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:2010:10/12/11:20 ++ 年金記録回復へ未知数の総力戦―1万8000人で6億件照合(エコノフォーカス)
年金記録問題が解決に向け新たな段階に入る。日本年金機構は12日から、古い紙台帳6億件とコンピューター記録との全件照合作業に着手する。「宙に浮いた記録」「消えた記録」など年金記録問題の多くは紙台帳からコンピューターに移行するときの入力ミスで生じたとされ、全件照合は民主党が政権公約で「国家プロジェクト」と位置付けていた。解決に向け1万8千人を投じ人海戦術で作業を進める。ただ費用対効果を疑問視する声もあり、どこまで効果が出るかは未知数だ。(柳瀬和央、松尾洋平)
「画面にデータを呼び出し、紙台帳の記録と一つ一つチェックします」。東京都杉並区の日本年金機構本部。8日夜、紙台帳との全件照合を前に、突き合わせ作業に使うシステムを報道陣に公開した。機構は東京の中央記録突合センターで照合作業を始め、年度内に全国29カ所に拠点を拡大。1万8千人を投じ2013年度まで実質3年半で「全件照合」を目指す。
未解決2026万件
政府が期待するのは「宙に浮いた記録」の解明だ。今までは「ねんきん特別便」「ねんきん定期便」などを読んで「おかしい」と思った加入者からの回答を基に、問題ある記録を解明していった。それでも基礎年金番号に結びつかない未解決記録が9月時点で2026万件ある。「現状では、記録回復は壁にぶち当たっている」(年金機構)。そこで、コンピューターの記録と紙台帳との食い違いをあぶり出す。
紙台帳は主に戦時中の1942年から86年までに作られた書類だ。もともと、年金制度の発足当初は一人ひとりの記録を紙に書いて手作業で保存していた。80年代からコンピューター管理に移行したが、この過程で正しくデータがコンピューターに移っていないものがある。これを検証するのが全件照合の作業だ。
年齢の高い年金受給者から照合作業を始める。記録ミスが見つかり、受け取れる年金額が増えれば、年金機構から通知が届く。早ければ12月中旬にも第1便を送る。「これで本人が気づいていない“宙に浮いた”記録が復活できる」と厚生労働省は説明する。
中間検証が必須
問題は費用対効果だ。全件照合を実施すると、10年度は427億円、11年度は876億円の経費がかかる。このペースだと終了まで3年半で3千億円程度のお金が必要だ。
未納のある特殊な記録を集めた「国民年金特殊台帳」で先行実施した照合作業では、3096万件のうちコンピューター記録と一致しなかったのは30万件と全体の1%。経費106億円に対し、受給者の年金の増加額は年10・2億円だった。
「年金記録だけでなく、厚労省は医療や健康、少子化などほかにお金を使うべき対象があるはず」と財務省幹部は指摘する。年金記録問題の解決だけのために07年度から09年度まで累計1561億円の経費(予算ベース)を投じてきた。仮に全件照合に3千億円かかるとすると、13年度までに政府は5800億円もの税金を年金記録問題の解明に費やすことになる。
「全件照合は費用対効果に疑問が残る。政府はまず、改ざんによって“消された”年金記録を解明し、無年金状態になっている人を救う方が先決だ」。中央大の野村修也教授は人海戦術による記録解明に疑問を示す。事実、6億件の全件照合をしたところで、どこまで年金記録問題が解決するかはわからない。作業開始後、早い段階での中間検証が不可欠といえる。
▼日本年金機構 年金記録問題や事務処理を巡る一連の不祥事を背景に、旧社会保険庁からの業務を受け継ぎ、今年1月1日に発足した組織。公的年金の徴収や記録管理、相談や給付などを担う。非公務員型の特殊法人で、職員数は約2万2千人。年金記録の回復作業も機構が担う。
年金記録問題には持ち主が分からない記録が大量にあるという問題とは別に内容の正確性が怪しいという難問もある。紙台帳との全件照合を続ければ、持ち主への記録統合は進むとみられるが、記録そのものの信頼回復には直接つながらない。
深刻なのは厚生年金の記録改ざん問題だ。厚生年金の保険料は労使折半で支払うため、経営難に陥った中小・零細企業の事業主らが、保険料負担を軽くしようと従業員の月収を実際よりも低く国に届け出た事例が多い。
旧社会保険庁の職員が事業主に虚偽の届け出を促した疑いも強い。保険料滞納額を減らし、徴収成績を高く見せられるためだ。被害にあった従業員は実際の月収に見合う保険料を支払っていても、記録上の納付額はこれより少ないため、年金額が少なくなってしまう。
旧社保庁の調査では、年金の算定基礎となる標準報酬月額が大幅に下げられるなど記録が不自然な事例がコンピューター上に144万件あった。長妻昭前厚労相は昨年末、報酬月額が6カ月以上さかのぼって引き下げられるなど3条件を満たす6万9千件については、従業員だったことが確認できれば回復を認める救済策を導入したが、全面解決には遠い。
厚生年金を巡っては、企業年金の厚生年金基金が管理する報酬月額や加入期間などの記録が国の記録内容と一致していない、という問題も浮上した。サンプル調査から推計すると、不一致は基金記録約4000万件のうち、260万件程度に上る可能性もある。
「画面にデータを呼び出し、紙台帳の記録と一つ一つチェックします」。東京都杉並区の日本年金機構本部。8日夜、紙台帳との全件照合を前に、突き合わせ作業に使うシステムを報道陣に公開した。機構は東京の中央記録突合センターで照合作業を始め、年度内に全国29カ所に拠点を拡大。1万8千人を投じ2013年度まで実質3年半で「全件照合」を目指す。
未解決2026万件
政府が期待するのは「宙に浮いた記録」の解明だ。今までは「ねんきん特別便」「ねんきん定期便」などを読んで「おかしい」と思った加入者からの回答を基に、問題ある記録を解明していった。それでも基礎年金番号に結びつかない未解決記録が9月時点で2026万件ある。「現状では、記録回復は壁にぶち当たっている」(年金機構)。そこで、コンピューターの記録と紙台帳との食い違いをあぶり出す。
紙台帳は主に戦時中の1942年から86年までに作られた書類だ。もともと、年金制度の発足当初は一人ひとりの記録を紙に書いて手作業で保存していた。80年代からコンピューター管理に移行したが、この過程で正しくデータがコンピューターに移っていないものがある。これを検証するのが全件照合の作業だ。
年齢の高い年金受給者から照合作業を始める。記録ミスが見つかり、受け取れる年金額が増えれば、年金機構から通知が届く。早ければ12月中旬にも第1便を送る。「これで本人が気づいていない“宙に浮いた”記録が復活できる」と厚生労働省は説明する。
中間検証が必須
問題は費用対効果だ。全件照合を実施すると、10年度は427億円、11年度は876億円の経費がかかる。このペースだと終了まで3年半で3千億円程度のお金が必要だ。
未納のある特殊な記録を集めた「国民年金特殊台帳」で先行実施した照合作業では、3096万件のうちコンピューター記録と一致しなかったのは30万件と全体の1%。経費106億円に対し、受給者の年金の増加額は年10・2億円だった。
「年金記録だけでなく、厚労省は医療や健康、少子化などほかにお金を使うべき対象があるはず」と財務省幹部は指摘する。年金記録問題の解決だけのために07年度から09年度まで累計1561億円の経費(予算ベース)を投じてきた。仮に全件照合に3千億円かかるとすると、13年度までに政府は5800億円もの税金を年金記録問題の解明に費やすことになる。
「全件照合は費用対効果に疑問が残る。政府はまず、改ざんによって“消された”年金記録を解明し、無年金状態になっている人を救う方が先決だ」。中央大の野村修也教授は人海戦術による記録解明に疑問を示す。事実、6億件の全件照合をしたところで、どこまで年金記録問題が解決するかはわからない。作業開始後、早い段階での中間検証が不可欠といえる。
▼日本年金機構 年金記録問題や事務処理を巡る一連の不祥事を背景に、旧社会保険庁からの業務を受け継ぎ、今年1月1日に発足した組織。公的年金の徴収や記録管理、相談や給付などを担う。非公務員型の特殊法人で、職員数は約2万2千人。年金記録の回復作業も機構が担う。
年金記録問題には持ち主が分からない記録が大量にあるという問題とは別に内容の正確性が怪しいという難問もある。紙台帳との全件照合を続ければ、持ち主への記録統合は進むとみられるが、記録そのものの信頼回復には直接つながらない。
深刻なのは厚生年金の記録改ざん問題だ。厚生年金の保険料は労使折半で支払うため、経営難に陥った中小・零細企業の事業主らが、保険料負担を軽くしようと従業員の月収を実際よりも低く国に届け出た事例が多い。
旧社会保険庁の職員が事業主に虚偽の届け出を促した疑いも強い。保険料滞納額を減らし、徴収成績を高く見せられるためだ。被害にあった従業員は実際の月収に見合う保険料を支払っていても、記録上の納付額はこれより少ないため、年金額が少なくなってしまう。
旧社保庁の調査では、年金の算定基礎となる標準報酬月額が大幅に下げられるなど記録が不自然な事例がコンピューター上に144万件あった。長妻昭前厚労相は昨年末、報酬月額が6カ月以上さかのぼって引き下げられるなど3条件を満たす6万9千件については、従業員だったことが確認できれば回復を認める救済策を導入したが、全面解決には遠い。
厚生年金を巡っては、企業年金の厚生年金基金が管理する報酬月額や加入期間などの記録が国の記録内容と一致していない、という問題も浮上した。サンプル調査から推計すると、不一致は基金記録約4000万件のうち、260万件程度に上る可能性もある。
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:2010:10/12/11:08 ++ 介護保険財源は効率化と保険料上げで(社説)
介護保険制度ができて10年がたった。政府の審議会では、2012年度の介護保険法の抜本改正に向け制度の見直しが進んでいる。11月をめどに議論をまとめ、来年の通常国会に改正案を提出する方向だ。介護の必要性が高まる75歳以上の人口はこれから本格的に増える。制度維持のための財源確保は避けて通れない。
制度が発足した2000年度の介護費用は総額約3・6兆円だった。利用者の拡大で費用は増え続け、10年度は当初予算で7・9兆円に達した。65歳以上の被保険者の保険料も、00年度の月額平均2911円から今は4160円に上がった。
過度な公費依存避けよ
65歳から74歳で介護が必要な要介護認定を受けている人の割合は約5%だが、75歳以上は約30%にはね上がる。75歳以上人口は現在の約1400万人から、団塊世代がこの年代に達する25年には約2200万人と推計される。これからが正念場だ。
介護保険の財源は国が25%、都道府県と市町村が12・5%ずつ負担し、残り半分は40歳以上の国民が払う保険料だ。公費負担は09年度補正予算の介護職員処遇改善交付金などを加えると、すでに58%だ。
保険制度である以上、公費が財源の半分以上を占めるのは望ましくない。しかも国の負担の多くは後世代に負担が及ぶ赤字国債に依存し、恒久財源のめども立たない。保険料と違い、公費では利用者に介護費が増える痛みが伝わりにくく、支出が膨らむ懸念もある。
厚生労働省は交付金がなければ、保険料は今でも月4500円、12年度には5000円を超えると見込む。それでも保険料上げは当面やむを得ない。ただし、徹底した効率化で上げ幅をできるだけ小さく抑える工夫が必要だ。
例えば、同様の制度を持つドイツや韓国に比べ、日本は要支援1から要介護5まで7段階に認定基準が分かれ、介護度の低い人への手当てが厚い。軽度者に費用の3~5割程度を負担してもらう。保険の対象を重度の人に限ることも考えられる。またサービスの内容も買い物や調理などの生活援助は給付対象からはずすとか、制限的に適用した方がいいのではないか。
利用者の負担割合を1割から2割に上げることも選択肢だ。厚労省は、70~74歳が窓口で払う医療費を高齢者の反発に配慮し、特例措置で1割に抑えていたが、13年度から本来の2割に引き上げる方向で検討に入った。介護保険もこれにそろえるべきだ。
低所得者に過度な負担を強いない配慮は必要だ。65歳以上の保険料は、収入によって原則6段階に分かれている。これからの高齢者は元サラリーマン世帯が多く、一定額の厚生年金や企業年金をもらえる人が増える。こうした事情も考えて、所得が多い人の保険料をより高く設定することも考えられる。2割負担にする場合も、経済的に苦しい人は負担限度額を低く設定すればいい。
介護サービスも無駄なく、効率的に提供される必要がある。行政は介護サービスの提供や施設運営、福祉機器の貸与などが適正に行われているか監督する努力が欠かせない。
専門性の高いケアマネジャーを養成することも課題だ。現在は9割のケアマネジャーが介護事業所などに所属している。これではその事業所のサービスを優先的に利用し、利用者の立場で最適な介護計画を立てることが難しい。独立して仕事ができる体制を整える必要もある。
十分なサービスが提供され、競争を通じて良質で効率的な事業所が活躍できる環境も重要だ。社会福祉法人の中には経営感覚が乏しく効率運営ができていない例もある。規制を緩和して、民間企業が特別養護老人ホームや介護付き高齢者施設・住宅を自由に建てられるようにしたい。
介護と医療を一体で
医療と介護を一体で考える必要もある。高齢者の多くは自宅で最期を迎えたいと望んでいるが、医療の必要性が高くない人まで介護に比べ費用が高い医療機関に入院している。
こうした社会的入院をなくそうと自民党政権は、11年度末までに介護療養病床を廃止することにしたが、民主党政権はこれを凍結した。
必要な医療は適切に提供されなければならないが、病院の狭いベッドで暮らすより、自宅や介護施設でゆったり暮らす方が高齢者にとって幸せだし、社会的な費用も安い。
介護付きの高齢者住宅や介護施設、24時間地域巡回型訪問サービスなどを充実し、医療から介護への流れを進める必要がある。増え続ける認知症患者が病院でなく地域で暮らせる支援も大切だ。12年度は、診療報酬と介護報酬が同時改定されるまたとない機会である。より長い目で考えれば高齢者の医療保険と介護保険の運営を、同じ保険者が担うことを検討してもいい。
制度が発足した2000年度の介護費用は総額約3・6兆円だった。利用者の拡大で費用は増え続け、10年度は当初予算で7・9兆円に達した。65歳以上の被保険者の保険料も、00年度の月額平均2911円から今は4160円に上がった。
過度な公費依存避けよ
65歳から74歳で介護が必要な要介護認定を受けている人の割合は約5%だが、75歳以上は約30%にはね上がる。75歳以上人口は現在の約1400万人から、団塊世代がこの年代に達する25年には約2200万人と推計される。これからが正念場だ。
介護保険の財源は国が25%、都道府県と市町村が12・5%ずつ負担し、残り半分は40歳以上の国民が払う保険料だ。公費負担は09年度補正予算の介護職員処遇改善交付金などを加えると、すでに58%だ。
保険制度である以上、公費が財源の半分以上を占めるのは望ましくない。しかも国の負担の多くは後世代に負担が及ぶ赤字国債に依存し、恒久財源のめども立たない。保険料と違い、公費では利用者に介護費が増える痛みが伝わりにくく、支出が膨らむ懸念もある。
厚生労働省は交付金がなければ、保険料は今でも月4500円、12年度には5000円を超えると見込む。それでも保険料上げは当面やむを得ない。ただし、徹底した効率化で上げ幅をできるだけ小さく抑える工夫が必要だ。
例えば、同様の制度を持つドイツや韓国に比べ、日本は要支援1から要介護5まで7段階に認定基準が分かれ、介護度の低い人への手当てが厚い。軽度者に費用の3~5割程度を負担してもらう。保険の対象を重度の人に限ることも考えられる。またサービスの内容も買い物や調理などの生活援助は給付対象からはずすとか、制限的に適用した方がいいのではないか。
利用者の負担割合を1割から2割に上げることも選択肢だ。厚労省は、70~74歳が窓口で払う医療費を高齢者の反発に配慮し、特例措置で1割に抑えていたが、13年度から本来の2割に引き上げる方向で検討に入った。介護保険もこれにそろえるべきだ。
低所得者に過度な負担を強いない配慮は必要だ。65歳以上の保険料は、収入によって原則6段階に分かれている。これからの高齢者は元サラリーマン世帯が多く、一定額の厚生年金や企業年金をもらえる人が増える。こうした事情も考えて、所得が多い人の保険料をより高く設定することも考えられる。2割負担にする場合も、経済的に苦しい人は負担限度額を低く設定すればいい。
介護サービスも無駄なく、効率的に提供される必要がある。行政は介護サービスの提供や施設運営、福祉機器の貸与などが適正に行われているか監督する努力が欠かせない。
専門性の高いケアマネジャーを養成することも課題だ。現在は9割のケアマネジャーが介護事業所などに所属している。これではその事業所のサービスを優先的に利用し、利用者の立場で最適な介護計画を立てることが難しい。独立して仕事ができる体制を整える必要もある。
十分なサービスが提供され、競争を通じて良質で効率的な事業所が活躍できる環境も重要だ。社会福祉法人の中には経営感覚が乏しく効率運営ができていない例もある。規制を緩和して、民間企業が特別養護老人ホームや介護付き高齢者施設・住宅を自由に建てられるようにしたい。
介護と医療を一体で
医療と介護を一体で考える必要もある。高齢者の多くは自宅で最期を迎えたいと望んでいるが、医療の必要性が高くない人まで介護に比べ費用が高い医療機関に入院している。
こうした社会的入院をなくそうと自民党政権は、11年度末までに介護療養病床を廃止することにしたが、民主党政権はこれを凍結した。
必要な医療は適切に提供されなければならないが、病院の狭いベッドで暮らすより、自宅や介護施設でゆったり暮らす方が高齢者にとって幸せだし、社会的な費用も安い。
