は台湾などの生産受託会社(ファウンドリー)に任せる仕組みだ。巨額投資のリスクを回避できるうえ、開発スピードも上がる。

 台湾メーカーは中国進出を加速させ、中国も新たなプレーヤーになりつつある。

 一方、日本の研究開発力そのものが低下している、と危惧(きぐ)する声もある。主要な国際学会での日本企業発の採択論文数は長期的に減少傾向にある。「ものづくり」をないがしろにする傾向も否定できない。

 「会社に絶望した」。大手電機メーカーの半導体設計者は最近、半導体とはまったく無縁の機器販売を行う営業職に転じることになった。会社のリストラに伴い、所属していた設計部門が解散したためだ。入社してわずか2~3年。他社への移籍も考えたが、技術者を募集している同業他社はほとんどなかった。

 「より品質が高い製品をより安く」という日本が長い間守ってきた「ものづくり」の伝統は、いま、世界的なコスト競争という壁に突き当たり、大きな転機を迎えつつある。だが、日本の「ものづくり」への取り組みを改めて見つめ直すことこそ、新たな国際競争力を生み出す糧になるのではないかとの指摘もある。

 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、日本の半導体産業が生み出す付加価値は3兆円弱。だが、半導体を使う電子機器などの製造業がもたらす付加価値は32兆円、さらに半導体を組み込んだ電子機器を通じて普及した情報サービスの付加価値は44兆円にのぼる。つまり、半導体産業は約80兆円にのぼる経済効果を支えている。

 日本の半導体産業が揺らげば、日本の産業そのものが揺らぎかねない。

 「まだ悲観することはない」と言う川西だが、「半導体だけでなく、製造業は日本の産業界が誇れる唯一無二の存在。これを失えば日本は滅びる」と警告する。

 =敬称略

 (田端素央)

 

 

関連サイト

(2007/07/19 07:56)

 
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:2007:07/21/11:52  ++  【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(3)「金メダル取るのは当然さ」

中国の大学界で最高峰の北京大学数学科学学院。17歳の1年生、甘文穎が国際数学オリンピック(IMO)大会で金メダルを獲得したのは昨年7月の大会だ。

 「金メダルはほとんど中国からの参加者が取っている。取れなきゃメンツがないよ」。甘の自信は、国家のシステムで特訓を重ねてきたことに裏打ちされていた。

 金メダルへの道は湖北省・武漢の公立高校で始まった。父親は県政府職員。甘は小学生時代、「勉強は嫌いでも数学はできた。ほとんど満点に近かった」。父親は才能を見抜いた。数学オリンピックの新聞記事を読み、甘を湖北省で「数学ナンバーワン」と呼ばれる「武鋼3中」(高校)に入学させる。

 中国では10月に約16万人の高校生が全国高中数学大会(試験)に参加する。国立の中国数学会は上位約150人を選抜した上、翌年1月の中国数学オリンピック(CMO)テストに参加させる。その大部分は大学に無試験入学できる資格を得るほどの英才だ。

 1週間の「数学キャンプ」で25人に絞られ、4月には特訓班「国家集訓隊」へ。ここで2週間に6回のテストを重ね、IMOへのメンバー6人が最終的に決まる。

 代表6人は97年以降のほとんどのIMO大会で、4人以上が金メダルという驚くべき成績を残し、国別総合得点順位もほぼ連覇している。

 90年から参加の日本は過去10年間、昨年の7位が最高だ。

 北京数学学校の趙●(●=木へんに貞)名誉校長は「数学は科学技術だけでなく、人類や文化に及ぼす影響も大きい。数学の人材が広がることで中国の発展に希望が持てる」と強調する。

 確かに、徹底した中国の数学エリート教育は、理科系人材の創出につながっている。

 中国は理科系人材を育成することで、世界の科学技術をリードしたいと考えている。

 特に力を入れている分野の一つが、ソフトウエアだ。日欧米の大学や企業に大量の人材を出して勉強させているほか、中国に海外の有名大学や大手企業の研究所を誘致して、技術獲得と技能アップに余念がない。

 甘も将来、米マサチューセッツ工科大で博士課程に進みたいとのビジョンを描く。

 一方、日本では若い世代の理科離れが深刻さを増している。(野口東秀)

ソフト開発まで外注

 20年前なら、日本の数学者は国際数学オリンピック(IMO)をほとんど気にもしなかった。短時間のうちに器用に問題を解いていく技術を、真の数学の能力と取り違えると、本物の数学者を育てるためにはかえって有害であるからだ。

 だが、今の日本では状況が変わった。「数学への関心を増すという観点から、IMOは有益と言わざるを得ないのではないでしょうか」

 北京大学や上海・復旦大学を訪れた経験を持つ北海道大学大学院准教授で数学者の本多尚文は、そう語る。数学そのものを構築していく本格的な最先端の研究分野で比べると、日本の数学は中国の数学の水準を上回る。しかし、日本の高校生たちの数学への意欲は薄らぐ一方である。

 日本の数学者から見ると、中国の数学は実用重視に偏りがちだ。「学生の間では公式集の丸暗記に力が注がれ、その意味を考えることは二の次です。数学に対する文化がまったく異なっている」と本多は語る。

 「でも中国の学生たちは非常にハングリーでエネルギッシュです」

 中国の大学では、収入増と結びつきやすい理系の人気が高い。

 中国が重視しているのがソフトウエア開発だ。欧米も10年以上前から、注目している。

 米IBMは1995年に中国研究センターを設立。2002年7月には、北京大学や精華大学などの主要6大学の優秀な学生に対して「天才孵化(ふか)計画」(Extreme Blue)をスタートさせた。

 学生を選抜しての英才教育だ。IT人材育成を目的とした中国各地のソフトウエア学院に資金を提供して関係強化を図っている。

 これに対し、日本の若い人たちの理科離れは著しい。慢性的にIT人材が不足するとともに、大学での工学部人気が大きく落ち込んでいる。目的意識を持った学生が集まらない。1995年に約57万人いた志願者が2005年には約33万人に減っている。

 就職でもIT業界への人気が低下している。今の日本の若い世代には「新3K」として敬遠されるのだ。きつい・厳しい・帰れない-のKである。結婚できないのKとされることもある。

 その結果、日本の企業は、インドや中国などの企業へソフト開発委託を加速させている。このままでは日本の自動車や家電製品を支えるソフトウエアの多くが中国やインドで開発されかねない。

 現在、日本のソフトウエアの輸出入状況は、圧倒的に輸入超過で、輸出1に輸入10の比率だ。

 当初は、安い労働力を武器にプログラミングの請負だけだったが、日本のIT人材の不足から、徐々にソフトの設計部分の開発をも発注することになり、中国にその工程をこなせる人材が多くなっている。

 現代は自動車、家電、飛行機などにとどまらず、企業の財務・生産管理に至るまでコンピューターソフトによって制御されるシステム社会だ。

 IT産業がグローバル競争の要である限り、IT人材の育成が国際競争力の鍵を握る。

 NTTデータの山下徹社長は「日本は技術立国をめざしてきたのに、それさえ危うくなっている。海外へのアウトソーシング(外注)によって技術だけでなく、これからの産業の根幹となる重要なソフトウエア開発を外国に委ねてしまう」と警鐘を鳴らす。そこに日本の真の脅威が内包されている。(長辻象平、気仙英郎)

【用語解説】国際数学オリンピック

 世界80カ国ほどから数学に優れた高校生以下の若者が参加する。高校3年生レベルの数学知識で解けるとされるが、思考力や想像力も問う。成績上位者には、1対2対3の割合で金・銀・銅メダルが授与される。6人の総合得点で国別順位を決める。

 

 

(2007/07/18 07:53)

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:2007:07/21/11:45  ++  【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(2)500年後は縄文並み人口15万

赤さびたトタン屋根がめくれあがる廃虚群。主を失い無残に荒れた住宅跡に、往時の面影がわずかに残っている。

 兵庫県養父(やぶ)市(旧大屋町)の明延(あけのべ)地区。住民は160人ほど。その6割は65歳以上の高齢者である。

 但馬山系の深奥部に位置するこの典型的な過疎集落が、かつて国内スズ生産の9割を占める日本有数の金属鉱山としてにぎわい、住民4000人がひしめいていたとは、とても想像できない。

 明延鉱山の本格的な採鉱開始は明治初期にさかのぼる。朝鮮戦争の特需景気に沸いたピーク時の昭和30年ごろには、全国各地から高収入を求めて1500人もの鉱山労働者が集まったという。人とともに中央の文化もいち早く流入した。当時は珍しいテニスコートやプールを備え、鉱山直営の購買所では自動車まで売られていた。

 地元で生まれ育ち、電器店を経営していた田村新一郎さん(83)は、皇太子(現天皇)ご成婚の34年、1台12万円もしたテレビがわずか1カ月で200台も売れたと当時を振り返った。

 「夢のような時代でした」という田村さんの言葉通り、40年代には金属価格が低迷し始め、プラザ合意以後の急速な円高が追い打ちをかけた。62年春の閉山まではあっという間だった。わずか20年前のことである。

 「限界集落」。高齢者が半数を超え、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になった集落を指す。大半は早晩消滅の道をたどるほかない。

 国土交通省の調査などによれば、こうした集落は全国ですでに3000近くになる。左上の図は人口5000人未満の過疎町村を現在と50年後とで日本地図に記した分布図である。過疎化を示す赤色が急ピッチで全国に広がる様子が分かる。「消えゆく明延」は日本全体の象徴ともいえる。

 下の図も衝撃的だ。官民共同のシンクタンク「総合研究開発機構」(NIRA)が最新の人口推計などをもとに、出生率が現状の1.32のまま推移することを前提にして作成したものである。

 日本の人口は、1億3000万人をピークにほぼ一直線に急下降を続け、わずか500年後には15万人まで落ち込むとしている。これは縄文時代の人口水準に匹敵する。推計とはいえ現実に起こりうることだ。数字にはあぜんとするほかない。

 繁栄の思い出に浸っている間にも次々消えていく集落。少子高齢化と人口減少問題は、遠い将来に目配りして初めて、深刻さが見えてくる。だが、確実にこの“見えざる敵”は日本を消滅の淵(ふち)に追い込みつつある。

危機バネで大転換も

 少子高齢化は先進国に共通した現象だ。だが、「問題は、日本ではそのスピードがあまりに急激すぎることだ」。法政大学大学院の小峰隆夫教授はそう指摘する。

 経済同友会は今年4月、深刻な人口減少社会の到来に警鐘を鳴らす緊急提言を発表した。

 このまま手をこまぬけば、日本は労働力減少と生産性の伸び悩みで潜在成長率は2010年代後半にもマイナスに転じるとする提言は、危機感にあふれている。

 経済が縮小すれば、税収の低下、高齢化による社会保障費の増大で、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字はやがて臨界点に達する。国債価格は暴落。その先はまさに“日本沈没”のシナリオである。

 すでにその兆候は出ている。国内総生産(GDP)で世界第2位の経済大国・日本の座も、実際の通貨の実力で換算する購買力平価では既に中国に明け渡している。2050年には、経済規模で中国の10分の1程度まで水をあけられるとする予測もある。

 少子高齢化は、働く世代と年金受給の高齢者との世代間対立も拡大させかねない。若者は老人にますます敬意を払わなくなり、社会は荒廃していく。将来社会への不安が募れば出生率はさらに低下する。人口減が人口減を呼ぶ構図だ。

 オーストラリアの政治学者ヘドリー・ブルは「大国であるためには1億人以上の人口規模が必要」と指摘したように、人口を国土面積、経済力、軍事力と並ぶ国力の重要な指標と見る考えは、依然有力だ。

 欧州のほぼ中心に位置するルクセンブルク。国土は神奈川県ほど。人口も50万人足らずと日本の地方都市並みだが、欧州の新興金融センターとしての成長は著しい。一人あたりGDPでは世界トップの座を占める。しかし、この国を「大国」とは誰も呼ばない。

 EU(欧州連合)の政策決定も、投票権に人口比が反映される仕組みだ。小国からは大国支配につながりかねないとの批判はあるが、人口がいかに国力の物差しであるかを物語る一例だ。

 少子高齢化とその結果としての人口減をいかにくい止めるか。経済同友会提言は、カギは社会全体の危機意識と政治の強力な指導力にあると指摘している。

 一方で、人口減を肯定的にとらえる見方も実は根強くある。

 ITベンチャー起業で日本の草分けでもある「ソフトブレーン」の創業者、宋文洲氏もその一人。「人口が減っても、生産性が高まれば日本人の生活の質はむしろ向上する」と楽観的だ。

 「国力は人口に比例すると考えるのは毛沢東時代の発想と同じ」。宗氏は中国人として、かつて自国が進めた人口増政策によってもたらされた経済のゆがみにも触れながら、「日本の人口は8000万人程度が適正。いずれそこに落ち着く」とも付け加えた。

 若者が多い方が、むしろ社会不安を誘発するとする見方もある。人口問題の米シンクタンク「PAI」の分析では、15歳~29歳の若年層が4割以上の国は、それ以外の国に比べて2.3倍も内戦発生率が高まるという。

 2年前にNIRAがまとめた「人口と国力」に関する報告書に次のようなくだりがある。

 さかのぼれば、縄文後期と江戸末期に、いずれも大きな人口停滞があった。しかし先人は、水稲耕作の展開で弥生時代へとつなぎ、工業化によって明治の時代を切り開いていった。いわば危機バネがパラダイム(支配的規範)の大転換を迫ったともいえる。

 少子高齢化もまた、日本に大転換を突きつける強烈なメッセージであるのかもしれない。(五十嵐徹)

採石のかすを積み上げたズリ山と廃虚と化した鉱山跡=兵庫県養父市の明延地区(五十嵐徹撮影)

採石のかすを積み上げたズリ山と廃虚と化した鉱山跡=兵庫県養父市の明延地区(五十嵐徹撮影)

(2007/07/15 08:32)

