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:2010:11/10/10:01 ++ TPP閣議決定、「開国」へ一歩踏み出す、対米輸出に追い風。
政府は9日、環太平洋経済連携協定(TPP)について「関係国との協議を開始」する基本方針を閣議決定した。産業界は対米輸出の拡大などにつながるTPP参加を支持している。自動車や鉄鋼業界には、すでに欧米と自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国の企業との競争上、一刻も早い参加を望む声が多い。「平成の開国」(菅直人首相)に向け、農業の強化策が待ったなしとなる。(1面参照)
「世界で同じ条件じゃないと競争できない」(スズキの鈴木修会長兼社長)。自動車業界が危機感を強めるのは、FTAの遅れで韓国に敗れた苦い経験があるからだ。
「同じ土俵なら」
日本自動車工業会によると、2004年4月に韓国とチリのFTAが発効し、韓国からチリへの自動車輸出が急増した。6%の関税が撤廃されたからだ。07年には7万5千台と、日本の輸出台数を初めて上回った。
日本とチリの経済連携協定(EPA)が発効したのは07年9月。すると08年に日本からの輸出台数は韓国を上回った。「同じ土俵なら日本車の競争力はまだまだ発揮できる」と、日産自動車の志賀俊之最高執行責任者(COO)は指摘する。
TPP参加の影響の大きさは、チリとのEPAの比ではない。米国の乗用車輸入の関税は2・5%。米国が交渉に参加しているTPPに日本も加われば、この関税がゼロになる。ホンダの場合、1年間に20万台弱を米国に輸出しており「利点は大きい」(同社)。
一方、韓国は米国とのFTAが発効待ちの状態。日本がTPPに参加するか米国とFTAを結ぶかしなければ、韓国車のみ関税ゼロとなり日本車との競争で優位に立つ。
発電プラントなどを輸出する三菱重工業は「円高に加え関税でも日本企業が不利になれば、競争力に差がついてしまう」と話す。稼ぎ頭の発電用ガスタービンは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が最大手。日本が参加する形でTPPが発効すれば、GEの牙城である米国で関税がかからなくなる公算が大きい。
柔軟に戦略構築
鉄鋼業界もTPPへの早期参加を求める。新日本製鉄など大手の輸出比率(金額ベース)は数年前の3割前後から、今や4~5割に拡大した。国内生産の多くをアジア向け輸出が支える構図だ。そのアジア市場でも韓国の鉄鋼大手ポスコの攻勢が目立つ。日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は輸出競争力を左右するTPPに参加しなければ「重大な損失を招く」と訴える。
FTAやTPPなどの取り組みが進めば、企業はグローバル戦略をより柔軟に構築できる。
ソニーは10年4~6月にインドの薄型テレビ市場でシェア1位を獲得した。そのテレビはマレーシアの工場で生産している。インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の間では今年、FTAが発効し、テレビのインドへの輸出関税は10%から7・5%に減少。今後も段階的に下がる予定だ。
テレビをインドで現地生産している韓国勢との競争でも「大きな不利にはならない」(ソニー)という。
日本がTPPに参加すればドル安を生かし米国工場を輸出拠点として活用する道も開ける。「豪州へ大型車を輸出するなど、効率的な生産体制をつくりやすくなる」(日産自動車幹部)とみる。
▼環太平洋経済連携協定(TPP) シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に締結した。貿易や投資、人の移動など幅広い分野で、例外の少ない自由化を目指す。通常の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)より参加のハードルが高い。米国や豪州など5カ国も参加を表明し、9カ国で新たな枠組みづくりに向けた交渉を進めている。
○TPPは情報収集を進めながら対応し、関係国との協議を開始
○「アジア太平洋自由貿易圏実現に向けた閣僚会合」を開催
○「農業構造改革推進本部」(仮称、議長・菅直人首相)を設置
○関税措置のあり方を見直し、透明性の高い納税者負担制度への移行を検討
○非関税障壁撤廃に向け、行政刷新会議で11年3月までに規制改革の具体的方針を決定
「世界で同じ条件じゃないと競争できない」(スズキの鈴木修会長兼社長)。自動車業界が危機感を強めるのは、FTAの遅れで韓国に敗れた苦い経験があるからだ。
「同じ土俵なら」
日本自動車工業会によると、2004年4月に韓国とチリのFTAが発効し、韓国からチリへの自動車輸出が急増した。6%の関税が撤廃されたからだ。07年には7万5千台と、日本の輸出台数を初めて上回った。
日本とチリの経済連携協定(EPA)が発効したのは07年9月。すると08年に日本からの輸出台数は韓国を上回った。「同じ土俵なら日本車の競争力はまだまだ発揮できる」と、日産自動車の志賀俊之最高執行責任者(COO)は指摘する。
TPP参加の影響の大きさは、チリとのEPAの比ではない。米国の乗用車輸入の関税は2・5%。米国が交渉に参加しているTPPに日本も加われば、この関税がゼロになる。ホンダの場合、1年間に20万台弱を米国に輸出しており「利点は大きい」(同社)。
一方、韓国は米国とのFTAが発効待ちの状態。日本がTPPに参加するか米国とFTAを結ぶかしなければ、韓国車のみ関税ゼロとなり日本車との競争で優位に立つ。
発電プラントなどを輸出する三菱重工業は「円高に加え関税でも日本企業が不利になれば、競争力に差がついてしまう」と話す。稼ぎ頭の発電用ガスタービンは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が最大手。日本が参加する形でTPPが発効すれば、GEの牙城である米国で関税がかからなくなる公算が大きい。
柔軟に戦略構築
鉄鋼業界もTPPへの早期参加を求める。新日本製鉄など大手の輸出比率(金額ベース)は数年前の3割前後から、今や4~5割に拡大した。国内生産の多くをアジア向け輸出が支える構図だ。そのアジア市場でも韓国の鉄鋼大手ポスコの攻勢が目立つ。日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は輸出競争力を左右するTPPに参加しなければ「重大な損失を招く」と訴える。
FTAやTPPなどの取り組みが進めば、企業はグローバル戦略をより柔軟に構築できる。
ソニーは10年4~6月にインドの薄型テレビ市場でシェア1位を獲得した。そのテレビはマレーシアの工場で生産している。インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の間では今年、FTAが発効し、テレビのインドへの輸出関税は10%から7・5%に減少。今後も段階的に下がる予定だ。
テレビをインドで現地生産している韓国勢との競争でも「大きな不利にはならない」(ソニー)という。
日本がTPPに参加すればドル安を生かし米国工場を輸出拠点として活用する道も開ける。「豪州へ大型車を輸出するなど、効率的な生産体制をつくりやすくなる」(日産自動車幹部)とみる。
▼環太平洋経済連携協定(TPP) シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に締結した。貿易や投資、人の移動など幅広い分野で、例外の少ない自由化を目指す。通常の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)より参加のハードルが高い。米国や豪州など5カ国も参加を表明し、9カ国で新たな枠組みづくりに向けた交渉を進めている。
○TPPは情報収集を進めながら対応し、関係国との協議を開始
○「アジア太平洋自由貿易圏実現に向けた閣僚会合」を開催
○「農業構造改革推進本部」(仮称、議長・菅直人首相)を設置
○関税措置のあり方を見直し、透明性の高い納税者負担制度への移行を検討
○非関税障壁撤廃に向け、行政刷新会議で11年3月までに規制改革の具体的方針を決定
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:2010:11/10/09:54 ++ 環太平洋協定TPP日本の選択(下)攻める農業に転換を―開放テコに経営者育成。
環太平洋経済連携協定(TPP)を巡り、政府は交渉への参加を決めることができず、「関係国と協議」する方針を9日にかろうじて閣議決定した。迷走の原因は農業問題にある。
「10年もたない」
「夜も眠れないほど心配している」。全国町村会の代表が4日、東京・霞が関の農林水産省でこう訴えた。筒井信隆副大臣は「気持ちは一緒だ」。日本の農業はそんなに弱いのか。
石川県小松市の農家、長田竜太氏(46)は「TPPに賛成」と話す。「参加しなくても日本の農業は10年もたない。自ら変われないなら、貿易自由化を利用するしかない」と言う。
6ヘクタールの水田で化学肥料は使わず、農薬使用も抑えた稲作に取り組んでいる。ほぼ全量を個人に口コミで売り、価格は相場より3倍近く高い。「TPPへの参加が決まれば大規模化する好機かもしれない」と長田氏。作付けをやめる農家が増え、農地が安く手に入るかもしれないからだ。
農水省はコメなど主要19品目ですべての国と関税を撤廃すれば毎年4・1兆円の生産額が減り、自給率は40%から14%に下がると試算した。こうした極端な数字をはじいて農業を守ろうとする姿勢に国民は賛同するだろうか。守りから攻めに転じるという視点にも欠ける。
市場開放には確かに困難が伴う。中国・北京のあるスーパーで売られている最も安いコメは5キログラムで300円弱。ただ有機栽培米などで同2400円の銘柄もある。国際的にも高品質とされる日本のコメだが、スーパーでは普通、同2000円以下。攻め込むチャンスはある。
法人を含む日本の農業者数は今年までの5年間で16%減り、耕地面積も1・5%減った。だがその中で法人の数は16%増え、しかも規模が大きい農業者ほど数が増えるという傾向が出た。ここに農業が苦境を脱するカギがある。
「経営者を育成する以外に手がない」。宮城大学の大泉一貫副学長はこう強調する。イトーヨーカ堂は千葉や茨城県などで農場を展開しているが、実際に農作業をしているのは地元の有力な農業者。「生産はプロに任せる。こちらは販売が専門だ」という戦略だ。
広い農場を効率的に管理し高品質の作物を栽培できる農業者と組んで初めて、企業の資本力やマーケティング力を生かせる。問題はこうした「プロの農業者」が足りない点だ。
例えば、全国の農業者のうち法人数は1・3%にすぎない。農業就業者の平均年齢は65・8歳。平均年齢はこれからどんどん上がっていく。彼らが退場した後、耕地と技術を引き継ぐ経営者を育てることが急務だ。
国民挙げ議論を
自由化に備える政策も補助金も、まずここに集中する必要がある。モザイク状に分散した農地を集約する仕組みをつくり、農地の転用を今より厳しく規制した上で新規参入組にもっと農地を開放する。ばらまきとの批判が多い戸別所得補償制度もこの線に沿って見直す。何より6兆円余りをつぎ込みながら、農業を強くできなかったウルグアイ・ラウンド対策費のてつを踏むことは許されない。
「海外の大規模農業に勝てるわけがない」。農協は繰り返すが、例えばコメの取扱数量の農協のシェアは推計で約5割しかない。農協だけが農家の声を代弁しているわけではない。
政府は来年6月をメドに農業改革の基本方針を示す。今度こそ、選挙対策でも農業団体のためでもない農業再生の青写真を描く必要がある。これまでの農政が招いた“衰退”に歯止めをかけるため、国民挙げての議論が求められている。
日本の国際化を阻んでいる――。農業への変わらぬ批判を返上するときだ。その期待に応えられる農業者は全国に誕生しつつある。
「10年もたない」
「夜も眠れないほど心配している」。全国町村会の代表が4日、東京・霞が関の農林水産省でこう訴えた。筒井信隆副大臣は「気持ちは一緒だ」。日本の農業はそんなに弱いのか。
石川県小松市の農家、長田竜太氏(46)は「TPPに賛成」と話す。「参加しなくても日本の農業は10年もたない。自ら変われないなら、貿易自由化を利用するしかない」と言う。
6ヘクタールの水田で化学肥料は使わず、農薬使用も抑えた稲作に取り組んでいる。ほぼ全量を個人に口コミで売り、価格は相場より3倍近く高い。「TPPへの参加が決まれば大規模化する好機かもしれない」と長田氏。作付けをやめる農家が増え、農地が安く手に入るかもしれないからだ。
農水省はコメなど主要19品目ですべての国と関税を撤廃すれば毎年4・1兆円の生産額が減り、自給率は40%から14%に下がると試算した。こうした極端な数字をはじいて農業を守ろうとする姿勢に国民は賛同するだろうか。守りから攻めに転じるという視点にも欠ける。
市場開放には確かに困難が伴う。中国・北京のあるスーパーで売られている最も安いコメは5キログラムで300円弱。ただ有機栽培米などで同2400円の銘柄もある。国際的にも高品質とされる日本のコメだが、スーパーでは普通、同2000円以下。攻め込むチャンスはある。
法人を含む日本の農業者数は今年までの5年間で16%減り、耕地面積も1・5%減った。だがその中で法人の数は16%増え、しかも規模が大きい農業者ほど数が増えるという傾向が出た。ここに農業が苦境を脱するカギがある。
「経営者を育成する以外に手がない」。宮城大学の大泉一貫副学長はこう強調する。イトーヨーカ堂は千葉や茨城県などで農場を展開しているが、実際に農作業をしているのは地元の有力な農業者。「生産はプロに任せる。こちらは販売が専門だ」という戦略だ。
広い農場を効率的に管理し高品質の作物を栽培できる農業者と組んで初めて、企業の資本力やマーケティング力を生かせる。問題はこうした「プロの農業者」が足りない点だ。
例えば、全国の農業者のうち法人数は1・3%にすぎない。農業就業者の平均年齢は65・8歳。平均年齢はこれからどんどん上がっていく。彼らが退場した後、耕地と技術を引き継ぐ経営者を育てることが急務だ。
国民挙げ議論を
自由化に備える政策も補助金も、まずここに集中する必要がある。モザイク状に分散した農地を集約する仕組みをつくり、農地の転用を今より厳しく規制した上で新規参入組にもっと農地を開放する。ばらまきとの批判が多い戸別所得補償制度もこの線に沿って見直す。何より6兆円余りをつぎ込みながら、農業を強くできなかったウルグアイ・ラウンド対策費のてつを踏むことは許されない。
「海外の大規模農業に勝てるわけがない」。農協は繰り返すが、例えばコメの取扱数量の農協のシェアは推計で約5割しかない。農協だけが農家の声を代弁しているわけではない。
政府は来年6月をメドに農業改革の基本方針を示す。今度こそ、選挙対策でも農業団体のためでもない農業再生の青写真を描く必要がある。これまでの農政が招いた“衰退”に歯止めをかけるため、国民挙げての議論が求められている。
日本の国際化を阻んでいる――。農業への変わらぬ批判を返上するときだ。その期待に応えられる農業者は全国に誕生しつつある。
:2010:11/09/09:09 ++ 映像流出両面から捜査、海保職員を聴取、ネット投稿追跡。
