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:2010:12/02/11:32 ++ インタビュー(下)防衛省防衛研究所主任研究官兵頭慎治氏(どこへ行く日本の安保)
――アジア情勢が緊張するなか、ロシアの出方も日本の安全保障上の変数です。
「ロシアは対中関係を重視し、北朝鮮問題で中国に近い立場をとってきたが、今回は北朝鮮批判を強めている。朝鮮半島の現状を維持したい中国と、ロシアは利害を共有していない。米ロ関係も改善した。ロシアが北朝鮮問題で米韓寄りに転じ、中ロ関係がぎくしゃくする可能性もある」
――中ロ関係の動きは地政学上、日本にも大きな意味を持ちます。
「中ロの蜜月は(東アジアで大規模な合同軍事演習を実施した)2005年がピークだったと思う。ロシアは“経済の近代化”を実現するため米欧と協調する路線に転換し、中国との関係強化を対米けん制に利用する意味は以前より薄れた。経済面でも中ロの摩擦が目立つ」
――対中戦略で日ロが組む余地もありそうですか。
「日本の戦略的な機会は中ロ関係のきしみの中にある。中国一辺倒の東アジア政策を見直し、日本や韓国との関係を重視すべきだとの声が、ロシアで高まっていることは確かだ。ただ、ロシアは日本が戦略的に自立することはないと見ており、日米、米韓同盟に接近し、中国をけん制したいと考えている。良好な米ロ関係が続くことが前提だが、日ロ接近のカギは強固な日米同盟にある」
――ロシアは中国の台頭を脅威と見ているのですか。
「ロシアは中ロ蜜月を演出しながら、中国の勢力拡大と資源国の囲い込み、尖閣諸島などで見せる領土的な野心に警戒を強めている。これは軍事戦略に鮮明に出ている。12月に創設する極東の陸海空統合作戦司令部は海軍基地のあるウラジオストクではなく、(中国を視野に)内陸のハバロフスクに置かれる」
――メドベージェフ大統領は北方領土を訪問するなど日本に強硬です。
「大統領の国後島訪問は内政要因によるものだ。12年の大統領選に向け、強い指導者であることを示したいが、従来のように米欧に敵対姿勢を取ることはできない。そこで北方領土を利用した。尖閣諸島を巡る日本の中国への対応を見て、日本が激しい対抗措置に出てくることはないと判断した面もある」
「ロシアは対中関係を重視し、北朝鮮問題で中国に近い立場をとってきたが、今回は北朝鮮批判を強めている。朝鮮半島の現状を維持したい中国と、ロシアは利害を共有していない。米ロ関係も改善した。ロシアが北朝鮮問題で米韓寄りに転じ、中ロ関係がぎくしゃくする可能性もある」
――中ロ関係の動きは地政学上、日本にも大きな意味を持ちます。
「中ロの蜜月は(東アジアで大規模な合同軍事演習を実施した)2005年がピークだったと思う。ロシアは“経済の近代化”を実現するため米欧と協調する路線に転換し、中国との関係強化を対米けん制に利用する意味は以前より薄れた。経済面でも中ロの摩擦が目立つ」
――対中戦略で日ロが組む余地もありそうですか。
「日本の戦略的な機会は中ロ関係のきしみの中にある。中国一辺倒の東アジア政策を見直し、日本や韓国との関係を重視すべきだとの声が、ロシアで高まっていることは確かだ。ただ、ロシアは日本が戦略的に自立することはないと見ており、日米、米韓同盟に接近し、中国をけん制したいと考えている。良好な米ロ関係が続くことが前提だが、日ロ接近のカギは強固な日米同盟にある」
――ロシアは中国の台頭を脅威と見ているのですか。
「ロシアは中ロ蜜月を演出しながら、中国の勢力拡大と資源国の囲い込み、尖閣諸島などで見せる領土的な野心に警戒を強めている。これは軍事戦略に鮮明に出ている。12月に創設する極東の陸海空統合作戦司令部は海軍基地のあるウラジオストクではなく、(中国を視野に)内陸のハバロフスクに置かれる」
――メドベージェフ大統領は北方領土を訪問するなど日本に強硬です。
「大統領の国後島訪問は内政要因によるものだ。12年の大統領選に向け、強い指導者であることを示したいが、従来のように米欧に敵対姿勢を取ることはできない。そこで北方領土を利用した。尖閣諸島を巡る日本の中国への対応を見て、日本が激しい対抗措置に出てくることはないと判断した面もある」
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:2010:12/02/11:27 ++ 米外交文書の流出が突きつけた問題(社説)
内部告発の情報を専門に流すインターネットのサイト「ウィキリークス」が米国の外交文書25万点の暴露を始めた。中には機密情報や各国首脳に対する悪口のたぐいも含まれ、世界に衝撃を与えている。
米捜査当局は米軍がイラクで民間人を誤射した映像を漏洩した容疑で拘束中の陸軍上等兵が、今回の流出にも関わったとみている。一方、サイトを主宰するオーストラリア人ジュリアン・アサンジ氏にはスパイ防止法の適用も検討しているという。
この問題は幾つかの視点から考えねばならない。第一に、真に機密に値する情報は何かという点だ。
確かに外交や国防に関する情報には、公開すれば国や国民の安全を脅かすものがある。同時に、政府は自らに都合の悪い情報を隠しがちであることも間違いない。内部告発が政府の隠蔽体質に風穴をあける有力な手段になってきたのは事実だ。
米国に限らない。まずはどの国の政府に対してもできる限り情報を公開するよう求めるのが筋だ。外交文書などの公開に消極的な日本政府も、姿勢を改める必要がある。
真の機密と呼べるのは、例えば核施設に対するテロにつながるような情報である。そうした情報の管理強化の必要性が、第二の視点だ。
米政府は2001年の同時テロの反省から、省庁間の情報共有を進めてきた。それが裏目に出たわけだが、一上等兵が簡単に外交公電などに接触できたとすれば、管理体制からみて大きな失態である。
さらに、第三の視点として欠かせないのはウィキリークスの責任だ。
入手した情報の内容はジャーナリストらの協力で検証しているとアサンジ氏は説明する。最近は米英の有力紙など既存メディアに事前に情報を提供し、同時に公表する形を取り始めた。情報が本物か、公表すべきかどうかなどについて、十分チェックしているという主張だろう。
ネット時代にこうしたメディアはあっていい。しかし、彼らの活動自体は事実上野放しでチェックの仕組みがないのが気になる。
既存のマスメディアもネットメディアも、メディアであれば報道した後にも責任を負わなければならない。報道がもたらす影響や、結果的に情報統制の強化につながる可能性も考える必要がある。そうした配慮がウィキリークスにあるだろうか。
ネットへの情報流出は国内でも相次いでいる。ネットが国や国民の安全を危うくするような機密情報を垂れ流す道具になることには、強い懸念を持たざるを得ない。
米捜査当局は米軍がイラクで民間人を誤射した映像を漏洩した容疑で拘束中の陸軍上等兵が、今回の流出にも関わったとみている。一方、サイトを主宰するオーストラリア人ジュリアン・アサンジ氏にはスパイ防止法の適用も検討しているという。
この問題は幾つかの視点から考えねばならない。第一に、真に機密に値する情報は何かという点だ。
確かに外交や国防に関する情報には、公開すれば国や国民の安全を脅かすものがある。同時に、政府は自らに都合の悪い情報を隠しがちであることも間違いない。内部告発が政府の隠蔽体質に風穴をあける有力な手段になってきたのは事実だ。
米国に限らない。まずはどの国の政府に対してもできる限り情報を公開するよう求めるのが筋だ。外交文書などの公開に消極的な日本政府も、姿勢を改める必要がある。
真の機密と呼べるのは、例えば核施設に対するテロにつながるような情報である。そうした情報の管理強化の必要性が、第二の視点だ。
米政府は2001年の同時テロの反省から、省庁間の情報共有を進めてきた。それが裏目に出たわけだが、一上等兵が簡単に外交公電などに接触できたとすれば、管理体制からみて大きな失態である。
さらに、第三の視点として欠かせないのはウィキリークスの責任だ。
入手した情報の内容はジャーナリストらの協力で検証しているとアサンジ氏は説明する。最近は米英の有力紙など既存メディアに事前に情報を提供し、同時に公表する形を取り始めた。情報が本物か、公表すべきかどうかなどについて、十分チェックしているという主張だろう。
ネット時代にこうしたメディアはあっていい。しかし、彼らの活動自体は事実上野放しでチェックの仕組みがないのが気になる。
既存のマスメディアもネットメディアも、メディアであれば報道した後にも責任を負わなければならない。報道がもたらす影響や、結果的に情報統制の強化につながる可能性も考える必要がある。そうした配慮がウィキリークスにあるだろうか。
ネットへの情報流出は国内でも相次いでいる。ネットが国や国民の安全を危うくするような機密情報を垂れ流す道具になることには、強い懸念を持たざるを得ない。
:2010:12/02/11:27 ++ 米外交文書の流出が突きつけた問題(社説)
内部告発の情報を専門に流すインターネットのサイト「ウィキリークス」が米国の外交文書25万点の暴露を始めた。中には機密情報や各国首脳に対する悪口のたぐいも含まれ、世界に衝撃を与えている。
米捜査当局は米軍がイラクで民間人を誤射した映像を漏洩した容疑で拘束中の陸軍上等兵が、今回の流出にも関わったとみている。一方、サイトを主宰するオーストラリア人ジュリアン・アサンジ氏にはスパイ防止法の適用も検討しているという。
この問題は幾つかの視点から考えねばならない。第一に、真に機密に値する情報は何かという点だ。
確かに外交や国防に関する情報には、公開すれば国や国民の安全を脅かすものがある。同時に、政府は自らに都合の悪い情報を隠しがちであることも間違いない。内部告発が政府の隠蔽体質に風穴をあける有力な手段になってきたのは事実だ。
米国に限らない。まずはどの国の政府に対してもできる限り情報を公開するよう求めるのが筋だ。外交文書などの公開に消極的な日本政府も、姿勢を改める必要がある。
真の機密と呼べるのは、例えば核施設に対するテロにつながるような情報である。そうした情報の管理強化の必要性が、第二の視点だ。
米政府は2001年の同時テロの反省から、省庁間の情報共有を進めてきた。それが裏目に出たわけだが、一上等兵が簡単に外交公電などに接触できたとすれば、管理体制からみて大きな失態である。
さらに、第三の視点として欠かせないのはウィキリークスの責任だ。
入手した情報の内容はジャーナリストらの協力で検証しているとアサンジ氏は説明する。最近は米英の有力紙など既存メディアに事前に情報を提供し、同時に公表する形を取り始めた。情報が本物か、公表すべきかどうかなどについて、十分チェックしているという主張だろう。
ネット時代にこうしたメディアはあっていい。しかし、彼らの活動自体は事実上野放しでチェックの仕組みがないのが気になる。
既存のマスメディアもネットメディアも、メディアであれば報道した後にも責任を負わなければならない。報道がもたらす影響や、結果的に情報統制の強化につながる可能性も考える必要がある。そうした配慮がウィキリークスにあるだろうか。
ネットへの情報流出は国内でも相次いでいる。ネットが国や国民の安全を危うくするような機密情報を垂れ流す道具になることには、強い懸念を持たざるを得ない。
米捜査当局は米軍がイラクで民間人を誤射した映像を漏洩した容疑で拘束中の陸軍上等兵が、今回の流出にも関わったとみている。一方、サイトを主宰するオーストラリア人ジュリアン・アサンジ氏にはスパイ防止法の適用も検討しているという。
この問題は幾つかの視点から考えねばならない。第一に、真に機密に値する情報は何かという点だ。
確かに外交や国防に関する情報には、公開すれば国や国民の安全を脅かすものがある。同時に、政府は自らに都合の悪い情報を隠しがちであることも間違いない。内部告発が政府の隠蔽体質に風穴をあける有力な手段になってきたのは事実だ。
米国に限らない。まずはどの国の政府に対してもできる限り情報を公開するよう求めるのが筋だ。外交文書などの公開に消極的な日本政府も、姿勢を改める必要がある。
真の機密と呼べるのは、例えば核施設に対するテロにつながるような情報である。そうした情報の管理強化の必要性が、第二の視点だ。
米政府は2001年の同時テロの反省から、省庁間の情報共有を進めてきた。それが裏目に出たわけだが、一上等兵が簡単に外交公電などに接触できたとすれば、管理体制からみて大きな失態である。
さらに、第三の視点として欠かせないのはウィキリークスの責任だ。
入手した情報の内容はジャーナリストらの協力で検証しているとアサンジ氏は説明する。最近は米英の有力紙など既存メディアに事前に情報を提供し、同時に公表する形を取り始めた。情報が本物か、公表すべきかどうかなどについて、十分チェックしているという主張だろう。
ネット時代にこうしたメディアはあっていい。しかし、彼らの活動自体は事実上野放しでチェックの仕組みがないのが気になる。
既存のマスメディアもネットメディアも、メディアであれば報道した後にも責任を負わなければならない。報道がもたらす影響や、結果的に情報統制の強化につながる可能性も考える必要がある。そうした配慮がウィキリークスにあるだろうか。
ネットへの情報流出は国内でも相次いでいる。ネットが国や国民の安全を危うくするような機密情報を垂れ流す道具になることには、強い懸念を持たざるを得ない。
:2010:12/02/11:20 ++ どこへ行く日本の安保(下)疲弊する米、内向きの誘惑。
難しい国内事情は分かるが、それでも移設をやり遂げてほしい――。オバマ米大統領は11月、横浜で菅直人首相と会談した際、米軍普天間基地問題についてこんな思いを強くにじませたという。
オバマ政権は在日米軍経費の日本側負担(思いやり予算)でも、削減で動いていた菅政権に逆に「増額」を求めた。
「あの発言を機に米側の声音が変わった」。日本の政府高官は米側の対日姿勢が、2人の米議員の爆弾発言からより厳しくなったと証言する。
その1人が、年明けの新会期から下院軍事委員長に就くハワード・マケオン議員だ。
沖縄撤収発言も
「中国が急速に軍事的脅威になっているのに、日本は米軍のありがたみを分かっていない」。7月の同委公聴会で、普天間などへの日本の対応にこう憤った。
さらに過激だったのが、同月のバーニー・フランク米下院金融委員長のテレビ番組での発言だった。「沖縄の1万5000人の海兵隊員が中国に上陸して、何百万人もの人民解放軍と戦うなんて誰も思っていない」。在日米軍の大規模な撤収を提唱したのである。
2010会計年度の米財政赤字は1兆5000億ドル(約135兆円)を超す。アフガニスタンでの戦費ものしかかる。予算編成権を持つ議会としては、地球の裏側まで面倒見切れないというのが本音だ。南シナ海や東シナ海では中国軍の海洋進出に拍車がかかっている。オバマ政権は懸念を深めており、今のところはむしろアジアへの軍事関与を強める方向にある。
だが、厳しい財政事情や疲弊する米軍に直面しながら、オバマ政権がその意思を貫徹できるかを疑問視する向きもある。
北朝鮮の韓国砲撃で揺れる朝鮮半島。この危機をめぐっても、太平洋を隔てた米国と日韓には微妙な温度差がある。
「オバマ大統領は激怒していた」。北朝鮮による砲撃直後、ビル・バートン副報道官はこう説明した。ギブズ報道官の非難声明も素早かった。だが、それ以降、大統領が自らの言葉で北朝鮮を責める場面はない。動揺する日韓を尻目に感謝祭休みをバスケットボールをして楽しんだ。
アフガンが重荷
慎重なオバマ政権の対応からは、イラクとアフガニスタンでの戦争、一触即発のイラン問題を抱え、北朝鮮とはことを荒立てたくない、との心持ちが見え隠れする。
「戦略を変えずにいることはありがたい」。ブッシュ前政権で北朝鮮政策を担当したビクター・チャ元米国家安全保障会議(NSC)アジア部長は11月下旬、6カ国協議の現在の米首席代表であるソン・キム特使にこう語りかけた。
チャ氏が関わった米朝国交樹立を視野に入れた対話路線と、オバマ政権の「安易な対話には応じない方針」のどこが同じなのか。共通しているのは北朝鮮の挑発にのらず、アフガン駐留米軍撤収のメドがつくまで忍耐を重ねるという発想だ。
1日に終わった黄海での米韓の合同軍事演習は、かねて準備されていたものだ。米国防総省のラパン副報道官は「在韓米軍を増強する予定はない」と明言する。
米軍のある幹部は「北朝鮮の軍事施設を空爆するのは簡単だが、中国がどう反応するかが分からない。軍事行動はあり得ない」と自重する。
こんな米国の限界を北朝鮮も見透かす。危機管理が専門のユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は「北朝鮮はソウル攻撃以外の挑発ならば反攻はないと算段している」とみる。
半島危機と中国の軍拡に隣り合わせの日韓。長引くアフガン戦争や景気の低迷で疲弊する米国。「世界の警察」を米国が任じられなくなったとき、日本の安保体制に空白が生まれかねない。
オバマ政権は在日米軍経費の日本側負担(思いやり予算)でも、削減で動いていた菅政権に逆に「増額」を求めた。
「あの発言を機に米側の声音が変わった」。日本の政府高官は米側の対日姿勢が、2人の米議員の爆弾発言からより厳しくなったと証言する。
その1人が、年明けの新会期から下院軍事委員長に就くハワード・マケオン議員だ。
沖縄撤収発言も
「中国が急速に軍事的脅威になっているのに、日本は米軍のありがたみを分かっていない」。7月の同委公聴会で、普天間などへの日本の対応にこう憤った。
さらに過激だったのが、同月のバーニー・フランク米下院金融委員長のテレビ番組での発言だった。「沖縄の1万5000人の海兵隊員が中国に上陸して、何百万人もの人民解放軍と戦うなんて誰も思っていない」。在日米軍の大規模な撤収を提唱したのである。
