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:2008:11/11/11:13 ++ 【正論】政治評論家・屋山太郎 公務員改革に消極的な麻生政権
麻生太郎首相は就任直後から世界的な金融危機に直面し、27兆円弱に及ぶ追加景気対策を打つなど機敏に対処しているようにみえるが、この人の政治感覚や財政改革は見当違いなのではないか。
その理由の一つは日本経済を「全治3年」と診断して財政再建計画を3年先延ばしにしたことだ。日本の財政赤字が800兆円にも達したのは政・官癒着の体質がもたらしたものといえる。いってみればメタボリック症候群の治療中に経済危機という傷を負った。外傷の手当ては必要だが、メタボ治療を休止していいことにはならない。
なぜこのような見当違いをするかといえば、首相は政・官癒着の体制がいかにひどいかを全く理解していないからだ。1981年の土光臨調以来、歴代内閣は懸命に行政改革を進めてきた。しかし国鉄の民営化以外目ぼしい成果が出ないのは官僚の抵抗とその仕組みにぶら下がって利益を貪(むさぼ)っている族議員との癒着のせいだ。道路族が道路特定財源の一般財源化になぜあれほど反対したかを見れば一目瞭然(りょうぜん)だろう。
首相は組閣人事を自ら発表し全閣僚に「官僚は使うもの」「省益でなく国益を追求させよ」と伝えたと述べた。首相や閣僚の指示に官僚が従うなら、臨調以来この27年間の努力は全く不要なのだ。首相や閣僚の寿命はせいぜい1、2年だが、官僚内閣制は140年連綿として続いている。一内閣の指示など聞いた振りをして嵐が過ぎるのを待てば官僚の利益は永続する。
≪民主党顔負けのバラ撒き≫
与謝野馨氏に代表される財政規律派は埋蔵金など存在しないと主張した。民主党が掲げた児童手当2万6000円や農家所得補償など20・5兆円に及ぶマニフェストをバラ撒(ま)きだと批判し、財源はどうするのかと責めた。しかし自民党がまとめた追加景気対策は26兆9000億円に及び、首相は「赤字国債を財源としない」と明言した。ではその財源はどこから持ってくるのか。対策の主要な項目は民主党と似通っているが、これはバラ撒きではないのか。
首相は追加景気対策発表に当たって「大胆な行政改革を行ったのち、3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と述べた。与謝野経済財政相はテレビで「2010年の中ごろには10%程度の引き上げが必要だ」と述べた。英、仏、独など欧州主要国の付加価値税(消費税)はいずれも15%程度だから、日本も欧州並みの社会保障政策をとるなら、あと10%程度の引き上げは不可避だろう。そういう事情は日本国民も十分に心得ていて、世論調査ではいずれの調査も「消費税の引き上げやむなし」が6割前後を示している。英、仏では政府の一存で引き上げることができるが、それには、政府には無駄がないという国民の認識が前提にある。
麻生氏や与謝野氏が増税をいうことは勇気ある行動のように見えるが、官僚制度について無知すぎる証拠でもある。小泉純一郎元首相は「任期中は消費税は引き上げない」と言明した。塩川正十郎元財務相は日本の財政について「母屋ではかゆを食っているが、離れではすき焼きを食っている」と評した。小泉、安倍晋三両元首相が「上げる」といわなかったのは、財政需要が逼迫(ひっぱく)すれば官僚は自ら「離れのすき焼き」を母屋に持ってくることを知っていたからだ。
≪無知ゆえの消費税引き上げ≫
衆議院調査局の調査では天下り法人は4600、天下り人数は2万8000人。それに流れる財政支出は2006年度で12兆6000億円。天下りは金融、産業、教育などあらゆる分野に及び、そこの分野に官僚体質がはびこる。官製談合、随意契約、天下り人数に見合う発注と市場は全く不透明だ。同じ構造が地方にも及んでいる。漆間巌官房副長官は「天下りしてどこが悪い」と嘯(うそぶ)いたそうだが、こういう発想が日本の政、財、官界を腐敗させているのだ。
公務員制度改革基本法に基いて推進本部が設置されている。その目的は(1)公務員を肩叩(たた)きをせず定年まで働かせる。給与体系も民間並みにし、昇給も降格もある(2)幹部の職務評価を「内閣人事局」に一元化し、国益追求の官僚を抜擢(ばってき)する-の2点だ。この構想は安倍内閣時代に生まれ、安倍、福田両内閣を経て、民主党も賛成して基本法が成立した。明治26年に高文試験として官僚制度が始まって以来、120年ぶりの改革で、全官僚が反対している。
しかし、これを断行する以外には官僚制度は刷新できない。政・官の利権構造の絶滅、年金記録漏れ問題に見る官僚制度の無責任を解消しない限り、国民は増税話に耳を傾けるわけがない。麻生氏や与謝野氏にはその自覚が全くない。(ややま たろう)
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