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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2010:12/27/11:11  ++  歴史の転換に10年戦略を―内向き日本に活路なし(核心)

2010年は、グローバル社会の歴史的転換と「内向き日本」がギャップを広げた年として記憶されるだろう。就職難のなかで大学生は海外留学より就職活動を優先する。海外勤務を嫌う商社マンもいるという。そして、なにより政治は「井の中の政争」を繰り返し、普天間基地から尖閣諸島、北方領土問題まで外交の軸が揺れ続けている。
 先進国から新興国へのパワーシフトというグローバル社会の奔流のなかで、日本がこのまま内向きに傾斜すれば「失われた30年」に足を踏み入れる。逆に、この歴史の転換を好機ととらえ、グローバル戦略を打ち出し変革をめざせば、日本復活の可能性も開ける。混迷の世界にあって、日本の役割もまた大きくなる。
 日本が「失われた時代」をさまよったのは、日本人が内向きになり冷戦後のグローバル化に不適合だったことが大きい。「日本は冷戦そのものに実感が乏しかったために、冷戦後の転換にも鈍感だった」(行天豊雄国際通貨研究所理事長)という見方もある。
 いまグローバル社会はこの冷戦終結をしのぐ歴史の転換期にある。冷戦終結に伴う市場の広がりをグローバル化I期とすれば、世界経済危機を境とする大きなうねりはグローバル化II期と呼ぶにふさわしい。米欧先進国から中国、インドはじめ新興国へのパワーシフトはめざましい。「冷戦の終結が小さくみえるほど、いまのグローバル社会の激変は歴史的だ」とローレンス・サマーズ米国家経済会議委員長は分析する。
 世界経済危機が小康状態になっているのは、先進国経済の低迷を新興国経済の成長が穴埋めしているからだ。しかし、パワーシフトが「リーダーなき世界」を招き、パワーの空白をもたらしているのも事実である。混迷する世界で各国がそれぞれに自分本位に陥っている。G20時代の協議になかなか解答が見つからないのはこのためだ。
 米国の指導力低下はオバマ人気の低迷にもあらわれている。11月の横浜での大統領の演説には、昨年サントリーホールにさっそうと登場したときのようなカリスマ性がうせていた。雇用危機のなかで中間選挙に大敗し、ソウルG20で主張が通らなかったせいなのか。デフレによる「日本化」を恐れる米国は世界経済危機の後遺症から抜け出していない。
 欧州も深刻だ。ユーロ危機の打開に、東西ドイツ統一とユーロ創設で最も大きな恩恵を受けてきたドイツの責任は大きい。しかし、メルケル首相はなぜドイツ国民の税金で甘い国々を救済するのかといわれて次の一歩が踏み出せない。そんなメルケル首相には、ユーロ圏からは指導力に疑いの目が向けられる。
 パワーシフトを先導する中国の胡錦濤政権も移行期のジレンマに直面する。急速な経済発展のもとで、いつまで民主化を封じ込めるか。国際協調を掲げてきたが、指導力維持には軍備拡大を進めるしかないのか。強硬な海洋戦略は東アジアに「新冷戦」をもたらしかねない。北朝鮮の暴挙を制御できなかったのは指導力の限界を物語る。
 こうしたなかで、日本がこれ以上内向き姿勢をとり続けるのは危険である。この歴史的なグローバル化は日本にとって好機でもある。リーダーなき世界にあって、「国際協調のハブ(結節点)」の役割を担えるのは日本しかないからだ。
 その土台になるのは、日米同盟である。普天間問題では粘り強く折衝し事態を打開するしかない。併せて、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)に積極的に参加することだ。農業改革など国内改革に立ち上がる絶好の機会を逃すべきではない。
 このTPPに、東南アジア諸国連合(ASEAN)と6カ国(日中韓とインド、豪州、ニュージーランド)による自由貿易圏を結合する。そんなアジア太平洋の大構想を描くうえで、日本は重要な位地を占める。
 ドル基軸にかげりがみえるいま、次の国際通貨体制を構想する段階である。ドル基軸のあと、いずれ多極通貨体制に移行する。通貨不安を防ぐためドル、ユーロ、円、ポンドそして中国人民元の協調が必要になる。人民元の国際化しだいでは、アジア通貨単位(ACU)も検討課題になる。
 地球環境問題をもう一度、交渉のテーブルにのせることも肝心だ。地球全体の温暖化ガス排出の27%しか対象としない京都議定書の単純延長は問題だが、米中印を加えたポスト京都議定書の枠組みをどう構築するか、環境先進国・日本の地球責任は引き続き重い。
 オバマ米大統領が提案した「核なき世界」を推進するのも、唯一の被爆国である日本の責務である。米ロは戦略核削減に動き出したが、最終ゴールはずっと先だ。北朝鮮、イランなど核拡散を防ぐため、「ヒロシマ」からの発信を強めるべきだ。G20の広島開催を提案するときである。
 日本文化というソフトパワーを生かすことも大事だ。伝統文化からポップカルチャーまで「日本びいきを作る」(近藤誠一文化庁長官)ための戦略がいる。メディアの対外発信力を飛躍的に高める必要もある。
 内向き日本に活路はない。失われた時代を超えて、グローバルな歴史の転換に適合する次の10年の戦略が求められる。
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:2010:12/27/10:39  ++  政策と経営で韓国への巻き返しを急げ(社説)

韓国企業が世界市場で存在感を一段と強めている。日韓は電機や自動車など産業構造が似通う。最大のライバルだけに、韓国の台頭は無視できない。政策と経営の両面で、韓国への巻き返しを急ぐ必要がある。
 今年初めて、日韓企業の世界シェアが入れ替わるとみられる製品がある。パソコンや携帯電話などに欠かせないリチウムイオン電池だ。
部品や素材でも攻勢
 独走してきた三洋電機が2位に後退し、韓国サムスン系のサムスンSDIが首位、韓国のLG化学が3位に入る見込みだ。日本勢は国別のシェアではトップを維持するが、来年は日韓の逆転が濃厚ともいわれる。
 リチウムイオン電池は電気自動車が普及すると、需要が急増する。LG化学は、米ゼネラル・モーターズ(GM)や仏ルノーなどへの供給契約を次々と獲得している。
 リチウムイオン電池だけでない。テレビなどの液晶画面に貼る偏光フィルムは、日東電工が数年前まで5割強のシェアを誇っていたが、LG化学が肩を並べるようになった。
 信越化学工業など日本勢がほぼ独占してきた半導体用のシリコンウエハーも、LGグループのLGシルトロンが市場の1割を握る。「4~5年以内に韓国勢が首位に躍り出る可能性もある」と野村証券はいう。
 日韓の貿易構造は、韓国の対日赤字が恒常的に続いている。赤字額は昨年も約280億ドルに上った。いまや薄型テレビ、半導体などで世界市場を席巻する韓国だが、部品や素材の多くは、高い技術力を持つ日本に頼らざるを得なかったからだ。
 ところが日本が得意としてきた先端分野にも、韓国勢がどんどん進出してきているのが現実である。
 足元の日本市場でも、LG電子が高級薄型テレビの販売を始めた。NTTドコモが10月末に売り出したサムスン電子製のスマートフォン(高機能携帯電話)は品薄状態が続く。若者層を中心に日本の消費者は今や韓国との技術力の差を意識しない。
 韓国勢の攻勢には通貨のウォン安の恩恵もある。だが迅速な経営判断、成長分野への投資、選択と集中、徹底したグローバル展開は、日本企業との勢いの差につながっている。韓国の経済規模は日本のおよそ5分の1だ。国内の市場が小さく、海外に成長の糧を求めるしか生き残れないという危機意識は徹底している。
 政府の後押しも見逃せない。1997年のアジア通貨危機をバネに、輸出主導の成長戦略に腰を据えて取り組み、主要産業の再編、法人税の引き下げ、自由貿易協定(FTA)などを戦略的に進めてきた。FTAでは、巨大市場の欧州連合(EU)や米国との交渉も妥結させた。このままでは日本企業が不利な競争条件に立たされてしまう。
 日本は真剣に韓国に学ぶべきだ。そのうえで国際競争力を取り戻す方策をとっていく必要がある。
 原子力、太陽光パネルなど、日本が誇る最先端分野はまだ多い。重要なのは、成長分野で世界の最強企業をつくっていく見取り図であろう。そのための業界再編は、真正面から検討していくべきではないか。
 日本国内には電機大手が9社、自動車は12社がひしめく。韓国は政府主導の業界再編で、主要業種ごとの企業を2社前後に絞った。日本も国内の競争に消耗せず、海外進出できる環境をつくるべきだ。
 大規模な再編には時間がかかるというなら、各社は事業の選択を急ぐべきだ。日立製作所は三菱重工業と水力発電機で提携した。東芝も原子力発電に投資を集中し、半導体は不採算のシステムLSI(大規模集積回路)をサムスン電子に生産委託して得意のメモリー事業に特化する。
TPP参加に走れ
 韓国との差別化で、収益源を探る道もある。パナソニックは今年、テレビや白物家電では単品ごとのシェアにとらわれない経営にかじを切った。代わりに家やオフィスビルの内部を一括して引き受ける事業を柱に据え、組織を変えた。設計や施工、保守をまとめて売ろうという戦略だ。こうした発想は、海外でのインフラビジネスにも欠かせない。
 政府はもっとスピード感をもって事に臨むべきである。
 菅政権は来年度の税制改正で、法人税の実効税率を現行の40・69%から約5%下げることを決めた。だが約24%の韓国との差はなお大きい。FTAでは、米国や豪州などが交渉を進める環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を、いわば最後のチャンスとして取り組むべきだ。
 業界再編を促すため、独占禁止法の弾力的な運用も検討課題だろう。国内の消費者に不利益となる事態は避けるべきだが、世界市場をにらむ企業に対しては、規模の追求を後押しすることも考えたい。
 世界では今、官民挙げての国家戦略がぶつかり合っている。手をこまぬけば、日本は埋没してしまう。