:2007:07/21/11:37  ++  【やばいぞ日本】第1部 見えない敵(1)中国軍に知られたF2の欠陥

「F2の弱点は隠しても無駄だ。中国軍幹部にも知られているんでね」。航空自衛隊元幹部が重い口を開いた。

 F2は総額3700億円以上を投じ、米国の戦闘機F16を土台に日本の誇る先端技術を取り込んだ「日米共同開発」の産物だ。1990年に開発を始め、対地・対艦用の支援戦闘機として設計されたが、対艦ミサイル四基を搭載すると主翼が大きく振動する欠陥が直らない。

 支援戦闘機としては失格でも、爆弾を積まなければ自由自在に舞うことはできるとの理由で迎撃用戦闘機用として航空自衛隊三沢基地などに配備されている。しかし、戦闘能力についても「F2は韓国のF15Kに劣る。竹島の制空権は失った」と空の勇者たちは嘆く。

 2004年当時、石破茂防衛庁長官は「国民に説明できないものは買わない」と調達打ち切りを言明した。防衛省は当初予定141機だった総調達計画数を最終的に94機まで削減し、今年度を最後に購入は終了する。だが、いまなお「失敗」を認めようとしない。

 防衛省技術研究本部の秋山義孝事業監理部長は「航空幕僚からのより高度な要求を満足させるため今でも改良を重ねている。失敗だとは思っていない」と強調すれば、航空幕僚幹部は「置かれている条件からすれば妥当な成果を出せた」と慎重に言葉を選ぶ。

 80年代末、米国防次官補としてF2の日米交渉を担当したアーミテージ元国務副長官は「失敗じゃないって?うまくいっていないのに」と目を丸くする。 米国では防衛技術の場合、「スパイラル理論」が常識になっている。失敗の原因を見つけ、改良とテストを繰り返す。さらに実戦の経験を生かす。失敗を認めてこそ成功に導ける。欠陥を隠蔽(いんぺい)したり、解決を先送りすると“進化”できない。

 F2の悲劇はミスを取り繕うことから始まった。1990年代、防衛庁とメーカーの技術陣は「ニュー零戦」の野望に燃えていた。日本の技術である炭素繊維複合材を主翼に採用する挑戦が始まった。ところが強度不足で所定の超音速で飛行すると主翼が付け根からはがれてしまう。設計が悪かったのだ。

 現場は一から強度計算し直し、抜本的に設計変更しようとしたが、予算システムの壁があった。「開発費が一挙に膨らみ大蔵省(現財務省)から拒絶されることが怖かった。結局、複合材に鉄板を入れるなどして付け焼き刃を重ねた」(F2試作に参加した防衛省OB)。

 防衛省やメーカーの優秀な頭脳はパッチワーク(継ぎはぎ作業)とその対応に投入された。その結果、米国が提供を拒否した飛行制御ソフトの自主開発という成果を出し、補強材入りの炭素繊維の翼で迎撃用戦闘機として飛べるようにはなった。  だが、改良費用はかさみ、当初予定の開発費1650億円を倍増させた。開発期間も長期化した。「支援戦闘機として完成までにはあと60年かかる」という開発現場のうめきに、F2問題が凝縮されている。

 失敗を直視しないという慣行については防衛省だけを責めることはできないかもしれない。

 90年代のバブル崩壊後の「空白の10年」は、政府が膨大な不良債権の存在から目を背け、公的資金投入を決断できず、小出しの景気対策など弥縫(びほう)策を重ねたことが背景にある。現在の年金記録紛失の根本原因も、保険者番号のない社会保険庁のシステムの失敗にある。なのに、番号制度の早期導入議論を先送りにして問題の本質に目をそらしたまま、政争だけが盛り上がっている。

失敗認めぬ“官僚風土”

 F2を製造している三菱重工業小牧南工場の一角には、真っ黒な機体もどきが鎮座している。

 次世代機の国産化も辞さないとする意思を誇示し、F2の悲劇を繰り返さないようにしたいと、防衛省と三菱が見様見まねでつくった実物大のステルス戦闘機の模型だ。現にフランスに持ち込んでレーダーに映るかどうかの実験もした。

 1980年代後半、日本はバブル経済の絶頂期。防衛庁には「絶対に米国を越えられるという夢があった」(防衛省幹部)。「FSX」(次期支援戦闘機)の国産化をめざしたが、米国からエンジン技術を提供しないといわれてあえなく挫折した。F16(ロッキード・マーチン社製)を母体とした共同開発でいったん合意したが、「日本が米国を飲み込むという議会などの脅威論に押され、ブッシュ政権発足当時のベーカー国務長官には対日関係安定を考えるゆとりがなかった」(アーミテージ氏)。 

 ブッシュ(父)大統領は、(1)中枢技術の飛行制御ソフトの供与中止(2)日本から無料、無条件で炭素繊維複合材の一体成型加工技術とレーダーの素子技術の提供を約束させよと、ベーカー長官に命じた。

 ベーカー長官の書簡一通だけで日本政府首脳の腰は砕け、「日米共同開発」の名目をとるのが精いっぱいだった。製造作業分担は日本6に対し、米4だが、収益配分は逆の4対6だった。

 ロ社が炭素繊維技術を使ってF2の左側主翼を製造したのは、単なる練習台だった。目標は炭素繊維複合材をふんだんに取り入れた次世代のステルス戦闘機のF22AラプターとF35の開発で、いずれも成功した。

 防衛省は現在の迎撃戦闘機F4の次期戦闘機(FX)の最有力候補としてラプターに着目し、その詳細な性能情報の提供を求めているが、米国防総省は門外不出の構えを崩していない。

 日本の先端技術は、米国の戦闘機技術を一世代向上させるのに部分的とはいえ貢献したのに、米側の認識は「炭素繊維複合材のリーダーは米国」(アーミテージ氏)。日本は恩恵をほとんど受けられない恐れがある。

 同じ新素材を使いながらも、「世界の航空機の盟主」の自負心でもって、次世代機開発に取り組んだ米側にとって、「うまくいっていない」と見抜いた日本の航空機製造技術を冷たく突き放すのは、国際ビジネス競争の非情な現実そのものといえる。

 一方的な米側の要求に屈したことに伴って負ったハンデはあるにしても、失敗を失敗と認めようとせずに小細工を重ね、レトリック(修辞)を弄しては言い逃れる「無謬」の日本の官僚。在任中に問題を起こさなければ、それでよしとする「ことなかれ」主義が、問題の根本である。

 それは日本国内でまかり通っても、国際的には通用はしない。「共同開発」パートナーから、評価されないF2が象徴する。失敗を教訓にすることなく、糊塗するだけの“官僚風土”が、中国の侮りを受けるような防衛力の空洞化を招いているのだ。(田村秀男)

F2年表

1985年10月 次期支援戦闘機(FSX)選定作業開始

1987年 6月 栗原防衛庁長官とワインバーガー国防長官がFSXの「日米共同開発」で一致

1988年 6月 瓦防衛長官とカールッチ国防長官が米ゼネラル・ダイナミックス社(現在のロッキード・マーチン社)製F-16をベースにした「共同開発」条件で合意

1989年 2月 米上院議員24人がF-16の対日技術供与に反対表明

同3月 ブッシュ(父)大統領、対日技術制限を表明

1990年 3月 開発作業開始

2000年 9月 量産第一号機、航空自衛隊に納入

2004年12月 新防衛大綱で、F2量産機調達数を98機(当初予定は141機)に削減決定

 

:2007:07/21/11:27  ++  【やばいぞ日本】序章 没落が始まった(6)米中のゲームに加われず

中東の泥沼から抜け出そうともがくワシントンでは政治・外交の構造変化が起きている。

 それに乗じる中国。日本はその地殻変動についていけない。

 「今や中東情勢はまるで第三次世界大戦前夜だ」。この6月13日、国防総省の地下会議室に各政府機関の国際情報分析専門家約30人が極秘裏に集まった。イラクの大量破壊兵器存在説を流す過ちを犯して以来、評判の芳しくない中央情報局(CIA)抜きで、本音で討論し、「巨大な衝撃が将来起こりうることで議論は白熱し、結論どころではなかった」と会議に参加した国防総省筋は言う。

 「国務省内では今、バルカン化(balkanization)という言葉が流布している」(元国務省幹部)。

 バルカン化とは、中東のように地域全体がばらばらになり、互いにいがみ合って紛争が頻発し、収拾がつかない事態をさすが、「中東問題を最優先しないとバルカン化が世界に広がる」(国務省筋)。

 ライス国務長官はヒル国務次官補ら東西冷戦の専門家を東アジア担当に据え、朝鮮半島問題を重視してアジア専門家を事実上一掃した。ネオコンと呼ばれ、民主主義イデオロギーを浸透させるためには強硬論で譲らないボルトン元国連大使らも政権から離れた。

 中国、韓国と組み、北朝鮮を懐柔し、とにかく核の放棄の道筋を付ける。北の核はそれ自体が米国にとっての脅威という意味ではない。その核が中東やテロリストに拡散する恐れを取り除くことが優先する。そのために金融制裁も事実上解除した。 核合意を確かなものにするために、ヒル次官補は中国の北朝鮮への影響力に頼る。北京との関係強化を通じてライス長官の訪朝、国交正常化交渉すら仕掛けかねない。中国の比重が米外交にとって高まっていく。

 一方で米議会のほうでは、中国に向かって逆風が吹き荒れている。人民元の切り上げなど通商問題や、スーダンでの人権抑圧などで集中砲火を浴びている。中国は逆に対話の好機到来とみるのか、「民主党、共和党を問わず在米中国大使は主要候補者の選挙区を精力的に回っている」(米地方紙記者)。

 中国の「知略」は急速に洗練されつつある。ことし4月末、ワシントンの国防大学で「宇宙行動規範」に関する超党派のシンポジウムが開かれた。

 中国は1月に、自国の気象衛星を標的に衛星破壊の実験を実施し、米国や日本は中国の暴挙を一斉に非難した。出席者の顔ぶれの中にはクリントン政権当時のレイク国家安全保障担当補佐官とホルブルック国連大使の重鎮二人と並んで民主党大統領候補としてクリントン上院議員を急追しているオバマ上院議員のアドバイザーもいる。

 中国大使館の安全保障担当は発言を求め、「米国の衛星が中国の脅威なのは当然」。一呼吸置いた後、「でも軍部との対話は難しいね」と言ってのけた。

 中国といえば党の指示通り、大国の横暴ばかり非難すると思いきや、あっさりと本音を公言、会場は沸いた。それにつられたのか、衛星破壊批判では共和党と一致しているはずの民主党系の専門家が、「破壊実験は宇宙の軍縮管理に消極的なブッシュ政権に警告したかったのだろう」とボルテージを下げた。

 目の前で演じられた米中のゲームに日本政府からの参加者は沈黙したままだった。

 「最近の国際会議ではよくあるパターン」と会議を傍聴した知り合いの知日派米国人は言う。日本は米中のはざまに埋没している。

退場した知日派

 「ネオコン」が健在なころは、日本はワシントンで中国を圧倒していた。ネオコン陣営のボルトン元国連大使は「拉致問題で、米国は日本を全面支援すべきだ。金正日は絶対に核を放棄しない。平壌に圧力をかけ過ぎると北朝鮮が崩壊すると恐れる中国をあてにできない。国務省の対話路線は完全に失敗した」と今も咆哮してやまない。

 ヒル氏は2005年4月に次官補就任のあと、ライス長官を説き伏せて平壌に乗り込もうとしたが、強硬派の総帥、チェイニー副大統領の了解が必要だった。「副大統領はホワイトハウスの執務室で案を一べつするや、キミね、核疑惑のならず者国家と二国間交渉できると思うのか、と冷たい目を向けた。われわれは言葉を返せずそのまま部屋を出た」(ヒル氏に近い筋)。

 その副大統領自身、腹心のリビー元副大統領首席補佐官の米中央情報局(CIA)工作員身元漏えい事件での司法妨害罪などで力をそがれてしまった。

 「ヒル次官補の独走をやめられる者はホワイトハウスにもいなくなった」(元国務省幹部)。

 日本はネオコンという強力な後ろ盾を失ったばかりではない。ワシントンの知日派の大半が政権から離れた。

 知日派の総元締めであるアーミテージ元国務副長官は言う。「私やグリーン元国家安全保障会議アジア上級部長が政権にいるうちは日本の要人は議会に足を運ぶ必要なんかない、われわれに会えばすべて用が足りた」。日本は知日派に頼り切った結果、「2001年のブッシュ政権発足以降、ワシントンに来る日本の閣僚や政治家に議会要人に合わせようとしても、大半はノー・サンキュー」(共和党系ロビイスト)だった。

 日本政府や政界の対米議会工作は、空白の状態が続いている。日米経済問題は無風なのに、ワシントンの日本大使館スタッフのうち、議会担当はわずか4人、約40人もの経済担当スタッフという布陣は通商摩擦が激しかった1980年代と変わっていない。官庁の縦割りがそのまま持ちこまれ、見直しは一向に進まない。

 ワシントンが中国をたたいてもニューヨークは全く違う。「中国の軍事的脅威論は誇張のしすぎ」(JPモルガン・チェース・インターナショナルのパール副会長)、「有害食品問題なんかは米国で19世紀末に深刻だった。民主主義でなくても、市場競争で解決できる」(米国の大学教職員年金ファンドのマネジャー)。

 金融は軍事と並ぶ超大国米国の要だ。中国は政府機関としては今や日本をしのぐ米国債の最大の買い手で、米金融市場安定のカギを握っている。政治のパイプがたとえ細っても、経済面では米国での存在感で日本は優位というのも今や過去、中国の台頭で薄れていく。(田村秀男)

タイトルについて

 予想していたことなのですが、「やばいぞ日本」という連載タイトルについて、読者からたくさんの反響をいただきました。

 「やばいぞ」なんて、ヤクザかチンピラの使う言葉で品がない・非常識であるといったお叱りや、そういう悪い言葉をただしていくのが新聞社の務めではないかといったご批判もありました。

