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:2010:10/01/11:49 ++ 尖閣沖衝突衆院審議の主なやりとり―ASEMでどうアピール、首相我が国の立場説明
長島昭久氏(民主) 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で問われていることは何か。
鈴木久泰海上保安庁長官 日本の領海内で発生した事案で、国内法にのっとり適正に対応した。今も海保の船が尖閣諸島の周辺海域で取り締まり警備にあたっている。今後も厳正かつ的確にやっていきたい。
長島氏 中国の理不尽な態度は目にあまる。日中間の戦略的互恵関係とは何か。
菅直人首相 国民の皆さんにいろいろ心配をかけたことをおわびしたい。大きくいえば日中関係は2000年、3000年におよぶ関係であり、一衣帯水で大陸と島国日本との位置関係は変わらない。両国が長期の展望を持って互いに経済、安全保障など様々な面でプラスになる関係を維持し発展させていくことが戦略的互恵関係を発展させるという意味だ。
中国側は違法操業に対する我が国の国内法に基づく粛々とした手続きを認めない姿勢があり、大変問題があった。尖閣諸島は我が国の固有の領土であるということを明確に申し上げる。これからもきちんとした姿勢で臨んでいかないといけない。
長島氏 東南アジア諸国連合(ASEAN)に向けて、アジア欧州会議(ASEM)の場でどのようなアピールをするのか。
首相 ASEMはASEANや欧州連合(EU)諸国との幅広い高度な意見交換の場だ。同時にいろいろな2国間会談もあるので、そういう席なども含めて今回の事案について必要な場面ではしっかり我が国の立場を説明したい。
長島氏 クリントン米国務長官は尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象と明言したということで間違いないか。
前原誠司外相 尖閣諸島は日本の施政下であり、日米安保条約が適用されると明確に話があった。日米同盟関係がこの地域の安定のための公共財として極めて重要であるという共通認識を確認した。
田中康夫新党日本代表 公務執行妨害での逮捕という判断は誰が下したのか。
外相 尖閣諸島周辺は漁場であり、中国のみならず台湾の漁船も日常茶飯事で操業している。中国漁船が海保の船に体当たりし、ともすれば海保の船が沈没しかねない悪質な事案だったので、公務執行妨害で逮捕した。
鈴木久泰海上保安庁長官 日本の領海内で発生した事案で、国内法にのっとり適正に対応した。今も海保の船が尖閣諸島の周辺海域で取り締まり警備にあたっている。今後も厳正かつ的確にやっていきたい。
長島氏 中国の理不尽な態度は目にあまる。日中間の戦略的互恵関係とは何か。
菅直人首相 国民の皆さんにいろいろ心配をかけたことをおわびしたい。大きくいえば日中関係は2000年、3000年におよぶ関係であり、一衣帯水で大陸と島国日本との位置関係は変わらない。両国が長期の展望を持って互いに経済、安全保障など様々な面でプラスになる関係を維持し発展させていくことが戦略的互恵関係を発展させるという意味だ。
中国側は違法操業に対する我が国の国内法に基づく粛々とした手続きを認めない姿勢があり、大変問題があった。尖閣諸島は我が国の固有の領土であるということを明確に申し上げる。これからもきちんとした姿勢で臨んでいかないといけない。
長島氏 東南アジア諸国連合(ASEAN)に向けて、アジア欧州会議(ASEM)の場でどのようなアピールをするのか。
首相 ASEMはASEANや欧州連合(EU)諸国との幅広い高度な意見交換の場だ。同時にいろいろな2国間会談もあるので、そういう席なども含めて今回の事案について必要な場面ではしっかり我が国の立場を説明したい。
長島氏 クリントン米国務長官は尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象と明言したということで間違いないか。
前原誠司外相 尖閣諸島は日本の施政下であり、日米安保条約が適用されると明確に話があった。日米同盟関係がこの地域の安定のための公共財として極めて重要であるという共通認識を確認した。
田中康夫新党日本代表 公務執行妨害での逮捕という判断は誰が下したのか。
外相 尖閣諸島周辺は漁場であり、中国のみならず台湾の漁船も日常茶飯事で操業している。中国漁船が海保の船に体当たりし、ともすれば海保の船が沈没しかねない悪質な事案だったので、公務執行妨害で逮捕した。
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:2010:09/30/09:35 ++ 先端電子材料を増産、国内で、海外勢引き離す―東レ・昭和電工、タッチパネル
素材各社が相次いで先端的な電子材料を国内で増産する。東レは情報端末などに使われるタッチパネル向けのフィルム材料の生産能力を2倍に増やす。昭和電工は同材料に新規参入する。タッチパネルは高機能携帯電話(スマートフォン)向けに需要が急拡大している。高度な製造技術が必要な電子材料は日本の素材メーカーが競争力で勝る。円高基調でも国内に積極投資し、海外勢に対する優位を広げる。
東レは2012年夏までに先端的な光学フィルムの生産に200億円を投じて能力を増強する。国内では岐阜工場(岐阜県神戸町)に新ラインを建設し、タッチパネルの表面に使うカバーフィルム材料の生産能力を2倍に引き上げる。岐阜工場への投資額は50億円程度とみられる。
東レの同材料の世界シェアは約6割。カバーフィルムには透明性や、摩擦への耐久性が求められる。開発部門との連携が不可欠で、製造ノウハウを国内にとどめるためにも、付加価値の高い最先端品は国内で生産する。韓国では液晶パネルの「偏光板フィルム」の新ラインを設ける計画だ。
