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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2010:10/28/09:43  ++  なし崩しの企業献金復活(社説)

民主党が企業・団体献金の受け取りを再開すると決めた。個人献金が広がらない中での現実的な選択かもしれないが、「将来の献金全廃」の方針は変えないという。場当たりの印象がぬぐえず、政治資金のあり方に関する党の考え方を有権者にきちんと説明すべきだ。
 岡田克也幹事長は26日の党常任幹事会で、企業・団体献金の再開について「過度の国費依存でいいのか」と語り、献金の自粛を事実上撤回した。今後は国や地方自治体との契約関係が1件1億円未満の企業・団体からの献金を認めるという。
 民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で「企業・団体の献金およびパーティー券購入を禁止する」と掲げた。
 野党各党は「明確な公約違反だ」と批判を強める一方、経済界では民主党が企業献金の復活に動くのは「関係改善を本格的に考え始めた兆し」との見方も広がっている。
 日常の政治活動はただではできず、経費がかかる。公費や個人献金だけでは費用をまかなえない議員が多い以上、企業・団体献金を短期間に全廃する方針にはそもそも無理があった。実態に即さない公約を修正するという党の判断自体は、理解できる部分もある。
 ただし企業・団体献金の全廃を打ち出した経緯とその後の対応は、多くの問題をはらんでいる。
 この献金廃止は昨年春、当時の小沢一郎代表側への西松建設からの巨額献金事件が明るみに出て急きょ決まった。自民党は当初から「不祥事を制度論にすり替えた」と反発していた。民主党が政治資金のあり方をめぐる与野党協議に全力を尽くしてきたとは、とても言えない。
 小沢氏の強制起訴が決まっても、国会招致への立場はいまだに不明確だ。実母からの巨額の資金提供が首相辞任の一因となった鳩山由紀夫氏は政界引退の撤回を示唆した。そうであれば、なおさら疑惑について国会の場で説明する責任がある。
 企業・団体献金の見直し論のきっかけとなった一連の事件をめぐり、民主党は具体的な対応を取ってこなかった。それで献金の自粛をなし崩しに撤回するのでは、有権者の理解は得られないのではないか。
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:2010:10/28/09:43  ++  なし崩しの企業献金復活(社説)

民主党が企業・団体献金の受け取りを再開すると決めた。個人献金が広がらない中での現実的な選択かもしれないが、「将来の献金全廃」の方針は変えないという。場当たりの印象がぬぐえず、政治資金のあり方に関する党の考え方を有権者にきちんと説明すべきだ。
 岡田克也幹事長は26日の党常任幹事会で、企業・団体献金の再開について「過度の国費依存でいいのか」と語り、献金の自粛を事実上撤回した。今後は国や地方自治体との契約関係が1件1億円未満の企業・団体からの献金を認めるという。
 民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で「企業・団体の献金およびパーティー券購入を禁止する」と掲げた。
 野党各党は「明確な公約違反だ」と批判を強める一方、経済界では民主党が企業献金の復活に動くのは「関係改善を本格的に考え始めた兆し」との見方も広がっている。
 日常の政治活動はただではできず、経費がかかる。公費や個人献金だけでは費用をまかなえない議員が多い以上、企業・団体献金を短期間に全廃する方針にはそもそも無理があった。実態に即さない公約を修正するという党の判断自体は、理解できる部分もある。
 ただし企業・団体献金の全廃を打ち出した経緯とその後の対応は、多くの問題をはらんでいる。
 この献金廃止は昨年春、当時の小沢一郎代表側への西松建設からの巨額献金事件が明るみに出て急きょ決まった。自民党は当初から「不祥事を制度論にすり替えた」と反発していた。民主党が政治資金のあり方をめぐる与野党協議に全力を尽くしてきたとは、とても言えない。
 小沢氏の強制起訴が決まっても、国会招致への立場はいまだに不明確だ。実母からの巨額の資金提供が首相辞任の一因となった鳩山由紀夫氏は政界引退の撤回を示唆した。そうであれば、なおさら疑惑について国会の場で説明する責任がある。
 企業・団体献金の見直し論のきっかけとなった一連の事件をめぐり、民主党は具体的な対応を取ってこなかった。それで献金の自粛をなし崩しに撤回するのでは、有権者の理解は得られないのではないか。

:2010:10/28/09:19  ++  クラウド150自治体に、富士通など受注、コスト3割削減

地方自治体に「クラウドコンピューティング」の利用が広がってきた。来年4月には150以上の自治体が主要業務に採用する見通しだ。総務省は2015年にも約1800の全自治体に導入し、年間の情報システム経費4000億円を約3割減らすことを目指す。富士通やNECなどが受注を本格化しており、民間企業に続き公共部門でのクラウド普及が進む。(自治体のクラウド利用は3面「きょうのことば」参照)=関連記事11面に
 クラウドはネット経由でIT(情報技術)企業のデータセンターにあるサーバーに接続し、ソフトウエアなどを利用できる。各自治体は庁舎内にサーバーを置き、入札に使う調達システムや住民情報などを管理する基幹業務システムを構築してきたが、そうした設備や管理が不要になる。小規模自治体で特にメリットが大きく、関連費用が半減するケースもある。中長期的に住民の負担を軽減できる。
 総務省は京都など6道府県で実証事業を実施中で、クラウドを導入する際の指針やノウハウの確立を進める。11年度予算の概算要求ではデータ形式の標準化などに約10億円を計上している。
 電子調達では千葉県と県内42市町が11年4月から共同でシステムを導入する予定で富士通に発注した。NECも受注実績があり、来年4月時点での利用自治体は100を超える見通し。
 基幹業務では神奈川県の14町村が日立情報システムズのサービスを利用する。発注額は24億7700万円。山梨県市町村総合事務組合は予算編成などに使うシステムの発注をNECに内定した。基幹業務の利用自治体も来春に60程度に達する。

:2010:10/28/09:19  ++  クラウド150自治体に、富士通など受注、コスト3割削減

地方自治体に「クラウドコンピューティング」の利用が広がってきた。来年4月には150以上の自治体が主要業務に採用する見通しだ。総務省は2015年にも約1800の全自治体に導入し、年間の情報システム経費4000億円を約3割減らすことを目指す。富士通やNECなどが受注を本格化しており、民間企業に続き公共部門でのクラウド普及が進む。(自治体のクラウド利用は3面「きょうのことば」参照)=関連記事11面に
 クラウドはネット経由でIT(情報技術)企業のデータセンターにあるサーバーに接続し、ソフトウエアなどを利用できる。各自治体は庁舎内にサーバーを置き、入札に使う調達システムや住民情報などを管理する基幹業務システムを構築してきたが、そうした設備や管理が不要になる。小規模自治体で特にメリットが大きく、関連費用が半減するケースもある。中長期的に住民の負担を軽減できる。
 総務省は京都など6道府県で実証事業を実施中で、クラウドを導入する際の指針やノウハウの確立を進める。11年度予算の概算要求ではデータ形式の標準化などに約10億円を計上している。
 電子調達では千葉県と県内42市町が11年4月から共同でシステムを導入する予定で富士通に発注した。NECも受注実績があり、来年4月時点での利用自治体は100を超える見通し。
 基幹業務では神奈川県の14町村が日立情報システムズのサービスを利用する。発注額は24億7700万円。山梨県市町村総合事務組合は予算編成などに使うシステムの発注をNECに内定した。基幹業務の利用自治体も来春に60程度に達する。

:2010:10/27/09:54  ++  第8部自立するために(1)環太平洋協定に挑む(ニッポンの農力)

「貿易自由化の進展に賛成だ」
 コメ販売の庄内こめ工房(山形県鶴岡市)社長、斎藤一志(53)は言い切る。同社は昨年、低コスト農業を目指す新会社「まいすたぁ」を設立した。
 コメ1俵(60キログラム)の生産費を、地域平均の3分の2となる8000円以下とし、海外のコメと戦えるようにする。関税撤廃と米価下落を見据えたもので「アジア市場にも出たい。安い輸入米にも対抗できる」と斎藤。
自由化をバネに
 高齢化で農業をやめる人から水田を借り、周辺農家が持て余す農機具と労働力も使う。そんな取り組みに賛同して、三菱商事も出資した。
 「環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)交渉等への参加を検討します」。首相、菅直人(64)は1日の所信表明でこう演説した。TPPはすべての関税撤廃が原則。発効後は対象品目の関税率を徐々に下げ、一定期間後にゼロにする。政府内には「10年後」との考えもある。
 この構想通りなら、あと10年でニッポンの農力を強くする覚悟が政府と農家自身に求められる。
 大規模化による生産性向上を理念とした旧農業基本法が制定されたのが1961年。ところが耕地面積はこの年を境に減り続け、2009年までにほぼ岩手県の面積に相当する農地が消えた。
 農業就業人口もピークの50年前から8割以上減り、今年は260万人と全就業者に占める割合が3%台に低下。農業総産出額は8兆5000億円弱(08年)と、最も多かった84年に比べ28%も低い水準だ。
 60年には13%あった国内総生産(GDP)に占める農林水産業の割合は今や1・5%(08年)。国内農業は「失われた50年」ともいえ、脱却するのは容易ではない。
 外相の前原誠司(48)は「1・5%を守るために98・5%のかなりの部分が犠牲になっている」と述べた。「失われた50年」がさらに続けば、農業だけでなく基幹の製造業もダメになってしまうとの主張だ。
 「売り先の主力を海外に移せば、国内市場縮小の影響は小さくなる」。コメを作る玉木農園(新潟市)の玉木修(31)は自由化をバネにしたいと意気込む。親の後を継いで00年に就農。米価の下落で苦境に陥り、04年にコネもない台湾に渡って卸会社に売り込んだ。2キログラムから始めた輸出は10年産米で150トンに。今年は米国へも輸出する。
 玉木が生産するコメは70~80トン。輸出分はこのうち20トンだ。150トンも輸出できるのは、近隣の契約農家から引き受けているからだ。
政策にメリハリ
 コメ余りで新潟コシヒカリも売れ残り、米価の下落に歯止めがかからない日本。だが「台湾向けの価格はずっと変わらず、次の収穫までに完売する」(玉木)。市場があるから作る。そんな当たり前の姿がここにある。
 「TPPに参加すれば農業は壊滅する」。全国農業協同組合中央会会長の茂木守(70)は反対ののろしを上げる。しかし人口減、低成長の日本で、どう守れば農業が成長するのか。バラマキ色の強い現在の戸別所得補償制度ではなく、自立する農家を厚く支援するメリハリの利いた政策で自由化に挑むしかない。
 「損失を被る農家には後押しが必要。例えば転業手当のようなものをつくる。何兆円かかっても自由化のほうが日本の国益にかなうかもしれない」と東大教授の本間正義(59)は指摘する。一方で「高くても国産がいいという消費者もいる。日本の農業の持ち味を生かしていくことも大切だ」と話す。
 旧農業基本法の制定に尽力した一人が元農林次官の故小倉武一だ。
 「輸入反対を唱えるだけでなく、自由化に耐えうる『強い農業』を目指し、本気で自活、再生への道を考える時期だ」
 小倉がこう言ったのは18年前のことだ。状況は今も変わらない。