2010会計年度の米財政赤字は1兆5000億ドル(約135兆円)を超す。アフガニスタンでの戦費ものしかかる。予算編成権を持つ議会としては、地球の裏側まで面倒見切れないというのが本音だ。南シナ海や東シナ海では中国軍の海洋進出に拍車がかかっている。オバマ政権は懸念を深めており、今のところはむしろアジアへの軍事関与を強める方向にある。
だが、厳しい財政事情や疲弊する米軍に直面しながら、オバマ政権がその意思を貫徹できるかを疑問視する向きもある。
北朝鮮の韓国砲撃で揺れる朝鮮半島。この危機をめぐっても、太平洋を隔てた米国と日韓には微妙な温度差がある。
「オバマ大統領は激怒していた」。北朝鮮による砲撃直後、ビル・バートン副報道官はこう説明した。ギブズ報道官の非難声明も素早かった。だが、それ以降、大統領が自らの言葉で北朝鮮を責める場面はない。動揺する日韓を尻目に感謝祭休みをバスケットボールをして楽しんだ。
アフガンが重荷
慎重なオバマ政権の対応からは、イラクとアフガニスタンでの戦争、一触即発のイラン問題を抱え、北朝鮮とはことを荒立てたくない、との心持ちが見え隠れする。
「戦略を変えずにいることはありがたい」。ブッシュ前政権で北朝鮮政策を担当したビクター・チャ元米国家安全保障会議(NSC)アジア部長は11月下旬、6カ国協議の現在の米首席代表であるソン・キム特使にこう語りかけた。
チャ氏が関わった米朝国交樹立を視野に入れた対話路線と、オバマ政権の「安易な対話には応じない方針」のどこが同じなのか。共通しているのは北朝鮮の挑発にのらず、アフガン駐留米軍撤収のメドがつくまで忍耐を重ねるという発想だ。
1日に終わった黄海での米韓の合同軍事演習は、かねて準備されていたものだ。米国防総省のラパン副報道官は「在韓米軍を増強する予定はない」と明言する。
米軍のある幹部は「北朝鮮の軍事施設を空爆するのは簡単だが、中国がどう反応するかが分からない。軍事行動はあり得ない」と自重する。
こんな米国の限界を北朝鮮も見透かす。危機管理が専門のユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は「北朝鮮はソウル攻撃以外の挑発ならば反攻はないと算段している」とみる。
半島危機と中国の軍拡に隣り合わせの日韓。長引くアフガン戦争や景気の低迷で疲弊する米国。「世界の警察」を米国が任じられなくなったとき、日本の安保体制に空白が生まれかねない。
:2010:12/02/11:14 ++ 日産、九州を主力工場に、小型車も生産、国内100万台維持、海外製部品倍増。
円高下で競争力
日産自動車は九州工場(福岡県苅田町)を主力拠点にすることを柱とした国内生産の再編に着手する。中大型車の輸出拠点の九州で3年以内に小型車の組み立てを始め、国内生産の過半を集中。アジア製部品の調達拡大などで製造原価も3割下げ、年100万台の国内生産を維持する。ホンダも埼玉県の新工場を環境車の拠点にする方針。自動車大手は海外生産を拡大しつつ、国内の生産体制を見直して円高下でも競争力を保つ。(自動車の部品調達は3面「きょうのことば」参照)
日産の主力拠点には九州のほか追浜工場(神奈川県横須賀市)と栃木工場(栃木県上三川町)がある。九州では多目的スポーツ車(SUV)「エクストレイル」などの中大型車、追浜では小型車、栃木では高級車を中心に生産。「1ドル=80円台前半の為替水準では国内生産は立ちゆかなくなる」(志賀俊之最高執行責任者=COO)とみて、アジアからの部品輸送コストが安い九州工場の生産比率を高める。
同工場へはこのほど、主力ミニバン「セレナ」の生産を子会社の日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)から移管した。さらに小型車の生産を追浜工場から段階的に移す方針。小型車の輸出も視野に入れる。
九州工場では2012年度までに09年度比3割の原価低減を目指す。部品購買額は年間2500億円規模で、韓国や中国、タイなどアジア地域からの調達を増やし、海外比率を現在の2倍にあたる4割前後に高める。約3割を占める関東地域からの調達は縮小し、輸送コストを低減する。
日産の九州拠点では日産本体の工場に加え、日産車体九州(福岡県苅田町)が今年1月に同じ敷地で工場を稼働させた。本社工場の09年度生産量は追浜と並び国内生産の4割程度。12年度には九州2工場合計で5割強に増やす。本社九州工場の分社も検討している。
追浜工場は主に電気自動車、栃木は高級車拠点として残す。日産の国内生産は今年度114万台を計画。タイで主力小型車「マーチ」の生産を始めたが、生産技術の向上や雇用維持のためには「100万台規模の国内生産を死守する必要がある」(志賀COO)という。
1990年に1300万台超だった国内自動車生産はここ数年1000万台程度で推移。さらに減少が続けば、部品や素材などを含めた国内製造業の雇用吸収力は弱まる。ホンダも13年をめどに建設する埼玉県寄居町の新工場をハイブリッド車の拠点とする一方、生産車種を絞りこむなどの国内の再編を実施する。
日産自動車は九州工場(福岡県苅田町)を主力拠点にすることを柱とした国内生産の再編に着手する。中大型車の輸出拠点の九州で3年以内に小型車の組み立てを始め、国内生産の過半を集中。アジア製部品の調達拡大などで製造原価も3割下げ、年100万台の国内生産を維持する。ホンダも埼玉県の新工場を環境車の拠点にする方針。自動車大手は海外生産を拡大しつつ、国内の生産体制を見直して円高下でも競争力を保つ。(自動車の部品調達は3面「きょうのことば」参照)
日産の主力拠点には九州のほか追浜工場(神奈川県横須賀市)と栃木工場(栃木県上三川町)がある。九州では多目的スポーツ車(SUV)「エクストレイル」などの中大型車、追浜では小型車、栃木では高級車を中心に生産。「1ドル=80円台前半の為替水準では国内生産は立ちゆかなくなる」(志賀俊之最高執行責任者=COO)とみて、アジアからの部品輸送コストが安い九州工場の生産比率を高める。
同工場へはこのほど、主力ミニバン「セレナ」の生産を子会社の日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)から移管した。さらに小型車の生産を追浜工場から段階的に移す方針。小型車の輸出も視野に入れる。
九州工場では2012年度までに09年度比3割の原価低減を目指す。部品購買額は年間2500億円規模で、韓国や中国、タイなどアジア地域からの調達を増やし、海外比率を現在の2倍にあたる4割前後に高める。約3割を占める関東地域からの調達は縮小し、輸送コストを低減する。
日産の九州拠点では日産本体の工場に加え、日産車体九州(福岡県苅田町)が今年1月に同じ敷地で工場を稼働させた。本社工場の09年度生産量は追浜と並び国内生産の4割程度。12年度には九州2工場合計で5割強に増やす。本社九州工場の分社も検討している。
追浜工場は主に電気自動車、栃木は高級車拠点として残す。日産の国内生産は今年度114万台を計画。タイで主力小型車「マーチ」の生産を始めたが、生産技術の向上や雇用維持のためには「100万台規模の国内生産を死守する必要がある」(志賀COO)という。
1990年に1300万台超だった国内自動車生産はここ数年1000万台程度で推移。さらに減少が続けば、部品や素材などを含めた国内製造業の雇用吸収力は弱まる。ホンダも13年をめどに建設する埼玉県寄居町の新工場をハイブリッド車の拠点とする一方、生産車種を絞りこむなどの国内の再編を実施する。
:2010:12/02/11:14 ++ 日産、九州を主力工場に、小型車も生産、国内100万台維持、海外製部品倍増。
円高下で競争力
日産自動車は九州工場(福岡県苅田町)を主力拠点にすることを柱とした国内生産の再編に着手する。中大型車の輸出拠点の九州で3年以内に小型車の組み立てを始め、国内生産の過半を集中。アジア製部品の調達拡大などで製造原価も3割下げ、年100万台の国内生産を維持する。ホンダも埼玉県の新工場を環境車の拠点にする方針。自動車大手は海外生産を拡大しつつ、国内の生産体制を見直して円高下でも競争力を保つ。(自動車の部品調達は3面「きょうのことば」参照)
日産の主力拠点には九州のほか追浜工場(神奈川県横須賀市)と栃木工場(栃木県上三川町)がある。九州では多目的スポーツ車(SUV)「エクストレイル」などの中大型車、追浜では小型車、栃木では高級車を中心に生産。「1ドル=80円台前半の為替水準では国内生産は立ちゆかなくなる」(志賀俊之最高執行責任者=COO)とみて、アジアからの部品輸送コストが安い九州工場の生産比率を高める。
同工場へはこのほど、主力ミニバン「セレナ」の生産を子会社の日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)から移管した。さらに小型車の生産を追浜工場から段階的に移す方針。小型車の輸出も視野に入れる。
九州工場では2012年度までに09年度比3割の原価低減を目指す。部品購買額は年間2500億円規模で、韓国や中国、タイなどアジア地域からの調達を増やし、海外比率を現在の2倍にあたる4割前後に高める。約3割を占める関東地域からの調達は縮小し、輸送コストを低減する。
日産の九州拠点では日産本体の工場に加え、日産車体九州(福岡県苅田町)が今年1月に同じ敷地で工場を稼働させた。本社工場の09年度生産量は追浜と並び国内生産の4割程度。12年度には九州2工場合計で5割強に増やす。本社九州工場の分社も検討している。
追浜工場は主に電気自動車、栃木は高級車拠点として残す。日産の国内生産は今年度114万台を計画。タイで主力小型車「マーチ」の生産を始めたが、生産技術の向上や雇用維持のためには「100万台規模の国内生産を死守する必要がある」(志賀COO)という。
1990年に1300万台超だった国内自動車生産はここ数年1000万台程度で推移。さらに減少が続けば、部品や素材などを含めた国内製造業の雇用吸収力は弱まる。ホンダも13年をめどに建設する埼玉県寄居町の新工場をハイブリッド車の拠点とする一方、生産車種を絞りこむなどの国内の再編を実施する。
日産自動車は九州工場(福岡県苅田町)を主力拠点にすることを柱とした国内生産の再編に着手する。中大型車の輸出拠点の九州で3年以内に小型車の組み立てを始め、国内生産の過半を集中。アジア製部品の調達拡大などで製造原価も3割下げ、年100万台の国内生産を維持する。ホンダも埼玉県の新工場を環境車の拠点にする方針。自動車大手は海外生産を拡大しつつ、国内の生産体制を見直して円高下でも競争力を保つ。(自動車の部品調達は3面「きょうのことば」参照)
日産の主力拠点には九州のほか追浜工場(神奈川県横須賀市)と栃木工場(栃木県上三川町)がある。九州では多目的スポーツ車(SUV)「エクストレイル」などの中大型車、追浜では小型車、栃木では高級車を中心に生産。「1ドル=80円台前半の為替水準では国内生産は立ちゆかなくなる」(志賀俊之最高執行責任者=COO)とみて、アジアからの部品輸送コストが安い九州工場の生産比率を高める。
同工場へはこのほど、主力ミニバン「セレナ」の生産を子会社の日産車体の湘南工場(神奈川県平塚市)から移管した。さらに小型車の生産を追浜工場から段階的に移す方針。小型車の輸出も視野に入れる。
九州工場では2012年度までに09年度比3割の原価低減を目指す。部品購買額は年間2500億円規模で、韓国や中国、タイなどアジア地域からの調達を増やし、海外比率を現在の2倍にあたる4割前後に高める。約3割を占める関東地域からの調達は縮小し、輸送コストを低減する。
日産の九州拠点では日産本体の工場に加え、日産車体九州(福岡県苅田町)が今年1月に同じ敷地で工場を稼働させた。本社工場の09年度生産量は追浜と並び国内生産の4割程度。12年度には九州2工場合計で5割強に増やす。本社九州工場の分社も検討している。
追浜工場は主に電気自動車、栃木は高級車拠点として残す。日産の国内生産は今年度114万台を計画。タイで主力小型車「マーチ」の生産を始めたが、生産技術の向上や雇用維持のためには「100万台規模の国内生産を死守する必要がある」(志賀COO)という。
1990年に1300万台超だった国内自動車生産はここ数年1000万台程度で推移。さらに減少が続けば、部品や素材などを含めた国内製造業の雇用吸収力は弱まる。ホンダも13年をめどに建設する埼玉県寄居町の新工場をハイブリッド車の拠点とする一方、生産車種を絞りこむなどの国内の再編を実施する。
:2010:12/01/09:51 ++ どこへ行く日本の安保(中)北朝鮮問題、相手は中国。
北朝鮮の権力継承が動き出した10月。米政府高官は日本側との会談で、中国の対応ぶりをぼやいてみせた。「中国は北朝鮮の見通しについて私たちと話したがらない」
朝鮮半島の紛争を防ぐには米中の対話が欠かせない。日本も「米中で危機管理を話してほしいと米側に促してきた」(安全保障当局者)。だが、中国は以前にもまして、北朝鮮の崩壊などを想定した協議をいやがるようになったというのだ。
強まる蜜月関係
むしろ、目立つのは異様ともいえる中朝の蜜月ぶりだ。
北朝鮮が韓国を砲撃した23日。中国の王和民商務次官と北朝鮮の具本泰貿易次官は平壌で、経済協力の協定に調印し、笑顔で握手した。30日には北朝鮮の金正日総書記の側近の一人、崔泰福(チェ・テボク)労働党書記が空路で北京入り。中国側の「国賓」の通行証を掲げた高級リムジンに乗り込んだ。
中朝関係筋によると、中国は昨夏、北朝鮮政策の軸足を融和に改める内部決定を下した。昨年10月の温家宝首相の訪朝はその表れだという。今年1~10月の中朝貿易額は前年同期に比べて32%も増えた。
核問題の進展より、北朝鮮の安定を優先する。中国はそれによって、北朝鮮が崩壊し、半島が「親米地帯」になるのを阻もうというわけだ。
中国がそんな路線を貫けば、日本への影響は大きい。日米韓で圧力を強め、核・ミサイルと日本人拉致問題を動かそうとする戦略がさらに行き詰まるからだ。打撃はそれだけではすまない。
北朝鮮が3度目の核実験に踏み切った場合、どんな見解を出すべきか――。中国政府関係者によると、こんな検討が進んでいる。2006年と09年の核実験への外務省声明は「断固反対」。いずれも国連安全保障理事会の制裁につながった。
しかし、3度目の核実験には「断固反対」を表明しない案が浮上しているという。
「核実験を誘発した責任は米朝協議や6カ国協議の再開に応じない米国にもある」。この関係者はこんな中国側の論理を明かす。中国がこうした態度に出た場合、韓国に次いでいちばん影響を受けるのは北朝鮮の核に隣接する日本だ。
外交力低下が影
日米韓などの圧力をかわそうと、北朝鮮も中国にすり寄る。
「この工場は朝中友好の象徴だ。全力で増産し、両国の友好協力の生命力を明示するように」。25日付の北朝鮮・労働新聞によると、金総書記が中国の無償援助で建設された平安南道のガラス工場を視察し、中朝の友好を力説した。後継者の三男、正恩(ジョンウン)氏も同行した。
「中国嫌い」ともいわれながら、今年2度も訪中した金総書記。元金日成総合大教授の趙明哲(チョ・ミョンチョル)韓国対外経済研究院研究員は「今は中国けん制より協力の方が得と考えている」と解説する。
中朝蜜月は考えようによっては、中国を通じ、北朝鮮に働きかける好機でもある。だが、尖閣諸島沖の漁船衝突事件でぎくしゃくする日中はそんな雰囲気ではない。
28日午後4時15分、北京の中国外務省。武大偉・朝鮮半島問題特別代表は6カ国協議の首席会合提案を発表する直前に、丹羽宇一郎・駐中国大使を呼んだ。事前に日本に説明するためだった。
武氏は同じ日、李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領と戴秉国国務委員の会談に同席し、ソウルから戻ったばかり。丹羽氏は「何を話したんですか」とたずねたが、武氏の答えは「いずれきちんと発表すると思います」とそっけなかった。
核や拉致問題の日朝協議に応じない北朝鮮。菅政権の支持率の急落で、模様ながめの姿勢を強める中国。内政の混乱と外交力の低下は日本の安保にも影を落としている。
朝鮮半島の紛争を防ぐには米中の対話が欠かせない。日本も「米中で危機管理を話してほしいと米側に促してきた」(安全保障当局者)。だが、中国は以前にもまして、北朝鮮の崩壊などを想定した協議をいやがるようになったというのだ。
強まる蜜月関係
むしろ、目立つのは異様ともいえる中朝の蜜月ぶりだ。
北朝鮮が韓国を砲撃した23日。中国の王和民商務次官と北朝鮮の具本泰貿易次官は平壌で、経済協力の協定に調印し、笑顔で握手した。30日には北朝鮮の金正日総書記の側近の一人、崔泰福(チェ・テボク)労働党書記が空路で北京入り。中国側の「国賓」の通行証を掲げた高級リムジンに乗り込んだ。
中朝関係筋によると、中国は昨夏、北朝鮮政策の軸足を融和に改める内部決定を下した。昨年10月の温家宝首相の訪朝はその表れだという。今年1~10月の中朝貿易額は前年同期に比べて32%も増えた。
核問題の進展より、北朝鮮の安定を優先する。中国はそれによって、北朝鮮が崩壊し、半島が「親米地帯」になるのを阻もうというわけだ。
中国がそんな路線を貫けば、日本への影響は大きい。日米韓で圧力を強め、核・ミサイルと日本人拉致問題を動かそうとする戦略がさらに行き詰まるからだ。打撃はそれだけではすまない。
北朝鮮が3度目の核実験に踏み切った場合、どんな見解を出すべきか――。中国政府関係者によると、こんな検討が進んでいる。2006年と09年の核実験への外務省声明は「断固反対」。いずれも国連安全保障理事会の制裁につながった。
しかし、3度目の核実験には「断固反対」を表明しない案が浮上しているという。
「核実験を誘発した責任は米朝協議や6カ国協議の再開に応じない米国にもある」。この関係者はこんな中国側の論理を明かす。中国がこうした態度に出た場合、韓国に次いでいちばん影響を受けるのは北朝鮮の核に隣接する日本だ。