介護付きの高齢者住宅や介護施設、24時間地域巡回型訪問サービスなどを充実し、医療から介護への流れを進める必要がある。増え続ける認知症患者が病院でなく地域で暮らせる支援も大切だ。12年度は、診療報酬と介護報酬が同時改定されるまたとない機会である。より長い目で考えれば高齢者の医療保険と介護保険の運営を、同じ保険者が担うことを検討してもいい。
:2010:10/12/11:01 ++ 膨張中国どう向き合う。
尖閣諸島や南沙(スプラトリー)諸島の領有権問題、ノーベル平和賞、人民元――。フジタの高橋定さんが釈放され、日中関係はひとまず修復に向かうとみられるが、今後も摩擦は避けられそうにない。膨張する中国に世界がどう向き合うかが問われている。
ノーベル賞黙殺
民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授与の決定を中国政府は国内でほとんど黙殺した。「平和賞への冒涜(ぼうとく)だ」。各紙が報じたのは、中国外務省のごく短い談話ばかりだった。
統制はインターネットにも及んだが「受賞を熱烈に祝う」など、劉氏の名前を伏せた書き込みがあふれた。厳しい報道統制と、それをかいくぐって情報を得るネット世論。“異質な中国”は世界と深くつながっている。
経済規模で日本を抜くほど大きくなった中国。共産党の目標は今後も一党支配の堅持だ。その条件は社会の安定だが、安定を支えるはずの経済に危うさが潜む点に問題の核心がある。
7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は8日、「為替レートの柔軟性を高める改革」を求めることで一致した。だが中国が人民元レートの急激な切り上げを認める可能性は小さい。
「(相場が急上昇すれば)工場が大量に倒産し、社会不安になる」。温家宝首相は6日、ブリュッセルでの会合でこう訴え、さらに続けた。「世界にとって絶対に好ましいことではない」
これは単なる揺さぶりとは言えない面もある。輸出で伸びる中国の急膨張は世界には受け入れがたい。一方、日米欧が停滞する世界経済には中国の成長が必要な現実もある。人民元切り上げは必要だが、行き過ぎると、富の格差が社会不安の芽になっている中国を混乱させ、世界も動揺する。
海洋の領有権が絡む資源問題や地球環境問題にも同様のジレンマがある。中国の領有権の拡張も、中国が非効率な経済を続けることも放置はできない。主要国が協調して知恵を絞るべき時期に来ている。
そこに厄介な問題が表面化し始めている。中国で強まっている国力への自信だ。韜光養晦(とうこうようかい=力を隠して時間を稼ぐ)。1989年に起こった天安門事件以降の外交方針で、〓小平氏が指示したとされる。中国政治に詳しい慶大の加茂具樹准教授は「方針が正式に変わったとの確証はないが、見直しの議論は確実に始まっている」と指摘する。
「中国夢」。中国で今年話題になっている本だ。21世紀は中国と米国が競い合う時代という内容で、著者は軍関係者。大国意識が国民の間で強まっていることを示す。
世界同時不況を真っ先に克服し、中国は自信を深めた。経済と安全保障の両面で、中国と世界は互いの間合いを見いだせていない。その過程であつれきが起きる可能性は否定できない。
工場か、市場か
では中国とどう向き合えばいいのか。日本をはじめ各国の企業はリスクがあることは知っていても、成長する中国に投資を続ける。半面、人件費の上昇でベトナムなどに拠点を移す動きも始まっている。中国を工場とみるか市場とみるかを考え、企業は生き残りをかけて戦略を組む。
民主党の有力政治家は尖閣騒動のさなかに「(中国と)経済パートナーシップを組む企業はお人よしだ」と語った。140人の国会議員団が訪中した一方で、こうした発言も飛び出す。現政権は対中政策で腰が定まっているように見えない。
米国、日本が中国との間で「戦略的パートナーシップ」「戦略的互恵関係」といった言葉を掲げるだけでは事態を打開できない。一連の騒動は関係の再構築が急務なことを示した。世界と中国はどう調和することができるか、模索が続く。
ノーベル賞黙殺
民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授与の決定を中国政府は国内でほとんど黙殺した。「平和賞への冒涜(ぼうとく)だ」。各紙が報じたのは、中国外務省のごく短い談話ばかりだった。
統制はインターネットにも及んだが「受賞を熱烈に祝う」など、劉氏の名前を伏せた書き込みがあふれた。厳しい報道統制と、それをかいくぐって情報を得るネット世論。“異質な中国”は世界と深くつながっている。
経済規模で日本を抜くほど大きくなった中国。共産党の目標は今後も一党支配の堅持だ。その条件は社会の安定だが、安定を支えるはずの経済に危うさが潜む点に問題の核心がある。
7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は8日、「為替レートの柔軟性を高める改革」を求めることで一致した。だが中国が人民元レートの急激な切り上げを認める可能性は小さい。
「(相場が急上昇すれば)工場が大量に倒産し、社会不安になる」。温家宝首相は6日、ブリュッセルでの会合でこう訴え、さらに続けた。「世界にとって絶対に好ましいことではない」
これは単なる揺さぶりとは言えない面もある。輸出で伸びる中国の急膨張は世界には受け入れがたい。一方、日米欧が停滞する世界経済には中国の成長が必要な現実もある。人民元切り上げは必要だが、行き過ぎると、富の格差が社会不安の芽になっている中国を混乱させ、世界も動揺する。
海洋の領有権が絡む資源問題や地球環境問題にも同様のジレンマがある。中国の領有権の拡張も、中国が非効率な経済を続けることも放置はできない。主要国が協調して知恵を絞るべき時期に来ている。
そこに厄介な問題が表面化し始めている。中国で強まっている国力への自信だ。韜光養晦(とうこうようかい=力を隠して時間を稼ぐ)。1989年に起こった天安門事件以降の外交方針で、〓小平氏が指示したとされる。中国政治に詳しい慶大の加茂具樹准教授は「方針が正式に変わったとの確証はないが、見直しの議論は確実に始まっている」と指摘する。
「中国夢」。中国で今年話題になっている本だ。21世紀は中国と米国が競い合う時代という内容で、著者は軍関係者。大国意識が国民の間で強まっていることを示す。
世界同時不況を真っ先に克服し、中国は自信を深めた。経済と安全保障の両面で、中国と世界は互いの間合いを見いだせていない。その過程であつれきが起きる可能性は否定できない。
工場か、市場か
では中国とどう向き合えばいいのか。日本をはじめ各国の企業はリスクがあることは知っていても、成長する中国に投資を続ける。半面、人件費の上昇でベトナムなどに拠点を移す動きも始まっている。中国を工場とみるか市場とみるかを考え、企業は生き残りをかけて戦略を組む。
民主党の有力政治家は尖閣騒動のさなかに「(中国と)経済パートナーシップを組む企業はお人よしだ」と語った。140人の国会議員団が訪中した一方で、こうした発言も飛び出す。現政権は対中政策で腰が定まっているように見えない。
米国、日本が中国との間で「戦略的パートナーシップ」「戦略的互恵関係」といった言葉を掲げるだけでは事態を打開できない。一連の騒動は関係の再構築が急務なことを示した。世界と中国はどう調和することができるか、模索が続く。
:2010:10/08/09:44 ++ 【尖閣敗北 私はこう見る】 時を稼いで交渉する以外ない パリ政治学院のジャンマリ・ブイソウ教授
今回の事件で、中国が閣僚級の交流停止からレアアース(希土類)禁輸、4人の日本人拘束、謝罪と賠償要求-と常に主導権を握り、日本が後手に回った。ゲームとしては日本にとって最悪の形になったが、これは中国が共産党一党独裁体制であるのに対し、日本が民主主義体制だからだ。
日本は、中国の最終目的が尖閣諸島の主権獲得にあり、環境保護団体・グリーンピースを相手にしているのではないということを肝に銘じるべきだ。
しかも中国は今や日本をしのぐ経済大国だ。米国をはじめ世界は中国と対峙(たいじ)することで世界経済の均衡を揺るがしたくないと考えているので、日本は孤立状態だ。
日本としては中国との“事件”は「即刻、除去する」ことだ。2004年に小泉政権が尖閣諸島に不法上陸した中国人活動家を強制送還したのはうまい措置だった。ただ、この措置は当時の小泉政権が強いから可能だったわけで、基盤の弱い菅政権は何をやっても野党や国民から「弱腰」などと批判されることになろう。
フランスは1989年に天安門事件を非難したことで対中関係がギクシャクし、92年には台湾と戦闘機の売却契約を結んだことで中国から在広州総領事館の閉鎖や地下鉄工事などの参入禁止という経済制裁を受けたが、94年の国交樹立30周年でやっと正常化した。
サルコジ仏大統領がチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と会談したことでも関係は悪化した。しかしフランスには何世紀も国際舞台でさまざまな交渉をしてきた経験がある。交渉のチャンネルもあれば専門家もいる。
日本の場合、今回のように米国が助けてくれないケースが今後増えよう。独自の外交経験を積み、こうした危機に備える必要がある。
菅直人首相は謝罪する必要も賠償を支払う必要もない。古典的方法だが、日本は時間を稼ぎ、のらりくらりと粘り強く交渉することだ。
尖閣諸島をめぐる日中の対立は外交用語で、「危機の教材」といえるケースだ。つまり異なる体制の国家が対峙したとき、いかなる解決法を見いだし、いかに勝利するかという例題だ。日本には民主主義体制の代表としてがんばってほしい。(談
日本は、中国の最終目的が尖閣諸島の主権獲得にあり、環境保護団体・グリーンピースを相手にしているのではないということを肝に銘じるべきだ。
しかも中国は今や日本をしのぐ経済大国だ。米国をはじめ世界は中国と対峙(たいじ)することで世界経済の均衡を揺るがしたくないと考えているので、日本は孤立状態だ。
日本としては中国との“事件”は「即刻、除去する」ことだ。2004年に小泉政権が尖閣諸島に不法上陸した中国人活動家を強制送還したのはうまい措置だった。ただ、この措置は当時の小泉政権が強いから可能だったわけで、基盤の弱い菅政権は何をやっても野党や国民から「弱腰」などと批判されることになろう。
フランスは1989年に天安門事件を非難したことで対中関係がギクシャクし、92年には台湾と戦闘機の売却契約を結んだことで中国から在広州総領事館の閉鎖や地下鉄工事などの参入禁止という経済制裁を受けたが、94年の国交樹立30周年でやっと正常化した。
サルコジ仏大統領がチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と会談したことでも関係は悪化した。しかしフランスには何世紀も国際舞台でさまざまな交渉をしてきた経験がある。交渉のチャンネルもあれば専門家もいる。
日本の場合、今回のように米国が助けてくれないケースが今後増えよう。独自の外交経験を積み、こうした危機に備える必要がある。
菅直人首相は謝罪する必要も賠償を支払う必要もない。古典的方法だが、日本は時間を稼ぎ、のらりくらりと粘り強く交渉することだ。
尖閣諸島をめぐる日中の対立は外交用語で、「危機の教材」といえるケースだ。つまり異なる体制の国家が対峙したとき、いかなる解決法を見いだし、いかに勝利するかという例題だ。日本には民主主義体制の代表としてがんばってほしい。(談
:2010:10/08/08:58 ++ 韓欧の自由貿易協定が日本に問う課題(社説)
韓国と欧州連合(EU)が自由貿易協定(FTA)を締結した。協定が発効すると、人口5億人のEUの巨大市場で、韓国製品への関税は撤廃されるが、日本製品への関税は残る。日本企業は韓国に比べて、極めて不利な競争条件に置かれる。
菅政権は、後れを取ったFTA戦略の立て直しを急ぐべきだ。米欧や韓国をはじめ世界各国は、輸出拡大を経済成長の柱に据えている。通商政策の道を誤れば、日本経済にとり致命傷になりかねない。
EUは今のところ、日本とのFTA交渉に乗り気ではない。日本にできないことが、なぜ韓国にできたのか。日本が韓国とEUの協定から学ぶべき教訓は2つある。
第一は規制改革だ。例えば韓国は自動車、電機の国内市場で、安全規格や環境基準、認証手続きを緩和する。これで欧州企業は、自分の国と同じ製品を、煩雑な非関税障壁なしで韓国に輸出できるようになる。
韓国にも規制改革の利点がある。基準認証でEUと足並みをそろえれば、EUが握る国際標準を利用できるからだ。東南アジアやアフリカ、中東、南米など、欧州の基準・規格に準拠する新興国・途上国の50億人の市場にさらに輸出しやすくなる。
第二は農業改革である。韓国は農産物の市場開放に応じる一方で、農家への所得補償を実施し、貿易自由化に反対する国内の声に対応した。
たとえば2003年には、10年間で総額119兆ウォン(約9兆円)を農業支援にあてる総合対策を掲げた。関税で農産物市場を保護するのではなく、財政で農家を守り、育てる政策を徹底したといえる。
日本のFTA戦略の足かせとなっている要因は、規制改革と農業改革だ。韓国はこの2つで国内措置を実施してEUとの交渉を進め、EU側に工業品の関税撤廃を受け入れさせた。見習うべきだろう。
菅直人首相は所信表明演説で、米国主導で進む「環太平洋戦略的経済パートナーシップ(TPP)」への参加を検討すると述べた。この多国間の自由貿易の枠組みに日本が加われば、日本と米国がFTAを結ぶのと同等の意味がある。
アジアで中国が影響力を強める中で、日米が経済のきずなを太くする意義は大きい。11月に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)は、日本がTPPに参加する意志を表明する好機となるだろう。
菅首相のTPPへの意欲を評価したい。だが、参加を決めるなら、菅首相は規制改革と農業改革の道筋も同時に示さなければならない。
菅政権は、後れを取ったFTA戦略の立て直しを急ぐべきだ。米欧や韓国をはじめ世界各国は、輸出拡大を経済成長の柱に据えている。通商政策の道を誤れば、日本経済にとり致命傷になりかねない。
EUは今のところ、日本とのFTA交渉に乗り気ではない。日本にできないことが、なぜ韓国にできたのか。日本が韓国とEUの協定から学ぶべき教訓は2つある。
第一は規制改革だ。例えば韓国は自動車、電機の国内市場で、安全規格や環境基準、認証手続きを緩和する。これで欧州企業は、自分の国と同じ製品を、煩雑な非関税障壁なしで韓国に輸出できるようになる。
韓国にも規制改革の利点がある。基準認証でEUと足並みをそろえれば、EUが握る国際標準を利用できるからだ。東南アジアやアフリカ、中東、南米など、欧州の基準・規格に準拠する新興国・途上国の50億人の市場にさらに輸出しやすくなる。
第二は農業改革である。韓国は農産物の市場開放に応じる一方で、農家への所得補償を実施し、貿易自由化に反対する国内の声に対応した。
たとえば2003年には、10年間で総額119兆ウォン(約9兆円)を農業支援にあてる総合対策を掲げた。関税で農産物市場を保護するのではなく、財政で農家を守り、育てる政策を徹底したといえる。
日本のFTA戦略の足かせとなっている要因は、規制改革と農業改革だ。韓国はこの2つで国内措置を実施してEUとの交渉を進め、EU側に工業品の関税撤廃を受け入れさせた。見習うべきだろう。
菅直人首相は所信表明演説で、米国主導で進む「環太平洋戦略的経済パートナーシップ(TPP)」への参加を検討すると述べた。この多国間の自由貿易の枠組みに日本が加われば、日本と米国がFTAを結ぶのと同等の意味がある。
アジアで中国が影響力を強める中で、日米が経済のきずなを太くする意義は大きい。11月に横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)は、日本がTPPに参加する意志を表明する好機となるだろう。
菅首相のTPPへの意欲を評価したい。だが、参加を決めるなら、菅首相は規制改革と農業改革の道筋も同時に示さなければならない。
:2010:10/07/09:19 ++ TIS、ソラン、ユーフィットが合併--従業員7500人以上、売上高1800億円
ITホールディングスは10月5日、グループ会社のTIS、ソラン、ユーフィットの3社が合併することを発表した。同日の各社の取締役会で決議、基本合意書を締結している。
2011年4月1日に合併新会社が発足する。新会社は従業員7500人以上、売上高は単純合算して1800億円になる。合併の方式については、合併委員会で検討する。
ITホールディングスは、設立以来連結子会社の自主性を尊重した経営を行ってきたが、経営環境の質的な変化とスピードが高まることにあわせて、子会社マネジメント体制の第2段階として、手法を変革することにしたと説明。企業規模の拡大が重要としている。
TIS、ソラン、ユーフィットは国内最大級のクレジットカードシステム開発案件を共同で開発した実績があるといい、企業風土の親和性をベースに3社が相互に保有する技術やノウハウの効率的な活用により、規模拡大のメリットを享受できると判断している。
2011年4月1日に合併新会社が発足する。新会社は従業員7500人以上、売上高は単純合算して1800億円になる。合併の方式については、合併委員会で検討する。
ITホールディングスは、設立以来連結子会社の自主性を尊重した経営を行ってきたが、経営環境の質的な変化とスピードが高まることにあわせて、子会社マネジメント体制の第2段階として、手法を変革することにしたと説明。企業規模の拡大が重要としている。
TIS、ソラン、ユーフィットは国内最大級のクレジットカードシステム開発案件を共同で開発した実績があるといい、企業風土の親和性をベースに3社が相互に保有する技術やノウハウの効率的な活用により、規模拡大のメリットを享受できると判断している。
:2010:10/07/09:12 ++ ノーベル賞日本人2氏、有機合成世界をリード、液晶の競争力支える。