 岐路に立つニッポンの農業。守りに入るのか、攻めていくのか。どちらにしても必要なのは農家の自立だ。(敬称略)

:2010:10/27/09:54  ++  第8部自立するために(1)環太平洋協定に挑む(ニッポンの農力)

「貿易自由化の進展に賛成だ」
 コメ販売の庄内こめ工房(山形県鶴岡市)社長、斎藤一志(53)は言い切る。同社は昨年、低コスト農業を目指す新会社「まいすたぁ」を設立した。
 コメ1俵(60キログラム)の生産費を、地域平均の3分の2となる8000円以下とし、海外のコメと戦えるようにする。関税撤廃と米価下落を見据えたもので「アジア市場にも出たい。安い輸入米にも対抗できる」と斎藤。
自由化をバネに
 高齢化で農業をやめる人から水田を借り、周辺農家が持て余す農機具と労働力も使う。そんな取り組みに賛同して、三菱商事も出資した。
 「環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)交渉等への参加を検討します」。首相、菅直人(64)は1日の所信表明でこう演説した。TPPはすべての関税撤廃が原則。発効後は対象品目の関税率を徐々に下げ、一定期間後にゼロにする。政府内には「10年後」との考えもある。
 この構想通りなら、あと10年でニッポンの農力を強くする覚悟が政府と農家自身に求められる。
 大規模化による生産性向上を理念とした旧農業基本法が制定されたのが1961年。ところが耕地面積はこの年を境に減り続け、2009年までにほぼ岩手県の面積に相当する農地が消えた。
 農業就業人口もピークの50年前から8割以上減り、今年は260万人と全就業者に占める割合が3%台に低下。農業総産出額は8兆5000億円弱(08年)と、最も多かった84年に比べ28%も低い水準だ。
 60年には13%あった国内総生産(GDP)に占める農林水産業の割合は今や1・5%(08年)。国内農業は「失われた50年」ともいえ、脱却するのは容易ではない。
 外相の前原誠司(48)は「1・5%を守るために98・5%のかなりの部分が犠牲になっている」と述べた。「失われた50年」がさらに続けば、農業だけでなく基幹の製造業もダメになってしまうとの主張だ。
 「売り先の主力を海外に移せば、国内市場縮小の影響は小さくなる」。コメを作る玉木農園(新潟市)の玉木修(31)は自由化をバネにしたいと意気込む。親の後を継いで00年に就農。米価の下落で苦境に陥り、04年にコネもない台湾に渡って卸会社に売り込んだ。2キログラムから始めた輸出は10年産米で150トンに。今年は米国へも輸出する。
 玉木が生産するコメは70~80トン。輸出分はこのうち20トンだ。150トンも輸出できるのは、近隣の契約農家から引き受けているからだ。
政策にメリハリ
 コメ余りで新潟コシヒカリも売れ残り、米価の下落に歯止めがかからない日本。だが「台湾向けの価格はずっと変わらず、次の収穫までに完売する」(玉木)。市場があるから作る。そんな当たり前の姿がここにある。
 「TPPに参加すれば農業は壊滅する」。全国農業協同組合中央会会長の茂木守(70)は反対ののろしを上げる。しかし人口減、低成長の日本で、どう守れば農業が成長するのか。バラマキ色の強い現在の戸別所得補償制度ではなく、自立する農家を厚く支援するメリハリの利いた政策で自由化に挑むしかない。
 「損失を被る農家には後押しが必要。例えば転業手当のようなものをつくる。何兆円かかっても自由化のほうが日本の国益にかなうかもしれない」と東大教授の本間正義(59)は指摘する。一方で「高くても国産がいいという消費者もいる。日本の農業の持ち味を生かしていくことも大切だ」と話す。
 旧農業基本法の制定に尽力した一人が元農林次官の故小倉武一だ。
 「輸入反対を唱えるだけでなく、自由化に耐えうる『強い農業』を目指し、本気で自活、再生への道を考える時期だ」
 小倉がこう言ったのは18年前のことだ。状況は今も変わらない。

 岐路に立つニッポンの農業。守りに入るのか、攻めていくのか。どちらにしても必要なのは農家の自立だ。(敬称略)

:2010:10/26/10:54  ++  TPP 対中安保から参加決断を

環太平洋の民主主義諸国による経済連携協定の枠組みである環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に日本が参加するかどうかが大きな焦点になっている。

 多国間で自由化を進めるTPPの枠組みを積極的に活用すれば日本のデフレ脱却に有効だ。経済のチャイナリスクや尖閣諸島問題などの安保戦略面からも首相はTPP参加を決断し、指導力を発揮すべきだ。

 TPPはシンガポール、ニュージーランドなどの4カ国が2006年に結んだ自由貿易協定(FTA)が始まりだ。オバマ米大統領が昨年、TPPへの参加方針を表明、俄然(がぜん)環太平洋の経済圏として注目されるようになった。

 多国間の枠組みで関税を撤廃し、投資ルールなどの統一もめざすTPPのメリットは極めて大きい。経済産業省は、国内総生産(GDP)の押し上げ効果を10兆円と試算している。

 FTAには2国間と多国間での締結がある。菅直人首相とシン・インド首相が25日合意したのは2国間FTAの拡大版の経済連携協定(EPA)だ。中国に次ぐ成長市場で民主主義大国のインドと関係を深めるのは重要だ。関税の大幅撤廃と投資ルールの共通化など経済上の利益も大きい。

 日本のFTA戦略は、世界からの周回遅れが指摘されている。日本は農産物市場の開放に対する国内の反対が根強く、最小限の開放で済む2国間のFTAやEPAを優先させてきた。

 アジアではASEANに日中韓を加えたFTAなどの構想があるが、中国の政治体制の問題もあって交渉は始まっていない。TPPなら日米同盟強化にもつながる。中国のレアアース(希土類)輸出制限などで表面化した問題にも共同で対処できる。

 だが、TPPに参加するには関税撤廃の例外措置が認められず、コメを含む大胆な農産物の市場開放が避けられまい。

 TPP参加による国内農業への打撃をいかに緩和するか。バラマキとなっている現行の戸別所得補償制度を続けながら、農業支援を追加すれば、歳出は際限なく膨らむだけである。限られた予算を意欲ある農家の規模拡大と担い手育成に集中投入し、国内農業を強くしなければならない。TPP参加とともに、首相は農業の抜本改革を進めるべきである。

:2010:10/26/10:35  ++  反日デモ、内政批判に波及、中国当局、取り締まり強化

中国各地で相次ぐ反日デモが内政批判にまで及んでいる。沿岸部に比べ発展が遅れる内陸部で募る地元政府への不満などが背景にあり、中国当局は25日、本格的な沈静化に乗り出した。共産党は全国の公安機関に反体制的な抗議の取り締まりを指示し、大学当局も学生にデモへの不参加を改めて呼びかけた。ただ、力ずくで封じ込めば、かえって民衆の暴発を招きかねず、党・政府は慎重に事態収拾を図る構えだ。
 24日午後、陝西省宝鶏市で起きた数百人規模のデモ。地元住民によると、若者らは尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を巡る日本への批判だけでなく、官僚腐敗や住宅価格高騰など内政への不満を声高に叫びながら行進を続けた。
 周囲を驚かせたのは、デモ隊が掲げた「多党制を認めよ」と書いた横断幕だった。中国メディア記者は「これほど公然と共産党の一党独裁を批判した動きは(1989年の)天安門事件以来だ」と話す。
 党関係者によると、事態を重視した共産党は、治安問題を担当する党政法委員会が同日夜に対応を協議。25日未明、各地の公安当局に「反体制的な行動に対しては、行為者の映像を録画する」、「デモが収まった後、関係者の事情聴取を経て、身柄拘束を含めたあらゆる措置を取る」などの指示を出した。
 デモが発生したのは内陸部の4省7都市。沿海部に比べ発展が遅れた地域が多く、貧富の格差や地方政府の横暴などに対する不満が根強い。党関係者は「住民らが持つ体制への不信感は予想以上に強い」と指摘する。公安当局者は「現場で取り押さえれば怒りが政権に向かう。慎重に対処せざるを得ない」という。
 北京市、陝西省西安市などの大学当局も24日夜、クラスごとに学生を集めデモに参加しないよう指導。「一時の感情で一部の不満分子の活動に手を貸し、一生を無駄にしてはいけない」とクギを刺した。
 ただ、学生らの間には、民主活動家、劉暁波氏(54)のノーベル平和賞受賞決定を受け、大学側が始めた思想教育強化への不満が募っている。こうした指導への反発から、学生らが民主化要求の動きを活発化させる可能性もある。
 中国当局は25日、新たなデモの発生を抑え込んだ。しかし、青海省では高校生らによるチベット語の保護を求めるデモが相次ぐ。格差、民主化、少数民族問題――。中国指導部は体制の屋台骨を揺るがしかねない3つの難題に同時に直面している。(北京=尾崎実)