外交力低下が影
日米韓などの圧力をかわそうと、北朝鮮も中国にすり寄る。
「この工場は朝中友好の象徴だ。全力で増産し、両国の友好協力の生命力を明示するように」。25日付の北朝鮮・労働新聞によると、金総書記が中国の無償援助で建設された平安南道のガラス工場を視察し、中朝の友好を力説した。後継者の三男、正恩(ジョンウン)氏も同行した。
「中国嫌い」ともいわれながら、今年2度も訪中した金総書記。元金日成総合大教授の趙明哲(チョ・ミョンチョル)韓国対外経済研究院研究員は「今は中国けん制より協力の方が得と考えている」と解説する。
中朝蜜月は考えようによっては、中国を通じ、北朝鮮に働きかける好機でもある。だが、尖閣諸島沖の漁船衝突事件でぎくしゃくする日中はそんな雰囲気ではない。
28日午後4時15分、北京の中国外務省。武大偉・朝鮮半島問題特別代表は6カ国協議の首席会合提案を発表する直前に、丹羽宇一郎・駐中国大使を呼んだ。事前に日本に説明するためだった。
武氏は同じ日、李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領と戴秉国国務委員の会談に同席し、ソウルから戻ったばかり。丹羽氏は「何を話したんですか」とたずねたが、武氏の答えは「いずれきちんと発表すると思います」とそっけなかった。
核や拉致問題の日朝協議に応じない北朝鮮。菅政権の支持率の急落で、模様ながめの姿勢を強める中国。内政の混乱と外交力の低下は日本の安保にも影を落としている。
:2010:11/30/11:17 ++ インタビュー(上)拓殖大大学院教授森本敏氏(どこへ行く日本の安保)
――今回の半島危機は日本の安全保障にどんな影響を及ぼしますか。
「東アジアの状況を考えると、日本人はかなりリスクが高い環境に住んでいるという意識を持つ必要がある。これほどの核と弾道ミサイル、通常戦力の脅威にさらされている民主主義国家は日本と韓国くらいだ。その脅威への盾となるのは日米と米韓の同盟しかない」
――どんな脅威に備えるべきですか。
「北朝鮮は日米韓の抑止力に取り囲まれている。この包囲網を破るために軍事力を蓄え、それを誇示する機会をいつもうかがっている。韓国だけでなく、日本にも軍事的な挑発行動が向けられる危険がいつもある」
――北朝鮮のそうした行動を封じ込めるには何が必要ですか。
「これは中国問題だ。北朝鮮は何をやっても中国がかばってくれると信じている。米国が北朝鮮を攻撃できないとタカをくくっている面もある」
――長い目で見れば、中国軍の増強のほうが大きな変数です。
「中国が軍事力を強めるにつれ、これからアジアを舞台にした米中の攻防が激しくなる。日本は地政学的に米中の中間にいるので、真っ先に中国軍の脅威にさらされる」
――アフガニスタン戦争や不況で疲弊する米国はいつまで現在のような軍事関与をアジアで続けられるでしょうか。
「米国は基本的にこの40年間、ソマリアやイラク、アフガンなどいたるところで戦争を続けてきた。海空軍は一度も負けていないが、陸上兵力は傷つき、疲弊している。その傷を癒やすため、今後、容易には陸上兵力を伴う軍事介入はしなくなるのではないか」
――そうなれば、日米安保体制の将来像にも影響が及びます。
「日本は日米同盟を強化するだけでは足りない。中国軍の増強などに懸念を持つ韓国や東南アジア諸国、インド、オーストラリアとも連携しなければならない。そうした国々との多国間協力を強めることで、日米同盟を補完するしかない」
――米国は日米安保条約で日本を防衛する義務を負っているはずです。
「安保条約といえども、大勢の米兵の命を犠牲にしてでも日本を守りきるとは書いていない。どんな国だって自分の国益になると思うから、相手国を守ろうとする。だからこそ、米国の国益にとって、日本はいつも守るべき存在だと思わせなければならない。そういう状態を維持できなければ、同盟関係も尻すぼみになってしまう」
「東アジアの状況を考えると、日本人はかなりリスクが高い環境に住んでいるという意識を持つ必要がある。これほどの核と弾道ミサイル、通常戦力の脅威にさらされている民主主義国家は日本と韓国くらいだ。その脅威への盾となるのは日米と米韓の同盟しかない」
――どんな脅威に備えるべきですか。
「北朝鮮は日米韓の抑止力に取り囲まれている。この包囲網を破るために軍事力を蓄え、それを誇示する機会をいつもうかがっている。韓国だけでなく、日本にも軍事的な挑発行動が向けられる危険がいつもある」
――北朝鮮のそうした行動を封じ込めるには何が必要ですか。
「これは中国問題だ。北朝鮮は何をやっても中国がかばってくれると信じている。米国が北朝鮮を攻撃できないとタカをくくっている面もある」
――長い目で見れば、中国軍の増強のほうが大きな変数です。
「中国が軍事力を強めるにつれ、これからアジアを舞台にした米中の攻防が激しくなる。日本は地政学的に米中の中間にいるので、真っ先に中国軍の脅威にさらされる」
――アフガニスタン戦争や不況で疲弊する米国はいつまで現在のような軍事関与をアジアで続けられるでしょうか。
「米国は基本的にこの40年間、ソマリアやイラク、アフガンなどいたるところで戦争を続けてきた。海空軍は一度も負けていないが、陸上兵力は傷つき、疲弊している。その傷を癒やすため、今後、容易には陸上兵力を伴う軍事介入はしなくなるのではないか」
――そうなれば、日米安保体制の将来像にも影響が及びます。
「日本は日米同盟を強化するだけでは足りない。中国軍の増強などに懸念を持つ韓国や東南アジア諸国、インド、オーストラリアとも連携しなければならない。そうした国々との多国間協力を強めることで、日米同盟を補完するしかない」
――米国は日米安保条約で日本を防衛する義務を負っているはずです。
「安保条約といえども、大勢の米兵の命を犠牲にしてでも日本を守りきるとは書いていない。どんな国だって自分の国益になると思うから、相手国を守ろうとする。だからこそ、米国の国益にとって、日本はいつも守るべき存在だと思わせなければならない。そういう状態を維持できなければ、同盟関係も尻すぼみになってしまう」
:2010:11/30/11:12 ++ どこへ行く日本の安保(上)迫る危機、弱る日米同盟。
朝鮮半島での砲声はアジアの安定の危うさを映し出した。これは日本の安全保障にとっての危機でもある。
米韓による黄海での合同軍事演習を横目に、日本の自衛隊や在日米軍の基地でも緊張が漂っている。3日から米空母ジョージ・ワシントンが加わり、日本近海などで日米の大がかりな合同演習が実施されるからだ。
北朝鮮が反発を強めるのはまちがいない。「北朝鮮は日本にも挑発を仕掛けてくるかもしれない」。自衛隊の関係者は身構える。
米国と違い、日本は北朝鮮の弾道ミサイルの射程にすっぽり入る。情勢が緊迫すれば、韓国にいる約3万人の邦人にも危険が迫る。日本はどう対応するのか。
協議の翌日に…
北朝鮮が韓国を砲撃する前日の22日朝。ポトマック川ほとりの米国防総省ビルに、日米の外交・安全保障当局者が静かに集まった。同盟強化の作業の一環としてアジア情勢の分析を持ち寄り、認識を共有するためだ。
今回の会合は3回目。すでに中国や朝鮮半島情勢についてひそかに分析し、この日はロシアも取り上げた。とりわけ白熱したのが、北朝鮮をめぐる7月の協議だった。
▽内部崩壊する。
▽権力闘争やクーデターが起き、混乱する。
▽円滑な権力の継承に成功する。
北朝鮮の3つのシナリオを分析し、米韓と日本の連携策を探ったという。日米が半島情勢についてここまで本格的な議論を交わすのは昨秋の政権交代後、初めてだ。
日本は1990年代の半島危機を教訓に、韓国からの邦人救出のためのマニュアルを作成した。内容は極秘だが、まずは民間機や自衛隊機で対応し、「それが難しいときには最終的に米軍に頼らざるを得ない」(政府の安保当局者)。日米ではこんな事態も話し合われているもようだ。
半島での紛争に即応するうえでも、日米同盟の役割は大きい。米軍が韓国を支援する際には日本が後方の拠点になる。沖縄の米海兵隊も大切な任務を担う。米安保当局者は「韓国の援軍に駆けつけるほか、港湾を確保して韓国から民間人を救出することも在沖海兵隊の役目だ」と語る。
ところが、日本の歯車は同盟を弱める方向に回っている。米軍普天間基地の県内移設は宙に浮いたままだ。28日の沖縄県知事選で再選された仲井真弘多氏も県外移設を求める。
長い目でみれば、最大の変数は中国軍の台頭だ。「台湾海峡で危機が再発しても、米空母は近づけないかもしれない」。今春の日米協議で、米側からこんな声がもれた。
米軍優位揺らぐ
中国軍は96年、台湾を威嚇しようと同海峡で大規模演習を展開した。米軍は空母2隻を急派し、圧倒的な力の差を見せつけてねじ伏せた。だが、米海軍といえども、もはや同じことはできないというのだ。
中国軍が空母を完成させ、潜水艦をさらに増強すれば、アジアの海での米軍優位も脅かされかねない。尖閣諸島問題などで中国と対立する日本には深刻な事態だ。米国には日本の自助努力に期待する空気が広がる。
「尖閣をめぐる日中の対立は、日本が防衛費を増やすきっかけになるだろうか」。米軍関係者は最近、日本側との会食の席で、こんな話題を口にするようになった。
日本の防衛費は2003年から減額が続いている。国内総生産(GDP)に占める比率は0・8%で、米中央情報局(CIA)によると世界のほぼ150位。例えば、これを2・7%の韓国並みに高めるとすれば、防衛費を毎年11兆円強、上積みしなればならない。
防衛の自助努力のコストをどこまで負担するのか。半島から吹く北風は、日本の有権者にそんな問いを突きつけているのかもしれない。
米韓による黄海での合同軍事演習を横目に、日本の自衛隊や在日米軍の基地でも緊張が漂っている。3日から米空母ジョージ・ワシントンが加わり、日本近海などで日米の大がかりな合同演習が実施されるからだ。
北朝鮮が反発を強めるのはまちがいない。「北朝鮮は日本にも挑発を仕掛けてくるかもしれない」。自衛隊の関係者は身構える。
米国と違い、日本は北朝鮮の弾道ミサイルの射程にすっぽり入る。情勢が緊迫すれば、韓国にいる約3万人の邦人にも危険が迫る。日本はどう対応するのか。
協議の翌日に…
北朝鮮が韓国を砲撃する前日の22日朝。ポトマック川ほとりの米国防総省ビルに、日米の外交・安全保障当局者が静かに集まった。同盟強化の作業の一環としてアジア情勢の分析を持ち寄り、認識を共有するためだ。
今回の会合は3回目。すでに中国や朝鮮半島情勢についてひそかに分析し、この日はロシアも取り上げた。とりわけ白熱したのが、北朝鮮をめぐる7月の協議だった。
▽内部崩壊する。
▽権力闘争やクーデターが起き、混乱する。
▽円滑な権力の継承に成功する。
北朝鮮の3つのシナリオを分析し、米韓と日本の連携策を探ったという。日米が半島情勢についてここまで本格的な議論を交わすのは昨秋の政権交代後、初めてだ。
日本は1990年代の半島危機を教訓に、韓国からの邦人救出のためのマニュアルを作成した。内容は極秘だが、まずは民間機や自衛隊機で対応し、「それが難しいときには最終的に米軍に頼らざるを得ない」(政府の安保当局者)。日米ではこんな事態も話し合われているもようだ。
半島での紛争に即応するうえでも、日米同盟の役割は大きい。米軍が韓国を支援する際には日本が後方の拠点になる。沖縄の米海兵隊も大切な任務を担う。米安保当局者は「韓国の援軍に駆けつけるほか、港湾を確保して韓国から民間人を救出することも在沖海兵隊の役目だ」と語る。
ところが、日本の歯車は同盟を弱める方向に回っている。米軍普天間基地の県内移設は宙に浮いたままだ。28日の沖縄県知事選で再選された仲井真弘多氏も県外移設を求める。
長い目でみれば、最大の変数は中国軍の台頭だ。「台湾海峡で危機が再発しても、米空母は近づけないかもしれない」。今春の日米協議で、米側からこんな声がもれた。
米軍優位揺らぐ
中国軍は96年、台湾を威嚇しようと同海峡で大規模演習を展開した。米軍は空母2隻を急派し、圧倒的な力の差を見せつけてねじ伏せた。だが、米海軍といえども、もはや同じことはできないというのだ。
中国軍が空母を完成させ、潜水艦をさらに増強すれば、アジアの海での米軍優位も脅かされかねない。尖閣諸島問題などで中国と対立する日本には深刻な事態だ。米国には日本の自助努力に期待する空気が広がる。
「尖閣をめぐる日中の対立は、日本が防衛費を増やすきっかけになるだろうか」。米軍関係者は最近、日本側との会食の席で、こんな話題を口にするようになった。
日本の防衛費は2003年から減額が続いている。国内総生産(GDP)に占める比率は0・8%で、米中央情報局(CIA)によると世界のほぼ150位。例えば、これを2・7%の韓国並みに高めるとすれば、防衛費を毎年11兆円強、上積みしなればならない。
防衛の自助努力のコストをどこまで負担するのか。半島から吹く北風は、日本の有権者にそんな問いを突きつけているのかもしれない。
:2010:11/29/11:09 ++ 苦難の就活遠のく婚活―結婚、23年ぶり70万組割れも(エコノフォーカス)
若年層の雇用改善が遅れている。15~24歳の失業率は8%と、全世代の5%を大幅に上回る水準。学校を卒業した後も就職できない人が約12万人にのぼり、若年失業者の約4分の1を占める。就職できた若年層も2009年以降は年収が大幅に落ち込んでいる。将来への不安が広がるなか、10年は年間の結婚数が23年ぶりに70万組の大台を割り込む公算が大きい。
(松尾洋平)
「まだ内定が決まらないのですが……」。9月下旬に厚生労働省が全国に設置した「新卒応援ハローワーク」。1カ月間で約3万人もの学生が職探しに訪れた。
15~24歳の若年失業者は約49万人。このうち学校を卒業後、一度も就職できないままに失業者になっている人は約12万人にのぼる。この年齢層の失業率は8・0%(9月)と高く、25~34歳でみても5・9%と全世代の平均を上回る。若年層に雇用低迷のしわ寄せが出ているとみられ、厚労省は「予想以上に若年雇用は厳しい」という。
新興国の成長や政策の下支えで景気は最悪期を脱したが、本格的な雇用改善にはつながっていない。人口に占める働く人の割合を示す就業率をみると、20~30歳代は74・7%(9月、12カ月後方移動平均)。ここ数カ月はやや持ち直したが、リーマン・ショック前のピーク(08年2月)である75・4%と比べるとなお開きがある。駒沢大学の飯田泰之准教授は「正社員は解雇が難しいため、先行き不安を抱える企業は人材の受け入れをためらっている」と語る。
15~34歳で仕事に就いている人のうち、非正規社員の割合は3割近くで高止まり。パート・アルバイトで働く「フリーター」も09年は178万人と6年ぶりに増えた。
日本経済新聞社の11年度の採用状況調査(10月)では、とくに非製造業の内定人数は前年度比で10・4%減った。東急ストアやベスト電器は内定数をゼロと回答。ローソンも来春入社の大卒内定者を3割減らした。
就職できた若年層も手取り収入の減少に直面する。賃金構造基本統計調査をもとに20~30歳代の平均年収(大卒・院卒の男性)を推計すると、09年は前年比4・2%減の478万円となった。3年連続のマイナスで、10年前に比べると34万円も減っている。業績の低迷でボーナスが減ったり、賃金の低い非正規の仕事に就かざるをえない人が多いためとみられる。
(松尾洋平)
「まだ内定が決まらないのですが……」。9月下旬に厚生労働省が全国に設置した「新卒応援ハローワーク」。1カ月間で約3万人もの学生が職探しに訪れた。
15~24歳の若年失業者は約49万人。このうち学校を卒業後、一度も就職できないままに失業者になっている人は約12万人にのぼる。この年齢層の失業率は8・0%(9月)と高く、25~34歳でみても5・9%と全世代の平均を上回る。若年層に雇用低迷のしわ寄せが出ているとみられ、厚労省は「予想以上に若年雇用は厳しい」という。
新興国の成長や政策の下支えで景気は最悪期を脱したが、本格的な雇用改善にはつながっていない。人口に占める働く人の割合を示す就業率をみると、20~30歳代は74・7%(9月、12カ月後方移動平均)。ここ数カ月はやや持ち直したが、リーマン・ショック前のピーク(08年2月)である75・4%と比べるとなお開きがある。駒沢大学の飯田泰之准教授は「正社員は解雇が難しいため、先行き不安を抱える企業は人材の受け入れをためらっている」と語る。
15~34歳で仕事に就いている人のうち、非正規社員の割合は3割近くで高止まり。パート・アルバイトで働く「フリーター」も09年は178万人と6年ぶりに増えた。
日本経済新聞社の11年度の採用状況調査(10月)では、とくに非製造業の内定人数は前年度比で10・4%減った。東急ストアやベスト電器は内定数をゼロと回答。ローソンも来春入社の大卒内定者を3割減らした。
就職できた若年層も手取り収入の減少に直面する。賃金構造基本統計調査をもとに20~30歳代の平均年収(大卒・院卒の男性)を推計すると、09年は前年比4・2%減の478万円となった。3年連続のマイナスで、10年前に比べると34万円も減っている。業績の低迷でボーナスが減ったり、賃金の低い非正規の仕事に就かざるをえない人が多いためとみられる。
:2010:11/29/11:06 ++ 北海道大学教授山口二郎氏―団塊世代は“食い逃げ”するな(インタビュー領空侵犯)
――団塊世代に対し、若い人の社会運動にお金を寄付すべきだと提言していますね。
「若いころは学園紛争の主役となり、社会変革に燃えていたのが団塊世代です。しかも終身雇用に守られながら退職年齢に達しました。日本の高度成長の恩恵を十分に享受できた最後の世代でしょう。その人たちが今、退職して私生活に埋没してしまっては、若い世代から突き上げられます。妙におとなしくなったなどと批判されるのも面白くないでしょう。だから、よけいなお節介かもしれませんが、お金の寄付を訴えたんです」