昭和電工は11年春に大分コンビナート(大分市)に生産設備を建設、タッチパネルのカバーフィルム材料に参入する。当面年産30万平方メートルでスタートし、将来は年100万平方メートル級の設備も視野に入れる。
粘着剤大手のリンテックはタッチパネルのフィルムやガラスを張り合わせる粘着シートを3割増産する。11年春に吾妻工場(群馬県東吾妻町)に新ラインを建設する。あわせてカバーフィルムを仕上げる加工設備も併設する。11年秋までにタッチパネル関連で40億円強を投資し、同事業の売上高を10年度見通しの約25億円から15年度には約100億円にする計画だ。
調査会社の米ディスプレイサーチはタッチパネルの市場規模が15年には10年見通しの2倍の124億ドル(約1兆400億円)に拡大すると予測している。
タッチパネル以外でも電子材料の増産が相次ぐ。クラレは液晶パネルの偏光板に欠かせない材料で世界シェア8割を握る先端素材「光学用ポバールフィルム」の新ラインを、西条事業所(愛媛県西条市)に建設する。12年春までに年産能力を3割高める計画だ。
帝人は今春、磁気記録テープやハイブリッド車の絶縁材に用いる国内でしか生産していない高機能フィルムで、宇都宮事業所(宇都宮市)の生産設備を改良。年産能力を2・5倍に増やした。
素材メーカーも価格競争が激しくなっている汎用品の分野では、海外での生産が増えている。ただ、一部の先端的な材料は、製造に高度な技術が必要なため台湾や韓国勢の追随が容易でない。日本の各社は海外勢に対するリードがあるうちにいち早く国内で増産投資に踏み切る。先行利益を維持し、収益の柱に育成する戦略だ。
▼タッチパネル パソコンのキーボードや携帯電話のボタンの代わりに、画面表面を指などで触って操作する入力装置。スマートフォン(高機能携帯電話)やデジタル家電などで増えている。指先やペンの圧力で検知する「抵抗膜方式」と、画面表面の静電気の変化で検知する「静電容量方式」の2方式が主流。任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」は前者、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」は後者を採用している。
東レは2012年夏までに先端的な光学フィルムの生産に200億円を投じて能力を増強する。国内では岐阜工場(岐阜県神戸町)に新ラインを建設し、タッチパネルの表面に使うカバーフィルム材料の生産能力を2倍に引き上げる。岐阜工場への投資額は50億円程度とみられる。
東レの同材料の世界シェアは約6割。カバーフィルムには透明性や、摩擦への耐久性が求められる。開発部門との連携が不可欠で、製造ノウハウを国内にとどめるためにも、付加価値の高い最先端品は国内で生産する。韓国では液晶パネルの「偏光板フィルム」の新ラインを設ける計画だ。
昭和電工は11年春に大分コンビナート(大分市)に生産設備を建設、タッチパネルのカバーフィルム材料に参入する。当面年産30万平方メートルでスタートし、将来は年100万平方メートル級の設備も視野に入れる。
粘着剤大手のリンテックはタッチパネルのフィルムやガラスを張り合わせる粘着シートを3割増産する。11年春に吾妻工場(群馬県東吾妻町)に新ラインを建設する。あわせてカバーフィルムを仕上げる加工設備も併設する。11年秋までにタッチパネル関連で40億円強を投資し、同事業の売上高を10年度見通しの約25億円から15年度には約100億円にする計画だ。
調査会社の米ディスプレイサーチはタッチパネルの市場規模が15年には10年見通しの2倍の124億ドル(約1兆400億円)に拡大すると予測している。
タッチパネル以外でも電子材料の増産が相次ぐ。クラレは液晶パネルの偏光板に欠かせない材料で世界シェア8割を握る先端素材「光学用ポバールフィルム」の新ラインを、西条事業所(愛媛県西条市)に建設する。12年春までに年産能力を3割高める計画だ。
帝人は今春、磁気記録テープやハイブリッド車の絶縁材に用いる国内でしか生産していない高機能フィルムで、宇都宮事業所(宇都宮市)の生産設備を改良。年産能力を2・5倍に増やした。
素材メーカーも価格競争が激しくなっている汎用品の分野では、海外での生産が増えている。ただ、一部の先端的な材料は、製造に高度な技術が必要なため台湾や韓国勢の追随が容易でない。日本の各社は海外勢に対するリードがあるうちにいち早く国内で増産投資に踏み切る。先行利益を維持し、収益の柱に育成する戦略だ。
▼タッチパネル パソコンのキーボードや携帯電話のボタンの代わりに、画面表面を指などで触って操作する入力装置。スマートフォン(高機能携帯電話)やデジタル家電などで増えている。指先やペンの圧力で検知する「抵抗膜方式」と、画面表面の静電気の変化で検知する「静電容量方式」の2方式が主流。任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」は前者、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」や「iPad(アイパッド)」は後者を採用している。
:2010:09/30/09:31 ++ 尖閣、政権運営に影、党内外から批判―民主の保守系、自民と議連
尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件を巡り、民主党内にも政府の対応への批判が広がっている。菅直人首相は30日の衆院予算委員会の閉会中審査などを使って乗り切ろうとしているが、野党は対決姿勢を強めている。10月1日には民主党の保守系議員と自民党議員が超党派議員連盟を発足させる。同日召集の臨時国会の戦略にも大きな影響を与えそうだ。
政府は衆院予算委などで、巡視船が漁船との衝突の模様を撮影したビデオの公開要求があれば基本的に応じる構え。漁船の船長逮捕の正当性を訴えることはできるとみているが、政府の対応への批判は収まりそうにない。