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を撮影したビデオ映像の流出問題について、検察当局が8日、本格捜査に乗り出した。検察が想定するのは、国家公務員法(守秘義務)違反罪の適用だ。海上保安庁職員らからの事情聴取という「流出元」からと、ネット上の映像からさかのぼる「流出先」へのアプローチという両面作戦となる。(1面参照)
捜査にあたるのは、福岡高検公安部長を主任とするチーム。東京高検管内の検事や事務官ら十数人を投入した。家宅捜索などは当面想定せず、「流出元」との疑いが強まる海保で、本庁のある東京と石垣海上保安部(沖縄県石垣市)での関係者の事情聴取が主となる。
直前に議員閲覧
仮に容疑者が特定された場合、ポイントは流出映像が「秘密」に当たるかどうか。今回、ネット上に投稿された映像について、検察当局は海保が編集、那覇地検に提出したものと断定。しかし、国家公務員法の守秘義務違反で刑事責任を問うには「部外秘」などと形式的に秘密扱いされていただけでは不十分で、保護するのに値する実質的な内容がなければならない、との説が有力だ。
今回の映像管理が厳しくなったのは、馬淵澄夫国土交通相が管理徹底を指示した10月中旬以降で、それまでの扱いはあいまいだったという。しかも、流出直前には一部国会議員にも限定公開されており、最高検幹部は「(容疑者が起訴され)裁判になったら、映像の秘密性が争いになるだろう」と話す。
「証拠保全の観点からも早期に着手が必要だった」。最高検の勝丸充啓公安部長は8日の記者会見で強調。東京地検とともに告発先となった警視庁では捜査1課が担当。サイバー犯罪に対応するため設置した「ハイテク犯罪対策総合センター」も協力するとみられる。
「出口」にあたる流出映像側からの捜査のカギを握るのは、動画投稿サイト「ユーチューブ」を運営するグーグルに残る投稿記録。ユーチューブに動画を投稿する場合にはメールアドレスを使った登録が必要。ネット上で簡単に入手できるフリーメールもあるが、次々とさかのぼって個人を特定できる可能性がある。
パソコン特定も
検察当局はネットに接続する際に端末に割り当てられネットの「住所」にあたるIPアドレスも重視。ログ(通信記録)からアップロードした地域や使用したパソコンの特定につながる。グーグル側は記録の任意提出は難しいとの立場で、これまでこの方面からの追及は停滞していた。福岡高検は差し押さえ令状を裁判所に請求。今回の捜査着手によって、ようやく追及が可能となる。
映像をサーバーから不正に抜き取ったり、他人のサーバーを経由して投稿したりといった不正アクセス禁止法違反が疑われる場合は、侵入手口の解析など、情報技術の高度な知識に基づく捜査が必要になる。今後、ハイテク犯罪の専門家を擁する警視庁と連携し、捜査を進めるとみられる。
捜査にあたるのは、福岡高検公安部長を主任とするチーム。東京高検管内の検事や事務官ら十数人を投入した。家宅捜索などは当面想定せず、「流出元」との疑いが強まる海保で、本庁のある東京と石垣海上保安部(沖縄県石垣市)での関係者の事情聴取が主となる。
直前に議員閲覧
仮に容疑者が特定された場合、ポイントは流出映像が「秘密」に当たるかどうか。今回、ネット上に投稿された映像について、検察当局は海保が編集、那覇地検に提出したものと断定。しかし、国家公務員法の守秘義務違反で刑事責任を問うには「部外秘」などと形式的に秘密扱いされていただけでは不十分で、保護するのに値する実質的な内容がなければならない、との説が有力だ。
今回の映像管理が厳しくなったのは、馬淵澄夫国土交通相が管理徹底を指示した10月中旬以降で、それまでの扱いはあいまいだったという。しかも、流出直前には一部国会議員にも限定公開されており、最高検幹部は「(容疑者が起訴され)裁判になったら、映像の秘密性が争いになるだろう」と話す。
「証拠保全の観点からも早期に着手が必要だった」。最高検の勝丸充啓公安部長は8日の記者会見で強調。東京地検とともに告発先となった警視庁では捜査1課が担当。サイバー犯罪に対応するため設置した「ハイテク犯罪対策総合センター」も協力するとみられる。
「出口」にあたる流出映像側からの捜査のカギを握るのは、動画投稿サイト「ユーチューブ」を運営するグーグルに残る投稿記録。ユーチューブに動画を投稿する場合にはメールアドレスを使った登録が必要。ネット上で簡単に入手できるフリーメールもあるが、次々とさかのぼって個人を特定できる可能性がある。
パソコン特定も
検察当局はネットに接続する際に端末に割り当てられネットの「住所」にあたるIPアドレスも重視。ログ(通信記録)からアップロードした地域や使用したパソコンの特定につながる。グーグル側は記録の任意提出は難しいとの立場で、これまでこの方面からの追及は停滞していた。福岡高検は差し押さえ令状を裁判所に請求。今回の捜査着手によって、ようやく追及が可能となる。
映像をサーバーから不正に抜き取ったり、他人のサーバーを経由して投稿したりといった不正アクセス禁止法違反が疑われる場合は、侵入手口の解析など、情報技術の高度な知識に基づく捜査が必要になる。今後、ハイテク犯罪の専門家を擁する警視庁と連携し、捜査を進めるとみられる。
:2010:11/09/09:02 ++ 民主党外交はなぜこうも行き詰まるか(社説)
菅政権の外交が袋小路に入り、出口が見当たらない。日中関係の緊張が続くなか、北方領土問題をめぐりロシア外交も揺らいでいる。
13日から横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、菅直人首相が議長を務める。日本外交の存在感を示す好機のはず。それなのに、どこまで指導力を発揮できるか疑われ、何らかの成果をまとめられるのか不安になる。
外交の歯車がなぜ、これほどまでに狂ってしまったのか。菅首相と民主党は胸に手を当てて反省し、APEC首脳会議を外交立て直しのきっかけにしてほしい。
山積みとなった外交案件の中でも、とりわけ深刻なのが中国、ロシアとの関係だろう。
尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日中の対立は続いている。10月29日には中国が土壇場で日中首相会談を拒んだ。一方で、ロシアのメドベージェフ大統領が1日、日本の懸念をよそに北方領土の国後島を訪れた。
中ロがあうんの呼吸で同時に日本を揺さぶっているのかどうかは分からない。それにしても、菅政権はこれまでの外交の失策が、中ロに相次いで足元を見透かされる事態を招いたとみられてもやむを得まい。
何がいけなかったのか。何よりも、日本の領土と主権を守るという毅然(きぜん)たる姿勢が、民主党政権から中ロに伝わっていなかったのではないか。
鳩山由紀夫前首相は就任してから数カ月たつまで、在日米軍の抑止力の重要性を十分理解していなかった。小沢一郎元代表も、極東での米軍の存在は第7艦隊だけで十分と言い切った。在日米軍への依存を減らすような発言をしながら、鳩山前政権は自前の防衛力を強める努力を払うでもなかった。
日本は安全保障を真剣に考えていないとの印象を、中ロその他の外国に与えても仕方がない。その意味で鳩山前政権の罪は極めて重い。
菅政権はこの混乱を踏まえ、日米同盟重視の路線にかじを切ったまではよかった。問題は言葉に行動が伴っていないことだ。同盟を深める作業を急ぐため指導力を示した形跡はない。懸案の米軍普天間基地問題でも何ら有効な手を打っていない。
民主党は政権交代後、自民党外交との違いを際立たせようとした。そのあまり、日米同盟を基に日本が安全を確保している現実に目をつむった。現実軽視のツケがいま相次いで表面化しているといえる。菅政権は日米同盟という外交の軸を確かにすることから早急に取り組むべきだ。
13日から横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、菅直人首相が議長を務める。日本外交の存在感を示す好機のはず。それなのに、どこまで指導力を発揮できるか疑われ、何らかの成果をまとめられるのか不安になる。
外交の歯車がなぜ、これほどまでに狂ってしまったのか。菅首相と民主党は胸に手を当てて反省し、APEC首脳会議を外交立て直しのきっかけにしてほしい。
山積みとなった外交案件の中でも、とりわけ深刻なのが中国、ロシアとの関係だろう。
尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日中の対立は続いている。10月29日には中国が土壇場で日中首相会談を拒んだ。一方で、ロシアのメドベージェフ大統領が1日、日本の懸念をよそに北方領土の国後島を訪れた。
中ロがあうんの呼吸で同時に日本を揺さぶっているのかどうかは分からない。それにしても、菅政権はこれまでの外交の失策が、中ロに相次いで足元を見透かされる事態を招いたとみられてもやむを得まい。
何がいけなかったのか。何よりも、日本の領土と主権を守るという毅然(きぜん)たる姿勢が、民主党政権から中ロに伝わっていなかったのではないか。
鳩山由紀夫前首相は就任してから数カ月たつまで、在日米軍の抑止力の重要性を十分理解していなかった。小沢一郎元代表も、極東での米軍の存在は第7艦隊だけで十分と言い切った。在日米軍への依存を減らすような発言をしながら、鳩山前政権は自前の防衛力を強める努力を払うでもなかった。
日本は安全保障を真剣に考えていないとの印象を、中ロその他の外国に与えても仕方がない。その意味で鳩山前政権の罪は極めて重い。
菅政権はこの混乱を踏まえ、日米同盟重視の路線にかじを切ったまではよかった。問題は言葉に行動が伴っていないことだ。同盟を深める作業を急ぐため指導力を示した形跡はない。懸案の米軍普天間基地問題でも何ら有効な手を打っていない。
民主党は政権交代後、自民党外交との違いを際立たせようとした。そのあまり、日米同盟を基に日本が安全を確保している現実に目をつむった。現実軽視のツケがいま相次いで表面化しているといえる。菅政権は日米同盟という外交の軸を確かにすることから早急に取り組むべきだ。
:2010:11/09/09:02 ++ 民主党外交はなぜこうも行き詰まるか(社説)
菅政権の外交が袋小路に入り、出口が見当たらない。日中関係の緊張が続くなか、北方領土問題をめぐりロシア外交も揺らいでいる。
13日から横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、菅直人首相が議長を務める。日本外交の存在感を示す好機のはず。それなのに、どこまで指導力を発揮できるか疑われ、何らかの成果をまとめられるのか不安になる。
外交の歯車がなぜ、これほどまでに狂ってしまったのか。菅首相と民主党は胸に手を当てて反省し、APEC首脳会議を外交立て直しのきっかけにしてほしい。
山積みとなった外交案件の中でも、とりわけ深刻なのが中国、ロシアとの関係だろう。
尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日中の対立は続いている。10月29日には中国が土壇場で日中首相会談を拒んだ。一方で、ロシアのメドベージェフ大統領が1日、日本の懸念をよそに北方領土の国後島を訪れた。
中ロがあうんの呼吸で同時に日本を揺さぶっているのかどうかは分からない。それにしても、菅政権はこれまでの外交の失策が、中ロに相次いで足元を見透かされる事態を招いたとみられてもやむを得まい。
何がいけなかったのか。何よりも、日本の領土と主権を守るという毅然(きぜん)たる姿勢が、民主党政権から中ロに伝わっていなかったのではないか。
鳩山由紀夫前首相は就任してから数カ月たつまで、在日米軍の抑止力の重要性を十分理解していなかった。小沢一郎元代表も、極東での米軍の存在は第7艦隊だけで十分と言い切った。在日米軍への依存を減らすような発言をしながら、鳩山前政権は自前の防衛力を強める努力を払うでもなかった。
日本は安全保障を真剣に考えていないとの印象を、中ロその他の外国に与えても仕方がない。その意味で鳩山前政権の罪は極めて重い。
菅政権はこの混乱を踏まえ、日米同盟重視の路線にかじを切ったまではよかった。問題は言葉に行動が伴っていないことだ。同盟を深める作業を急ぐため指導力を示した形跡はない。懸案の米軍普天間基地問題でも何ら有効な手を打っていない。
民主党は政権交代後、自民党外交との違いを際立たせようとした。そのあまり、日米同盟を基に日本が安全を確保している現実に目をつむった。現実軽視のツケがいま相次いで表面化しているといえる。菅政権は日米同盟という外交の軸を確かにすることから早急に取り組むべきだ。
13日から横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、菅直人首相が議長を務める。日本外交の存在感を示す好機のはず。それなのに、どこまで指導力を発揮できるか疑われ、何らかの成果をまとめられるのか不安になる。
外交の歯車がなぜ、これほどまでに狂ってしまったのか。菅首相と民主党は胸に手を当てて反省し、APEC首脳会議を外交立て直しのきっかけにしてほしい。
山積みとなった外交案件の中でも、とりわけ深刻なのが中国、ロシアとの関係だろう。
尖閣諸島沖の衝突事件を受けた日中の対立は続いている。10月29日には中国が土壇場で日中首相会談を拒んだ。一方で、ロシアのメドベージェフ大統領が1日、日本の懸念をよそに北方領土の国後島を訪れた。
中ロがあうんの呼吸で同時に日本を揺さぶっているのかどうかは分からない。それにしても、菅政権はこれまでの外交の失策が、中ロに相次いで足元を見透かされる事態を招いたとみられてもやむを得まい。
何がいけなかったのか。何よりも、日本の領土と主権を守るという毅然(きぜん)たる姿勢が、民主党政権から中ロに伝わっていなかったのではないか。
鳩山由紀夫前首相は就任してから数カ月たつまで、在日米軍の抑止力の重要性を十分理解していなかった。小沢一郎元代表も、極東での米軍の存在は第7艦隊だけで十分と言い切った。在日米軍への依存を減らすような発言をしながら、鳩山前政権は自前の防衛力を強める努力を払うでもなかった。
日本は安全保障を真剣に考えていないとの印象を、中ロその他の外国に与えても仕方がない。その意味で鳩山前政権の罪は極めて重い。
菅政権はこの混乱を踏まえ、日米同盟重視の路線にかじを切ったまではよかった。問題は言葉に行動が伴っていないことだ。同盟を深める作業を急ぐため指導力を示した形跡はない。懸案の米軍普天間基地問題でも何ら有効な手を打っていない。
民主党は政権交代後、自民党外交との違いを際立たせようとした。そのあまり、日米同盟を基に日本が安全を確保している現実に目をつむった。現実軽視のツケがいま相次いで表面化しているといえる。菅政権は日米同盟という外交の軸を確かにすることから早急に取り組むべきだ。
:2010:11/09/08:55 ++ 環太平洋協定TPP日本の選択(上)強い製造業岐路に―大経済圏、中国もにらむ。
政府は環太平洋経済連携協定(TPP)に関する基本方針を9日に閣議決定する。だが、原則としてすべての関税を撤廃する協定に農業団体などの反発は強く、実際の交渉入りには時間がかかる可能性が高い。国の生き残りをかけ、菅政権の「日本をひらく姿勢」が問われている。
海外へ雇用流出
「インドでは年100万台も売る最大手だが、ハンディを感じる」。スズキの鈴木修会長兼社長は2日の記者会見でこう訴えた。インドとの自由貿易協定(FTA)が発効した韓国の現代自動車は部品輸入の関税が1~5%で済むのに対し、スズキには12・5%の関税がかかる。日印は10月に経済連携協定(EPA)の締結で合意したが、関税撤廃までは不利な状況が続く。
「反TPP」の動きが民主党内で強まり、堂々巡りの議論が続いたこの1カ月余の間、海外事業の拡大を決断した企業が相次いだ。