:2010:10/26/10:16  ++  資源・投資で日印連携深めよ

菅直人首相は来日したインドのシン首相と会談し、日印間の経済連携協定(EPA)交渉の完了を宣言した。中国が経済、軍事の両面で台頭するなか、日印関係はアジアの安定のためにも重要度が増している。EPAの締結を弾みに、日印のより重層的な連携強化を望みたい。
 日印EPAは、日本が巨大市場国と結ぶ初めての協定だ。主要製品の輸入関税が原則、発効後10年間で段階的に撤廃される。日本にとっては自動車部品や鉄鋼などの輸出がしやすくなるという。1月に発効した韓国とインドの協定を上回る内容にならなかったのは残念だが、今後も遅れを取り戻す努力が欠かせない。
 両首脳は今回、ビザ(査証)発給手続きの簡素化、閣僚級で経済政策を定期協議する枠組みの新設などでも合意した。連携を強めるための道具立てが進んできたといえる。
 インドはアジアで日中に次ぐ第3の経済大国だ。人口規模では20年後に中国を抜く見込みだ。消費意欲が旺盛な中間層の台頭も著しい。
 2009年の日印間の貿易額は約100億ドルと、まだ日中間のおよそ20分の1にすぎない。EPAの早期発効に加えて、相互の経済協力に厚みをつけていく必要があろう。
 例えばインフラ整備だ。インドが経済の潜在力を発揮するには、道路や港湾、電力、通信など国内インフラの整備が欠かせない。こうした分野でインド側は日本の投資に期待し、日本の産業界の関心も高い。
 世界が中国に供給を依存するレアアース(希土類)についても、日印協調の意義は大きい。インドは埋蔵量が豊富で、開発に必要な技術と投資を求めている。日本の商社が手がける開発計画で、インド側との土地利用交渉が難航しているが、両国政府は早急に計画を進めるべきだ。
 インド側は交渉が続く日印原子力協定の早期締結を求めた。インドは原子力発電の急拡大が予想される。日本の産業界では機材や技術輸出への期待も大きい。
 だがインドは核拡散防止条約(NPT)の枠外で核実験をし、事実上の核兵器保有国となった。交渉に際して日本は唯一の被爆国として、インドのNPT加盟などを粘り強く説得する義務がある。

:2010:10/26/10:13  ++  円高で拡大する企業・国民の利害不一致(社説)

25日の東京市場では円高が進み、対ドルで過去最高値に接近した。そのなかで大手企業では1ドル=70円の超円高に備える動きも出てきた。
 25日に開いた「世界経営者会議」(日本経済新聞社など主催)で講演した東芝の佐々木則夫社長は、1ドルが70円になっても耐えられる経営を目指す、と語った。
 70円が定着した場合の影響や経営戦略を研究したという。その結果、中国や台湾の受託製造会社の活用や現地調達を拡大することと、事業の一層の「選択と集中」が必要という結論になった。
 製造業では東芝と同様の検討が進んでいる。自動車大手の幹部は80円程度が続くと「輸出車の大半が赤字になるので、海外生産を増やさざるを得ない」という。上位の自動車メーカーは国内の生産台数をピーク時の半分まで落とし、海外生産を拡大することも検討している。
 大手製造業は円高に振れると海外生産を増やし、円安だと国内生産を増やしてきた。今後もそれは続くとみられるものの、円高の定着を機に海外、特に自国通貨をドルと連動させている国に自社工場をつくるような企業は、為替変動にかかわらず現地生産を増やす可能性が大きい。それは国内雇用が減少していくことにつながる。
 グローバル化した経済の下で企業にとって最適な経営は、日本国民の雇用を脅かす結果となりうる。著しい円高はそれを増幅することが、次第に現実の動きとなってきた。
 円相場の行方はまだ読めない。しかし、どんな円高にも耐えられる経営を企業が目指し始めた事実は、政策当局に重大な決断を迫っている。
 第一に、国内での生産をなるべく残すための環境づくりだ。当面は70円といった超円高や現状のような著しい円高が続くのを防ぐため、適切な金融政策の運用が必要である。
 また、法人税減税や自由貿易協定網の拡大、労働規制の見直しなどの政策も要る。
 第二に、それでもかなりの生産移転が避けられないとすれば、国内の成長分野をはぐくみ、内需を拡大していくことだ。
 環境、医療、介護、観光などの分野での規制緩和や適切な予算配分などが要る。東京の国際金融センター化もあきらめるのは早い。起業の促進策も大事だ。それらを進めるには教育の改革が重要になる。総じていえば経済の供給面の大改革である。
 企業の成長が国民の繁栄に自動的にはつながらない時代の到来に、政治家は対応を急ぐべきである。

:2010:10/26/10:06  ++  経済連携協定の締結、日印首脳が合意、レアアース開発協力促進

菅直人首相は25日、来日中のインドのシン首相と首相官邸で会談し、日本とインドの間で貿易や投資を自由化する経済連携協定(EPA)を締結することで正式合意した。日印の原子力協定の早期交渉完了を目指すことや、レアアース(希土類)、レアメタル(希少金属)の開発協力の促進などでも一致。両首脳は合意内容を盛り込んだ共同声明に署名した。(関連記事3面に)
 両首脳は経済や安全保障など広範囲な分野で連携する「戦略的グローバル・パートナーシップ」を強化する方針も打ち出した。会談で菅首相は「(EPA)協定を通じて貿易、投資などの拡大を期待したい」と強調。シン首相は「できるだけ早く実施されるようにしたい」と語った。日印の閣僚級による経済対話設置でも大筋合意した。
 資源エネルギー問題をめぐって、菅首相は「レアアースの協力については今後、お互いの理解が進展することを期待する」と指摘。シン首相は「この分野で積極的に協力を進めたい。レアアースについて協力を深めていきたい」と応じた。
 日中関係について、菅首相は「尖閣諸島をめぐる問題はあったが、温家宝首相との懇談をきっかけに日中関係は改善の方向に進んでいる。戦略的互恵関係の推進に取り組みたい」と強調。シン首相はインドと中国との2国間関係の現状について説明した。

:2010:10/25/13:06  ++  スマートフォン戦争、行方を左右する重要な2つのカギ

今週、2010年10月28日にNTTドコモが発売する「GALAXY S」(SC-02B)を端緒に、来月はソフトバンクの「HTC Desire HD/Z」、そしてKDDI(au)の「IS03」と、主要キャリアが次々と新型スマートフォンを市場に投入する。いずれも基本ソフトにAndroidを搭載しており、(ソフトバンク製品を除けば)スマートフォン市場を席巻するiPhoneへの対抗商品であることは、誰の目にも明らかだ。

【詳細画像または表】

 このうちサムスン電子製のGALAXY Sは、韓国や米国では以前から発売されている。特にお膝元の韓国市場では、発売から3カ月足らずで100万台以上を売り上げたとされ、前評判は最も高い。ドコモはこれに、iモードのメール・アドレスが使える「SPモード」を追加するなど、日本向けに若干のカスタマイズを施した。約30万タイトルのアプリケーションを有するiPhoneのApp Storeへの対抗馬も用意した。同10万タイトルの「Android Market」とメーカー提供のアプリ・マーケット「Samsung Apps」だ。

 一方ハード面では、4.0インチの「スーパー有機EL」ディスプレイを搭載し、動画や写真を鮮やかに表示できる点が最大の特徴。重量は118グラムと、iPhone4(137グラム)より軽い。ただしデザインや質感ではiPhoneが勝るとの評判だ。日本の携帯電話のキラー・アプリである「おサイフケータイ」機能もついていない。SC-02Bの小売価格は3万円台前半と見られるが、これは同じハードディスク容量のiPhone4(16GB版)より1万円以上安い。

 このように価格性能比で勝負するドコモに対し、auはスマートフォンに日本型携帯の特徴とされる諸機能と、スカイプを追加することでiPhoneに対抗する。IS03は「おサイフケータイ」「赤外線通信ポート」「ワンセグ」「デコメ」「緊急地震速報」など、いわゆる「1台目のケータイ」に必要とされる機能をほぼ網羅した。さらに格安・無料のインターネット通話サービス「スカイプ(Skype)」を搭載する。これによって新規加入者を増やし、より利鞘が大きく、今後の成長が期待されるデータ系サービスでの収入増を狙う。ただし日本におけるスカイプの知名度は欧米ほど高くはないため、これがどの程度、客寄せの材料として効果を発揮するかは、今後の宣伝方法や営業努力にかかっている。

 ソフトバンクはiPhoneという断トツのヒット商品を有するだけに、新たに投入するアンドロイド端末「HTC Desire」の位置付けは微妙だ。HTC Desireには、iPhoneのようなフルタッチパネルの「Desire HD」と、QWERTYキーボードのついた「Desire Z」の2モデルが存在する。より注目されているHDの方は、4.3インチ・ワイドVGA液晶ディスプレイを搭載するなど、同業他社のスマートフォンやiPhoneより一回り、ないしは二回り大きい。おサイフケータイをはじめ日本ケータイ独特の機能は一切サポートしない。

 処理能力の指標となるCPUのクロック周波数は、3社の製品とも1GHzと全く同じ(Desire Zのみが800MHz)。タッチパネルの反応など体感速度は、いずれもiPhoneに引けを取らないと見られている。

今後の行方を左右するHTML5とウェブ・アプリ

 今後の展開を予想する上で参考になるのが、かつて1980年代から90年代にかけて争われた「Macintosh」対「Windows」のパソコン戦争だ。優れたデザインと直観的なGUIで初期のパソコン市場を開拓したMacに対し、後発のMS Windowsはあらゆるパソコンに搭載されるOS(基本ソフト)として急速にシェアを伸ばした。これによってアプリケーション開発のプラットフォームとなったWindowsは、その後Macを市場の片隅に追いやった。

 これに近い現象が、今後、「iPhone」対「Andoroid」のスマートフォン戦争でも起きると見られている。すでに世界市場では、Android OSを搭載したスマートフォン全体の売り上げがiPhoneを追い抜いた。Android Marketに出回るアプリの総数は、今はまだAppleのApp Storeに遠く及ばないが、ソフト開発業者はなるべく大きなプラットフォームに向けてアプリを開発したがる。今後、Android端末の販売台数が増えるに連れ、Android Marketのアプリ本数も増加し、それが端末の販売台数をさらに促すという好循環が生まれる。日本でもAndroid端末がiPhoneを追い抜くのは、時間の問題だろう。