:2010:12/20/09:15  ++  政権漂流の15ヵ月―消費増税・TPPに針路を(核心)

南太平洋で先月、ボートで漂流する3人の少年が、50日ぶりに漁船に救助された。子どものころ繰り返し読んだ「15少年漂流記」を思い出した。ジュール・ヴェルヌの冒険小説で、読むたびにワクワクした。
 鳩山由紀夫政権9カ月と菅直人政権6カ月。民主党政権「15カ月漂流記」はワクワクどころか、ハラハラ、イライラの連続だった。
 自身の食言で普天間問題に振り回された鳩山首相。退陣後に作家の塩野七生さんが、月刊文芸春秋の巻頭随筆に鳩山政権の9カ月を「悪い夢だった、と思って忘れるほうがよほど生産的である」と書いていた。
 同感の人も多いだろう。だが、忘れてはならない教訓もある。日米同盟にすきま風が入ると、中国やロシアに足もとを見られるということ。尖閣諸島をめぐる中国とのあつれきや、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問は、鳩山政権がまいた種ともいえる。
 菅政権の発足直後の内閣支持率は7割ほど。多くの人が、まだ民主党政権の立て直しに、期待を抱いていたのだ。今や調査によっては政党支持率で、自民党に逆転されている。
 首相が短期間にくるくる代わるのは国益に反する。だが、英誌エコノミストの日本特集も指摘するように世界に例のない人口の高齢化、膨大な国債などの重荷を背負い、大変革なしに立ち行かないのが日本の実情だ。何もできない首相に居座られても、貴重な時間の浪費で、国益を損なう。
 菅首相が来年も政権を担うつもりなら、待ったなしの課題に、体当たりしてもらうしかない。候補を2つあげれば、消費税の増税と環太平洋経済連携協定(TPP)への参加。いずれも首相が言い出した。
 予算編成の大詰めで、唐突に所得税と相続税の増税が飛び出した。民主党が政権をとった総選挙の政権公約(マニフェスト)では政策経費の大半を予算のムダを削ってまかなうはずだった。一般会計と特別会計の見直しで10兆円規模の財源が出る触れ込みだった。
 だが、財源を掘り出す装置としての「事業仕分け」は回を重ねるごとに回収額が減り、マニフェストの皮算用には、ケタが一つ二つ足りない。財源案が「絵に描いたモチ」だったのは隠しようがない。菅首相が消費税引き上げを言い出したのは、不都合な真実を認めたからだが、参院選の惨敗後は口にしなくなった。
 しかし、年金、医療、介護などの社会保障制度を持続可能にする改革も、消費税を封印したままでは前に進まない。安全網があてにならず、国の借金が膨張する一方では、人々の財布のヒモがゆるむはずがない。日本経済にとって、もはや消費税を上げるリスクより、上げないリスクの方が大きいのではないか。
 民主党政権の経済政策の軸は「内需」だった。税金を直接家計に投入して消費主導の内需拡大を目指す。「子ども手当」が代表だ。しかし、厚生労働省の調査では子ども手当の4割強が貯蓄に回っている。政治が何もかも将来世代につけ回しする現状を見かねた「親心」だろうが、これでは内需振興にならない。
 成長著しいアジアなどの「外需」を取り込まない手はないと政権も気づいたようだ。国際競争力に目を向け、世界で最高水準の法人税の減税に踏み切った。
 だが、5%の引き下げでは、国内企業を引き留め、海外企業を誘い込むには力不足だ。お隣の韓国は欧州連合(EU)、米国と相次いで自由貿易協定を結んだ。出遅れた日本にとって、TPPへの参加は挽回のチャンスだ。
 菅首相は、臨時国会の所信表明演説で、TPPへの参加を検討し「アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指す」と明言した。
 ところが農業団体などの強い反対に遭うとトーンダウン。交渉へのオブザーバー参加も拒まれた。「開国」に備えた農業対策を来秋打ち出す手はずだが、そのころには日本抜きの交渉が煮詰まり、参加の好機を失っているかもしれない。
 菅首相の言動で気になるのは「言い訳がましい」ことだ。消費税も「自民党が10%と言っているから」と10%への引き上げ案を唱えた。信念の裏打ちがない言葉は、説得力がない。
 第2次大戦の末期、ルーズベルト米大統領の急死で副大統領から昇格したハリー・トルーマン大統領は、執務机に座右の銘「The BUCK STOPS here」と書かれた木製プレートを置いていた。
 「BUCK」は俗語でポーカーの親。「pass the buck」は責任を転嫁する、という意味だ。プレートの言うところは、「責任はここでとる」。トルーマンが下した決定の是非は別として、指導者としての心構えは買える。
 記者会見で菅首相が指導力を発揮した具体例を聞かれた仙谷由人官房長官が、即座に答えられなかった。責任の所在がはっきりせず内輪もめが絶えない。政権漂流に菅首相らの責任は重い。国会での説明責任から逃げ回る一兵卒もまた。

:2010:12/17/09:33  ++  税制改正大綱、税負担ひずみ多く―相続税増税、対象者が大幅増。

資産課税では相続税増税が約2900億円に達すると説明した。2009年に亡くなった人のうち、相続税の課税対象となったのは4・1%の4万6431人。政府税制調査会は基礎控除の縮小などを通じ、課税対象が6%程度の約7万人に広がるとみている。
 この数字は乳幼児から高齢者までのすべての死亡者を含めて計算する。相続税発生のケースが多い高齢者の死亡に限れば、課税対象者の割合はさらに上がるとみられる。税理士の柴原一氏は「三大都市圏の持ち家に住み、勤めていた大企業から退職金をもらい、人並みの生命保険をかけていれば、相続税が生じる可能性が大きい」と話す。
 相続税の抜本的な見直しは、現行の制度が始まった1958年度以降で初めて。遺産額から差し引いて税負担を軽減できる基礎控除額を4割圧縮する。現在は定額部分の5000万円に、法定相続人1人あたり1000万円を加えた金額を控除できる。11年度税制改正では定額部分を3000万円、1人あたりの部分を600万円に下げる。
 夫が亡くなり、妻と子ども2人が相続する場合、今は遺産額8000万円まで非課税となる。改正後は4800万円に縮小する計算だ。
 金融資産はほとんどなく、東京23区内で路線価1億円の場所に一戸建て住宅を持つ夫が亡くなっても、小規模宅地の特例を利用すれば相続税を払わなくてすむケースが多かった。税理士の中村健二氏によると、基礎控除を4割圧縮すれば数百万円の相続税がかかる可能性がある。マンションは土地面積が小さいため、影響はそれほど大きくないという。
 死亡保険金に対する相続税の非課税枠も縮小する。今の非課税枠は法定相続人1人あたり500万円。死亡保険金の受取人が妻の場合、妻のほかに子ども2人が法定相続人になっていれば、3人分の1500万円まで非課税となる。改正後は同居していない成年の法定相続人を非課税枠の対象外とする。
 若年層への資産移転を促す贈与税減税は、約100億円に上るという。20歳以上の子や孫への贈与について、税率を一般より5~10%下げるのが柱だ。生前贈与を地道に進め、遺産額を相続税の基礎控除の範囲内に抑えるなど、資産対策を迫られる世帯が増えるとの見方も出ている。

:2010:12/17/09:28  ++  税制改正大綱、税負担ひずみ多く―法人減税、控除縮小で「効果相殺」。

法人課税は実質的に5800億円の減税となるという。第一生命経済研究所の試算によると日本企業全体(金融を除く)の2012年3月期の純利益を約5%押し上げる効果がある。もっとも、欠損金の繰越控除制度や研究開発減税制度の縮小で、企業によっては負担が増える場合も出そうだ。
 欠損金の繰越控除制度の縮小では、金融などの税負担が増す見通し。相殺できる翌期の所得が8割に制限されるためだ。法人税を長年軽減されてきた銀行は多く、08年度の欠損金繰越控除額約7・4兆円のうち金融保険が2兆円を占める。
 事業会社でも双日や電機大手など、過去に巨額赤字を計上した企業には負担になりそうだ。監査法人トーマツの園生裕之パートナー(公認会計士)は「納税資金を手当てするために借り入れたり、含み益のある株式、不動産の売却を迫られたりする企業も出そうだ」と話す。ただ、繰越期間が7年から9年に延び、メリットを受ける企業もある。
 研究開発減税制度については、前期は医薬品業界では武田薬品工業が230億円強、アステラス製薬が120億円、エーザイも70億円程度の恩恵があった。いずれも税引き前利益の約1割に相当する。キヤノンは09年12月期で50億円程度の恩恵があった。
 控除額を限度いっぱい使っている企業が少なく制度縮小の影響は限られる見通しだが、多額の研究開発投資をしている企業からは「法人実効税率下げの効果の多くが相殺されてしまう」(塩野義製薬の手代木功社長)との声も上がる。キヤノンの田中稔三副社長は「経済活性化と国際競争力の強化という本来の目的に沿って、企業に本質的な効果が及ぶよう政府は検討してほしい」と話す。
 07年度に導入された、設備投資などの実施直後は多めに減価償却をできる制度はブリヂストンや信越化学工業、新日本製鉄など上場企業の約半分が採用。縮小の影響は幅広い企業に及びそうだ。
 三菱重工業は1000億円を超える設備投資を続けている。10~15年で償却する設備が多い。12年3月期は税金計算上の減価償却費が税制改正前に比べ数十億円減少。課税所得が増え税負担につながる可能性がある。
 思わぬ余波も出そうだ。法人実効税率の引き下げが逆に、一時的な減益要因になる可能性がある。企業はあらかじめ将来の税金軽減効果を見込み「繰り延べ税金資産」を積んでいる。その資産を税率引き下げ分だけ取り崩す必要があるためだ。
 利益の目減り額は日本経済新聞社の推計で東京電力では500億円を超え、JR東日本で300億円程度となる見通し。ドイツ証券調べでは三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)で800億~900億円、三井住友FG、みずほFGでそれぞれ500億~600億円となる。税制法案の成立時期によるが今期もしくは来期に響く。