スズキや三菱自動車はインドやタイに新しい工場を建設する。ホンダはタイ、インドで生産した二輪車を日本や欧米、南米などに輸出し、三菱電機はタイなどで海外向けのエレベーターの集中生産を始める。
FTAに積極的な国々への投資ラッシュだ。円高の加速で生産拠点の再配置を迫られる日本企業。多くの政治家は就業人口260万人の農業を「守れ」と叫びながら、日本の屋台骨であり1100万人が働く製造業の雇用が流出していくことに何の危機感も抱いていないように見える。
TPPが避けて通れない理由は主に2つある。1つは韓国。すでに欧州連合(EU)、米国とのFTAが発効待ちで、中国との協定も1年以内に合意する可能性がある。日本はこの3カ国・地域とFTAがない。
自動車や電機に軸足を置く日韓は貿易のスタイルが似ている。韓国製の乗用車、薄型テレビの関税だけが米欧中の大消費地でゼロになると、日本は厳しい。
効果10兆円以上
もう1つは中国だ。中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓など、自ら主導権を握り時間をかけて緩やかな枠組みをつくりたいとみられるが、日本が入ればEUをしのぐ巨大経済圏になるTPPにも関心を強めている。これから米国主導で自由貿易ルールが作られていくTPPに日米が手を組んで中国を巻き込めば、中国の一段の市場開放にもつながる。
国内では今、エコカー補助金の終了と円高で自動車各社が生産を大幅に減らしている。だが、そんな中でも増産しているのは中国向けの乗用車だ。今年1~9月の対中輸出は16万3000台となり、05年1年間の3倍に膨らんだ。大半はトヨタ自動車の「レクサス」など高級車だという。
中国の関税率は25%。米国の2・5%と比べると飛び抜けて高い。それでも売れるのは、富裕層が急速に増えているからだ。関税が下がれば、高級車の市場は一気に膨らむ。
経済産業省はTPPの国内総生産(GDP)への波及効果を10兆円と試算したが、自動車メーカー首脳は「中国などを入れれば、10兆円どころの話ではない」と期待する。
自動車や電機の国内生産額は現在、約100兆円ある。その6割強は外需向けだ。一方、農業総産出額は8兆5千億円にとどまる。日本が国内にものづくりの機能を残し、雇用を増やせるか。TPP参加の意義はそこにある。
戦後の日本ほど自由貿易体制の恩恵を受けた国はない。しかし内向きの政策に終始した結果、雇用は海外に流出し、外資も入ってこない状況を招いた。TPP反対の国会議員はこの国の雇用をどうしようとしているのだろうか。
海外へ雇用流出
「インドでは年100万台も売る最大手だが、ハンディを感じる」。スズキの鈴木修会長兼社長は2日の記者会見でこう訴えた。インドとの自由貿易協定(FTA)が発効した韓国の現代自動車は部品輸入の関税が1~5%で済むのに対し、スズキには12・5%の関税がかかる。日印は10月に経済連携協定(EPA)の締結で合意したが、関税撤廃までは不利な状況が続く。
「反TPP」の動きが民主党内で強まり、堂々巡りの議論が続いたこの1カ月余の間、海外事業の拡大を決断した企業が相次いだ。
スズキや三菱自動車はインドやタイに新しい工場を建設する。ホンダはタイ、インドで生産した二輪車を日本や欧米、南米などに輸出し、三菱電機はタイなどで海外向けのエレベーターの集中生産を始める。
FTAに積極的な国々への投資ラッシュだ。円高の加速で生産拠点の再配置を迫られる日本企業。多くの政治家は就業人口260万人の農業を「守れ」と叫びながら、日本の屋台骨であり1100万人が働く製造業の雇用が流出していくことに何の危機感も抱いていないように見える。
TPPが避けて通れない理由は主に2つある。1つは韓国。すでに欧州連合(EU)、米国とのFTAが発効待ちで、中国との協定も1年以内に合意する可能性がある。日本はこの3カ国・地域とFTAがない。
自動車や電機に軸足を置く日韓は貿易のスタイルが似ている。韓国製の乗用車、薄型テレビの関税だけが米欧中の大消費地でゼロになると、日本は厳しい。
効果10兆円以上
もう1つは中国だ。中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓など、自ら主導権を握り時間をかけて緩やかな枠組みをつくりたいとみられるが、日本が入ればEUをしのぐ巨大経済圏になるTPPにも関心を強めている。これから米国主導で自由貿易ルールが作られていくTPPに日米が手を組んで中国を巻き込めば、中国の一段の市場開放にもつながる。
国内では今、エコカー補助金の終了と円高で自動車各社が生産を大幅に減らしている。だが、そんな中でも増産しているのは中国向けの乗用車だ。今年1~9月の対中輸出は16万3000台となり、05年1年間の3倍に膨らんだ。大半はトヨタ自動車の「レクサス」など高級車だという。
中国の関税率は25%。米国の2・5%と比べると飛び抜けて高い。それでも売れるのは、富裕層が急速に増えているからだ。関税が下がれば、高級車の市場は一気に膨らむ。
経済産業省はTPPの国内総生産(GDP)への波及効果を10兆円と試算したが、自動車メーカー首脳は「中国などを入れれば、10兆円どころの話ではない」と期待する。
自動車や電機の国内生産額は現在、約100兆円ある。その6割強は外需向けだ。一方、農業総産出額は8兆5千億円にとどまる。日本が国内にものづくりの機能を残し、雇用を増やせるか。TPP参加の意義はそこにある。
戦後の日本ほど自由貿易体制の恩恵を受けた国はない。しかし内向きの政策に終始した結果、雇用は海外に流出し、外資も入ってこない状況を招いた。TPP反対の国会議員はこの国の雇用をどうしようとしているのだろうか。
:2010:11/04/09:48 ++ いまTPPに参加すべきか――反対、農業団体、冨士重夫氏、農地減、食糧安保ゆらぐ。
――なぜTPP参加に反対なのですか。
「(農産物生産が大きく減り)政府が掲げる食料自給率向上の目標と矛盾するからだ。TPPは原則、関税をすべて撤廃しなければならず、生産規模が大きく価格優位性もある米国などの農業に対抗できない。TPPと農業を両立させる手立てはないのではないか」
――農業の生産性向上を進めても保護は必要なのでしょうか。
「ある程度必要だ。米国などと同等の国際競争力を持てといわれても、地形などの条件が違う。だからといって、他国に食料供給を頼って自国の農地をつぶしてしまうのも食糧安全保障上、不安がある」
「すでに農業分野は十分開かれている。農産物の平均関税率は12%で、コメや乳製品など戦略的に守るべき品目の高関税だけが残っている。こうした品目は一定の関税措置や国内対策で生産基盤を維持していくべきだ」
――農家への所得補償で価格差を埋めれば対抗できるのでは。
「同じ価格でも小麦や乳製品などは供給量や利便性で輸入品が勝り、国産品は減る。品質格差がある牛肉にしても価格差が2倍、3倍もあると厳しい。生き残れるのは一部の特定産地だけだ」
――TPPではなく2国間のEPAやFTAなら容認できるのですか。
「関税撤廃で10%の例外が認められるという点でTPPよりはましという話だ。ただ、米国とは無理だろう。米国からの輸入額の3割は農産物で、10%の例外措置をはるかに超えている。大国とEPAを結ぶのは世界貿易機関(WTO)の否定にもつながる」
――政府がTPP参加を決めた場合、どう対応するのですか。
「TPPは国全体に影響が及ぶ話だ。消費者団体や地方自治体、ほかの第1次産業の団体とも連携して大きな反対運動を起こしていきたい」
「(農産物生産が大きく減り)政府が掲げる食料自給率向上の目標と矛盾するからだ。TPPは原則、関税をすべて撤廃しなければならず、生産規模が大きく価格優位性もある米国などの農業に対抗できない。TPPと農業を両立させる手立てはないのではないか」
――農業の生産性向上を進めても保護は必要なのでしょうか。
「ある程度必要だ。米国などと同等の国際競争力を持てといわれても、地形などの条件が違う。だからといって、他国に食料供給を頼って自国の農地をつぶしてしまうのも食糧安全保障上、不安がある」
「すでに農業分野は十分開かれている。農産物の平均関税率は12%で、コメや乳製品など戦略的に守るべき品目の高関税だけが残っている。こうした品目は一定の関税措置や国内対策で生産基盤を維持していくべきだ」
――農家への所得補償で価格差を埋めれば対抗できるのでは。
「同じ価格でも小麦や乳製品などは供給量や利便性で輸入品が勝り、国産品は減る。品質格差がある牛肉にしても価格差が2倍、3倍もあると厳しい。生き残れるのは一部の特定産地だけだ」
――TPPではなく2国間のEPAやFTAなら容認できるのですか。
「関税撤廃で10%の例外が認められるという点でTPPよりはましという話だ。ただ、米国とは無理だろう。米国からの輸入額の3割は農産物で、10%の例外措置をはるかに超えている。大国とEPAを結ぶのは世界貿易機関(WTO)の否定にもつながる」
――政府がTPP参加を決めた場合、どう対応するのですか。
「TPPは国全体に影響が及ぶ話だ。消費者団体や地方自治体、ほかの第1次産業の団体とも連携して大きな反対運動を起こしていきたい」
:2010:11/04/09:46 ++ いまTPPに参加すべきか――賛成、経済界、桜井正光氏、アジア市場で巻き返し
――なぜTPPに参加すべきなのでしょうか。
「国を開き、アジアをはじめ世界の成長市場を取り込むのが日本の成長戦略だ。TPPは今後のヒト・モノ・カネの移動を巡る世界的なルールになる。ルール作りに参画できる今を逃してはいけない。米国と協力してアジアを健全な自由経済圏に育て、そのメリットを享受していくべきだ」
――日本の産業界にとってのメリットは。
「すでに自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の取り組みの遅れによる関税の差が、韓国企業などとの国際競争で円高と同じくらい不利に働いている。TPPなどでこの差を埋めることができれば販売を伸ばせる。日本から輸出しやすい環境が整うと、国内工場の海外移転が減る可能性もある」
――農業への影響はどう考えますか。
「相当な痛手を被るだろうが、農業の競争力がないのは以前からの問題だ。政府による農家への補償の原資は国民の税金。高いお金で輸入農産物を買っているのも国民だ。こうした国民負担をいつまでも続けるわけにはいかない」
「TPP参加を建設的にとらえ、国際競争力のない産業を守ってきた構図を変えていかないと。日本の農業の強化には数十兆円かかるとの試算もあるが、ここは思い切ってお金を使い、農業を産業化する必要がある」
――具体的にはどんな方策が考えられますか。
「農地の売買や貸借をもっと簡単にできるようにして、農地を大規模化していく必要がある。農業生産法人のあり方も見直し、企業の参加も大いに求めるべきだ。若い担い手の育成も重要だ」
――それで日本の農業に競争力はつきますか。
「すべてを生き返らせるのは難しい。政府は自立できそうな分野と補助金をつけて残す分野、やめるべき分野を選別して戦略を立てるべきだ」
「国を開き、アジアをはじめ世界の成長市場を取り込むのが日本の成長戦略だ。TPPは今後のヒト・モノ・カネの移動を巡る世界的なルールになる。ルール作りに参画できる今を逃してはいけない。米国と協力してアジアを健全な自由経済圏に育て、そのメリットを享受していくべきだ」
――日本の産業界にとってのメリットは。
「すでに自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の取り組みの遅れによる関税の差が、韓国企業などとの国際競争で円高と同じくらい不利に働いている。TPPなどでこの差を埋めることができれば販売を伸ばせる。日本から輸出しやすい環境が整うと、国内工場の海外移転が減る可能性もある」
――農業への影響はどう考えますか。
「相当な痛手を被るだろうが、農業の競争力がないのは以前からの問題だ。政府による農家への補償の原資は国民の税金。高いお金で輸入農産物を買っているのも国民だ。こうした国民負担をいつまでも続けるわけにはいかない」
「TPP参加を建設的にとらえ、国際競争力のない産業を守ってきた構図を変えていかないと。日本の農業の強化には数十兆円かかるとの試算もあるが、ここは思い切ってお金を使い、農業を産業化する必要がある」
――具体的にはどんな方策が考えられますか。
「農地の売買や貸借をもっと簡単にできるようにして、農地を大規模化していく必要がある。農業生産法人のあり方も見直し、企業の参加も大いに求めるべきだ。若い担い手の育成も重要だ」
――それで日本の農業に競争力はつきますか。
「すべてを生き返らせるのは難しい。政府は自立できそうな分野と補助金をつけて残す分野、やめるべき分野を選別して戦略を立てるべきだ」
:2010:11/04/09:40 ++ 対ロ、強硬策に出ず、大使一時帰国、関係悪化懸念、歯舞・色丹訪問は警戒。
政府は3日、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問を受け、河野雅治駐ロシア大使を一時帰国させて事実上の「対抗措置」とする一方、首脳会談は実施で調整を進め、協力関係は不変との姿勢を強調した。政府内では「大統領の訪問は対日けん制より、大統領選をにらんだ国内対策だろう」との見方が多く、現時点でこれ以上の強硬策を打ち出すのは得策ではないとの判断だ。(1面参照)
前原誠司外相は河野大使の報告を受けた後、記者団に「今回はあくまで一時帰国で、対抗措置ではない」と語った。政府関係者は外交上の抗議の意味を表す「召還」ではないとも繰り返している。
■首脳会談を口実に
主要国の首脳が来日して会談する場合、大使は一時帰国して首相と打ち合わせるのが通例になっている。今月中旬に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)で日ロ首脳会談が予定されており、河野大使はやや早めに「一時帰国」させた、という理屈だ。
半面、ロシアが実効支配している北方領土への訪問に対抗策をとらなければ、既成事実化が進む。外務省幹部は「一時帰国は、実効支配されている以上、拳を振り上げる必要があるとの姿勢を示した措置だ」と明言する。一時帰国は国内的には「事実上の対抗措置」と受け止めてもらうことを織り込んだ、苦肉の策でもある。
APEC首脳会議を主宰する菅直人首相にとって、緊張が続く中国に加え、ロシアとの関係も悪化すれば、外交の「失点」は計り知れないダメージにもなりかねない。まずは一時的な対応策でしのぎ、本格的な対応は事態の推移を見極めて対応する構えだ。河野大使の報告を受けた首相は改めて外相、仙谷由人官房長官と協議する予定だ。
■限られる追加措置
現時点で想定される追加の対抗措置は大使の帰国時期を遅らせるなど、限られている。首相官邸と外務省は今月中旬の首脳会談を見極め、最終判断する。3日の協議では、訪問の理由は「2012年の大統領選に向けた強い指導力のアピール」と報告された。
不透明な要素もある。メドベージェフ大統領が国後島に続いて歯舞、色丹両島も訪問する予定がある、とラブロフ外相が言明したことだ。歯舞と色丹は1956年の日ソ共同宣言で、平和条約の締結後に日本へ引き渡すと明記された。外務省幹部は「大統領が両島を訪問すれば、次元が違う問題になる」と懸念を隠さない。
9月にメドベージェフ大統領が北方領土訪問の考えを示して以降、政府内の危機感は薄かった。今後も予断はできない。