ノーベル化学賞を受ける根岸英一・米パデュー大学特別教授や鈴木章・北海道大学名誉教授らが開発した「クロスカップリング反応」は、チッソや東ソーなど日本企業がいち早く成果を実用化に結びつけた。液晶パネルや有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)の素材、医薬品や農薬の合成など幅広い分野で日本企業の競争力を支えている。化学工業の要となる有機合成で世界をリードする原動力となった。(1面参照)
同技術を応用した代表的製品は液晶材料。今回の成果は「くっつけたい元素同士を結合できる点に新規性がある。液晶パネルなどで人工的に作れる化合物が飛躍的に増えた」(電機メーカー)。日本が液晶テレビなどで競争力を高める原動力になった。
チッソは1990年代半ばにクロスカップリング反応を液晶材料の合成に応用し、量産で先行した。液晶材料はテレビやパソコンのディスプレー用途で飛躍的に需要が拡大した。ディスプレイサーチによると、液晶テレビの世界出荷金額(2009年)は846億ドル(7兆218億円)と、電機産業を代表する巨大市場になった。
次世代ディスプレーと期待される有機EL材料も同様だ。有機薄膜太陽電池の材料合成にも応用が見込まれる。
医薬品の有効成分を化学合成する際にも使われている。反応を格段に進めやすくなり「医薬品業界にとても歓迎された」(鈴木名誉教授)。
東ソー子会社の東ソー・ファインケム(山口県周南市)はクロスカップリング反応を使った医薬品原料などの量産で先行した。鈴木氏と親しい同社の江口久雄・事業企画室企画担当部長は「この反応がなければ現在の液晶テレビはなく、以前からノーベル賞の価値はあると思っていた」と話す。
米メルクの高血圧症治療薬「ロサルタン」はスウェーデンで94年に発売後、世界約100カ国で販売され、売上高が3000億円を超えるヒット薬に育った。ドイツのBASFは農薬原料の合成に同反応を使う。ブラジルの専用プラントは同反応を応用した世界最大の工場といわれる。
現在、年間売上高5000億円超と世界で最も売れている高血圧症薬であるスイス・ノバルティス製の「ディオバン」にもクロスカップリング反応が使われている。臨床試験中の候補薬では米ファイザーの関節リウマチ治療薬や米ブリストル・マイヤーズスクイブの抗ウイルス薬などが同反応を利用。応用範囲は広がり続けている。
同技術を応用した代表的製品は液晶材料。今回の成果は「くっつけたい元素同士を結合できる点に新規性がある。液晶パネルなどで人工的に作れる化合物が飛躍的に増えた」(電機メーカー)。日本が液晶テレビなどで競争力を高める原動力になった。
チッソは1990年代半ばにクロスカップリング反応を液晶材料の合成に応用し、量産で先行した。液晶材料はテレビやパソコンのディスプレー用途で飛躍的に需要が拡大した。ディスプレイサーチによると、液晶テレビの世界出荷金額(2009年)は846億ドル(7兆218億円)と、電機産業を代表する巨大市場になった。
次世代ディスプレーと期待される有機EL材料も同様だ。有機薄膜太陽電池の材料合成にも応用が見込まれる。
医薬品の有効成分を化学合成する際にも使われている。反応を格段に進めやすくなり「医薬品業界にとても歓迎された」(鈴木名誉教授)。
東ソー子会社の東ソー・ファインケム(山口県周南市)はクロスカップリング反応を使った医薬品原料などの量産で先行した。鈴木氏と親しい同社の江口久雄・事業企画室企画担当部長は「この反応がなければ現在の液晶テレビはなく、以前からノーベル賞の価値はあると思っていた」と話す。
米メルクの高血圧症治療薬「ロサルタン」はスウェーデンで94年に発売後、世界約100カ国で販売され、売上高が3000億円を超えるヒット薬に育った。ドイツのBASFは農薬原料の合成に同反応を使う。ブラジルの専用プラントは同反応を応用した世界最大の工場といわれる。
現在、年間売上高5000億円超と世界で最も売れている高血圧症薬であるスイス・ノバルティス製の「ディオバン」にもクロスカップリング反応が使われている。臨床試験中の候補薬では米ファイザーの関節リウマチ治療薬や米ブリストル・マイヤーズスクイブの抗ウイルス薬などが同反応を利用。応用範囲は広がり続けている。
:2010:10/07/09:07 ++ ノーベル賞、日本人2氏、化学賞に根岸・鈴木氏、有機合成で革新手法。
【パリ=古谷茂久】スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2010年のノーベル化学賞を根岸英一・米パデュー大学特別教授(75)と鈴木章・北海道大学名誉教授(80)ら3氏に授与すると発表した。高血圧薬や液晶材料など多様な工業物質の製造に必須の合成法を開発したことを評価した。日本のノーベル賞受賞は08年の下村脩・米ボストン大学医学校名誉教授(82)ら4人以来2年ぶり。相次ぐ受賞で日本の基礎科学の底力を示した。
共同受賞するリチャード・F・ヘック米デラウェア大学名誉教授(79)ら3氏への授賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。医薬品や電子材料など様々な工業物質を効率よく合成する革新的な手法である「クロスカップリング反応」を開発した。
社会や人々の暮らしは様々な工業物質に支えられているが、その多くは炭素が複雑に連なった骨格を持つ「有機物」。プラスチックも医薬品の多くも有機物の一種だ。だが、炭素を自在に操って目的の有機物を人工的に作るのは難しく、化学者にとって有機物の合成方法の確立は20世紀に入ってからも長く課題だった。
3氏は別々に1970年代、パラジウムという金属を触媒として混ぜることで2種類の有機物の炭素骨格をつなぎ、目的どおりの骨格の新しい有機物を得ることに成功。「鈴木カップリング」などと名付けられた。
この合成手法を利用すれば自然界にあるような複雑で様々な機能を持つ有機物を作れる。また、扱いが難しい有機溶媒でなく普通の水溶液中で反応が進む長所もあり、この手法は世界に広まった。
同アカデミーが6日、発表後に開いた電話記者会見で根岸氏は「(受賞の)確信を持っていたわけではないが、周囲でそのようなことを言う人もいたので、来るかもしれないとは思っていた」と喜びを語った。また、同日夜、北大で会見した鈴木氏は「非常にうれしい。北大の多くの同僚や学生の真摯(しんし)な努力のたまものだ」と語った。
授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金1000万クローナ(約1億2500万円)は3氏で分ける。これで日本のノーベル化学賞受賞者は7人。全分野では合計18人となった。
▼クロスカップリング反応 医薬品や電子材料など、身近な工業製品の製造に重要な役割を果たす化学反応。通常は結合が難しい炭素原子同士を結びつけ、複雑な構造の有機化合物の合成に道を開き多様な産業で広く使われている。2つの化合物が交差するように合成するため、クロスカップリング反応と呼ばれる。
1972年に京都大学の熊田誠教授(当時)らが金属を含んだ触媒を使うとこの反応が起きることを発見。以来、多くの日本の化学者が研究をけん引してきた。今回授賞対象となった研究は触媒にパラジウムという金属を使っており、実用化が一気に進んだ。
リチャード・F・ヘック氏 52年米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒。54年同大で博士号取得。71年米デラウェア大学教授。89年同大名誉教授。米マサチューセッツ州出身。79歳。
ねぎし・えいいち 58年(昭33年)東京大学工学部卒後、帝人入社。63年米ペンシルベニア大学で博士号取得。66~72年米パデュー大学のH・C・ブラウン教授(79年ノーベル化学賞受賞)の研究室に在籍。72年米シラキュース大学助教。79年パデュー大学教授。97年日本化学会賞受賞。99年パデュー大学特別教授。旧満州出身。75歳。
すずき・あきら 54年(昭29年)北海道大学理学部卒、59年北大大学院理学研究科博士課程修了。61年北大助教授。63~65年に米パデュー大学のH・C・ブラウン教授の研究室に在籍。73年北大工学部教授。94年名誉教授。95年倉敷芸術科学大学教授。01年米パデュー大招聘教授。89年日本化学会賞、04年日本学士院賞。北海道出身。80歳。
共同受賞するリチャード・F・ヘック米デラウェア大学名誉教授(79)ら3氏への授賞理由は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。医薬品や電子材料など様々な工業物質を効率よく合成する革新的な手法である「クロスカップリング反応」を開発した。
社会や人々の暮らしは様々な工業物質に支えられているが、その多くは炭素が複雑に連なった骨格を持つ「有機物」。プラスチックも医薬品の多くも有機物の一種だ。だが、炭素を自在に操って目的の有機物を人工的に作るのは難しく、化学者にとって有機物の合成方法の確立は20世紀に入ってからも長く課題だった。
3氏は別々に1970年代、パラジウムという金属を触媒として混ぜることで2種類の有機物の炭素骨格をつなぎ、目的どおりの骨格の新しい有機物を得ることに成功。「鈴木カップリング」などと名付けられた。
この合成手法を利用すれば自然界にあるような複雑で様々な機能を持つ有機物を作れる。また、扱いが難しい有機溶媒でなく普通の水溶液中で反応が進む長所もあり、この手法は世界に広まった。
同アカデミーが6日、発表後に開いた電話記者会見で根岸氏は「(受賞の)確信を持っていたわけではないが、周囲でそのようなことを言う人もいたので、来るかもしれないとは思っていた」と喜びを語った。また、同日夜、北大で会見した鈴木氏は「非常にうれしい。北大の多くの同僚や学生の真摯(しんし)な努力のたまものだ」と語った。
授賞式は12月10日にストックホルムで開く。賞金1000万クローナ(約1億2500万円)は3氏で分ける。これで日本のノーベル化学賞受賞者は7人。全分野では合計18人となった。
▼クロスカップリング反応 医薬品や電子材料など、身近な工業製品の製造に重要な役割を果たす化学反応。通常は結合が難しい炭素原子同士を結びつけ、複雑な構造の有機化合物の合成に道を開き多様な産業で広く使われている。2つの化合物が交差するように合成するため、クロスカップリング反応と呼ばれる。
1972年に京都大学の熊田誠教授(当時)らが金属を含んだ触媒を使うとこの反応が起きることを発見。以来、多くの日本の化学者が研究をけん引してきた。今回授賞対象となった研究は触媒にパラジウムという金属を使っており、実用化が一気に進んだ。
リチャード・F・ヘック氏 52年米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)卒。54年同大で博士号取得。71年米デラウェア大学教授。89年同大名誉教授。米マサチューセッツ州出身。79歳。
ねぎし・えいいち 58年(昭33年)東京大学工学部卒後、帝人入社。63年米ペンシルベニア大学で博士号取得。66~72年米パデュー大学のH・C・ブラウン教授(79年ノーベル化学賞受賞)の研究室に在籍。72年米シラキュース大学助教。79年パデュー大学教授。97年日本化学会賞受賞。99年パデュー大学特別教授。旧満州出身。75歳。
すずき・あきら 54年(昭29年)北海道大学理学部卒、59年北大大学院理学研究科博士課程修了。61年北大助教授。63~65年に米パデュー大学のH・C・ブラウン教授の研究室に在籍。73年北大工学部教授。94年名誉教授。95年倉敷芸術科学大学教授。01年米パデュー大招聘教授。89年日本化学会賞、04年日本学士院賞。北海道出身。80歳。
:2010:10/06/09:30 ++ 特集―尖閣日中揺れた1ヵ月(3)海上今もにらみ合い、米、両国に収拾働きかけ
日本側は「中国包囲網」づくりにも動き始めていた。丹羽大使は北京にいる欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の駐中国大使約10人と個別に会い、日本の見解を説明した。欧米はチベット問題で中国への不満を共通に抱えている。中国は「中国脅威論」の広がりに警戒感を強めた。
「日中はともに敗者。今回の事件で一番得をしたのは米国だ」。日中関係筋は1カ月に及んだ騒動をこう総括する。
周辺諸国も
中国を警戒
23日のニューヨークでの日米外相会談後、クローリー国務次官補は「速やかに解決されることを期待している。そのメッセージを日本に伝えた」と表明。その後の日米首脳会談などでも「米側が事態を収拾するよう日中双方に働き掛けた」(首相周辺)という。
米国は東アジアの安全保障を巡る米中の緊張関係にまで発展するのは避けたい。一方、この1カ月で、日本だけでなく、中国と領土問題を抱えるASEAN各国や韓国なども中国への警戒感を募らせ、「頼りになるのはやはり米国だ」との思いを強めたという解説だ。
那覇地検が船長の処分保留・釈放を決めたのは首脳会談の直後だった。
「おれは絶対自分から(中国首脳と)会うって言わないからな」。訪欧出発前日の10月2日夜、首相は都内の焼き肉店で側近たちを前にこう語った。一方で、民主党の細野豪志前幹事長代理が9月29日から秘密裏に中国を訪問。出発前に仙谷長官と協議し、帰国後もすぐに結果を報告した。「首相の密使」として中国外務省幹部らと接触し、ブリュッセルでの日中首相会談の地ならしをしたとの情報が流れた。
関係修復へ
細野氏招く
細野氏は中国側の指名とされる。小沢氏と菅首相の両陣営に顔がきく議員は中国にとって願ってもない人物だ。胡主席のアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席を控え、ふりあげた拳の下ろしどころを探っていた中国は、日本とのパイプ役として細野氏に白羽の矢をたてたとみられる。同じ時期に北京を訪れた民主党の山口壮氏には、中国外務省幹部が「もう終わったことでこれからのことを考えていきましょう」と告げ、日中首相会談の実現をほのめかした。
中国は表向きは関係改善の重要性を訴える一方、裏では日本の尖閣諸島の実効支配を薄めるため、既成事実を積み重ねる動きを続けている。
衝突事件後、中国政府は漁業監視船2隻を尖閣諸島近海に派遣。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の記者は漁業監視船に同乗し、海保巡視船との攻防を伝えている。海保が「日本領海に入ろうとしている。直ちに向きを変えろ」と警告する様子などを紹介。24日夜以降に「釣魚島の周囲を1周し、島の南側を半円を描くように何度も往復した」ことや、尖閣最東端の大正島付近の海域を中国の漁業監視船として初めて巡航したことも報じた。
外交上の摩擦より海洋権益の確保を優先する中国。「(日本国民への)ウエークアップ(目覚めの)効果はあったな」。仙谷長官は事件を振り返り、周囲にそうつぶやいた。5日夜、帰国した菅首相はそのまま公邸で仙谷長官や前原誠司外相らと向き合った。日中間で不測の事態が生じるリスクは消えていない。
「日中はともに敗者。今回の事件で一番得をしたのは米国だ」。日中関係筋は1カ月に及んだ騒動をこう総括する。
周辺諸国も
中国を警戒
23日のニューヨークでの日米外相会談後、クローリー国務次官補は「速やかに解決されることを期待している。そのメッセージを日本に伝えた」と表明。その後の日米首脳会談などでも「米側が事態を収拾するよう日中双方に働き掛けた」(首相周辺)という。
米国は東アジアの安全保障を巡る米中の緊張関係にまで発展するのは避けたい。一方、この1カ月で、日本だけでなく、中国と領土問題を抱えるASEAN各国や韓国なども中国への警戒感を募らせ、「頼りになるのはやはり米国だ」との思いを強めたという解説だ。
那覇地検が船長の処分保留・釈放を決めたのは首脳会談の直後だった。
「おれは絶対自分から(中国首脳と)会うって言わないからな」。訪欧出発前日の10月2日夜、首相は都内の焼き肉店で側近たちを前にこう語った。一方で、民主党の細野豪志前幹事長代理が9月29日から秘密裏に中国を訪問。出発前に仙谷長官と協議し、帰国後もすぐに結果を報告した。「首相の密使」として中国外務省幹部らと接触し、ブリュッセルでの日中首相会談の地ならしをしたとの情報が流れた。
関係修復へ
細野氏招く
細野氏は中国側の指名とされる。小沢氏と菅首相の両陣営に顔がきく議員は中国にとって願ってもない人物だ。胡主席のアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席を控え、ふりあげた拳の下ろしどころを探っていた中国は、日本とのパイプ役として細野氏に白羽の矢をたてたとみられる。同じ時期に北京を訪れた民主党の山口壮氏には、中国外務省幹部が「もう終わったことでこれからのことを考えていきましょう」と告げ、日中首相会談の実現をほのめかした。
中国は表向きは関係改善の重要性を訴える一方、裏では日本の尖閣諸島の実効支配を薄めるため、既成事実を積み重ねる動きを続けている。
衝突事件後、中国政府は漁業監視船2隻を尖閣諸島近海に派遣。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報の記者は漁業監視船に同乗し、海保巡視船との攻防を伝えている。海保が「日本領海に入ろうとしている。直ちに向きを変えろ」と警告する様子などを紹介。24日夜以降に「釣魚島の周囲を1周し、島の南側を半円を描くように何度も往復した」ことや、尖閣最東端の大正島付近の海域を中国の漁業監視船として初めて巡航したことも報じた。
外交上の摩擦より海洋権益の確保を優先する中国。「(日本国民への)ウエークアップ(目覚めの)効果はあったな」。仙谷長官は事件を振り返り、周囲にそうつぶやいた。5日夜、帰国した菅首相はそのまま公邸で仙谷長官や前原誠司外相らと向き合った。日中間で不測の事態が生じるリスクは消えていない。