:2010:12/17/09:27  ++  税制改正大綱、税負担ひずみ多く、個人増税、高所得層しわ寄せ。

政府が16日の臨時閣議で決定した2011年度税制改正大綱は、所得や資産が多い個人へのしわ寄せが目立つ内容となった。所得税・住民税の控除縮小が響き、年収1500万円を上回ると年間手取り額が減る世帯が拡大。東京都内などの一戸建て住宅を相続する世帯の相続税も膨らむ可能性がある。法人課税は実質的に軽減するが、その財源に充てる増税項目の重みも無視できない。多くの面でひずみを残したといえる。(1面参照)
 財務省は個人課税の控除見直しが所得税で約2100億円、住民税で約900億円の増税につながるとみる。会社員の所得税や住民税を計算する際に、一定額を必要経費とみなして収入から差し引く「給与所得控除」の縮小が代表的だ。
 年収が多いほど控除額が増える仕組みを修正し、年収1500万円を超えた時点で一律245万円に抑える。年収2000万円を超える企業の役員の控除額をさらに圧縮し、年収4000万円を超える場合には一般社員の半分とする。
 10年度税制改正では子ども手当の半額支給(月1万3000円)を実施する代わりに、15歳以下の扶養親族を抱える世帯の税負担を軽減する「年少扶養控除」を廃止することも決めた。11年度税制改正も含めた一連の控除見直しをすべて反映できるのは14年からだ。
 野村証券の試算(妻が専業主婦で子どもがいない世帯)によると、14年と10年の年間手取り額を比べた場合、年収1600万円で約2万円、年収2000万円で約11万円減る。年収4000万円を超える役員の減収は約120万円に上る。
 第一生命経済研究所や大和総研の試算(夫が会社員、妻が専業主婦で子ども1人の世帯)をもとに14年と09年の年間手取り額を比較しても、年収1500万円を超える世帯にしわ寄せが及んでいるのは明らかだ。年収2000万円なら軒並み減収となる。
 同じ試算で子ども手当の影響を分析してみた。支給額が月2万円に増える3歳未満の子どもを持つ世帯をみると、年収2000万円だけが減収となる。給与所得控除の縮小や年少扶養控除の廃止が響くためだ。
 支給額を月1万3000円に据え置く3歳から中学生までの子どもを持つ世帯については、年収700万円(3歳から小学生までの子どもがいる場合)と年収1600万円も減収となる。年収300万円と年収500万円だけでなく、年収1000万円も増収を確保しており、公平感を欠くとの声も出ている。
 23~69歳の扶養親族を抱える世帯の税負担を軽減する「成年扶養控除」については、年収568万円以下の世帯に限定する。65~69歳の高齢者や学生、長期入院者、障害者などには従来と同じ控除を適用するため、フリーターなどの子どもを扶養している親が影響を受けそうだ。年収700万円なら10万円強、年収2000万円なら26万円強の減収となる。

:2010:12/17/09:11  ++  経済と財政の再生に宿題残す税制大綱(社説)

菅内閣が2011年度の税制改正大綱を決めた。法人実効税率の5%引き下げを柱に平年度の国税ベースで企業の税負担を5800億円ほど減らす一方、個人は高所得者層を中心に約4900億円の増税となる。
 主な税目である法人税と所得税に手をつけたが、経済の活力を高め財政を健全化する目的に照らすと、今回は小手先の手直しにすぎない。消費税増税も含む抜本改革が急務だ。
高所得者を狙い撃ち
 今回は民主党政権が一から手掛ける初の税制改正だった。だが、司令塔は不在で、選挙を意識して不人気な策を避け、とりあえず取りやすいところから取る姿勢が目立った。
 その典型が所得税だ。民主党は子ども手当の財源として公約にも掲げた配偶者控除の廃止を先送りした。子どものいない夫婦世帯などの反発を招き、来年の統一地方選に響くと懸念する声に押された。「控除から手当へ」を進め、主婦の就業を促す理念はあっさり崩れた。
 狙い撃ちされたのは所得の高い層だ。23~69歳の親族を養う納税者の扶養控除は年収568万円超の世帯で原則として縮小・廃止。年収1500万円超のサラリーマンや企業役員の給与所得控除には限度額が設けられ、大幅増税の人も出てくる。
 骨太な税制構造の見直しもなく、高所得者だけに負担増を強いるのはおかしい。努力して高い収入を得ようとする意欲をそぎ、外国から優秀な人材を招くにも不利になる。
 一方、企業の負担減や市場の活性化に目配りしたのは評価していい。
 主要国に比べ高水準の法人実効税率は40・69%から約5%下げ、35・64%とする。中小企業の軽減税率は3%下げて15%に。雇用を10%以上増やした企業への減税も導入する。
 租税特別措置の縮小や、減価償却の圧縮といった増収策では足りず、当面は減税が先行するが、単年度の帳尻合わせにこだわらなかったのは妥当だ。減税を企業の投資や雇用の増強へと十分に生かす必要がある。
 欧州やアジア諸国との法人税率の開きはなお残る。歳出減や租税特別措置の整理、抜本的な税制改革で、さらに引き下げを進めるべきだ。
 株式の譲渡益や配当に対する税率を所得税と住民税の合計で10%と本則の半分にしている証券優遇税制は13年末まで2年延長する。
 株価の低迷が続く中、時期尚早の増税で個人の投資意欲を阻害すべきではないから、妥当な決定だ。元本300万円までの株式投資で配当と譲渡益に課税しない少額投資非課税制度の導入は14年1月に延ばす。
 来年10月からは石油・石炭税率の段階的な引き上げ分を充てて地球温暖化対策税(環境税)を導入する。二酸化炭素(CO2)排出量を考慮した負担で排出抑制を促せる。温暖化対策や法人減税に生かしたい。
 国内便に課税され、日本の航空会社の競争条件を不利にしてきた航空機燃料税は3年間に限り約3割引き下げる。激しい空の競争を勝ち抜くには、これでも力不足だ。他の産業分野でも国際競争を踏まえた税制の見直しをさらに求めたい。
 相続税では基礎控除額を4割圧縮し、最高税率も55%に上げる。一方で20歳以上の子や孫に生前贈与する場合は贈与税の累進税率を低めにして、資産を引き継ぎやすくする。
 相続税の課税対象になっているのは現在、全体のわずか4%。社会保障費が膨らむなかで、資産を持つ人の相続の際に一定の負担を求めるのはやむを得ない。勤労世代が贈与された分を消費や投資に生かせば経済成長にもプラスに働く。
消費増税から逃げるな
 ただし、社会保障改革の前に相続税を増税することには問題もある。年金、医療、公的介護保険などの改革を早く議論し、その中で相続税のあり方も明確にしていくべきだ。
 11年度の税制大綱は目先の増収策を寄せ集め、法人税率下げの穴を埋めるのに腐心した構図となった。
 中途半端な改革しかできない最大の理由は、民主党政権が消費税率の引き上げという課題を避けたからだ。菅直人首相は夏の参院選前に「10%を参考に」と税率を明言して野党との協議を呼びかけたが、参院選に負けると、すぐに引っ込めた。
 増大する社会保障費を賄うために消費税増税は避けられず、所得税や法人税の構造も見直す一体的な税制改革が不可欠だ。政府・与党は来年半ばに改革案を示すというが、負担増を伴う策から逃げ続ける現状を見ると、本気かどうか疑問符が付く。
 サラリーマンと自営業者や農家の所得捕捉に差が生じている問題など、課税の不公平感をなくすのも急務だ。番号制の導入も着実に進めていく必要がある。
 ねじれ国会のもとで税制法案を与党単独で通すのは難しい。これ以上の経済停滞や財政悪化を食い止める税制改革像を政府・与党が示し、野党の理解を得る努力が欠かせない。