 「やばい」という言葉は、危険だ、危ない、けしからん、奇怪だなどという意味の形容動詞「やば」を形容詞化してできたとされています。

 また、いまの若者たちは「やばいぞ」をすばらしいといった逆に肯定的に使っているようでもあります。

 私たち取材班は、いま日本が陥っているこの深刻な事態を、なんとか強いインパクトをもって訴えたいという意図で使ったのですが、実は“日はまた昇る”式に、愛する祖国日本が立ち直るための処方箋(せん)も示したいと企画しています。どうかご了承をたまわり、併せて本企画に期待していただきたいと思います。

 「やばいぞ日本」取材班キャップ 中静敬一郎

:2007:07/21/11:19  ++  【やばいぞ日本】序章 没落が始まった(5)

宇宙空間は魔法使いの住む世界なのだろうか。シンデレラが乗った馬車のように大きなカボチャも夢ではなくなる。

 

 それを実現してみせているのが中国の宇宙開発の現場なのだ。地球を取り巻く宇宙空間の特殊な条件を利用して活発な植物の品種改良が進む。

 中国の人口は13億人。拡大する「胃袋」を満たすための妙案が宇宙開発に託されている。宇宙生まれのマンモス・カボチャ「太空南瓜」は、その期待に応えた成果の一例だ。

宇宙野菜が示す中国との差

 無重量の宇宙では熱対流が消えるので、超高品質の合金も製造可能。生命科学の分野では、タンパク質もきれいに結晶するなど、新素材や医薬品の開発に道が開ける。

 日本はスペースシャトルなどを利用して、宇宙での高度先端技術を追究してきたが、特筆すべき成果は出ていない。

 これに対し、中国では日常生活と宇宙産業の距離が急速に短縮中だ。特に高度なことをしているわけではないのだが、実績は着実に目に見える形になっている。

 日本は8月16日、H2Aロケット13号機を打ち上げる。搭載される大型探査機は「かぐや」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙教育センター長の的川泰宣は「米国のアポロ計画以来となる本格的な月観測」と説明する。

 米国が有人月面探査を柱とする「新宇宙計画」を発表するなど、月は今、最も注目を集めている天体だ。

 中国も月に熱烈な関心を寄せている。月周回衛星「嫦娥(じょうが)」を、今年4月に長征ロケットで打ち上げようとしていたが、遅れをみせている。

 その中国は、2003年10月に宇宙飛行士を乗せた「神舟(しんしゅう)5号」を打ち上げ、世界3番目の有人宇宙飛行国となった。

 日本は宇宙飛行士を擁しているが、スペースシャトルに依存した有人活動で、自前の宇宙船は持っていない。

 日中の宇宙開発は、同時期に始まっている。1970年2月に日本の「おおすみ」、4月に中国の「東方紅」が、それぞれ初の人工衛星として打ち上げられたのだ。

 その後、中国はソ連寄り、日本は米国寄り、と日中の宇宙技術は別の路線を進んできた。これまでほぼ互角の競争力。そこに今、思いがけない差が開きつつある。

足りない研究者の情熱

 「中国に行った方が力を発揮できるかも、という研究者もいます」

 JAXA国際部参事の辻野照久は、半ば冗談と断りながらそう語った。現在、中国の宇宙開発には、それほど活気があるということだ。

 5月にナイジェリアの通信衛星などを打ち上げた中国は、7月5日に長征3Bロケットで自国の通信衛星を打ち上げた。これは101機目の長征ロケットで、連続成功を59回に伸ばした。

 日本の打ち上げ回数はN1ロケット以来、42機。連続成功は29回止まりとなっている。

 日本のロケット開発は次々新技術に挑んでハイテク化を遂げているが、中国はローテクのまま信頼性を高めたことで92.1%という、より高い成功率に到達した。

 辻野は日本で数少ない中国の宇宙開発ウオッチャーだ。中国空間技術研究院が隔月で発行する論文集などに目を通して、現状や方向性を分析している。その結果、意外な現実が見えてきた。

 「日本がやっていることは、全部中国もやっていました」

 そのうえ、宇宙開発分野で日本人研究者の成果を引用した論文が見あたらない。中国の宇宙工学者たちは米国の研究を重視している。有人宇宙船「神舟」はロシアの「ソユーズ」宇宙船をベースに開発されたが、近年は米国の影響をより強く受けつつあるらしい。

 中国は複数の衛星からなる独自の衛星利用測位システム(GPS)を構築しつつあるほか、宇宙空間を舞台に、日本が行っていない研究にも手を広げている。

 その代表例が巨大カボチャ・太空南瓜を実現した「育種衛星」だ。2週間以上、地球を回った後に地上に戻ってくる回収式の衛星に米や麦、トウモロコシといった穀物などの種子を搭載する。

 「野菜類もありますし、花や香辛料、ヘチマの種も積んでいます」。国際課主査で中国に詳しい藤島暢子も語る。

 高エネルギーで飛び交う宇宙線を利用した植物の品種改良である。無重量に、高真空という条件も重なる結果、地上での放射線照射という従来技術を上回る効果があると説明されている。

 中国科学院内の航天育種センターでは、ピーマンやトマト、ウリなどの「宇宙野菜」を市場に送り出しているという。

 3回目の有人飛行となる神舟7号は北京オリンピック直後の2008年秋に打ち上げられる。このときは全く新しい発想の宇宙服による宇宙遊泳が実施される見通しだ。

 「中国人は宇宙に対して強い願望を持っている。天人や仙女、不老不死につながる憧憬(どうけい)があるようです」

 辻野によると、この根源的ともいえる動機の上に、過去40年にわたって技術が積み上げられてきたという。それは軍事力の強化とも不可分の歩みであった。

 1960年代の中国には「両弾一星」という目標があった。原子爆弾と水素爆弾が「両弾」。人工衛星が「一星」なのだ。今の中国は月面基地建設を大目標に掲げて活気づいている。国内の人材育成と世界からの才能獲得に余念がない。胡錦濤国家主席をはじめ、理系出身者で固められた中国指導部の影響力は大きい。

 一方の日本は、停滞気味である。新たな「GX」ロケットの開発難航もその一例だ。すでに大幅な遅れを生じている。

 JAXA宇宙教育センター長の的川は研究者や技術者を目指す若手に「物足りなさ」を感じている。頭も良い。手際も良い。問題を解決する能力も備えている。

 「足りないのは、宇宙への情熱と問題を発見する能力です」

 国は4年前に宇宙科学研究所(ISAS)と宇宙開発事業団(NASDA)などを統合して、現在のJAXAに変えた。機関統合の効果を疑問視する意見は関係者の間に少なくない。

 ISASが開発した世界最大の固体燃料ロケット「M5」も統合によって捨てられた。「研究者の内発性の炎が消えつつある」。そうした危惧(きぐ)の声が聞こえてくる。=敬称略(長辻象平)

(2007/07/07 12:01)

:2007:07/21/11:17  ++  【やばいぞ日本】序章 没落が始まった(4)「誤ったイメージ払拭したい」

「日本国内で何が起きているのか」。ワシントンのシンクタンク「ヘンリー・スティムソンセンター」研究員の辰巳由紀さん(36)(有元隆志撮影)=に昨年9月上旬、こんな電話をかけてきたのは、米下院国際関係委員会のヘンリー・ハイド委員長(共和党)の補佐官、デニス・ハルビン氏だった。

 少し前の8月15日、小泉純一郎首相(当時)は靖国神社を参拝した。米の主要メディアの多くは首相参拝を非難した。日本にナショナリズムが高揚しているなどの報道も展開された。

 フィリピン戦線の従軍経験をもつハイド委員長から実務面などを任されているハルビン氏は、「日本と隣国との関係」をテーマに公聴会を開催すると告げ、「ナショナリズムの台頭などを日本人として証言してほしい」と要請した。

 辰巳さんは「光栄なこと」と答えた。5カ月前、拉致被害者の横田めぐみさんの母、早紀江さんが同委で証言したが、日本の政策を日本人が証言することは極めてまれだ。辰巳さんはそれだけに日本に対する誤ったイメージをなんとしても払拭(ふっしょく)したいと思った。

 辰巳さんが違和感を覚えたのは、1930年代の軍国主義への復帰を求める過激な右翼勢力が日本の主流になりつつあるとした8月27日付ワシントン・ポスト紙の「日本の思想警察の台頭」であり、日本の言論に非寛容な政治的雰囲気が出ていると分析した「パシフィック・フォーラムCSIS」発行の8月24日付ニュースレター「心配な一連の出来事」だった。

 「これでは日本が過激なナショナリズムに染まりつつあると誤解してしまう。日本の状況を正確に伝えなくては…」。東京生まれ、国際基督教大学からジョンズ・ホプキンス大学大学院で安全保障を学び、日本大使館で専門調査員を務めたこともある辰巳さんは、訴えたいことを許された5分間の陳述で表現できるよう幾度も練習を重ねた。

 9月14日の公聴会。ハイド委員長は「靖国神社は戦争犯罪者をたたえている」と語り、トム・ラントス議員(民主党)も「ナチスのヒムラー(親衛隊長)たちの墓に花輪を置くに等しい」と非難した。

 マイケル・グリーン(前国家安全保障会議アジア上級部長)、カート・キャンベル(元国防次官補代理)、女性活動家のミンディ・コトラーの3氏に続き、最後に登場した辰巳さんは、首相参拝の意義をこう語り始めた。

 「第二次大戦で命を失った兵士たちに敬意を示し、平和への誓いを新たにしたものです。靖国参拝は、日本が自らの過去と向き合って内省するという日本の健全な発展を意味しています」。続いて、ナショナリズムに触れ、「ほとんどの日本人は軍事的な過去を賛美する考えを支持していません。日本のナショナリズムとは、多くの日本国民が日本という国を誇りに思いたい気持ちのことです。米国の愛国主義(パトリオティズム)に近いのです」と述べた。

 出席した議員51人のうち、8人が質問に立った。「日本は平和憲法を変えて戦争をできるようにしているとの懸念をきいた」とのバーバラ・リー議員(民主党)の質問に対し、辰巳さんは「日本人の間で侵略戦争をしないという合意は存在する。現在の憲法解釈では自衛隊が国連平和維持活動中に米軍や中国軍とともに参加した場合、彼らが攻撃されても、助けられない。日本の議論は、自衛隊が他国軍を支援できるようにしようというものです」と答えた。

 ラントス議員は「われわれすべては大いに学んだ」と総括した。ハルビン氏も「とてもよかった」と握手を求めた。辰巳さんは自分の言葉で日本の実像を伝える努力はできたと思いながらも、日本の基本的な立場がどの程度、唯一の同盟国に理解してもらえたのか、不安を拭(ぬぐ)いきれなかった。

英字紙が伝える「ひどい国」

 「日本人が考えていることの1割も外国に伝わっていない。英語で発信されたものだけで米国の政策は決まる」

 今年3月、都内で開かれたシンポジウムで、ワシントンのCSIS(戦略国際問題研究所)客員研究員の渡部恒雄氏(46)は、日本の対外発信力がいかに貧弱かを力説し、東南アジアのある公使の発言を以下のように紹介した。

 「英字紙を読むと日本はなんとひどい国と思うが、本当はそうではない。英語で語られる日本と現実の日本はなぜ、こうも違うのか」

 日本をなにか不気味な国というイメージでとらえがちな英字メディア、そして、それを国内で発信している勢力がいることも「ゆがんだ日本」像を膨らませる。憲法改正や集団的自衛権の行使により、日本が軍国主義に突き進もうとしているとの見方は、その一例だ。

 だが実態は、辰巳さんが語ったように、日本は国際常識が通用する当たり前の国になろうとしているだけなのである。

 問題は、このことを日本政府がこれまでいかに語ってきたか。外国にどう発信してきたのかだ。

 安倍晋三首相は昨年9月の就任後、憲法改正を明言し、集団的自衛権行使を研究すると表明したが、改憲を明言した首相は戦後初めてだ。

 「日本の平和主義を薄めようとしている」(昨年9月25日付ワシントン・ポスト)などの批判が出ているが、裏返せば、それだけ顔が見えているといえる。

 それまでの日本の指導者は、国の針路をあまり語ろうとしなかった。語るに足る内容もさることながら、米国依存の軽武装経済重視という既定路線をそのまま踏襲してきたからだ。

 だが、「沈黙の大国」のままでは国際政治の激流に翻弄(ほんろう)されるだけだ。要は、第2、第3の辰巳さんをいかに出現させるか。

 CSISで、ともに働いたこともある辰巳さんと渡部氏は提言(別稿)を連名でまとめ、東京財団で3月に発表した。日本を知ってもらうためには、まず日本人が努力しようということである。(中静敬一郎)

国益情報を効果的に発信するために

(1)英語で日本の政策について書き、話すことができる人材の育成が急務だ。年に1度「国際発信大賞」で、日本からの英字メディアへの効果的な発信に100万円の副賞を与えて推奨すべきだ。

(2)世界に日本のクリアな戦略ゴールを発信することが余計な誤解を解く最善の方法だ。

(3)国際的なメッセージの発信には長期的な戦略性をもち、丁寧に根気強く努力を継続すべきだ。

(4)日本の中でオープンな議論ができ、さまざまな意見が闘わされる環境作りこそが有効な国際発信の大前提である。

(5)在外公館の広報活動を見直し、日本の政策に関する基本的データの整備と人材の配置を図るべきだ。

(2007/07/06 08:46)

 

:2007:07/21/11:16  ++  【やばいぞ日本】序章 没落が始まった(3)「収まらないな慰安婦問題は」

 

 「こちらからみていると、『ヘビの頭を切らないといけないな』と思えてくるんですよ。日本をみていると、ね」。丸顔の男は、そういって冷えた茶を口に含んだ。

 慰安婦問題をめぐる日本非難決議が米下院外交委員会で採択される前、今春のことである。

 男は、東アジアから移民し、成功を収めた戦前生まれの実業家だ。

 「日本が、われわれを極端な方向に押しやっているんですよ」。自宅応接間で、男は顔をしかめ、アロガント(傲慢(ごうまん))、とつぶやいた。日本の政治家は威勢のいいことを言わないと出世できない、歴史教育議連(日本の前途と歴史教育を考える議員の会)の国会議員たちがいい例だ-それが、男の言う「傲慢な日本」の意味らしかった。