民主党の原口一博前総務相や自民党の岩屋毅氏らは29日、政府の対応などを検証する「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」の発足で合意した。民主、自民両党や無所属の保守系の中堅・若手30人程度の参加を見込む。原口氏は記者団に「国の利益を守るために政権が間違ったことをすればたださなければいけない」と述べ、尖閣問題で政府に提言を申し入れる考えを示した。
那覇地検による中国人船長釈放の判断に抗議する緊急声明を発表したメンバーの一人は29日、「さらに声明などを打ち出す必要があるかもしれない」と語った。
民主党内の保守系議員には「リベラル派の『菅―仙谷政権』は安全保障の重要性が分かってない」との不満がのぞく。抗議声明や建白書に名を連ねた議員の多くが先の代表選で小沢一郎氏を支持しているため、首相支持の議員の中には「政権の足を引っ張る目的ではないか」という疑念もある。
野党は政府批判の高まりを追い風と見ている。自民党の谷垣禎一総裁は29日、党本部で記者団に「尖閣の問題を巡っていろいろ駆け引きがあるなかで、政策協議をやれば与野党の果たすべき職分があいまいになる」と強調。当面は今年度補正予算案を巡る与野党調整よりも、政府追及を優先させる考えを示した。
与党との協議に前向きな公明党も同日、自民党幹部に電話し、当面は協議に応じない考えを伝えた。公明党幹部は「与党と話すにしても臨時国会の所信表明演説を聞いてからだ」と強調した。
政府は衆院予算委などで、巡視船が漁船との衝突の模様を撮影したビデオの公開要求があれば基本的に応じる構え。漁船の船長逮捕の正当性を訴えることはできるとみているが、政府の対応への批判は収まりそうにない。
民主党の原口一博前総務相や自民党の岩屋毅氏らは29日、政府の対応などを検証する「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」の発足で合意した。民主、自民両党や無所属の保守系の中堅・若手30人程度の参加を見込む。原口氏は記者団に「国の利益を守るために政権が間違ったことをすればたださなければいけない」と述べ、尖閣問題で政府に提言を申し入れる考えを示した。
那覇地検による中国人船長釈放の判断に抗議する緊急声明を発表したメンバーの一人は29日、「さらに声明などを打ち出す必要があるかもしれない」と語った。
民主党内の保守系議員には「リベラル派の『菅―仙谷政権』は安全保障の重要性が分かってない」との不満がのぞく。抗議声明や建白書に名を連ねた議員の多くが先の代表選で小沢一郎氏を支持しているため、首相支持の議員の中には「政権の足を引っ張る目的ではないか」という疑念もある。
野党は政府批判の高まりを追い風と見ている。自民党の谷垣禎一総裁は29日、党本部で記者団に「尖閣の問題を巡っていろいろ駆け引きがあるなかで、政策協議をやれば与野党の果たすべき職分があいまいになる」と強調。当面は今年度補正予算案を巡る与野党調整よりも、政府追及を優先させる考えを示した。
与党との協議に前向きな公明党も同日、自民党幹部に電話し、当面は協議に応じない考えを伝えた。公明党幹部は「与党と話すにしても臨時国会の所信表明演説を聞いてからだ」と強調した。
:2010:09/29/10:09 ++ 【イチから分かる】「尖閣諸島」 東シナ海の権益確保狙う中国
尖閣諸島付近の日本領海内で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、中国政府は逮捕された船長の釈放を日本政府から勝ち取る格好となった。中国側が尖閣諸島の「領有権」を主張し、日本側への圧力をエスカレートさせた狙いは、東シナ海での権益確保だ。日本政府に固有の領土を守る強い気概がなければ、東シナ海は「中国の海」となってしまう。(加納宏幸、矢板明夫)
◇
沖縄県石垣市の行政区域に含まれる尖閣諸島は、石垣島の北北西約170キロの東シナ海にある8つの島からなる。衝突事件は最大の面積を持つ魚釣島から北東約27キロにある久場島の日本領海内で発生した。
菅直人首相は26日、中国政府が声明で事件の謝罪と賠償を要求したのに対し、「尖閣諸島はわが国固有の領土だ。謝罪や賠償に全く応じるつもりはない」と拒否した。尖閣諸島に「解決すべき領有権の問題が存在していない」(外務報道官談話)ことは、その歴史が証明している。
日本政府は1885(明治18)年から現地調査を行い、尖閣諸島が無人島であり、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを確認。その上で、1895(明治28)年1月に領有を閣議決定し、沖縄県八重山郡に編入した。その際、清国側は異議を申し立てなかった。
1940年代まで尖閣諸島ではアホウドリの羽毛の採取やかつお節の加工といった経済活動が営まれ、最盛期には200人以上が住んでいたが、戦時中の物資不足で住民が引き揚げ、再び無人島になった。
51(昭和26)年に調印されたサンフランシスコ講和条約でも日本が放棄した領土には含まれず、72(同47)年の沖縄返還で南西諸島の一部として日本に施政権が移った。中国政府も同条約に異議を唱えず、中国共産党の機関紙「人民日報」のデータベースによると、53年1月8日付の同紙の記事は「琉球群島には尖閣諸島、沖縄諸島、大隅諸島などが含まれる」と明記している。
現在、中国はもとより台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているが、そのきっかけは69年に発表された国連アジア極東経済委員会(ECAFE)報告書だった。同報告書は尖閣諸島周辺の海底に石油や天然ガスが大量に埋蔵されている可能性を指摘した。
これを受け、中国は海底資源に注目し、尖閣諸島に関心を示し始める。70年12月4日付の同紙は、日米両国が中国領である尖閣諸島の海底資源を開発しようとしていることを批判する記事を掲載。71年に入ると中国、台湾がともに正式に領有権を主張し、中国は92(平成4)年に制定した領海法で自国領と定めた。