:2010:12/17/09:05  ++  来年度税制大綱を決定―将来見えぬ増税策、消費税避け帳尻、公約固執で迷走。

財務省が温めてきた増税策を満載したリスト。来年度の税制改正大綱にはそんな異名を付けてもいい。法人税率引き下げの陰で、財源探しに名を借りた個人や企業の負担増がすんなり通る。説明も理念も欠いたこんな危うい税制大綱は、とても支持できない。消費税を含めた抜本税制改革や成長戦略の実現を阻む壁ともなりかねない。
財源探しに終始
 「七転八倒してようやくまとまった」。五十嵐文彦財務副大臣は政府税制調査会の作業を振り返る。与党が求めた子ども手当の増額。法人実効税率の5%下げ。税制改正は財源探しのパズルに終始した。
 政治主導の旗印だったはずの政府税調。筋書きは、やはり財務省主税局が作った。法人減税を求める経済産業省や経済界に、ナフサ減税や研究開発減税の大幅削減で最大5兆円以上の増収が可能とする一覧表を突きつけた。所得税でも高所得者や役員への給与所得控除を縮め、退職金の課税を強化する案を提供した。
 民主党政権の仕事は、一連の増税リストから選挙に影響が少なそうな財源対策を選ぶことだった。高所得者に照準を絞った増税策を次々と採用。長く法人税を納めていない金融機関にも税負担を求めようと、欠損金の繰り越し控除に制限をつけた。
 都市部の持ち家層などに課税対象者が続出しそうな相続税の強化も、半世紀ぶりの大改革にもかかわらず、議論はほとんどなく決まった。財務省は増税額を2900億円だと説明するが「もっと増収額は大きい」とみる関係者も多い。
 「自民党政権が先送りしてきた法人税や所得税の封印を解いたのは大きい。怖いもの知らずだが」。財務省出身の森信茂樹中大教授も、思わぬ「進展」ぶりに驚く。
ツケは次世代に
 一連の展開は、バラマキ公約に固執し、痛みを問う政策を避け続ける政権の正体を映す。見方を変えれば、税制改革の本丸である消費税率引き上げから民主党政権が逃げ回っていることが、迷走の本質だ。
 高齢世代も負担し、世代間の公平を保てる消費税増税に目をつむり、取りやすいところに場当たりの増収策を仕掛ける。脱・格差社会を掲げた税制大綱は、将来世代へのツケ回しで現世代の痛みを覆い隠す「世代間の不公平」を招いている。
 菅直人首相が最終局面で指示した法人実効税率の5%引き下げ。「新たな歳出や減税には見返りの財源を」というルールを盾に、財務省は減税幅を3%に圧縮しようと粘った。日本の競争力を取り戻すには5%ではとても足りないのに、消耗戦の結果、一段の税率下げには深い霧がたちこめた。
 民主党政権は帳尻合わせで何を守ろうとしているのか。日本を立て直す抜本改革をさぼり、効果の疑わしい子ども手当の積み上げや、介護保険の負担増の凍結に奔走する。まやかしの「痛みなき政治」で目先の批判をしのぐだけの政権には、日本の未来は託せない。

:2010:12/15/10:19  ++  法人課税5%下げを経済再生の口火に(社説)

菅直人首相は2011年度の税制改正で、40%強と国際的にみても高い法人実効税率を5%下げるよう指示した。雇用の源泉となる企業の活力を高める決断は歓迎するが、これは経済再生への第一歩にすぎない。一段の税率下げや経済活性化の改革もひるまず進めるよう求めたい。
 国税と地方税を合わせた負担率である法人実効税率は40・69%で10年以上も不変だ。この間にアジア諸国は10~20%台、欧州諸国も30%以下に下げ、大幅な差がついた。
 政府は6月の新成長戦略で法人実効税率を国際水準に下げると明記した。国内企業が生産拠点を税金の安い外国に移したり、外資が日本進出を手控えたりするのを止める狙いだ。税率下げは新しい成長業種や外国企業にも広く恩恵が及ぶ。
 今回の減税では税収が約1兆5000億円減る分の財源が争点だった。財務省は企業のほかの負担増で穴を埋めるよう求め、最後には下げ幅を3%にとどめる案も示した。首相がその考えを退け、5%の引き下げを決めたのは正しい判断だ。
 国の減収分のうち6500億円程度は欠損金の繰越控除に限度を設けたり、設備投資の減価償却で初期の償却額を縮めたりして補う。租税特別措置も一部、縮小する。減価償却や繰越控除の見直しで当初は増収となるが、長期安定的な財源ではない。今後、他の税の増収を含め恒久的な財源を探す必要がある。
 5%の税率下げは第一歩だ。実効税率を少なくとも30%程度まで下げないと同じ競争の土俵に立てない。抜本的な税財政改革を進めるなかで一層の税率下げを追求すべきだ。
 さらに、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加や、労働分野など様々な規制の緩和も推進し、企業による国内での投資、雇用の環境を改善することが大事である。
 法人課税の軽減を企業優遇と批判する声もあるが、見当違いだ。投資や雇用の主役である企業が国際競争に勝ち抜けなければ、雇用も増えない。国会審議では野党も大局を見据えて協力するのが当然である。
 ドイツや英国は企業競争力を重視した法人税率引き下げと、消費税にあたる付加価値税の増税を一体で進めている。政治はそうした世界の改革の流れを正視してほしい。
 日本企業は法人減税を受けて国内の投資や雇用を増やす責任を負う。今後、一層の税率下げにあたって租税特別措置をさらに整理する必要もあろう。その際、経済界は既得権に固執せず、多くの企業に恩恵が及ぶ税率下げを後押しすべきだ。

:2010:12/15/10:19  ++  法人課税5%下げを経済再生の口火に(社説)

菅直人首相は2011年度の税制改正で、40%強と国際的にみても高い法人実効税率を5%下げるよう指示した。雇用の源泉となる企業の活力を高める決断は歓迎するが、これは経済再生への第一歩にすぎない。一段の税率下げや経済活性化の改革もひるまず進めるよう求めたい。
 国税と地方税を合わせた負担率である法人実効税率は40・69%で10年以上も不変だ。この間にアジア諸国は10~20%台、欧州諸国も30%以下に下げ、大幅な差がついた。
 政府は6月の新成長戦略で法人実効税率を国際水準に下げると明記した。国内企業が生産拠点を税金の安い外国に移したり、外資が日本進出を手控えたりするのを止める狙いだ。税率下げは新しい成長業種や外国企業にも広く恩恵が及ぶ。
 今回の減税では税収が約1兆5000億円減る分の財源が争点だった。財務省は企業のほかの負担増で穴を埋めるよう求め、最後には下げ幅を3%にとどめる案も示した。首相がその考えを退け、5%の引き下げを決めたのは正しい判断だ。
 国の減収分のうち6500億円程度は欠損金の繰越控除に限度を設けたり、設備投資の減価償却で初期の償却額を縮めたりして補う。租税特別措置も一部、縮小する。減価償却や繰越控除の見直しで当初は増収となるが、長期安定的な財源ではない。今後、他の税の増収を含め恒久的な財源を探す必要がある。
 5%の税率下げは第一歩だ。実効税率を少なくとも30%程度まで下げないと同じ競争の土俵に立てない。抜本的な税財政改革を進めるなかで一層の税率下げを追求すべきだ。
 さらに、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加や、労働分野など様々な規制の緩和も推進し、企業による国内での投資、雇用の環境を改善することが大事である。
 法人課税の軽減を企業優遇と批判する声もあるが、見当違いだ。投資や雇用の主役である企業が国際競争に勝ち抜けなければ、雇用も増えない。国会審議では野党も大局を見据えて協力するのが当然である。
 ドイツや英国は企業競争力を重視した法人税率引き下げと、消費税にあたる付加価値税の増税を一体で進めている。政治はそうした世界の改革の流れを正視してほしい。
 日本企業は法人減税を受けて国内の投資や雇用を増やす責任を負う。今後、一層の税率下げにあたって租税特別措置をさらに整理する必要もあろう。その際、経済界は既得権に固執せず、多くの企業に恩恵が及ぶ税率下げを後押しすべきだ。