 「収まりませんよ、慰安婦問題は」と、男は続けた。

 「アメリカの政治で、ユダヤ人が一番多く政治資金を出す。その次はアジア人。今、カネを出せるアジア人で、日本に反発する人間がどれだけいると思いますか」

 「そのアジア人たちが、(ホロコースト=大虐殺の歴史を徹底的に追及した)ユダヤ人の手法を学び、同じことを今度はアジアでやろうと立ち上がった。この問題は絶対に終わらない。今回通過しなくても、またやります。今度は世界的にやります。首相が事実を認め、申し訳なかったと、国会で明確に謝罪するまでやります」

 広大な敷地のかなたから風が吹いてきて、森のような庭園の木々を揺らした。南に大きく開いた窓から、米西海岸の陽光が差し込んでいる。

 男はぽつりと言った。

 「あした、ここにマイク・ホンダ(米下院議員)が来ます」

 10年ごとに行われる米国勢調査の結果によると、1990年からの10年で、アジア系米国人の人口は倍増に迫る勢いを示した。グローバル化の進展の中で、今や米国への移民は1世のうちに成功をつかむことが可能になっている。中国やインドの爆発的な経済成長がそれを後押ししている。

 その結果、米社会に同化した2世、3世になってようやく豊かさを得るというこれまでのパターンではなく、移民社会が本国とのつながりを強く残したまま膨張を続けるという新しい現象がみられるようになった。

 慰安婦問題で日本政府非難決議を主導したホンダ議員と親しいという丸顔男もそれにあてはまる。

 だが、日本はこの変化と攻勢になすすべもないのだ。

日本の外堀が埋められた

 慰安婦問題の日本非難が沸点に達しようかとしていた3月末。在米の日本人有力者が集まってワシントンの日本大使館である会合が開かれた。

 「日系米国人と、米国と戦争をした日本との間には相当の距離があり、日本の応援団的な役割を日系人に求めるのは無理だと考えていた」

 こう切り出した加藤良三大使は「しかし、ダニエル・イノウエ上院議員(ハワイ州選出)は日系人の相当部分との協力を考えるべきだと述べている。このような可能性が現実感をもって語られるようになっている現在、日系人が(米国人としての)公正な立場からホンダ議員はおかしいと言ってくれるようになればありがたい」と述べた。

 味方がどこにも見あたらない現状で、日系人との連携の模索は、選択肢としてはあり得る。日系人に、父祖の国への理屈抜きの親近感が存在するのも事実だ。

 だが、取材を重ねると、日本と日系人との距離が狭まりつつあるどころか、むしろ、広がりつつあるのではないか、と思わされる現象の方が目についた。それは、日系人が自らを日系ではなくアジア系と規定するという現象である。

 「日系3、4世で、とりわけ政治に進もうという層はそうだ」

 カリフォルニア州司法副長官で、将来政治家を目指しているアルバート・ムラツチ氏は、自らを例えに引いてこう話す。同氏が地元の教育委員選に出馬した際の選挙事務所幹部は、中国系と韓国系で占められていた。そうでないと、選挙に勝てないのである。

 ムラツチ氏は今年、日本政府による日系人若手指導者を対象とした招聘(しょうへい)プログラムで日本を訪れた。謝意を表しつつ、ムラツチ氏は「日系人が『日本』より『アジア』にアイデンティティーの軸を移しつつあるという事実は、日本ではあまり理解されていないかもしれない」と述べる。

 アジア系台頭の中、ほとんど人口が増えていない日系の当然の選択なのかもしれない。だが、アジア系とは実態を伴っているのだろうか。主権国家による国益をめぐるせめぎ合いが国際政治の現実である。その文脈ではアジア系とは日本を封じ込めようとする枠組みになりえる。

 問題は、アメリカという世界の最大の政治舞台で進む「アジア系の勃興(ぼつこう)」という名の日本外しに対し、日本が実質的に何の手も打てていないことである。

 丸顔の男に戻ろう。ホンダ議員について、男は「単純な男です。(慰安婦問題の追及を)私がやめろといえば、やめるでしょう」という。本当に動かしているのがだれだか分からないのか、とでもいいたげだった。

 男は東アジア出身だが、「アジア系」という言葉を使う。そこには東南アジア、さらにはインドなど南アジアにまで連帯を広げたいという意図が明確にうかがえる。そこで、「傲慢(ごうまん)な日本への嫌悪」が、接着剤として使われるとすれば…。

 「カネはある」と男はいう。「今、アジア系はカネを持っている。100万ドルや200万ドル、ぽんと出せるアジア人がいくらでもいる」

 男は、駐米中国大使を知っているともいう。しかし同時に、チベットの精神的指導者ダライ・ラマとも親しいらしい。

 ひとしきり、アジア各国の有力者との交遊に話が及んだ。そして、ふと思いついたように、「ところで、日本の諜報(ちょうほう)部隊はなにをしているんだ。ここには、来たことがないな」。

 男は冷ややかに言いはなった。(松尾理也)

 ■日本の前途と歴史教育を考える議員の会 安倍晋三首相、中川昭一政調会長らが平成9年に設立した自民党の議員連盟で、歴史教科書の自虐的記述の正常化や慰安婦問題などに取り組んでいる。会長は中山成彬元文科相、会員は約100人。

(2007/07/05 07:44)

 

:2007:07/21/11:15  ++  【やばいぞ日本】序章 没落が始まった(2)「鈍さが工作員を取り逃がした」

辛光洙(シンガンス)。78歳。北朝鮮の工作員として複数の日本人拉致事件を首謀した容疑で国際手配されている。現在、北朝鮮に在住し、記念切手にも登場する“国家英雄”だ。

 金正日総書記から直接指示を受けた実行犯の彼は、拉致のカギを握るキーパーソンだ。この男を、日本は二度取り押さえるチャンスがあった。

 「辛はあれだけしゃべっている。なぜ捜査を前に進めようとしない」。 1985年夏、ある警察関係者に韓国の捜査官から、いらだった声で国際電話が入った。 

 その半年前に韓国の国家安全企画部(現・国家情報院)が辛をスパイ容疑で逮捕した。辛は韓国捜査当局の調べに対し、80年6月、大阪府在住の中華料理店員、原敕晁(ただあき)さん(43)を宮崎県の青島海岸に連れ出して工作船で拉致し、同人名義の日本旅券を不正に取得の上、対韓工作を行ったことを詳細に供述した。

 韓国側はこのとき、日本側による辛の取り調べを認めると打診してきた。ソウル五輪を控え、ぎくしゃくした関係を改善したいというシグナルでもあった。

 まもなく警察庁の捜査員約10人がソウルに飛んだ。10日間の滞在中、韓国当局の立ち会いの下、辛を直接取り調べた。ただ辛は拉致の容疑を日本の捜査員に認めようとはしなかった。韓国の捜査官には、原さんを拉致するため、中華料理店経営者である在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)大阪商工会理事長などにいかに近づき、抱きこんだか、を実名で生々しく供述していたのにである。

 韓国側は段ボール箱いっぱいの捜査資料を提供した。帰国した捜査員は一定の手応えを感じていた。事件としての立件は無論、辛に協力した総連のネットワークも追及できるからである。

 ところが、しばらくして、奇妙な展開になった。警察と検察が協議した結果、立件を見送ったのである。検察側は韓国側の調書について「証拠価値は低い」「この調書を証拠にすることは日本の刑事訴訟法にはなじまない」と主張したとされる。逮捕状が出なければ、身柄の引き渡し要求はできない。しかも当時、日韓間に犯罪者引き渡し条約はなかった。起訴できないとの結論の前に警察庁幹部は首をうなだれるしかなかった。

 当時、朝鮮総連などの動向を監視していた公安調査庁調査第二部長は、先月28日逮捕された緒方重威元長官であった。

 そんなころ、かかってきたソウルからの電話に警察関係者は返答に窮し「すまない」の一言を伝えるのが精いっぱいだった。その関係者は今、こう唇をかみしめる。

 「日本の警察、検察幹部は拉致問題への感覚が鈍かった。自制して後ろ向きになっていた。政治が動かないことにわれわれは安住していた」

 役人のことなかれ主義を象徴するかのように、段ボール箱は役所のどこかに22年間放置されたままである。

国民の安全守れぬ国家

 もうひとつのチャンスは、死刑判決を受けた辛が14年後の99年の大みそかに釈放されたときだった。北への「太陽政策」を表明した金大中大統領は、「ミレニアム特赦」後、2000年9月、辛ら非転向の長期囚63人を北朝鮮に送り返した。

 辛の送還に対し、横田滋さん、早紀江さん夫妻らは政府に「北への送還反対」を申し入れたが、森喜朗政権の腰は重かった。日本政府はそのころ、北への50万トンコメ支援を行うことを決め、河野洋平外相は「私の責任をもって行う」と大見えを切った。このコメ支援の国費1100億円がなんの成果を生まなかったのはご存じの通りだ。

 総連への捜査にも圧力が加えられていた。90年5月には警視庁が摘発した朝鮮総連元幹部らによる外国人登録法違反事件について故金丸信元自民党副総裁が「日朝関係に悪影響が出る」と警察庁幹部に捜査を拡大しないよう求めたとされる。

 金丸氏が、社会党の田辺誠副委員長(当時)らと訪朝して、「謝罪」と「戦後の償い」を表明したのはそれからしばらくしてからだった。

 辛ら19人の「政治犯」釈放を韓国大統領に求めた嘆願書に当時の国会議員128人が署名したのもそのころだった。ほとんどは土井たか子委員長ら当時の社会党議員だったが、菅直人、江田五月、千葉景子、山下八洲夫(以上民主党)、渕上貞雄(社民党)の現職議員の名前もあった。

 嘆願書は「過去の政治的環境の中で『政治犯』となった人びとばかり」と訴えていた。それが、現実といかに乖離(かいり)していたかは、韓国国家安全企画部が発表した辛の次の供述が物語る。

 《金正日の3号庁舎執務室で金正日から「日本人を拉致し、北に連れてきて日本人の身元事項を完全に自分のものにして、日本人として完全変身したあと、在日対南工作任務を継続して遂行しなさい」という指示を受けた》。

 国会で辛光洙事件への警察当局の対応を問題にしたのは、それから10年近くたった97年5月の衆院外務委員会での安倍晋三氏の質問だった。

 「韓国の裁判の記録に厳然たる事実があるのに、私は日本の警察はどうしているんだ、強い憤りと疑問を感じる」「辛への取り調べを行いたいという意思を伝えてもらいたい」。

 警察庁の米村敏朗外事課長は答弁で、公開捜査などの問題があり、日本国内関係者への強制捜査の実施には至っていないと説明した。結局、公安当局はその後、韓国側に辛への事情聴取を求めたが、今度は韓国側が受け入れようとしなかった。

 総連本部へメスが初めて入ったのは01年11月、小泉政権下であった。旧竹下派が影響力をもっていた政権では手を付けることはできなかった。 

 11月15日には横田めぐみさんが新潟市から拉致されて30年を迎える。 

 「辛さえ北朝鮮にとり逃すようなことさえなかったら、拉致事件はもっと解決に進んでいたはずです」

 横田さん夫妻が吐露する怒りと無念さだ。主権が侵害され、国民の平和と安全が蹂躙(じゅうりん)されたという重大な事実を知っていながら、官僚と政治家はなぜ、動こうとしなかったのか。日本人が拉致されたという現実を信じられなかったと弁明する人もいる。国民を守るという国家の最大の責務が顧みられなかったことに日本の国としての弱点が表れている。(高木健一)

 

:2007:07/21/11:14  ++  【やばいぞ日本】序章 没落が始まった(1)「ダイナミズム失う」

グラフを見ていただきたい。米国で博士号(自然科学系)を取得したアジア人留学生数の年ごとの変化を示している。日本はわずか200人前後で低迷し、中国は逆に日本の10倍以上の2500人レベルを維持している。中国にかなり離されて韓国、インド、台湾が続き、日本は5位に甘んじている。

 この数字がすべてではないが、日本人留学生の低迷や劣化を示す指標として霞が関の官庁街でささやかれている。それどころか、欧米の有名大学院に派遣された各省の若手エリート官僚の中に、以前にはなかった悲惨な落ちこぼれ現象が起きているという。経済学や論理学の授業についていけずに単位を落とすケースが増えつつある。

 東大法学部卒のある若手官僚は、優秀な人材として出身省でも将来を嘱望されていた。彼は欧州の大学に研修留学して現地語はみるみる力をつけた。

 ところが、数学力不足から経済理論がこなせず、論理学は古代ギリシャ哲学など基礎を学ばないから論理的に崩れのない文章が書けない。1年後に担当教授から呼び出され、学業不振で退学処分になってしまった。

 日本の大学入試は、記憶力にたけた学生に有利にできている。「ゆとり教育」が行き渡って受験科目を絞る大学が多いから、数学を受験しなくても法学部や経済学部に入ることができる。国際的にはこれが通用しない。

 欧米の経済学は株価の変動など金融を中心に新しい理論が次々に導入されている。三角関数やフーリエ変換など日本の文系には縁遠い計算式が解けないと歯が立たない。肝心の日本のエリートにして惨憺(さんたん)たるありさまなのだ。

 一方、中国は経済成長のスピードが速く、血眼になって金もうけに走るから吸収しようとする意気込みが違う。野村資本市場研究所の関志雄主任研究員は、「10年後に中国の学生がマルクス経済学を勉強しようと思ったら、日本の大学にいくしかない」と大まじめでいう。

 “現役”の社会主義国にあっても、元祖マルクスはとうに死んでしまったのだ。いつまでもマルクスとその親戚(しんせき)筋の容共リベラルに縛られるような国は、ジワジワと社会の劣化が進む。いま、「日本の没落」を食い止めないと、日本の未来は描けなくなる。

 米国でかつて日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされていた1990年前後に、ただ1人、「やがて日本は自滅する」と予測した人物がいた。フィリップ・トレザイス元国務次官補である。