衝突事件での船長逮捕に対し、中国政府は外交ルートでの抗議にとどまらず、温家宝首相が21日、自ら「釈放しなければさらなる対抗措置を取る用意がある」と船長の無条件釈放を求めるまでに対応をエスカレートさせた。これは、海底資源、漁業資源の確保はもとより、台湾有事の際、台湾から約170キロの距離にある尖閣諸島が安全保障上の要衝となるためのようだ。
日本の及び腰で中国増長
中国の海洋進出に懸念を示す米政府も尖閣諸島の安全保障上の重要性を認識している。クリントン米国務長官は今月23日の日米外相会談で、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であるとの見解を強調した。
だが、96年9月には、モンデール駐日米大使(当時)が「米軍は尖閣諸島の紛争に介入する日米安全保障条約上の責務は有していない」と語ったと米紙報道が報じた。これが、尖閣諸島をめぐる中国、台湾の活動を活発化させる素地を作ったとみられる。2004年3月には中国人活動家7人が尖閣諸島に不法上陸したが、日本政府が「日中関係に悪影響を与えないよう大局的な判断」(当時の小泉純一郎首相)をした結果、起訴せずに強制送還。この時の“成功”体験が、今回の中国政府による強硬な釈放要求につながっている。
中国が増長する原因を作っているのは、いつでも日本側の及び腰の姿勢なのだ。日本政府は自国領土での不法行為に対する甘い態度を改める必要がある。
◇
沖縄県石垣市の行政区域に含まれる尖閣諸島は、石垣島の北北西約170キロの東シナ海にある8つの島からなる。衝突事件は最大の面積を持つ魚釣島から北東約27キロにある久場島の日本領海内で発生した。
菅直人首相は26日、中国政府が声明で事件の謝罪と賠償を要求したのに対し、「尖閣諸島はわが国固有の領土だ。謝罪や賠償に全く応じるつもりはない」と拒否した。尖閣諸島に「解決すべき領有権の問題が存在していない」(外務報道官談話)ことは、その歴史が証明している。
日本政府は1885(明治18)年から現地調査を行い、尖閣諸島が無人島であり、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを確認。その上で、1895(明治28)年1月に領有を閣議決定し、沖縄県八重山郡に編入した。その際、清国側は異議を申し立てなかった。
1940年代まで尖閣諸島ではアホウドリの羽毛の採取やかつお節の加工といった経済活動が営まれ、最盛期には200人以上が住んでいたが、戦時中の物資不足で住民が引き揚げ、再び無人島になった。
51(昭和26)年に調印されたサンフランシスコ講和条約でも日本が放棄した領土には含まれず、72(同47)年の沖縄返還で南西諸島の一部として日本に施政権が移った。中国政府も同条約に異議を唱えず、中国共産党の機関紙「人民日報」のデータベースによると、53年1月8日付の同紙の記事は「琉球群島には尖閣諸島、沖縄諸島、大隅諸島などが含まれる」と明記している。
現在、中国はもとより台湾も尖閣諸島の領有権を主張しているが、そのきっかけは69年に発表された国連アジア極東経済委員会(ECAFE)報告書だった。同報告書は尖閣諸島周辺の海底に石油や天然ガスが大量に埋蔵されている可能性を指摘した。
これを受け、中国は海底資源に注目し、尖閣諸島に関心を示し始める。70年12月4日付の同紙は、日米両国が中国領である尖閣諸島の海底資源を開発しようとしていることを批判する記事を掲載。71年に入ると中国、台湾がともに正式に領有権を主張し、中国は92(平成4)年に制定した領海法で自国領と定めた。
衝突事件での船長逮捕に対し、中国政府は外交ルートでの抗議にとどまらず、温家宝首相が21日、自ら「釈放しなければさらなる対抗措置を取る用意がある」と船長の無条件釈放を求めるまでに対応をエスカレートさせた。これは、海底資源、漁業資源の確保はもとより、台湾有事の際、台湾から約170キロの距離にある尖閣諸島が安全保障上の要衝となるためのようだ。
日本の及び腰で中国増長
中国の海洋進出に懸念を示す米政府も尖閣諸島の安全保障上の重要性を認識している。クリントン米国務長官は今月23日の日米外相会談で、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象であるとの見解を強調した。
だが、96年9月には、モンデール駐日米大使(当時)が「米軍は尖閣諸島の紛争に介入する日米安全保障条約上の責務は有していない」と語ったと米紙報道が報じた。これが、尖閣諸島をめぐる中国、台湾の活動を活発化させる素地を作ったとみられる。2004年3月には中国人活動家7人が尖閣諸島に不法上陸したが、日本政府が「日中関係に悪影響を与えないよう大局的な判断」(当時の小泉純一郎首相)をした結果、起訴せずに強制送還。この時の“成功”体験が、今回の中国政府による強硬な釈放要求につながっている。
中国が増長する原因を作っているのは、いつでも日本側の及び腰の姿勢なのだ。日本政府は自国領土での不法行為に対する甘い態度を改める必要がある。
:2010:09/29/10:02 ++ 【正論】評論家・西尾幹二 悲しき哉、国守る思想の未成育
9月24日午後、中国人船長が処分保留のまま釈放される、との報を最初に聞いた日本国民は、一瞬、耳を疑うほどの驚愕(きょうがく)を覚えた人が多かったが、私も例外ではなく、耳を塞(ふさ)ぎたかった。日本政府は国内法に則(のっと)って粛々とことを進めると再三、公言していたわけだから、ここで中国の言い分を認めるのは自国の法律を否定し、自ら法治国家であるのをやめたことになる。尖閣海域は今日から中国領になるのだな、と思った。
◆アメリカ頼み、甘過ぎる