:2010:10/06/09:29 ++ 特集―尖閣日中揺れた1ヵ月(2)高まる緊張、船長は釈放、中国、世論意識し強硬に
中国はすぐに日中間の閣僚級交流の停止を発表。中国から日本への旅行も次々と打ち切られ、貿易の現場からは日本に輸出されるレアアース(希土類)の通関が滞っている状況が報告されてきた。「一体どうなっているんだ」。中国が次々と切る外交カードに首相はいら立ちを強め、官邸で周辺に怒鳴り散らした。
18日。北京の日本大使館前から中国外務省前に移動した抗議デモの参加者は「中国外務省はもっと強硬になれ」などと叫んだ。途中から政府の不当な弾圧に抗議する50代らも加わり、デモの性格が「反日」が「反政府」に変わる予兆が表れた。
この後、胡錦濤政権が開催した対日政策を協議する会議では、胡主席や温首相の対日融和路線への異論が出たとされる。中国は10月中旬に共産党の第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)を控える「政治の季節」の真っ最中。胡主席が対日政策で防戦に追われれば、人事などで譲歩を迫られる。胡政権は一段と強硬路線に出たというのが日中関係筋の解説だ。
「何が何でも」
解決命じる
「日本側に無条件の即時釈放を強く促す」。21日、訪米中の温首相は在米中国人らとの会合でこう表明。中国外務省は多岐にわたる発言内容のうち、尖閣問題に関するこの部分だけをホームページ上で公表した。
「早く釈放できないのか」「何が何でも解決してくれ」。菅首相は22日、国連総会出席に向けたニューヨーク出発に先立ち、仙谷長官に強く求めた。仙谷氏は「首相が外遊に行かれている間に何とかします」と約束したという。
23日、外務省の担当課長が那覇地検を訪ねた。このころ、政府は中国政府から、石家荘市内の軍事管理区域に侵入したという理由で日本人4人を調べているとの通告を受けていた。「拘束したのは公安ではなく軍らしい」。首相官邸に一時、こうした情報が伝わると、「極刑」を懸念する空気すら広まった。
24日午前10時、検察庁で検察首脳会議が開かれた。船長の処分保留・釈放を決めた午後2時半、那覇地検の鈴木亨次席検事は緊急記者会見で用意されたメモを一気に読み上げた。「今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した」
検察判断に
無言の圧力
外務省関係者は「仙谷長官がニュアンスを伝え、検察が忖度(そんたく)した。あうんの呼吸だ」と語る。記者会見の内容を知った仙谷氏は「おれが赤(修正)を入れられないよう小細工しやがって。外交配慮なんてことを言ったら、すぐに国会で証人喚問になるのが分からないのか」とこぼした。
政府は表向き釈放は検察の判断との立場を貫くが、首相の意を受けた仙谷長官は都内のホテルに関係省庁の局長級をひそかに集めていた。「どうやって問題の軟着陸を図るか」。法務省の局長級も出席していた。深夜まで続いた協議は結論が出なかったというが、法務省幹部は「検察に判断を任せる」と首相官邸からサインがあったことを認める。「引き金を引いたのは検察だと言われる。中国がどんな反応をするか予想もつかない。そんな重みを検察は支えきれない」。仙谷長官の「無言の圧力」(政府筋)が検察当局の背中を押したとの見方がもっぱらだ。
18日。北京の日本大使館前から中国外務省前に移動した抗議デモの参加者は「中国外務省はもっと強硬になれ」などと叫んだ。途中から政府の不当な弾圧に抗議する50代らも加わり、デモの性格が「反日」が「反政府」に変わる予兆が表れた。
この後、胡錦濤政権が開催した対日政策を協議する会議では、胡主席や温首相の対日融和路線への異論が出たとされる。中国は10月中旬に共産党の第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)を控える「政治の季節」の真っ最中。胡主席が対日政策で防戦に追われれば、人事などで譲歩を迫られる。胡政権は一段と強硬路線に出たというのが日中関係筋の解説だ。
「何が何でも」
解決命じる
「日本側に無条件の即時釈放を強く促す」。21日、訪米中の温首相は在米中国人らとの会合でこう表明。中国外務省は多岐にわたる発言内容のうち、尖閣問題に関するこの部分だけをホームページ上で公表した。
「早く釈放できないのか」「何が何でも解決してくれ」。菅首相は22日、国連総会出席に向けたニューヨーク出発に先立ち、仙谷長官に強く求めた。仙谷氏は「首相が外遊に行かれている間に何とかします」と約束したという。
23日、外務省の担当課長が那覇地検を訪ねた。このころ、政府は中国政府から、石家荘市内の軍事管理区域に侵入したという理由で日本人4人を調べているとの通告を受けていた。「拘束したのは公安ではなく軍らしい」。首相官邸に一時、こうした情報が伝わると、「極刑」を懸念する空気すら広まった。
24日午前10時、検察庁で検察首脳会議が開かれた。船長の処分保留・釈放を決めた午後2時半、那覇地検の鈴木亨次席検事は緊急記者会見で用意されたメモを一気に読み上げた。「今後の日中関係を考慮すると、これ以上身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断した」
検察判断に
無言の圧力
外務省関係者は「仙谷長官がニュアンスを伝え、検察が忖度(そんたく)した。あうんの呼吸だ」と語る。記者会見の内容を知った仙谷氏は「おれが赤(修正)を入れられないよう小細工しやがって。外交配慮なんてことを言ったら、すぐに国会で証人喚問になるのが分からないのか」とこぼした。
政府は表向き釈放は検察の判断との立場を貫くが、首相の意を受けた仙谷長官は都内のホテルに関係省庁の局長級をひそかに集めていた。「どうやって問題の軟着陸を図るか」。法務省の局長級も出席していた。深夜まで続いた協議は結論が出なかったというが、法務省幹部は「検察に判断を任せる」と首相官邸からサインがあったことを認める。「引き金を引いたのは検察だと言われる。中国がどんな反応をするか予想もつかない。そんな重みを検察は支えきれない」。仙谷長官の「無言の圧力」(政府筋)が検察当局の背中を押したとの見方がもっぱらだ。
:2010:10/06/09:28 ++ 特集―尖閣日中揺れた1ヵ月(1)漁船衝突、船長を逮捕、「領土」巡り深夜の応酬。
9月7日に沖縄県の尖閣諸島沖で発生した海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件は、国家の根幹である「主権」を巡る問題を日本に突き付け、相互依存を強める日中関係を激しく揺さぶった。この1カ月間、日本の立ち振る舞いはどうだったのか。中国、米国は事件にどう対峙(たいじ)したのか。日中の火種はなおくすぶり続ける。
奇妙な光景だった。4日、ブリュッセル。アジア欧州会議(ASEM)首脳会合の夕食会を終え、会場を出た菅直人首相と中国の温家宝首相はどちらともなく廊下のいすに座った。尖閣諸島の領有権を巡る主張は譲らない。関係修復では一致する。日中両政府による窮余の合作シナリオだった。約25分間の話し合いは、「会談」でも、「立ち話」でもない、微妙な間合いをとった。
日中が抱える東シナ海の火種が噴き出したのは、1カ月前だった。
日本領海に
30もの船影
9月7日午前9時。尖閣諸島付近で警戒監視中の巡視船「よなくに」の船内のレーダーにおびただしい光の点が浮かび上がった。日本領海内に約30、領海外に約40――。その正体は間違いなく船影だった。
現場海域の状況をビデオで撮影しながら「よなくに」は「ここは日本の領海だ。退去しなさい」と警告した。だが、中国漁船は警告を無視。巡視船は漁船の正面側に回って電光掲示板に退去を求める中国語を表示した。その瞬間だった。「ドン」。中国漁船が「よなくに」の船尾にぶつかった。1回目の接触だった。
程なく、70メートルほど左前方を航行していた巡視船「みずき」の右舷に、今度は中国漁船の左舷が衝突した。ビデオには、その反動で巡視船が押し込まれる様子も映っている。漁船がさらに逃走するため、巡視船が船首を漁船につける形で強行接舷した。海上保安官6人が乗り込んで立ち入り検査を実施。1カ月に及ぶ日中摩擦の始まりだった。
午後になり、首相官邸の仙谷由人官房長官の執務室に相次ぎ駆け込んだ斎木昭隆外務省アジア大洋州局長と長島昭久防衛政務官(当時)は事故の様子を報告した。
2004年の中国人活動家の尖閣諸島不法上陸事件では、沖縄県警は活動家を逮捕したが、送検せず強制送還した。今回は海保の巡視船に漁船を衝突させた公務執行妨害容疑。強制送還で済ませる選択肢はなかったというのが政府の理屈だ。
折しも政界は民主党代表選の真っ最中。小沢一郎氏との一騎打ちに心を砕いていた菅首相は「日本の法令に従って対処するということでいい」と指示した。7日午後10時半、海上保安庁は那覇地裁に中国人船長の逮捕状を請求した。
10日、石垣簡裁が19日まで10日間の船長の拘置を認めると、中国側はにわかに動き出した。
早期収拾の
目算外れる
12日午前0時(日本時間午前1時)、北京の中国外務省。「緊急にお話ししたいことがある」。中国で外交政策を統括する戴秉国国務委員は丹羽宇一郎駐中国大使を呼び出すと、中国人船長の即時解放を求めて「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土であり……」と演説を始めた。丹羽氏は「それではこちらも言わせていただく。尖閣諸島は古来、日本の固有の領土で……」。互いに国内を意識した原則論の応酬が続いた。
尖閣諸島周辺の海域について、日本政府は00年発効の日中漁業協定を踏まえ、陸地(基線)から12カイリ(約22キロ)の領海内では中国船の漁業行為を禁止してきた。今回、日本は領海内で海保巡視船に衝突した中国船が領海外に逃走したので逮捕したとの立場をとる。だが中国側は「中国漁船が日本の巡視船に不法に囲まれ、衝突され損害を受けた」(姜瑜外務省副報道局長)と主張。「自民党政権下では強制退去で早期収拾を図るシナリオが当たり前だった」(中国外務省関係者)と言ってのける。
19日、船長からの供述を得られないまま10日間の拘置期限が終わり、那覇地検は期限延長を請求し、石垣簡裁はこれを認めた。日中の対立はさらにエスカレートした。
奇妙な光景だった。4日、ブリュッセル。アジア欧州会議(ASEM)首脳会合の夕食会を終え、会場を出た菅直人首相と中国の温家宝首相はどちらともなく廊下のいすに座った。尖閣諸島の領有権を巡る主張は譲らない。関係修復では一致する。日中両政府による窮余の合作シナリオだった。約25分間の話し合いは、「会談」でも、「立ち話」でもない、微妙な間合いをとった。
日中が抱える東シナ海の火種が噴き出したのは、1カ月前だった。
日本領海に
30もの船影
9月7日午前9時。尖閣諸島付近で警戒監視中の巡視船「よなくに」の船内のレーダーにおびただしい光の点が浮かび上がった。日本領海内に約30、領海外に約40――。その正体は間違いなく船影だった。
現場海域の状況をビデオで撮影しながら「よなくに」は「ここは日本の領海だ。退去しなさい」と警告した。だが、中国漁船は警告を無視。巡視船は漁船の正面側に回って電光掲示板に退去を求める中国語を表示した。その瞬間だった。「ドン」。中国漁船が「よなくに」の船尾にぶつかった。1回目の接触だった。
程なく、70メートルほど左前方を航行していた巡視船「みずき」の右舷に、今度は中国漁船の左舷が衝突した。ビデオには、その反動で巡視船が押し込まれる様子も映っている。漁船がさらに逃走するため、巡視船が船首を漁船につける形で強行接舷した。海上保安官6人が乗り込んで立ち入り検査を実施。1カ月に及ぶ日中摩擦の始まりだった。
午後になり、首相官邸の仙谷由人官房長官の執務室に相次ぎ駆け込んだ斎木昭隆外務省アジア大洋州局長と長島昭久防衛政務官(当時)は事故の様子を報告した。
2004年の中国人活動家の尖閣諸島不法上陸事件では、沖縄県警は活動家を逮捕したが、送検せず強制送還した。今回は海保の巡視船に漁船を衝突させた公務執行妨害容疑。強制送還で済ませる選択肢はなかったというのが政府の理屈だ。
折しも政界は民主党代表選の真っ最中。小沢一郎氏との一騎打ちに心を砕いていた菅首相は「日本の法令に従って対処するということでいい」と指示した。7日午後10時半、海上保安庁は那覇地裁に中国人船長の逮捕状を請求した。
10日、石垣簡裁が19日まで10日間の船長の拘置を認めると、中国側はにわかに動き出した。
早期収拾の
目算外れる
12日午前0時(日本時間午前1時)、北京の中国外務省。「緊急にお話ししたいことがある」。中国で外交政策を統括する戴秉国国務委員は丹羽宇一郎駐中国大使を呼び出すと、中国人船長の即時解放を求めて「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国固有の領土であり……」と演説を始めた。丹羽氏は「それではこちらも言わせていただく。尖閣諸島は古来、日本の固有の領土で……」。互いに国内を意識した原則論の応酬が続いた。
尖閣諸島周辺の海域について、日本政府は00年発効の日中漁業協定を踏まえ、陸地(基線)から12カイリ(約22キロ)の領海内では中国船の漁業行為を禁止してきた。今回、日本は領海内で海保巡視船に衝突した中国船が領海外に逃走したので逮捕したとの立場をとる。だが中国側は「中国漁船が日本の巡視船に不法に囲まれ、衝突され損害を受けた」(姜瑜外務省副報道局長)と主張。「自民党政権下では強制退去で早期収拾を図るシナリオが当たり前だった」(中国外務省関係者)と言ってのける。
19日、船長からの供述を得られないまま10日間の拘置期限が終わり、那覇地検は期限延長を請求し、石垣簡裁はこれを認めた。日中の対立はさらにエスカレートした。
:2010:10/06/09:24 ++ 日中首相会談主要議題に、尖閣「国際問題化」、日本には痛手―関係修復へ一歩
4日のブリュッセルでの日中首相会談を機に、両国は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で悪化した関係の修復に踏み出した。ただ尖閣を主要議題に両首相が応酬するのは初めて。中国はかつて〓小平氏が提起した領有権問題の棚上げ方針を転換し、力の外交を進める。現在、実効支配する日本は「領土問題は存在しない」との立場で、実質的な国際問題化は大きな痛手だ。
アジア欧州会議(ASEM)の夕食会後の会場の廊下。長いすでの25分の会談で、尖閣諸島を巡り温家宝首相が「中国固有の領土」と原則論を主張すると、菅直人首相は「わが国固有の領土で、領土問題は存在しない」と言い返した。
対外的に「領土問題はない」と言い続けてきた日本にとって、領土が会談の主要議題になること自体、中国側の土俵に乗った印象は否めない。ブリュッセルでの中韓首脳会談も尖閣を話題にしたように、事実上、国際問題化している。
従来、双方は首脳会談などで尖閣問題を正面から取り上げるのを避けてきた。1978年に来日した当時の〓小平副首相が尖閣の領有権を念頭に「一時棚上げ」に触れ、その知恵が踏襲された。
例外もある。92年には中国が尖閣を中国領とする領海法を制定し、当時の宮沢喜一首相が日本固有の領土とした上で中国の態度をただした。江沢民総書記は「78年に〓氏が述べた通り。一切変わらない」と言明した。
ここにきて経済、軍事両面で自信をつけた中国は「棚上げ」方針を見直し、領土、海洋権益への野心を隠さない。これは〓氏が示した「能力を隠して時間を稼ぐ」という中国外交の基本方針からの転換も意味する。
2日付の香港紙は、中国が最近、尖閣の領有権を台湾などと同列の「核心的利益」に位置付けたと報じた。今回、中国が会談に応じたのも「国際世論に『領土問題がある』と訴え、既成事実を積み上げる狙い」(日中外交筋)との見方もある。
今回の会談で関係修復に一歩踏み出したのは確かだ。中国は閣僚級協議の中止を撤回。月末のベトナムでの東アジア首脳会議などを利用して正式な日中首相会談を開き、胡錦濤国家主席の11月来日の地ならしをする方向だ。中国がなお拘束するフジタ社員1人の解放に加え、レアアースの対日輸出規制の完全解除などが確認されれば、関係修復への道が明確になる。
アジア欧州会議(ASEM)の夕食会後の会場の廊下。長いすでの25分の会談で、尖閣諸島を巡り温家宝首相が「中国固有の領土」と原則論を主張すると、菅直人首相は「わが国固有の領土で、領土問題は存在しない」と言い返した。
対外的に「領土問題はない」と言い続けてきた日本にとって、領土が会談の主要議題になること自体、中国側の土俵に乗った印象は否めない。ブリュッセルでの中韓首脳会談も尖閣を話題にしたように、事実上、国際問題化している。
従来、双方は首脳会談などで尖閣問題を正面から取り上げるのを避けてきた。1978年に来日した当時の〓小平副首相が尖閣の領有権を念頭に「一時棚上げ」に触れ、その知恵が踏襲された。
例外もある。92年には中国が尖閣を中国領とする領海法を制定し、当時の宮沢喜一首相が日本固有の領土とした上で中国の態度をただした。江沢民総書記は「78年に〓氏が述べた通り。一切変わらない」と言明した。
ここにきて経済、軍事両面で自信をつけた中国は「棚上げ」方針を見直し、領土、海洋権益への野心を隠さない。これは〓氏が示した「能力を隠して時間を稼ぐ」という中国外交の基本方針からの転換も意味する。
2日付の香港紙は、中国が最近、尖閣の領有権を台湾などと同列の「核心的利益」に位置付けたと報じた。今回、中国が会談に応じたのも「国際世論に『領土問題がある』と訴え、既成事実を積み上げる狙い」(日中外交筋)との見方もある。
今回の会談で関係修復に一歩踏み出したのは確かだ。中国は閣僚級協議の中止を撤回。月末のベトナムでの東アジア首脳会議などを利用して正式な日中首相会談を開き、胡錦濤国家主席の11月来日の地ならしをする方向だ。中国がなお拘束するフジタ社員1人の解放に加え、レアアースの対日輸出規制の完全解除などが確認されれば、関係修復への道が明確になる。
:2010:10/06/09:19 ++ 小沢氏強制起訴へ、進退問題動けぬ民主、世論・国会風読めず