 彼は「日本は敵か」という論文で、はやりの「日本脅威論」を否定しながら、30年後の日本を見通した。65歳以上の老齢人口が4分の1に達して、「経済のダイナミズムが失われる」と衰退を予言した。

 実際にいま、日本は人口減少によって学生が減り、労働力が枯渇しつつある。この日本衰退という「内なる敵」をどう克服するか。

危機をバネに反転を

 すでに、東京工大はじめ理工系大学には留学生の約7割が中国系に占められている。しかも、日本政府の奨学金で最新の科学技術を学びにきているのだから、わが日本はなんとお人よしであることか。

 トレザイス氏がいまの「日本の没落」を見たら、何というだろうか。本紙ワシントン支局に探してもらうと、自説の正しさを見ないまま6年前に死去していた。

 この当時、エール大学のポール・ケネディ教授は大著『大国の興亡』で、米国の衰退を豊富な資料で立証しようとした。本の表紙には、主役たちの後退を印象的な風刺画を使った。

 英国紳士がユニオンジャックを手に地球のてっぺんからずり落ち、星条旗を持つアンクルサムも浮かぬ顔で退場していく。代わりに地球の上部に足を引っかけたのは日章旗を担いだ日本人ビジネスマンだ。

 あれから20年が過ぎた。ケネディ教授が『興亡』の続編を出版するとしたら、トレザイスの予言にしたがって、大国の浮き沈みを変更せざるを得ないだろう。表紙も、日章旗に代わって五星紅旗を振りかざす中国の“昇り竜”が地球上部に足を引っかける。

 米証券大手のゴールドマンサックスが試算した折れ線グラフを見ていただきたい。赤線で示した中国が、10年もすると国内総生産(GDP)で日本を追い越し、2040年を過ぎると水色の米国を軽く抜く。そのころには“昇り竜”の姿は日本の遙か彼方(かなた)に飛び去り、後ろ姿も見えない。

 いや、「中国経済は見かけ倒しで、必ずしも右肩上がりにはならない」との気休めのような説はある。だがその間にも、カネの積み増しで軍事力も巨大化する。すでに中国は資金力にモノをいわせて最新鋭兵器を買いまくり、買えないものは技術を盗み出して国産化する。

 しかし、米国は国家の危機を感じたときにこそ、力を結集して反転させてきた国だ。現職のブッシュ大統領はいま、科学分野で追い上げる中国とインドを「新たな競争相手」と位置づけている。

 年頭の一般教書演説で大統領は、この分野で優位を狙う「競争力構想」を打ち出し、基礎研究の拡充や理数科教師の7万人採用を表明した。軍事機密の分野では、外国人研究者に頼らないよう人材を育成する。

 日本は経済力が伸び悩み、軍事力は貧弱であり、教育の低迷によって、相対的な没落ぶりは明らかだ。とても、与野党が足の引っ張り合いをしている余裕などありはしない。(湯浅博)

 いま、日本の没落が始まっている。経済は好調なのに、ジワジワと迫り来る長期的な不安がぬぐえない。人口減少に歯止めがかからず、エネルギーの獲得競争に相次いで敗れ、日本が誇った技術力にもかげりが見える。教育の劣化やモラルの崩壊は目を覆うばかりだ。日本文明の没落までささやかれ始めたいま、その現実とそこからの脱出を探る。

夕暮れの国会議事堂(手前)と新宿副都心(本社ヘリから)

夕暮れの国会議事堂(手前)と新宿副都心(本社ヘリから)

(2007/07/03 08:19)

 

:2007:07/21/11:11  ++  【緯度経度】ソウル・黒田勝弘 韓国政治は“仁義なき戦い”

日韓比較経営論をやっている韓国人からこんな小話を聞いたことがある。新入社員研修で長距離走をやらせると、日本人はお互い「ガンバレ!」などと励まし合いながら走るので落後者は出ず、平凡な記録でほぼ横並びにゴールインする。米国人は他人にはかまわず走るのでトップの記録はいいが、落後者が出る。韓国人はどうか?「米国人に似ているが、遅れた者が前の走者にいじわるして足を引っ張ろうするかもしれない」

 在日韓国人の本国ビジネス体験でも「日本人は自分ががんばって人の上に立とうとするが、韓国人は他人を引きずり下ろして上に立とうとする」と聞いたことがある。

 韓国は猛烈な競争社会だ。学校、企業、官界、政界、芸能界、その他…みんな「何が何でも勝たねばならぬ」と必死に競争している。この情熱とパワーが現代韓国の発展の原動力になったことは間違いない。だから先の小話も必ずしも否定的に考える必要はない。

 小話は、最近の韓国における大統領選をめぐる動きを見ながら思い出した。世論調査で支持率1、2位を走る野党ハンナラ党の有力候補、李明博氏と朴槿恵氏の激しい足の引っ張り合いがまさにその印象なのだ。

 大統領選自体は12月で、与野党ともまだ正式候補は決まっていない。とくに与党陣営は候補選びが難航し、新党結成の行方も不透明とあって候補決定は9月以降といわれる。

 しかし野党ハンナラ党では早くから李・朴氏が出馬を表明し、このふたりが8月党大会での“指名”獲得に向け猛烈な争いを繰り広げている。その際、最大の争点(?)になっているのが「大統領候補としての道徳性」の検証。双方の陣営が相手方の不正・腐敗疑惑や経歴上の問題点、人脈疑惑など、あらゆるマイナス点をほじくり出し批判、非難合戦を展開している。

 「道徳性」というのは儒教社会(?)の韓国人が大好きな言葉だが、政治向きでは主に「金(かね)の問題」を意味する。不正蓄財をはじめ不動産・資金疑惑がそれだ。李・朴陣営の非難合戦にマスコミが便乗し、カネの話が連日、マスコミをにぎわせている。

 とくに財産疑惑となると、財閥企業の「現代建設」の社長を務め、ソウル市長時代には“ブルドーザー市長”として都市再開発で辣腕(らつわん)を振るった李明博氏に、追及の矢が集中している。本人はもちろん家族・親戚(しんせき)・縁者の財産状況までほじくられている。

 おカネの話は庶民感情を刺激する。実は庶民を含め多くの人びとが不動産投資(投機?)でひともうけしたいと思っているが、不正にしろ何にしろ他人がもうけたとなると「道徳性」を持ち出して「ケシカラン」と非難したくなる。

 19日には党内検証として李・朴両氏の疑惑を追及する党主催の“聴聞会”が行われ、それが何とテレビ3社で全国に同時中継されている。足の引っ張り合いにいかに世論の関心が高いかだ。

 この“聴聞会”では、これまでの暴露合戦で出されていた疑惑があらいざらい質疑の対象になり、故朴正煕大統領の長女で独身を保ってきた朴槿恵氏は“隠し子疑惑”まで追及されていた。

 李・朴2人の足の引っ張り合いは「これが同じ党か」と思わせるほどの激しさだが、2人に対しては政権・与党陣営からの足引っ張りも激しい。2人が傷つけば傷つくほど「政権交代阻止!」の政権・与党陣営にはプラスだからだ。

 こうした足の引っ張り合いを“ネガティブ・キャンペーン”という。金大中前大統領も盧武鉉現大統領も、大統領選挙ではいずれも対立候補だったハンナラ党の李会昌氏に対する「息子の兵役逃れ疑惑」や「政治資金疑惑」など、あることないこと取り混ぜたネガティブ・キャンペーンが成功し小差で勝っている。

 政権・与党陣営はこれに味をしめている。本番でも当然、その作戦だが、その前にハンナラ党内でお互い足を引っ張る乱打戦になっている。10年ぶりの政権交代を期待する保守層のイラ立ちは強まるばかりだ。

 それにしても“過去”を中心にした相手の疑惑や弱点の執拗(しつよう)な追及、そして相手に対する「道徳性」の強調。何かを連想しないか。そう、日韓関係における“過去”をネタにした韓国側の執拗な日本非難・追及に似ている?

 相手を非難することで民族心理として自ら優位に立とうとする-外交も同じなのだ。北朝鮮が毎日、日本非難ばかりやっているのもそうだ。韓国の政治文化はもちろん、韓国社会、韓国人そのものを知る上でも大統領選は実に興味深いイベントである。

(2007/07/21 08:36)

 

:2007:07/20/23:50  ++  【正論】日本大学教授・百地章 憲法問題こそ参院選の焦点

■この選挙が改憲の成否決することも

 ≪「年金選挙」への疑問≫

 参院選も中盤を迎え、争点はやや変化してきたが、依然「年金選挙」の様相を呈している。一昨年の郵政解散では、郵政民営化問題が唯一の争点とされ、シングル・イシュー選挙の弊害が厳しく批判されたはずであった。それにもかかわらず、今回も同じ過ちを繰り返そうとするのか。

 もちろん年金問題は国民の切実な関心事であり、これが参院選の争点の一つとされるのは当然である。しかし、解散がなく、長期間国会に議席を有する参議院議員に託すべき事柄は、年金問題だけではあるまい。

 そもそも、年金問題発生の主原因が、自治労に支えられた社会保険庁の「親方日の丸」的体質にあったことは、先の検証委員会中間報告が示すとおりである。であればこそ安倍内閣は旧国鉄と同様、社会保険庁を解体し、民営化によって抜本的解決を目指した。

 民主党がこの「宙に浮いた年金」問題を国会で取り上げ、解決のきっかけを作った功績は大きい。しかし、その民主党の現職参議院議員や候補者の中には、5人もの自治労幹部(現・元)がいる。民主党が社保庁を解体する改革関連法案に反対したのは、これが理由なのであろうか。

 ≪隣国の軍事的脅威思え≫

 参院選の最大の争点とは何か。それは参議院にふさわしい国家の根幹にかかわる長期的課題、例えば憲法改正、外交、防衛、教育などといったテーマである。

 憲法改正国民投票法の成立によって、憲法改正問題は全く新しい局面に突入した。3年後には国会によって憲法改正の発議がなされる可能性が出てきたからである。参議院議員の任期は6年あり、今回選出される議員の任期中に憲法改正の発議がなされる可能性はかなり高い。その際、参議院に憲法改正問題を託すに足る人材を確保できているかどうかは、文字通り国の命運を決する。

 各党のマニフェストを見ると、自民党は155の約束のトップに「新憲法制定の推進」をあげているが、7つの重点課題の中では、最後尾に置かれてしまった。これに対して、年金と共に、憲法9条改正反対を前面に打ち出しているのが、共産党と社民党である。安倍晋三総理の主張する「戦後レジームからの脱却」の中心課題は憲法改正のはずである。なぜこの問題をもっと積極的に取り上げないのか。

 現在、憲法改正を支持する国民は、各種世論調査でほぼ過半数を占めているが、ここ数年で改憲支持の国民は約1割(『日経新聞』)から2割(『読売新聞』)も減少してしまった。これは護憲派の巻き返しによるものであろう。もし今回の参院選で護憲派が3分の1以上の議席を占めることになれば、当分、改憲の発議は行えなくなる。

 実は、昭和27年の講和独立前後から、憲法9条改正の機運が一挙に高まったことがあった。この時、護憲派はいち早く学者・文化人を中心に「平和憲法擁護の会」を立ち上げ、さらに組合やマスメディアまで巻き込んで「憲法擁護国民連合」を結成している。そして憲法改正反対の国民運動を展開し、昭和30年2月の衆院選と翌31年7月の参院選において、3分の1以上の護憲勢力を確保することに成功した。そのため、自主憲法制定を掲げて行われた昭和30年11月の保守合同(自民党の結成)も結果的には遅きに失し、結局、憲法改正は実現できなかった。

 それ故、もし同じ轍(てつ)を踏み、今回の参院選で改憲勢力が後退すれば、憲法改正の機会は大きく遠のく。増大する中国や北朝鮮の軍事的脅威を前にして、果たしてそれで良いのか。

 ≪外国人参政権問題争点に≫

 加えて、国の根幹にかかわる憲法問題として各党に聞きたいのは、外国人参政権問題である。近年永住外国人に対して地方参政権を付与すべきだとする意見もある。しかし参政権問題の本質は、運命共同体としての国家のかじ取りを外国人に委ねてしまっても良いのかということにある。国政と地方政治が切り離せない以上、これは地方参政権についてもいえる。

 この問題について、民主党は結党時の「基本政策」に「定住外国人の地方参政権の早期実現」を掲げ、小沢一郎代表や鳩山由紀夫幹事長らも外国人参政権に賛成している。一方、これに強く反対してきたのは自民党の安倍総裁や、彼が復党させた衛藤晟一氏らであった。

 政権選択選挙などといった声も聞かれる以上、この問題についてもきちんとした論議を行うべきではなかろうか。(ももち あきら)

(2007/07/20 06:19)

:2007:07/20/12:09  ++  グーグル、PC広告主向けにモバイル広告のキャンペーンとして利用できる「AdWords ビジネスページ」日本版

 グーグルは、「Google AdWords」の新しい機能として、広告主が無料で簡単にウェブページを作成して顧客に提供できるようにする「AdWords ビジネスページ」を開始した。利用は無料。

 この機能は、PC にもモバイルにも対応しており、これまでPC向けのウェブページのみで「AdWords」を利用していた広告主も、モバイル広告のキャンペーンでも利用できるようにするもの。米国ではすでに2007年5月から提供しており、収益拡大の新たな機会を得たとして、多くの広告主に評価されているとしている。

 Google AdWords のPC 向けおよび、モバイル向け広告を作成するプロセスに、それぞれ組み込まれており、無料で簡単にページが作成できる。ページを作成すると、AdWords アカウント内のキャンペーン管理タブの中に「AdWords ビジネスページ」へのリンクが追加される仕組み。このリンクをクリックすると、作成したページの内容を確認、修正、変更することができる。