:2010:12/15/10:15  ++  改革迷走瀕死の社会保障(下)漂流する「政権野党」――増税も給付減も不可避。

11月29日夕、東京・永田町の議員会館で厚生労働省の政務三役が民主党厚労部門会議の幹部と向き合っていた。介護保険の改革案に理解を得るためだった。
 給付費の増加を抑えようと利用者負担を並べた厚労省案。厚労部門会議座長の石毛〓子は「負担を求めれば国民に支持されない」と首を縦に振らなかった。1時間に及ぶ議論は平行線で、与党が承認しない厚労省案は宙に浮いた。「何でも反対するだけの政権野党」。同省幹部はこぼす。
 民主党が公約で「廃止」を約束した高齢者医療制度の改革論議も迷走している。厚労省案の高齢者の負担増に同党議員が反発。「成立しないかもしれない法案を統一地方選前に国会に出す意味はあるのか」。7日の同党会合では法案提出の見送り論まで飛び出した。
人気取りを優先
 昨年の衆院選で「年金、医療、介護の安心」を公約に掲げ、政権交代の原動力とした民主党。与党になると高齢者の負担軽減策を次々と求めた。2012年度から3年間、65歳以上の介護保険料を平均月額5千円以下に抑える。ただ、その財源は積立金を取り崩す場当たり策で、全体の改革案は手つかずだ。目前の人気取りを優先し、長期的に制度をどう維持するかの視点は欠いている。
 今年6月、北九州市を基盤とする百貨店、井筒屋の健康保険組合が解散した。高齢者医療制度に支払う負担金が膨らみ、支出の半分弱に達したのが引き金だ。自立をあきらめ、公費助成で保険料の安い中小企業向け協会けんぽに移った。
 協会けんぽも加入者のボーナス減で09年度は4700億円の赤字だ。厚労省は健保組合からの財政支援を進めるが、全国に約1500ある健保組合も8割は赤字。高齢者医療を支える負担で健保組合が衰弱し、公費に頼ろうと協会けんぽに駆け込む動きが今後、加速しそうだ。自助努力の民間健保は縮み、公営制度が肥大化していく。
 「社会保障と税制(の改革)は、なんとしても取り組みたい」。政府・与党が10日開いた社会保障改革検討本部。首相の菅直人は社会保障の財源確保へ税制改革に取り組む姿勢を示した。ただ、報道陣の前では「消費税」に触れなかった。
 この直前、菅は「消費税を社会保障の主たる財源に」とする有識者の提言を受け取った。幅広い世代が負担する消費税が社会保障の有力な財源という考えは政府与党も共有する。それでも直後に政府・与党が決めた基本方針は「消費税」の表記を避けた。今夏の参院選の敗北は消費税増税論が原因との思いが背景だ。
 参院選後は消費税を財源とする新年金制度の議論もタブー視されている。看板の年金制度改革は今年6月に「最低限の年金額を支給」など7原則を決めただけで検討を棚上げした。
選択肢示すべき
 膨らむ公的給付を抑える発想も乏しい。年7千億円近い国民医療費の伸びの大半は新薬や治療技術の高度化による。高価な治療をどこまで公費で賄うかは議論の余地があるが、検討する土俵はない。英国には専門家機関が薬や検査の費用対効果を判定する仕組みがある。効果に比べ公費がかかりすぎる場合は公的医療の適用から外す。
 「強い社会保障」の実現は、支える経済が強いことが条件となる。消費税の増税や給付カットを含めた抜本改革で経済の活力を弱めないよう社会保障政策のかじをきる必要がある。目先の人気取りに走らず、選択肢を国民に明示する。政治がその責任を果たさなければ、「高負担・低福祉」の明日が待ち受ける。

:2010:12/15/10:10  ++  中国進出企業、賃金「2ケタ上昇」4割、2ケタ増益も42%―今年度、本社調べ。

【北京=多部田俊輔】日本経済新聞社が14日まとめた「中国進出日本企業アンケート」で2010年度の中国での賃金水準が昨年度比で10%以上上昇した企業が4割に達した。一方で4割の企業が今年度の中国事業の2ケタ増益を見込み、11年度の設備投資も約46%が増やす意向を示した。コスト増や日中関係の行方の不透明さなどの逆風を受けながらも、引き続き中国を収益源として重視する姿勢が浮き彫りとなった。(中国の日系企業は3面「きょうのことば」参照)=関連記事15面に
 中国進出企業アンケートは中国大陸に進出している有力製造業・サービス業136社を対象に11月下旬に実施。101社の回答を得た。
 日本企業が賃上げの目安としてきた中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は1~11月で前年同期比3・2%。これを上回る5%以上の賃上げを実施した企業が58・4%にのぼり、うち10%以上は40・6%に達した。製造業・サービス業を問わず幅広い業種で賃金水準が上昇した。
 従来、中国の日系企業は欧米系に比べ賃金水準が低く、上昇ペースも遅いとされてきたが、様相が変わりつつある。上海の大手人材派遣会社の調査でも10年度の上海の日系企業の賃金上昇率は9・8%で、8%台の欧米系や中国系を上回る。
 中国での外資の労務問題に詳しい米大手法律事務所ジョーンズ・デイの陶景洲パートナーは「日系企業の賃金水準は欧米系に比べまだ2~3割以上低い。中国政府も消費拡大へ所得増を後押しする姿勢を示しており、人材を確保するためにも日系はさらに賃上げを迫られるだろう」と分析する。
 中国では今夏以降、賃上げを求める従業員のストライキが相次いだ。今回の調査でも2割が自社や取引先でのスト発生で影響を受けたと回答。スト未発生の企業でも賃金上積みや特別一時金支給、福利厚生の改善など予防措置をとる動きが目立った。CPI上昇率は11月には前年同月比5・1%と2年4カ月ぶりの高水準に達し、11年も賃上げ圧力はさらに強まるとみられる。
 日中関係の悪化も中国事業に影を落とした。尖閣諸島沖での漁船衝突事件後に中国税関が実施した抜き取り検査強化で、業務に影響が出たのは34・7%。レアアース(希土類)の輸出停滞でも1割が影響を受けたと答えた。反日デモの影響で中国政府との会合や行事が取り消し・延期になったり、宣伝活動を自粛したりした企業もそれぞれ1割超あった。
 中国では近年、所得格差が急激に拡大。若年層を中心に不満が高まっており「従業員の不満が反日というはけ口に向かうことを危惧している」(製造業)との声もあった。
 環境悪化にもかかわらず、中国事業の収益は伸びている。10年度見込みは2ケタ増益が42・5%、11年度予測も黒字拡大が48・5%に達した。中国での設備投資は10年度に2ケタ増の企業が3割、11年度も「増額」が半分弱を占めた。
 人件費上昇などで輸出拠点としての競争力は低下しつつあるが、対策として「中国以外への生産移管」を挙げた企業は5%だけ。中国国内向けの販売比率が5割超という企業が7割以上を占め、「世界の市場」としての中国を重視する姿勢が鮮明になっている。

:2010:12/10/10:50  ++  新防衛大綱、陸自15万人維持、戦車200両削減で――南西諸島強化。

政府は9日、新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)の別表に示す陸上自衛隊の編成定員について2004年大綱に定めた15万人台の現行水準を維持する方針を固めた。人員維持により、南西諸島防衛の強化などに備える。厳しい財政事情にも配慮し、戦車を04年大綱の約600両から約400両に減らすなど重装備の削減で対応する。
 防衛大綱は来週中の閣議決定を目指す。政府は既に北朝鮮や中国の軍事動向を背景に旧ソ連軍の上陸による侵攻を想定した冷戦期の発想を転換。これに伴い、その前線への投入を前提にした陸自の人員を減らし、海上自衛隊や航空自衛隊の機能を重視すべきだとの考えが広がっている。
 今回の大綱でも海自の潜水艦は04年大綱に定めた16隻から22隻態勢に増強。海自の護衛艦と空自の戦闘機については、それぞれ47隻、約260機態勢を維持する見込みだ。陸自の定員は09年度末で16万人(即応予備自衛官を含む)。04年大綱の定員は15万5000人と明記した。
 財務省は財政難と冷戦期からの安全保障環境の変化を理由に15万人未満に抑えるよう求めていた。防衛省は陸自戦車を400両に削減することで、財源を捻出。それを人員維持に充てる。
 戦車は旧式装備の削減を進める一方で、開発中の機動戦闘車を導入する。機動戦闘車は現在配備している74式戦車と同等の火力を持ち、低価格で購入できる。
 防衛大綱は日本の安全保障の基本方針。防衛力の意義や役割を盛り込む。

:2010:12/10/10:50  ++  新防衛大綱、陸自15万人維持、戦車200両削減で――南西諸島強化。

政府は9日、新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)の別表に示す陸上自衛隊の編成定員について2004年大綱に定めた15万人台の現行水準を維持する方針を固めた。人員維持により、南西諸島防衛の強化などに備える。厳しい財政事情にも配慮し、戦車を04年大綱の約600両から約400両に減らすなど重装備の削減で対応する。
 防衛大綱は来週中の閣議決定を目指す。政府は既に北朝鮮や中国の軍事動向を背景に旧ソ連軍の上陸による侵攻を想定した冷戦期の発想を転換。これに伴い、その前線への投入を前提にした陸自の人員を減らし、海上自衛隊や航空自衛隊の機能を重視すべきだとの考えが広がっている。
 今回の大綱でも海自の潜水艦は04年大綱に定めた16隻から22隻態勢に増強。海自の護衛艦と空自の戦闘機については、それぞれ47隻、約260機態勢を維持する見込みだ。陸自の定員は09年度末で16万人(即応予備自衛官を含む)。04年大綱の定員は15万5000人と明記した。
 財務省は財政難と冷戦期からの安全保障環境の変化を理由に15万人未満に抑えるよう求めていた。防衛省は陸自戦車を400両に削減することで、財源を捻出。それを人員維持に充てる。
 戦車は旧式装備の削減を進める一方で、開発中の機動戦闘車を導入する。機動戦闘車は現在配備している74式戦車と同等の火力を持ち、低価格で購入できる。
 防衛大綱は日本の安全保障の基本方針。防衛力の意義や役割を盛り込む。