民主党執行部は検察審査会の2度目の議決により強制起訴が決まった小沢一郎氏の進退を静観している。世論の受け止めなどが読み切れず、離党勧告などの動きは鈍い。小沢氏に離党を求めた牧野聖修国会対策委員長代理が5日、「混乱の責任」を取って辞任するなど、党内に動揺も出始めている。小沢氏は同日も沈黙を続けた。
「身の処し方は本人が考えることだ」。前原誠司外相は記者会見で、小沢氏の進退問題についてこう述べた。「十二分に納得できていないという国民の声、思いを反映したもので、真摯(しんし)に受け止めなくてはいけない」とも指摘したが、歯切れはよくなかった。
●「党の仕切りに任せる」 蓮舫行政刷新相ら小沢氏と距離のある各閣僚からは記者会見で、国会審議への影響を懸念する声が出たが、小沢氏に離党を迫る意見は出ていない。仙谷由人官房長官も記者会見で、今後の対応について「党の仕切りに任せる」と強調した。
5日の党常任幹事会では、岡田克也幹事長から状況説明はあったが、結論は出なかった。枝野幸男幹事長代理は終了後、「現時点で議題に載せる状況ではない」と小沢氏処分の議論は時期尚早だとの認識を示した。
執行部の動きが鈍いのは「推定無罪を重んじるべきだ」(幹部)という原則論も一因だが、実際に処分すれば、代表選で国会議員200人の支持を得た小沢氏に近い勢力の反発を招くのは必至のためだ。対立が進めば国会で、対決姿勢を強める野党に攻め口を与えかねない。
●牧野国対委員長代理が辞任 「厳しい国会を乗り切らないといけない中、個人的な発言でご迷惑をかけた」。牧野氏は5日、鉢呂吉雄国対委員長に辞表を提出し、常任幹事会で受理された。4日に「自ら身を引くべきだ」と小沢氏に辞任を迫った発言の責任を取った格好。ただ、牧野氏は辞任後も「間違ったことは言ったつもりはない」と語り、小沢氏離党論を曲げるつもりはないと強調した。
党内には「離党勧告カードは準備しておくべきだ」との声は根強い。ある幹部は小沢氏が離党し、同氏に近い議員の一部が同調しても「政治とカネで厳しい対応をして小沢氏らが抜ければ、公明党や自民党も組みやすくなる」と読む。
民主党の渡部恒三最高顧問は5日、小沢氏の扱いについて記者団に「これからの世論、国会での野党の態度を見ながら判断していくことだ」と語った。
小沢氏は都内の自宅を出て個人事務所にこもり、記者団に口を開くことは一切なかった。
「身の処し方は本人が考えることだ」。前原誠司外相は記者会見で、小沢氏の進退問題についてこう述べた。「十二分に納得できていないという国民の声、思いを反映したもので、真摯(しんし)に受け止めなくてはいけない」とも指摘したが、歯切れはよくなかった。
●「党の仕切りに任せる」 蓮舫行政刷新相ら小沢氏と距離のある各閣僚からは記者会見で、国会審議への影響を懸念する声が出たが、小沢氏に離党を迫る意見は出ていない。仙谷由人官房長官も記者会見で、今後の対応について「党の仕切りに任せる」と強調した。
5日の党常任幹事会では、岡田克也幹事長から状況説明はあったが、結論は出なかった。枝野幸男幹事長代理は終了後、「現時点で議題に載せる状況ではない」と小沢氏処分の議論は時期尚早だとの認識を示した。
執行部の動きが鈍いのは「推定無罪を重んじるべきだ」(幹部)という原則論も一因だが、実際に処分すれば、代表選で国会議員200人の支持を得た小沢氏に近い勢力の反発を招くのは必至のためだ。対立が進めば国会で、対決姿勢を強める野党に攻め口を与えかねない。
●牧野国対委員長代理が辞任 「厳しい国会を乗り切らないといけない中、個人的な発言でご迷惑をかけた」。牧野氏は5日、鉢呂吉雄国対委員長に辞表を提出し、常任幹事会で受理された。4日に「自ら身を引くべきだ」と小沢氏に辞任を迫った発言の責任を取った格好。ただ、牧野氏は辞任後も「間違ったことは言ったつもりはない」と語り、小沢氏離党論を曲げるつもりはないと強調した。
党内には「離党勧告カードは準備しておくべきだ」との声は根強い。ある幹部は小沢氏が離党し、同氏に近い議員の一部が同調しても「政治とカネで厳しい対応をして小沢氏らが抜ければ、公明党や自民党も組みやすくなる」と読む。
民主党の渡部恒三最高顧問は5日、小沢氏の扱いについて記者団に「これからの世論、国会での野党の態度を見ながら判断していくことだ」と語った。
小沢氏は都内の自宅を出て個人事務所にこもり、記者団に口を開くことは一切なかった。
:2010:10/06/09:15 ++ ゼロ金利三たび(上)「量的緩和競争」への決意。
日銀が三たびゼロ金利政策に舞い戻り、金融の量的緩和に乗り出すことを決めた。円高とデフレの進行、景気の腰折れ懸念など複合リスクが募るなか、非常時の政策に踏み込む。円高是正や景気の下支えに今求められているのは、政府と日銀が足並みをそろえた強いメッセージだ。
「天変地異でもない限り戻ることはあり得ない」。2006年、量的緩和政策の解除に際して当時の福井俊彦日銀総裁は、自信満々だった。08年のリーマン・ショック後も、翌日物金利は0・1%までとし、ゼロ金利を避けようとした。
世界経済が激変
今回のゼロ金利への回帰は、そんなこだわりをかなぐり捨てざるを得なくなった日銀の姿を象徴する。固定金利による資金供給と幅広い資産買い取りのための基金の創設は、量的緩和の復活と同時に今後の「量拡大」への布石でもある。
国内では、政府が追加経済対策を決める方向になり、日銀も歩調を合わせる必要があったのはいうまでもない。加えて日本を取り巻くグローバル経済の激変が、待ったなしで白川方明総裁らの決断を促した。
米投資運用会社ピムコのマネジングディレクター、マカリー氏はそれを「量的緩和競争」と呼ぶ。夏以降でみれば先頭を走るのはバーナンキ議長の率いる米連邦準備理事会(FRB)である。
事実上のゼロ金利政策をとっているFRBは、11月2~3日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で本格的な量的緩和に踏み切るとの見方が浸透している。日銀が手をこまぬけば、日米金融政策のズレを突く形で円高・ドル安が進む。
8月10日に日銀は金融政策を据え置いたが、同日のFOMCが金融緩和の追加策を決定。円高が加速したのに慌てて2日後の12日に総裁談話を発表する羽目になった。
景気指標を点検し切ったうえでの政策運営が基本で、量的緩和や市場介入などの効果には懐疑的。そんな白川総裁の政策運営に「フォワードルッキング(先取り)ではなくバックワードルッキング(後追い)」との批判が政府内に募り、国会では日銀法の再改正の議論もくすぶっていた。
今回「包括的な緩和政策」と銘打ったのは、土俵際に立たされた日銀の精いっぱいの決意表明とも読める。とりわけ指数連動型上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)購入を打ち出したことが目を引く。
中小企業の借り入れの大半は不動産担保で、銀行が多額の株式を保有する日本では、地価や株価の下落が貸し渋りや信用収縮を起こしやすい。特定分野への資金流入を後押しし、価格形成をゆがめるリスクもあることを承知の上で、日銀はデフレ下のマネー収縮を食い止めようとしたのだ。
成長戦略急げ
一方で、長めの金利の低下を促す金融緩和が、即座に新規の資金需要を喚起するとは期待しにくい。肝心の円高是正という目標も、市場がFRBの量的緩和を織り込みドル安見通しが強いなかでは、効果は限定的。早くも追加的な行動を催促するかのように、5日の米国市場で円は一時1ドル=82円台に上昇した。
経済の失速を防ぎ、安定的な成長軌道に戻すには、金融緩和だけでなく政府の役割も大きい。効果的な補正予算を速やかに編成するのに加え、成長を高める法人税減税や規制改革を急ぐべきだ。
資金が国内で有効に使われず、金などの商品や新興国通貨に流れ込むようだと、グローバルなバブルを膨らませる。政府と日銀は知恵を出し合ってマネーの有効な活用策を工夫する必要がある。
「天変地異でもない限り戻ることはあり得ない」。2006年、量的緩和政策の解除に際して当時の福井俊彦日銀総裁は、自信満々だった。08年のリーマン・ショック後も、翌日物金利は0・1%までとし、ゼロ金利を避けようとした。
世界経済が激変
今回のゼロ金利への回帰は、そんなこだわりをかなぐり捨てざるを得なくなった日銀の姿を象徴する。固定金利による資金供給と幅広い資産買い取りのための基金の創設は、量的緩和の復活と同時に今後の「量拡大」への布石でもある。
国内では、政府が追加経済対策を決める方向になり、日銀も歩調を合わせる必要があったのはいうまでもない。加えて日本を取り巻くグローバル経済の激変が、待ったなしで白川方明総裁らの決断を促した。
米投資運用会社ピムコのマネジングディレクター、マカリー氏はそれを「量的緩和競争」と呼ぶ。夏以降でみれば先頭を走るのはバーナンキ議長の率いる米連邦準備理事会(FRB)である。
事実上のゼロ金利政策をとっているFRBは、11月2~3日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で本格的な量的緩和に踏み切るとの見方が浸透している。日銀が手をこまぬけば、日米金融政策のズレを突く形で円高・ドル安が進む。
8月10日に日銀は金融政策を据え置いたが、同日のFOMCが金融緩和の追加策を決定。円高が加速したのに慌てて2日後の12日に総裁談話を発表する羽目になった。
景気指標を点検し切ったうえでの政策運営が基本で、量的緩和や市場介入などの効果には懐疑的。そんな白川総裁の政策運営に「フォワードルッキング(先取り)ではなくバックワードルッキング(後追い)」との批判が政府内に募り、国会では日銀法の再改正の議論もくすぶっていた。
今回「包括的な緩和政策」と銘打ったのは、土俵際に立たされた日銀の精いっぱいの決意表明とも読める。とりわけ指数連動型上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)購入を打ち出したことが目を引く。
中小企業の借り入れの大半は不動産担保で、銀行が多額の株式を保有する日本では、地価や株価の下落が貸し渋りや信用収縮を起こしやすい。特定分野への資金流入を後押しし、価格形成をゆがめるリスクもあることを承知の上で、日銀はデフレ下のマネー収縮を食い止めようとしたのだ。
成長戦略急げ
一方で、長めの金利の低下を促す金融緩和が、即座に新規の資金需要を喚起するとは期待しにくい。肝心の円高是正という目標も、市場がFRBの量的緩和を織り込みドル安見通しが強いなかでは、効果は限定的。早くも追加的な行動を催促するかのように、5日の米国市場で円は一時1ドル=82円台に上昇した。
経済の失速を防ぎ、安定的な成長軌道に戻すには、金融緩和だけでなく政府の役割も大きい。効果的な補正予算を速やかに編成するのに加え、成長を高める法人税減税や規制改革を急ぐべきだ。
資金が国内で有効に使われず、金などの商品や新興国通貨に流れ込むようだと、グローバルなバブルを膨らませる。政府と日銀は知恵を出し合ってマネーの有効な活用策を工夫する必要がある。
:2010:10/06/09:09 ++ 日銀、4年ぶりゼロ金利、デフレ脱却へ量的緩和、資産購入5兆円。
日銀は5日開いた金融政策決定会合で、政策金利を現在の年0・1%から「0~0・1%」に引き下げ、ゼロ金利を容認する追加金融緩和を決めた。ゼロ金利は2006年7月以来で、1%程度の物価上昇が見通せるまでゼロ金利を継続する。国債や社債など5兆円規模の資産の買い取りも決定。今後は金利だけでなく、資産の買い取り量などを政策の目安にし、デフレ脱却に向け市場に潤沢に資金を供給する量的緩和に踏み出す。(量的緩和は3面「きょうのことば」参照)=関連記事3、5、13面に
白川方明総裁は5日午後の記者会見で、「短期金利の低下余地が限界的な状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するため、長めの市場金利の低下などを促していく」と説明した。
ゼロ金利によって、円高阻止と景気下支えに取り組む姿勢を示した。金利の一段の低下を容認することで、より潤沢な資金を市場に供給できるようになり、量的緩和が進めやすくなる。
ゼロ金利は、政策委員が物価が安定していると考える水準(消費者物価上昇率が2%以下のプラスで、中心が1%程度)が見通せるまで続ける。8月は生鮮食品を除くベースで1・0%低下しており、当面ゼロ金利を続ける見通し。いわゆる時間軸政策でインフレ目標に近いが、日銀は資産価格の高騰などのリスクが高まった場合には柔軟に政策対応するとしている。
また会合では資産買い取りのための新たな基金の創設について、日銀内で具体策の検討に入ることを決めた。低利で長めの資金を貸し出す既存の固定金利オペ(総枠30兆円)も基金に統合し、基金の規模は35兆円程度とする。この基金の規模が金融緩和の度合いの目安となり、日銀は必要があれば規模拡大を検討する。
資産は今後1年かけて買い取り、期間が1~2年程度の金利を幅広く押し下げることを狙う。買い取り額は長期国債と国庫短期証券が3兆5千億円、資産担保コマーシャルペーパー(CP)と社債などが1兆円。また初めて上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)も購入する。
株や不動産を間接的に買い取ることで、資産市場に民間のお金が流れやすくする効果を狙うが、日銀の財務が悪化するリスクもはらむ。白川総裁は「中央銀行として異例の措置」と強調し、今回の決定について日銀の政策総動員による「包括緩和」と位置付けた。
日銀が追加緩和を決めたのは、海外経済の減速や長引く円高で景気の回復ペースが鈍り、日銀の想定よりも成長率や物価が下振れするリスクが高まったためだ。
白川方明総裁は5日午後の記者会見で、「短期金利の低下余地が限界的な状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するため、長めの市場金利の低下などを促していく」と説明した。
ゼロ金利によって、円高阻止と景気下支えに取り組む姿勢を示した。金利の一段の低下を容認することで、より潤沢な資金を市場に供給できるようになり、量的緩和が進めやすくなる。
ゼロ金利は、政策委員が物価が安定していると考える水準(消費者物価上昇率が2%以下のプラスで、中心が1%程度)が見通せるまで続ける。8月は生鮮食品を除くベースで1・0%低下しており、当面ゼロ金利を続ける見通し。いわゆる時間軸政策でインフレ目標に近いが、日銀は資産価格の高騰などのリスクが高まった場合には柔軟に政策対応するとしている。
また会合では資産買い取りのための新たな基金の創設について、日銀内で具体策の検討に入ることを決めた。低利で長めの資金を貸し出す既存の固定金利オペ(総枠30兆円)も基金に統合し、基金の規模は35兆円程度とする。この基金の規模が金融緩和の度合いの目安となり、日銀は必要があれば規模拡大を検討する。
資産は今後1年かけて買い取り、期間が1~2年程度の金利を幅広く押し下げることを狙う。買い取り額は長期国債と国庫短期証券が3兆5千億円、資産担保コマーシャルペーパー(CP)と社債などが1兆円。また初めて上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)も購入する。
株や不動産を間接的に買い取ることで、資産市場に民間のお金が流れやすくする効果を狙うが、日銀の財務が悪化するリスクもはらむ。白川総裁は「中央銀行として異例の措置」と強調し、今回の決定について日銀の政策総動員による「包括緩和」と位置付けた。
日銀が追加緩和を決めたのは、海外経済の減速や長引く円高で景気の回復ペースが鈍り、日銀の想定よりも成長率や物価が下振れするリスクが高まったためだ。
:2010:10/05/10:00 ++ 小沢氏強制起訴へ―民主党はどう説明する。
「首相の座」を争った有力政治家が、直後に刑事被告人として起訴される。秘書らが政治資金が絡む事件で次々に逮捕、起訴されても国会で本人の説明は一度もない。それが我々が目にしている政治の現実である。
発言トーン一変
「何らやましいことはない」。民主党の小沢一郎氏は昨年3月に西松建設の巨額献金事件で公設秘書が逮捕されて以降、同じ言葉をくり返してきた。
ただ後段の言い回しは大きく異なる。事件が明るみに出た当初は「政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の行使だ」とまで言い切った。それが今年2月に不起訴になると「検察の捜査で不正が無かったことが明らかになった」とトーンを一変させた。
この間、民主党は小沢氏の主張を一方的に擁護する姿勢に終始した。野党が求めた本人や関係者の参考人招致、証人喚問なども拒否し続けた。
民主党は東京第5検察審査会が小沢氏の「起訴相当」を2度にわたって議決した重みを自覚すべきだろう。判断の背景に「小沢氏は一連の疑惑について公の場できちんと説明すべきだ」という市民感覚が働いたのは間違いないからだ。
与野党の関心は小沢氏の影響力の行方に集中している。法廷闘争は数年に及ぶとみられ、控訴になればさらに長期化が避けられない。自民党幹部は「68歳の小沢氏にとっては致命的だ。彼の時代がようやく終わりを告げる」と語る。
民主党は逆風の強まりが避けられず、小沢氏の離党の是非などを巡って党内の亀裂が深まる恐れをはらんでいる。一方で「菅政権への権力一元化が進み、野党との連携を図る上ではプラス」との見方も一部にはある。
仙谷由人官房長官は4日の記者会見で今後の対応を問われ、推定無罪の原則に改めて言及した。しかし刑事手続きと「政治的、道義的な責任」を同列に考えるような姿勢を続けていては、有権者の不信感を増すばかりである。
戦後の政治史は残念ながら「政治とカネ」をめぐる不祥事の歴史と重なる。多くの反省を込めて与野党は「疑惑をもたれた場合には自ら真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにする」との政治倫理綱領を定めた。
