(2007/09/20 06:14)
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:2007:09/20/15:13 ++ 【正論】安倍首相辞任 平和・安全保障研究所理事長 西原正
■ユーラシア南西部の変動に注目せよ
≪冷戦後の国際変動の中心≫
12日の安倍総理の突然の辞任表明によって、日本の政治に大きな空白が生じてしまった。当面、インド洋における海上自衛隊の給油給水活動の継続を確実にする道筋が見えなくなっている。しかし、補給活動の継続は「国際公約」でないとしても、国際社会の強い期待である。海上自衛隊の活動は、国際テロ阻止行動の一環であり、その活動を停止することは日本の国際的責任の放棄である。民主党、とくに小沢代表はことの深刻さを認識すべきである。
冷戦終結後、多くの政府や識者は、国際政治変動の中心舞台は米ソが対峙(たいじ)していたヨーロッパから東アジアに移ったと認識していたが、実際には変動の源泉は中東、南西アジア、それに中央アジア、ロシア南部につづくイスラム教圏であった。湾岸戦争、アルカーイダやタリバン勢力に対する戦争、そしてイラク戦争、ロシア政府にテロ行為を繰り返すチェチェン民族過激派、レバノンでのイスラエル軍とイスラム教過激派武装勢力ヒズボラとの衝突など、冷戦後の主要な軍事衝突はこの地域で起きている。
この地域では、インドとパキスタンの核保有宣言があり、その間、パキスタンのカーン博士による国際的地下ネットワークを通してリビア、イラン、北朝鮮に核技術が流れた。イランの核技術がイスラム教国にさらに拡散する可能性もある。
このユーラシア南西地域の安全保障環境はますます悪化して、アフガニスタン、イラクなどにおける武力抗争の拡大によって、改善のめどがなんらついていない。広大なイスラム教圏は、テロリストの温床であり、ケシ栽培による世界的な麻薬の供給源(テロリストの主要財源の一つ)であり、世界有数の闇武器市場でもある。
≪安全保障環境は悪化傾向≫
悪いシナリオを描くならば、アフガンとパキスタンの国境が事実上消滅し、タリバンが両地域にまたがる勢力圏を確立し、一種の「タリバン国」を樹立するかもしれない。また最近のパキスタンのムシャラフ政権の失政と腐敗ぶりを見れば、イスラム過激派勢力が政権をとる事態も考慮しておくべきであろう。同国の軍部には上から下まで過激派に同情的な分子が多数いるので、軍部が分裂して、過激派軍部が反米、タリバン支持の政権を樹立することになれば、核兵器を管理下に置くだろう。また最近のバングラデシュに活動拠点をもつイスラム過激派がインドで起こす大規模テロなどは、インドにおけるイスラム過激派のテロがさらに拡大することを示唆している。
≪まず給油現場視察して≫
とくに、日本にとってのシーレーンの重要性からいえば、イランがホルムズ海峡を通過する外国船舶をミサイルなどで脅すことが懸念される。さらに、パキスタンにイスラム過激派政権ができれば、インド洋(とくにオマーン湾)の海上の安全を脅かすかもしれない。
インド洋やアラビア海では、テロ分子、武器、弾薬、麻薬、秘密資金などが小船で移動している。それらはアフガンおよびパキスタンへ流れるものもあれば、逆にそこからアフリカのソマリアなどに流れるものもある。またイランを通してアフガンに流れるものもあるであろう。したがって、海上自衛隊が友邦艦船への給油以外に、周辺海域における不審船情報を友邦艦船に供与することも重要な任務である。民主党は、海上自衛隊がイラク戦争に関与している友邦艦船にも給油をしていると非難するが、給油を受けた友邦艦船にしてみれば、パキスタン経由でアフガンに流れる武器、弾薬、麻薬、テロ分子を取り締まるのが本務だとしても、イラン、イラクの方に航行する不審船をわざわざ見逃すようなことはしない。それを杓子(しゃくし)定規に区別しようとするのは、現場の状況を知らない者のすることである。
小沢代表は、「テロとの戦い」を高く掲げた安倍総理を辞任に追い込んだわけだが、もし本気で海上自衛隊の活動停止を叫ぶとしたら、その前に、まず現場を見に行くべきである。そしてさらに、ベルギーの北大西洋条約機構(NATO)本部に出向いて、多くの犠牲者をだしてテロリストと戦っている多国籍軍(ISAF、37カ国参加)の代表と話してみるのがよい。小沢氏は、彼らの前で、日本の国益のためにそして国際社会のために、正面切って日本の活動中止を説く勇気があるだろうか。(にしはら まさし)
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