:2010:12/10/10:44  ++  給与所得控除、年収1500万円で頭打ち、税制大綱明記へ、高額報酬役員は圧縮

成年扶養控除 年収568万円超は廃止
 政府税制調査会は9日、サラリーマンの給与所得控除の対象を年収1500万円部分までとし、それを超える部分は対象外とする方針を固めた。23~69歳の家族を扶養する納税者に適用する成年扶養控除も原則として、平均的な年収に近い年収568万円超の場合は廃止する。いずれも2011年度税制改正大綱に盛り込む。高所得者により多くの負担を求め、財源を捻出する姿勢が強まる。(所得税の控除は3面「きょうのことば」参照)
 政府税調は9日の関係閣僚会合で見直しの方向を固めた。10日にも最終とりまとめ案を全体会合に提示し、大綱への明記を決める。大綱の閣議決定は当初予定の14日から15日以降にずれ込む見込みだ。
 現行の給与所得控除の仕組みは、年収が増えるに従って控除額が膨らむ。見直しでは年収が1500万円を超すと年収が増えても、控除額が245万円で頭打ちになるようにする。この結果、納税者全体の1・2%にあたる約50万人が増税となる。年収1800万円(妻が専業主婦で子どもなし)で年5万円程度の増税となる。年収2000万円(同)で年8・3万円の負担増となる。
 さらに年収2000万円超の報酬を得ている取締役や監査役、執行役などの法人役員は控除額を一般社員の半分程度に圧縮する。国家公務員や地方公務員の幹部も対象。控除額を段階的に縮小し、年収4000万円超では一般社員の半分となる仕組みとする。政府税調は給与所得控除の見直し全体で1000億円台の増収を見込んでいる。
 年間所得が38万円以下の23~69歳の扶養家族がいる納税者を対象とした成年扶養控除も縮小。年収568万円超は控除を廃止する。ただ扶養家族が障害者や難病人、要介護者、学生などの場合は控除を存続する。
 同控除の適用外となる納税者は約110万人で、所得税の増税額は約900億円を見込む。現在、同控除の適用を受けている約470万人の納税者のうち、約23%が控除対象から外れる。
 一方、来年度税制改正の控除見直しの焦点となっている配偶者控除の見直しでは、厚生労働省の提案を受け、子ども手当拡充の財源候補として政府税調が年収1231万円超について廃止する案を検討中。ただ民主党内で「主婦層狙い撃ちの負担増だ」と批判が強い。
 大綱に控除見直しを明記しても、来年度から実施するには、次期通常国会での税制改正法案の成立が条件となる。衆院と参院の多数が異なる「ねじれ国会」の下で、法案成立の行方は不透明だ。
 ▼給与所得控除 サラリーマンが所得税や住民税を計算する際、必要経費があると見なして、給与年収から無条件で差し引ける控除。売り上げから実際の必要経費を差し引く自営業者と課税の公平感を保つ意味もある。平均で年収の約3割が控除されている。

:2010:12/06/09:08  ++  防衛の対中シフト鮮明、新大綱、均衡配備から転換、武器輸出三原則見直し。

昨年の政権交代後、民主党が初めて手掛ける新たな「防衛計画の大綱」は、海洋進出で活発な動きを見せる中国への警戒感が強くにじむ内容となる。新たに導入する概念の「動的防衛力」が中国を意識しているのは明らか。一方、防衛省がめざす武器輸出三原則の見直しは調整が難航する可能性もあり、菅直人首相の最終判断に委ねられる見通しだ。(1面参照)
 「基盤的防衛力構想を転換し、南西諸島防衛を強化する。そして武器輸出三原則を見直す。最後の最後で腰砕けになってはいけない」。防衛次官経験者の一人は今回の大綱の意義をこう語る。
周辺国と連携
 公表されている中国の国防予算は当初予算比で「2009年度までに21年連続で2けたの伸び率」(防衛省幹部)。大綱では中国の軍事的な動きについて「我が国を含む地域・国際社会にとっての懸念事項」と明記する方向で調整している。
 日米同盟のほか韓国、オーストラリアとの防衛協力の強化も明示。中国の「覇権拡大」の動きへの対抗措置の一環とみられる。東南アジア諸国やインドとの防衛交流拡充にも触れており、中国周辺国と連携を進める。
 大綱の別表に定める主要装備の整備目標では、海上自衛隊の潜水艦について、現在の16隻から22隻態勢に増強。航空自衛隊の戦闘機も島しょ防衛強化の方針を受け、沖縄に配備するF15戦闘機を増強する。いずれも中国シフトといえる。
新たな火種に
 自衛隊の均衡配備による抑止効果を重視した基盤的防衛力構想を転換し、新たに「動的防衛力」を掲げるのは近年、テロやゲリラ戦の流れが強まったためだ。日本の厳しい財政事情も影響している。自衛隊の人員や装備・資機材を効率的に運用し、資源確保などのために日本の南西方面に海洋進出している中国に対応する必要が出てきた。こうした防衛大綱に中国が反発し、日中間の緊張が高まる可能性もある。
 一方、すべての武器や関連技術の輸出を原則として禁ずる武器輸出三原則の緩和に向けた見直しでは、政局が絡んで着地点がまだ見えない。
 菅直人首相は6日に社民党の福島瑞穂党首と会談し、来年の通常国会での11年度予算案への協力を求める方針。自民、公明両党が参院で問責決議が可決した仙谷由人官房長官らの辞任を求めており、このままでは予算審議が滞り政権運営が行き詰まる可能性がある。社民党の協力が得られれば予算関連法案も衆院で与党の3分の2以上の賛成で再可決できると踏む。
 一方、福島氏は5日、千葉県八千代市での街頭演説で武器輸出三原則の見直しに関して「首相に『見直しは駄目だ』と、がつんと言う」と述べ、6日の党首会談で堅持を求める考えを示した。
 福島氏は来年度予算案への反対も辞さない構え。安全保障問題では沖縄県の米軍普天間基地の県内移設方針に反発して政権を離脱した経緯があるだけに、防衛大綱の最終決着までの道のりが見通しにくくなっている。

:2010:12/06/08:54  ++  第2部岐路に立つ(1)いでよ「指導者」(民主主義を考える)

「中国やロシアに毅然と対応してくださいよ」
 「小沢さん一人どうにもならないのに、できるわけないだろう」
 社会風刺コントで人気を集めるザ・ニュースペーパー。埼玉県越谷市で1日、披露したネタの反応は悪くはなかったが、首相、菅直人(64)のまねをする松下アキラ(46)の表情はさえない。「菅さんは首相として何もやろうとしていない。だから演じにくい……」
 安倍晋三(56)以降、1年交代で登場した5人の首相と政治の混乱。笑いの裏に「冗談にしている場合じゃない」という空気が潜む。より深刻なのは、閉塞感を打破する指導者への期待感もしぼんでいる点だ。
□   □
 自民党政権時は派閥領袖が、閣僚や党幹事長などを経験しながら首相を目指した。だが「金権」「密室」の批判をうけた派閥政治には戻れない。何より「成長の果実を分配し日米安保を堅持していれば何とかなった55年体制下の首相と、低成長や新興国の台頭と向き合うこれからの首相は全然、違う」(キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹、宮家邦彦=57)。
 「財政再建をしたいんじゃない。しなくてはならないのだ」
 11月25日の自民党本部。政調会長の石破茂(53)らが、英議会で激論を交わす英首相、キャメロン(44)のビデオに見入った。石破が企画したディベート能力開発講座。歳出削減や増税など過激ともいえる財政再建策を打ち出しながら、底堅い支持率のキャメロン政権の秘密を探ろうと、40人を超す議員が集まった。
 13年ぶりに政権を奪還したキャメロンは、いわば保守党の申し子だ。オックスフォード大を卒業後、党の貿易担当調査員として当時の首相、サッチャー(85)に仕えた。25歳で財務相特別顧問に抜てきされ、1992年の「ポンド危機」への対応などで頭角を現していった。
 英国では、議員になる前の若手有望株を調査員やスピーチライターに起用し、首相や大臣を補佐させる伝統がある。経験を積みながら官僚とのパイプもつくる。キャメロンは官僚組織の肥大化を批判する一方、5月の総選挙前から各省のトップと会談を重ね、政権発足に備えていた。
 政党が政治指導者を発掘し、育てる――。そんな考えが定着している英国に対し、米大統領選は「生き残り競争型」だ。二大政党が各州で開く予備選や党員集会を勝ち抜き、本選に臨む。オバマ(49)も2007年2月の出馬表明から1年9カ月の戦いに耐えて頂上にたどり着いた。
 この間、繰り返される討論会は指導者としての資質を徹底的に洗い出す。政策スタッフを集め、全米に集金網をつくるなかで、組織を束ねる能力も問われる。
□   □
 米英のやり方が最善というわけではない。オバマの支持率は低迷している。移ろいやすい民意を前にキャメロン政権もいつ失速するかは分からない。オックスフォード、ケンブリッジなどの有名大学が事実上のリーダー育成機関となっている英国では、階級社会とも密接に絡むエリート主義への不満がくすぶる。
 それでも、実力本位で指導者を選ぶ政治風土は日本の先を行く。キャメロンも、英労働党党首に就いたミリバンド(40)も、国会議員経験は10年に満たない。
 リーダー育成の研修事業などを手掛ける非営利組織(NPO)、ISLの理事長、野田智義(51)は言う。「日本でも優秀な人材が責任ある立場で競いあえば、指導者は育つ」(敬称略)
「民主主義国はおそらくほかのどの形態の政治よりも国民を指導し、鼓舞すべき卓越した人物を必要とする」