前原誠司外相は河野大使の報告を受けた後、記者団に「今回はあくまで一時帰国で、対抗措置ではない」と語った。政府関係者は外交上の抗議の意味を表す「召還」ではないとも繰り返している。
■首脳会談を口実に
主要国の首脳が来日して会談する場合、大使は一時帰国して首相と打ち合わせるのが通例になっている。今月中旬に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)で日ロ首脳会談が予定されており、河野大使はやや早めに「一時帰国」させた、という理屈だ。
半面、ロシアが実効支配している北方領土への訪問に対抗策をとらなければ、既成事実化が進む。外務省幹部は「一時帰国は、実効支配されている以上、拳を振り上げる必要があるとの姿勢を示した措置だ」と明言する。一時帰国は国内的には「事実上の対抗措置」と受け止めてもらうことを織り込んだ、苦肉の策でもある。
APEC首脳会議を主宰する菅直人首相にとって、緊張が続く中国に加え、ロシアとの関係も悪化すれば、外交の「失点」は計り知れないダメージにもなりかねない。まずは一時的な対応策でしのぎ、本格的な対応は事態の推移を見極めて対応する構えだ。河野大使の報告を受けた首相は改めて外相、仙谷由人官房長官と協議する予定だ。
■限られる追加措置
現時点で想定される追加の対抗措置は大使の帰国時期を遅らせるなど、限られている。首相官邸と外務省は今月中旬の首脳会談を見極め、最終判断する。3日の協議では、訪問の理由は「2012年の大統領選に向けた強い指導力のアピール」と報告された。
不透明な要素もある。メドベージェフ大統領が国後島に続いて歯舞、色丹両島も訪問する予定がある、とラブロフ外相が言明したことだ。歯舞と色丹は1956年の日ソ共同宣言で、平和条約の締結後に日本へ引き渡すと明記された。外務省幹部は「大統領が両島を訪問すれば、次元が違う問題になる」と懸念を隠さない。
9月にメドベージェフ大統領が北方領土訪問の考えを示して以降、政府内の危機感は薄かった。今後も予断はできない。
:2010:11/04/09:04 ++ オバマ民主大敗―雇用低迷で保守回帰(2010年米中間選挙)
米選挙で最初に「小さな政府」を掲げて戦ったのは1924年の大統領選に勝った共和党のカルビン・クーリッジだそうだ。第1次大戦後の好況期と、リーマン・ショック以来の景気低迷を抜け出せない現在とを一緒にすることはできないが、中間層の不安が自助自立という建国の原点への回帰を促したという意味では似ているといえなくもない。
「私は違うけど、気持ちは分かるわ」
選挙戦終盤に訪れた中西部ウィスコンシン州。人口2000人ほどの田舎町ボールドウィンで会ったダイアン・ロッカビーさんに中間選挙の台風の目になった保守派の草の根運動「茶会党(Tea party)」について聞くと、こんな答えが返って来た。
「学校で進化論を教えるな」など保守派の過激な主張には共和党でもまゆをひそめる人が多い。だが、景気はいつになれば回復するのか。なけなしの資産を失いたくない。増税などもってのほかだ。そんな不満の高まりの受け皿となったのは間違いない。
オバマ大統領は敗北がはっきりした2日夜、ジョン・ベイナー下院院内総務ら共和党首脳に電話して「共通の基盤を見つけるために連携しよう」と呼びかけた。だが、皮肉なことに苦戦しながらも勝ち上がった民主党議員の多くは筋金入りのリベラル派だ。共和党との境界があいまいな中道派ほど落選しており、共和党との協調を模索したい大統領の思いと裏腹に民主党自体はむしろ左旋回しかねない。
勢いづく共和党は2年後の大統領選をにらみ、オバマ氏の手柄づくりに協力する気はない。米議会は与野党の不毛な泥仕合が続きそうだ。
■「変革」に失望
こうした政治の漂流は米国だけで起きているのではない。景気と雇用の低迷がもたらした保守回帰の潮流の中で、既得権益にしがみつく人々と、新興層の利益をどう均衡させるのか。オバマ政権の苦闘は欧州にも、そして日本にも当てはまる。
さらにいえば、台頭する中国やインドなど新興勢力と、それに振り回される米国や日本との関係も同じ構図。米政治の混迷により利益争奪戦の二重、三重にもつれた糸をほぐすのはさらに難しくなった。
景気刺激か、財政再建か、などで大きな開きのある民主党と共和党が歩調をそろえることができるとすればどこか。
「牛肉はどうするのか」。9月、環太平洋経済連携協定(TPP)参加への根回しのためにワシントン入りした日本政府関係者はホワイトハウス高官にいきなり難詰された。言葉を濁していると、高官は「農業問題の国内調整はできているのか。日本が入ると交渉速度が遅くなる」などと顔をしかめたという。
海外への輸出拡大はオバマ政権の看板政策の一つであり、牛肉輸出問題での強硬姿勢ならば共和党の後押しが期待できる。
東アジアの安全保障への影響も免れない。オバマ流の対話外交を共和党は「弱腰」と批判してきた。ねじれ議会が対中制裁法案を可決した場合、オバマ氏は拒否権を発動するのかどうかの難しい判断を迫られる。
2年前「チェンジ(変革)」を掲げて登場したオバマ氏。その路線の修正を促す中間選挙の結果は、日本にとってもひとごとではない。
「私は違うけど、気持ちは分かるわ」
選挙戦終盤に訪れた中西部ウィスコンシン州。人口2000人ほどの田舎町ボールドウィンで会ったダイアン・ロッカビーさんに中間選挙の台風の目になった保守派の草の根運動「茶会党(Tea party)」について聞くと、こんな答えが返って来た。
「学校で進化論を教えるな」など保守派の過激な主張には共和党でもまゆをひそめる人が多い。だが、景気はいつになれば回復するのか。なけなしの資産を失いたくない。増税などもってのほかだ。そんな不満の高まりの受け皿となったのは間違いない。
オバマ大統領は敗北がはっきりした2日夜、ジョン・ベイナー下院院内総務ら共和党首脳に電話して「共通の基盤を見つけるために連携しよう」と呼びかけた。だが、皮肉なことに苦戦しながらも勝ち上がった民主党議員の多くは筋金入りのリベラル派だ。共和党との境界があいまいな中道派ほど落選しており、共和党との協調を模索したい大統領の思いと裏腹に民主党自体はむしろ左旋回しかねない。
勢いづく共和党は2年後の大統領選をにらみ、オバマ氏の手柄づくりに協力する気はない。米議会は与野党の不毛な泥仕合が続きそうだ。
■「変革」に失望
こうした政治の漂流は米国だけで起きているのではない。景気と雇用の低迷がもたらした保守回帰の潮流の中で、既得権益にしがみつく人々と、新興層の利益をどう均衡させるのか。オバマ政権の苦闘は欧州にも、そして日本にも当てはまる。
さらにいえば、台頭する中国やインドなど新興勢力と、それに振り回される米国や日本との関係も同じ構図。米政治の混迷により利益争奪戦の二重、三重にもつれた糸をほぐすのはさらに難しくなった。
景気刺激か、財政再建か、などで大きな開きのある民主党と共和党が歩調をそろえることができるとすればどこか。
「牛肉はどうするのか」。9月、環太平洋経済連携協定(TPP)参加への根回しのためにワシントン入りした日本政府関係者はホワイトハウス高官にいきなり難詰された。言葉を濁していると、高官は「農業問題の国内調整はできているのか。日本が入ると交渉速度が遅くなる」などと顔をしかめたという。
海外への輸出拡大はオバマ政権の看板政策の一つであり、牛肉輸出問題での強硬姿勢ならば共和党の後押しが期待できる。
東アジアの安全保障への影響も免れない。オバマ流の対話外交を共和党は「弱腰」と批判してきた。ねじれ議会が対中制裁法案を可決した場合、オバマ氏は拒否権を発動するのかどうかの難しい判断を迫られる。
2年前「チェンジ(変革)」を掲げて登場したオバマ氏。その路線の修正を促す中間選挙の結果は、日本にとってもひとごとではない。
:2010:11/04/08:59 ++ オバマ民主大敗、下院で与野党逆転、上院は過半死守(2010年米中間選挙)
【ワシントン=弟子丸幸子】オバマ米政権への事実上の信任投票となる米中間選挙は2日、投票、即日開票された。政権の経済政策への不満を背景に、下院は野党・共和党が4年ぶりに過半数を奪回。与党・民主党が60議席以上を減らす72年ぶりの歴史的敗北を喫する情勢だ。一方、上院では民主党が過半数を死守した。求心力が低下するオバマ大統領に厳しい前途が待ち受ける。(米中間選挙は3面「きょうのことば」参照)
選挙結果を受けて、上院と下院で多数派政党が異なる議会の「ねじれ」が10年ぶりに生じることになる。大統領は2日夜、共和党の議会指導部に相次ぎ電話し、超党派の協議に臨む意向を伝えた。
景気対策や税制政策をはじめ、両党は隔たりが大きい。オバマ政権が目指してきた経済政策の実現は困難になり、共和党との妥協に踏み切る現実路線を余儀なくされる公算が大きい。経済政策では、富裕層優遇と批判し、打ち切りを目指してきたブッシュ前政権の減税策の暫定延長が浮上。規制緩和など企業の活動を後押しする政策導入への期待も高まっている。
中間選挙では上院(任期6年)が全100議席の3分の1に補選を含めた37議席、下院(任期2年)は全435議席を争った。同時にカリフォルニア州など37州で知事選を実施した。
米CNNテレビによると、日本時間の4日午前1時現在、下院は共和党が過半数(218)を大幅に上回る239議席(改選前178議席)を確保。民主党は185議席(同255議席)にとどまっている。CNN予想では民主党が63議席を失う情勢。クリントン政権下の1994年の52議席減を上回り、中間選の下院選ではルーズベルト政権の38年(71議席減)以来の記録的惨敗となる見通し。
一方、上院では民主党が11議席を固め、かろうじて多数派の51議席を確保した。共和党は46議席を確実にしている。改選37議席のうち23議席を確保する大幅躍進。イリノイ州上院選ではオバマ大統領の地元の議席も共和党が奪った。焦点だった民主党重鎮のリード上院院内総務(ネバダ州)は辛勝した。
中間選挙を経た米議会の新会期は来年1月に始まる。上下両院の多数派政党が異なる「ねじれ議会」はブッシュ前政権の2001年(選挙は00年)以来で、戦後では5回目。
下院議長への就任が有力視されるベイナー下院院内総務は2日夜、「米国民は間違えようのないメッセージを大統領に送った。『路線のチェンジ』だ」と語り、首都ワシントンの開票集会で勝利を宣言。オバマ大統領への対決姿勢を鮮明にした。
「チェンジ(変革)」を掲げて登場したオバマ大統領と民主党は景気の低迷や失業率の高止まりを背景に、国民に政権2年の成果を実感させることができずに敗北した。
選挙結果を受けて、上院と下院で多数派政党が異なる議会の「ねじれ」が10年ぶりに生じることになる。大統領は2日夜、共和党の議会指導部に相次ぎ電話し、超党派の協議に臨む意向を伝えた。
景気対策や税制政策をはじめ、両党は隔たりが大きい。オバマ政権が目指してきた経済政策の実現は困難になり、共和党との妥協に踏み切る現実路線を余儀なくされる公算が大きい。経済政策では、富裕層優遇と批判し、打ち切りを目指してきたブッシュ前政権の減税策の暫定延長が浮上。規制緩和など企業の活動を後押しする政策導入への期待も高まっている。
中間選挙では上院(任期6年)が全100議席の3分の1に補選を含めた37議席、下院(任期2年)は全435議席を争った。同時にカリフォルニア州など37州で知事選を実施した。
米CNNテレビによると、日本時間の4日午前1時現在、下院は共和党が過半数(218)を大幅に上回る239議席(改選前178議席)を確保。民主党は185議席(同255議席)にとどまっている。CNN予想では民主党が63議席を失う情勢。クリントン政権下の1994年の52議席減を上回り、中間選の下院選ではルーズベルト政権の38年(71議席減)以来の記録的惨敗となる見通し。
一方、上院では民主党が11議席を固め、かろうじて多数派の51議席を確保した。共和党は46議席を確実にしている。改選37議席のうち23議席を確保する大幅躍進。イリノイ州上院選ではオバマ大統領の地元の議席も共和党が奪った。焦点だった民主党重鎮のリード上院院内総務(ネバダ州)は辛勝した。
中間選挙を経た米議会の新会期は来年1月に始まる。上下両院の多数派政党が異なる「ねじれ議会」はブッシュ前政権の2001年(選挙は00年)以来で、戦後では5回目。
下院議長への就任が有力視されるベイナー下院院内総務は2日夜、「米国民は間違えようのないメッセージを大統領に送った。『路線のチェンジ』だ」と語り、首都ワシントンの開票集会で勝利を宣言。オバマ大統領への対決姿勢を鮮明にした。
「チェンジ(変革)」を掲げて登場したオバマ大統領と民主党は景気の低迷や失業率の高止まりを背景に、国民に政権2年の成果を実感させることができずに敗北した。
:2010:11/02/09:28 ++ 原発輸出日本モデルの挑戦(上)ベトナムで逆転受注―包括支援、官民で正攻法。
10月31日、日本がベトナムから原子力発電所建設を受注することが固まった。新興国での受注レースで敗退が続いた後に一矢を報いたが、受注の決め手は何だったのか。ベトナムで編み出した受注の「日本モデル」は各地で進む他の商談にも通用するのか。ベトナムでの原発受注の成果と、今後の輸出のための課題を検証する。
大臣訪越が効果
「原発建設でベトナムが示した優遇貸し付けや技術移転などの条件を満たすことを保証する」。31日、ベトナムのズン首相と会談した菅直人首相は、政治的な決断で原発受注を後押ししたことを明言した。数年に及ぶ日越の水面下の交渉が結実した瞬間だった。
日本の原子力関係者に衝撃が走ったのは今年の初め。ベトナムの第1期工事(原発2基)の商談でロシアに敗退したことが伝わった。ベトナムは2030年までに10基以上の原発建設構想を持つ有力市場。ロシアは日本などより大幅な安値を示した上、潜水艦売却など軍事協力を申し出たとされる。日本勢は09年末にはアラブ首長国連邦(UAE)での受注も韓国にさらわれており、新興国勢に連敗した。
ベトナム2期プロジェクトでのライバルは4カ国。軍事協力をちらつかせるロシア、燃料サイクルで強みを持つフランス、低価格と政府保証を売りものにする中国、韓国。先進国だけが手がけてきた原発ビジネスの構図は様変わりした。日本が苦手とする分野での競争だけに、一時は劣勢が伝えられた。
「節目は5月だった」。経済産業省幹部は原発商談の流れを変えた最大の要因は「仙谷由人国家戦略相(現官房長官)の訪越だった」と振り返る。ベトナム政府や共産党幹部と会談した同相は帰国すると「最終目標は日越首脳会談を開催する10月末」(経産省)との期限を示し、一時は「死に体」(プロジェクト関係者)といわれた官民の「オールジャパン体制」を立て直した。
その後の対応は早かった。日本の官民は8月までに初の包括支援策「越日原子力協力パッケージ」を策定。民間側には熱意に差があり、足並みはそろわなかったが、経済産業省に加えて首相官邸が後押しした。
人材開発から資金の支援、核燃料の安定供給、放射性廃棄物の管理までベトナムの条件すべてを満たす案をまとめると、8月末に直嶋正行経産相(当時)と東京電力や東芝など各社首脳が訪越して提案した。
安値競争と一線
ライバル対策にも目を配った。仏向けでは核燃料の安定調達を打ち出した。安値受注を狙う中国と韓国には事業費の85%を上限に低利融資する方針で対抗。軍事協力を武器にするロシアには、最新型の火力発電所や送電線網などインフラ構築をセットとすることで対処した。
31日に受注が正式に固まると、日本の交渉担当者は「正攻法を貫いた」と胸を張った。日本の原発稼働の実績や安定性などが評価され、「安値競争などとは一線を画した」と強調する。原発輸出は自動車や電気製品の輸出とは異なる。相手国で長期間安全に稼働させるためのコストや体制整備をおろそかにできないことは間違いない。