「若い世代には立派な人が多い。病児保育を推進する特定非営利活動法人(NPO法人)とか、2年前の年越し派遣村など、イデオロギーにとらわれない若いリーダーが起業家感覚で新タイプの社会運動を広げています。関心のある分野に団塊世代が退職金から1%でも寄付をすれば、自分が参加できなくても、大きな社会変革の力になります」
――団塊世代の食い逃げは許さないということですか。
「世の中が危機的な状況にあるからです。若い世代は人生の予測ができないでいる。学校を出て就職し、結婚して子育てをするなど、かつての普通のライフスタイルが共有できない社会になっています。非正規雇用の比率が高まり低賃金労働です。その結果、未婚者は増え、少子化も止まらない状態です。これらは若い世代による社会への一種の復讐(ふくしゅう)ですね。ただし、いずれは自分に跳ね返ってくる自己破壊的な反逆です」
「このままでは、さらに大きな規模の貧困が広がり、社会保障システムでは救えないという話になりかねない。だから団塊世代には座視しないでほしいと思うんです。『余生』なんていう言葉は使ってほしくないですね」
――若者はもっと上の世代を突き上げるべきですか。
「世代間の対立をいたずらにあおる議論には賛成しません。現状では雇用面などで若い世代が割を食っている事実はあるでしょう。だからといって対立をあおっても問題は解決しない。政治への距離が開くなど、社会の共同作業に背を向ける感覚を生み出すだけです。もっと建設的に対立を緩和する行動が必要で、そこに団塊世代のアクションの意味があります」
「団塊世代など大人が果たすべき務めはまだあります。例えば学生の就職活動。企業は早くから長期に学生を拘束し、勉学の余裕を奪って、一方で『海外に行かない内向き志向』などと批判する。おかしいですよ。まず企業側が採用方法を変え、学生が自由に動けるようにするのが筋。団塊も異議を唱えるべきです」
やまぐち・じろう 58年生まれ。東大法卒、87年米コーネル大に留学。97年英オックスフォード大セントアントニーズ・カレッジ客員研究員などを経て現職。専門は行政学、政治学。著書に「戦後政治の崩壊」「政権交代論」など。
以前にフランスの退職者を取材したとき、よく耳にした言葉は「連帯」だった。自分たちは恵まれた世代。その恩返しに、失業で悩む若い世代に就職ノウハウを指南しているNPOもあった。必要とされるのは世代対立よりも連帯。団塊世代も含めた大人の温かみを、若者が実感できる社会づくりを改めて考えた。
(編集委員 須貝道雄)
若い世代が直面する「寒々しい光景」を分かっているのだろうか。
「若いころは学園紛争の主役となり、社会変革に燃えていたのが団塊世代です。しかも終身雇用に守られながら退職年齢に達しました。日本の高度成長の恩恵を十分に享受できた最後の世代でしょう。その人たちが今、退職して私生活に埋没してしまっては、若い世代から突き上げられます。妙におとなしくなったなどと批判されるのも面白くないでしょう。だから、よけいなお節介かもしれませんが、お金の寄付を訴えたんです」
「若い世代には立派な人が多い。病児保育を推進する特定非営利活動法人(NPO法人)とか、2年前の年越し派遣村など、イデオロギーにとらわれない若いリーダーが起業家感覚で新タイプの社会運動を広げています。関心のある分野に団塊世代が退職金から1%でも寄付をすれば、自分が参加できなくても、大きな社会変革の力になります」
――団塊世代の食い逃げは許さないということですか。
「世の中が危機的な状況にあるからです。若い世代は人生の予測ができないでいる。学校を出て就職し、結婚して子育てをするなど、かつての普通のライフスタイルが共有できない社会になっています。非正規雇用の比率が高まり低賃金労働です。その結果、未婚者は増え、少子化も止まらない状態です。これらは若い世代による社会への一種の復讐(ふくしゅう)ですね。ただし、いずれは自分に跳ね返ってくる自己破壊的な反逆です」
「このままでは、さらに大きな規模の貧困が広がり、社会保障システムでは救えないという話になりかねない。だから団塊世代には座視しないでほしいと思うんです。『余生』なんていう言葉は使ってほしくないですね」
――若者はもっと上の世代を突き上げるべきですか。
「世代間の対立をいたずらにあおる議論には賛成しません。現状では雇用面などで若い世代が割を食っている事実はあるでしょう。だからといって対立をあおっても問題は解決しない。政治への距離が開くなど、社会の共同作業に背を向ける感覚を生み出すだけです。もっと建設的に対立を緩和する行動が必要で、そこに団塊世代のアクションの意味があります」
「団塊世代など大人が果たすべき務めはまだあります。例えば学生の就職活動。企業は早くから長期に学生を拘束し、勉学の余裕を奪って、一方で『海外に行かない内向き志向』などと批判する。おかしいですよ。まず企業側が採用方法を変え、学生が自由に動けるようにするのが筋。団塊も異議を唱えるべきです」
やまぐち・じろう 58年生まれ。東大法卒、87年米コーネル大に留学。97年英オックスフォード大セントアントニーズ・カレッジ客員研究員などを経て現職。専門は行政学、政治学。著書に「戦後政治の崩壊」「政権交代論」など。
以前にフランスの退職者を取材したとき、よく耳にした言葉は「連帯」だった。自分たちは恵まれた世代。その恩返しに、失業で悩む若い世代に就職ノウハウを指南しているNPOもあった。必要とされるのは世代対立よりも連帯。団塊世代も含めた大人の温かみを、若者が実感できる社会づくりを改めて考えた。
(編集委員 須貝道雄)
若い世代が直面する「寒々しい光景」を分かっているのだろうか。
:2010:11/29/11:02 ++ 菅さん、短くとも太くいこう―「皆によい顔」では日本沈む(核心)
菅直人内閣の支持率が急低下し、政権運営は難局にさしかかった。
外交のつまずきや民主党内の不和、閣僚の不祥事については不運もある。一方で強い経済・財政・社会保障の一体的実現という首相の方針に誤りはない。
問題はこの政策理念もかすんで、あちこちへの配慮から小粒な政策ばかり追い求め、あぶはち取らずに終わりそうなことである。
ここは思い切りよく、一つか二つの重要な改革に絞って精力と資金を注いだらどうか。転換期の日本を救い歴史に菅政権の足跡をしるすには、それしかない。
野党との対決で悩み深きあるじをよそに、首相官邸は活気を見せている。
予算編成を前に、経済対策や待機児童など問題ごとにある35の会議が頻繁に開かれ、与党議員が政策の詰めに入った。政治主導を示そうと張り切る。その意気込みは仙谷由人官房長官ももてあますほどという。
だが「議論している政策は総花的かつ短期的な視野からのものが多い」と内閣官房の幹部。参院選での民主党敗北を境に流れが変わったとみている。
民主党政権内では、政策調査会の復活で党側の発言力が増したこともあり、選挙直後から、健全財政重視への反発が広まった。
7月末には来年度予算の要求基準を決め、1兆円超の特別枠設置や社会保障費の削減見送りを決める。バラマキに傾斜し、研究開発や農業分野で議員の「族議員化」も進んでいる。
首相は消費税増税を言わなくなった。年金改革の検討は7原則を決めた後、ストップ。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加の判断も先送りした。
代わって、年少扶養控除の廃止で子ども手当の手取りが実質的に減る家庭への対応とか、高速道路無料化の範囲など、芸の細かい話に政治家は精力を費やす。
政権中枢が内向きの議論に終始するなか、世界は急変している。11月のニュースから拾ってみよう。
▼中国のスーパーコンピューター、天河1号が計算速度で世界1に
▼胃がんワクチンを開発した日本企業が臨床試験をシンガポールで、同国政府の支援を受け実施へ
▼台湾の1人当たり所得は購買力平価でみて今年、初めて日本を上回る
新興国の躍進で「世界大競争」が加速している。このままでは日本は沈む。歴史的な転換期だ。
大胆な構造改革が功を奏し今年、実質6%台の経済成長を見込むのが韓国。1990年代末の通貨危機を奇貨として金大中、盧武鉉、李明博の3代の政権がより一層の輸出拡大のため経済制度を大車輪で変えた。
主要産業の企業を2~3社に絞る産業調整であり、自由貿易協定(FTA)の締結だ。欧州連合(EU)とのFTAは来年7月に発効、米国との協定も議会承認に向け動いている。
「韓国は人口が約5千万人と少ないので輸出で成長するしかない。それを国民のほとんどが理解しているから、政策の優先順位をつけやすかった。人口が多く大国意識も根強い日本との違い」と深川由起子早稲田大学教授は指摘する。
強い経済と高福祉を両立させているスウェーデンの秘密は何だろう。11月に都内で開いたシンポジウムでヌーデル元財務相が雇用政策の考え方を説明した。
「職を守らずに、人を守る。産業には助成せず、人に助成する」
衰退産業やそこでの雇用を守ることはしない。失職した人に再訓練などを施して、これから伸びる産業に就くのを促すという。
主要産業の交代は当たり前という、大競争の本質を見据えた政策である。
日本で急ぐべきは通商の自由化と、その前提になる農業改革だろう。
首相の「雇用拡大を通じ成長を実現する」という持論は雇用と成長の因果が逆さまだ。雇用増には、企業の対外取引を促して、成長することが大事。それには通商自由化が必要で、農業改革が起点になる。
乏しい財政資金を有効に使うため、農業改革にまとめてつぎ込むのも手だ。そしてTPP交渉への参加を来年6月とはいわず、もっと早く決める。反対する閣僚は更迭して当然だ。
首相が決意を固めれば、
世論の支持が広がり、野党の協力を得られるかもしれない。日本経済を弱くした責任は主に自民党にあるのだから、まともな案に同党の非協力は許されない。
「明治維新から140年……もう一度“坂の上の雲”を追い求める活気あふれた日本を再現するために、私もあらん限りの力をふりしぼって頑張る覚悟だ」と菅首相は昨年末出版の自著「大臣」に書いている。
高い志を持つ宰相がもみくちゃにされ、今や政権の延命に心を奪われているように見えるのは残念だ。
今こそ腹を固める時だ。
もし野党の協力を得られず前任者と同様、1年以内に退くとしても、農業改革に道をつけ、通商自由化で外国と交渉を始め、安全保障面では普天間問題で現実的な解決策を示せれば、後の政権も無視できまい。立派に歴史に名を刻む。
坂本龍馬は生涯最後の数年間に薩長連合を仲介し、大政奉還の下地をつくるなど大仕事をなし遂げた。
重要なのは首相職の“滞空時間”より仕事の中身。菅氏自身が痛いほど分かっているはずである。
外交のつまずきや民主党内の不和、閣僚の不祥事については不運もある。一方で強い経済・財政・社会保障の一体的実現という首相の方針に誤りはない。
問題はこの政策理念もかすんで、あちこちへの配慮から小粒な政策ばかり追い求め、あぶはち取らずに終わりそうなことである。
ここは思い切りよく、一つか二つの重要な改革に絞って精力と資金を注いだらどうか。転換期の日本を救い歴史に菅政権の足跡をしるすには、それしかない。
野党との対決で悩み深きあるじをよそに、首相官邸は活気を見せている。
予算編成を前に、経済対策や待機児童など問題ごとにある35の会議が頻繁に開かれ、与党議員が政策の詰めに入った。政治主導を示そうと張り切る。その意気込みは仙谷由人官房長官ももてあますほどという。
だが「議論している政策は総花的かつ短期的な視野からのものが多い」と内閣官房の幹部。参院選での民主党敗北を境に流れが変わったとみている。
民主党政権内では、政策調査会の復活で党側の発言力が増したこともあり、選挙直後から、健全財政重視への反発が広まった。
7月末には来年度予算の要求基準を決め、1兆円超の特別枠設置や社会保障費の削減見送りを決める。バラマキに傾斜し、研究開発や農業分野で議員の「族議員化」も進んでいる。
首相は消費税増税を言わなくなった。年金改革の検討は7原則を決めた後、ストップ。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加の判断も先送りした。
代わって、年少扶養控除の廃止で子ども手当の手取りが実質的に減る家庭への対応とか、高速道路無料化の範囲など、芸の細かい話に政治家は精力を費やす。
政権中枢が内向きの議論に終始するなか、世界は急変している。11月のニュースから拾ってみよう。
▼中国のスーパーコンピューター、天河1号が計算速度で世界1に
▼胃がんワクチンを開発した日本企業が臨床試験をシンガポールで、同国政府の支援を受け実施へ
▼台湾の1人当たり所得は購買力平価でみて今年、初めて日本を上回る
新興国の躍進で「世界大競争」が加速している。このままでは日本は沈む。歴史的な転換期だ。
大胆な構造改革が功を奏し今年、実質6%台の経済成長を見込むのが韓国。1990年代末の通貨危機を奇貨として金大中、盧武鉉、李明博の3代の政権がより一層の輸出拡大のため経済制度を大車輪で変えた。
主要産業の企業を2~3社に絞る産業調整であり、自由貿易協定(FTA)の締結だ。欧州連合(EU)とのFTAは来年7月に発効、米国との協定も議会承認に向け動いている。
「韓国は人口が約5千万人と少ないので輸出で成長するしかない。それを国民のほとんどが理解しているから、政策の優先順位をつけやすかった。人口が多く大国意識も根強い日本との違い」と深川由起子早稲田大学教授は指摘する。
強い経済と高福祉を両立させているスウェーデンの秘密は何だろう。11月に都内で開いたシンポジウムでヌーデル元財務相が雇用政策の考え方を説明した。
「職を守らずに、人を守る。産業には助成せず、人に助成する」
衰退産業やそこでの雇用を守ることはしない。失職した人に再訓練などを施して、これから伸びる産業に就くのを促すという。
主要産業の交代は当たり前という、大競争の本質を見据えた政策である。
日本で急ぐべきは通商の自由化と、その前提になる農業改革だろう。
首相の「雇用拡大を通じ成長を実現する」という持論は雇用と成長の因果が逆さまだ。雇用増には、企業の対外取引を促して、成長することが大事。それには通商自由化が必要で、農業改革が起点になる。
乏しい財政資金を有効に使うため、農業改革にまとめてつぎ込むのも手だ。そしてTPP交渉への参加を来年6月とはいわず、もっと早く決める。反対する閣僚は更迭して当然だ。
首相が決意を固めれば、
世論の支持が広がり、野党の協力を得られるかもしれない。日本経済を弱くした責任は主に自民党にあるのだから、まともな案に同党の非協力は許されない。
「明治維新から140年……もう一度“坂の上の雲”を追い求める活気あふれた日本を再現するために、私もあらん限りの力をふりしぼって頑張る覚悟だ」と菅首相は昨年末出版の自著「大臣」に書いている。
高い志を持つ宰相がもみくちゃにされ、今や政権の延命に心を奪われているように見えるのは残念だ。
今こそ腹を固める時だ。
もし野党の協力を得られず前任者と同様、1年以内に退くとしても、農業改革に道をつけ、通商自由化で外国と交渉を始め、安全保障面では普天間問題で現実的な解決策を示せれば、後の政権も無視できまい。立派に歴史に名を刻む。
坂本龍馬は生涯最後の数年間に薩長連合を仲介し、大政奉還の下地をつくるなど大仕事をなし遂げた。
重要なのは首相職の“滞空時間”より仕事の中身。菅氏自身が痛いほど分かっているはずである。
:2010:11/29/10:43 ++ 沖縄知事に仲井真氏再選、普天間移設、県外訴え、政府、対話継続探る。
任期満了に伴う沖縄県知事選は28日投開票され、自民党県連の支援を受けた無所属現職の仲井真弘多氏(71)=公明、みんな推薦=が、無所属新人の前宜野湾市長、伊波洋一氏(58)=共産、社民、国民新、新党日本、沖縄社会大衆推薦=ら2氏を破り、再選を果たした。政府は米軍普天間基地移設問題を巡り対話継続を探るが、仲井真氏は県外移設要求に転じており、名護市辺野古への移設は困難な状況が続く。(関連記事3面、社会面に)
投票率は60・88%で、前回を3・66ポイント下回った。
仲井真氏は28日夜、普天間基地の移設先について「沖縄に移設先はない。日本全国で解決を見いだしてほしい」と述べた。
同知事選は民主党政権を揺るがしてきた普天間移設問題に大きな影響を与えることから、政府、与野党の関心も高かった。民主党は日米合意の履行を重視する党本部と県外移設を主張する同県選出議員らの間で対応が定まらず、自主投票になった。
仲井真氏は自公政権時代、辺野古移設を条件付きで認めていたが、1月の名護市長選で反対派市長が誕生したことなどから、県外移設要求の姿勢に転じた。一貫して国外移設を主張してきた伊波氏は及ばなかった。
政府は対話を否定しない仲井真氏の再選で協議の継続に期待をかける。菅直人首相は沖縄訪問を検討しており、政府は負担軽減などを示して地元の理解を得たい考えだ。
馬淵澄夫沖縄・北方担当相は「沖縄経済の真の自立と持続的な発展につながる施策を検討する」とのコメントを発表。福山哲郎官房副長官は記者団に「沖縄県民の民意の一つの表れだ。日米合意を踏まえ、沖縄の負担軽減に全力を尽くす」と述べた。
ただ、仲井真氏が首相が訪米を予定する来春までに、県内移設容認に転じる見込みは薄い。移設先とされた名護市の稲嶺進市長は「海にも陸にも基地は造らせない」と反対の立場で、前進が期待できる状況ではない。
なかいま・ひろかず=東大工卒、通産省(現経済産業省)へ。沖縄県副知事、沖縄電力社長。沖縄県出身、71歳
激戦となった沖縄県知事選を制したのは現職の仲井真弘多知事だった。仲井真氏は米軍普天間基地の県内移設は「不可能に近い」と発言しながら、「反対」を明言してこなかった。政府・与党は交渉の継続に淡い期待を抱くが、沖縄との溝はあまりに深い。普天間基地の固定化という最悪の事態が残る可能性がある。