:2010:12/03/11:09  ++  グーグル、独走態勢一段と――楽天「十分な検証を」、欧州委は独自調査

米グーグル、ヤフー提携に公正取引委員会がゴーサインを出した背景には、両社がそれぞれ独自の味付けをした検索サービスを提供し、広告営業も別々であることから、競争状態が保たれるとの判断がある。しかし注目すべきは、もう一段深いところにある。検索技術の革新の担い手としてグーグルが圧倒的な存在になるということだ。
 公取委の「お墨付き」を得たことで、日本では検索サービスの9割をグーグルの技術が担う。見逃せないのはヤフーのサイトで利用者が入力したキーワードの情報が、グーグルにも届く点だ。こうした情報は検索の精度を高めるのに極めて重要で、その量は多いほどいい。
 グーグル・ヤフーの説明通りサービス運営や営業活動が別々であれば、ネット利用者や広告主にとっての選択肢が確保され、不利益はないようにみえる。ただ長期的な視点に立てばどうか。ネットの世界に広く深く根を張った検索技術のブラックボックスが特定企業に握られる不気味さがある。
 世界を見渡せば、高まるグーグルの影響力を警戒する声は多い。11月末には欧州連合(EU)の欧州委員会が、グーグルが検索での優越的地位を乱用し、検索サイトで競合会社を締め出した疑いで調査に乗りだした。グーグルと米ヤフーのネット広告提携は米司法省に阻止された経緯がある。
 検索でグーグルを打ち負かすのは難しいが、そのことでネット業界の競争が阻害されてはならない。実際、検索とは違う領域からネットの覇権をうかがう動きもある。
 有力候補は交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック。調査会社によると、11月第2週の米サイト訪問者数シェアはフェイスブックが前年比3・9ポイント増の10・3%で首位。0・4ポイント増の7・2%だったグーグルを上回った。
 フェイスブックの会員数は7月に5億人を超えた。サイトでやり取りされる情報はグーグルに公開せず、グーグルで検索できない。
 パソコン用基本ソフト(OS)で9割超のシェアを握りIT(情報技術)業界に君臨したマイクロソフトを揺さぶったのは、グーグルに代表されるネット企業。高機能携帯電話「iPhone」など独特の端末で快走する米アップルは今年、株式時価総額でマイクロソフトを抜いた。
 こうした競争のダイナミズムが多様なIT製品やサービスを生み、消費者の利益につながる。日本の公取委も検索にとどまらず大きな視点で競争の構図をとらえ、今回の提携に注目し続ける必要がある。

:2010:12/03/11:06  ++  グーグル、独走態勢一段と、公取委、ヤフーとの提携容認、異例の体制で注視。

検索シェア9割
 米グーグルが日本のヤフーにインターネットの検索エンジンや広告システムを提供する提携について、公正取引委員会は2日、現時点で独占禁止法上の問題はないとの調査報告を発表した。国内の検索サービスではグーグルが約9割のシェアを握り、独走態勢が一段と強固になる。成長市場のネット分野で、技術革新による競争のダイナミズムを保てるか、今後の課題となりそうだ。
 米ヤフーから検索エンジンの提供を受けられなくなった日本のヤフーは7月、検索世界最大手のグーグルと提携すると発表した。公取委は、ヤフーがグーグルを選んだのは、他社より性能が高いと判断し、早期に導入できる利点があったためと指摘。提携は自発的で、その経営判断には合理性があると認めた。グーグル側からの圧力でヤフーが決めた場合には独占禁止法上、問題になる。
 検索連動型広告についても広告価格などの情報を遮断する仕組みを構築しており、競争が確保されているとした。
 ただ今回の判断は「ヤフーとグーグルの説明がよりどころ」(公取委の河野琢次郎相談指導室長)。報告書では両社に「カルテルなど独禁法上問題になる行為をしないよう」注文をつけた。ヤフーはすでに検索エンジンをグーグルに切り替えている。公取委は情報提供を受ける専用のメールアドレスをつくる異例の体制を敷き、不正が無いか注視する。
 米ヤフーと検索技術で提携しているマイクロソフトは、公取委の判断について「影響を調査する」とコメント。公正な競争が阻害されると懸念を表明していた楽天も「引き続き十分な検証や議論が行われることを期待する」と要望した。
 ヤフーは7月のグーグルとの提携発表に先立って、公取委には事前に相談していた。公取委は「独禁法上の問題はない」と回答していたが、8月以降、マイクロソフトや楽天からの申告を受け、関係業界や広告主などから意見を聞くなど改めて調査していた。
 ▼検索連動型広告 インターネットの検索サービスでキーワードを入力すると、検索結果ページの上部や右横などに表示される広告。キーワードに関連した企業や製品の広告を自動的に表示するため、宣伝効果が高いとされる。利用者が広告をクリックした回数に応じて広告料金が決まる仕組み。クリック1回当たりの広告単価はキーワードごとに、入札を実施して決める。検索結果画面での表示順位は入札金額のほか、広告の品質なども考慮されるという。
【図・写真】ヤフーとグーグルの提携について説明する公取委の相談指導室長ら(2日、東京都千代田区)

:2010:12/03/10:58  ++  生命の必須元素(きょうのことば)

▽…生命活動を維持するのに不可欠な元素。微生物から人間に至るまで、地球上のすべての生物が持つとされる。具体的には炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、リン(P)の6つ。炭素、水素、酸素は細胞を構成する分子の骨格になる。リンは遺伝子のもとになるDNA(デオキシリボ核酸)に不可欠。分子同士をつなぐ働きがあるほか、細胞の膜の材料やエネルギー源になる。
▽…有毒物質のヒ素(As)は元素周期表ではリンの近くにあり、似た部分もある。このため細胞がリンと勘違いして反応が進むが、リンよりも不安定なことなどから毒性をもたらすと考えられている。

:2010:12/03/10:44  ++  NASAなど、異質な生命体発見、細菌、米国で――必須元素リン含まず。

猛毒のヒ素食べ増殖
 米航空宇宙局(NASA)などの研究グループは、生命の維持に不可欠な元素がなくても生きられる細菌を発見した。生命の必須元素の一つであるリンがない環境だと猛毒のヒ素を食べて体の一部を作る細菌で、米国の塩水湖に生息していた。既知の地球の生物とは全く異質な生命体で、生物の常識を書き換える成果。リンのない天体でも生命が存在する可能性が考えられ、地球外生命体を巡る議論も活発になりそうだ。(生命の必須元素は3面「きょうのことば」参照)=関連記事3面に
 米地質調査所、アリゾナ州立大学、ローレンス・リバモア国立研究所などとの共同成果。NASAが日本時間の3日未明に発表し、米科学誌サイエンスに掲載される。
 NASA宇宙生物学研究所のフェリッサ・ウルフ・サイモン博士らは、米カリフォルニア州のモノ湖で細菌を採取した。細菌の大きさは0・001~0・002ミリメートル。
 モノ湖は湖から流れ出す川がなく、塩分が海水の3倍に濃縮されているほか、アルカリ性が強く、猛毒のヒ素を豊富に含む。通常の生物ならば死ぬ過酷な環境だが、この細菌はリンの代わりにヒ素を大量に食べて成長できることが分かった。
 生物は必須元素を摂取して体を作り生きている。リンは炭素や酸素、窒素、水素、硫黄と並ぶ主要な必須元素の一つ。生物のたんぱく質や、生命の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)はリン酸と呼ぶ物質を必ず含み、これを持たない生物は存在しないと考えられている。
 研究グループはこの細菌にリンの代わりにヒ素を与えながら培養したところ、DNAのリン酸がヒ素に置き換わり増殖した。リンの代わりに大量のヒ素を摂取して体を作れることが明らかになり、今回の細菌の発見は生物学の常識に修正を迫る成果といえる。
 また、原始の地球は一部にヒ素が多く存在したと考えられている。現在の生物の中にはヒ素だけを食べて生きる生物はいないが、新発見の細菌を詳しく調べれば生命の進化について新たな知見が得られる可能性がある。
 モノ湖周辺地域は隕石(いんせき)の落下によってできたとみられるクレーターが多いが、今回の細菌が地球外から飛来したと考える専門家はいまのところいない。ただ、これまで知られる地球の生物と全く異なる生命体が見つかったことにより、リンがないような極限環境の天体でも生きられる生命体が存在する可能性が増すとの見方がある。
 ▼生命体 最近の生物学では便宜的に3つの条件を兼ね備えたものとして定義されることが多い。(1)内と外を区切る膜で囲まれた細胞で体ができている(2)繁殖などによって自分を複製する力を持っている(3)外の物質を取り込み中で分解するなどの代謝する仕組みがある――の3条件だ。ほかにも、周囲の環境変化に適応することや、進化できることなどが条件とされることがある。

:2010:12/02/12:02  ++  揺らぐ「欧州のドイツ」(地球回覧)