ただライバル国が安値や軍事協力で攻勢をかける中、今後の受注でこうした官民一体の「日本モデル」がどこまで通用するかは不透明だ。ベトナムでも主契約企業が決まるのはまだ先。企業側からは輸出ビジネスの「本番はこれから」との本音が漏れている。
大臣訪越が効果
「原発建設でベトナムが示した優遇貸し付けや技術移転などの条件を満たすことを保証する」。31日、ベトナムのズン首相と会談した菅直人首相は、政治的な決断で原発受注を後押ししたことを明言した。数年に及ぶ日越の水面下の交渉が結実した瞬間だった。
日本の原子力関係者に衝撃が走ったのは今年の初め。ベトナムの第1期工事(原発2基)の商談でロシアに敗退したことが伝わった。ベトナムは2030年までに10基以上の原発建設構想を持つ有力市場。ロシアは日本などより大幅な安値を示した上、潜水艦売却など軍事協力を申し出たとされる。日本勢は09年末にはアラブ首長国連邦(UAE)での受注も韓国にさらわれており、新興国勢に連敗した。
ベトナム2期プロジェクトでのライバルは4カ国。軍事協力をちらつかせるロシア、燃料サイクルで強みを持つフランス、低価格と政府保証を売りものにする中国、韓国。先進国だけが手がけてきた原発ビジネスの構図は様変わりした。日本が苦手とする分野での競争だけに、一時は劣勢が伝えられた。
「節目は5月だった」。経済産業省幹部は原発商談の流れを変えた最大の要因は「仙谷由人国家戦略相(現官房長官)の訪越だった」と振り返る。ベトナム政府や共産党幹部と会談した同相は帰国すると「最終目標は日越首脳会談を開催する10月末」(経産省)との期限を示し、一時は「死に体」(プロジェクト関係者)といわれた官民の「オールジャパン体制」を立て直した。
その後の対応は早かった。日本の官民は8月までに初の包括支援策「越日原子力協力パッケージ」を策定。民間側には熱意に差があり、足並みはそろわなかったが、経済産業省に加えて首相官邸が後押しした。
人材開発から資金の支援、核燃料の安定供給、放射性廃棄物の管理までベトナムの条件すべてを満たす案をまとめると、8月末に直嶋正行経産相(当時)と東京電力や東芝など各社首脳が訪越して提案した。
安値競争と一線
ライバル対策にも目を配った。仏向けでは核燃料の安定調達を打ち出した。安値受注を狙う中国と韓国には事業費の85%を上限に低利融資する方針で対抗。軍事協力を武器にするロシアには、最新型の火力発電所や送電線網などインフラ構築をセットとすることで対処した。
31日に受注が正式に固まると、日本の交渉担当者は「正攻法を貫いた」と胸を張った。日本の原発稼働の実績や安定性などが評価され、「安値競争などとは一線を画した」と強調する。原発輸出は自動車や電気製品の輸出とは異なる。相手国で長期間安全に稼働させるためのコストや体制整備をおろそかにできないことは間違いない。
ただライバル国が安値や軍事協力で攻勢をかける中、今後の受注でこうした官民一体の「日本モデル」がどこまで通用するかは不透明だ。ベトナムでも主契約企業が決まるのはまだ先。企業側からは輸出ビジネスの「本番はこれから」との本音が漏れている。
:2010:11/02/09:16 ++ 内政優先、ロシア強硬、大統領、北方領土入り断行、日ロ関係、袋小路に。
ロシアの最高首脳として初めてメドベージェフ大統領が1日に北方領土の訪問に踏み切り、日ロ関係の冷却化は避けられなくなった。強硬姿勢が前面に出た動きの背景には、2012年の大統領選などを控えるロシア側の政治の内向き志向と、停滞感が強い日本外交への失望感がうかがえる。一方、菅直人政権は尖閣諸島を巡る中国との摩擦への対応と併せて、また重い外交課題を抱えた形だ。(1面参照)
【モスクワ=石川陽平】日本の中止要請を無視したメドベージェフ大統領による国後島の訪問は、ロシア側が日本との平和条約を結ぶ交渉に当面は見切りを付けたことを意味する。ロシアは昨年後半から特に、領土問題で「取引」に応じない日本に不満を募らせていた。11年の議会選、12年の大統領選に向け「選挙の季節」を迎えたロシアは保守化の流れが強まる。
激しい雨が降る悪天候の中、大統領は無理を押して小型機で国後島に入った。約4時間の滞在中、水産加工施設を訪れ、魚を買い、住民の声に耳を傾けた。大統領は「ロシアの中心部と同じように、ここでもより良い生活が送れるようになる」と強調した。
首都モスクワから遠く離れた辺境の地で、大統領は住民の生活にきめ細かく配慮する指導者の姿をアピールした。
政権の内向き志向は今夏以降、目立ってきた。9月10日に開いた「世界政策フォーラム」で、大統領は政治改革を段階的に進め「緩やかな民主化」にとどめる考えを表明。9月末には対立するルシコフ・モスクワ市長を解任し、10月10日の地方選では与党・統一ロシアの圧勝を導いた。
一方で有権者の支持が望みにくい日本との領土問題は、切り捨ててもよい外交案件に優先度が下がった。7月初めに北方領土の択捉島で軍事演習を実施。7月末には日本が第2次世界大戦の降伏文書に署名した9月2日を記念日にする改正法が成立するなど日本へのけん制を強めてきた。
提案なしに失望
日ロ外交筋によると、日本外交への失望感は昨年末までに深まっていたもようだ。1956年の日ソ共同宣言をまとめた祖父・一郎氏の遺志を引き継ぐ鳩山由紀夫氏が首相就任直後の昨年9月「半年とか1年とか」と期限に言及。事態打開の腹案があるかのように対ロ関係の改善に意欲をみせたが、「具体的な提案は日本側から何もなかった」とされる。
ロシア側は昨年秋ごろから、しきりに2島返還での決着を示唆するとともに、北方四島での共同経済活動を打診してきた。だが鳩山氏は昨年11月の日ロ首脳会談で「2島返還では国民は理解できない。それを超えた『独創的アプローチ』があると期待している」と突っぱね、平和条約交渉は完全に行き詰まった。
ロシア側からみれば、交渉を動かすには政権が「選挙の季節」に入る前の昨年末までに何らかの前向きな材料が必要だった。今は日本に期待が裏切られたとの思いから強硬論が台頭。12年の大統領選後を見据えても領土問題の視界は晴れない。
「常識的には行かないと思っていた」。外務省幹部はロシア大統領の北方領土訪問に戸惑いの表情を浮かべた。計画が浮上した9月末、省内では「本気だ」との警戒感と「選挙向けポーズ」との楽観論が交錯。「ロシア通でも真意は読めなかった」(政府高官)という。在京ロシア大使館なども「具体的な計画はない」と言を左右にし、確証を得られないまま1日を迎えた。
ロシア大統領の初訪問という重大事態に至っても、政府は具体的な対抗措置を固めきれない。菅直人首相は1日の衆院予算委員会で「領土をどう守るのか」との質問に「前原誠司外相が駐日ロシア大使を呼び抗議している」と語るにとどめた。
日ロ協力の象徴はエネルギー事業だ。サハリン沖では6案件が進み、サハリン1、2に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や商社が参加。東シベリアから日本向けの石油パイプラインも一部開通した。
日本の原油輸入量に占めるロシアの割合は2009年が約4%。今年8月時点で約9%に高まった。
JOGMECは先に東シベリアでの石油ガス田発見を発表。「民間主体の話が多く、政府として協力を断ち切るような制裁を打ち出しにくい」(政府筋)状況にある。
日本の対ロ人道支援は廃止の流れだ。北方領土の住民支援は最大で年間30億円程度だったが、鈴木宗男前衆院議員側が絡む事業の問題の影響で段階的に廃止。日本の経済力の低下もあり、資金面の魅力をテコに領土交渉を進める戦術は通用しにくくなっている。
北方領土を巡り米国は1956年以来、日本を支持。中国は日本との国交正常化後、日本寄りだったが、対ソ関係を修復した80年代後半から同問題に触れなくなった。
【モスクワ=石川陽平】日本の中止要請を無視したメドベージェフ大統領による国後島の訪問は、ロシア側が日本との平和条約を結ぶ交渉に当面は見切りを付けたことを意味する。ロシアは昨年後半から特に、領土問題で「取引」に応じない日本に不満を募らせていた。11年の議会選、12年の大統領選に向け「選挙の季節」を迎えたロシアは保守化の流れが強まる。
激しい雨が降る悪天候の中、大統領は無理を押して小型機で国後島に入った。約4時間の滞在中、水産加工施設を訪れ、魚を買い、住民の声に耳を傾けた。大統領は「ロシアの中心部と同じように、ここでもより良い生活が送れるようになる」と強調した。
首都モスクワから遠く離れた辺境の地で、大統領は住民の生活にきめ細かく配慮する指導者の姿をアピールした。
政権の内向き志向は今夏以降、目立ってきた。9月10日に開いた「世界政策フォーラム」で、大統領は政治改革を段階的に進め「緩やかな民主化」にとどめる考えを表明。9月末には対立するルシコフ・モスクワ市長を解任し、10月10日の地方選では与党・統一ロシアの圧勝を導いた。
一方で有権者の支持が望みにくい日本との領土問題は、切り捨ててもよい外交案件に優先度が下がった。7月初めに北方領土の択捉島で軍事演習を実施。7月末には日本が第2次世界大戦の降伏文書に署名した9月2日を記念日にする改正法が成立するなど日本へのけん制を強めてきた。
提案なしに失望
日ロ外交筋によると、日本外交への失望感は昨年末までに深まっていたもようだ。1956年の日ソ共同宣言をまとめた祖父・一郎氏の遺志を引き継ぐ鳩山由紀夫氏が首相就任直後の昨年9月「半年とか1年とか」と期限に言及。事態打開の腹案があるかのように対ロ関係の改善に意欲をみせたが、「具体的な提案は日本側から何もなかった」とされる。
ロシア側は昨年秋ごろから、しきりに2島返還での決着を示唆するとともに、北方四島での共同経済活動を打診してきた。だが鳩山氏は昨年11月の日ロ首脳会談で「2島返還では国民は理解できない。それを超えた『独創的アプローチ』があると期待している」と突っぱね、平和条約交渉は完全に行き詰まった。
ロシア側からみれば、交渉を動かすには政権が「選挙の季節」に入る前の昨年末までに何らかの前向きな材料が必要だった。今は日本に期待が裏切られたとの思いから強硬論が台頭。12年の大統領選後を見据えても領土問題の視界は晴れない。
「常識的には行かないと思っていた」。外務省幹部はロシア大統領の北方領土訪問に戸惑いの表情を浮かべた。計画が浮上した9月末、省内では「本気だ」との警戒感と「選挙向けポーズ」との楽観論が交錯。「ロシア通でも真意は読めなかった」(政府高官)という。在京ロシア大使館なども「具体的な計画はない」と言を左右にし、確証を得られないまま1日を迎えた。
ロシア大統領の初訪問という重大事態に至っても、政府は具体的な対抗措置を固めきれない。菅直人首相は1日の衆院予算委員会で「領土をどう守るのか」との質問に「前原誠司外相が駐日ロシア大使を呼び抗議している」と語るにとどめた。
日ロ協力の象徴はエネルギー事業だ。サハリン沖では6案件が進み、サハリン1、2に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や商社が参加。東シベリアから日本向けの石油パイプラインも一部開通した。
日本の原油輸入量に占めるロシアの割合は2009年が約4%。今年8月時点で約9%に高まった。
JOGMECは先に東シベリアでの石油ガス田発見を発表。「民間主体の話が多く、政府として協力を断ち切るような制裁を打ち出しにくい」(政府筋)状況にある。
日本の対ロ人道支援は廃止の流れだ。北方領土の住民支援は最大で年間30億円程度だったが、鈴木宗男前衆院議員側が絡む事業の問題の影響で段階的に廃止。日本の経済力の低下もあり、資金面の魅力をテコに領土交渉を進める戦術は通用しにくくなっている。
北方領土を巡り米国は1956年以来、日本を支持。中国は日本との国交正常化後、日本寄りだったが、対ソ関係を修復した80年代後半から同問題に触れなくなった。
:2010:11/02/09:16 ++ 内政優先、ロシア強硬、大統領、北方領土入り断行、日ロ関係、袋小路に。
ロシアの最高首脳として初めてメドベージェフ大統領が1日に北方領土の訪問に踏み切り、日ロ関係の冷却化は避けられなくなった。強硬姿勢が前面に出た動きの背景には、2012年の大統領選などを控えるロシア側の政治の内向き志向と、停滞感が強い日本外交への失望感がうかがえる。一方、菅直人政権は尖閣諸島を巡る中国との摩擦への対応と併せて、また重い外交課題を抱えた形だ。(1面参照)
【モスクワ=石川陽平】日本の中止要請を無視したメドベージェフ大統領による国後島の訪問は、ロシア側が日本との平和条約を結ぶ交渉に当面は見切りを付けたことを意味する。ロシアは昨年後半から特に、領土問題で「取引」に応じない日本に不満を募らせていた。11年の議会選、12年の大統領選に向け「選挙の季節」を迎えたロシアは保守化の流れが強まる。
激しい雨が降る悪天候の中、大統領は無理を押して小型機で国後島に入った。約4時間の滞在中、水産加工施設を訪れ、魚を買い、住民の声に耳を傾けた。大統領は「ロシアの中心部と同じように、ここでもより良い生活が送れるようになる」と強調した。
首都モスクワから遠く離れた辺境の地で、大統領は住民の生活にきめ細かく配慮する指導者の姿をアピールした。
政権の内向き志向は今夏以降、目立ってきた。9月10日に開いた「世界政策フォーラム」で、大統領は政治改革を段階的に進め「緩やかな民主化」にとどめる考えを表明。9月末には対立するルシコフ・モスクワ市長を解任し、10月10日の地方選では与党・統一ロシアの圧勝を導いた。
一方で有権者の支持が望みにくい日本との領土問題は、切り捨ててもよい外交案件に優先度が下がった。7月初めに北方領土の択捉島で軍事演習を実施。7月末には日本が第2次世界大戦の降伏文書に署名した9月2日を記念日にする改正法が成立するなど日本へのけん制を強めてきた。
提案なしに失望
日ロ外交筋によると、日本外交への失望感は昨年末までに深まっていたもようだ。1956年の日ソ共同宣言をまとめた祖父・一郎氏の遺志を引き継ぐ鳩山由紀夫氏が首相就任直後の昨年9月「半年とか1年とか」と期限に言及。事態打開の腹案があるかのように対ロ関係の改善に意欲をみせたが、「具体的な提案は日本側から何もなかった」とされる。
ロシア側は昨年秋ごろから、しきりに2島返還での決着を示唆するとともに、北方四島での共同経済活動を打診してきた。だが鳩山氏は昨年11月の日ロ首脳会談で「2島返還では国民は理解できない。それを超えた『独創的アプローチ』があると期待している」と突っぱね、平和条約交渉は完全に行き詰まった。
ロシア側からみれば、交渉を動かすには政権が「選挙の季節」に入る前の昨年末までに何らかの前向きな材料が必要だった。今は日本に期待が裏切られたとの思いから強硬論が台頭。12年の大統領選後を見据えても領土問題の視界は晴れない。
「常識的には行かないと思っていた」。外務省幹部はロシア大統領の北方領土訪問に戸惑いの表情を浮かべた。計画が浮上した9月末、省内では「本気だ」との警戒感と「選挙向けポーズ」との楽観論が交錯。「ロシア通でも真意は読めなかった」(政府高官)という。在京ロシア大使館なども「具体的な計画はない」と言を左右にし、確証を得られないまま1日を迎えた。
ロシア大統領の初訪問という重大事態に至っても、政府は具体的な対抗措置を固めきれない。菅直人首相は1日の衆院予算委員会で「領土をどう守るのか」との質問に「前原誠司外相が駐日ロシア大使を呼び抗議している」と語るにとどめた。