まさか、中国もいきなり軍事侵攻してくるわけはあるまい、と大方の人が考えているが、私は、それは少し甘いのではないかと思っている。また、アメリカが日米安保条約に基づいて抑止してくれると信じている人も圧倒的に多いようだが、それは、さらに甘いのではないかと思っている。
アメリカは常々、領土をめぐる他国の紛争には中立だとし、現状の実効支配を尊重すると言っている。だからブッシュ前政権が竹島を韓国領と認定したこともある。北方領土の範囲を最初に不明確に設定したのはアメリカで、日ソ間を永遠に不和のままに置くことが国益に適(かな)ったからだとされる。それが彼らの戦略思考である。
クリントン米国務長官が23日の日米外相会談で尖閣に安保条約第5条が適用されると言ったのは、日本が実効支配している島だから当然で、それ以上の意味はない。侵略されれば、アメリカが直ちに武力行使するとは第5条には書かれていない。「自国の憲法上の規定及び手続に従って、共通の危険に対処するように行動する」と宣言しているだけだ。議会の承認を要するから、時間もかかるし、アメリカが「共通の危険」と思うかどうかは情勢次第である。
だから、ジェームス・アワー元米国防総省日本部長は、日本が尖閣の主権を守る自らの決意を示さなければ、領土への正当性は得られず、竹島に対する日本の態度は悪い見本だと批判的である(9月24日付産経新聞朝刊)。
言い換えれば、自衛隊が中国軍と一戦を交え、尖閣を死守するなら、アメリカはそれを精神的に応援し、事後承諾するだろう。しかし逆に、何もせず、中国に占領されたら、アメリカは中国の実効支配を承認することになるだけだろう。安保条約とは、その程度の約束である。日米首脳会談で、オバマ米大統領が尖閣を話題にしなかった冷淡さは、島嶼(とうしょ)部の領土争いに、米政府は関与しないという意思の再表明かもしれない。
◆善意に悪意でお返しされた
そうであれば今回、わが国が、中国政府に対し何ら言論上の争いもせず、自国の固有領土たる理由をも世界に説明せず、さっさと白旗を揚げた対応は最悪で、第5条の適用を受ける資格が日本にないことをアメリカ政府に強く印象づける結果になっただろう。
自分が善意で振る舞えば、他人も善意で応じてくれると信じる日本型ムラ社会の論理が国境を越えれば通用しないことは、近ごろ海外旅行をする国民には周知だ。中国に弱気の善意を示して強烈な悪意をもって報復されたことは、日本の政治家の未熟さを憐(あわ)れむだけで済むならいいが、国益を損なうこと甚大であり、許し難い。
那覇地検が外交の領分に踏み込んだことは、多くの人が言う通り越権行為である。仙谷由人官房長官が指揮権発動をちらつかせて司法に圧力をかけた結果だ、と情報通がテレビで語っていた。それが事実なら、国家犯罪規模のスキャンダルである。検察官と官房長官を国会に証人喚問して、とことん追及することを要求する。
◆根本原因、占領政策にも
日本の政治家に国家観念が乏しく、防衛と外交が三流にとどまる胸の痛むような現状は批判してもし過ぎることはないが、他方、ことここに至った根本原因は日米安保体制にあり、アメリカの、日本に攻撃能力を持たせまいとした占領以来の基本政策にある。
講和条約作りを主導し、後に国務長官になるダレス氏は、アメリカが日本国内に基地を保持する所以(ゆえん)は、日本の自衛権に攻撃能力の発展を許さないためだ、と説明している。以来、自衛隊は専守防衛を義務づけられ、侵略に対してはアメリカの協力を待って排除に当たるとされ、独力で国を守る思想が育ってこなかった。日本に国防の独力をもっと与えようという流れと、与えまいとする流れとの2つがアメリカにはあって、日本は翻弄(ほんろう)され、方途を見失って今日に至っている体たらくを、中国にすっかり見抜かれている。
しかし、アメリカも相当なものであり、尖閣の一件で、在日米軍の駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を、大幅に増額させる方針を固めているという。
日本は米中の挟み撃ちに遭っているというのが、今回の一件である。アメリカに攻撃力の開発を抑えられたまま、中国に攻撃されだしたのである。後ろ手に縛られたまま、腹を足蹴(げ)りにされているようなものだ。そして、今、痛いと言ってうずくまっている姿、それがわが祖国なのだ。嗚呼(ああ)!(にしお かんじ)
◆アメリカ頼み、甘過ぎる
まさか、中国もいきなり軍事侵攻してくるわけはあるまい、と大方の人が考えているが、私は、それは少し甘いのではないかと思っている。また、アメリカが日米安保条約に基づいて抑止してくれると信じている人も圧倒的に多いようだが、それは、さらに甘いのではないかと思っている。
アメリカは常々、領土をめぐる他国の紛争には中立だとし、現状の実効支配を尊重すると言っている。だからブッシュ前政権が竹島を韓国領と認定したこともある。北方領土の範囲を最初に不明確に設定したのはアメリカで、日ソ間を永遠に不和のままに置くことが国益に適(かな)ったからだとされる。それが彼らの戦略思考である。
クリントン米国務長官が23日の日米外相会談で尖閣に安保条約第5条が適用されると言ったのは、日本が実効支配している島だから当然で、それ以上の意味はない。侵略されれば、アメリカが直ちに武力行使するとは第5条には書かれていない。「自国の憲法上の規定及び手続に従って、共通の危険に対処するように行動する」と宣言しているだけだ。議会の承認を要するから、時間もかかるし、アメリカが「共通の危険」と思うかどうかは情勢次第である。
だから、ジェームス・アワー元米国防総省日本部長は、日本が尖閣の主権を守る自らの決意を示さなければ、領土への正当性は得られず、竹島に対する日本の態度は悪い見本だと批判的である(9月24日付産経新聞朝刊)。
言い換えれば、自衛隊が中国軍と一戦を交え、尖閣を死守するなら、アメリカはそれを精神的に応援し、事後承諾するだろう。しかし逆に、何もせず、中国に占領されたら、アメリカは中国の実効支配を承認することになるだけだろう。安保条約とは、その程度の約束である。日米首脳会談で、オバマ米大統領が尖閣を話題にしなかった冷淡さは、島嶼(とうしょ)部の領土争いに、米政府は関与しないという意思の再表明かもしれない。