わかりにくい選挙だった。普天間問題を巡り仲井真氏と争った前宜野湾市長、伊波洋一氏は県内移設に反対。5月の日米合意に明記した名護市辺野古移設を条件付きで認めていた仲井真氏も、県内移設は困難と転換した。対立軸はぼやけ「不可能」か「不可能に近い」かの選択となった。
政府・与党は仲井真氏が条件付き容認に戻る可能性に希望をつなぐ。だが、国外・県外移設を求める地元世論の盛り上がりを考えれば、翻意も不可能に近いかもしれない。
政府・民主党幹部は28日夜、首相公邸で開票の行方を見守った。菅直人首相は知事選後の沖縄訪問を表明済み。オバマ米大統領にも沖縄との対話を加速させると約束した。それからまだ1カ月もたっていないのに、民主党には「首相が沖縄に行けば反発を招く」と警戒感が広がり、首相周辺も「先に訪問ありきではない」と予防線を張る。
一様に慎重なのは、展望なく対話に乗り出した直後に退陣した鳩山由紀夫前首相の姿と重なるからだ。「処方せんがなく首相は悩んでいる」。最近、首相に接した政府関係者はこう打ち明ける。
首相が心待ちにする来春の訪米は、米側からすれば、日本が普天間問題を決着させる期限。日米外交筋は「それまでに普天間を解決してほしいという大統領の意思の表れだ」と解説する。
移設ができないなら、抑止力を保つため米軍は普天間基地を使い続けざるを得ない。米海兵隊の2011年度の航空機配備計画には普天間の改修・補強が盛り込まれた。移設が遅れることも視野に、米軍は継続使用の準備に入りつつある。
北朝鮮の韓国・延坪島への砲撃、中国監視船の尖閣諸島への接近。北東アジア情勢は不安定になり、地政学上の要衝でもある沖縄の重要度は増している。にもかかわらず、普天間移設は宙に浮き、沖縄の不信感が募る。いたずらに県外移設をあおった揚げ句、無策を続ける民主党政権の罪は極めて重い。
投票率は60・88%で、前回を3・66ポイント下回った。
仲井真氏は28日夜、普天間基地の移設先について「沖縄に移設先はない。日本全国で解決を見いだしてほしい」と述べた。
同知事選は民主党政権を揺るがしてきた普天間移設問題に大きな影響を与えることから、政府、与野党の関心も高かった。民主党は日米合意の履行を重視する党本部と県外移設を主張する同県選出議員らの間で対応が定まらず、自主投票になった。
仲井真氏は自公政権時代、辺野古移設を条件付きで認めていたが、1月の名護市長選で反対派市長が誕生したことなどから、県外移設要求の姿勢に転じた。一貫して国外移設を主張してきた伊波氏は及ばなかった。
政府は対話を否定しない仲井真氏の再選で協議の継続に期待をかける。菅直人首相は沖縄訪問を検討しており、政府は負担軽減などを示して地元の理解を得たい考えだ。
馬淵澄夫沖縄・北方担当相は「沖縄経済の真の自立と持続的な発展につながる施策を検討する」とのコメントを発表。福山哲郎官房副長官は記者団に「沖縄県民の民意の一つの表れだ。日米合意を踏まえ、沖縄の負担軽減に全力を尽くす」と述べた。
ただ、仲井真氏が首相が訪米を予定する来春までに、県内移設容認に転じる見込みは薄い。移設先とされた名護市の稲嶺進市長は「海にも陸にも基地は造らせない」と反対の立場で、前進が期待できる状況ではない。
なかいま・ひろかず=東大工卒、通産省(現経済産業省)へ。沖縄県副知事、沖縄電力社長。沖縄県出身、71歳
激戦となった沖縄県知事選を制したのは現職の仲井真弘多知事だった。仲井真氏は米軍普天間基地の県内移設は「不可能に近い」と発言しながら、「反対」を明言してこなかった。政府・与党は交渉の継続に淡い期待を抱くが、沖縄との溝はあまりに深い。普天間基地の固定化という最悪の事態が残る可能性がある。
わかりにくい選挙だった。普天間問題を巡り仲井真氏と争った前宜野湾市長、伊波洋一氏は県内移設に反対。5月の日米合意に明記した名護市辺野古移設を条件付きで認めていた仲井真氏も、県内移設は困難と転換した。対立軸はぼやけ「不可能」か「不可能に近い」かの選択となった。
政府・与党は仲井真氏が条件付き容認に戻る可能性に希望をつなぐ。だが、国外・県外移設を求める地元世論の盛り上がりを考えれば、翻意も不可能に近いかもしれない。
政府・民主党幹部は28日夜、首相公邸で開票の行方を見守った。菅直人首相は知事選後の沖縄訪問を表明済み。オバマ米大統領にも沖縄との対話を加速させると約束した。それからまだ1カ月もたっていないのに、民主党には「首相が沖縄に行けば反発を招く」と警戒感が広がり、首相周辺も「先に訪問ありきではない」と予防線を張る。
一様に慎重なのは、展望なく対話に乗り出した直後に退陣した鳩山由紀夫前首相の姿と重なるからだ。「処方せんがなく首相は悩んでいる」。最近、首相に接した政府関係者はこう打ち明ける。
首相が心待ちにする来春の訪米は、米側からすれば、日本が普天間問題を決着させる期限。日米外交筋は「それまでに普天間を解決してほしいという大統領の意思の表れだ」と解説する。
移設ができないなら、抑止力を保つため米軍は普天間基地を使い続けざるを得ない。米海兵隊の2011年度の航空機配備計画には普天間の改修・補強が盛り込まれた。移設が遅れることも視野に、米軍は継続使用の準備に入りつつある。
北朝鮮の韓国・延坪島への砲撃、中国監視船の尖閣諸島への接近。北東アジア情勢は不安定になり、地政学上の要衝でもある沖縄の重要度は増している。にもかかわらず、普天間移設は宙に浮き、沖縄の不信感が募る。いたずらに県外移設をあおった揚げ句、無策を続ける民主党政権の罪は極めて重い。
:2010:11/24/09:17 ++ 北朝鮮の暴挙に中国は手をこまぬくな(社説)
北朝鮮が黄海上に浮かぶ韓国の島を砲撃し、韓国側に死傷者が出た。断じて許されない。北朝鮮に強い影響力を持つ中国は、直ちに冒険主義の行動をやめさせるべきである。
北朝鮮が発射した砲弾は韓国の延坪島に落下し、多くの家屋が炎上した。複数の兵士が死亡し、民間人にも負傷者が出た。北朝鮮は韓国軍の演習に対抗した「断固とした軍事的措置」と表明したが、北朝鮮の行動は極めて憂慮すべきである。
南北を分ける黄海上の境界水域では過去にも銃撃戦があった。国連軍が軍事境界線と定めた北方限界線を認めないというのが北朝鮮の主張だが、その言い分は軍事行動を正当化するものではない。今回は陸上への攻撃であり、非常に深刻だ。北朝鮮は今後も攻撃の可能性を明言しており、緊張を高めようとしている。
3月には黄海上で韓国軍の哨戒艦が沈没し、46人が犠牲になった。国際調査団は北朝鮮による魚雷攻撃と断定した。今回の挑発行為も北朝鮮が公式発表していることから、指導部が指令したと見るべきだろう。
北朝鮮は米国の専門家に大型のウラン濃縮施設を見せ、プルトニウム型に加えて、外部から監視しにくいウラン型の核開発も進めていることを内外に誇示したばかり。これを受けて米国のボズワース北朝鮮担当特別代表が急きょ、韓国、日本、中国を訪問中で対応を協議している。そのさなかの砲撃である。
国際社会の関心を集め、米朝の直接協議や6カ国協議の早期再開につなげ、見返りの経済支援を獲得しようという思惑も見て取れる。弱体化した米オバマ政権や日本の菅政権は足元を見透かされている。
北朝鮮は金正日総書記が健康不安をかかえ、三男の金正恩氏への引き継ぎが進んでいる。国内体制引き締めを狙い、核開発や韓国への砲撃などを繰り返したとの見方も出ている。とんでもない冒険主義である。
日米韓は緊密に連携し、これ以上の暴挙をやめさせるべく、包囲網を強める必要がある。国連安全保障理事会に直ちに提起するとともに、金融制裁を含めた国際社会の圧力をさらに強化していくべきだ。
北朝鮮の暴挙を招いた大きな責任は中国にある。韓国の哨戒艦沈没事件では北朝鮮への非難を控え、北朝鮮の権力世襲の支持や経済援助の提供で金正日政権を支援してきた。
今回も中国は即座に北朝鮮の攻撃を非難せず、6カ国協議の再開に言及するばかりだ。北朝鮮を甘やかしてきたことが暴走を許している。その責任を中国は自覚すべきである。
北朝鮮が発射した砲弾は韓国の延坪島に落下し、多くの家屋が炎上した。複数の兵士が死亡し、民間人にも負傷者が出た。北朝鮮は韓国軍の演習に対抗した「断固とした軍事的措置」と表明したが、北朝鮮の行動は極めて憂慮すべきである。
南北を分ける黄海上の境界水域では過去にも銃撃戦があった。国連軍が軍事境界線と定めた北方限界線を認めないというのが北朝鮮の主張だが、その言い分は軍事行動を正当化するものではない。今回は陸上への攻撃であり、非常に深刻だ。北朝鮮は今後も攻撃の可能性を明言しており、緊張を高めようとしている。
3月には黄海上で韓国軍の哨戒艦が沈没し、46人が犠牲になった。国際調査団は北朝鮮による魚雷攻撃と断定した。今回の挑発行為も北朝鮮が公式発表していることから、指導部が指令したと見るべきだろう。
北朝鮮は米国の専門家に大型のウラン濃縮施設を見せ、プルトニウム型に加えて、外部から監視しにくいウラン型の核開発も進めていることを内外に誇示したばかり。これを受けて米国のボズワース北朝鮮担当特別代表が急きょ、韓国、日本、中国を訪問中で対応を協議している。そのさなかの砲撃である。
国際社会の関心を集め、米朝の直接協議や6カ国協議の早期再開につなげ、見返りの経済支援を獲得しようという思惑も見て取れる。弱体化した米オバマ政権や日本の菅政権は足元を見透かされている。
北朝鮮は金正日総書記が健康不安をかかえ、三男の金正恩氏への引き継ぎが進んでいる。国内体制引き締めを狙い、核開発や韓国への砲撃などを繰り返したとの見方も出ている。とんでもない冒険主義である。
日米韓は緊密に連携し、これ以上の暴挙をやめさせるべく、包囲網を強める必要がある。国連安全保障理事会に直ちに提起するとともに、金融制裁を含めた国際社会の圧力をさらに強化していくべきだ。
北朝鮮の暴挙を招いた大きな責任は中国にある。韓国の哨戒艦沈没事件では北朝鮮への非難を控え、北朝鮮の権力世襲の支持や経済援助の提供で金正日政権を支援してきた。
今回も中国は即座に北朝鮮の攻撃を非難せず、6カ国協議の再開に言及するばかりだ。北朝鮮を甘やかしてきたことが暴走を許している。その責任を中国は自覚すべきである。
:2010:11/24/09:13 ++ 北朝鮮が韓国砲撃、境界の島、韓国応戦、2人死亡、民間人負傷、休戦後初の陸上攻撃。
【ソウル=島谷英明】韓国軍合同参謀本部によると、23日午後2時34分ごろ、韓国が黄海上の南北軍事境界線と定める北方限界線に近い延坪島(ヨンピョンド)付近で、北朝鮮の海岸から断続的に少なくとも数十発の砲撃があり、一部が同島内の軍施設や市街地に着弾した。韓国軍は応射して砲撃戦になった。韓国軍兵士2人が死亡、16人が重軽傷を負い、同島の民間人3人が負傷した。(北方限界線は3面「きょうのことば」参照)
北朝鮮が1953年の朝鮮戦争休戦協定以降に韓国の陸上に砲弾で攻撃したのは初めて。南北の軍事衝突で民間人被害が出たのも異例で、朝鮮半島情勢は一気に緊迫の度を高めた。北朝鮮は韓国の軍事演習への反発姿勢を示しているが、金正日総書記の後継者で三男の正恩(ジョンウン)氏の体制固めへ内部の引き締めを狙ったとの見方も浮上している。
砲弾は延坪島の10~14キロメートル対岸にある北朝鮮のケモリ基地の海岸砲や曲射砲から発射されたとみられ、同島の陸上や周辺の海上に着弾した。砲撃は計100~200発だったとの情報もあり、韓国軍が確認を急いでいる。
韓国軍は自走砲などから計80発を応射。全軍で警戒態勢を強め、軍事挑発に備える体制を最高レベルに引き上げた。同時に、北朝鮮側へ軍当局間のルートを通じて砲撃中止を要求する通知文を送付した。砲撃は23日午後3時41分ごろに止まり、その後は確認されていない。
延坪島では家屋70棟程度で火災が発生し、複数の地点から炎や黒煙があがった。山火事や停電、通信施設が破損したもようで、24日未明も延焼が続いているとも伝えられる。
同島の住民約1600人は島内の防空壕(ごう)に避難したほか、一部は船で脱出した。2人の行方が未確認だという報道もある。韓国当局は付近の白〓島(ペクリョンド)などの住民にも退避命令を出した。
北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は23日夕、韓国軍が同日の軍事演習で北朝鮮領海内に砲射撃したと主張したうえで「断固とした軍事的措置をとった」と攻撃を認める声明を発表。韓国が今後も黄海の境界水域で軍事演習を続けるなら「ちゅうちょなく無慈悲な打撃を加える」と警告した。
李明博(イ・ミョンバク)大統領は「北朝鮮の挑発に断固対応する」と述べ、安全保障の関係閣僚会議を招集して対応を協議した。北朝鮮がさらなる挑発に出た場合を想定し、ミサイル基地への攻撃準備を軍に指示した。
韓国青瓦台(大統領府)は23日夕、北朝鮮の砲撃は「韓国に対する明白な武力挑発だ」と言明。「民間人にまで無差別砲撃を行ったことは決して容認できない」と強く非難する声明を発表した。
▼延坪島(ヨンピョンド) 韓国と北朝鮮の海上の境界である北方限界線(NLL)近くに位置する島。仁川広域市に属し、ソウルからの直線距離は約110キロメートル。NLLまでは十数キロメートル。砲撃を受けた大延坪島と南側の小延坪島があり、面積は大延坪島が約7平方キロメートルで小延坪島が約0・24平方キロメートル。周辺にワタリガニなどの豊かな漁場を抱え、人口は計1600人前後。大部分が大延坪島に暮らし、小中高校もある。
北朝鮮の警備艇や漁船のNLL侵犯が散発していることから、韓国軍は防衛上の要所として海兵隊を常駐させている。北朝鮮は今年1月下旬と8月上旬にも延坪島付近へ砲撃した。韓国国防省は今年に入り島内に野砲や短距離ミサイルの発射地点を特定できる対砲レーダーを固定配置。自走砲「K9」も増強していた。
北朝鮮が1953年の朝鮮戦争休戦協定以降に韓国の陸上に砲弾で攻撃したのは初めて。南北の軍事衝突で民間人被害が出たのも異例で、朝鮮半島情勢は一気に緊迫の度を高めた。北朝鮮は韓国の軍事演習への反発姿勢を示しているが、金正日総書記の後継者で三男の正恩(ジョンウン)氏の体制固めへ内部の引き締めを狙ったとの見方も浮上している。
砲弾は延坪島の10~14キロメートル対岸にある北朝鮮のケモリ基地の海岸砲や曲射砲から発射されたとみられ、同島の陸上や周辺の海上に着弾した。砲撃は計100~200発だったとの情報もあり、韓国軍が確認を急いでいる。
韓国軍は自走砲などから計80発を応射。全軍で警戒態勢を強め、軍事挑発に備える体制を最高レベルに引き上げた。同時に、北朝鮮側へ軍当局間のルートを通じて砲撃中止を要求する通知文を送付した。砲撃は23日午後3時41分ごろに止まり、その後は確認されていない。
延坪島では家屋70棟程度で火災が発生し、複数の地点から炎や黒煙があがった。山火事や停電、通信施設が破損したもようで、24日未明も延焼が続いているとも伝えられる。
同島の住民約1600人は島内の防空壕(ごう)に避難したほか、一部は船で脱出した。2人の行方が未確認だという報道もある。韓国当局は付近の白〓島(ペクリョンド)などの住民にも退避命令を出した。
北朝鮮の朝鮮人民軍最高司令部は23日夕、韓国軍が同日の軍事演習で北朝鮮領海内に砲射撃したと主張したうえで「断固とした軍事的措置をとった」と攻撃を認める声明を発表。韓国が今後も黄海の境界水域で軍事演習を続けるなら「ちゅうちょなく無慈悲な打撃を加える」と警告した。
李明博(イ・ミョンバク)大統領は「北朝鮮の挑発に断固対応する」と述べ、安全保障の関係閣僚会議を招集して対応を協議した。北朝鮮がさらなる挑発に出た場合を想定し、ミサイル基地への攻撃準備を軍に指示した。
韓国青瓦台(大統領府)は23日夕、北朝鮮の砲撃は「韓国に対する明白な武力挑発だ」と言明。「民間人にまで無差別砲撃を行ったことは決して容認できない」と強く非難する声明を発表した。
▼延坪島(ヨンピョンド) 韓国と北朝鮮の海上の境界である北方限界線(NLL)近くに位置する島。仁川広域市に属し、ソウルからの直線距離は約110キロメートル。NLLまでは十数キロメートル。砲撃を受けた大延坪島と南側の小延坪島があり、面積は大延坪島が約7平方キロメートルで小延坪島が約0・24平方キロメートル。周辺にワタリガニなどの豊かな漁場を抱え、人口は計1600人前後。大部分が大延坪島に暮らし、小中高校もある。
北朝鮮の警備艇や漁船のNLL侵犯が散発していることから、韓国軍は防衛上の要所として海兵隊を常駐させている。北朝鮮は今年1月下旬と8月上旬にも延坪島付近へ砲撃した。韓国国防省は今年に入り島内に野砲や短距離ミサイルの発射地点を特定できる対砲レーダーを固定配置。自走砲「K9」も増強していた。
:2010:11/22/09:29 ++ 日立ハイテクなど、イトカワ微粒子の解析本格化、日本企業の技術活躍。
探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から持ち帰った微粒子の解析が本格化する。これまで粒子の正体を明らかにしたのが、日立ハイテクノロジーズなど日本企業の分析技術。年明けからは、理化学研究所の大型放射光施設「SPring―8」でも調べる。微粒子は地球を含む太陽系誕生の手掛かりを秘める。人類が夢見た壮大な謎解きが日本主導で始まる。
「SPring―8」では、微粒子に強烈なエックス線をぶつける。元素の種類ごとに、波長の違う蛍光エックス線が出る。元素の割合からは、イトカワの成り立ちが分かる。微粒子を薄く切断する分析も計画。含有鉱物の形は、いつどのように固まったのかを物語る。太陽系誕生の46億年の歴史をさかのぼれる。
微粒子を回収した宇宙航空研究開発機構(JAXA)を特別な設備で支えたのが、日立ハイテクノロジーズ。
不純物を監視する装置など「決して地球上の物質が混ざらないよう、細心の注意を払った」(大木博・コーポレート技師長)。
物質を特定したのも同社の電子顕微鏡。世界最高水準の細かさで分析。鉄などから、地球外物質と断定した。