日ロ協力の象徴はエネルギー事業だ。サハリン沖では6案件が進み、サハリン1、2に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や商社が参加。東シベリアから日本向けの石油パイプラインも一部開通した。
日本の原油輸入量に占めるロシアの割合は2009年が約4%。今年8月時点で約9%に高まった。
JOGMECは先に東シベリアでの石油ガス田発見を発表。「民間主体の話が多く、政府として協力を断ち切るような制裁を打ち出しにくい」(政府筋)状況にある。
日本の対ロ人道支援は廃止の流れだ。北方領土の住民支援は最大で年間30億円程度だったが、鈴木宗男前衆院議員側が絡む事業の問題の影響で段階的に廃止。日本の経済力の低下もあり、資金面の魅力をテコに領土交渉を進める戦術は通用しにくくなっている。
北方領土を巡り米国は1956年以来、日本を支持。中国は日本との国交正常化後、日本寄りだったが、対ソ関係を修復した80年代後半から同問題に触れなくなった。
【モスクワ=石川陽平】日本の中止要請を無視したメドベージェフ大統領による国後島の訪問は、ロシア側が日本との平和条約を結ぶ交渉に当面は見切りを付けたことを意味する。ロシアは昨年後半から特に、領土問題で「取引」に応じない日本に不満を募らせていた。11年の議会選、12年の大統領選に向け「選挙の季節」を迎えたロシアは保守化の流れが強まる。
激しい雨が降る悪天候の中、大統領は無理を押して小型機で国後島に入った。約4時間の滞在中、水産加工施設を訪れ、魚を買い、住民の声に耳を傾けた。大統領は「ロシアの中心部と同じように、ここでもより良い生活が送れるようになる」と強調した。
首都モスクワから遠く離れた辺境の地で、大統領は住民の生活にきめ細かく配慮する指導者の姿をアピールした。
政権の内向き志向は今夏以降、目立ってきた。9月10日に開いた「世界政策フォーラム」で、大統領は政治改革を段階的に進め「緩やかな民主化」にとどめる考えを表明。9月末には対立するルシコフ・モスクワ市長を解任し、10月10日の地方選では与党・統一ロシアの圧勝を導いた。
一方で有権者の支持が望みにくい日本との領土問題は、切り捨ててもよい外交案件に優先度が下がった。7月初めに北方領土の択捉島で軍事演習を実施。7月末には日本が第2次世界大戦の降伏文書に署名した9月2日を記念日にする改正法が成立するなど日本へのけん制を強めてきた。
提案なしに失望
日ロ外交筋によると、日本外交への失望感は昨年末までに深まっていたもようだ。1956年の日ソ共同宣言をまとめた祖父・一郎氏の遺志を引き継ぐ鳩山由紀夫氏が首相就任直後の昨年9月「半年とか1年とか」と期限に言及。事態打開の腹案があるかのように対ロ関係の改善に意欲をみせたが、「具体的な提案は日本側から何もなかった」とされる。
ロシア側は昨年秋ごろから、しきりに2島返還での決着を示唆するとともに、北方四島での共同経済活動を打診してきた。だが鳩山氏は昨年11月の日ロ首脳会談で「2島返還では国民は理解できない。それを超えた『独創的アプローチ』があると期待している」と突っぱね、平和条約交渉は完全に行き詰まった。
ロシア側からみれば、交渉を動かすには政権が「選挙の季節」に入る前の昨年末までに何らかの前向きな材料が必要だった。今は日本に期待が裏切られたとの思いから強硬論が台頭。12年の大統領選後を見据えても領土問題の視界は晴れない。
「常識的には行かないと思っていた」。外務省幹部はロシア大統領の北方領土訪問に戸惑いの表情を浮かべた。計画が浮上した9月末、省内では「本気だ」との警戒感と「選挙向けポーズ」との楽観論が交錯。「ロシア通でも真意は読めなかった」(政府高官)という。在京ロシア大使館なども「具体的な計画はない」と言を左右にし、確証を得られないまま1日を迎えた。
ロシア大統領の初訪問という重大事態に至っても、政府は具体的な対抗措置を固めきれない。菅直人首相は1日の衆院予算委員会で「領土をどう守るのか」との質問に「前原誠司外相が駐日ロシア大使を呼び抗議している」と語るにとどめた。
日ロ協力の象徴はエネルギー事業だ。サハリン沖では6案件が進み、サハリン1、2に石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や商社が参加。東シベリアから日本向けの石油パイプラインも一部開通した。
日本の原油輸入量に占めるロシアの割合は2009年が約4%。今年8月時点で約9%に高まった。
JOGMECは先に東シベリアでの石油ガス田発見を発表。「民間主体の話が多く、政府として協力を断ち切るような制裁を打ち出しにくい」(政府筋)状況にある。
日本の対ロ人道支援は廃止の流れだ。北方領土の住民支援は最大で年間30億円程度だったが、鈴木宗男前衆院議員側が絡む事業の問題の影響で段階的に廃止。日本の経済力の低下もあり、資金面の魅力をテコに領土交渉を進める戦術は通用しにくくなっている。
北方領土を巡り米国は1956年以来、日本を支持。中国は日本との国交正常化後、日本寄りだったが、対ソ関係を修復した80年代後半から同問題に触れなくなった。
:2010:11/02/08:58 ++ ロシア大統領、国後訪問、軸なき外交、重いツケ。
傷口に塩を塗られたという感じだろうか。尖閣諸島沖の中国漁船の衝突事件を機に日中関係が冷え込むなか、今度はロシアのメドベージェフ大統領が北方四島の国後島を訪問した。次々と突きつけられる日本外交への試練である。
「わが国の非常に重要な地域だ。近く必ず訪れる」。9月末、大統領がこう表明した時、日本では半信半疑だった。北方四島の領有権問題は日ロ間で未解決という共通認識のもと、歴代の指導者は日本への配慮もあって、ソ連時代も含めて訪問を見合わせてきたからだ。
なぜ、メドベージェフ大統領はこの時期に国後島訪問を強行したのか。
軽すぎる言動
まず挙げられるのは、2012年の次期大統領選を控えた国内対策だ。国民の愛国心を刺激する領土問題で、決して譲歩しない「強い大統領」を演出し、権力基盤を固めようとしたのだろう。ロシアの世論調査会社が昨年実施した調査では、国民の89%が「南クリール(北方領土)の日本への引き渡しに反対する」と回答している。
日本へのいらだちもある。ロシアの現政権はプーチン時代から、平和条約締結後の歯舞、色丹両島の返還を定めた1956年の日ソ共同宣言が「法的拘束力がある唯一の文書」との立場をとっている。だが、日本側は国後、択捉も含めた4島の主権要求を譲らない。
あるロシアの外交当局者は「日本が不法占拠を叫ぶたびに、ロシア大統領はかたくなになっている」と漏らしていた。
そして、日本の民主党政権の軽すぎる言動と軸を失った外交。これらが図らずも、大統領の国後島訪問を後押しした。
鳩山政権の発足後、米軍普天間基地の移設問題をめぐる日米間の亀裂は、日本外交の基軸である日米同盟を大きく揺るがした。日米安保を支えに東アジアで一定の「重し役」を担ってきた日本の漂流は、東アジアの力の均衡を崩し、情勢を一気に流動化させた。
中国がここにきて、日本が実効支配する尖閣諸島問題で領土要求を強めているのも、日米同盟の結束の弱さを見透かして、攻勢をかけている面が否定できない。ロシアもしかりである。
鳩山由紀夫前首相の罪は重い。首相就任時に「できれば半年」で領土問題を進展させたいと公言。日ロ双方に期待を持たせたが、在任中は一度も訪ロしなかった。今回、大統領は北方領土訪問を予告していたのに、民主党政権の対応は情報収集を含めて後手に回った。
日米同盟強固に
次は、核兵器開発を進める北朝鮮が北東アジアの安定を揺るがすような行動に出てくるかもしれない。クリントン米国務長官は中国の戴秉国国務委員との海南島での会談で、ソウルでの20カ国・地域(G20)首脳会議の際、北朝鮮が挑発的行動を取らぬよう中国に説得を求めたという。
日本の外交力の低下がアジアの至る所で、見透かされ始めている。そのツケはあまりに重い。
日本政府が大統領の北方領土訪問に対して厳重に抗議し、北方四島は「日本の固有の領土」と改めて反論するのは当然だ。
同時に重要なことは、日本外交の抜本的な立て直しだ。普天間問題を早期に決着させ、強固な日米同盟の再構築が最優先に挙げられるのは言うまでもない。韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などとの連携強化も不可欠である。
横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がその格好の機会になるはずだった。菅直人首相に覚悟と指導力はあるだろうか。
「わが国の非常に重要な地域だ。近く必ず訪れる」。9月末、大統領がこう表明した時、日本では半信半疑だった。北方四島の領有権問題は日ロ間で未解決という共通認識のもと、歴代の指導者は日本への配慮もあって、ソ連時代も含めて訪問を見合わせてきたからだ。
なぜ、メドベージェフ大統領はこの時期に国後島訪問を強行したのか。
軽すぎる言動
まず挙げられるのは、2012年の次期大統領選を控えた国内対策だ。国民の愛国心を刺激する領土問題で、決して譲歩しない「強い大統領」を演出し、権力基盤を固めようとしたのだろう。ロシアの世論調査会社が昨年実施した調査では、国民の89%が「南クリール(北方領土)の日本への引き渡しに反対する」と回答している。
日本へのいらだちもある。ロシアの現政権はプーチン時代から、平和条約締結後の歯舞、色丹両島の返還を定めた1956年の日ソ共同宣言が「法的拘束力がある唯一の文書」との立場をとっている。だが、日本側は国後、択捉も含めた4島の主権要求を譲らない。
あるロシアの外交当局者は「日本が不法占拠を叫ぶたびに、ロシア大統領はかたくなになっている」と漏らしていた。
そして、日本の民主党政権の軽すぎる言動と軸を失った外交。これらが図らずも、大統領の国後島訪問を後押しした。
鳩山政権の発足後、米軍普天間基地の移設問題をめぐる日米間の亀裂は、日本外交の基軸である日米同盟を大きく揺るがした。日米安保を支えに東アジアで一定の「重し役」を担ってきた日本の漂流は、東アジアの力の均衡を崩し、情勢を一気に流動化させた。
中国がここにきて、日本が実効支配する尖閣諸島問題で領土要求を強めているのも、日米同盟の結束の弱さを見透かして、攻勢をかけている面が否定できない。ロシアもしかりである。
鳩山由紀夫前首相の罪は重い。首相就任時に「できれば半年」で領土問題を進展させたいと公言。日ロ双方に期待を持たせたが、在任中は一度も訪ロしなかった。今回、大統領は北方領土訪問を予告していたのに、民主党政権の対応は情報収集を含めて後手に回った。
日米同盟強固に
次は、核兵器開発を進める北朝鮮が北東アジアの安定を揺るがすような行動に出てくるかもしれない。クリントン米国務長官は中国の戴秉国国務委員との海南島での会談で、ソウルでの20カ国・地域(G20)首脳会議の際、北朝鮮が挑発的行動を取らぬよう中国に説得を求めたという。
日本の外交力の低下がアジアの至る所で、見透かされ始めている。そのツケはあまりに重い。
日本政府が大統領の北方領土訪問に対して厳重に抗議し、北方四島は「日本の固有の領土」と改めて反論するのは当然だ。
同時に重要なことは、日本外交の抜本的な立て直しだ。普天間問題を早期に決着させ、強固な日米同盟の再構築が最優先に挙げられるのは言うまでもない。韓国や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などとの連携強化も不可欠である。
横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議がその格好の機会になるはずだった。菅直人首相に覚悟と指導力はあるだろうか。
:2010:10/29/11:49 ++ TPP参加へ農業改革の方向早く示せ(社説)
米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への菅直人首相の参加方針をめぐり、与党内部も賛否が分かれ来週末の決定が危ぶまれる情勢だ。
この協定交渉への参加は輸出を伸ばすためにも、国内製造業の一層の空洞化を防ぐうえでも重要である。問題は関税撤廃で打撃を受ける農家への対策だ。菅内閣は自由化に耐えられるようにするための農業改革の方向を早く示すべきである。
チリなど4カ国が始めた自由貿易協定を基に、米、オーストラリアなど計9カ国は協定の拡大・改定を交渉している。これがTPP交渉だ。関税撤廃の例外を絞り自由化の度合いが高い協定を目指す。カナダ、韓国、中国も関心を示しており、日本も加われば巨大な貿易圏になる。
協定に加われば関税がかからなくなり輸出は伸びる。もし参加しなければ米国などへの輸出が関税分だけ不利になる。企業が協定参加国に生産拠点を移すなど日本経済は大きな損失を被る。米国は来年秋の交渉妥結を目指していると伝えられる。政府は早く交渉参加を決めるべきだ。
参加に反対する農業関係者を説得するためには、農産物関税の撤廃の影響を最小限に抑える政策が要る。
その方向は「関税による保護から財政による保護への転換」だが、作物によって二通り考えられる。
一つは、ある程度の国際競争力があり、しかも食糧安全保障に重要なコメなどの作物の場合だ。関税を撤廃しても生産を維持できるよう、農地の集約を促す所得補償方式を導入するとともに、減反を廃止する。今よりは大規模な農業が普及し、所得補償の総額を大幅に増やさなくても関税ゼロに耐えやすくなる。
二つ目は、いかに努力しても大きな内外価格差が残ると予想される、コンニャクイモや砂糖などについてだ。ほかの作物の生産、あるいはほかの業種への転換を農家に促す。そのために政府が支援する。これに関しては追加的な財政支出が避けられない。
それでも転換が済むまでの一時的な支出であり、これまでの農業補助のように、ずるずると保護し続けるのとは違う。
農業の担い手が高齢化し、次の世代に引き継ぐべき時期にある今は、改革の好機ともいえる。所得補償を大規模農家に限るとしても、そこに土地を貸す小規模農家が今よりは高い地代を得られるようにすれば、納得をされやすいはず。
こうした人口動態も頭に入れた賢い改革の方向を示してほしい。
この協定交渉への参加は輸出を伸ばすためにも、国内製造業の一層の空洞化を防ぐうえでも重要である。問題は関税撤廃で打撃を受ける農家への対策だ。菅内閣は自由化に耐えられるようにするための農業改革の方向を早く示すべきである。
チリなど4カ国が始めた自由貿易協定を基に、米、オーストラリアなど計9カ国は協定の拡大・改定を交渉している。これがTPP交渉だ。関税撤廃の例外を絞り自由化の度合いが高い協定を目指す。カナダ、韓国、中国も関心を示しており、日本も加われば巨大な貿易圏になる。
協定に加われば関税がかからなくなり輸出は伸びる。もし参加しなければ米国などへの輸出が関税分だけ不利になる。企業が協定参加国に生産拠点を移すなど日本経済は大きな損失を被る。米国は来年秋の交渉妥結を目指していると伝えられる。政府は早く交渉参加を決めるべきだ。
参加に反対する農業関係者を説得するためには、農産物関税の撤廃の影響を最小限に抑える政策が要る。
その方向は「関税による保護から財政による保護への転換」だが、作物によって二通り考えられる。
一つは、ある程度の国際競争力があり、しかも食糧安全保障に重要なコメなどの作物の場合だ。関税を撤廃しても生産を維持できるよう、農地の集約を促す所得補償方式を導入するとともに、減反を廃止する。今よりは大規模な農業が普及し、所得補償の総額を大幅に増やさなくても関税ゼロに耐えやすくなる。
二つ目は、いかに努力しても大きな内外価格差が残ると予想される、コンニャクイモや砂糖などについてだ。ほかの作物の生産、あるいはほかの業種への転換を農家に促す。そのために政府が支援する。これに関しては追加的な財政支出が避けられない。