◆善意に悪意でお返しされた
そうであれば今回、わが国が、中国政府に対し何ら言論上の争いもせず、自国の固有領土たる理由をも世界に説明せず、さっさと白旗を揚げた対応は最悪で、第5条の適用を受ける資格が日本にないことをアメリカ政府に強く印象づける結果になっただろう。
自分が善意で振る舞えば、他人も善意で応じてくれると信じる日本型ムラ社会の論理が国境を越えれば通用しないことは、近ごろ海外旅行をする国民には周知だ。中国に弱気の善意を示して強烈な悪意をもって報復されたことは、日本の政治家の未熟さを憐(あわ)れむだけで済むならいいが、国益を損なうこと甚大であり、許し難い。
那覇地検が外交の領分に踏み込んだことは、多くの人が言う通り越権行為である。仙谷由人官房長官が指揮権発動をちらつかせて司法に圧力をかけた結果だ、と情報通がテレビで語っていた。それが事実なら、国家犯罪規模のスキャンダルである。検察官と官房長官を国会に証人喚問して、とことん追及することを要求する。
◆根本原因、占領政策にも
日本の政治家に国家観念が乏しく、防衛と外交が三流にとどまる胸の痛むような現状は批判してもし過ぎることはないが、他方、ことここに至った根本原因は日米安保体制にあり、アメリカの、日本に攻撃能力を持たせまいとした占領以来の基本政策にある。
講和条約作りを主導し、後に国務長官になるダレス氏は、アメリカが日本国内に基地を保持する所以(ゆえん)は、日本の自衛権に攻撃能力の発展を許さないためだ、と説明している。以来、自衛隊は専守防衛を義務づけられ、侵略に対してはアメリカの協力を待って排除に当たるとされ、独力で国を守る思想が育ってこなかった。日本に国防の独力をもっと与えようという流れと、与えまいとする流れとの2つがアメリカにはあって、日本は翻弄(ほんろう)され、方途を見失って今日に至っている体たらくを、中国にすっかり見抜かれている。
しかし、アメリカも相当なものであり、尖閣の一件で、在日米軍の駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を、大幅に増額させる方針を固めているという。
日本は米中の挟み撃ちに遭っているというのが、今回の一件である。アメリカに攻撃力の開発を抑えられたまま、中国に攻撃されだしたのである。後ろ手に縛られたまま、腹を足蹴(げ)りにされているようなものだ。そして、今、痛いと言ってうずくまっている姿、それがわが祖国なのだ。嗚呼(ああ)!(にしお かんじ)
:2010:09/29/09:34 ++ 岐路の旅行ビジネス(下)航空大競争が波及―販売手数料減、迫る淘汰。
26日まで東京ビッグサイト(東京・江東)で開かれた世界旅行博。会場ではポッカリ空いたスペースが目を引いた。尖閣諸島沖の衝突事件で日本と対立する中国が急きょ出展を取りやめたのだ。
中国人誘致に影
「中国人は訪日客の中で大きなウエートを占めるだけに残念だ」。主催した日本旅行業協会の金井耿会長(日本旅行会長)は24日、記者会見で日中問題についてタイミングの悪さを嘆いた。
イベントの最中だったからだけではない。訪日中国人を増やすのは観光立国のシンボル。日本政府は7月に個人観光ビザ(査証)の発給要件を緩和、中国側も中国人の海外旅行の取り扱いを外資に開放する検討を始めた矢先だっただけに、観光業界は水をさされた。
旅行業協会の金井会長は会見の席上、もう1つの悩みを打ち明けた。格安航空会社(LCC)の台頭だ。「コストを切り詰めて低価格を目指すLCCと旅行会社が組むのは難しい」。実際、全日本空輸の伊東信一郎社長は年内に設立するLCCについて「航空券販売をネットに特化する」と明言し、羽田空港に就航するマレーシアのエア・アジアXも旅行会社経由の販売は2割にとどめる。
アジアを舞台に本格化する空の大競争は旅行会社の経営に波及している。国内外の航空各社は国際線の座席の販売強化を目的に航空券の発券手数料としてチケット代の5%を日本の旅行会社に払ってきたが、09年にこれを廃止。今年4月には国内航空券の手数料も半分に減らした。
00年に約2万の旅行会社があった米国。01年の航空会社による手数料廃止を機に淘汰が進み、廃業は約1万3000社に及んだ。日本の旅行会社数は昨年4月時点で1万400強。02年に比べると約6%減ったとはいえ過剰感は強く、「米国は日本の近未来の姿」(JTBの田川博己社長)というのが業界共通の見方だ。
仲介業の旅行代理店は利益率が低いうえに、ここ数年は航空の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)の高騰や新型インフルエンザが重なった。JTBは10年3月期まで2期連続、近畿日本ツーリスト、日本旅行は09年12月期まで3期連続の最終赤字だ。中小・中堅の淘汰だけでなく、大手の再編も現実味を帯びる。
少人数型で打開
厳しい経営環境を打開しようと試行錯誤も始まっている。少人数のための目的型ツアーがその1つだ。全国農業協同組合連合会グループの農協観光(東京・千代田)では、農作物の収穫などを体験できるツアーの参加者が09年度に約8万6千人と04年度から約6割増加。近ツーは10月中旬のショパン国際ピアノ・コンクール(開催場所ポーランド)を観賞する企画が、発売から2週間で売り切れた。いずれも大量送客型ツアーに依存した体質からの脱却を目指している。
手をこまぬいていては縮小均衡に向かうばかり。旅行ビジネスの変革は待ったなしだ。
大型再編として1955年、近畿日本鉄道の子会社と独立系の日本ツーリストが合併して近畿日本ツーリストが発足した。その近ツーは日本旅行(西日本旅客鉄道グループ)と2001年に合併で合意したが、翌年撤回。大手の合併は親会社の方針や社風の違いから起きにくいとされてきた。