民主党は「クリーンで透明性の高い政治」を掲げてきたが、この1年半はかつての主張に背を向けるような対応ばかりが目立った。
なお評価の声
「検察が2度も不起訴にしたのに、これでは魔女狩りじゃないか」。小沢氏の支持グループからは強制起訴への不満の声が漏れる。検察審査会の判断と、有罪率99%の検察官の起訴は意味が異なるとの主張は一理ある。
民主党内では「昨年の政権交代は小沢氏の手腕のおかげだ」と評価する声が根強い。9月の党代表選では強制起訴になる可能性があることを承知で、所属議員の半分近くの200人が小沢氏に票を投じた。
だが、もし「小沢首相」が誕生した後に起訴が決まっていれば、国政が混乱し、日本の国際的な信用をさらに低下させる恐れすらあった。
政治は結果責任を伴う。民主党議員は政権を担う重みを自覚し、疑惑にほおかむりをするような対応が政治不信をいかに高めたかを直視すべきである。
発言トーン一変
「何らやましいことはない」。民主党の小沢一郎氏は昨年3月に西松建設の巨額献金事件で公設秘書が逮捕されて以降、同じ言葉をくり返してきた。
ただ後段の言い回しは大きく異なる。事件が明るみに出た当初は「政治的にも法律的にも不公正な国家権力、検察権力の行使だ」とまで言い切った。それが今年2月に不起訴になると「検察の捜査で不正が無かったことが明らかになった」とトーンを一変させた。
この間、民主党は小沢氏の主張を一方的に擁護する姿勢に終始した。野党が求めた本人や関係者の参考人招致、証人喚問なども拒否し続けた。
民主党は東京第5検察審査会が小沢氏の「起訴相当」を2度にわたって議決した重みを自覚すべきだろう。判断の背景に「小沢氏は一連の疑惑について公の場できちんと説明すべきだ」という市民感覚が働いたのは間違いないからだ。
与野党の関心は小沢氏の影響力の行方に集中している。法廷闘争は数年に及ぶとみられ、控訴になればさらに長期化が避けられない。自民党幹部は「68歳の小沢氏にとっては致命的だ。彼の時代がようやく終わりを告げる」と語る。
民主党は逆風の強まりが避けられず、小沢氏の離党の是非などを巡って党内の亀裂が深まる恐れをはらんでいる。一方で「菅政権への権力一元化が進み、野党との連携を図る上ではプラス」との見方も一部にはある。
仙谷由人官房長官は4日の記者会見で今後の対応を問われ、推定無罪の原則に改めて言及した。しかし刑事手続きと「政治的、道義的な責任」を同列に考えるような姿勢を続けていては、有権者の不信感を増すばかりである。
戦後の政治史は残念ながら「政治とカネ」をめぐる不祥事の歴史と重なる。多くの反省を込めて与野党は「疑惑をもたれた場合には自ら真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明し、その責任を明らかにする」との政治倫理綱領を定めた。
民主党は「クリーンで透明性の高い政治」を掲げてきたが、この1年半はかつての主張に背を向けるような対応ばかりが目立った。
なお評価の声
「検察が2度も不起訴にしたのに、これでは魔女狩りじゃないか」。小沢氏の支持グループからは強制起訴への不満の声が漏れる。検察審査会の判断と、有罪率99%の検察官の起訴は意味が異なるとの主張は一理ある。
民主党内では「昨年の政権交代は小沢氏の手腕のおかげだ」と評価する声が根強い。9月の党代表選では強制起訴になる可能性があることを承知で、所属議員の半分近くの200人が小沢氏に票を投じた。
だが、もし「小沢首相」が誕生した後に起訴が決まっていれば、国政が混乱し、日本の国際的な信用をさらに低下させる恐れすらあった。
政治は結果責任を伴う。民主党議員は政権を担う重みを自覚し、疑惑にほおかむりをするような対応が政治不信をいかに高めたかを直視すべきである。
:2010:10/04/09:18 ++ 「強硬中国」が問う成長戦略―頼りすぎは外交をも縛る(核心)
尖閣の一件は日中関係の新しい現実をいささか、どぎつくあぶり出した。
自国の主張を通すため、中国は希土類(レアアース)の輸出制限などで日本に圧力をかけた。強硬姿勢の背景にあるのは、経済力や軍事力の拡大に伴う自信、13億人市場への日本側の期待の高まり、そして日本の国力の相対的な衰えなど様々な変化だ。
おそらく日中関係の歴史的な転換期なのだろう。外交戦略の見直しは欠かせない。中国の成長にあやかろうという政府の成長戦略や企業の経営方針も、脇の甘さを改めざるをえまい。
「新成長戦略を6月にまとめたとき、中国が強硬な経済措置をとるリスクは想定外だった」と担当の官僚が明かす。全54ページの成長戦略に、資源調達先の分散などの項目はない。
そこに書かれているのは中国や東南アジアを強く意識した社会資本の輸出や環境技術の提供、観光客の誘致など。方向はよいとしても「異質な市場経済」中国への警戒は薄い印象だ。
無理もない。中国の変容は急だ。32年前に来日した〓小平氏は中国が主張する尖閣諸島の領有権に関し「次の世代は我々より賢いだろう」と踏み込まなかった。日本からの資金や技術を優先したに違いない。
その後、中国は高成長に入る。この20年でドル表示の国内総生産(GDP)は11倍に増え、今年は日本を超える。ストックホルム国際平和研究所の推計では国防費は日本の倍以上だ。
日本からの新規円借款は2007年度で終わった。欧米など多くの国が投資を申し出ている。
もう日本に遠慮しなくてよい――。それが偽らざる気持ちではないか。
その一方で共産党内部の確執や発展に乗り遅れた人々の不満など国内に難問を抱える。勢い外交面では強く出ることになる。
そのあおりを強く受けるのは、中国との間に多くの外交案件を抱える日本だ。
尖閣諸島は火薬庫だ。船長の処分保留での釈放で、さらなる領海侵犯を招くかもしれない。中国の歴史学者たちは「沖縄にも中国の権利がある」と言い出している。尖閣で譲れば際限がなくなる恐れもある。
また中国政府は日本への賠償請求を放棄したものの、中国人個人の賠償請求権はあると言い始めている。これも厄介だ。
ほかに旧日本軍の遺棄化学兵器の処理が遅いという不満、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りへの反対などもある。
政府が強い国だけに“制裁”の手段も豊富だ。今回、旅行業者に日本への観光旅行販売の自粛を指示した。フジタ社員の拘束やレアアースの制限も圧力の一環だろう。オーストラリアがウイグル族の独立運動指導者カーディル氏の訪問を受け入れたときも観光客の渡航自粛を指示した。
日本企業が悩む現地労働者のストライキでは、行政が労使の仲介を務めることもある。だが労働組合の全国組織、中華全国総工会は共産党の指導下にある。何かの際に政府の意向でスト入りという懸念も残る。
弱みだった経済が強みに変わり、政府がそれを外交にも使う。そんな中国に国際社会のルールを守ってもらうにはどうするか?
外交面では日米同盟の強化や、東南アジア諸国との連携が欠かせない努力だ。
経済の面ではまず、中国にあれこれ依存しすぎないことである。
レアアースは9割を中国からの輸入に頼る。政府は問題の重大さに気づき調達先の多様化や代替素材の開発を急ぎ始めた。
レアアースほどでないが製品の販売先としての対中依存度も増している。
例えば日産自動車の全世界の販売台数の22%が中国だ。各業界とも、ほかの新興国にもっと売りたいのが本音だろう。
成長著しいインドや東南アジア、ブラジルで販売を増やすためのカギは、自由貿易協定(FTA)を軸とする経済連携協定(EPA)で、それは政府の仕事だ。
9月にインドと経済連携で大筋合意した。だが完成車の取引が自由化の対象にならないなど不満が残る。
看護師など人材の受け入れや農産物市場の開放に日本が前向きでないことが、中身の薄い連携協定につながる場合が多い。
これらは政治家が解決すべき国内問題だ。中身の濃い協定ができれば、生産拠点の分散にも役立つ。
我々が中国にとって「必要な存在」になる努力も要る。レアアースは液晶パネルや小型モーターなどに使う。中国企業はこれらの部品を日本から買い、薄型テレビや携帯電話を作る。
今回、輸出制限を早めに撤回した理由の一つには、日本の部品を買う中国企業への配慮もあったといわれる。環境関連を含めて技術を磨き戦略的に使いたい。
さらに研究開発や規制改革など中国に頼らない成長促進策に一段と力を入れる。かの国が理不尽な振る舞いに出たら欧米諸国とともに「友邦の圧力」をかける……。成長の戦略というからには、相手の出方も考えた様々な作戦が要る。
そして成長を通じて財政を改善し、防衛費や対外援助、海上警備予算などを確保するのも大事だ。古今東西、国力を超える外交ができたためしはない。
日本の主権、尊厳を守りながら、中国とともに栄えるため、政治家や経営者が負う荷はじつに重い。
自国の主張を通すため、中国は希土類(レアアース)の輸出制限などで日本に圧力をかけた。強硬姿勢の背景にあるのは、経済力や軍事力の拡大に伴う自信、13億人市場への日本側の期待の高まり、そして日本の国力の相対的な衰えなど様々な変化だ。
おそらく日中関係の歴史的な転換期なのだろう。外交戦略の見直しは欠かせない。中国の成長にあやかろうという政府の成長戦略や企業の経営方針も、脇の甘さを改めざるをえまい。
「新成長戦略を6月にまとめたとき、中国が強硬な経済措置をとるリスクは想定外だった」と担当の官僚が明かす。全54ページの成長戦略に、資源調達先の分散などの項目はない。
そこに書かれているのは中国や東南アジアを強く意識した社会資本の輸出や環境技術の提供、観光客の誘致など。方向はよいとしても「異質な市場経済」中国への警戒は薄い印象だ。
無理もない。中国の変容は急だ。32年前に来日した〓小平氏は中国が主張する尖閣諸島の領有権に関し「次の世代は我々より賢いだろう」と踏み込まなかった。日本からの資金や技術を優先したに違いない。
その後、中国は高成長に入る。この20年でドル表示の国内総生産(GDP)は11倍に増え、今年は日本を超える。ストックホルム国際平和研究所の推計では国防費は日本の倍以上だ。
日本からの新規円借款は2007年度で終わった。欧米など多くの国が投資を申し出ている。
もう日本に遠慮しなくてよい――。それが偽らざる気持ちではないか。
その一方で共産党内部の確執や発展に乗り遅れた人々の不満など国内に難問を抱える。勢い外交面では強く出ることになる。
そのあおりを強く受けるのは、中国との間に多くの外交案件を抱える日本だ。
尖閣諸島は火薬庫だ。船長の処分保留での釈放で、さらなる領海侵犯を招くかもしれない。中国の歴史学者たちは「沖縄にも中国の権利がある」と言い出している。尖閣で譲れば際限がなくなる恐れもある。
また中国政府は日本への賠償請求を放棄したものの、中国人個人の賠償請求権はあると言い始めている。これも厄介だ。
ほかに旧日本軍の遺棄化学兵器の処理が遅いという不満、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りへの反対などもある。
政府が強い国だけに“制裁”の手段も豊富だ。今回、旅行業者に日本への観光旅行販売の自粛を指示した。フジタ社員の拘束やレアアースの制限も圧力の一環だろう。オーストラリアがウイグル族の独立運動指導者カーディル氏の訪問を受け入れたときも観光客の渡航自粛を指示した。
日本企業が悩む現地労働者のストライキでは、行政が労使の仲介を務めることもある。だが労働組合の全国組織、中華全国総工会は共産党の指導下にある。何かの際に政府の意向でスト入りという懸念も残る。
弱みだった経済が強みに変わり、政府がそれを外交にも使う。そんな中国に国際社会のルールを守ってもらうにはどうするか?
外交面では日米同盟の強化や、東南アジア諸国との連携が欠かせない努力だ。
経済の面ではまず、中国にあれこれ依存しすぎないことである。
レアアースは9割を中国からの輸入に頼る。政府は問題の重大さに気づき調達先の多様化や代替素材の開発を急ぎ始めた。
レアアースほどでないが製品の販売先としての対中依存度も増している。
例えば日産自動車の全世界の販売台数の22%が中国だ。各業界とも、ほかの新興国にもっと売りたいのが本音だろう。
成長著しいインドや東南アジア、ブラジルで販売を増やすためのカギは、自由貿易協定(FTA)を軸とする経済連携協定(EPA)で、それは政府の仕事だ。
9月にインドと経済連携で大筋合意した。だが完成車の取引が自由化の対象にならないなど不満が残る。
看護師など人材の受け入れや農産物市場の開放に日本が前向きでないことが、中身の薄い連携協定につながる場合が多い。
これらは政治家が解決すべき国内問題だ。中身の濃い協定ができれば、生産拠点の分散にも役立つ。
我々が中国にとって「必要な存在」になる努力も要る。レアアースは液晶パネルや小型モーターなどに使う。中国企業はこれらの部品を日本から買い、薄型テレビや携帯電話を作る。
今回、輸出制限を早めに撤回した理由の一つには、日本の部品を買う中国企業への配慮もあったといわれる。環境関連を含めて技術を磨き戦略的に使いたい。
さらに研究開発や規制改革など中国に頼らない成長促進策に一段と力を入れる。かの国が理不尽な振る舞いに出たら欧米諸国とともに「友邦の圧力」をかける……。成長の戦略というからには、相手の出方も考えた様々な作戦が要る。
そして成長を通じて財政を改善し、防衛費や対外援助、海上警備予算などを確保するのも大事だ。古今東西、国力を超える外交ができたためしはない。
日本の主権、尊厳を守りながら、中国とともに栄えるため、政治家や経営者が負う荷はじつに重い。
:2010:10/04/09:14 ++ 「有期労働」規制は雇用不安を広げる(社説)
パートや派遣、契約社員など期間を定めて契約を結ぶ「有期労働者」をめぐり、雇用の新しいルール作りが今秋から労働政策審議会で始まる。低賃金の人を減らし、正社員への転換を雇う側に促すためとして、パートなどを一時的な仕事に限るといった規制の強化が議論される。
だが規制を強めることで、契約期間に定めのある人たちの処遇が改善するかは疑問だ。円高で企業は海外移転を急ぎ、コスト削減に必死になっている。人件費の増加を嫌い、正社員への登用は進まないのではないか。期限付きの契約を認める仕事を限定すれば、働けなくなる人が増えるだけという懸念がある。
総務省の労働力調査によると、有期労働者は契約期間が1年以内の人だけでも2009年に751万人と雇用者数の14%弱を占める。完全失業率は8月も5%と高い。規制強化が招く雇用不安は深刻になろう。
学識者からなる厚生労働省の有期労働契約研究会は先ごろ、審議会の議論のたたき台となる報告をまとめた。期限付きで契約を結べる仕事を一時的、季節的な業務に限ったり、契約の更新回数に上限を設けたりすることなどの検討を求めている。
上限を超えて契約が更新された場合、正社員のように「期間の定めのない雇用契約」に移ったとみなすなどの仕組みも挙げている。
こうした規制ができた場合に懸念されることはいくつもある。企業は雇用契約を、更新の上限に達する直前で打ち切ろうとするのではないか。そうすると、これまで繰り返し契約を交わしてきたパート社員などは働き続けることができなくなる。
契約を結べる仕事が限られ、非正規の労働力が使いにくくなれば、企業の海外移転がいっそう進み、国内の雇用がさらに減りかねない。
昨年7月の有期労働者に対する厚労省の調査では、労働時間や日数が希望に合うなどの理由で仕事に満足していると答えた人が5割強いた。自らの意思で期限の定めのある仕事に就いている人は多い。規制はそうした人たちを困らせる結果になる。
正社員と同じような仕事なのに賃金が低い人は少なくない。期限付きで働く人の処遇の向上が大切なのはもちろんだ。それには原資となる企業の利益を増やす必要がある。労働力の使い勝手を悪くする規制の強化は処遇の向上を難しくしかねない。
臨時国会では製造業への派遣などを原則禁止とする労働者派遣法改正案が審議される。これも企業の活動を制約する。労働者保護をうたって雇用不安を広げては本末転倒だ。
だが規制を強めることで、契約期間に定めのある人たちの処遇が改善するかは疑問だ。円高で企業は海外移転を急ぎ、コスト削減に必死になっている。人件費の増加を嫌い、正社員への登用は進まないのではないか。期限付きの契約を認める仕事を限定すれば、働けなくなる人が増えるだけという懸念がある。
総務省の労働力調査によると、有期労働者は契約期間が1年以内の人だけでも2009年に751万人と雇用者数の14%弱を占める。完全失業率は8月も5%と高い。規制強化が招く雇用不安は深刻になろう。
学識者からなる厚生労働省の有期労働契約研究会は先ごろ、審議会の議論のたたき台となる報告をまとめた。期限付きで契約を結べる仕事を一時的、季節的な業務に限ったり、契約の更新回数に上限を設けたりすることなどの検討を求めている。
上限を超えて契約が更新された場合、正社員のように「期間の定めのない雇用契約」に移ったとみなすなどの仕組みも挙げている。
こうした規制ができた場合に懸念されることはいくつもある。企業は雇用契約を、更新の上限に達する直前で打ち切ろうとするのではないか。そうすると、これまで繰り返し契約を交わしてきたパート社員などは働き続けることができなくなる。
契約を結べる仕事が限られ、非正規の労働力が使いにくくなれば、企業の海外移転がいっそう進み、国内の雇用がさらに減りかねない。
昨年7月の有期労働者に対する厚労省の調査では、労働時間や日数が希望に合うなどの理由で仕事に満足していると答えた人が5割強いた。自らの意思で期限の定めのある仕事に就いている人は多い。規制はそうした人たちを困らせる結果になる。
正社員と同じような仕事なのに賃金が低い人は少なくない。期限付きで働く人の処遇の向上が大切なのはもちろんだ。それには原資となる企業の利益を増やす必要がある。労働力の使い勝手を悪くする規制の強化は処遇の向上を難しくしかねない。
臨時国会では製造業への派遣などを原則禁止とする労働者派遣法改正案が審議される。これも企業の活動を制約する。労働者保護をうたって雇用不安を広げては本末転倒だ。