:2007:07/17/15:41  ++  【正論】ジェームス・アワー 不可解な日本メディアの安倍批判

■何が真に重要か熟考を期待する

 ≪日本経済は悪化?≫

 7月の最初の10日を東京で過ごした私は、日本のメディアの多くが安倍内閣に否定的な見解を示しているのを知り、驚いた。もし、私が日本のことをよく知らなかったら日本経済がきわめて悪い状態にあるからに違いない、あるいは日本にとって通常最も重要な国内問題である経済と、外交問題での日米関係の処理を安倍首相が誤ったからに違いない、と思っただろう。

 しかし、これら経済、外交などの面で安倍内閣はうまくやっているように思える。日本経済は劇的ではないにしても堅調な成長を続けており、株式市場も上向きだ。米国で聞いたように、私は日本でも超富裕層と一般庶民の間の格差があまりにも大きく、より大きくなってきているとの不満の声を聞いた。グローバリゼーションは日本や他の先進国で超富裕層を生みだしつつあるようだが、中流層もなお、うまくやっているようにみえる。ほとんどの日本人が自身を中流だと考えているのは、いうまでもない。

 小泉前首相とブッシュ米大統領の関係があまりに良好だったので、安倍首相がそれよりうまくやるとは信じがたい。しかし、ブッシュ大統領は、小泉前首相に対して抱いたのと同様に、安倍首相に対しても肯定的な感情を抱いており、安倍首相夫人もアメリカ人にその誠実さを印象づけたように思える。

 小泉前首相は時として、ブッシュ大統領と親密すぎる、あるいは従順すぎるとさえ批判されたが、そのような批判はばかげている。小泉前首相はブッシュ大統領の命令でイラクに陸上自衛隊の兵士を派遣したわけではないし、安倍首相もまた、ブッシュ大統領の命令を受けてインド洋上への海上自衛隊艦船やイラクへの航空自衛隊機の派遣を決めたわけではない。

 ≪安全保障への脅威≫

 小泉前首相と安倍首相が十分に理解していることは、日本が北朝鮮によって容易ならぬ安全保障上の脅威に直面し、かつ膨張を続ける不透明な中国の軍事力という現実に直面している事実なのだ。日本は核武装した狂人や中国人民解放軍に単独では立ち向かうことはできないのだ。

 小泉前首相は、靖国参拝と、それゆえ日本と中国、韓国との関係を不必要に損なってしまったと批判された。私は、日本の首相には靖国に参拝する権利があり、中国や韓国は政治的動機のみで靖国参拝を批判していると考えるが、安倍首相は北京とソウルへの訪問によって、日中、日韓関係を改善したようだ。さらに安倍首相は、日豪共同宣言に署名することで、両国の安全保障協力を強化した。

 だから、私はなぜ日本のメディアが安倍政権をお粗末だと論じるのか、不思議に思っている。もちろん、私は安倍内閣の3人の閣僚が辞任(1人は自殺)したことを知っている。どの場合も、私は適材が任命されたと信じる。しかし、ひとたび問題が起きると、いかに大臣としての能力があったとしても、個人的な問題が職務遂行を不可能にしたことを熟慮した後、更迭されたのである。

 ≪成功ゆえの苦しみ≫

 久間防衛相の辞任は、私が東京にいるときに起きた。しかし、これまでと同様、安倍首相は早まったり、感情的になったりせず、慎重に公正に行動した。そして、安倍首相は辞任を受容する時だと判断したとき、非常に有能な小池百合子氏を後任に選んだ。

 私は小池氏がアラビア語や英語を流暢(りゅうちょう)に話すというだけの理由で「有能だ」と言うわけではない。彼女が国家安全保障の専門家で、十分な政治的指導力を発揮していたから「有能」と言うのである。

 私は米国テネシー州の我が家に戻り、中高年の人々に日米関係を教えている。学生の1人が私に尋ねた。日本の女性は、今も男性と平等の社会的地位を与えられていないのか、と。私はアメリカにはいまだかつて女性の国防相がいたことはないと答えた。

 東京を去るにあたっての私の結論は、安倍首相はこれまでの成功ゆえに苦しんでいるということである。彼は国内経済と外交政策という膨大で重要な問題を非常にうまく処理してきたので、彼を批判する他の理由を見つけるしかないメディアもあるのだ。

 年金問題は一過性というより永続的な管理の問題であり、安倍首相はなんとか解決しようとしている。しかし、2001年以来の日本政治の成功に苛立(いらだ)っているメディアもあって、それらは安倍首相の行動のことごとくを失敗とみなすのに忙しいのだ。

 私は7月29日の参院選投票日前に、日本の有権者たちが真に重要なことは何かを熟考するように期待する。

(米バンダービルト大学教授、日米研究協力センター所長 James E Auer)

(2007/07/17 05:04)

:2007:07/17/11:54  ++  セカンドライフ、グーグル、セールスフォース--ウェブプラットフォーム企業にみる勝者の法則

共通点は?

 Facebook、Second Life、Google、Salesforce.comはみな、アプリケーションから出発してウェブプラットフォームを構築した企業で、開発者に互換性のあるプログラムを開発させ、企業にはプラットフォームのエコシステムからビジネスを構築させた。企業の幹部たちは米国時間7月12日、Fortune誌の新企画「iMeme: Thinkers of Tech」カンファレンスのパネルディスカッションで、これは将来の波だと語った。このイベントはあか抜けした雰囲気を強調するためか、サンフランシスコのRitz-Carltonホテルの部屋に並んだHerman Miller製Aeronチェアの操作法解説から始まった。

 顧客関係管理(CRM)を専門とするSalesforce.comの最高経営責任者(CEO)Marc Benioff氏は「インターネットは新しいOSだ。インターネット上のキラーアプリが、革新を生むコミュニティを形成するプラットフォームになりつつある。業界にとって、まったく新しい章だ」と述べた。

 同氏は「コアサービスの価値を高めるのが、プラットフォームの力だ」と述べた。外部の開発者に開放することで、プラットフォームを新しい市場へと拡張してゆくことができるという。たとえば、Salesforce.comでThomson FinancialとDow Jonesが行ったアプリケーション開発のおかげで、Salesforceは「金融サービス市場の主要なプレーヤー」になったという。

 Benioff氏は「われわれは(ビジネスソフトウェアプロバイダの)Siebel(Systems)に取って代わることができた。 彼らはキラーアプリケーションを提供したと、プラットフォームの提供へと踏み切らなかった。そのようなチャレンジなしで、SAPやOracleのような主要プレーヤーにはなれない」と述べた。

Facebookにアプリが押し寄せたとき

 インターネット経由でビジネス向けのSaaS (software as a service)をホスティングする会社を率い、ドットコムビジネスの第一人者ともいえるBenioff氏。そんなBenioff氏の隣には、ほんの4年ほど前に大学の寮で人気ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)Facebookを開設した、23歳のMark Zuckerberg氏が座っている。Facebookは外部の開発者にサイトを開放し、大学生以外にもサイトの利用を許可した結果、メンバー登録の急増につながった。

 Zuckerberg氏は、オンラインの友人や知人「を介するのが、コミュニケーションを取る上でもっとも自然で効果的な方法だ。プラットフォームの開放はこの考えを推し進めるためのステップに過ぎなかった」と述べた。

 同氏は「社内で使用しているのと同じツールを提供し、外部開発者が作ったアプリを社内開発したアプリと同様に扱う」と付け加えた。

 成果はすぐに現れた。Facebookがプラットフォームを開放した2007年5月後半以来、何千ものアプリケーションがリリースされている。Zuckerberg氏は「たしかに、当初の期待よりもやや速い成長だった。準備期間があるものだと考えていた。全体のプロセスが約1週間に集約された」と述べた。

 同氏によると、最初にリリースされたアプリケーションは1週間で非常に多くのユーザーを獲得し、ユーザーの半分以上がアプリケーションをFacebookのページに追加したという。

 Zuckerberg氏は「常により高いレベルを目指し続ける。開発者に提供しなければならないものも、ユーザーにコントロールをまかせられるものも、まだまだたくさんある」と述べた。

 Googleの検索製品およびユーザーエクスペリエンス担当バイスプレジデントMarissa Mayer氏は、Zuckerberg氏に同感であり、テクノロジー企業ではプラットホームが自然に形成されることは多いと述べた。サーチエンジンは、ウェブサイトを所有する人なら誰でもサイトから収入を得られるような広告システムを提供する点において、これにあてはまる。Mayer氏によるとGoogleはさらに、ガジェット(Googleのホームページや、そのほかのサイトなどに設置できるサードパーティアプリケーション)を配布している。開発者によるマッシュアップの作成や、データの重ね合わせを容易にすることも行った。Googleはたとえば、オフラインで動作可能なAjaxアプリケーションの開発を支援するブラウザ用プラグイン「Google Gears」をリリースしている。

 Mayer氏によるとGoogleは、開発者向けツールのリリースだけにとどまらず、さらに前進するという。

 同氏は「実装ができないアイデアは多数ある・・・なのでこれらは公開する意義があると思っている。ユーザーがわれわれのサーバ上でわれわれのプラットフォームを利用しながら開発できる、というのが最終的な形になる」と述べた。同氏は、このアイデアは複雑

なので「関心を持っているが、あまり進展していない」と付け加えた。

 バーチャルリアリティ環境「Second Life」を製作したLinden Labsの最高経営責任者(CEO)Philip Rosedale氏は、Second LifeやFacebookの人気は、ユーザーに新しくて、活動するのに心地よい環境を築いたことにあると述べた。

 「提供されているプラットフォームの多くは、現実の世界でできることを実現させてくれる・・・しかも、ものすごいスピードでね」(Rosedale氏)

:2007:07/17/11:50  ++  Second Life日本語版、ついに登場--メニュー日本語化で使いやすく

Linden Labの3D仮想空間「Second Life」に、ついに日本語版が登場した。登録からアプリケーションのインストール、操作がすべて日本語でできるため、日本のユーザーにとっては利用するための敷居がようやく下がることになる。

 7月13日に日本語版のサイトがリニューアルし、日本語ベータ版の配布が始まった。対応OSはWindows 2000/XP、Mac OS X、Linuxの3種類。クライアントソフトのバージョンは1.18.0.6となる。

Second Lifeサイト 新しくなったSecond Lifeのサイト

 これまでもメニューなどは一部日本語化されていたが、今回のベータ版では完全にメニューが日本語化している。また、サポートもメールベースながら日本語で受けられるようになった。ただし、Second Lifeに最初にアクセスしたときに行われるオリエンテーションの日本語化はこれからで、利用料金の支払いはドルのみとなっている。

 現在Second Lifeの登録ユーザー数は現在約800万人。Linden Lab日本担当の土居純氏によれば、うち17万人が日本のユーザーだといい、「急ピッチで伸びている」とのことだ。

Second Lifeのメニューが日本語化 メニューはすべて日本語化され、操作しやすくなった(クリックすると拡大します

追記(2007年7月17日)記者が確認したところ、オリエンテーションの画面は日本語化されていることがわかった。ただし利用規約など一部でまだ日本語化されていない部分がある。

:2007:07/16/16:51  ++  新潟県柏崎市などで震度6強、3人死亡200人以上けが

16日午前10時13分ごろ、新潟県上中越沖を震源とする地震があり、新潟県長岡市と柏崎市、刈羽村、長野県飯綱町で震度6強、新潟県上越市、小千谷市、出雲崎町で震度6弱を観測した。

 新潟県三条市、長野県中野市などで震度5強、新潟県加茂市、川口町、石川県輪島市などで震度5弱を記録し、東北から関東、東海地方など広い範囲で震度3以上を観測した。

 この地震で、3人が死亡し、200人以上のけが人が出ている。

 柏崎市の柏崎中央病院には約20人が搬送され、このうち、同市新花町、中村エツ子さん(81)と刈羽村井岡、五十嵐キヨさん(79)の2人が死亡。同市災害対策本部によると、さらに、同市内で1人の死亡が確認された。同市の刈羽郡総合病院や長岡市の長岡赤十字病院などにも多数のけが人が運ばれている。警察庁によると、長野県内でも重傷者2人、軽傷者4人が出ている。

:2007:07/14/17:12  ++  NEC・富士通、ソフト開発をアジアで分業・中印で1万人体制に

NECと富士通はそれぞれ3年内をめどに、アジアのソフト開発要員を現在の2―3倍となる1万人以上に増やし、インドや中国を核とする本格的な国際分業体制を構築する。企業の情報投資が拡大する一方、家電などに搭載するソフトも急増。日本全体で15万人のソフト要員が不足しているとされる。日本を代表する情報通信企業である両社のアジアシフトで、先行する米企業などとの「頭脳」争奪戦が激しくなりそうだ。

 NECは2010年までにアジアのソフト開発要員を現在の2倍の1万人強に増やす。中国で75%増の7000人、インドで2倍の2000人にするほか、ベトナムやフィリピンでも増員。2年後にはNECが本体で抱える国内要員と同規模の人員をアジアで確保する。

:2007:07/13/10:59  ++  【主張】07参院選 年金 党利党略抜きで論議せよ

少子高齢化が加速し、担い手が減って受給者が増えるなか、将来の「年金制度」をどう変えていくか。どうすれば安定した年金運営ができるのか。これが「年金問題」最大の課題であり、今回の参院選の争点でもある。

 にもかかわらず、選挙を前にした国会での与野党の論争は、宙に浮いた年金記録の紛失問題に終始した。

 これでは本末転倒だ。老後への不安はなくならない。それどころか、年金不信は募るばかりである。

 今後の選挙戦で各党はあるべき年金制度の姿を分かりやすく国民に説明し、有権者の審判を仰ぐべきだ。

 11日の党首討論では、年金制度の財源論を中心に各党の本音がおぼろげながら見えた。

 たとえば、基礎年金の国庫負担割合が引き上げられるための安定財源確保について、安倍晋三首相は「消費税を上げなくて済む状況にもっていきたい。徹底した歳出削減に取り組む。新経済成長戦略で税収増を何とか実現していく」と述べた。

 民主党は従来の公約を踏襲し、基礎年金財源の全額税方式をとる。しかし、財源については2年前の衆院選の年金目的消費税(税率3%引き上げ)を引っ込め、現行の消費税率のまま全額を基礎年金財源に充てるという。