微粒子を集めたヘラは日立製作所中央研究所が開発した。
はやぶさの観測データも決め手になった。明星電気の「エックス線分光装置」は、イトカワに当たって反射したエックス線を観測。
田口孝治・品質保証本部長は「イトカワ表面の微妙な元素の違いを識別できた」と語る。日本の分析技術が世界初の成果を後押しする。
「SPring―8」では、微粒子に強烈なエックス線をぶつける。元素の種類ごとに、波長の違う蛍光エックス線が出る。元素の割合からは、イトカワの成り立ちが分かる。微粒子を薄く切断する分析も計画。含有鉱物の形は、いつどのように固まったのかを物語る。太陽系誕生の46億年の歴史をさかのぼれる。
微粒子を回収した宇宙航空研究開発機構(JAXA)を特別な設備で支えたのが、日立ハイテクノロジーズ。
不純物を監視する装置など「決して地球上の物質が混ざらないよう、細心の注意を払った」(大木博・コーポレート技師長)。
物質を特定したのも同社の電子顕微鏡。世界最高水準の細かさで分析。鉄などから、地球外物質と断定した。
微粒子を集めたヘラは日立製作所中央研究所が開発した。
はやぶさの観測データも決め手になった。明星電気の「エックス線分光装置」は、イトカワに当たって反射したエックス線を観測。
田口孝治・品質保証本部長は「イトカワ表面の微妙な元素の違いを識別できた」と語る。日本の分析技術が世界初の成果を後押しする。
:2010:11/22/09:23 ++ 大阪府大、リチウムイオン電池、ナトリウムで代替、輸入依存脱却へ。
大阪府立大学の辰巳砂昌弘教授や林晃敏・助教は、電気自動車など向けのリチウムイオン電池に代わる新たな電池材料を開発した。食塩にも含まれる安価なナトリウムを使い、輸入に頼るリチウムが不要。充電池で一般的な液体材料も全廃し、固体材料だけで安全で安価な電池が作れる可能性がある。24日から仙台市で開く固体イオニクス討論会で発表する。
リチウムは産出国が限られ、資源リスクが高い。電気自動車の普及が期待され、安価な物質への代替が期待されていた。
硫化ナトリウムと硫化リンを破砕してガラス化し、加熱して結晶にした。従来の同様の材料よりも、ナトリウムイオンが約10倍流れやすく、電気を生む電解質という材料に使える。金属電極などを組み合わせれば、新型の全固体電池ができる。
現在のナトリウム硫黄電池は、電解質は固体材料だが液体のナトリウムを使うので、セ氏約300度に加熱が必要だ。
リチウムは産出国が限られ、資源リスクが高い。電気自動車の普及が期待され、安価な物質への代替が期待されていた。
硫化ナトリウムと硫化リンを破砕してガラス化し、加熱して結晶にした。従来の同様の材料よりも、ナトリウムイオンが約10倍流れやすく、電気を生む電解質という材料に使える。金属電極などを組み合わせれば、新型の全固体電池ができる。
現在のナトリウム硫黄電池は、電解質は固体材料だが液体のナトリウムを使うので、セ氏約300度に加熱が必要だ。
:2010:11/22/09:05 ++ 描けぬ「柳田辞任後」、与野党、補正・仙谷氏ら問責で攻防、折衝の窓口役も不在。
国会答弁を軽視するような発言をした柳田稔法相の進退問題を巡る与野党の駆け引きは、事実上、法相の「辞任後」をにらんだ展開になっている。民主党は仙谷由人官房長官らへの飛び火を防ぎ今年度補正予算案や菅政権への影響を最小限に抑えたい考え。攻勢を強める自民党も補正と絡めた問責戦術に慎重な公明党との共闘に腐心する。与野党の交渉窓口も機能しておらず、双方ともに展望を描けていない。(1面参照)
「なかなか(タイミングなどの)判断がつかない。次から次へと出てくるだろ」。21日夜、首相公邸での菅直人首相と民主党幹部らの協議後、出席者の一人は嘆息した。
協議で話題になったのは、法相辞任後も野党が仙谷長官、馬淵澄夫国土交通相らへの問責決議案を連発するケース。政権の要である仙谷氏まで辞任に追い込まれれば政権の打撃は計り知れない。仙谷氏らが問責可決後も留任しても、野党が反発したまま来年1月の通常国会にもつれ込めば来年度予算案や関連法案の行方まで不透明となる。
岡田克也幹事長は21日のNHK番組で「(問責決議案の対象を)2人、3人などと具体名を挙げる自民党幹部もいる。補正予算を人質に取るようなやり方は認められない」とけん制した。そこには法相辞任と引き換えに、野党から補正の早期成立への確約を引き出す民主党の戦術が透ける。とはいえ、民主党執行部は自公両党幹部とのパイプが細く、水面下の腹合わせはできていない。首相周辺の一人は「もう与野党の我慢比べだ」とこぼす。
野党側も法相以外の閣僚への問責決議案の対応など「法相辞任後」では足並みがそろわない。
自民党の石原伸晃幹事長は同じ番組で、仙谷長官と馬淵国交相への問責決議案についても「しっかりただしていかないといけない」と提出する方針を表明した。当初、与党内には「早期解散を避けたいのが野党の本音」と衆院選準備が遅れる野党の足元を見透かす楽観論もあったが、菅内閣の支持率急落で自民党内に主戦論が強まっている。
これに対し、公明党の井上義久幹事長は同番組で、法相の辞任を求めつつも「補正予算案を人質に取ろうとは思っていない。しかるべき時に採決すべきだ」と自民党とは一線を画した。公明党内では仙谷長官らへの問責決議案も「衆院で賛成した以上、反対はできない」としながらも、補正成立前の連発には、来年4月の統一地方選を前に世論の反発を招きかねないとして慎重論が根強い。
一方、みんなの党の江田憲司幹事長は同番組で、同党単独でも仙谷、馬淵両氏への問責決議案提出の構えを示すなど強硬姿勢をとる。自民党も野党の足並みを意識しながら手探りの戦術を続けざるを得ない状況が続く。
▼問責決議案 首相や閣僚の政治責任を明らかにするため野党が参院に提出する。可決されても法的拘束力はなく、辞任する必要はない。ただ政権運営への影響は大きく、閣僚辞任に追い込まれたケースもある。提案者のほか10人以上の賛同があれば提出できる。
問責決議可決は過去に3例。1998年には額賀福志郎防衛庁長官への問責決議案が可決、1カ月後に辞任した。2008年には福田康夫首相、09年には麻生太郎首相への問責決議案が可決された。福田氏は3カ月後に内閣総辞職、麻生氏は7日後に衆院を解散した。
柳田稔法相が14日に広島市で開いた国政報告会での発言要旨は次の通り。
法相はいいですね。(国会答弁では)2つ覚えておけばいいんですから。「個別の事案についてはお答えを差し控えます」。これはいい文句ですよ。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。だいぶ(この答弁で)切り抜けてまいりましたけど、実際の話、しゃべれない。あとは「法と証拠に基づいて適切にやっております」。まあ何回使ったことか。使うたびに野党からは攻められる。「政治家としての答えじゃないじゃないか」とさんざん怒られている。ただ法相が法を犯してしゃべることはできないという当たり前の話です。「法を守って私は答弁しています」と言ったら「そんな答弁はけしからん。政治家だからもっとしゃべれ」と言われる。そうは言ってもしゃべれないものはしゃべれない。
「なかなか(タイミングなどの)判断がつかない。次から次へと出てくるだろ」。21日夜、首相公邸での菅直人首相と民主党幹部らの協議後、出席者の一人は嘆息した。
協議で話題になったのは、法相辞任後も野党が仙谷長官、馬淵澄夫国土交通相らへの問責決議案を連発するケース。政権の要である仙谷氏まで辞任に追い込まれれば政権の打撃は計り知れない。仙谷氏らが問責可決後も留任しても、野党が反発したまま来年1月の通常国会にもつれ込めば来年度予算案や関連法案の行方まで不透明となる。
岡田克也幹事長は21日のNHK番組で「(問責決議案の対象を)2人、3人などと具体名を挙げる自民党幹部もいる。補正予算を人質に取るようなやり方は認められない」とけん制した。そこには法相辞任と引き換えに、野党から補正の早期成立への確約を引き出す民主党の戦術が透ける。とはいえ、民主党執行部は自公両党幹部とのパイプが細く、水面下の腹合わせはできていない。首相周辺の一人は「もう与野党の我慢比べだ」とこぼす。
野党側も法相以外の閣僚への問責決議案の対応など「法相辞任後」では足並みがそろわない。
自民党の石原伸晃幹事長は同じ番組で、仙谷長官と馬淵国交相への問責決議案についても「しっかりただしていかないといけない」と提出する方針を表明した。当初、与党内には「早期解散を避けたいのが野党の本音」と衆院選準備が遅れる野党の足元を見透かす楽観論もあったが、菅内閣の支持率急落で自民党内に主戦論が強まっている。
これに対し、公明党の井上義久幹事長は同番組で、法相の辞任を求めつつも「補正予算案を人質に取ろうとは思っていない。しかるべき時に採決すべきだ」と自民党とは一線を画した。公明党内では仙谷長官らへの問責決議案も「衆院で賛成した以上、反対はできない」としながらも、補正成立前の連発には、来年4月の統一地方選を前に世論の反発を招きかねないとして慎重論が根強い。
一方、みんなの党の江田憲司幹事長は同番組で、同党単独でも仙谷、馬淵両氏への問責決議案提出の構えを示すなど強硬姿勢をとる。自民党も野党の足並みを意識しながら手探りの戦術を続けざるを得ない状況が続く。
▼問責決議案 首相や閣僚の政治責任を明らかにするため野党が参院に提出する。可決されても法的拘束力はなく、辞任する必要はない。ただ政権運営への影響は大きく、閣僚辞任に追い込まれたケースもある。提案者のほか10人以上の賛同があれば提出できる。
問責決議可決は過去に3例。1998年には額賀福志郎防衛庁長官への問責決議案が可決、1カ月後に辞任した。2008年には福田康夫首相、09年には麻生太郎首相への問責決議案が可決された。福田氏は3カ月後に内閣総辞職、麻生氏は7日後に衆院を解散した。
柳田稔法相が14日に広島市で開いた国政報告会での発言要旨は次の通り。
法相はいいですね。(国会答弁では)2つ覚えておけばいいんですから。「個別の事案についてはお答えを差し控えます」。これはいい文句ですよ。これがいいんです。分からなかったらこれを言う。だいぶ(この答弁で)切り抜けてまいりましたけど、実際の話、しゃべれない。あとは「法と証拠に基づいて適切にやっております」。まあ何回使ったことか。使うたびに野党からは攻められる。「政治家としての答えじゃないじゃないか」とさんざん怒られている。ただ法相が法を犯してしゃべることはできないという当たり前の話です。「法を守って私は答弁しています」と言ったら「そんな答弁はけしからん。政治家だからもっとしゃべれ」と言われる。そうは言ってもしゃべれないものはしゃべれない。
:2010:11/22/09:00 ++ 企業収益試される回復力(下)円高、つめ跡深く―車7社、利益の3分の1失う。
冬用タイヤに強い横浜ゴムはロシアで人気だ。2010年4~9月期(上期)も現地通貨ルーブルベースで販売を伸ばした。ところが円高・ルーブル安で円換算の手取り額が減り、十数億円もの為替差損を被った。
計画4割下回る
芝浦メカトロニクスはウォン安に苦しんだ。価格競争力を強めたライバルの韓国メーカーに押され、上期の受注が期初計画を4割下回った。
上期は幅広い通貨に対して急激に円高が進み、企業収益に広く、深いつめ跡を残した。足元で円高は一服しているものの、前期の平均レート1ドル=約93円に比べれば、まだ10円近い円高だ。
海外生産、割安な海外部品の使用、外貨建て債権と債務の両建てでの保有――企業は円高への対抗策を必死に繰り出している。日立建機は海外生産比率を高めるために欧州で建設機械を増産し、川崎汽船は新造船の代金を一部ドル建てで調達する検討に入った。
さらに進んでいるところもある。NECは輸出主体の半導体事業を分離した今期、対ドルで為替変動の影響額がゼロになり、東芝は円高がプラス要因に転じた。薄型テレビの海外委託生産拡大などが効いている。
雇用との板挟み
だが、こうした例はまだごく少数。例えば自動車大手7社は今期、1ドル=85円前後の各社の想定レートに従うと、円高による営業利益の目減り額が計8160億円に達する。為替変動がなければ稼げたはずの利益の3分の1を失う計算だ。
大和総研の試算によれば、製造業全体が営業赤字となる円ドル相場は1ドル=65円。ただ現状の為替水準でも、収益と雇用の板挟みに多くの企業が苦しんでいる。
新光電気工業は1ドル=80円の前提で、下期の純利益がほぼゼロになる。主力のMPU(超小型演算処理装置)向けICパッケージは少量多品種の高付加価値品。生産の海外移転は容易でない。「4000人の国内雇用を守りたい」(黒岩護社長)との思いも強い。
トヨタ自動車は国内生産の約3分の1に当たる100万台の生産を海外に移すと、社内外で計12万人の国内雇用が消失すると試算する。トヨタ単体の従業員数の約1・7倍だ。小沢哲副社長は5日の決算会見で「今の為替水準は日本経済、少なくともトヨタの競争力を超えている」と訴えた。
技術の流出を避けるため国内生産を貫いてきた東京エレクトロンは10月、ついに海外へかじをきった。コスト削減と中国需要の取り込みを狙い、中国江蘇省に液晶パネル製造装置の生産拠点を建設する。アジアは生産基地とともに一大消費地として台頭。投資環境も改善し、企業の決断ひとつで移転へのハードルは格段に低くなった。
日本企業が国内に持つ資産、国内で稼ぐ利益の割合はともに長期の低下傾向にある。これらデータを開示している企業では、資産の海外比率(集計対象660社)が3分の1を突破、日本で稼ぐ利益の比率(同420社)は10年前の8割から、5割台まで下がった。
「将来の投資先を国内にするか海外にするかは為替が大きく左右する」(富士重工業の高橋充最高財務責任者)。長期的に円高は避けられないと企業が判断すれば、国内産業の空洞化懸念は一段と増す。円高一服とはいえ、今なお、日本経済はその瀬戸際にある。
計画4割下回る
芝浦メカトロニクスはウォン安に苦しんだ。価格競争力を強めたライバルの韓国メーカーに押され、上期の受注が期初計画を4割下回った。
上期は幅広い通貨に対して急激に円高が進み、企業収益に広く、深いつめ跡を残した。足元で円高は一服しているものの、前期の平均レート1ドル=約93円に比べれば、まだ10円近い円高だ。
海外生産、割安な海外部品の使用、外貨建て債権と債務の両建てでの保有――企業は円高への対抗策を必死に繰り出している。日立建機は海外生産比率を高めるために欧州で建設機械を増産し、川崎汽船は新造船の代金を一部ドル建てで調達する検討に入った。
さらに進んでいるところもある。NECは輸出主体の半導体事業を分離した今期、対ドルで為替変動の影響額がゼロになり、東芝は円高がプラス要因に転じた。薄型テレビの海外委託生産拡大などが効いている。
雇用との板挟み
だが、こうした例はまだごく少数。例えば自動車大手7社は今期、1ドル=85円前後の各社の想定レートに従うと、円高による営業利益の目減り額が計8160億円に達する。為替変動がなければ稼げたはずの利益の3分の1を失う計算だ。
大和総研の試算によれば、製造業全体が営業赤字となる円ドル相場は1ドル=65円。ただ現状の為替水準でも、収益と雇用の板挟みに多くの企業が苦しんでいる。
新光電気工業は1ドル=80円の前提で、下期の純利益がほぼゼロになる。主力のMPU(超小型演算処理装置)向けICパッケージは少量多品種の高付加価値品。生産の海外移転は容易でない。「4000人の国内雇用を守りたい」(黒岩護社長)との思いも強い。
トヨタ自動車は国内生産の約3分の1に当たる100万台の生産を海外に移すと、社内外で計12万人の国内雇用が消失すると試算する。トヨタ単体の従業員数の約1・7倍だ。小沢哲副社長は5日の決算会見で「今の為替水準は日本経済、少なくともトヨタの競争力を超えている」と訴えた。
技術の流出を避けるため国内生産を貫いてきた東京エレクトロンは10月、ついに海外へかじをきった。コスト削減と中国需要の取り込みを狙い、中国江蘇省に液晶パネル製造装置の生産拠点を建設する。アジアは生産基地とともに一大消費地として台頭。投資環境も改善し、企業の決断ひとつで移転へのハードルは格段に低くなった。
日本企業が国内に持つ資産、国内で稼ぐ利益の割合はともに長期の低下傾向にある。これらデータを開示している企業では、資産の海外比率(集計対象660社)が3分の1を突破、日本で稼ぐ利益の比率(同420社)は10年前の8割から、5割台まで下がった。
「将来の投資先を国内にするか海外にするかは為替が大きく左右する」(富士重工業の高橋充最高財務責任者)。長期的に円高は避けられないと企業が判断すれば、国内産業の空洞化懸念は一段と増す。円高一服とはいえ、今なお、日本経済はその瀬戸際にある。
:2010:11/19/09:20 ++ 第1部電機の選択(4)ポスト液晶に照準―「3D越え」に挑む(テレビが変わる)
11月初め。独立行政法人の情報通信研究機構けいはんな研究所(京都府)に集まった一般の親子らが、世界初の“完全立体動画”に目を丸くした。テーブルの上で、立体的に浮かび上がった少年がサッカーボールを勢いよくシュートする。「映画で見た世界が現実になった」
繰り返す逆転劇
100台超のプロジェクターと特殊なスクリーンを使い、そこに少年が生きているかのような空間を光で作り出す。「原理は確認できた。投資して作りこめばきれいな映像を作れる」(超臨場感システムグループの吉田俊介専攻研究員)。電機、素材メーカーから相次ぎ共同研究を持ちかけられ、今夏以降、技術協力が始まっている。
テレビを巡るメーカーの覇権争いはオセロゲームのように逆転劇を繰り返してきた。1970年代にブラウン管技術とコスト力で米国勢を撤退に追い込んだ日本メーカー。30年間もの黄金期を経て、薄型テレビの波に乗った韓国勢に一気に抜かれた。背中は遠のくばかりだが、日本勢がオセロを再び反転させることはできるのか。