 しかし過去のパソコン戦争と、今後のスマートフォン、さらにはタブレット端末なども含めたマルチ・デバイス戦争とで、決定的に異なる要素がある。それは「HTML5」という次世代のウェブ技術標準と、それによって開発される「ウェブ・アプリ」の台頭だ。HTML5とは、これまでホームページの文書構造を設計するために使われてきたマークアップ言語「HTML」に、「ジャバスクリプト」と呼ばれる事実上のプログラミング言語を不可分に結合し、その機能を大幅に拡充したものだ。これによって、「ワープロ」、「表計算」、「プレゼンテーション」といった、いわゆるデスクトップ・ソフト並みの本格的なアプリ(ネイティブ・アプリとも呼ばれる)を、これからはウェブ上で実現できる。つまりHTML5によって、ウェブはこれまでの「何かを見るためのホームページ」から、今後は「何かをするためのウェブ・アプリ」へと大転換する。

 その先陣を切って、Googleは年内、早ければ、この秋にも「Chrome Web Store」というアプリケーション・マーケットを開設。これに続いて、ブラウザ「Firefox」の開発元であるMozillaも同様のマーケット「Open Web Apps」を開始する。これらは一見、AppleのApp Storeと似ているが、そこで販売されるのはモバイル端末にダウンロードして使う「ネイティブ・アプリ」ではなく、全て「ウェブ・アプリ」である。ウェブ・アプリとは要するに「動的なウェブ・サイト」のことだが、「Chrome Web Store」や「Open Web Apps」は、それら動的ウェブ・サイトへのゲートウェイとして、認証・課金サービスをアプリ開発業者に提供する。

 彼らの後を追って、AppleもいずれiTunes(App Storeも含む)をウェブ・アプリ対応に改造すると見られている。それはChrome Web StoreやOpen Web Appsが、iTunesという閉鎖的プラットフォームに抜け穴を開けるからだ。HTML5というウェブ標準技術でアプリを作れば、それは一企業の独自プラットフォームに縛られる必要がない。GoogleやMozillaがその市場を作った以上、ソフト開発業者はそこに向けてウェブ・アプリをどんどん作るようになる。それが進み過ぎて手遅れになる前に、AppleはiTunesをウェブ・アプリに対応させるのだ。既に同社はHTML5関連の技術者を動員し、その準備を進めていると見られている。

 このようにネイティブ・アプリからウェブ・アプリへと開発の重点がシフトした場合、ユーザーにとっては提供されるアプリをもとにスマートフォンを選択する必要がなくなる。なぜなら「ウェブ・アプリ」であれば、iPhoneでもAndroid端末でも動くからだ。つまり「キラー・アプリ」というものが無くなるか、あるとしても端末メーカーが製品出荷時にプリ・インストールしたものが中心になる。そしてユーザーがスマートフォンを選択する基準は、端末自体の性能と、提携したキャリアの通信品質やサービスにほぼ絞られることになる。

 米国や日本の通信政策としては、端末(ハード)と通信(サービス)は今後、分離する方向に進んでいる。つまり量販店などで購入されたスマートフォンは、どのキャリアの通信サービスでも使えるようになる。となると、ユーザーにとって端末自体の性能やブランドが最大の選択要因となる。この点はApple(iPhone)に有利に働く。閉鎖的プラットフォームのiTunesに風穴を開けるHTML5を、Appleが支持するのは、この辺りに理由があると考えられる。

(文/小林 雅一=ジャーナリスト、KDDI総研リサーチフェロー)

:2010:10/25/13:06  ++  スマートフォン戦争、行方を左右する重要な2つのカギ

今週、2010年10月28日にNTTドコモが発売する「GALAXY S」(SC-02B)を端緒に、来月はソフトバンクの「HTC Desire HD/Z」、そしてKDDI(au)の「IS03」と、主要キャリアが次々と新型スマートフォンを市場に投入する。いずれも基本ソフトにAndroidを搭載しており、(ソフトバンク製品を除けば)スマートフォン市場を席巻するiPhoneへの対抗商品であることは、誰の目にも明らかだ。

【詳細画像または表】

 このうちサムスン電子製のGALAXY Sは、韓国や米国では以前から発売されている。特にお膝元の韓国市場では、発売から3カ月足らずで100万台以上を売り上げたとされ、前評判は最も高い。ドコモはこれに、iモードのメール・アドレスが使える「SPモード」を追加するなど、日本向けに若干のカスタマイズを施した。約30万タイトルのアプリケーションを有するiPhoneのApp Storeへの対抗馬も用意した。同10万タイトルの「Android Market」とメーカー提供のアプリ・マーケット「Samsung Apps」だ。

 一方ハード面では、4.0インチの「スーパー有機EL」ディスプレイを搭載し、動画や写真を鮮やかに表示できる点が最大の特徴。重量は118グラムと、iPhone4(137グラム)より軽い。ただしデザインや質感ではiPhoneが勝るとの評判だ。日本の携帯電話のキラー・アプリである「おサイフケータイ」機能もついていない。SC-02Bの小売価格は3万円台前半と見られるが、これは同じハードディスク容量のiPhone4(16GB版)より1万円以上安い。

 このように価格性能比で勝負するドコモに対し、auはスマートフォンに日本型携帯の特徴とされる諸機能と、スカイプを追加することでiPhoneに対抗する。IS03は「おサイフケータイ」「赤外線通信ポート」「ワンセグ」「デコメ」「緊急地震速報」など、いわゆる「1台目のケータイ」に必要とされる機能をほぼ網羅した。さらに格安・無料のインターネット通話サービス「スカイプ(Skype)」を搭載する。これによって新規加入者を増やし、より利鞘が大きく、今後の成長が期待されるデータ系サービスでの収入増を狙う。ただし日本におけるスカイプの知名度は欧米ほど高くはないため、これがどの程度、客寄せの材料として効果を発揮するかは、今後の宣伝方法や営業努力にかかっている。

 ソフトバンクはiPhoneという断トツのヒット商品を有するだけに、新たに投入するアンドロイド端末「HTC Desire」の位置付けは微妙だ。HTC Desireには、iPhoneのようなフルタッチパネルの「Desire HD」と、QWERTYキーボードのついた「Desire Z」の2モデルが存在する。より注目されているHDの方は、4.3インチ・ワイドVGA液晶ディスプレイを搭載するなど、同業他社のスマートフォンやiPhoneより一回り、ないしは二回り大きい。おサイフケータイをはじめ日本ケータイ独特の機能は一切サポートしない。

 処理能力の指標となるCPUのクロック周波数は、3社の製品とも1GHzと全く同じ(Desire Zのみが800MHz)。タッチパネルの反応など体感速度は、いずれもiPhoneに引けを取らないと見られている。

今後の行方を左右するHTML5とウェブ・アプリ

 今後の展開を予想する上で参考になるのが、かつて1980年代から90年代にかけて争われた「Macintosh」対「Windows」のパソコン戦争だ。優れたデザインと直観的なGUIで初期のパソコン市場を開拓したMacに対し、後発のMS Windowsはあらゆるパソコンに搭載されるOS(基本ソフト)として急速にシェアを伸ばした。これによってアプリケーション開発のプラットフォームとなったWindowsは、その後Macを市場の片隅に追いやった。

 これに近い現象が、今後、「iPhone」対「Andoroid」のスマートフォン戦争でも起きると見られている。すでに世界市場では、Android OSを搭載したスマートフォン全体の売り上げがiPhoneを追い抜いた。Android Marketに出回るアプリの総数は、今はまだAppleのApp Storeに遠く及ばないが、ソフト開発業者はなるべく大きなプラットフォームに向けてアプリを開発したがる。今後、Android端末の販売台数が増えるに連れ、Android Marketのアプリ本数も増加し、それが端末の販売台数をさらに促すという好循環が生まれる。日本でもAndroid端末がiPhoneを追い抜くのは、時間の問題だろう。

 しかし過去のパソコン戦争と、今後のスマートフォン、さらにはタブレット端末なども含めたマルチ・デバイス戦争とで、決定的に異なる要素がある。それは「HTML5」という次世代のウェブ技術標準と、それによって開発される「ウェブ・アプリ」の台頭だ。HTML5とは、これまでホームページの文書構造を設計するために使われてきたマークアップ言語「HTML」に、「ジャバスクリプト」と呼ばれる事実上のプログラミング言語を不可分に結合し、その機能を大幅に拡充したものだ。これによって、「ワープロ」、「表計算」、「プレゼンテーション」といった、いわゆるデスクトップ・ソフト並みの本格的なアプリ(ネイティブ・アプリとも呼ばれる)を、これからはウェブ上で実現できる。つまりHTML5によって、ウェブはこれまでの「何かを見るためのホームページ」から、今後は「何かをするためのウェブ・アプリ」へと大転換する。

 その先陣を切って、Googleは年内、早ければ、この秋にも「Chrome Web Store」というアプリケーション・マーケットを開設。これに続いて、ブラウザ「Firefox」の開発元であるMozillaも同様のマーケット「Open Web Apps」を開始する。これらは一見、AppleのApp Storeと似ているが、そこで販売されるのはモバイル端末にダウンロードして使う「ネイティブ・アプリ」ではなく、全て「ウェブ・アプリ」である。ウェブ・アプリとは要するに「動的なウェブ・サイト」のことだが、「Chrome Web Store」や「Open Web Apps」は、それら動的ウェブ・サイトへのゲートウェイとして、認証・課金サービスをアプリ開発業者に提供する。

 彼らの後を追って、AppleもいずれiTunes(App Storeも含む)をウェブ・アプリ対応に改造すると見られている。それはChrome Web StoreやOpen Web Appsが、iTunesという閉鎖的プラットフォームに抜け穴を開けるからだ。HTML5というウェブ標準技術でアプリを作れば、それは一企業の独自プラットフォームに縛られる必要がない。GoogleやMozillaがその市場を作った以上、ソフト開発業者はそこに向けてウェブ・アプリをどんどん作るようになる。それが進み過ぎて手遅れになる前に、AppleはiTunesをウェブ・アプリに対応させるのだ。既に同社はHTML5関連の技術者を動員し、その準備を進めていると見られている。