 「我々はドイツの欧州ではなく、欧州のドイツを求める」。戦時中ナチスを批判して亡命生活を送った作家トーマス・マンは、祖国の進むべき道として欧州をドイツ化するのではなく、ドイツが欧州にとけこんでいくことを説いた。
 この考え方は戦後のドイツ外交の基本になり、欧州連合(EU)や通貨統合にも生かされた。冷戦終結後の東西統一でドイツの強大化を警戒する隣国に対し、自国通貨マルクを捨ててユーロに加わることで欧州との協調路線を明確にした。
 ところがベルリンの壁崩壊から20年、ユーロ創設から10年がたった昨年あたりから様子が変わってきた。
 昨年末に表面化したギリシャ財政危機。メルケル独首相は、国内世論や憲法上の制約を理由に当初は支援に慎重姿勢をとり、最終決着は5月までずれ込んだ。
 そして今回のアイルランドなどの危機でも、混乱の一因はドイツが提案した「国債投資家への負担要請」だ。ドイツは欧州の新たな財政監視の枠組みでも、財政再建目標を達成できない国に厳しい制裁措置を求める。
 こうしたドイツの強気の姿勢は、他の欧州諸国、特に財政危機に苦しむ国からみれば「皆がドイツ人のようになれ」と言われているように映る。
 金融危機後、ドイツ経済は欧州では一人勝ちとも言える状況だ。不動産バブルで高成長していたスペインや「ケルトの虎」と呼ばれたアイルランドが次々と失速するのをよそに、中国など新興国向け輸出で稼ぎまくる。11月の独景況感指数は1990年の東西ドイツ統合以来で最高水準を記録した。
 「ドイツは新興国向け輸出の好調で自国経済に自信満々。今、ユーロ圏内の不均衡是正のためにドイツに内需拡大を求めても聞く耳をもたない」。最近パリを訪れた英研究者に仏政府当局者はこうもらした。
 財政危機国への金融支援も、最大の資金貢献国のドイツが首を縦に振らなければ何も決まらない。金融危機後、ユーロ圏内でドイツの相対的な経済力と発言力は一段と強まった。
 「放漫財政で勤労意欲も低く生産性も低い」。ドイツが南欧などに向ける批判は正論に聞こえる。だが、南欧側には「ドイツは、貿易面でユーロ導入による通貨安定の恩恵を受けている。経済危機でも我々は対独で通貨切り下げはできず、財政緊縮策で低成長を甘受するしかない」という不満がくすぶる。
 「ドイツはギリシャ支援の際はユーロ圏で指導力を発揮しないと批判され、最近は指導力を発揮しすぎると批判される」。最近のロンドンでの会合でドイツ政府当局者が皮肉まじりに語った。
 ドイツとしてはユーロ圏の統合強化を主導しようとするのを批判されるのは納得がいかないということだろう。だが問題はその指導力の発揮の仕方だ。国内事情だけで自説を他国に押しつければ「再び欧州をドイツ化しようというのか」という警戒感が広がる。
 「首相はまず国内的に利益を得られるかどうかという観点で外交を考える」。世界を揺るがした「ウィキリークス」を通じた米外交公電の暴露。独シュピーゲル誌は、米外交官のみたメルケル首相の外交観をこう伝えた。強くなったドイツのパワーの使い方が問われている

:2010:12/02/11:58  ++  バングラデシュ首相、インフラ投資期待、港湾・空港建設の計画提示。

日本との経済連携協定(EPA)の早期締結を要請するバングラデシュのハシナ首相は、日本に期待する協力分野について、具体的に港湾や空港などへのインフラ投資を挙げた。安い労働力を背景に縫製分野などへの海外からの投資流入が加速するなか、成長のカギを握るインフラ整備に焦点を絞り、日本勢の参画に期待を示した。(1面参照)
 ハシナ首相は「日本のインフラ投資への能力と経験がバングラデシュの成長の大きな支えになる」と強調した。具体的に(大型船が入港できる)水深の深い港や国際空港を建設する計画を示し、日本政府と企業の投資を呼びかけた。
 日本政府は首相来日にあわせ、全長6・15キロの橋を架ける「パドマ橋事業」に国際協力機構(JICA)を通じて、4億ドル(約340億円)の円借款を供与する意向を表明した。これについて首相は「訪日の最大の成果」と評価した。
 日本企業はバングラデシュの安い労働力だけでなく、人口増加にともなう市場の潜在力も視野に入れている。ファーストリテイリングが7月、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏が総裁を務めるグラミン銀行と衣料の製造・販売を手がける新会社を設立すると発表。ロート製薬も販売会社を設立し、スキンケア商品の販売を始める。
 首相は日本企業に限定した経済特区について「訓練された労働者を安く雇用できるほか、工場設備なども提供する」と強調した。韓国企業向けにはすでに別の優遇地域が設けられており、日本は出遅れていたが「日本企業にとって進出の魅力は増すはずだ」と述べた。
 バングラデシュは今年度、6%程度の経済成長を見込んでいる。日本によるインフラ投資などを足がかりに、2017年には10%程度の成長率を達成、中進国入りを果たす考え。首相は「まだ農業が中心の途上国だが、日本のように工業化を進めたい」と語った。
 シェイク・ハシナ首相 バングラデシュで「建国の父」と呼ばれる初代大統領ムジブル・ラーマン氏の長女。1971年の独立戦争の際に西パキスタン占領軍に一時拘束される。75年の父親暗殺で81年までインドへ亡命。帰国後、アワミ連盟党首に就任し、96年首相就任。総選挙に敗北するが、2008年末の総選挙で勝利し、09年1月に首相に返り咲いた。63歳。

:2010:12/02/11:42  ++  東アジア緊張続く、米韓月内にも再演習、日米あすから、北朝鮮へ圧力維持。

北朝鮮の挑発を抑止することを狙った米韓合同軍事演習は1日、4日間の日程を終了した。米韓両国は黄海で追加演習を視野に入れるなど北朝鮮への圧力を緩めない方針で、東アジア情勢の緊迫は続く。外交面では日米韓が結束して北朝鮮に影響力を行使するよう中国に求める。日米両国も3日から沖縄東方海域、日本海地域などで大規模な共同演習をし、北朝鮮とともに、海洋進出が著しい中国をけん制する。(関連記事6面に)
 【ソウル=島谷英明】「いかなる挑発もせん滅する強い意志を固めた」。韓国軍は1日、成果を強調した。南西部の群山沖での演習には米韓の兵力7300人を動員。米軍は原子力空母「ジョージ・ワシントン」など計5隻、韓国軍はイージス艦などを投入して圧倒的な力を誇示した。北朝鮮は「戦争の瀬戸際」と反発したが、新たな軍事挑発はなかった。
 ●安保理、調整進まず 米韓は今後も軍事圧力を継続し、年内にも再び海上訓練をする方向だ。これとは別に韓国軍は6日から南北境界線水域近くを含む全国29カ所で海上射撃訓練を計画する。延坪島(ヨンピョンド)には強力な多連装ロケットを新たに配備し、自走砲も12門に倍増。北朝鮮が砲撃の理由に挙げた同島での射撃訓練も再開する見込みだ。
 外交の動きも激しい。韓国の金星煥(キム・ソンファン)外交通商相は1日、欧州安保協力機構(OSCE)の会合中のカザフスタンに飛び、クリントン米国務長官と砲撃後、初めて会談。中国提案の6カ国高官会合を巡り「北朝鮮が挑発行為に責任ある態度を見せ、非核化進展へ具体的な行動が必要」との見解で一致した。
 一方、国連安全保障理事会では30日、北朝鮮のウラン濃縮施設を巡り、米国などが非難声明取りまとめに動いたものの、中国の反対で先送りに。延坪島砲撃でも北朝鮮非難の議長声明採択を探るが、難航している。
 東アジアでは米韓に続き日米も3日から大規模演習を沖縄など日本周辺で始める。陸海空自衛隊から約3万4100人、米陸海空軍・海兵隊から約1万400人の計4万4500人が参加。米空母ジョージ・ワシントンも合流し、先の米韓演習の6倍規模という過去最大級の演習となる。
 ●尖閣諸島を念頭に 訓練は日本有事を想定し、日本海地域での弾道ミサイル対処には海自イージス艦も参加して北朝鮮をけん制する。
 沖縄東方海域では、中国と摩擦を抱える尖閣諸島を念頭に島しょ防衛を訓練。九州でも陸自と米海兵隊が離島奪還などの演習に入る。仙谷由人官房長官は1日の記者会見で、米韓演習の終了に関して「もう少し緊張状態は続く」と指摘した。

:2010:12/02/11:32  ++  インタビュー(下)防衛省防衛研究所主任研究官兵頭慎治氏(どこへ行く日本の安保)

――アジア情勢が緊張するなか、ロシアの出方も日本の安全保障上の変数です。
 「ロシアは対中関係を重視し、北朝鮮問題で中国に近い立場をとってきたが、今回は北朝鮮批判を強めている。朝鮮半島の現状を維持したい中国と、ロシアは利害を共有していない。米ロ関係も改善した。ロシアが北朝鮮問題で米韓寄りに転じ、中ロ関係がぎくしゃくする可能性もある」
 ――中ロ関係の動きは地政学上、日本にも大きな意味を持ちます。
 「中ロの蜜月は(東アジアで大規模な合同軍事演習を実施した)2005年がピークだったと思う。ロシアは“経済の近代化”を実現するため米欧と協調する路線に転換し、中国との関係強化を対米けん制に利用する意味は以前より薄れた。経済面でも中ロの摩擦が目立つ」
 ――対中戦略で日ロが組む余地もありそうですか。
 「日本の戦略的な機会は中ロ関係のきしみの中にある。中国一辺倒の東アジア政策を見直し、日本や韓国との関係を重視すべきだとの声が、ロシアで高まっていることは確かだ。ただ、ロシアは日本が戦略的に自立することはないと見ており、日米、米韓同盟に接近し、中国をけん制したいと考えている。良好な米ロ関係が続くことが前提だが、日ロ接近のカギは強固な日米同盟にある」
 ――ロシアは中国の台頭を脅威と見ているのですか。
 「ロシアは中ロ蜜月を演出しながら、中国の勢力拡大と資源国の囲い込み、尖閣諸島などで見せる領土的な野心に警戒を強めている。これは軍事戦略に鮮明に出ている。12月に創設する極東の陸海空統合作戦司令部は海軍基地のあるウラジオストクではなく、(中国を視野に)内陸のハバロフスクに置かれる」
 ――メドベージェフ大統領は北方領土を訪問するなど日本に強硬です。
 「大統領の国後島訪問は内政要因によるものだ。12年の大統領選に向け、強い指導者であることを示したいが、従来のように米欧に敵対姿勢を取ることはできない。そこで北方領土を利用した。尖閣諸島を巡る日本の中国への対応を見て、日本が激しい対抗措置に出てくることはないと判断した面もある」