これまでは大企業が中堅の旅行子会社を本業集中などで手放す例が大半。西友とキリンビールはJTB、相模鉄道は近ツー、オーエムシーカード(当時)は日本旅行にそれぞれ売却した。大手では東京急行電鉄グループの東急観光(現トップツアー)が04年、ファンド傘下に入った。
この連載は原克彦、杉垣裕子が担当しました。
中国人誘致に影
「中国人は訪日客の中で大きなウエートを占めるだけに残念だ」。主催した日本旅行業協会の金井耿会長(日本旅行会長)は24日、記者会見で日中問題についてタイミングの悪さを嘆いた。
イベントの最中だったからだけではない。訪日中国人を増やすのは観光立国のシンボル。日本政府は7月に個人観光ビザ(査証)の発給要件を緩和、中国側も中国人の海外旅行の取り扱いを外資に開放する検討を始めた矢先だっただけに、観光業界は水をさされた。
旅行業協会の金井会長は会見の席上、もう1つの悩みを打ち明けた。格安航空会社(LCC)の台頭だ。「コストを切り詰めて低価格を目指すLCCと旅行会社が組むのは難しい」。実際、全日本空輸の伊東信一郎社長は年内に設立するLCCについて「航空券販売をネットに特化する」と明言し、羽田空港に就航するマレーシアのエア・アジアXも旅行会社経由の販売は2割にとどめる。
アジアを舞台に本格化する空の大競争は旅行会社の経営に波及している。国内外の航空各社は国際線の座席の販売強化を目的に航空券の発券手数料としてチケット代の5%を日本の旅行会社に払ってきたが、09年にこれを廃止。今年4月には国内航空券の手数料も半分に減らした。
00年に約2万の旅行会社があった米国。01年の航空会社による手数料廃止を機に淘汰が進み、廃業は約1万3000社に及んだ。日本の旅行会社数は昨年4月時点で1万400強。02年に比べると約6%減ったとはいえ過剰感は強く、「米国は日本の近未来の姿」(JTBの田川博己社長)というのが業界共通の見方だ。
仲介業の旅行代理店は利益率が低いうえに、ここ数年は航空の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)の高騰や新型インフルエンザが重なった。JTBは10年3月期まで2期連続、近畿日本ツーリスト、日本旅行は09年12月期まで3期連続の最終赤字だ。中小・中堅の淘汰だけでなく、大手の再編も現実味を帯びる。
少人数型で打開
厳しい経営環境を打開しようと試行錯誤も始まっている。少人数のための目的型ツアーがその1つだ。全国農業協同組合連合会グループの農協観光(東京・千代田)では、農作物の収穫などを体験できるツアーの参加者が09年度に約8万6千人と04年度から約6割増加。近ツーは10月中旬のショパン国際ピアノ・コンクール(開催場所ポーランド)を観賞する企画が、発売から2週間で売り切れた。いずれも大量送客型ツアーに依存した体質からの脱却を目指している。
手をこまぬいていては縮小均衡に向かうばかり。旅行ビジネスの変革は待ったなしだ。
大型再編として1955年、近畿日本鉄道の子会社と独立系の日本ツーリストが合併して近畿日本ツーリストが発足した。その近ツーは日本旅行(西日本旅客鉄道グループ)と2001年に合併で合意したが、翌年撤回。大手の合併は親会社の方針や社風の違いから起きにくいとされてきた。
これまでは大企業が中堅の旅行子会社を本業集中などで手放す例が大半。西友とキリンビールはJTB、相模鉄道は近ツー、オーエムシーカード(当時)は日本旅行にそれぞれ売却した。大手では東京急行電鉄グループの東急観光(現トップツアー)が04年、ファンド傘下に入った。
この連載は原克彦、杉垣裕子が担当しました。
:2010:09/29/09:24 ++ 民間給与最大の23万円減、昨年406万円、89年水準に。
民間企業に勤める人が2009年の1年間に得た平均給与は約406万円で、前年から23万7千円(5・5%)減少したことが28日、国税庁の民間給与実態統計調査で分かった。1949年に統計を取り始めて以来、減少率と下落額は最大を記録。これまで前年比で最大だった08年の下落幅7万6千円(1・7%)を大きく上回った。
平均給与は89年の402万4千円と同水準。給与がピークだった97年の467万3千円から61万4千円下がった。
日本総研の山田久主席研究員は「『団塊の世代』の大量退職の影響もあるが、08年秋のリーマン・ショックを受け、製造業を中心に業績悪化に陥った企業が、正社員の雇用を守るために翌年の給料や賞与を大きく減らしたことが影響した」と分析している。
調査は、国税庁が抽出した民間企業約2万社で働くパートや派遣労働者を含む約28万2千人の給与から推計した。
内訳は「給料・手当」が前年比15万3千円(4・2%)減の350万円、企業業績の影響を受けやすい「賞与」は8万5千円(13・2%)減の56万円。「給料・手当」の減少率、下落額ともに過去最大だった。
業種別の平均給与は「電気・ガス・熱供給・水道業」が630万円でトップ、「金融業・保険業」が625万円と続いたが、いずれも前年比では減少。最も減少率が大きかったのは「製造業」で10・3%減の444万円。「不動産業・物品賃貸業」のみ389万円で3・2%増加した。
民間企業に09年1年間勤務した給与所得者は4506万人で、前年より82万人(1・8%)減と過去最大の落ち込み。男性が2719万人、女性は1786万人で、いずれも前年比で減少した。
給与額の人数分布を見ると、「300万円以下」の割合は前年の39・7%から42・0%へ、「300万円超500万円以下」も30・6%から31・8%へ増加。
一方、「500万円超1000万円以下」は24・7%から22・4%へ、「1000万円超」も4・9%から3・9%に減少した。
平均給与は89年の402万4千円と同水準。給与がピークだった97年の467万3千円から61万4千円下がった。
日本総研の山田久主席研究員は「『団塊の世代』の大量退職の影響もあるが、08年秋のリーマン・ショックを受け、製造業を中心に業績悪化に陥った企業が、正社員の雇用を守るために翌年の給料や賞与を大きく減らしたことが影響した」と分析している。