 このようにネイティブ・アプリからウェブ・アプリへと開発の重点がシフトした場合、ユーザーにとっては提供されるアプリをもとにスマートフォンを選択する必要がなくなる。なぜなら「ウェブ・アプリ」であれば、iPhoneでもAndroid端末でも動くからだ。つまり「キラー・アプリ」というものが無くなるか、あるとしても端末メーカーが製品出荷時にプリ・インストールしたものが中心になる。そしてユーザーがスマートフォンを選択する基準は、端末自体の性能と、提携したキャリアの通信品質やサービスにほぼ絞られることになる。

 米国や日本の通信政策としては、端末(ハード)と通信(サービス)は今後、分離する方向に進んでいる。つまり量販店などで購入されたスマートフォンは、どのキャリアの通信サービスでも使えるようになる。となると、ユーザーにとって端末自体の性能やブランドが最大の選択要因となる。この点はApple(iPhone)に有利に働く。閉鎖的プラットフォームのiTunesに風穴を開けるHTML5を、Appleが支持するのは、この辺りに理由があると考えられる。

(文/小林 雅一=ジャーナリスト、KDDI総研リサーチフェロー)

:2010:10/25/10:10  ++  復権うかがう安倍晋三氏 尖閣事件批判の急先鋒 保守勢力の核になれるか

自民党の安倍晋三元首相が夏の参院選後、精力的に動き始めた。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件では中国批判の先頭に立ち、返す刀で菅政権を「弱腰外交」と切り捨てる。14~20日は谷垣禎一総裁の特使としてワシントンを訪問、米政府要人との会談を次々に行い、存在感を示した。3年前の参院選で自民党を惨敗させた「十字架」を背負いながら保守勢力の核として復権を目指す思いが透けてみえる。(桑原雄尚)

 

 安倍氏は訪米中、シンクタンク「ハドソン研究所」主催の講演で、米政府関係者を前に積極的に懐柔策を仕掛ける中国ロビイストに警戒するよう強調。この様子はワシントンのケーブルテレビで何度も取り上げられ、米政府への反響は大きかったという。帰国後の21日には、自らが会長を務める保守系議連「創生日本」役員会で米要人との会談についてこう報告した。

 「『中国ともっとうまくやれ』と言う人もいたが、『そんなことではいけない』とクギを刺してきた」

 故中川昭一元財務相の遺志を継いだ創生日本は若手・中堅を中心に70人以上が入会し、自民党最大勢力になりつつある。活動も活発化しており、27日には都内で街頭演説を行い、中国漁船衝突事件をめぐる日中両政府の対応を糾弾する予定。年内を目標に教育や外交・安保などの基本政策を取りまとめる一方、地方組織の拡充も進める。
 8月に行われた参院自民党議員会長選で、安倍氏は自らが所属する町村派から出馬した谷川秀善前参院幹事長を推さず、「世代交代」を掲げた伊吹派(当時)の中曽根弘文元外相を水面下で支援。森喜朗元首相との確執を生む結果となったが、存在感を示すことにもつながった。先の衆院選で自民党保守系若手の多くが落選、ややリベラルの谷垣氏を中心とした執行部体制となったことは、自民党の支持が回復しない一因となっている。中川氏の急逝もあり、50歳代である安倍氏に保守派リーダーとして返り咲きを望む声は少なくない。

 ただ、政界混迷の原因は、安倍氏が首相として臨んだ3年前の参院選惨敗にあることは間違いない。しかも安倍氏はその後体調を崩して退陣した。自民党には「安倍氏のせいで…」との恨み節はなお残り、安倍氏の言動に「あの人に言われても…」という拒絶反応はなお消えない。党内には安倍氏を含む首相経験者全員の政界引退を求める声さえもある。

 それだけに安倍氏復権のハードルは高い。創生日本をいかに育て上げるかも大事だが、北朝鮮による拉致問題で見せたような政治手腕を振るうことができるか。そして政界再編を見据えながら明確な国家ビジョンを示すことができるか。首相経験者とはいえ、政治家としての正念場はこれからだといえる。

:2010:10/25/10:07  ++  【北海道5区補選】沈みだした「逃げ菅」政権 補正・政倫審・TPP課題山積も…

菅直人改造内閣発足後初の国政選挙となった衆院北海道5区補欠選挙で民主党候補が敗北したことを受け、政権運営はいっそう険しさを増す。自民党など野党は攻勢を強め、小沢一郎元代表の国会招致を求め、平成22年度補正予算案審議が立ち往生する可能性がある。小沢氏を支持する勢力も揺さぶりを強める公算が大きい。首相は「逃げ菅」を決め込んだが、得意の「場当たり」処世術では対処できないほど政権は傾き始めた。(佐々木美恵)

 

 補選告示後一度も選挙区入りしなかった首相は24日、陸上自衛隊の観閲式に出席後、首相公邸で閣僚らと環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の勉強会を開くなど淡々と日程をこなした。報道各社は補選に関するコメントを求めたが、秘書官を通じて「出しません」と拒否した。仙谷由人官房長官も同様にだんまりを決め込んだ。

 今回の補選は北海道教職員組合の不正資金提供事件に絡み民主党の小林千代美前衆院議員の辞職に伴う出直し選挙。これに尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や小沢氏の強制起訴問題などが重なり、首相らは「勝ち目はない」と早々に見切りをつけていたのだ。
党本部で唯一取材に応じた渡辺周選対委員長は「残念だ。厳粛に受け止める」と言葉少なだった。

 「最初から織り込み済みの結果だから…」。ある民主党幹部は平静を装ったが、事態は深刻だ。

 首相が選挙中に「いろんな仲間が(選挙区に)行っていると聞いている」と人ごとのように語ったことは党内の評判を一層下げた。官房長官の“悪態答弁”も選挙の足を引っ張った。

 補選敗北は1議席減にすぎないが、政権の「信任度」を占う意味合いが大きい。その後の政局の行方を示す先行指標でもある。

 平成14年10月に衆参7選挙区で行われた統一補選で1勝と惨敗した民主党の鳩山由紀夫代表(当時)は代表辞任に追い込まれた。

 18年の衆院千葉7区補選では民主党候補が勝利した。小泉純一郎首相(同)の勢いに陰りが見え始め、逆に小沢代表(同)は党内支配を盤石にした。

 今後野党が攻勢を強めるのは確実だ。政府は総額5.1兆円の補正予算案を何とか成立させたいが、自民党は財政健全化責任法案の成立を条件化する。補正予算に理解を示す公明党さえも、小沢氏の国会招致を実現しなければ審議に応じないとハードルを上げた。
小沢氏の国会招致問題が再燃すれば、民主党内の不協和音は大きくなる。

 反小沢勢力は早期の国会招致で幕引きを狙う。岡田克也幹事長は24日、徳島県小松島市で「補正予算は非常に大事だ。小沢氏は当然念頭において判断されるのではないか」と小沢氏の“英断”に期待を寄せた。

 逆に小沢氏周辺は「補選敗北は首相の失政が招いただけだろ」(中堅)と反発を強める。小沢氏自身は証人喚問はおろか、政治倫理審査会での弁明さえも「意味があるのか」と漏らしており、応じる気配はない。

 一方、首相は、議長国を務めるアジア太平洋経済協力会議(横浜APEC)など外交面で得点を稼ぎ、政権浮揚を狙う。オバマ米大統領や胡錦濤中国国家主席らとの首脳会談が予定され、自らの外交成果をアピールするチャンスだからだ。TPP参加にも熱心で24日の勉強会でも首相は「自分が政治決断する用意がある」と意気込んだ。

 だが、TPP参加には党内で反対が強く、混乱は避けられない。対中外交でも毅然(きぜん)と対応し、中国の強硬姿勢を改めさせることができなければ、政権は一気に転覆しかねない。

:2010:10/22/09:04  ++  空の大競争日本挽回なるか(上)羽田、国際拠点への挑戦―アジアの空港、巨大な壁

羽田空港に国際定期便が復活し、成田国際空港も発着枠を広げる。いよいよ始まる国際拠点(ハブ)空港への挑戦だが、海外の主要空港に追いつくには課題も多い。日本航空の再建には不透明感も漂う。日本は「空の攻防」で正念場を迎える。
 「将来的に5本目の滑走路を考えることも課題の一つだ」。16日、羽田空港で馬淵澄夫国土交通相はさらなる拡大の可能性をにじませた。
 21日に運用が始まった4本目の滑走路で発着枠は年30・3万回から37・1万回(国際線は6万回)に、2013年度には44・7万回(同9万回)に増える。規制緩和などで需要が増えれば5本目の滑走路が必要との見方は強く、「首都圏空港」の強化が日本経済の成長につながる期待は大きい。
「共倒れはせず」
 羽田の国際化に危機感を抱く成田。発着枠を14年度中に現在の22万回から30万回(国際線は27万回)に増やすことで地元自治体と合意した。1978年の開港以降、滑走路は長い間1本だけ。2本目が延長されたのも1年前のことだ。深夜・早朝は飛ばせない制約は残るが「羽田と一体となって航空機能の発展に応えたい」(成田空港会社の森中小三郎社長)。今後、格安航空会社の誘致や国内線の拡充を急ぐ。
 両空港の競争について国交省幹部は「首都圏の需要は大幅に拡大する。共倒れしない」と楽観視する。09年の国際線旅客数は両空港計で3千万人強。運輸政策研究機構によると、羽田と成田の役割分担が続いたとしても17年の首都圏の同旅客数は約5千万人に増える見通しだ。
 しかし、羽田と成田が共存できてもアジア各空港との競争は激しさを増すばかりだ。7月、韓国の仁川空港が日本の旅行会社向けに同空港経由で行く旅行商品の説明会を大阪市で開いた。仁川路線を持つ日本の空港は29もあるうえ、着陸料が安いため旅行代金も抑えられる。実際、仁川経由の海外旅行客は09年に82万人と前年比3割増。韓国の空港行政担当者は「一度固まった需要は簡単には動かない」と自信を見せる。
使用料下げ課題
 日本の空港は北米直行便を飛ばしやすい地理的優位性からアジアの玄関口として発展してきた。だが発着枠の限界もあり仁川や浦東(上海)がその地位を脅かしつつある。しかも世界で急成長する格安航空会社の誘致でも大きく後れを取った。
 日本の空港の競争力強化にとって最大の課題は着陸料などの空港使用料の高さだ。羽田と成田の着陸料はアジア主要空港の2~8倍。羽田など国が管理する空港の使用料は国内空港の整備に充てるとの名目で高止まりしてきた。馬淵国交相は「規制緩和には取り組まなければならない」と述べ、着陸料見直しなどに前向きな姿勢を示す。
 国交省は関西国際、伊丹両空港を経営統合させ、首都圏と並ぶ国際ハブ空港とする方針。だが両地域とも空港間アクセスをどうするかなど一体運営に向けた課題は山積だ。甘い需要予測のもとで全国に99もの空港をつくってきた日本の空港行政。守勢をはね返す最後のチャンスだ。