それでも転換が済むまでの一時的な支出であり、これまでの農業補助のように、ずるずると保護し続けるのとは違う。
農業の担い手が高齢化し、次の世代に引き継ぐべき時期にある今は、改革の好機ともいえる。所得補償を大規模農家に限るとしても、そこに土地を貸す小規模農家が今よりは高い地代を得られるようにすれば、納得をされやすいはず。
こうした人口動態も頭に入れた賢い改革の方向を示してほしい。
:2010:10/28/10:32 ++ ネットスーパー、「巣ごもり消費」、追い風に急成長、メーカー、販促などに活用
ネットスーパー市場は急拡大している。イトーヨーカ堂の会員は月2万人ペースで増え、来春には85万人に達する見込み。2009年度の市場規模は推計で500億円以上になり、年率2ケタ成長の勢いだ。メーカーも販促やマーケティングに利用し始めている。
買い物の負担が大きい高齢者や共働き世帯の利用に加え、遠出せずに買い物を済ます“巣ごもり消費”の傾向が需要を押し上げている。ヨーカ堂は会員の6割以上が専業主婦だ。
食品メーカーなどは自社製品を購入したネットスーパーの客に、新製品のサンプルをつけるキャンペーンを展開。顧客の属性や購買習慣がつかみやすいネット販売の利点をマーケティングに生かす試みも広がってきた。
サービスが広がるにつれ課題も浮上している。小売り各社の売上高に占める同事業の比率はまだ店頭の数%にすぎないが、人件費などコスト負担は重い。西友が店頭と同じ価格だったネットスーパーの商品を一時的に値上げするなど、採算改善の模索は続いている。ネットスーパーは店頭で商品を選び店舗からトラックなどで配送する方式のため、注文が殺到すると対応しきれず販売機会を失うケースも目立つ。
8月にはユニーやイズミヤなどネットスーパーを手がける7社の顧客情報が、情報管理を委託していた会社から流出する事態も発生した。市場拡大に合わせた体制づくりが急務といえそうだ。
買い物の負担が大きい高齢者や共働き世帯の利用に加え、遠出せずに買い物を済ます“巣ごもり消費”の傾向が需要を押し上げている。ヨーカ堂は会員の6割以上が専業主婦だ。
食品メーカーなどは自社製品を購入したネットスーパーの客に、新製品のサンプルをつけるキャンペーンを展開。顧客の属性や購買習慣がつかみやすいネット販売の利点をマーケティングに生かす試みも広がってきた。
サービスが広がるにつれ課題も浮上している。小売り各社の売上高に占める同事業の比率はまだ店頭の数%にすぎないが、人件費などコスト負担は重い。西友が店頭と同じ価格だったネットスーパーの商品を一時的に値上げするなど、採算改善の模索は続いている。ネットスーパーは店頭で商品を選び店舗からトラックなどで配送する方式のため、注文が殺到すると対応しきれず販売機会を失うケースも目立つ。
8月にはユニーやイズミヤなどネットスーパーを手がける7社の顧客情報が、情報管理を委託していた会社から流出する事態も発生した。市場拡大に合わせた体制づくりが急務といえそうだ。
:2010:10/28/10:32 ++ ネットスーパー、「巣ごもり消費」、追い風に急成長、メーカー、販促などに活用
ネットスーパー市場は急拡大している。イトーヨーカ堂の会員は月2万人ペースで増え、来春には85万人に達する見込み。2009年度の市場規模は推計で500億円以上になり、年率2ケタ成長の勢いだ。メーカーも販促やマーケティングに利用し始めている。
買い物の負担が大きい高齢者や共働き世帯の利用に加え、遠出せずに買い物を済ます“巣ごもり消費”の傾向が需要を押し上げている。ヨーカ堂は会員の6割以上が専業主婦だ。
食品メーカーなどは自社製品を購入したネットスーパーの客に、新製品のサンプルをつけるキャンペーンを展開。顧客の属性や購買習慣がつかみやすいネット販売の利点をマーケティングに生かす試みも広がってきた。
サービスが広がるにつれ課題も浮上している。小売り各社の売上高に占める同事業の比率はまだ店頭の数%にすぎないが、人件費などコスト負担は重い。西友が店頭と同じ価格だったネットスーパーの商品を一時的に値上げするなど、採算改善の模索は続いている。ネットスーパーは店頭で商品を選び店舗からトラックなどで配送する方式のため、注文が殺到すると対応しきれず販売機会を失うケースも目立つ。
8月にはユニーやイズミヤなどネットスーパーを手がける7社の顧客情報が、情報管理を委託していた会社から流出する事態も発生した。市場拡大に合わせた体制づくりが急務といえそうだ。
買い物の負担が大きい高齢者や共働き世帯の利用に加え、遠出せずに買い物を済ます“巣ごもり消費”の傾向が需要を押し上げている。ヨーカ堂は会員の6割以上が専業主婦だ。
食品メーカーなどは自社製品を購入したネットスーパーの客に、新製品のサンプルをつけるキャンペーンを展開。顧客の属性や購買習慣がつかみやすいネット販売の利点をマーケティングに生かす試みも広がってきた。
サービスが広がるにつれ課題も浮上している。小売り各社の売上高に占める同事業の比率はまだ店頭の数%にすぎないが、人件費などコスト負担は重い。西友が店頭と同じ価格だったネットスーパーの商品を一時的に値上げするなど、採算改善の模索は続いている。ネットスーパーは店頭で商品を選び店舗からトラックなどで配送する方式のため、注文が殺到すると対応しきれず販売機会を失うケースも目立つ。
8月にはユニーやイズミヤなどネットスーパーを手がける7社の顧客情報が、情報管理を委託していた会社から流出する事態も発生した。市場拡大に合わせた体制づくりが急務といえそうだ。
:2010:10/28/10:32 ++ ネットスーパー、「巣ごもり消費」、追い風に急成長、メーカー、販促などに活用
ネットスーパー市場は急拡大している。イトーヨーカ堂の会員は月2万人ペースで増え、来春には85万人に達する見込み。2009年度の市場規模は推計で500億円以上になり、年率2ケタ成長の勢いだ。メーカーも販促やマーケティングに利用し始めている。
買い物の負担が大きい高齢者や共働き世帯の利用に加え、遠出せずに買い物を済ます“巣ごもり消費”の傾向が需要を押し上げている。ヨーカ堂は会員の6割以上が専業主婦だ。
食品メーカーなどは自社製品を購入したネットスーパーの客に、新製品のサンプルをつけるキャンペーンを展開。顧客の属性や購買習慣がつかみやすいネット販売の利点をマーケティングに生かす試みも広がってきた。
サービスが広がるにつれ課題も浮上している。小売り各社の売上高に占める同事業の比率はまだ店頭の数%にすぎないが、人件費などコスト負担は重い。西友が店頭と同じ価格だったネットスーパーの商品を一時的に値上げするなど、採算改善の模索は続いている。ネットスーパーは店頭で商品を選び店舗からトラックなどで配送する方式のため、注文が殺到すると対応しきれず販売機会を失うケースも目立つ。
8月にはユニーやイズミヤなどネットスーパーを手がける7社の顧客情報が、情報管理を委託していた会社から流出する事態も発生した。市場拡大に合わせた体制づくりが急務といえそうだ。
買い物の負担が大きい高齢者や共働き世帯の利用に加え、遠出せずに買い物を済ます“巣ごもり消費”の傾向が需要を押し上げている。ヨーカ堂は会員の6割以上が専業主婦だ。
食品メーカーなどは自社製品を購入したネットスーパーの客に、新製品のサンプルをつけるキャンペーンを展開。顧客の属性や購買習慣がつかみやすいネット販売の利点をマーケティングに生かす試みも広がってきた。
サービスが広がるにつれ課題も浮上している。小売り各社の売上高に占める同事業の比率はまだ店頭の数%にすぎないが、人件費などコスト負担は重い。西友が店頭と同じ価格だったネットスーパーの商品を一時的に値上げするなど、採算改善の模索は続いている。ネットスーパーは店頭で商品を選び店舗からトラックなどで配送する方式のため、注文が殺到すると対応しきれず販売機会を失うケースも目立つ。
8月にはユニーやイズミヤなどネットスーパーを手がける7社の顧客情報が、情報管理を委託していた会社から流出する事態も発生した。市場拡大に合わせた体制づくりが急務といえそうだ。
:2010:10/28/10:24 ++ 武富士破綻広がる波紋(下)貸金業者10分の1に―個人ローン、誰が担う
「いきなり、過去にさかのぼってお金を返さなくてはいけないというのは経済観念からしておかしい」。26日の衆院財務金融委員会。自民党の後藤田正純議員は貸金業者の経営悪化問題をとり上げ、過去に払いすぎた利息(過払い金)の返還請求権を顧客に認めた2006年1月の最高裁判決に疑問を投げかけた。
裁判結果が打撃
後藤田氏は今年6月に全面施行された改正貸金業法成立の“立役者”。06年の国会審議で上限金利の引き下げなどを主張し、規制論者として知られるが、今回は「消費を下支えするためにも、(政府は)なにか知恵を絞れないのか」と指摘。利息返還負担による貸金業者の淘汰と消費者ローン市場の収縮が家計の消費行動に与える影響に懸念を示した。
答弁に立った自見庄三郎金融相はこう答えるしかなかった。「最高裁が認めた借り手の権利を、国が事後的に制限することは憲法上の観点からも難しい」
「最高裁まで争わずに和解していれば」。貸金業界の関係者が振り返るのは、判決の対象となった消費者金融大手アイフルの子会社シティズが、返済を延滞した自営業の借り主に融資残額約190万円の一括返済を求めて争った訴訟だ。
シティズは、延滞時には残額を一括返済するとした当時の契約条項の履行を求めたが、最高裁は、一括返済条項がある場合、「(高い利息の支払いを)事実上強制するものだ」と指摘。借り主は払いすぎた利息を差し引いた金額を返せばいいことになった。
出資法の旧上限金利(年29・2%)と利息制限法の上限金利(年15~20%)にはさまれた「グレーゾーン(灰色)金利」が適法か否か、それまでも見解が割れていた。最高裁の判断が出て、過払い金の返還請求が勢いづくことになる。
最高裁判決から5年足らず。貸金業者の数はピークの10分の1以下に減り、最大手だった武富士も破綻。消費者ローン市場は21兆円から13兆円に収縮した。多くの貸金業者はなお新規貸し出しを大幅に絞り込んでいる。これほどの影響を予想する声は当時なかった。
貸金業界の利益優先の体質が顧客の返済能力を超える過剰な貸し付けにつながり、多重債務者問題を招いたとの批判は根強い。
銀行に客流れず
一方、“健全”な資金需要にどう応えていくかという問題は残る。「個人事業者の月末越えのつなぎ資金や緊急の医療費などの供給役を担ってきたのは我々だ」と、消費者金融大手の幹部は訴える。銀行はこれまで住宅ローンを除いて、個人向けローンに本腰を入れてこなかった。銀行の個人向け無担保ローンの残高は融資総額の1%未満、4兆円程度にすぎない。
三菱東京UFJ銀行は「7兆~8兆円の資金需要はある」と見ている。大手各行は個人ローン事業を強化する構えだ。
ただ、現実には「カードローンの新規申し込みが殺到すると準備していたが、意外に伸びない」と大手銀行の担当者は話す。三大金融グループ合計のカードローンの新規申込数は改正貸金業法全面施行後の6~8月の3カ月で前年比微減。武富士破綻後も状況は変わっていないという。
個人の無担保ローン市場に、誰がどのように資金を供給するのが望ましいのか。青写真は描けていない。
裁判結果が打撃
後藤田氏は今年6月に全面施行された改正貸金業法成立の“立役者”。06年の国会審議で上限金利の引き下げなどを主張し、規制論者として知られるが、今回は「消費を下支えするためにも、(政府は)なにか知恵を絞れないのか」と指摘。利息返還負担による貸金業者の淘汰と消費者ローン市場の収縮が家計の消費行動に与える影響に懸念を示した。
答弁に立った自見庄三郎金融相はこう答えるしかなかった。「最高裁が認めた借り手の権利を、国が事後的に制限することは憲法上の観点からも難しい」
「最高裁まで争わずに和解していれば」。貸金業界の関係者が振り返るのは、判決の対象となった消費者金融大手アイフルの子会社シティズが、返済を延滞した自営業の借り主に融資残額約190万円の一括返済を求めて争った訴訟だ。
シティズは、延滞時には残額を一括返済するとした当時の契約条項の履行を求めたが、最高裁は、一括返済条項がある場合、「(高い利息の支払いを)事実上強制するものだ」と指摘。借り主は払いすぎた利息を差し引いた金額を返せばいいことになった。
出資法の旧上限金利(年29・2%)と利息制限法の上限金利(年15~20%)にはさまれた「グレーゾーン(灰色)金利」が適法か否か、それまでも見解が割れていた。最高裁の判断が出て、過払い金の返還請求が勢いづくことになる。
最高裁判決から5年足らず。貸金業者の数はピークの10分の1以下に減り、最大手だった武富士も破綻。消費者ローン市場は21兆円から13兆円に収縮した。多くの貸金業者はなお新規貸し出しを大幅に絞り込んでいる。これほどの影響を予想する声は当時なかった。
貸金業界の利益優先の体質が顧客の返済能力を超える過剰な貸し付けにつながり、多重債務者問題を招いたとの批判は根強い。
銀行に客流れず
一方、“健全”な資金需要にどう応えていくかという問題は残る。「個人事業者の月末越えのつなぎ資金や緊急の医療費などの供給役を担ってきたのは我々だ」と、消費者金融大手の幹部は訴える。銀行はこれまで住宅ローンを除いて、個人向けローンに本腰を入れてこなかった。銀行の個人向け無担保ローンの残高は融資総額の1%未満、4兆円程度にすぎない。
三菱東京UFJ銀行は「7兆~8兆円の資金需要はある」と見ている。大手各行は個人ローン事業を強化する構えだ。
ただ、現実には「カードローンの新規申し込みが殺到すると準備していたが、意外に伸びない」と大手銀行の担当者は話す。三大金融グループ合計のカードローンの新規申込数は改正貸金業法全面施行後の6~8月の3カ月で前年比微減。武富士破綻後も状況は変わっていないという。
個人の無担保ローン市場に、誰がどのように資金を供給するのが望ましいのか。青写真は描けていない。
:2010:10/28/10:24 ++ 武富士破綻広がる波紋(下)貸金業者10分の1に―個人ローン、誰が担う
「いきなり、過去にさかのぼってお金を返さなくてはいけないというのは経済観念からしておかしい」。26日の衆院財務金融委員会。自民党の後藤田正純議員は貸金業者の経営悪化問題をとり上げ、過去に払いすぎた利息(過払い金)の返還請求権を顧客に認めた2006年1月の最高裁判決に疑問を投げかけた。
裁判結果が打撃
後藤田氏は今年6月に全面施行された改正貸金業法成立の“立役者”。06年の国会審議で上限金利の引き下げなどを主張し、規制論者として知られるが、今回は「消費を下支えするためにも、(政府は)なにか知恵を絞れないのか」と指摘。利息返還負担による貸金業者の淘汰と消費者ローン市場の収縮が家計の消費行動に与える影響に懸念を示した。
答弁に立った自見庄三郎金融相はこう答えるしかなかった。「最高裁が認めた借り手の権利を、国が事後的に制限することは憲法上の観点からも難しい」
「最高裁まで争わずに和解していれば」。貸金業界の関係者が振り返るのは、判決の対象となった消費者金融大手アイフルの子会社シティズが、返済を延滞した自営業の借り主に融資残額約190万円の一括返済を求めて争った訴訟だ。
シティズは、延滞時には残額を一括返済するとした当時の契約条項の履行を求めたが、最高裁は、一括返済条項がある場合、「(高い利息の支払いを)事実上強制するものだ」と指摘。借り主は払いすぎた利息を差し引いた金額を返せばいいことになった。