手掛かりはいくつかある。一つは世界の先端を走る完全立体テレビで、主導権獲得に向けた10年単位の長期戦が始まった。もう少し近い時間軸でも日本勢は逆転のチャンスをうかがう。ネット経由でアプリケーションソフトを取り込み機能を進化させるインターネットテレビだ。
11月11日、東芝の技術の総本山である研究開発センター(川崎市)を佐々木則夫社長が訪れた。毎年恒例の研究成果説明会。「近未来のテレビは高度な認識技術がカギになります」。ネットや放送波から届いた動画中の人物の表情や声をテレビが瞬時に認識する技術が披露された。
笑っているのか怒っているのか。年齢層は。その人は誰なのか。テレビに映る人や、反対にテレビを見ている人の属性がわかる機能を、テレビ内部にあらかじめ埋め込んでおく。
そうすれば世界中のソフト会社が30万種もの専用アプリケーションを開発した米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」のように、「認識技術を使ったアプリが次々生まれる」(東芝)とみる。例えば、あらかじめテレビに取り込んだ自分の画像とドラマの女優を入れ替えてヒロインに成り代わることもできる。
10月、デジタル機器の見本市が開かれた幕張メッセ(千葉市)のメーン会場は、薄型ディスプレーを使った3次元(3D)テレビ一色に染まった。その数日後、米調査会社ガートナーが発表した「先端技術の成熟度調査」で3Dディスプレー技術は「過度な期待のピーク」に位置付けられた。来年には「幻滅期」に入り消費者に驚きと新鮮さを与えるのは難しくなる。
速まる陳腐化
実際、2013年には世界の薄型テレビの約10%が3D対応となる見通しで、すでに国内の平均店頭価格は半年前に比べ約5割下落した。新技術が陳腐化するスピードはかつてなく速い。
自らが切り開いた薄型テレビという市場でじり貧を強いられている日本の電機メーカー。巨額なパネル投資競争に吹き付けた円高の逆風や、製造技術の流出、新興国市場での出遅れなどが響いた。それらの教訓を生かし、従来のテレビの枠を超えた映像技術やサービスをもう一度生み出せるか、電機産業復活のカギがそこにある。(第1部おわり)
繰り返す逆転劇
100台超のプロジェクターと特殊なスクリーンを使い、そこに少年が生きているかのような空間を光で作り出す。「原理は確認できた。投資して作りこめばきれいな映像を作れる」(超臨場感システムグループの吉田俊介専攻研究員)。電機、素材メーカーから相次ぎ共同研究を持ちかけられ、今夏以降、技術協力が始まっている。
テレビを巡るメーカーの覇権争いはオセロゲームのように逆転劇を繰り返してきた。1970年代にブラウン管技術とコスト力で米国勢を撤退に追い込んだ日本メーカー。30年間もの黄金期を経て、薄型テレビの波に乗った韓国勢に一気に抜かれた。背中は遠のくばかりだが、日本勢がオセロを再び反転させることはできるのか。
手掛かりはいくつかある。一つは世界の先端を走る完全立体テレビで、主導権獲得に向けた10年単位の長期戦が始まった。もう少し近い時間軸でも日本勢は逆転のチャンスをうかがう。ネット経由でアプリケーションソフトを取り込み機能を進化させるインターネットテレビだ。
11月11日、東芝の技術の総本山である研究開発センター(川崎市)を佐々木則夫社長が訪れた。毎年恒例の研究成果説明会。「近未来のテレビは高度な認識技術がカギになります」。ネットや放送波から届いた動画中の人物の表情や声をテレビが瞬時に認識する技術が披露された。
笑っているのか怒っているのか。年齢層は。その人は誰なのか。テレビに映る人や、反対にテレビを見ている人の属性がわかる機能を、テレビ内部にあらかじめ埋め込んでおく。
そうすれば世界中のソフト会社が30万種もの専用アプリケーションを開発した米アップルの高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」のように、「認識技術を使ったアプリが次々生まれる」(東芝)とみる。例えば、あらかじめテレビに取り込んだ自分の画像とドラマの女優を入れ替えてヒロインに成り代わることもできる。
10月、デジタル機器の見本市が開かれた幕張メッセ(千葉市)のメーン会場は、薄型ディスプレーを使った3次元(3D)テレビ一色に染まった。その数日後、米調査会社ガートナーが発表した「先端技術の成熟度調査」で3Dディスプレー技術は「過度な期待のピーク」に位置付けられた。来年には「幻滅期」に入り消費者に驚きと新鮮さを与えるのは難しくなる。
速まる陳腐化
実際、2013年には世界の薄型テレビの約10%が3D対応となる見通しで、すでに国内の平均店頭価格は半年前に比べ約5割下落した。新技術が陳腐化するスピードはかつてなく速い。
自らが切り開いた薄型テレビという市場でじり貧を強いられている日本の電機メーカー。巨額なパネル投資競争に吹き付けた円高の逆風や、製造技術の流出、新興国市場での出遅れなどが響いた。それらの教訓を生かし、従来のテレビの枠を超えた映像技術やサービスをもう一度生み出せるか、電機産業復活のカギがそこにある。(第1部おわり)
:2010:11/19/08:52 ++ 日経平均1万円台回復、5ヵ月ぶり、緩和マネー流入―円高一服も下支え。
米国の追加金融緩和で膨張した投資マネーが世界的に出遅れ感の強い日本株を押し上げている。18日の東京株式市場で日経平均株価は大幅続伸し、6月22日以来約5カ月ぶりに1万円台を回復した。海外の機関投資家などが、利上げ懸念などで不安定さを増している中国など新興国から日本株に資金をシフトしているためだ。円高一服も追い風となった。ただ欧州の財政不安などがくすぶっており、先行きに対する見方は分かれている。(関連記事3面に)
日経平均の終値は前日比201円97銭(2・06%)高の1万0013円63銭。18日は午後に入って日経平均が急速に上げ幅を拡大し、取引時間終了直前に1万円台に乗せた。「生命保険会社など国内投資家の売りを上回る勢いで、海外勢の買いが入った」(銀行系証券の株式営業責任者)
特に目立ったのが株価が金融環境に左右されやすい金融株への買いで、三菱UFJフィナンシャル・グループが前日比4・3%上昇するなど銀行株が軒並み高となった。円高一服の恩恵を受ける自動車、電機なども上げ、全面高となった。
日本株の反転のきっかけとなったのが、3日の米追加金融緩和だ。日経平均は米国が緩和に踏み切る直前の2日と比べて、853円(9・3%)上昇しており、米英中など主要国のなかで最も上昇率が大きい。
中国など新興国が、金融緩和で膨らんだ投資マネーの急激な流入による副作用を避けるため利上げするとの懸念が急浮上している。中国・上海株が2日から5・9%下落するなどアジア株の調整が加速。アイルランドなど欧州の一部で財政・金融不安が再燃したことも影響し、海外勢が日本株に投資先を切り替える動きが広がっているようだ。
東京証券取引所によると海外投資家は11月に入って2週連続で日本株を買い越しており、金額は約2700億円にのぼる。米金融大手ゴールドマン・サックスは15日、アジアにおける日本株への資金配分の推奨比率を引き上げた。今後も海外投資家の資金流入が続く可能性がある。
円高一服も株価を支えた。米国で追加緩和後に経済指標の改善から長期金利が上昇している。日米の金利差拡大を背景に円相場は1ドル=83円台まで下落。投資家の間では「想定為替レートを円高方向で見直した企業が多く、円相場が現状の水準で推移すれば、輸出企業の業績にはプラスになる」(ベアリング投信投資顧問の溜学運用本部部長)との見方が広がる。
投資家が注目するのが欧州の財政問題や、クリスマス商戦など米景気の動向。「米景気の回復はまだ楽観できず、株価が本格上昇するのは来年に入ってから」(大和証券投資信託委託の長野吉納シニア・ストラテジスト)との慎重な見方もある。
日経平均の終値は前日比201円97銭(2・06%)高の1万0013円63銭。18日は午後に入って日経平均が急速に上げ幅を拡大し、取引時間終了直前に1万円台に乗せた。「生命保険会社など国内投資家の売りを上回る勢いで、海外勢の買いが入った」(銀行系証券の株式営業責任者)
特に目立ったのが株価が金融環境に左右されやすい金融株への買いで、三菱UFJフィナンシャル・グループが前日比4・3%上昇するなど銀行株が軒並み高となった。円高一服の恩恵を受ける自動車、電機なども上げ、全面高となった。
日本株の反転のきっかけとなったのが、3日の米追加金融緩和だ。日経平均は米国が緩和に踏み切る直前の2日と比べて、853円(9・3%)上昇しており、米英中など主要国のなかで最も上昇率が大きい。
中国など新興国が、金融緩和で膨らんだ投資マネーの急激な流入による副作用を避けるため利上げするとの懸念が急浮上している。中国・上海株が2日から5・9%下落するなどアジア株の調整が加速。アイルランドなど欧州の一部で財政・金融不安が再燃したことも影響し、海外勢が日本株に投資先を切り替える動きが広がっているようだ。
東京証券取引所によると海外投資家は11月に入って2週連続で日本株を買い越しており、金額は約2700億円にのぼる。米金融大手ゴールドマン・サックスは15日、アジアにおける日本株への資金配分の推奨比率を引き上げた。今後も海外投資家の資金流入が続く可能性がある。
円高一服も株価を支えた。米国で追加緩和後に経済指標の改善から長期金利が上昇している。日米の金利差拡大を背景に円相場は1ドル=83円台まで下落。投資家の間では「想定為替レートを円高方向で見直した企業が多く、円相場が現状の水準で推移すれば、輸出企業の業績にはプラスになる」(ベアリング投信投資顧問の溜学運用本部部長)との見方が広がる。
投資家が注目するのが欧州の財政問題や、クリスマス商戦など米景気の動向。「米景気の回復はまだ楽観できず、株価が本格上昇するのは来年に入ってから」(大和証券投資信託委託の長野吉納シニア・ストラテジスト)との慎重な見方もある。
:2010:11/18/09:40 ++ 法相問責案、自民が検討、答弁軽視発言、野党に追及論拡大――国会運営、新たな火種。
自民党は17日、国会答弁を軽視するような発言をした柳田稔法相の問責決議案を参院に提出する検討に入った。菅直人首相や仙谷由人官房長官は法相への厳重注意で事態を収拾する考えだが、責任追及の声は他の野党にも広がっており、国会運営の新たな火種になってきた。
自民党の石破茂政調会長は記者会見で「一日も早く職を辞してもらうのが国家のためだ」と問責提出を示唆した。自民党の衛藤晟一氏は参院予算委で「問責に値する」と追及、法相は「思慮が足りなかった」と防戦に追われた。
問題の法相発言は「法相は2つ覚えておけばいい。『個別事案は答えを差し控える』と『法と証拠に基づいて適切に対応する』だ」。14日、地元の広島の会合で飛び出した。
厳重注意に謝罪
自民党はすでに尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の映像流出問題で、仙谷長官や馬淵澄夫国土交通相の問責提出を検討している。法相に飛び火すれば政権にとって大きな打撃になる。
首相は首相官邸に法相を呼び「国会答弁に十分注意し、真摯(しんし)かつ誠実に対応するように」とクギを刺した。仙谷長官も「大変軽率で不信を呼ぶ発言だ」と厳重注意し、法相は「誠に申し訳ない。深く考えずに身内の会合で軽口をたたいてしまい、誤解を招いた」と謝罪した。
首相は法相の責任について、記者団に「これからしっかり誠意を持って真摯に答えることに尽きる」と強調。仙谷長官も「資質に問題があるとは考えていない」と続投は当然との見方を示した。
ただ法相批判は自民党以外にも広がりつつある。みんなの党の渡辺喜美代表は国会内で記者団に「自ら職を辞すべし。それでも大臣に固執するなら問責も方法の一つだ」と明言。公明党の山口那津男代表は党参院議員総会で「あまりに軽率な発言。弛緩(しかん)していると言わざるをえない」と批判した。
防衛相発言でも
野党が問題視する閣僚の発言は法相にとどまらない。防衛省が事務次官名で出した政治的発言を事実上制限する通達を巡り、北沢俊美防衛相は17日の参院予算委で「自民党の内閣でも多分同じことをしていただろう」と発言。自民党の衛藤氏が激高し、取り消しを要求したため、北沢氏は「(審議を)混乱させるのなら撤回する」との答弁を余儀なくされた。
首相は記者団に、防衛次官の通達に関して「誤解を受けることのないよう注意することが必要だ」と述べるにとどめた。
自民党の脇雅史参院国会対策委員長は17日、民主党の羽田雄一郎参院国対委員長に「参院で(仙谷、馬淵両氏の)問責決議案を出す方向になる」と伝えた。これに関連し、新党改革の舛添要一代表は「官房長官の責任を問うより首相の責任を問うほうが筋が通っている」との考えを示した。
自民党の石破茂政調会長は記者会見で「一日も早く職を辞してもらうのが国家のためだ」と問責提出を示唆した。自民党の衛藤晟一氏は参院予算委で「問責に値する」と追及、法相は「思慮が足りなかった」と防戦に追われた。
問題の法相発言は「法相は2つ覚えておけばいい。『個別事案は答えを差し控える』と『法と証拠に基づいて適切に対応する』だ」。14日、地元の広島の会合で飛び出した。
厳重注意に謝罪
自民党はすでに尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の映像流出問題で、仙谷長官や馬淵澄夫国土交通相の問責提出を検討している。法相に飛び火すれば政権にとって大きな打撃になる。
首相は首相官邸に法相を呼び「国会答弁に十分注意し、真摯(しんし)かつ誠実に対応するように」とクギを刺した。仙谷長官も「大変軽率で不信を呼ぶ発言だ」と厳重注意し、法相は「誠に申し訳ない。深く考えずに身内の会合で軽口をたたいてしまい、誤解を招いた」と謝罪した。
首相は法相の責任について、記者団に「これからしっかり誠意を持って真摯に答えることに尽きる」と強調。仙谷長官も「資質に問題があるとは考えていない」と続投は当然との見方を示した。
ただ法相批判は自民党以外にも広がりつつある。みんなの党の渡辺喜美代表は国会内で記者団に「自ら職を辞すべし。それでも大臣に固執するなら問責も方法の一つだ」と明言。公明党の山口那津男代表は党参院議員総会で「あまりに軽率な発言。弛緩(しかん)していると言わざるをえない」と批判した。
防衛相発言でも
野党が問題視する閣僚の発言は法相にとどまらない。防衛省が事務次官名で出した政治的発言を事実上制限する通達を巡り、北沢俊美防衛相は17日の参院予算委で「自民党の内閣でも多分同じことをしていただろう」と発言。自民党の衛藤氏が激高し、取り消しを要求したため、北沢氏は「(審議を)混乱させるのなら撤回する」との答弁を余儀なくされた。
首相は記者団に、防衛次官の通達に関して「誤解を受けることのないよう注意することが必要だ」と述べるにとどめた。
自民党の脇雅史参院国会対策委員長は17日、民主党の羽田雄一郎参院国対委員長に「参院で(仙谷、馬淵両氏の)問責決議案を出す方向になる」と伝えた。これに関連し、新党改革の舛添要一代表は「官房長官の責任を問うより首相の責任を問うほうが筋が通っている」との考えを示した。
:2010:11/17/16:27 ++ 「イトカワ」での採取確認、宇宙の謎秘める砂粒、太陽系の解明に期待。
日本の探査機「はやぶさ」が地球から約3億キロメートル離れた小惑星「イトカワ」から小さな砂粒を持ち帰ることに成功した。宇宙のこれだけ離れた天体から物質を持ち帰ったのは人類初だ。回収した微粒子は地球や火星を含む太陽系が46億年前に誕生した当時の状態をとどめていると考えられる。成り立ちを詳しく調べれば、地球や生命がどのように誕生したかという人類にとって根源的な謎を解くカギが得られる。
小惑星は地球に落ちてくる隕石(いんせき)のもとにもなる小さな天体だ。イトカワはラッコがあおむけになっているような形をしており、地球と同じように太陽の周りを回っている。軌道は地球と火星の間を通る。太陽系誕生のきっかけになった星の爆発が起きた時に、散らばった大量のがれきが集まってできたとされる。
火山活動がなく、内部で化学反応なども起きていないため現在まで46億年間、できた当時の状態を保っている。いわば太陽系の「化石」だ。はやぶさが地球に持ち帰った微粒子は、その化石の一部にあたる。
隕石にない価値
イトカワの微粒子の分析からは、南極などで見つかっている隕石を調べても分からないことが判明するとの期待が大きい。「隕石は地球を覆う大気圏を突破する過程で高温にさらされる」(宇宙航空研究開発機構=JAXA=の藤村彰夫教授)ため、性質が変化してしまうことが多いからだ。隕石がどこからやってきたか分からず、研究材料としての価値が薄れてしまう場合もある。
はやぶさのカプセルに入っていた微粒子は大きさが0・01ミリメートル程度と極めて小さく、肉眼では見えない。フッ素樹脂の特殊なへらで丁寧に取り出して電子顕微鏡で観察した。今のところ「未知の物質」は見つかっていない。一般的な鉱物として知られる「かんらん石」と「輝石」の粒が際立って多かった。
これらは高温のマグマが冷え固まってでき、地球にも多く存在する。ただ、主要成分の鉄とマグネシウムの割合を調べると鉄の割合が地球の鉱物に比べ2倍以上と高く、隕石に近かった。
この割合は、はやぶさがイトカワの上を飛びながら観測した表面物質のデータともほぼ同じだった。カプセルから取り出せた1500個の微粒子を1つずつ調べ、すべて同様の傾向だったため、イトカワの粒子であると結論づけた。
特殊な光で分析
今後、微粒子の一部は理化学研究所の大型実験施設「SPring―8」(兵庫県佐用町)に運ぶ。ここで放射光と呼ばれる特殊な光を当てて詳しい分析をする。時間とともに起きる内部の変化を読み取れるので、微粒子がいつできたのかを判定できると期待される。
微粒子をスライスして結晶構造も調べ、生成時の温度など周辺環境も明らかにする。こうした分析の結果が出るのは来年1月以降の見通しだ。