:2010:10/22/08:58  ++  レアアース、日・ベトナム共同開発、首相合意へ、官民で脱・中国。

菅直人首相とベトナムのズン首相は31日、ハノイで会談し、レアアース(希土類)の共同開発で合意する。日本は官民一体で探査や製錬技術を供与、開発を後押しする。豊田通商と双日が共同で取り組む開発に加え、新規参入する住友商事など企業進出が加速する見通し。レアアースは世界生産量の9割超を中国が占めており、一国依存脱却の足がかりとなる。(レアアースは3面「きょうのことば」参照)=関連記事9面に
 首相は28~30日まで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議などに出席するためハノイを訪ね、31日に公式訪問に切り替える。ズン首相との会談では外務・防衛次官級対話の枠組み創設で一致。(1)原子力発電所や高速鉄道の建設での協力(2)ベトナムの衛星打ち上げ事業での連携(3)インフラ整備に向けた円借款の供与――なども申し合わせる。原発輸出の前提となる原子力協定でも基本合意する公算が大きい。
 レアアースを巡っては尖閣諸島沖で起きた海上保安庁の巡視船と中国漁船との衝突事件で、中国の対日輸出が滞った。日本政府は中国側が企業活動への悪影響を見越したうえで、逮捕した中国人船長を釈放するよう「圧力」を掛けたと受け止めた。レアアース対日輸出が再び外交カードになり、揺さぶられる事態は回避しなければならないと判断。検討に着手した。
 ベトナムは中国との間で南沙(英語名・スプラトリー)諸島などを巡る領有権問題を抱える。資源獲得を含めた日越の連携強化は南シナ海で影響力を増す中国軍の動きをけん制する狙いもある。
 ベトナムでは液晶パネルやハイブリッド車に不可欠なセリウムやジスプロシウムなどのレアアースが産出するとみられる。中国に代わる一大産地に育てる計画だ。
 両首脳の合意を受け、住商は2013年以降のレアアースの日本向け輸出を目指す。ベトナムでは豊田通商と双日も開発を準備中で、事業が本格軌道に乗るもよう。2つの案件が順調に進めば、国内需要の2割以上をベトナムで確保できる。
 住商が開発を計画するのはベトナム北部イエンバイ省の鉱山。このほど事業化調査(FS)を開始した。事業主体は越企業や独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)との合弁になる可能性が高い。
 ベトナム側には日本企業の資金とノウハウを活用してレアアースを有力な輸出産品に育成したいとの期待がある。豊田通商と双日もベトナム石炭鉱産物公社(ビナコミン)傘下の企業と共同でレアアース開発を準備中だ。住商と豊通・双日の事業を合わせると少なくとも年間7000トン以上のレアアースを生産。当初の事業費は両グループ合計で2億ドル程度を見込む。

:2010:10/20/10:35  ++  環太平洋協定、難航は覚悟、政府動く、農業団体や党内に反発――中国けん制も狙う。

菅直人首相が積極姿勢を示す環太平洋戦略的経済パートナーシップ(TPP)を巡り民主党内で路線対立が激化している。首相は11月上旬までに経済連携協定(EPA)に関する基本方針をまとめ、自ら議長を務めるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で市場開放への積極姿勢を訴えたい意向だ。ただ打撃を受ける農業団体から不満が噴出。小沢一郎元幹事長に近い勢力との確執も絡み国内調整は難航している。(1面参照)
 「横浜APECのときにEPAなどでメッセージを出さざるを得ない」。玄葉光一郎国家戦略相は19日に国家戦略室の体制強化を発表し、EPA推進を中心課題に据える姿勢を強調した。そこには韓国や中国などの自由貿易協定(FTA)攻勢を前に「取り残される」との焦りがある。
 韓国は農業団体の反発を抑え米国や欧州連合(EU)とのFTAに署名。EU向け輸出乗用車の関税は日本の10%に対し、韓国はいずれ無税となる。中国も東南アジア諸国連合(ASEAN)とFTAを発効させた。
100議員が勉強会
 首相は所信表明演説で米主導のTPPへの参加検討を突如、表明した。その裏には危機感を募らせる経済界からの要請がある。経済安全保障が絡む中国けん制の狙いも潜む。TPPは米、豪、ベトナムなど中国と一定の距離を置く国が中心だ。
 国内調整は簡単ではない。「例外を認めないTPPを締結すれば日本農業は壊滅する」。全国農業協同組合中央会などは19日、反対を決議。山田正彦前農相や赤松広隆元農相らも21日に「反TPP」勉強会を発足させる。発起人には鳩山由紀夫前首相ら党執行部と距離を置く100人超の議員が名を連ねるもようだ。
 農家への戸別所得補償制度を進めた小沢氏は米国とのFTAも見据えていたとされる。だが党代表選で敗れた結果、情勢は一変。小沢氏に近い農業関係議員は戸別所得補償をあえて純粋な農業保護ととらえ、首相の積極策に異を唱える。「対応次第で政局にする」と一歩も引かぬ構えだ。TPPは国会承認が必要。多くの与党議員が反対・棄権すれば発効は困難だ。
 政府側も議員説得へ腐心する。19日の民主党会合で内閣府はTPPに参加すればGDPが2兆~3兆円程度増えるとし、経済産業省は参加しなければ輸出が8兆円、生産が20兆円余り減少するとの試算を示した。
APECにらむ
 閣内調整も難しい。前原誠司外相は19日の講演で「日本の国内総生産(GDP)の第1次産業の割合は1・5%だ。1・5%を守るために98・5%のかなりの部分が犠牲になっている」と主張した。だが副大臣らの協議は、推進派の外務、経産両省と、農林水産省が対立し、基本方針の文言調整にも入れない。
 政府関係者から結論を急ぐ必要はないと進言された首相はいらだつ。「一体どうすればいいんだ」。それでも首相は19日夜、都内で鹿野道彦農相と会食。APECに向けて腹の内を探り合った。
 ほくそ笑むのは自民党の農水族だ。来春の統一地方選挙をにらみ「農業支援を前面に出せば民主党に勝てる」と早くも皮算用を始めている。
 日本が環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)に参加するには、多品目の関税撤廃というハードルを越える必要がある。政府内でも「相当思い切った自由化の方針を表明しないと、参加を断られかねない」との懸念が浮上している。
 TPPに参加したニュージーランド、チリ、ブルネイ、シンガポールの4カ国が目指したのは、例外品目がほとんどない関税撤廃だ。例外はブルネイの酒・たばこ、チリの砂糖製品の一部など、わずかな品目にとどまる。農産品や繊維など各国の戦略的な品目も段階的に撤廃する。チリは乳製品に「発効後12年以内」、ニュージーランドは羊毛製品などに「10年以内」との期限を設けた。
 日本が関税をかけているのは約5900品目。政府が締結を急ぐ自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の例外品目が多いだけに、TPPに参加するには厳しい条件をクリアしなければならない。米国と韓国のFTAでは韓国のコメを除外したが、多国間でこうした規定が認められる可能性は小さい。

:2010:10/20/10:28  ++  景気「足踏み」に下方修正――10月月例報告、1年8ヵ月ぶり(景気がわかる)

海江田万里経済財政相は19日、10月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。景気の基調判断を「持ち直してきている」から「足踏み状態となっている」に弱め、1年8カ月ぶりに下方修正した。急速な円高や世界経済の減速、国内の政策効果の息切れが重なり、輸出や生産が鈍化しているのが主因。民間エコノミストの間では「来春まで足踏みが続く」との見方が大勢だ。
 内閣府は2009年6月から、「持ち直し」との基調判断を維持してきた。それより弱い「足踏み」の表現を使うのは、リーマン・ショック直前の08年7月以来。「当面は弱めの動きも見込まれるものの、景気が持ち直していくことが期待される」との認識も示した。
 個別項目では輸出の判断を2カ月連続で下方修正。アジア向け輸出の落ち込みなどを反映し、「増勢が鈍化している」から「弱含んでいる」に変えた。生産の判断は2カ月ぶりに下方修正し、エコカー補助金終了後の反動減なども踏まえて「緩やかに持ち直している」から「弱含んでいる」に変更した。
 海江田経財相は19日の記者会見で、景気の現状について「横ばい圏内で推移している。当面厳しいのは10~12月期だ」と指摘。「円高・株安などの影響で、さらに下振れするリスクが存在する」との懸念を表明した。
 内閣府の外郭団体である経済企画協会の集計によると、民間エコノミストが予測する10~12月期の実質経済成長率(前期比年率)は平均でマイナス0・21%。記録的な猛暑やエコカー補助金終了前の駆け込み需要などが追い風となった7~9月期の2・11%から大きく落ち込む。
 11年1~3月期は1・16%、11年4~6月期は1・32%で、景気の失速は避けられるとの見方が多い。ただ米中経済の減速や円高による企業・家計心理の悪化などもあって、景気の足取りが重くならざるを得ない。
 大和総研の熊谷亮丸氏は「中国経済の減速が止まるかどうかがカギになる。日本経済の持ち直しは来年半ば以降だ」と指摘。野村証券の木内登英氏も「円高の影響が薄まり、米中の在庫調整が終わって生産が上向く来年4~6月期までは、景気回復の動きが一時的に停滞する『踊り場』が続く」とみている。
 一方で「夏以降はアジアの新興国に持ち直しの動きがある。早ければ年明けにも踊り場を脱する」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との声も出ている。
【図・写真】月例経済報告関係閣僚会議に臨む菅首相(19日、首相官邸)
 政府の月例経済報告では、景気回復の動きが一時的に弱まる状態を「足踏み」と表現してきた。ただ同じ言葉を使っても、景気が再び回復軌道に戻る場合と、景気が後退局面に入る場合がある。その分岐点は外需の強さや政策効果の大きさにあるといえそうだ。
 月例報告で最も長く「足踏み」の判断を維持したのは1995年7~12月だ。この年は1月に阪神大震災が発生し、4月には円相場が1ドル=79円75銭の史上最高値をつけた。企業生産の停滞や米経済の減速が重なり、景気の勢いが弱まった。
 政府・日銀は経済対策や利下げを実施。日米独の協調介入もあって、円相場は秋にかけて100円台に戻った。政策対応の効果に外需の持ち直しが加わって、景気は息を吹き返した。結局、消費税率を3%から5%に引き上げた97年春まで景気回復局面が続いた。
 今回も景気の回復が途切れるとの見方は少ない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二氏は「日銀が追加の金融緩和に踏み切ったこともあり、景気の後退は避けられる」と話している。
 一方、2008年3~7月に「足踏み」と判断した際には、事後的に景気後退局面(07年11月~09年3月)と判定された。米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題の打撃が日本経済にも及び始めていたが、内閣府幹部は「影響を読み切れなかった」と振り返る。