出資法の旧上限金利(年29・2%)と利息制限法の上限金利(年15~20%)にはさまれた「グレーゾーン(灰色)金利」が適法か否か、それまでも見解が割れていた。最高裁の判断が出て、過払い金の返還請求が勢いづくことになる。
最高裁判決から5年足らず。貸金業者の数はピークの10分の1以下に減り、最大手だった武富士も破綻。消費者ローン市場は21兆円から13兆円に収縮した。多くの貸金業者はなお新規貸し出しを大幅に絞り込んでいる。これほどの影響を予想する声は当時なかった。
貸金業界の利益優先の体質が顧客の返済能力を超える過剰な貸し付けにつながり、多重債務者問題を招いたとの批判は根強い。
銀行に客流れず
一方、“健全”な資金需要にどう応えていくかという問題は残る。「個人事業者の月末越えのつなぎ資金や緊急の医療費などの供給役を担ってきたのは我々だ」と、消費者金融大手の幹部は訴える。銀行はこれまで住宅ローンを除いて、個人向けローンに本腰を入れてこなかった。銀行の個人向け無担保ローンの残高は融資総額の1%未満、4兆円程度にすぎない。
三菱東京UFJ銀行は「7兆~8兆円の資金需要はある」と見ている。大手各行は個人ローン事業を強化する構えだ。
ただ、現実には「カードローンの新規申し込みが殺到すると準備していたが、意外に伸びない」と大手銀行の担当者は話す。三大金融グループ合計のカードローンの新規申込数は改正貸金業法全面施行後の6~8月の3カ月で前年比微減。武富士破綻後も状況は変わっていないという。
個人の無担保ローン市場に、誰がどのように資金を供給するのが望ましいのか。青写真は描けていない。
裁判結果が打撃
後藤田氏は今年6月に全面施行された改正貸金業法成立の“立役者”。06年の国会審議で上限金利の引き下げなどを主張し、規制論者として知られるが、今回は「消費を下支えするためにも、(政府は)なにか知恵を絞れないのか」と指摘。利息返還負担による貸金業者の淘汰と消費者ローン市場の収縮が家計の消費行動に与える影響に懸念を示した。
答弁に立った自見庄三郎金融相はこう答えるしかなかった。「最高裁が認めた借り手の権利を、国が事後的に制限することは憲法上の観点からも難しい」
「最高裁まで争わずに和解していれば」。貸金業界の関係者が振り返るのは、判決の対象となった消費者金融大手アイフルの子会社シティズが、返済を延滞した自営業の借り主に融資残額約190万円の一括返済を求めて争った訴訟だ。
シティズは、延滞時には残額を一括返済するとした当時の契約条項の履行を求めたが、最高裁は、一括返済条項がある場合、「(高い利息の支払いを)事実上強制するものだ」と指摘。借り主は払いすぎた利息を差し引いた金額を返せばいいことになった。
出資法の旧上限金利(年29・2%)と利息制限法の上限金利(年15~20%)にはさまれた「グレーゾーン(灰色)金利」が適法か否か、それまでも見解が割れていた。最高裁の判断が出て、過払い金の返還請求が勢いづくことになる。
最高裁判決から5年足らず。貸金業者の数はピークの10分の1以下に減り、最大手だった武富士も破綻。消費者ローン市場は21兆円から13兆円に収縮した。多くの貸金業者はなお新規貸し出しを大幅に絞り込んでいる。これほどの影響を予想する声は当時なかった。
貸金業界の利益優先の体質が顧客の返済能力を超える過剰な貸し付けにつながり、多重債務者問題を招いたとの批判は根強い。
銀行に客流れず
一方、“健全”な資金需要にどう応えていくかという問題は残る。「個人事業者の月末越えのつなぎ資金や緊急の医療費などの供給役を担ってきたのは我々だ」と、消費者金融大手の幹部は訴える。銀行はこれまで住宅ローンを除いて、個人向けローンに本腰を入れてこなかった。銀行の個人向け無担保ローンの残高は融資総額の1%未満、4兆円程度にすぎない。
三菱東京UFJ銀行は「7兆~8兆円の資金需要はある」と見ている。大手各行は個人ローン事業を強化する構えだ。
ただ、現実には「カードローンの新規申し込みが殺到すると準備していたが、意外に伸びない」と大手銀行の担当者は話す。三大金融グループ合計のカードローンの新規申込数は改正貸金業法全面施行後の6~8月の3カ月で前年比微減。武富士破綻後も状況は変わっていないという。
個人の無担保ローン市場に、誰がどのように資金を供給するのが望ましいのか。青写真は描けていない。
:2010:10/28/10:18 ++ 自治体のクラウド利用(きょうのことば)
▽…地方自治体が住民情報管理などの業務や、住民サービスのための情報システムに「クラウドコンピューティング」の技術を活用すること。電子申請にクラウドを活用する自治体はこれまでもあったが、膨大なデータ処理を伴う税務などの基幹業務や入札などのシステムでの普及は遅れていた。
▽…単独で使うケースと、複数の自治体が共同利用する場合の2種類がある。共同利用型はコストダウン効果が大きく、小規模自治体を中心に導入が急速に進む見通し。官民を合わせた国内全体のクラウドの市場規模は2012年には09年の3倍にあたる約900億円に達するとみられる。
▽…単独で使うケースと、複数の自治体が共同利用する場合の2種類がある。共同利用型はコストダウン効果が大きく、小規模自治体を中心に導入が急速に進む見通し。官民を合わせた国内全体のクラウドの市場規模は2012年には09年の3倍にあたる約900億円に達するとみられる。
:2010:10/28/10:18 ++ 自治体のクラウド利用(きょうのことば)
▽…地方自治体が住民情報管理などの業務や、住民サービスのための情報システムに「クラウドコンピューティング」の技術を活用すること。電子申請にクラウドを活用する自治体はこれまでもあったが、膨大なデータ処理を伴う税務などの基幹業務や入札などのシステムでの普及は遅れていた。
▽…単独で使うケースと、複数の自治体が共同利用する場合の2種類がある。共同利用型はコストダウン効果が大きく、小規模自治体を中心に導入が急速に進む見通し。官民を合わせた国内全体のクラウドの市場規模は2012年には09年の3倍にあたる約900億円に達するとみられる。
▽…単独で使うケースと、複数の自治体が共同利用する場合の2種類がある。共同利用型はコストダウン効果が大きく、小規模自治体を中心に導入が急速に進む見通し。官民を合わせた国内全体のクラウドの市場規模は2012年には09年の3倍にあたる約900億円に達するとみられる。
:2010:10/28/10:18 ++ TPP参加農業改革カギ、APEC前閣議決定めざす、事実上、日米FTA
環太平洋協定、どんな枠組みに?
関税障壁などを取り除き、幅広い分野で自由化を実現する環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)参加を巡る政府・与党の混乱が続いている。菅直人首相は11月中旬に横浜市で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前の11月上旬をメドに対処方針の閣議決定をめざすが、党内抗争も絡んで対立は先鋭化。初心を貫けるか、首相は厳しい立場に追い込まれている。
TPPはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に締結した。貿易や投資、人の移動など幅広い分野の自由化を目指す。すべての物品の関税を即時または10年以内に撤廃するのが原則で、通常の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)より参加のハードルが高い。
米国やオーストラリアなど5カ国もTPPに参加する方向で交渉している。米国と日本が参加すれば締結国の中で大きな比重を占めるため、事実上の「日米FTA」になるとの見方も出ている。
TPPに参加する場合は特定分野を除外して交渉を始めるのが難しいといわれる。日本が関税をかけているのは約5900品目で、その多くが無税となる可能性がある。
TPPの経済効果については、3府省が27日にそれぞれの試算を提示した。内閣府の試算では、日本がTPPに参加すると実質国内総生産(GDP)が0・48~0・65%増え、参加しないと0・13~0・14%減る見通し。ただ経済産業省や農林水産省の試算とは大きく食い違っており、どの結果を採用するかで立場が分かれそうだ。
関税障壁などを取り除き、幅広い分野で自由化を実現する環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)参加を巡る政府・与党の混乱が続いている。菅直人首相は11月中旬に横浜市で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議前の11月上旬をメドに対処方針の閣議決定をめざすが、党内抗争も絡んで対立は先鋭化。初心を貫けるか、首相は厳しい立場に追い込まれている。
TPPはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に締結した。貿易や投資、人の移動など幅広い分野の自由化を目指す。すべての物品の関税を即時または10年以内に撤廃するのが原則で、通常の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)より参加のハードルが高い。
米国やオーストラリアなど5カ国もTPPに参加する方向で交渉している。米国と日本が参加すれば締結国の中で大きな比重を占めるため、事実上の「日米FTA」になるとの見方も出ている。
TPPに参加する場合は特定分野を除外して交渉を始めるのが難しいといわれる。日本が関税をかけているのは約5900品目で、その多くが無税となる可能性がある。
TPPの経済効果については、3府省が27日にそれぞれの試算を提示した。内閣府の試算では、日本がTPPに参加すると実質国内総生産(GDP)が0・48~0・65%増え、参加しないと0・13~0・14%減る見通し。ただ経済産業省や農林水産省の試算とは大きく食い違っており、どの結果を採用するかで立場が分かれそうだ。
:2010:10/28/10:10 ++ 歴代首相に聞く(6)安倍晋三氏―日中関係、国益を第一に(政権)
――尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件後の菅内閣の対応をどう評価しますか。
「中国は共産党一党支配でありながら、自由主義経済を導入する史上例を見ない国だ。中国は日本が譲歩したり好意を示したりすれば、それに感謝して、優しい対応をする国ではない。彼らが信じているのはパワーであり、その観点からすれば菅内閣は極めて拙劣な対応だったと言わざるを得ない。中国に屈する形で船長を釈放すれば、中国はまた同じ手を使う。船長の釈放で問題は解決しない」
友好優先へ逆行
――首相在任中に中国と戦略的互恵関係の構築で合意しました。
「民主党は戦略的互恵関係の意味を分かっていない。戦略的互恵関係はそれまでの日中関係を脱却するための位置づけだ。それまでは友好第一で『それは日中友好に反します』と言われたら日本は国益を削って友好的な状態をつくった。しかし友好は手段であって目的は国益を確保することだ。両国は互いの関係で互いが利益を得るという認識が大切だ。民主党は友好第一に戻ってしまった」
「中国に対して私はほとんど譲らなかった。靖国神社についても私は行かないとは言っていない。『行くとも行かないとも言わない』とは言った。戦略的あいまいさをとって批判はあったが、政権がそのまま続いていたら行こうと思っていた」
――先日の訪米での、米国側の反応はいかがでしたか。
「今回の事件も含めて中国は南シナ海、東シナ海での振る舞いで評判を落としていると米国でも感じた。しかし、米国は日本にはある意味冷ややかだ。中国に備えるうえでも日米関係を強化しなければいけないのに、日米同盟の信頼関係を平気で損なってきた、と」
決断の責任重く
――ご自身は首相の重責をどう意識しましたか。
「首相になるまで官房副長官を3年近く、官房長官を1年間経験して、首相の職責の重さを十分理解してきたつもりだ。しかし、(首相は)幹事長や官房長官と比べてはるかに重い責任がある。それは最後に1人で決断をしなければならないということに尽きる」
「実際に決断するというのはなかなか困難な作業だ。外から見ていると全部自分で決断できる立場にいるのは醍醐味(だいごみ)だという思いはある。しかし、実際自分が決めるとなると、やはり国民の現在の生活、未来に大きな影響を与える。果たして正しいのかどうか、と自問自答する。仕事の中身的には準備してきたが、やはりその席に座って、その立場に立って判断しなければいけないというのは大変な違いがある」
――政権にとって内閣支持率はどう意識していましたか。
「支持率はやはり政策を実行していくうえでのパワーとなる。ただ、これは難しくて、最初が高いと、45%でも低く見える。今から考えると十分な支持率はあった感じはする。やはりそれを全く気にするなと言われても、気にせざるを得ない」
(おわり)
「中国は共産党一党支配でありながら、自由主義経済を導入する史上例を見ない国だ。中国は日本が譲歩したり好意を示したりすれば、それに感謝して、優しい対応をする国ではない。彼らが信じているのはパワーであり、その観点からすれば菅内閣は極めて拙劣な対応だったと言わざるを得ない。中国に屈する形で船長を釈放すれば、中国はまた同じ手を使う。船長の釈放で問題は解決しない」
友好優先へ逆行
――首相在任中に中国と戦略的互恵関係の構築で合意しました。
「民主党は戦略的互恵関係の意味を分かっていない。戦略的互恵関係はそれまでの日中関係を脱却するための位置づけだ。それまでは友好第一で『それは日中友好に反します』と言われたら日本は国益を削って友好的な状態をつくった。しかし友好は手段であって目的は国益を確保することだ。両国は互いの関係で互いが利益を得るという認識が大切だ。民主党は友好第一に戻ってしまった」
「中国に対して私はほとんど譲らなかった。靖国神社についても私は行かないとは言っていない。『行くとも行かないとも言わない』とは言った。戦略的あいまいさをとって批判はあったが、政権がそのまま続いていたら行こうと思っていた」
――先日の訪米での、米国側の反応はいかがでしたか。
「今回の事件も含めて中国は南シナ海、東シナ海での振る舞いで評判を落としていると米国でも感じた。しかし、米国は日本にはある意味冷ややかだ。中国に備えるうえでも日米関係を強化しなければいけないのに、日米同盟の信頼関係を平気で損なってきた、と」
決断の責任重く
――ご自身は首相の重責をどう意識しましたか。
「首相になるまで官房副長官を3年近く、官房長官を1年間経験して、首相の職責の重さを十分理解してきたつもりだ。しかし、(首相は)幹事長や官房長官と比べてはるかに重い責任がある。それは最後に1人で決断をしなければならないということに尽きる」
「実際に決断するというのはなかなか困難な作業だ。外から見ていると全部自分で決断できる立場にいるのは醍醐味(だいごみ)だという思いはある。しかし、実際自分が決めるとなると、やはり国民の現在の生活、未来に大きな影響を与える。果たして正しいのかどうか、と自問自答する。仕事の中身的には準備してきたが、やはりその席に座って、その立場に立って判断しなければいけないというのは大変な違いがある」
――政権にとって内閣支持率はどう意識していましたか。
「支持率はやはり政策を実行していくうえでのパワーとなる。ただ、これは難しくて、最初が高いと、45%でも低く見える。今から考えると十分な支持率はあった感じはする。やはりそれを全く気にするなと言われても、気にせざるを得ない」
(おわり)