:2010:10/04/09:10 ++ 尖閣、ASEMで綱引き、日本、2国間会談を重視、中国、水面下で働きかけ
菅直人首相は3日、ブリュッセルで開くアジア欧州会議(ASEM)首脳会合に出席するため、政府専用機で羽田空港を出発した。尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件を巡り、日中がアジア、欧州各国の首脳らの支持を取り付けるためそれぞれ外交戦を展開する。日本は2国間会談などを通じて「わが国固有の領土」との立場を説明。中国側も水面下で参加各国への働きかけを強める構えだ。(関連記事7面に)
●首相会談「予定せず」 菅首相は出発に先立ち、公邸前で記者団に「きちんとわが国の立場を説明することが必要だ」と強調した。会議に出席する中国の温家宝首相との会談の可能性については「予定はない」と語った。外務省幹部によれば「会議場内などで立ち話ならする可能性もある」というが、首相周辺は「積極的な会談の働きかけはしていない」と明かす。
菅首相がASEMの場でとりわけ重視するのが2国間による個別会談だ。4日午前(日本時間同日夕)からの韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領、ベトナムのズン首相を手始めに、フランスのサルコジ大統領、EUのファンロンパイ大統領らを日程に組み込んだ。
菅首相はこれまで尖閣諸島について「歴史的にも国際法的にもわが国固有の領土で、領土問題は存在しない」と主張。先の所信表明演説でも「中国の透明性を欠いた国防力の強化や、インド洋から東シナ海に至る海洋活動の活発化には懸念を有している」と中国側をけん制した。急きょ、ASEMへの出席を決めたのは、アジア・欧州各国首脳に認識を共有してもらうためにほかならない。
●中国は「包囲網」警戒 一方、中国政府は「時間が限られ、2国間会談の機会は少ない」(傅瑩外務次官)として、現地での2国間会談の予定は明らかにしていない。だが、日本が尖閣問題を巡り「中国包囲網」を敷く動きを警戒しているといい、水面下の折衝で激しい外交戦を展開、各国に中国の立場に理解を求めているとみられる。
中国側にとって、菅首相がASEMで尖閣問題を取り上げることは「尖閣諸島に領有権問題が存在することを国際社会に周知させるという意味では中国にとって有利」(政府系シンクタンク研究員)との見方もある。日本政府内には「温首相が演説で東シナ海の情勢について触れる可能性もある」(外務省幹部)とみる向きも多い。
●首相会談「予定せず」 菅首相は出発に先立ち、公邸前で記者団に「きちんとわが国の立場を説明することが必要だ」と強調した。会議に出席する中国の温家宝首相との会談の可能性については「予定はない」と語った。外務省幹部によれば「会議場内などで立ち話ならする可能性もある」というが、首相周辺は「積極的な会談の働きかけはしていない」と明かす。
菅首相がASEMの場でとりわけ重視するのが2国間による個別会談だ。4日午前(日本時間同日夕)からの韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領、ベトナムのズン首相を手始めに、フランスのサルコジ大統領、EUのファンロンパイ大統領らを日程に組み込んだ。
菅首相はこれまで尖閣諸島について「歴史的にも国際法的にもわが国固有の領土で、領土問題は存在しない」と主張。先の所信表明演説でも「中国の透明性を欠いた国防力の強化や、インド洋から東シナ海に至る海洋活動の活発化には懸念を有している」と中国側をけん制した。急きょ、ASEMへの出席を決めたのは、アジア・欧州各国首脳に認識を共有してもらうためにほかならない。
●中国は「包囲網」警戒 一方、中国政府は「時間が限られ、2国間会談の機会は少ない」(傅瑩外務次官)として、現地での2国間会談の予定は明らかにしていない。だが、日本が尖閣問題を巡り「中国包囲網」を敷く動きを警戒しているといい、水面下の折衝で激しい外交戦を展開、各国に中国の立場に理解を求めているとみられる。
中国側にとって、菅首相がASEMで尖閣問題を取り上げることは「尖閣諸島に領有権問題が存在することを国際社会に周知させるという意味では中国にとって有利」(政府系シンクタンク研究員)との見方もある。日本政府内には「温首相が演説で東シナ海の情勢について触れる可能性もある」(外務省幹部)とみる向きも多い。
:2010:10/04/09:07 ++ 対外純資産、新興国で急増、中国5年で5倍超、シンガポール1.8倍
新興国・地域が海外に持つ資産が急増している。対外資産から負債を引いた「対外純資産」の残高を見ると、中国は2009年に167兆円と04年の5倍以上に膨張。シンガポールや香港でも増えている。急速な経済成長を背景に個人や企業の金融資産が欧米などに向かっているほか、資源獲得のために政府が投資を膨らませているためだ。新興国が世界経済への影響力を高めつつあることを示しているといえそうだ。(対外資産残高は3面「きょうのことば」参照)
対外純資産は政府や企業、個人の海外向け投資額(資産)から、外国からの国内向け投資額(負債)を引いたもの。純資産が大きいほど資産大国ぶりを示す。09年の日本は266兆円で、19年連続で世界で最も多い。
対外純資産を急速に積み上げているのが高成長を続ける新興国、特に中国だ。04年に29兆円程度だった対外純資産は増加の一途をたどり、07年には100兆円を超え、それまで2位だったドイツを抜いた。09年も前年比で約30兆円も増えた。
中国の増加ぶりを支えるのは旺盛な対外直接投資だ。中国政府はオーストラリアなどで資源権益獲得に向けた投資を拡大。中国企業による海外への投資も相次いでいる。この結果、09年の直接投資の残高は04年の約4倍に増えた。
海外の株式や債券などへの投資残高も04年の約2倍に増加。人民元相場を実勢より低く抑えるため、中国人民銀行(中央銀行)が市場で大規模な元売り・ドル買い介入を続けたこともあり、外貨準備も3倍以上に膨らんだ。
中国と日本の対外純資産の差は04年から09年にかけて60兆円近く縮まった。10年に入っても中国の対外資産は外貨準備などを中心に増加。日本の対外純資産も増えているが、急速に経済成長する中国が中期的に日本を超える資産大国になる可能性もある。
そのほかの新興国・地域も対外純資産を増やしている。海外への直接投資の拡大などにより、香港の対外純資産は09年に約68兆円と04年の1・5倍に、シンガポールも約40兆円と同1・8倍に拡大した。一時は対外債務国だったロシアも08年に債権国に転じた。09年の対外純資産は10兆円を超えている。
こうした新興国マネーの膨張がこのところ債券や商品価格を上昇させている側面もある。一方、海外から巨額の投資を受け入れる米国は対外債務国だ。
対外純資産残高は、その国や地域のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の強さや、外国に投資している資産からの利子や配当収入が多いことを示す指標の一つでもある。新興国の対外資産の急増ぶりは、世界経済における影響力や発言力が無視できないものになりつつあることを意味する。今後も増え続ければ、人民元など自国の通貨にさらなる上昇圧力がかかる可能性もある。
対外純資産は政府や企業、個人の海外向け投資額(資産)から、外国からの国内向け投資額(負債)を引いたもの。純資産が大きいほど資産大国ぶりを示す。09年の日本は266兆円で、19年連続で世界で最も多い。
対外純資産を急速に積み上げているのが高成長を続ける新興国、特に中国だ。04年に29兆円程度だった対外純資産は増加の一途をたどり、07年には100兆円を超え、それまで2位だったドイツを抜いた。09年も前年比で約30兆円も増えた。
中国の増加ぶりを支えるのは旺盛な対外直接投資だ。中国政府はオーストラリアなどで資源権益獲得に向けた投資を拡大。中国企業による海外への投資も相次いでいる。この結果、09年の直接投資の残高は04年の約4倍に増えた。
海外の株式や債券などへの投資残高も04年の約2倍に増加。人民元相場を実勢より低く抑えるため、中国人民銀行(中央銀行)が市場で大規模な元売り・ドル買い介入を続けたこともあり、外貨準備も3倍以上に膨らんだ。
中国と日本の対外純資産の差は04年から09年にかけて60兆円近く縮まった。10年に入っても中国の対外資産は外貨準備などを中心に増加。日本の対外純資産も増えているが、急速に経済成長する中国が中期的に日本を超える資産大国になる可能性もある。
そのほかの新興国・地域も対外純資産を増やしている。海外への直接投資の拡大などにより、香港の対外純資産は09年に約68兆円と04年の1・5倍に、シンガポールも約40兆円と同1・8倍に拡大した。一時は対外債務国だったロシアも08年に債権国に転じた。09年の対外純資産は10兆円を超えている。
こうした新興国マネーの膨張がこのところ債券や商品価格を上昇させている側面もある。一方、海外から巨額の投資を受け入れる米国は対外債務国だ。
対外純資産残高は、その国や地域のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の強さや、外国に投資している資産からの利子や配当収入が多いことを示す指標の一つでもある。新興国の対外資産の急増ぶりは、世界経済における影響力や発言力が無視できないものになりつつあることを意味する。今後も増え続ければ、人民元など自国の通貨にさらなる上昇圧力がかかる可能性もある。
:2010:10/01/12:01 ++ 尖閣沖衝突衆院審議の主なやりとり―与那国島、自衛隊駐屯は、先島への配備検討。
浅尾慶一郎氏(みんな) 沖縄県与那国島に自衛隊を駐屯させることは中国への一つの抑止につながる。
北沢俊美防衛相 先島(さきしま)への配備を検討している。予算要求も調査費で計上した。今後検討したい。
浅尾氏 潜水艦の耐用年数を現行の16年から延ばすことで抑止効果が出るのではないか。
防衛相 現行の防衛大綱の見直しにあたって、一つの考え方として検討したい。
浅尾氏 外務省のホームページ(HP)では、尖閣諸島が日本のものであることを日本語と英語では書いてあるが、中国語では書いていない。
外相 中国語版も作りたい。
浅尾氏 中国国営の新華社通信が、中国で取り調べを受けているフジタ社員4人のうち3人の釈放を伝えた。残る1人の早急な釈放を強く求めるべきだ。
外相 4人のうち3人が釈放されたことは事実だが、まだ1人残されている。早期解決をしっかり求めたい。
北沢俊美防衛相 先島(さきしま)への配備を検討している。予算要求も調査費で計上した。今後検討したい。
浅尾氏 潜水艦の耐用年数を現行の16年から延ばすことで抑止効果が出るのではないか。
防衛相 現行の防衛大綱の見直しにあたって、一つの考え方として検討したい。
浅尾氏 外務省のホームページ(HP)では、尖閣諸島が日本のものであることを日本語と英語では書いてあるが、中国語では書いていない。
外相 中国語版も作りたい。
浅尾氏 中国国営の新華社通信が、中国で取り調べを受けているフジタ社員4人のうち3人の釈放を伝えた。残る1人の早急な釈放を強く求めるべきだ。
外相 4人のうち3人が釈放されたことは事実だが、まだ1人残されている。早期解決をしっかり求めたい。
:2010:10/01/12:01 ++ 尖閣沖衝突衆院審議の主なやりとり―領有権の根拠、発信したか、外相、大いに反省。
笠井亮氏(共産) 尖閣諸島が日本の固有の領土であるとの明確な根拠があると、国際社会や中国政府に正面から主張すべきだ。
外相 日米外相会談では尖閣諸島の日米安全保障条約の適用などについて話した。一連の外相会談では領有権を巡る歴史的な背景や、中国はいつから(領土と)言い始め、それはなぜかということ、今回は(日本の)固有の領土で起きた悪質な事案だったと詳しく説明した。
首相 我が国の立場は表明すべきときには表明してきた。これからASEMにも出かける。言うべきことは国際社会に向けて明確に言っていきたい。
笠井氏 日本の領有権に明確な根拠があると日本の外交がきちんと主張してきたのか。
外相 国際社会に発信をしてこられたかどうかは大いに反省するところがある。
笠井氏 漁民が周辺海域で安心して操業できるようにすることが急務だ。
馬淵澄夫国交相 尖閣周辺領海は固有の領海であり、そこでの漁業権は主権を守るものとして巡視船の配備や、状況に応じた体制の増強などを行ってきた。さらに関係省庁とも連携して、適切な対応を厳正に実施したい。
首相 漁民が安心して操業できるよう、海保庁の努力も必要だ。我が国の安全な漁業活動を阻害するようなことはどの国であっても認めるわけにはいかないという意思を明確にし、必要に応じてそういったことを申し入れることも必要だ。
照屋寛徳氏(社民) 1895年に我が国の領土に編入される以前は、中国か、琉球藩のものだったのか。
外相 85年から10年かけた慎重な調査をして、どの国も統治していないことを分かったうえで、国際法上認められた手続きによって日本に編入した。したがって中国のものであったということは全くない。
照屋氏 私は琉球藩のものだったと思っている。沖縄県議会は今回の事件に関する抗議決議を採択した。
外相 政府としても事案発生後、いろんな機会をとらえて中国側にハイレベルから、違法操業事案、接触事件の発生に対して抗議、遺憾の意を表明している。尖閣諸島は我が国固有の領土で、ここで沖縄の漁業従事者が安心して操業できる体制を整えることは日本国政府の責務だ。外交ルートを通じて再発防止策を求めていきたい。
外相 日米外相会談では尖閣諸島の日米安全保障条約の適用などについて話した。一連の外相会談では領有権を巡る歴史的な背景や、中国はいつから(領土と)言い始め、それはなぜかということ、今回は(日本の)固有の領土で起きた悪質な事案だったと詳しく説明した。
首相 我が国の立場は表明すべきときには表明してきた。これからASEMにも出かける。言うべきことは国際社会に向けて明確に言っていきたい。
笠井氏 日本の領有権に明確な根拠があると日本の外交がきちんと主張してきたのか。
外相 国際社会に発信をしてこられたかどうかは大いに反省するところがある。
笠井氏 漁民が周辺海域で安心して操業できるようにすることが急務だ。
馬淵澄夫国交相 尖閣周辺領海は固有の領海であり、そこでの漁業権は主権を守るものとして巡視船の配備や、状況に応じた体制の増強などを行ってきた。さらに関係省庁とも連携して、適切な対応を厳正に実施したい。
首相 漁民が安心して操業できるよう、海保庁の努力も必要だ。我が国の安全な漁業活動を阻害するようなことはどの国であっても認めるわけにはいかないという意思を明確にし、必要に応じてそういったことを申し入れることも必要だ。
照屋寛徳氏(社民) 1895年に我が国の領土に編入される以前は、中国か、琉球藩のものだったのか。
外相 85年から10年かけた慎重な調査をして、どの国も統治していないことを分かったうえで、国際法上認められた手続きによって日本に編入した。したがって中国のものであったということは全くない。
照屋氏 私は琉球藩のものだったと思っている。沖縄県議会は今回の事件に関する抗議決議を採択した。
外相 政府としても事案発生後、いろんな機会をとらえて中国側にハイレベルから、違法操業事案、接触事件の発生に対して抗議、遺憾の意を表明している。尖閣諸島は我が国固有の領土で、ここで沖縄の漁業従事者が安心して操業できる体制を整えることは日本国政府の責務だ。外交ルートを通じて再発防止策を求めていきたい。
:2010:10/01/11:59 ++ 尖閣沖衝突衆院審議の主なやりとり―なぜ領海侵犯事案でない、まず退去警告。
富田茂之氏(公明) 尖閣諸島が我が国固有の領土だという法的根拠を。
首相 尖閣諸島の領有権に関して、1885年以降、政府が色々調査したうえで1895年に閣議決定し、正式に我が国の領土に編入した。1970年代に入るまで中国の地図でも日本領であることは明確だったし、それ以前に特に異議を申し入れられた事実はない。尖閣諸島が日本の固有の領土であることは歴史的にも国際的にも法律的にも間違いない。
富田氏 話し合いで領土問題が解決できるという間違ったメッセージは出さないように気をつけて今後の日中交渉にあたってほしい。
外相 日本側の原則をしっかり堅持することが大切だ。今回起きた事案は公務執行妨害という日本の国内法に基づいて対応する。今後、同様の案件が起これば同様に対応する。外交問題としてどう扱うかは一刑事事件を大きく超えると思っている。お互いの国益を対話を通じて確認し、うまく対処していくことが外交において大事だ。
富田氏 なぜ領海侵犯事案として検挙しなかったのか。
海保庁長官 尖閣諸島周辺海域では、かねて中国漁船、台湾漁船が多数操業していた。8月中旬以降、多数の中国漁船が領海付近の海域で操業し、一部が領海内に侵入している状況が確認されていた。多数の操業があるので、退去警告、立ち入り検査で外に追い出すのがまず原則としていた。ただ、今回の事案はその退去警告中の相手の漁船が網をあげて突然走り出して、衝突してきたので公務執行妨害事案として捨ておけないということで捜査に入った。
富田氏 領海侵犯事案で検挙すれば中国漁船の船員14人からも事情を聴けた。
海保庁長官 多数の漁船が領海に入って操業し、それを片っ端から捕まえることはできないので、退去警告を行い、退去させる措置をずっと講じている。そのバランス上、直ちに違法操業で捕まえることはせずに、今回は悪質な公務執行妨害事案として捕まえた。外国人漁業規制法違反の違法操業の疑いでも捜査は行っていた。
仙谷長官 衝突事案が発生した情報は7日の午前中に入った記憶がある。同日午後4時40分ごろに外務省、海保の担当者から報告を受けたが、3時間後には詳しい事情も入り、海保の方針も煮詰まってくるとのことでいったん解散した。午後9時ごろに私の部屋に再び集まり、海保の方針を聞き、逮捕状を請求する手続きに入るという際に「事案はこういう中身だ。ビデオを見てください」という話で短時間のビデオを見た。午後10時30分に逮捕状を請求、翌午前0時55分に逮捕状が交付され、2時3分に執行されたと聞いている。