:2010:10/20/10:21  ++  尖閣沖衝突ビデオ、自民・みんな公開へ圧力、民主、慎重姿勢崩さず。

政府が尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突時のビデオ映像を国会に提出する方針を決めたことを受け、自民党とみんなの党は19日、ビデオの早期公開を要求した。民主党は日中関係に悪影響を与えるとの理由で公開には消極的だが「秘密にしていては世論の誤解を招く」との声も一部にあり、調整は難航しそうだ。
 「自民党としてはすみやかに国民に公開すべきだとの立場だ」。自民党の逢沢一郎国会対策委員長は19日の総務会でこう強調。みんなの党の渡辺喜美代表も役員会で「ビデオは全面公開を要求したい」と力説し、公開要求で足並みをそろえた。
 衆院予算委員会は13日に映像を持つ那覇地検に提出を求めることを全会一致で議決し、政府・民主党が18日に国会に提出方針を決めた。自民党幹部は「提出すれば公開になる。議決した時点でこちらの勝ちだ。非公開にすれば民主党の支持率はまた落ちる」と指摘する。
 実際、自民党の読み通り、与党にも非公開は難しいとの見方が広がる。国民新党の下地幹郎幹事長は「日中両国が過度の解釈に走らないためには事実のビデオを流すことが大事だ」と強調。超党派の「日本の領土を守るために行動する議員連盟」も19日、一般への全面公開を盛り込んだ政府への要請案をとりまとめた。
 一方、民主党はビデオの国会提出までは認めても、依然として公開には慎重な立場を崩していない。収束に向かいつつある日中関係に悪影響を与えかねないというのが最大の理由で、仮に公開する場合でも開示対象を予算委理事らに限る「秘密会」方式を想定する。
 秘密会方式についても、情報が漏れる可能性が高いうえ、政府の対応への追及材料を野党に与えかねないとの懸念も強い。このため世論の反応や野党の出方などをにらみながら、公開の判断自体をできるだけ先送りしたいのが本音とされる。
 ただ、19日には参院予算委員会の理事懇談会でも、ビデオ映像の提出を政府側に求めることで合意。衆院予算委のように議決には至らないものの、判断を先送りしたい政府・与党への圧力は日に日に強まっている。

:2010:10/20/10:05  ++  第1部噴き出す矛盾(5)増税政変のジンクス、覚悟と準備突破口に(民主主義を考える

米国で今年、爆発的に売り上げが伸びた商品がある。判事が法廷でかぶる白髪のかつらだ。「反オバマ」のデモなどを繰り広げる保守派の間で、自助自立という建国の精神への回帰を求めて初代大統領ワシントンの仮装で練り歩くのが流行した。かつらはその必須アイテムだ。
 11月の中間選挙の話題を席巻する保守派の草の根運動「茶会党」は「大きな政府」に反対する急先鋒(せんぽう)。主張はただ一つだ。「増税につながりかねない歳出増は認めない」。景気低迷や不法移民の増加で将来に不安を抱く白人層の心を揺さぶり、一気に支持を広げた。
 パーティー(党)を名乗るが、目立った指導者はいないし、組織もない。誰かがネットに「××は歳出増を後押しした」と書き込むと、全米からその選挙区に押し寄せ、対抗馬を応援する。予備選段階で本命候補を次々と敗退に追い込んだ。
 新たな課税には貴族らの会議の承認を必要とすることを国王に認めさせた13世紀英国のマグナ・カルタ(大憲章)、重税に苦しむ植民地が英国に反旗を翻した米独立戦争……。税は民主主義のあり方と切っても切れない。
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 戦後日本でも税はしばしば政変を呼んできた。1970年代に大平内閣が一般消費税を、80年代に中曽根内閣が売上税を打ち出して失敗。故竹下登は89年に消費税導入を実現したが、リクルート事件もあって短命内閣に終わった。
 4カ月前もそうだった。参院選マニフェスト(政権公約)を発表する記者会見で首相、菅直人(64)は消費増税に言及。参院選大敗の一因となった。税率は自民党の10%を参考にするなどと「唐突で強引な印象を与えてしまった」(民主党幹部)。
 記者会見の前日、菅は側近議員にまくしたてた。「10%と言えば、自民党はそれじゃ足りないと言ってくるかもしれない。そうすればこっちの流れだ」。自民党が主張する「当面、10%」は少子化対策など政策項目を一応、積み上げた数字だ。「民主党に抱きつかれて足りないなどと言うはずがない」(自民党幹部)
 「消費税に手をつけた政権はつぶれる」。そんなジンクスが覆る直前までいったことがある。2007年秋。「ねじれ国会」のもとで自民党が、野党第1党だった民主党と話し合い、頓挫した大連立構想だ。
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 当時、首相だった福田康夫(74)との会談の直前。当時の民主党代表、小沢一郎(68)は元首相、森喜朗(73)と都内にあるホテルの一室で向かい合った。
 森「大連立って、君、何をテーマにするんだ」
 小沢「例えば消費税。急いでやらなきゃいけない」
 どうしてそんなに急ぐんだ、と聞く森に小沢は言った。「時間をかければ、うちの党はまとまらない」
 ドイツのメルケル政権はかつて大連立のもとで付加価値税(消費税に相当)の税率を引き上げた。しかし、菅は「選挙が終わってから『いや実は』というのはおかしい」と言う。民主党政権は「衆院選を経たうえでの消費税率上げ」にこだわる。
 それには覚悟と準備が必要だ。竹下内閣当時、小売業界で反対の先頭に立ったライフコーポレーション会長の清水信次(84)は「水面下でじわじわ業界団体を説得していった。竹下さんはまるで忍者のようだった」と振り返る。
 英国やポルトガル、ギリシャなど金融危機に見舞われた欧州各国の政権は緊縮財政とともに増税策を迫られている。歯止めがかからない日本の財政悪化。市場がいつまでも待ってくれるとは限らない。

:2010:10/18/10:47  ++  第1部噴き出す矛盾(2)北京からの挑戦状(民主主義を考える)

異質な市場経済 どう対峙
 異質な隣国――。尖閣諸島沖の漁船衝突事件が示したのは、日米欧とは違うルールで動く中国の姿だ。
 「公務執行妨害だから捕まえたんだ」。アジア欧州会議(ASEM)に出発する前日の2日夜。東京・赤坂の焼き肉店で、首相の菅直人(64)は民主党の若手議員らに船長逮捕の正当性を力説した。焼酎を酌み交わしながらの懇談だったが、続く言葉に力がこもらない。「そこからいろんなふうになってしまった……」
 訪日ツアーは突然キャンセル。レアアース(希土類)の輸出は停滞した。事実上の対日制裁に中国政府の回答は「そんな指示はしていない」。日本は最後まで出方を読みきれなかった。
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 船長の釈放で日中の緊張が緩みかけた途端、次の激震が欧州に走った。「(ノルウェーと中国の関係に)損害をもたらす」。中国外務省は8日、ノルウェー政府に激しく抗議した。民主活動家、劉暁波(54)へのノーベル平和賞授与が決まった直後だった。
 平和賞を決めるノーベル賞委員会はノルウェーにあるが、政府とは独立。それでも中国は圧力をかける。2006年には日本政府を「もっとマスコミを指導すべきだ」と批判した。民は官に従うはずだという独自の論理で譲歩を迫る。
 共産党の一党独裁を続けながら、市場経済を進める中国の発展モデルは「北京コンセンサス」と呼ばれる。日中摩擦で見せた力の外交。それを可能にしたのは急成長し、国内総生産(GDP)で間もなく世界2位になる経済力だ。
 土地は国のものだから、都市開発やインフラ整備はほぼ思いのまま。上海万博では1万8000戸が立ち退きの対象になった。一部の住民から不満は出たが、工事に影響はなかった。
 台湾との間で9月に発効した経済協力枠組み協定。事実上の自由貿易協定(FTA)で、台湾の求めで539品目の関税下げを決めた。国会の承認が必要な日本などと違い、政府間で合意すれば発効が決まる。台湾との関係強化という政治的な目的を優先し、足元の経済的な不利益に目をつぶることもできる。
 ミャンマーなど非民主的な国家には「親中派」が少なくない。「一部の途上国にとって中国は、経済発展に民主化は必ずしも必要ないという手本に映る」(日本外務省幹部)
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 中国に比べ、手続き重視の民主主義は意思決定が遅くみえるときもある。冷戦終結と旧ソ連の崩壊は「資本主義+民主主義」の優位性を証明したはずだった。それから20年。各国は「北京コンセンサス」からの挑戦への対処を迫られている。
 「人口5億人という市場への道が開かれる」。ブリュッセルでのASEM首脳会合を終えた6日。欧州連合(EU)とのFTAに署名した韓国の大統領、李明博(イ・ミョンバク=68)は、記者会見で強調した。
 韓国は前政権時にFTA推進にカジを切った。07年に署名した米韓交渉では反対派が警官隊と衝突し、焼身自殺者も出た。韓国政府高官は「ハードルが高い米韓交渉を乗り切って弾みをつけた」と振り返る。
 中国モデルは本当に経済をよりうまく運営できるのだろうか。成長が鈍れば、人権が守られず、非民主的な体制に不満が爆発し、社会が混乱するとの見方もある。
 韓国の例が示すように、民主主義国も戦略的な決断はできる。台頭する中国とどう対峙(たいじ)していくか。東大教授の北岡伸一(62)は言う。「第一に国内では時間はかかっても成長に必要な改革を止めないこと。第二に国際社会で民主主義の国々が連携することだ」=敬称略
(関連記事3面に)