 有権者の懐に直接触れるせいか、どうも財源論については与野党ともに歯切れが悪い。まだまだ、議論が足りないからだろう。もっとはっきりとした論議を展開してもらいたい。

 年金情報をのぞき見して漏らしたり、不正手続きで保険料の納付率アップを装ったりと、次々と不祥事が発覚した社会保険庁を解体し、改革する法律は成立した。3年後に非公務員型公法人の日本年金機構に年金業務は引き継がれる。

 しかし、どこまで民間委託し、どうやって問題職員をふるいにかけるのかなど、具体的なことは何も決まっていない。歳入庁構想もあるだろう。与野党はもっと真剣に議論すべきだ。

 単に「100年安心」と言われても国民は納得しない。少子高齢化や経済成長、世論など多岐にわたる要素を念頭に、党利党略抜きに論議を深めてもらいたい。それが国民の年金不信解消につながる。

(2007/07/13 05:07)

:2007:07/13/09:19  ++  明治生まれの超老舗同士がデジタル化で手を組んだ--大日本印刷と丸善、業務・資本提携

丸善と大日本印刷は7月12日、業務・資本提携すると発表した。丸善の主要業務である教育や学術市場をはじめとする業務全般で協業する。また大日本印刷(DNP)は大和証券エスエムビーシープリンシパル・インベストメント(DPI)からDPIが所有する丸善の株式のうち4万4480株(発行済み株式の25.5%)を譲受し、丸善の筆頭株主となる。

 丸善はDNPが保有する印刷技術や情報技術のノウハウの提供を受け、顧客の利便性や満足度を高める。また事業の拡大を図る狙いがある。

 丸善は書店などの店舗事業のほか、大学などに向けた書籍販売や図書館運営請負などの教育・学術事業、理工系の専門書籍の出版事業、小売店舗向けの店舗内装事業がある。これらのすべての事業でDNPと提携する。

丸善の小城社長(左)とDNPの高波副社長 握手を交わす丸善の小城社長(左)とDNPの高波副社長

 具体的には、ICタグを活用した図書館内の書籍管理など業務の効率化、3D技術を生かした医療等の遠隔教育、店頭POPのディスプレイ化、絶版本を書店の店頭で印刷、販売するプリントオンデマンド出版物、出版物の電子化などが想定できるという。このほか、店舗内装事業でも大日本印刷の商品を活用したいとした。

 一方、DNPは丸善との協業を通じて新規事業を開発する。また、書店での販売情報などを既存顧客の出版社に提供し、事業拡大につなげる。

 丸善は1869年(明治2年)、DNPは1876年(明治9年)創業のいわば超老舗企業。今回の提携について、丸善代表取締役社長の小城武彦氏は「両社とも似た事業を提供し、創業130年を超える生い立ちを持っている。また、1897年(明治30年)から出している印刷物は、第1号からずっとDNPに印刷を依頼している。大変すばらしいパートナーだ」と話す。

 また、DNPも「DPIとの株式譲渡契約は基本合意に達したばかりでまだ価格も決定していない状態だが、業務提携の話が先行して進んでおり、実効性を早くあげるべく発表した」(常務取締役の森野鉄治氏)と相思相愛ぶりをアピールした。

 両社によれば、今回の話はDPIがDNPに持ちかけたものという。丸善は少子化や研究資料データのデジタル化などに伴い業績が低迷。2005年に大幅な減資とDPIを引き受け先とした第三者割当増資を行い、経営再建に取り組んでいた。負債等の処理が済んだとして、DPIは丸善との事業の相乗効果が見込めるDNPに保有株式を譲渡することとした。DPIの持株比率は12.7%となる。

 「4月にDPIから照会があり、5月から話し合いを始めた」(森野氏)と話はとんとん拍子に進んだようだ。

 丸善株の12日の終値は前日比36円増(19.25%増)の223円と急伸している。

:2007:07/13/09:11  ++  「広告モデルやオンライン版も」:MSが模索するOffice販売戦略

デンバー発--Microsoftは、「Office」製品の広告収入版またはオンライン版に関し、まだ計画を発表できる段階にはないが、明らかにそれらについて考察中である。

 MicrosoftのコーポレートバイスプレジデントであるChris Capossela氏は、当地で開催された同社のWorldwide Partner Conferenceでのインタビューにおいて、「われわれはこの2年間、新たなビジネスモデルや配布戦略に向けたマーケティングに関し知恵をしぼってきた」と述べた。

 「それはまさしく、われわれが獲得できていないユーザー層がいると思える部分に対してである」(Capossela氏)

 このようなユーザー層の多くは新興市場に存在する。そのため、Microsoftは、Officeを2~3カ月間使用可能にするプリペイドカードなどを使って、同ユーザー層の獲得を試みている。しかしCapossela氏は、米国や欧州などの先進市場におけるユーザーを獲得するビジネス機会もあることを認めている。

 Capossela氏は、「こちらの市場では多くの人々がOfficeを使用しているが、旧バージョンを使用している場合が多い」と述べ、同社はOfficeの価格体系や提供形態を変えることにより、最新版の使用を促すことができるかどうか、積極的に試行していると付け加えた。

 「米国でプリペイドカードの戦略が成功するだろうか? われわれはそうは思わないが、そのような問題を自問自答している」と同氏は述べた。

 ひとつの可能性としては、「Office Live」スイートのソフトウェアの一部として、何らかの生産性ツールをオンラインで提供することである。BusinessWeekは2006年、Microsoftがこのような動きを模索中であると報じた。

次の動きは何か?

 Microsoftは自社の方向性について明らかにしていないが、同社最高経営責任者(CEO)であるSteve Ballmer氏は米国時間7月10日の基調講演で、Microsoftは、Office Live製品ラインに個人向けサービスを追加する計画に向け、既存の小規模ビジネス向けOffice Liveツールのブランドを近々再編成する予定であると述べた。

 Office Liveは当初、主に電子メールやウェブホスティングなどインターネット上の新しいサービスを可能とすることを目的として開始された。しかしMicrosoftは、広告で収入を得る形態で、同社の一般消費者向けソフトウェアをさらに無償で提供するべきかどうかについて、かなり前から思案中である。

 CNET News.comが2005年に報じたようにMicrosoft社内の方針説明書では、「Microsoft Works」の広告付きバージョンを論証しており、Works一式が搭載された新しいコンピュータを販売してもMicrosoftは1台あたり数ドルしか得ることができないと述べている。広告収入型にすれば容易にその売り上げを上回ることができるというわけだ。

 この経済的理論は実際に正しいかもしれないが、Capossela氏は売り上げだけの問題ではないと指摘している。問題の1つは、スプレッドシートやワープロプログラムを使用するときにユーザーが広告を見たいと思うだろうかという点である。

 「経済的理論をそのまま適用することはできない」と同氏は述べた。

 またMicrosoftは、OfficeまたはWorks製品ライン全体をその対象とする必要はないかもしれない。同社は、オンラインサービスにより既存のソフトウェア製品を補助する「サービスを付加したソフトウェア」という戦略を前面に打ち出している。インターネット上では同社生産性ツールの「簡易」バージョンを提供し、より高度な文書作成にはOfficeの完全版を提供するというのが、そのモデルに合った選択肢の1つかもしれない。

 インタビューでのCapossela氏の発言と、講演でのBallmer氏の発言は、Microsoftが「Outlook」と「Exchange」で行ってきたことを指摘している。つまり、電子メールとカレンダーデータをデスクトッププログラムのOutlookで包括的に管理する一方で、「Outlook Web Access」を使ったウェブブラウザから、「Outlook Mobile」を使ったスマートフォンから、そして、音声認識を使った通常の電話からアクセスできるという点だ。

 「実にすばらしいソリューションだ」とCapossela氏は述べる。たが、Microsoftが今後、「Word」「PowerPoint」といった他のOfficeアプリケーションでも同じアプローチをとるのかについては明言を避けた。

 Googleはすでに、ウェブベースの軽量なワープロと表計算プログラム「Google Docs and Spreadsheets」を提供しており、プレゼンテーションソフトウェアにも拡大する計画だ。

 Microsoftは、GoogleとOpenOffice(ともに無料で提供されている)との競争に直面しているものの、Officeを含む部門、Microsoft Business Divisionの売上げは好調だ。Officeを主事業とするBusiness Divisionの売上高は直近の四半期、前年同期の36億ドルから48億ドルへと増えている。営業利益は24億ドルから34億ドルに増えた。

 Capossela氏は、デスクトップのオフィスソフトとウェブベースのオフィスソフトに大きな違いはないと述べた。

 「この分野をリードするベンダーであることを光栄に思っており、今後もそうありたいと思っている」とCapossela氏は言う。そして、「広告付きソフトウェア、ウェブベースのソフトウェア、サーバとあらゆる可能性を検討している」と続けた。

:2007:07/13/09:07  ++  任天堂、フィットネスゲーム「Wii Fit」と新型コントローラ発表

「Wii Sports」でゲームプレーヤーがソファーに座らず立ち上がるようになってから、「Wii」は健康指向のゲーマーの大きな注目を集めるようになった。Wiiリモコンのモーション検出機能は、各種ゲームのなかの振り回す、振り下ろす、回転させるといったさまざまな動きでプレーヤーを活動的にさせる。今回、任天堂は次の一歩を踏みだしてWiiをフィットネス機器に仕上げてきた。しかも、Wiiリモコンを使わずにだ。

 任天堂は、米国時間7月11日の記者会見で「Wii Fit」を発表した。その名前が示すように、Wii FitはWii用のフィットネスゲームとなっている。Nintendo DSで「脳トレ」が頭の運動になったのと同じように、Wii FitはWiiを使って体の運動を行う。エアロビクスからバランスゲームまで、搭載されるゲームは40種類あり、体の健康維持を助けるようになっている。脳トレやWii Sports同様、Wii Fitもさまざまな運動データを記録およびトラッキングするため、時間の経過に伴う進歩状況を監視できる。

 驚いたことに、Wii FitはWiiリモコンではなく、「Wii Balance Board」(WBB)という全く新しいコントローラを使う。WBBは床に敷き、WiiリモコンのようにWiiにワイヤレス接続して使うようになっている。ボード上に立てば体重やバランスも計測され、立ち方、寄りかかり方、体重の移動、あるいは体の移動までゲームがトラッキングする。ちょうどWiiリモコンと「Dance Dance Revolution」のパッドを組み合わせたような感じだ。

 任天堂は発売日を発表していないが、Wii Fitはおそらく「Mario Kart Wii」など、任天堂のほかの主力ゲームの出荷が予定される2008年第1四半期までには店頭に並ぶものと思われる。

任天堂が米国時間7月11日に発表した「Wii Fit」では、床に敷いた「Wii Balance Board」とい新しいコントローラを使用する。 任天堂が米国時間7月11日に発表した「Wii Fit」では、床に敷いた「Wii Balance Board」という新しいコントローラを使用する。
提供:Caroline McCarthy/CNET News.com

:2007:07/12/09:48  ++  「誰かが言わないとモバイル業界は変わらない」--モバ研報告書の真意

 「誰かが言わないと変わらないと思ってるから。それで変わるなら、どう言われてもいいです」――モバイル業界の変革者はこう言って少し寂しそうに笑う。

 6月26日に総務省のモバイルビジネス研究会が発表した報告書案は、業界に大きな衝撃を与えた。既存の携帯電話事業者を中心とした垂直統合型のビジネスモデルから、ユーザーが通信事業者や端末、サービスをそれぞれ選べる水平分業型のモデルへと移行させようというのだ。

 このモバイルビジネス研究会を指揮した総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課長の谷脇康彦氏は、長年情報通信政策に携わり、モバイル業界のオープン化を推進してきた人物だ。今回の報告書案に対する業界からの反発の声も、当然谷脇氏の耳には入っている。

 しかし研究会の狙いは既存のビジネスを壊すところにあるわけではない。ユーザーに選択肢を与え、競争を促すことでモバイル市場の活性化と拡大を図る点にある。

 今回の報告書についても、さらなる意見を求めるべく7月31日までパブリックコメントを募集中だ。個人でもコメントは提出可能といい、さまざまな角度からの意見や要望を寄せて欲しいと話す。

 7月6日には、福岡県のホテル日航福岡で開催されたシーネットネットワークスジャパン主催のイベント「モバイル・ビジネス・サミット 2007」で講演し、報告書案の狙いやここに込めた思いを語った。総務省がモバイル業界の未来をどのように描いているのか、谷脇氏に話を聞いた。

――今回のモバイルビジネス研究会は、そもそもどういった経緯で開催されたものなのでしょう。

 2006年9月、電気通信分野における公正な競争ルールを整備するためのロードマップを「新競争促進プログラム2010」として発表しました。その中で、モバイルビジネスを活性化していくことを打ち出しています。具体的にはMVNO(無線通信回線を他社から借りてサービスを提供する事業者のこと)事業化ガイドラインの見直しや、競争促進のための環境を整備していくことを明記しました。ここから準備をして、研究会が始まったのが2007年1月というわけです。

 もっとさかのぼると、2005年10月から2006年9月までの1年間、「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」を開催し、本格的なIP化時代を展望した電気通信事業分野の競争政策のあり方について検討をしてきました。この懇談会の報告書の中にもSIMロックの解除や販売奨励金の廃止については書かれています。つまり、2年ほど前からこういった議論は進めてきたんです。

――既存の垂直統合型モデルではうまくいかないとお考えですか。

谷脇康彦氏 谷脇氏によれば、米国でもSkypeが携帯ネットワークをオープンにするよう米国連邦通信委員会(FCC)に求めているといい、世界的な流れが起きているとのことだ

 垂直統合型モデル自体が悪いわけではありません。ワンストップでユーザーが簡単に利用できるというのはとても良いことです。ただ、市場にそれしか選択肢がないというのは、多様性という点で望ましくないのではないかという問題意識を持っています。