富田氏 捜査の過程が変だ。船長に対して接見禁止が付いていたか。
西川克行法務省刑事局長 拘置の13日目、22日に接見禁止処分が付された。それ以前は付いていなかった。
首相 尖閣諸島の領有権に関して、1885年以降、政府が色々調査したうえで1895年に閣議決定し、正式に我が国の領土に編入した。1970年代に入るまで中国の地図でも日本領であることは明確だったし、それ以前に特に異議を申し入れられた事実はない。尖閣諸島が日本の固有の領土であることは歴史的にも国際的にも法律的にも間違いない。
富田氏 話し合いで領土問題が解決できるという間違ったメッセージは出さないように気をつけて今後の日中交渉にあたってほしい。
外相 日本側の原則をしっかり堅持することが大切だ。今回起きた事案は公務執行妨害という日本の国内法に基づいて対応する。今後、同様の案件が起これば同様に対応する。外交問題としてどう扱うかは一刑事事件を大きく超えると思っている。お互いの国益を対話を通じて確認し、うまく対処していくことが外交において大事だ。
富田氏 なぜ領海侵犯事案として検挙しなかったのか。
海保庁長官 尖閣諸島周辺海域では、かねて中国漁船、台湾漁船が多数操業していた。8月中旬以降、多数の中国漁船が領海付近の海域で操業し、一部が領海内に侵入している状況が確認されていた。多数の操業があるので、退去警告、立ち入り検査で外に追い出すのがまず原則としていた。ただ、今回の事案はその退去警告中の相手の漁船が網をあげて突然走り出して、衝突してきたので公務執行妨害事案として捨ておけないということで捜査に入った。
富田氏 領海侵犯事案で検挙すれば中国漁船の船員14人からも事情を聴けた。
海保庁長官 多数の漁船が領海に入って操業し、それを片っ端から捕まえることはできないので、退去警告を行い、退去させる措置をずっと講じている。そのバランス上、直ちに違法操業で捕まえることはせずに、今回は悪質な公務執行妨害事案として捕まえた。外国人漁業規制法違反の違法操業の疑いでも捜査は行っていた。
仙谷長官 衝突事案が発生した情報は7日の午前中に入った記憶がある。同日午後4時40分ごろに外務省、海保の担当者から報告を受けたが、3時間後には詳しい事情も入り、海保の方針も煮詰まってくるとのことでいったん解散した。午後9時ごろに私の部屋に再び集まり、海保の方針を聞き、逮捕状を請求する手続きに入るという際に「事案はこういう中身だ。ビデオを見てください」という話で短時間のビデオを見た。午後10時30分に逮捕状を請求、翌午前0時55分に逮捕状が交付され、2時3分に執行されたと聞いている。
富田氏 捜査の過程が変だ。船長に対して接見禁止が付いていたか。
西川克行法務省刑事局長 拘置の13日目、22日に接見禁止処分が付された。それ以前は付いていなかった。
:2010:10/01/11:58 ++ 尖閣沖衝突衆院審議の主なやりとり―船長釈放「了とする」とは、異議申し立てず。
塩崎恭久氏(自民) 領土を守る覚悟がどれほどあるか。
首相 一貫して言っているが、尖閣諸島は我が国の固有の領土であり、この点に関して日中間に領土問題は存在していない。その姿勢でこれまでもこれからもしっかりと臨んでいく。
塩崎氏 閣内で「尖閣は領土問題だ」と言った人がいた。その人にどういう注意をしたか。
仙谷長官 蓮舫行政刷新担当相が記者会見でそのようなことを言ったとの報道があったので、私から「尖閣諸島は日本の固有の領土であり、日中間に領土問題は存在しない。このことを改めて銘記するように」と注意した。
塩崎氏 首相は「ビデオを見ていない」と言ったが、ASEMに行くのにビデオも見ずに何を訴えようというのか。
首相 個々の通常の案件でそういうところまで首相がやるか、やらないかはその時の判断だが、現在そういうことが法律的に可能かどうかも含めて検討して対応を決めたい。
塩崎氏 ビデオの予算委員会提出を改めてお願いしたい。
松原仁予算委員長代理 理事会で協議する。
塩崎氏 官房長官は逮捕を除いて、事前に検察から相談を受けたり指示を出したりしていないことを確認したい。
仙谷長官 検察庁から拘置決定を受けて、刑事司法のプロセスに入ったと10日に連絡があった。それ以降は刑事司法の当局から事件について何の連絡もない。
塩崎氏 外相も28日の参院外交防衛委員会で「悪質な事案であることはビデオを見ればわかる」と言った。どの程度悪質かをビデオを見ないで訴えるのは無理だ。そもそもこの事案は悪質か、悪質でないか。
首相 悪質であるかないかは、当時の前原国交相から悪質な事案であるという説明を受けており、認識を共有している。
塩崎氏 拘置決定時に相談を受けたか。
仙谷長官 海保の逮捕の手続きが終わり、さらに48時間の持ち時間が那覇地検にあったが、その間も一切、検察当局から連絡も相談も私のところには来ていない。
塩崎氏 船員の帰国や船体の返還は検察の判断か。相談はあったか。帰すよう指示したのか。
仙谷長官 検察がこの事案で、証拠保全、証拠収集として十分であると考えれば帰すという判断もあり得た。船員は日本の法律下では、逮捕や留め置く法権的な対象になっていないので、参考人として任意の取り調べを要請し、それが終われば自由にしてもらうしかない。
塩崎氏 船長の拘置延長について意見を求められたか。
仙谷長官 全くない。一般論として私の経験も含めて言えば、検察官は拘置延長決定を受けても、その時間をめいっぱい使わなければならないという要請はない。その時間内で事件処理をするのが検察官の責務だ。
塩崎氏 船長の釈放を、首相はいつ、どこで誰から聞いたか。
首相 私はニューヨークにいたので、現地時間の24日午前1時ごろ、検察が釈放を決定したと同行していた秘書官から報告を受けた。
塩崎氏 釈放に国民は本当に怒っていた。今も怒っている。
首相 色々な意見が国内外にあることは承知している。私はその報告を聞いたときに、検察当局でしっかり法律と証拠などを勘案し、議論して決定したのだろうと理解して、捜査の個別的なことに介入するつもりはなかったから、報告を私なりにかみしめて了解した。
塩崎氏 官房長官は船長の釈放決定を発表した那覇地検の記者会見を「了とする」と言ったが、どういう意味か。
仙谷長官 刑事司法を預かっている検察庁がこういう事件処理の仕方をしたという報告を受けて、それをそのまま、異議を申し立てないで、あるがままに受け止めたということだ。
塩崎氏 内容によっては異議を申し立てることができると思ったか。
仙谷長官 個別事件処理について、官房長官であろうと法相であろうと、異議を申し立てることは原則としてあってはならない。検察庁法14条による指揮権を行使する事案ではないと最初から考えている。
塩崎氏 船長は処分保留だが、起訴か不起訴かをいつまでに判断するのか。
法相 時期を見て検察当局が判断すると思う。
塩崎氏 起訴でも不起訴でも外交的に大きな影響がある。
外相 刑事事件は司法当局で粛々とやるが、それを契機にいろんな外交問題が起きたときには外交当局、政府がしっかり対応する。
塩崎氏 官房長官が那覇地検の釈放決定を「了とする」と言ったのは事前に指示し、その通りになったからではないか。実は指示を出していたのではないか。大林宏検事総長と上野友慈那覇地検検事正の証人喚問を求める。
予算委員長代理 後刻、理事会で協議する。
塩崎氏 菅内閣は全部しゃくし定規に検察が決めたということで政治責任を取ろうとしない。我が国の固有の領土だと言っているのだから法の適正な運用でもって裁くのが当然だ。
仙谷長官 司法の独立、捜査に対する政治の介入があったのではないかという論点は大変重要だ。与党だからこう言い、野党だからこう言いという話であってはならない。
刑事司法に向けて政治の側が検察庁法14条を行使してもっと厳しく捜査をやれ、あるいはやるなというのも指揮権の発動だ。それをあえてやることがどういう場合に許され、どういう場合にはやってはならないのかという基準が、まだ先例として確立されていない。これは大いに議論しなければならない。真剣に国会で議論すべきだ。
塩崎氏 首相は責任ある政治をやるという決意を示せ。
首相 中国を含めて他の国々とどう対峙(たいじ)し、いい関係をつくると同時に、我が国固有の領土に関しては、一歩も引かないという姿勢を取っていくことは当然、私の最大の責任だ。
首相 一貫して言っているが、尖閣諸島は我が国の固有の領土であり、この点に関して日中間に領土問題は存在していない。その姿勢でこれまでもこれからもしっかりと臨んでいく。
塩崎氏 閣内で「尖閣は領土問題だ」と言った人がいた。その人にどういう注意をしたか。
仙谷長官 蓮舫行政刷新担当相が記者会見でそのようなことを言ったとの報道があったので、私から「尖閣諸島は日本の固有の領土であり、日中間に領土問題は存在しない。このことを改めて銘記するように」と注意した。
塩崎氏 首相は「ビデオを見ていない」と言ったが、ASEMに行くのにビデオも見ずに何を訴えようというのか。
首相 個々の通常の案件でそういうところまで首相がやるか、やらないかはその時の判断だが、現在そういうことが法律的に可能かどうかも含めて検討して対応を決めたい。
塩崎氏 ビデオの予算委員会提出を改めてお願いしたい。
松原仁予算委員長代理 理事会で協議する。
塩崎氏 官房長官は逮捕を除いて、事前に検察から相談を受けたり指示を出したりしていないことを確認したい。
仙谷長官 検察庁から拘置決定を受けて、刑事司法のプロセスに入ったと10日に連絡があった。それ以降は刑事司法の当局から事件について何の連絡もない。
塩崎氏 外相も28日の参院外交防衛委員会で「悪質な事案であることはビデオを見ればわかる」と言った。どの程度悪質かをビデオを見ないで訴えるのは無理だ。そもそもこの事案は悪質か、悪質でないか。
首相 悪質であるかないかは、当時の前原国交相から悪質な事案であるという説明を受けており、認識を共有している。
塩崎氏 拘置決定時に相談を受けたか。
仙谷長官 海保の逮捕の手続きが終わり、さらに48時間の持ち時間が那覇地検にあったが、その間も一切、検察当局から連絡も相談も私のところには来ていない。
塩崎氏 船員の帰国や船体の返還は検察の判断か。相談はあったか。帰すよう指示したのか。
仙谷長官 検察がこの事案で、証拠保全、証拠収集として十分であると考えれば帰すという判断もあり得た。船員は日本の法律下では、逮捕や留め置く法権的な対象になっていないので、参考人として任意の取り調べを要請し、それが終われば自由にしてもらうしかない。
塩崎氏 船長の拘置延長について意見を求められたか。
仙谷長官 全くない。一般論として私の経験も含めて言えば、検察官は拘置延長決定を受けても、その時間をめいっぱい使わなければならないという要請はない。その時間内で事件処理をするのが検察官の責務だ。
塩崎氏 船長の釈放を、首相はいつ、どこで誰から聞いたか。
首相 私はニューヨークにいたので、現地時間の24日午前1時ごろ、検察が釈放を決定したと同行していた秘書官から報告を受けた。
塩崎氏 釈放に国民は本当に怒っていた。今も怒っている。
首相 色々な意見が国内外にあることは承知している。私はその報告を聞いたときに、検察当局でしっかり法律と証拠などを勘案し、議論して決定したのだろうと理解して、捜査の個別的なことに介入するつもりはなかったから、報告を私なりにかみしめて了解した。
塩崎氏 官房長官は船長の釈放決定を発表した那覇地検の記者会見を「了とする」と言ったが、どういう意味か。
仙谷長官 刑事司法を預かっている検察庁がこういう事件処理の仕方をしたという報告を受けて、それをそのまま、異議を申し立てないで、あるがままに受け止めたということだ。
塩崎氏 内容によっては異議を申し立てることができると思ったか。
仙谷長官 個別事件処理について、官房長官であろうと法相であろうと、異議を申し立てることは原則としてあってはならない。検察庁法14条による指揮権を行使する事案ではないと最初から考えている。
塩崎氏 船長は処分保留だが、起訴か不起訴かをいつまでに判断するのか。
法相 時期を見て検察当局が判断すると思う。
塩崎氏 起訴でも不起訴でも外交的に大きな影響がある。
外相 刑事事件は司法当局で粛々とやるが、それを契機にいろんな外交問題が起きたときには外交当局、政府がしっかり対応する。
塩崎氏 官房長官が那覇地検の釈放決定を「了とする」と言ったのは事前に指示し、その通りになったからではないか。実は指示を出していたのではないか。大林宏検事総長と上野友慈那覇地検検事正の証人喚問を求める。
予算委員長代理 後刻、理事会で協議する。
塩崎氏 菅内閣は全部しゃくし定規に検察が決めたということで政治責任を取ろうとしない。我が国の固有の領土だと言っているのだから法の適正な運用でもって裁くのが当然だ。
仙谷長官 司法の独立、捜査に対する政治の介入があったのではないかという論点は大変重要だ。与党だからこう言い、野党だからこう言いという話であってはならない。
刑事司法に向けて政治の側が検察庁法14条を行使してもっと厳しく捜査をやれ、あるいはやるなというのも指揮権の発動だ。それをあえてやることがどういう場合に許され、どういう場合にはやってはならないのかという基準が、まだ先例として確立されていない。これは大いに議論しなければならない。真剣に国会で議論すべきだ。
塩崎氏 首相は責任ある政治をやるという決意を示せ。
首相 中国を含めて他の国々とどう対峙(たいじ)し、いい関係をつくると同時に、我が国固有の領土に関しては、一歩も引かないという姿勢を取っていくことは当然、私の最大の責任だ。
:2010:10/01/11:53 ++ 尖閣沖衝突衆院審議の主なやりとり―政治介入なかったか、官房長官、一切ないと断言
小野寺五典氏(自民) 衝突時に撮影したビデオ映像を見たか。
首相 見ていない。
仙谷由人官房長官 7日午後9時過ぎに首相官邸の私の部屋で、現状の報告を受ける際にビデオを見た。
小野寺氏 今回の釈放は正しい判断か。
首相 最終的な判断は捜査当局、検察がいろいろなことを含めて判断をした。その判断は、適切なものであったと認識をしている。
仙谷長官 通常の刑事事件でいえば、警察が事案を検討して逮捕状を交付請求するまでの間で、捜査の状況報告や資料が首相まであがることは考えようがない。
柳田稔法相 法と証拠に基づいて処分保留という決定を下した。
小野寺氏 釈放に至る過程で外交的なことは考慮したか。
法相 私がしたということではない。那覇地検から法務省に外務省の意見を聞きたいという話があったので、外務省に参考人として意見を述べてほしいということを言った。
小野寺氏 船長釈放時に法相が発表したコメントには「今後の日中関係を考慮して釈放した」とある。
仙谷長官 (1)巡視船「みずき」の損傷がただちに航行に支障が生じる程度ではない(2)「みずき」の乗組員が負傷するなどの被害がない(3)計画性が認められない(4)被疑者には日本での前科がない(5)今後の日中関係――の5つの事由を総合的に勘案した。(日中関係への配慮は)ひとつとして考慮したにすぎない。
小野寺氏 政治介入はなかったと天地神明に誓って言えるか。
首相 検察の手続きの中にいろいろな状況を勘案することも法律的に認められている。外交的なことも外務省の担当者を呼んで聞いたわけで、そういう意見も勘案したのかもしれない。少なくとも検察の判断は検察が自主的な判断で行ったと理解している。
仙谷長官 首相や官房長官、法相が事件処理についてこうすべきだという指示をしたことは一切ない。政治の介入があったということは一切ないと断言する。
小野寺氏 検察側に状況説明した外務省職員はどういう人か。
外相 外務次官から職員を送るということで事前了承を得る話があり、私が了解した。説明した中身についても私が把握している。具体的に誰だったかは差し控える。すべて政治家である私に聞いてもらったら結構だ。
首相 見ていない。
仙谷由人官房長官 7日午後9時過ぎに首相官邸の私の部屋で、現状の報告を受ける際にビデオを見た。
小野寺氏 今回の釈放は正しい判断か。
首相 最終的な判断は捜査当局、検察がいろいろなことを含めて判断をした。その判断は、適切なものであったと認識をしている。
仙谷長官 通常の刑事事件でいえば、警察が事案を検討して逮捕状を交付請求するまでの間で、捜査の状況報告や資料が首相まであがることは考えようがない。
柳田稔法相 法と証拠に基づいて処分保留という決定を下した。
小野寺氏 釈放に至る過程で外交的なことは考慮したか。
法相 私がしたということではない。那覇地検から法務省に外務省の意見を聞きたいという話があったので、外務省に参考人として意見を述べてほしいということを言った。
小野寺氏 船長釈放時に法相が発表したコメントには「今後の日中関係を考慮して釈放した」とある。
仙谷長官 (1)巡視船「みずき」の損傷がただちに航行に支障が生じる程度ではない(2)「みずき」の乗組員が負傷するなどの被害がない(3)計画性が認められない(4)被疑者には日本での前科がない(5)今後の日中関係――の5つの事由を総合的に勘案した。(日中関係への配慮は)ひとつとして考慮したにすぎない。
小野寺氏 政治介入はなかったと天地神明に誓って言えるか。
首相 検察の手続きの中にいろいろな状況を勘案することも法律的に認められている。外交的なことも外務省の担当者を呼んで聞いたわけで、そういう意見も勘案したのかもしれない。少なくとも検察の判断は検察が自主的な判断で行ったと理解している。
仙谷長官 首相や官房長官、法相が事件処理についてこうすべきだという指示をしたことは一切ない。政治の介入があったということは一切ないと断言する。
小野寺氏 検察側に状況説明した外務省職員はどういう人か。
外相 外務次官から職員を送るということで事前了承を得る話があり、私が了解した。説明した中身についても私が把握している。具体的に誰だったかは差し控える。すべて政治家である私に聞いてもらったら結構だ。