:2010:10/18/10:42  ++  第1部噴き出す矛盾(1)経済危機と民意の迷路(民主主義を考える)

 「そんなこと、あり得ない」。ギリシャの外交官はあきれ顔で語る。深刻な財政危機に陥った同国が、地中海に点在する島々を売りに出す――。英紙報道をきっかけに、ロードス島、ミコノス島などのリゾート地が注目を集めた一件だ。
 買い手として取りざたされたのは中国だ。結局「国土の切り売り」は憶測の域を出なかったが、中国は別の手で助け舟を出す。ベルギーで開いたアジア欧州会議(ASEM)直前。アテネを訪問した首相の温家宝(68)は2日、ギリシャ国債の買い増しを宣言した。
 緊縮財政策に市民が反発するギリシャでは、デモやストが頻発して傷口を広げた。民主主義発祥の地ともされる国を一党独裁の中国が助ける皮肉。首相の菅直人(64)は財務相当時の5月、自らのホームページに書いた。「日本がギリシャのようにならないために、民主主義の力が問われている」
 それから1カ月後。首相になった菅は「脱小沢路線」で支持率をV字回復させたが、唐突な消費税増税発言で窮地に陥る。「政治は怖い。ちょっとしたことで流れが変わる」。参院選に惨敗した直後、そう漏らした菅の執務室には今、世論調査などの資料を携えた内閣情報官、植松信一(56)が足しげく通う。
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 「あなたが約束したチェンジ(変革)を全く実感できない」。11月に中間選挙を控えた米国。テレビ局が9月20日に主催した対話集会で、大統領のオバマ(49)を激しくなじったのは、中年の黒人女性だった。
 フランス、スペイン、ベルギー、ポルトガル……。リーマン・ショックの後遺症がある欧州各国ではデモが相次ぐ。3年前の就任当初、7割を超した仏大統領、サルコジ(55)の支持率は2割台に低下。英国やオーストラリアでは、選挙でいずれの党も多数を得られない「ハング・パーラメント(中ぶらりん議会)」が生じた。
 民意を前に苦悩する政治リーダーたち。共通するのは、前政権の停滞を打ち破る「改革」に期待を込めた世論の失望だ。グローバル化が進み、貿易や金融、環境など一国では解決できない難題が増える一方、世論は短期間に成果を求める。
 米国の政治学者、ダール(94)は著書「デモクラシーとは何か」で「経済成長はデモクラシーに有利に作用する」と指摘した。貧困の解消などを通じ、民主的な制度を支持する傾向が強い中流層を生むからだ。米国のエコノミスト、ラインハート夫妻(53、55)が言うように「経済危機がいったん起きると10年は経済停滞が続く」とするなら、欧米の苦境は根が深い。
 「失われた20年」からなかなか抜け出せない日本の危機も深刻だ。4年で5人目となる首相交代や参院で野党が過半数を持つ「逆転国会」の前に成長への道筋を描けない。
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 民主主義と資本主義は親和性が高い。しかし、非民主主義国家が資本主義を採用することもある。成長路線をひた走る中国はその代表格だ。中国共産党は15日、2011年からの「第12次5カ年計画」を話し合う会議を始めた。選挙の心配をすることなく、一党独裁が続くことを前提に5年先までを見通す。
 同志社大教授の浜矩子(58)は「民主主義の裏打ちのない資本主義はより大きな格差を生む」と言う。経済危機と新興国の台頭。先進各国は政治への信頼を取り戻し、民主主義の優位性を再確認できるだろうか。

:2010:10/18/10:37  ++  第1部噴き出す矛盾(3)「安定」見失った中間層(民主主義を考える

9月下旬。フランス全域で広がった100万人規模の反政府デモに参加した自動車大手ルノーの社員ディディエ・ボンバ(53)は大統領、サルコジ(55)への不満に声を荒らげた。「裏切られた。外国に雇用を奪われ、みな将来の不安でいっぱいなのに政府は無策だ」
 千葉県の市原ワークプラザ。この春、失業して職探しに通う49歳の男性は「変える、という言葉に期待したが、鳩山さんは口ばっかりだった」と憤る。ずっと自民党に投票してきた。昨年の衆院選で前首相、鳩山由紀夫(63)率いる民主党に初めて入れたが、今は「誰が首相になっても変わらないよ」。
 2人の嘆きは、欧州と日本が共に抱える構造問題を映し出す。少子高齢化と低成長、中国など新興国との競争、輸出依存経済の限界……。賃金の減少や雇用不安がもたらすものは何か。
 ドイツの外務省国務相(副大臣に相当)、ホイヤー(58)は「中間層が痛めつけられ、民主主義を不安定にする」と懸念する。産業革命のころから増大した中間層は社会の多数層として民主主義を支える主役だったからだ。企業の海外移転などが進み「ドイツではここ数年で中間層から10%がこぼれ落ちてしまった」。
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 右肩上がりの成長によって「一億総中流」といわれた日本も例外ではない。厚生労働省の2009年調査によると、世帯所得の中央値は427万円と10年前と比べ100万円を超す減少。300万円未満の世帯の割合が約10ポイント増え、33%を占める。高齢者世帯や単身世帯の比率が高まっている側面もあるが、デフレ進行や年功序列の崩壊が、長く続いた自民党の政権基盤を弱体化させた。
 安定した生活を展望できなくなった中間層は「変革」を求めて大きく振れる。「常在戦場」の衆院選、3年に1度の参院選――。大型国政選挙が頻繁にやってくる日本では「民意の振れ」が際立つ結果を生んだ。自民党は小泉劇場といわれた05年衆院選で大勝した後、07年参院選で惨敗。09年に政権を奪取した民主党は10年参院選で大敗した。
 埼玉大教授の松本正生(55)は「年齢が増すほど安定志向になり、自民党を支持するようになる傾向が崩れてしまった」と分析する。国内の選挙は無党派層がカギを握るといわれてきたが「今は選挙のたびに政党支持を変える『そのつど支持層』が増えていると言ったほうがしっくりくる」。
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 政治は迎合主義(ポピュリズム)に走りがちだ。民主党は高速道路無料化などを、財源に確証がないまま衆院選マニフェスト(政権公約)に盛った。欧州では、雇用不安を背景に、反イスラムや反移民など過激な考え方が目立ち始めた。支持率低下に悩むサルコジは国際的な批判にもかかわらず、少数民族ロマ人の国外追放を強行。オランダやデンマークなどでは極右政党が影響力を増している。
 局面打開には経済の立て直しが欠かせない。9月中旬。欧州連合(EU)は都内で開いた日本とのハイレベル協議で「経済統合を大胆に進めるべきだ」と呼びかけた。目指すのは非関税障壁などの解消も視野に入れた「単一市場」。中国など新興国への競争力強化が狙いだ。
 改革の痛みに耐えて市場を拡大しないと、経済ばかりか民主主義までが脅かされる――。EU側は危機感を強めるが、日本側の関心はもっぱら自動車や家電の関税率引き下げ。議論はかみ合わなかった。
 欧州委員会幹部はいらだちを隠さない。「今、進行中の脅威を、日本は認識していないのではないか」(敬称略)
会構造の激変の真の原動力は、常に中産階級の中に存在する」

:2010:10/12/11:25  ++  スマートフォン、米で競争激化、普及、携帯利用者の5割へ、マイクロソフト、アップル

【シリコンバレー=岡田信行】米IT(情報技術)大手の高機能携帯電話(スマートフォン)を巡る競争が激化している。マイクロソフト(MS)の新型OS(基本ソフト)を使った新製品が近く登場するほか、ヒューレット・パッカード(HP)は来年初めにも自社OSの新型機を投入。先行するアップルは通信会社の選択肢を広げて迎撃する見通し。「ネットといえば携帯よりパソコン」だった米国の常識を、スマートフォンが大きく変えようとしている。
 年末商戦で、のろしを上げるのはMSだ。11日にニューヨーク市で開くイベントで、新型OS「ウィンドウズフォン7(セブン)」を搭載した新型機について詳細を発表する。米ITメディアは8日、「MSが(米通信大手の)AT&Tと組む」と一斉に報じた。
 「7」搭載の新型機は、「テレビ、パソコン、携帯機器の3サイズの画面をネットにつなぐ戦略」(スティーブ・バルマー最高経営責任者)の要。現行OSでアップルやグーグルに完敗しただけに、いかに挽回(ばんかい)するかに注目が集まる。
 米調査会社ニールセンの調べでは、2009年末に「携帯電話ユーザーの5人に1人」だったスマートフォン普及率は、11年には「2人に1人」に高まる見通し。「インターネット接続」といえばパソコンで、喫茶店でも空港でもノート型パソコンを開く姿が一般的な米国でも、携帯電話でネット接続し、アプリケーションソフトやコンテンツ(情報の内容)を楽しむ使い方が普及するとみられている。
 そうした急成長市場を狙ってIT大手の本格参入も目立つ。HPは来年初めに独自OSを搭載したスマートフォンを発売する。7月までに買収完了した携帯端末大手パームの技術を活用。パームの「ウェブOS」を使ったスマートフォンになるとみられている。
 「iPhone(アイフォーン)」で個人向けのスマートフォン市場を切り開いたアップルも通信会社の選択肢を増やして、ユーザー層拡大に動く。従来独占契約を結んでいたAT&Tに加え、米携帯通信最大手のベライゾン・ワイヤレス向けにもiPhoneを供給する見通しだ。独自OS「アンドロイド」で協力メーカーを一気に増やした後発のグーグルが猛追しており、アップルは通信網の拡充で利用者拡大を進めるとみられる。
 序盤戦にアップルの大量点リードを許し、グーグルが猛追してきた米国のスマートフォン競争。各社は脱落せずに巻き返せるか。激しい中盤戦が始まった。