 今までのモデルもあっていいんですが、それと並存する形で別のモデルがないとおかしい。固定通信に専用の電話機やPCがないのと同じことです。

――モバイル業界の将来像をどのように描いていますか。

 役所が「こうなるはずだ」という時代ではありません。ただ、競争が生まれれば当然市場は広がると期待しています。単に端末と通信サービスの市場だけではなく、その周辺、もしくはその上の層――アプリケーションやコンテンツがもっと広がるのではないかという点を模索してみてもいいんじゃないかと思います。

 今回の研究会の報告書にも、潜在可能性として2つのことが挙げられています。1つはコンテンツ配信の部分。2004年の調査結果を見ると、日本のメディア・ソフト市場規模は11兆1000億円。そのうちネットワーク経由で配信されているものが6.2%、モバイル向けはわずか2.3%です。ここにはまだまだ可能性があります。

 もう1つは法人市場です。すべての機能が盛り込まれた多機能端末ではなく、機能を省いた端末に必要なアプリケーションを搭載していく形があると思います。そうなると2台目の需要が生まれてくるかもしれないし、ある目的に特化したサービスが生まれるかもしれない。

――産業が横に広がるということですね。

 報告書のサブタイトルは「オープン型モバイルビジネス環境の実現に向けて」です。これがキーコンセプトです。固定通信の場合はオープン型になっていて、端末とサービスが切り離されている。どの通信会社と契約していても同じサイトが見られます。ところがモバイルはそうなっていません。

 ただ、2010年頃、第3.9世代(3.9G)になれば、モバイルの世界でも通信速度が下り100Mbps程度までいく可能性があります。固定通信も移動体通信も100Mbps程度の通信速度が出る環境で、固定通信はオープンなモデル、移動体通信はクローズドなモデルのまま、両者の融合が進む。そのときに、どっちに寄るかといえばオープンなほうに寄っていくでしょう。そうでないと、ユビキタス環境ですべての端末に携帯電話事業者のブランドがつくことになる。これは違うでしょう。

――携帯電話事業者にとっては競争が激化しますね。

 通信伝送の部分だけで儲けるのは難しくなってきています。だからこそ今、携帯電話事業者はサービス面に力を入れています。多様なアライアンスを組むことで儲けてもらうことになるでしょう。競争自体を否定すると何も進みませんから、競争を前提に考えてもらうしかない。

――日本の端末メーカーの競争力が落ちていると言われています。

 販売奨励金を減らせば国際競争力が付くと思っているわけではありません。それはやや短絡的です。ただ、健全な競争環境を作れば、そこから端末の多様化、サービスの多様化が生まれて、ひいては国際競争力の強化につながると思っています。

 とはいえ、ハードランディングでは大変なことになります。少し時間を置いて、「2010年までにはこういう方向に持っていこう、そのためにみんなで考えようよ」という形で、議論をオープンにすることが最も大切だと考えています。

 (通信料金と端末価格の)分離モデルを規制で作れるかといえばできません。我々が規制でやらせることはできないんです。料金プランは事業者の経営の根幹にかかわる部分ですから、我々は方針を出して、それに沿った形にしてくださいとお願いする姿勢です。

 ただ、NTTドコモの中村(維夫)社長、KDDIの小野寺(正)社長は、今の販売奨励金は減らさないといけないと感じていらっしゃいますし、料金プランの見直しも考えているとおっしゃっていただいています。

――携帯電話のOSやアプリケーションでは海外に強い企業がいくつもあります。こういった企業と国内企業が戦っていくための支援や育成についてはどう考えますか。

 競争政策と産業政策というのは分けて考えないといけないですね。競争政策というとき、国内外を差別することはできません。そこは競争をしていただきます。

 他方で、産業政策、産業育成の視点も必要です。報告書の中では、端末を開発するときに端末間の相互接続性やソフトウェアなどの相互運用性を試験するコストが高いので、産業界と行政当局が連携してテストベッドを作りましょうと書いています。また、なるべく認証機能などをオープンにして、みんなで新しいビジネスを作っていこうということも書いています。

 また、今回、IDポータビリティという概念を打ち出しました。番号ポータビリティ制度を利用して通信事業者を変えた人は確かに同じ電話番号を使えるけれども、コンテンツは一度解約しないといけない。これはおかしいですよね。IDが持ち運びできればこの問題は改善されます。個人情報の問題を懸念する人もいますが、個人情報を持ち運ぶ必要はなく、認証さえできればいいんです。

――真の意味での分離ができるようにしないといけないということですね。

 周波数を持っている人がすべての経営資源を独占するのではなく、ほかの人がお金を払うのであれば使わせてあげて欲しいということなんです。

――総務省では今回の報告書を受けて「モバイルビジネス活性化プラン評価委員会」を設置する予定ですね。

 研究会の報告書は9月にまとまる予定です。その後、総務省がモバイルビジネス活性化プランを作成し、同時に評価委員会を作ります。評価委員会は部外の有識者の人に集まっていただき、活性化プランがどの程度実現しているのか、もしくはしていないのか、プランの見直しは必要かといった点について議論をしてもらいます。年に1回はプログレスレポート(進ちょく報告書)を提出してもらうなど、いろいろな形でプランの実現を促していきます。

 我々がやりたいのは、なるべく(期限などを)決めていくということ。それから、過程を透明にしておくこと。これがすごく大事だと思っています。

――報告書のロードマップは2011年までとなっていますね。これはなぜでしょうか。

 日本電信電話(NTT)は2010年までに、3000万世帯に光アクセスを提供するという目標を掲げています。また、総務省は2010年度までにブロードバンドが使えない地域をゼロにすることを掲げている。また、地上アナログ放送は2011年に停波します。つまり、2011年はすべての伝送がデジタル化する「デジタル元年」になります。

 また、3.9Gが実際に普及し始めるのが2010~2011年の頃ではないでしょうか。モバイルWiMAXは2010年ごろになればかなり普及してきている可能性があります。

――いまの携帯電話とモバイルWiMAXはどのように共存していくのでしょうか。

谷脇氏 谷脇氏は7月10日付けで料金サービス課から事業政策課に異動した。モバイル業界の変革はこれからだ

 やってみないとわかりません。ただ、モバイルWiMAXは高速データ通信が中心で、チップが小さいのでPCの中に実装されていく形になると思います。こうなれば、いままでとは全く異なるニーズが生まれてくる可能性があります。音声というより、IPベースの高速データ通信サービスが中心になるでしょう。だからこそ、事業者にはMVNOに無線設備を貸し出すことを義務付けます。これは免許方針を出す上で初めてのことです。

――端末認証についても整備していくと書かれていましたね。

 メーカーからも、どうするんだという話を頂いていました。モバイルWiMAXは免許制なので、無線LANとは違います。基本的には包括免許でいいとしたうえで、2007年中に結論を出すことにしました。技術適合の確認を取れば、あとはPCの中にモバイルWiMAXチップが入っていて、それを最初に認証したときに端末を認識する形でいいと思っています。

 今回の報告書はほとんど期限を決めています。フェムトセル(ユーザーが屋内に設置できる小型基地局)の取り扱いも2007年度内に結論を出します。規制や法律での取り扱いが混乱していたら前に進みません。とにかく前のめりで決めていくというのがいまの姿勢です。市場の流れを止めないということですね。我々も必死でやります。

 ネットワークがPSTNからIPに移るとなると、すべてのパラダイムが変わるはずなんです。どこか1つをいじろうとすると、全部が変わるはずです。ですから、全部一度にやらざるを得ません。

――これまでは通信会社が業界をリードしてきましたが、今後の競争はアプリケーションやミドルウェアに移っていくのでしょうか。

 コンテンツ、アプリが牽引していくというのが一番いいのではないでしょうか。

――しかし通信会社は設備投資が膨大にかかるわけですよね。

 ネットワークや設備を持っている企業の経営が傾いたら意味がないわけで、赤字になってまでネットワークを作れとは言えません。ネットワークの適正な対価とは何か、という点はきちんと議論しないといけないと思います。

:2007:07/11/10:11  ++  M&Aを生かす―買収の手腕を磨いて新たな成長軌道を(社説)

企業のM&A(企業の合併・買収)意欲が高まっている。豊富な手元資金を活用し、新たな成長軌道を切り開く動きである。しかし、買収ブームが世界的に過熱する中で、派手なM&Aは一歩間違えると、惨たんたる失敗に終わりかねない。買収や合併を企業価値向上に着実につなげる経営手腕やノウハウが、日本企業に求められている。
内容査定に専門チーム
 M&A仲介のレコフによると、過去十年で日本企業の絡んだM&Aの件数は約五倍に急増した。二〇〇六年は二千七百件に達し、今年も高水準で推移する。
 肝心なのは現実の成果だ。過去のM&Aを振り返ると、海外通信会社の買収や出資で一・七兆円の特別損失を計上したNTTグループなど大きくつまずいた例が少なくない。自力成長を基本としてきた日本企業はM&Aに不慣れで、買収の価格算定や買収後の事業統合に未熟だった。M&Aを成功に導くには買収にかかわるスキル(技能)を磨き、社内に蓄積していくことこそ重要だ。
 その点で参考になりそうなのが、ネットの玄関サイトを運営する日本のヤフーだ。有害情報の閲覧を規制するフィルタリング技術のサーフモンキー・アジア社、日本語処理技術に強いバックス社――。社員数にして数十人の小規模企業を、多い時に四半期に一、二社のペースで傘下におさめ、自社サイトの機能拡充につなげている。大株主の米ヤフーが新興のグーグルに押されているのに対し、日本のヤフーは活発な新サービス投入で成長力を維持するが、その一因は機動的な買収戦略にある。
 社内に買収先の資産査定を担当するチームを設け、あたかも「流れ作業」のようにM&Aを処理する体制を整えた。最も大事なのは「高値づかみをしないこと」。相手企業がいくら魅力的でも、価格が高すぎればあっさり見送るのがヤフー流だ。
 小企業を次々に買収し、競争力を高める手法は、米国ではR&D(研究開発)ならぬA&D(アクイジション=買収を通じた開発)経営の名称でよく知られている。創始者はネット機器で世界最大手のシスコシステムズ。変化の速いネット産業では、社内のリサーチ部門で基礎研究するより、優れた技術をもつベンチャー企業を買うほうが効率的、という割り切った考え方だ。
 一方、最近目立つのが、海外企業を傘下におさめ、グローバル化を加速する「内↓外」型の買収だ。昨年の東芝や日本板硝子の大型買収、さらに先週発表されたファーストリテイリングによる米衣料専門店バーニーズ・ニューヨークへの買収提案も同じ流れの上にある。
 外での巨大M&Aにはリスクもつきまとう。巨額の特損を出したNTTグループだけでなく、米IBMからハードディスク駆動装置事業を買った日立製作所や米ルーセント・テクノロジーズの光ファイバー部門を買収した古河電気工業など買収後に苦戦する例も目に付く。
 数少ない成功例の一つが、一九九九年に米RJRナビスコの米国外のたばこ事業を約一兆円で買収した日本たばこ産業(JT)だろう。当初は否定的な見方が強かったが、買収をテコにグローバル展開を成功させ、昨年には第二弾として英大手たばこのガラハー買収にも踏み切った。
「買われる」も選択肢
 もともと、たばこ事業は市場が成熟し、需要の乱高下などの変動要因が少ない。通信のような変化に富んだ市場に比べ、事業の先行きが見通しやすいといえる。さらにJTはRJR以前に英国で小型買収を実施し、社内に海外での営業や生産指導の経験者が育っていた。「人材の厚みこそ買収の成否を分ける」と同社の小泉光臣常務はいう。カネがあれば買収は可能だが、それを成功に導くには、やはり社内に蓄積した人材やスキルがモノをいう。
 「買う」だけでなく「買われる」という選択肢もある。東京商工会議所は中小企業の企業売買を仲介し、これまで十九件の成約にこぎつけた。「後継者難で、このままでは会社を畳むしかない」。こんな悩みを持つ経営者に買い手候補を紹介し、技術や人材を新天地で生かそうという発想だ。「買われる」ことも、新たな成長の出発点になりうる。
 日本企業がM&Aに目を向け始めたことは評価に値する。資本の再配置につながるM&Aは、経済全体を活性化する上でも有効だ。買収後の経営がつまずいては元も子もない。ブームに流されるのではなく、M&Aの腕を磨き、最大限の成果を引き出すことが、これからの企業経営に欠かせない課題である。

:2007:07/11/10:07  ++  マイクロソフト、医療情報システム、標準化を呼び掛け、導入費5割安く。

マイクロソフトは日本国内の医療機関向け情報システムの標準化に乗り出した。異なるメーカーのシステムをつなぐソフトの基本的な仕様を策定、富士通や日立製作所などシステム大手に採用を呼び掛ける。メーカーごとの独自性が強く、割高だった医療情報システムの導入費用を最大五割引き下げられる。大きく出遅れてきた国内医療機関のIT(情報技術)化を加速、医療費の抑制などが期待できる。
 医療機関は患者の診療記録を保存する電子カルテや会計、投薬指示、診療報酬明細書(レセプト)管理など複数の情報システムを使う。こうしたシステムはメーカーごとにデータ形式が異なるため一体的な運用が難しく、医療の効率化を妨げる要因になっている。
 マイクロソフトは医療関連ソフトをつなぐ基本的なルールを策定。電子カルテからレセプト管理ソフトに診療データを引き渡す際の手順や形式を決める。医療ソフトの基本機能や操作方法も統一する。年内に普及促進団体を設立、富士通や日立、NECなどシステム大手五―六社に参加を呼びかける。医師や看護師が参加する研究会も十一日に設立、利用者の立場で仕様を検証する。
 標準仕様が普及すれば、医療機関は割安な汎用ソフトを組み合わせてシステムを構築でき、導入費用の三―五割程度削減が見込めるという。予算が限られた中堅以下の医療機関でも導入しやすくなる。
 日本の医療機関のIT化は大きく出遅れてきた。韓国ではレセプトの九割以上をオンライン処理に移行、医療費の削減に大きな効果を上げたが、日本でのレセプトの電算化率は昨年十月時点で一八・五%(医科)。病院での電子カルテの普及率も〇五年十月時点で五%強にとどまる。