JAXAの阪本成一教授は太陽系の起源解明に挑む理由について「地球がどのようにできたのか知ろうとするのは、まさに(高い知能を持つ)人間だからこそ」と強調する。地球を含む宇宙を知ろうとする知的探求心の中で様々な物理法則が発見され、現在のハイテク機器の誕生にもつながった。はやぶさはそうした科学探究の歴史に新たな一ページを加えた。
小惑星は地球に落ちてくる隕石(いんせき)のもとにもなる小さな天体だ。イトカワはラッコがあおむけになっているような形をしており、地球と同じように太陽の周りを回っている。軌道は地球と火星の間を通る。太陽系誕生のきっかけになった星の爆発が起きた時に、散らばった大量のがれきが集まってできたとされる。
火山活動がなく、内部で化学反応なども起きていないため現在まで46億年間、できた当時の状態を保っている。いわば太陽系の「化石」だ。はやぶさが地球に持ち帰った微粒子は、その化石の一部にあたる。
隕石にない価値
イトカワの微粒子の分析からは、南極などで見つかっている隕石を調べても分からないことが判明するとの期待が大きい。「隕石は地球を覆う大気圏を突破する過程で高温にさらされる」(宇宙航空研究開発機構=JAXA=の藤村彰夫教授)ため、性質が変化してしまうことが多いからだ。隕石がどこからやってきたか分からず、研究材料としての価値が薄れてしまう場合もある。
はやぶさのカプセルに入っていた微粒子は大きさが0・01ミリメートル程度と極めて小さく、肉眼では見えない。フッ素樹脂の特殊なへらで丁寧に取り出して電子顕微鏡で観察した。今のところ「未知の物質」は見つかっていない。一般的な鉱物として知られる「かんらん石」と「輝石」の粒が際立って多かった。
これらは高温のマグマが冷え固まってでき、地球にも多く存在する。ただ、主要成分の鉄とマグネシウムの割合を調べると鉄の割合が地球の鉱物に比べ2倍以上と高く、隕石に近かった。
この割合は、はやぶさがイトカワの上を飛びながら観測した表面物質のデータともほぼ同じだった。カプセルから取り出せた1500個の微粒子を1つずつ調べ、すべて同様の傾向だったため、イトカワの粒子であると結論づけた。
特殊な光で分析
今後、微粒子の一部は理化学研究所の大型実験施設「SPring―8」(兵庫県佐用町)に運ぶ。ここで放射光と呼ばれる特殊な光を当てて詳しい分析をする。時間とともに起きる内部の変化を読み取れるので、微粒子がいつできたのかを判定できると期待される。
微粒子をスライスして結晶構造も調べ、生成時の温度など周辺環境も明らかにする。こうした分析の結果が出るのは来年1月以降の見通しだ。
JAXAの阪本成一教授は太陽系の起源解明に挑む理由について「地球がどのようにできたのか知ろうとするのは、まさに(高い知能を持つ)人間だからこそ」と強調する。地球を含む宇宙を知ろうとする知的探求心の中で様々な物理法則が発見され、現在のハイテク機器の誕生にもつながった。はやぶさはそうした科学探究の歴史に新たな一ページを加えた。
:2010:11/17/16:10 ++ 第6部奪い合いの先に(2)求むインド人2万人(企業強さの条件)
多国籍集団育てて動かす
「給料は下がるのか」――。10月5日、日産自動車九州工場(福岡県苅田町)の従業員3600人に動揺が広がった。日産は同日、九州工場の分社化検討を発表。当面は現行の賃金水準を維持するとしているが、「国内生産と雇用維持のため総コストを最適化する」(生産担当副社長の今津英敏、61)との言葉に人件費見直しの覚悟がにじむ。
タイ工場に敗北
日産は新型車生産を希望する世界各地の工場を競わせる「工場間コンペ」を導入。評価基準のうち品質は内外で差が縮小し、コスト差が決め手になる。小型車「マーチ」の生産地決定で国内工場は「100万円を切る価格を実現できない」とタイに敗れた。
国内工場はハンディも負う。タイなど新興国は日本に先駆け自由貿易協定(FTA)の輪を広げる。日本からの輸出には関税がのしかかる。日産労組書記長の大喜多宏行(40)は「新興国との工場間競争に勝ち、日本でもの作りを続けるためには貿易自由化を急いでほしい」と訴える。
国境を越え、世界最適の人材戦略を探る企業。「国内工場だから」と特別視はできない。環太平洋経済連携協定(TPP)参加に向けた協議開始で、日本は「平成の開国」へ一歩を踏み出す。ただ開国が必要なのはモノの流れだけではない。激しいグローバル競争に直面する企業は人材の多国籍化にひた走る。
「このままでは日本の顧客まで米IBMに奪われかねない」。1100億円を投じて米IT(情報技術)企業キーンを買収するNTTデータ。交渉を指揮した副社長、榎本隆(57)の背中を押したのは強い危機感だ。競り合った日立製作所を最後で振り切った。
キーンは5千人のインド人技術者を抱える。高い技能を持ちながら人件費は日本人の2~3割。IBMはインドの大学に社員を講師として派遣し新卒者を大量に囲い込む。情報システムの低価格競争を勝ち抜くにはインド人争奪戦に身を投じるしかない。
3年前はゼロだったNTTデータのインド人技術者は今回の買収で計7千人に膨らむ。「日本人と同じ2万人まで増やす」と榎本。円高を追い風に次の企業買収の検討に入った。
日本郵船の人材戦略が来年、新段階に入る。2007年にフィリピンに開いた商船大学の第1期生120人が卒業し船に乗り込む。将来は船長、1等航海士など上級職に登用する。
海運不況を乗り越えた同社の外国人船員比率は95%。船員を束ねる上級職の引き抜きは日常茶飯事だ。幹部候補を自ら育て、現場で成長の機会を与えて力を引き出す。「フィリピン人船長の下で日本人が働くことが当たり前になる」。社長の工藤泰三(58)は社内に意識改革を促す。
人材開国は日本人の市場価値低下を意味しない。海外受注高が9割に達する日揮で、日本人社員を鍛える取り組みが始まった。
今春以降、20歳代の若手社員40人が中東や豪州に散っていった。約半年間、建設チームの一員として働く。サウジアラビアのエチレンプラント建設現場に派遣されて5カ月の田中将博(29)は「工期が遅れないようにと緊張の連続」と話す。トラブル発生時の解決策は常に即断即決。難しさ、面白さを肌で感じる。
日本の強み浸透
今後5年で日揮は海外人材を1800人増やす。国内は据え置くが、日本人の活躍の場は広がる。08年にサウジに設立したプラント工事会社JGCガルフインターナショナル。550人の多国籍集団を51人の日本人技術者が率いる。脱石油の産業づくりを急ぐサウジ政府の要請を受け、品質確保や工程管理など日本企業の強みを浸透させた。世界の大手を向こうに、10年度は受注高250億円を見込む。その成長ぶりに現地で就職人気が高まる。
企業の人材戦略は新興国人材をかき集めるだけでは終わらない。現地に根を張り、長期の視点で人材を育てる。「奪い合い」に負けない日本流の手法がここにある。(敬称略)
「給料は下がるのか」――。10月5日、日産自動車九州工場(福岡県苅田町)の従業員3600人に動揺が広がった。日産は同日、九州工場の分社化検討を発表。当面は現行の賃金水準を維持するとしているが、「国内生産と雇用維持のため総コストを最適化する」(生産担当副社長の今津英敏、61)との言葉に人件費見直しの覚悟がにじむ。
タイ工場に敗北
日産は新型車生産を希望する世界各地の工場を競わせる「工場間コンペ」を導入。評価基準のうち品質は内外で差が縮小し、コスト差が決め手になる。小型車「マーチ」の生産地決定で国内工場は「100万円を切る価格を実現できない」とタイに敗れた。
国内工場はハンディも負う。タイなど新興国は日本に先駆け自由貿易協定(FTA)の輪を広げる。日本からの輸出には関税がのしかかる。日産労組書記長の大喜多宏行(40)は「新興国との工場間競争に勝ち、日本でもの作りを続けるためには貿易自由化を急いでほしい」と訴える。
国境を越え、世界最適の人材戦略を探る企業。「国内工場だから」と特別視はできない。環太平洋経済連携協定(TPP)参加に向けた協議開始で、日本は「平成の開国」へ一歩を踏み出す。ただ開国が必要なのはモノの流れだけではない。激しいグローバル競争に直面する企業は人材の多国籍化にひた走る。
「このままでは日本の顧客まで米IBMに奪われかねない」。1100億円を投じて米IT(情報技術)企業キーンを買収するNTTデータ。交渉を指揮した副社長、榎本隆(57)の背中を押したのは強い危機感だ。競り合った日立製作所を最後で振り切った。
キーンは5千人のインド人技術者を抱える。高い技能を持ちながら人件費は日本人の2~3割。IBMはインドの大学に社員を講師として派遣し新卒者を大量に囲い込む。情報システムの低価格競争を勝ち抜くにはインド人争奪戦に身を投じるしかない。
3年前はゼロだったNTTデータのインド人技術者は今回の買収で計7千人に膨らむ。「日本人と同じ2万人まで増やす」と榎本。円高を追い風に次の企業買収の検討に入った。
日本郵船の人材戦略が来年、新段階に入る。2007年にフィリピンに開いた商船大学の第1期生120人が卒業し船に乗り込む。将来は船長、1等航海士など上級職に登用する。
海運不況を乗り越えた同社の外国人船員比率は95%。船員を束ねる上級職の引き抜きは日常茶飯事だ。幹部候補を自ら育て、現場で成長の機会を与えて力を引き出す。「フィリピン人船長の下で日本人が働くことが当たり前になる」。社長の工藤泰三(58)は社内に意識改革を促す。
人材開国は日本人の市場価値低下を意味しない。海外受注高が9割に達する日揮で、日本人社員を鍛える取り組みが始まった。
今春以降、20歳代の若手社員40人が中東や豪州に散っていった。約半年間、建設チームの一員として働く。サウジアラビアのエチレンプラント建設現場に派遣されて5カ月の田中将博(29)は「工期が遅れないようにと緊張の連続」と話す。トラブル発生時の解決策は常に即断即決。難しさ、面白さを肌で感じる。
日本の強み浸透
今後5年で日揮は海外人材を1800人増やす。国内は据え置くが、日本人の活躍の場は広がる。08年にサウジに設立したプラント工事会社JGCガルフインターナショナル。550人の多国籍集団を51人の日本人技術者が率いる。脱石油の産業づくりを急ぐサウジ政府の要請を受け、品質確保や工程管理など日本企業の強みを浸透させた。世界の大手を向こうに、10年度は受注高250億円を見込む。その成長ぶりに現地で就職人気が高まる。
企業の人材戦略は新興国人材をかき集めるだけでは終わらない。現地に根を張り、長期の視点で人材を育てる。「奪い合い」に負けない日本流の手法がここにある。(敬称略)
:2010:11/12/10:49 ++ 波立つアジアG20からAPEC(上)米中、緊張はらむ共存。
首脳が集まる国際会議では、たいてい「合意文書」という名の妥協の産物ができあがる。だが、国益をかけた激しい駆け引きはその舞台裏で交わされる。今週の20カ国・地域(G20)サミットとアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も例外ではない。
「米中関係は強まり、世界的な課題も話し合うようになった」。オバマ大統領がこう評価すれば、胡錦濤国家主席も「中国は米国との対話や連携を増やす」と応じる。ソウルでの米中首脳会談は、なごやかに始まった。
「対話より圧力」
これはつかの間の握手にすぎない。実際にアジア太平洋という舞台では、米国と中国の覇権争いの足音が聞こえる。流れを決定づけたのが、南シナ海を「内海」であるかのように位置づける中国の行動や、尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日本への強硬な対応だった。
「今年、政権内では対中政策をめぐる論争が続いてきたが、対話より圧力に軸足を置くしかないという結論に落ち着いた」。米政府当局者はこう解説する。中国の軍事、政治力の膨張に対応するために「日韓やインド、ベトナム、オーストラリア、インドネシアとの協力を強める」と語る。
そんな対中戦略の見取り図はそのまま、オバマ大統領の今回のアジア歴訪の足取りに重なる。
まず訪れたのは中国を潜在的脅威とみなすインドだった。民主主義の協力相手として、シン首相と抱擁を交わし、学生との集会では「21世紀の歴史は米国とインドでつくられる」と持ち上げた。
次の訪問先にインドネシアを選んだのも対中の思惑があった。同国は東南アジア諸国連合(ASEAN)の4割に当たる人口を抱え、来年はASEANの議長国になる。インドネシアがどう振る舞うかは、米中のアジア力学を左右する。
「どの国も国際的な枠組みとルールに沿って行動すべきだ」。オバマ氏はユドヨノ大統領との共同記者会見で、こう力説し、中国をけん制した。
米側が攻勢を強めるにつれ、それに対抗しようとする中国外交の車輪もめまぐるしく回る。
オバマ氏がインドネシア入りする前日の8日。ジャカルタの空港にスーツ姿の中国人らが降り立った。呉邦国全国人民代表大会委員長(国会議長に相当)が率いる中国代表団だ。呉氏はオバマ氏に先んじて66億ドルものインフラ支援を約束した。
中国は欧州の取り込みも急ぐ。胡主席はG20の直前にフランスを訪問。これに合わせて、中国企業が仏企業から100億ユーロを超える航空機や核燃料などの購入契約を結んだ。9~10日にはキャメロン英首相と経済界の首脳50人を北京に招いた。
アジアを舞台にパワーゲームを繰り広げる米中。中国には国力を増し、いずれは米主導の秩序を変えたいという目標もある。「いまの国際システムは米国に牛耳られている。この土俵で中国が台頭しようとしても『責任大国』の名のもとに米国から色々な要求を突きつけられ、阻まれてしまう」。中国政府の外交ブレーンはこう漏らす。
もっとも、経済的に深く結びつき、北朝鮮・イラン問題での協力も欠かせない米中に衝突の選択肢はない。先月30日にはクリントン国務長官が訪問先のハノイから中国・海南島に立ち寄り、胡氏の側近である戴秉国国務委員と会談した。米中は疑念を抱きながらも、来年1月の胡氏の訪米に向けて個別の懸案では妥協を探るとみられる。
軸定まらぬ日本
そうしたなか、日本は外交の軸が定まらず、立ちすくんでいるように見える。「菅直人首相は今回の尖閣問題を教訓に、対中戦略で日米がしっかり連携する必要性を痛感した」。菅首相の周辺はこう打ち明ける。
菅首相は13日に予定される日米首脳会談で同盟修復の道筋をつけ、明確な安保像を描けるのか。アジアの力学が揺れるなか、もはや立ち止まっている時間はない
「米中関係は強まり、世界的な課題も話し合うようになった」。オバマ大統領がこう評価すれば、胡錦濤国家主席も「中国は米国との対話や連携を増やす」と応じる。ソウルでの米中首脳会談は、なごやかに始まった。
「対話より圧力」
これはつかの間の握手にすぎない。実際にアジア太平洋という舞台では、米国と中国の覇権争いの足音が聞こえる。流れを決定づけたのが、南シナ海を「内海」であるかのように位置づける中国の行動や、尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日本への強硬な対応だった。
「今年、政権内では対中政策をめぐる論争が続いてきたが、対話より圧力に軸足を置くしかないという結論に落ち着いた」。米政府当局者はこう解説する。中国の軍事、政治力の膨張に対応するために「日韓やインド、ベトナム、オーストラリア、インドネシアとの協力を強める」と語る。
そんな対中戦略の見取り図はそのまま、オバマ大統領の今回のアジア歴訪の足取りに重なる。
まず訪れたのは中国を潜在的脅威とみなすインドだった。民主主義の協力相手として、シン首相と抱擁を交わし、学生との集会では「21世紀の歴史は米国とインドでつくられる」と持ち上げた。
次の訪問先にインドネシアを選んだのも対中の思惑があった。同国は東南アジア諸国連合(ASEAN)の4割に当たる人口を抱え、来年はASEANの議長国になる。インドネシアがどう振る舞うかは、米中のアジア力学を左右する。
「どの国も国際的な枠組みとルールに沿って行動すべきだ」。オバマ氏はユドヨノ大統領との共同記者会見で、こう力説し、中国をけん制した。
米側が攻勢を強めるにつれ、それに対抗しようとする中国外交の車輪もめまぐるしく回る。
オバマ氏がインドネシア入りする前日の8日。ジャカルタの空港にスーツ姿の中国人らが降り立った。呉邦国全国人民代表大会委員長(国会議長に相当)が率いる中国代表団だ。呉氏はオバマ氏に先んじて66億ドルものインフラ支援を約束した。
中国は欧州の取り込みも急ぐ。胡主席はG20の直前にフランスを訪問。これに合わせて、中国企業が仏企業から100億ユーロを超える航空機や核燃料などの購入契約を結んだ。9~10日にはキャメロン英首相と経済界の首脳50人を北京に招いた。
アジアを舞台にパワーゲームを繰り広げる米中。中国には国力を増し、いずれは米主導の秩序を変えたいという目標もある。「いまの国際システムは米国に牛耳られている。この土俵で中国が台頭しようとしても『責任大国』の名のもとに米国から色々な要求を突きつけられ、阻まれてしまう」。中国政府の外交ブレーンはこう漏らす。
もっとも、経済的に深く結びつき、北朝鮮・イラン問題での協力も欠かせない米中に衝突の選択肢はない。先月30日にはクリントン国務長官が訪問先のハノイから中国・海南島に立ち寄り、胡氏の側近である戴秉国国務委員と会談した。米中は疑念を抱きながらも、来年1月の胡氏の訪米に向けて個別の懸案では妥協を探るとみられる。
軸定まらぬ日本
そうしたなか、日本は外交の軸が定まらず、立ちすくんでいるように見える。「菅直人首相は今回の尖閣問題を教訓に、対中戦略で日米がしっかり連携する必要性を痛感した」。菅首相の周辺はこう打ち明ける。
菅首相は13日に予定される日米首脳会談で同盟修復の道筋をつけ、明確な安保像を描けるのか。アジアの力学が揺れるなか、もはや立ち止まっている時間はない