調査は、国税庁が抽出した民間企業約2万社で働くパートや派遣労働者を含む約28万2千人の給与から推計した。
内訳は「給料・手当」が前年比15万3千円(4・2%)減の350万円、企業業績の影響を受けやすい「賞与」は8万5千円(13・2%)減の56万円。「給料・手当」の減少率、下落額ともに過去最大だった。
業種別の平均給与は「電気・ガス・熱供給・水道業」が630万円でトップ、「金融業・保険業」が625万円と続いたが、いずれも前年比では減少。最も減少率が大きかったのは「製造業」で10・3%減の444万円。「不動産業・物品賃貸業」のみ389万円で3・2%増加した。
民間企業に09年1年間勤務した給与所得者は4506万人で、前年より82万人(1・8%)減と過去最大の落ち込み。男性が2719万人、女性は1786万人で、いずれも前年比で減少した。
給与額の人数分布を見ると、「300万円以下」の割合は前年の39・7%から42・0%へ、「300万円超500万円以下」も30・6%から31・8%へ増加。
一方、「500万円超1000万円以下」は24・7%から22・4%へ、「1000万円超」も4・9%から3・9%に減少した。
:2010:09/29/09:20 ++ 北朝鮮、ジョンウン氏「大将」に、一族主導で体制固め、日本に不安要素増す。
【ソウル=山口真典】北朝鮮の金正日総書記は三男ジョンウン氏(27)の朝鮮人民軍「大将」への起用を命令、“ポスト金正日”の体制固め加速を内外に印象づけた。世襲のため核問題などで挑発する基本姿勢は変わらないとみられるうえ、ジョンウン氏の基盤が弱いため不測の事態も懸念される。中国が対日強硬姿勢を強めるなかで北朝鮮では権力承継が本格化し、日本にとって不安定な状況が続きそうだ。
(1面参照)
「代を継いで不世出の軍事優先霊将を高く奉じた我が党(労働党)は、迎える未来も燦然(さんぜん)としている」。28日付の労働党機関紙「労働新聞」は世襲の正統性を力説した。
■妹夫婦が党・軍で後見 総書記が命じた軍人事からは、一族と側近で中枢を固め、ジョンウン氏を後見する体制を固めようという思惑が浮かぶ。ソウル外交筋によると大将となった総書記の妹、金慶喜(キム・ギョンヒ)氏は総書記が2008年夏に倒れた時、「ただ一人いつでも病室に入れた」存在だった。
金慶喜氏の夫、張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長と親しい党官僚の崔竜海(チェ・リョンヘ)前党黄海北道責任書記も大将に昇格させた。失脚していた朴奉珠(パク・ボンジュ)元首相も「金慶喜氏の直訴」(ある脱北者)で復権。総書記の妹夫婦の「側近」が続々と中枢入りしている。
■経済再建も焦点 ただ権力の世襲を完了するには、いくつかの大きなハードルがある。1つは経済再建だ。総書記は後継者にふさわしいジョンウン氏の業績を作るため、デノミ(通貨呼称単位の変更)などを進めたが成果はない。20代のジョンウン氏の党・軍の足場の弱さも無視できない。
「ジョンウン氏が『こんな状況で後継決定は困る』とごねた」(北朝鮮に詳しい関係筋)との情報もある。このため、親族や側近による手厚い後見体制を整える時間がかかり「9月上旬」としていた党代表者会が延期されたとの見方も浮かぶ。
■対外政策は変化なし 総書記は自らの再任で権力を手放さない方針を示しており、対外政策では「対話と挑発」を織り交ぜる現路線に変化はないもよう。「故金日成主席の生誕100年を迎える12年までに経済を再建する」という命題を実現するため、対話路線に傾斜するとの観測もある。日本の経済力に期待し拉致問題などと引き換えに「首相訪朝要請」といった揺さぶりを掛けてくることも想定される。
前原誠司外相は28日、「核、ミサイル、拉致が解決されなければ日朝平壌宣言に基づく国交正常化の前提は整わない」とくぎを刺した。今後、経済再建の失敗や、健康不安説がくすぶる総書記の突然の死などで混乱が起き、対外的な強硬姿勢を強める可能性もある。
(1面参照)
「代を継いで不世出の軍事優先霊将を高く奉じた我が党(労働党)は、迎える未来も燦然(さんぜん)としている」。28日付の労働党機関紙「労働新聞」は世襲の正統性を力説した。
■妹夫婦が党・軍で後見 総書記が命じた軍人事からは、一族と側近で中枢を固め、ジョンウン氏を後見する体制を固めようという思惑が浮かぶ。ソウル外交筋によると大将となった総書記の妹、金慶喜(キム・ギョンヒ)氏は総書記が2008年夏に倒れた時、「ただ一人いつでも病室に入れた」存在だった。
金慶喜氏の夫、張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長と親しい党官僚の崔竜海(チェ・リョンヘ)前党黄海北道責任書記も大将に昇格させた。失脚していた朴奉珠(パク・ボンジュ)元首相も「金慶喜氏の直訴」(ある脱北者)で復権。総書記の妹夫婦の「側近」が続々と中枢入りしている。
■経済再建も焦点 ただ権力の世襲を完了するには、いくつかの大きなハードルがある。1つは経済再建だ。総書記は後継者にふさわしいジョンウン氏の業績を作るため、デノミ(通貨呼称単位の変更)などを進めたが成果はない。20代のジョンウン氏の党・軍の足場の弱さも無視できない。
「ジョンウン氏が『こんな状況で後継決定は困る』とごねた」(北朝鮮に詳しい関係筋)との情報もある。このため、親族や側近による手厚い後見体制を整える時間がかかり「9月上旬」としていた党代表者会が延期されたとの見方も浮かぶ。
■対外政策は変化なし 総書記は自らの再任で権力を手放さない方針を示しており、対外政策では「対話と挑発」を織り交ぜる現路線に変化はないもよう。「故金日成主席の生誕100年を迎える12年までに経済を再建する」という命題を実現するため、対話路線に傾斜するとの観測もある。日本の経済力に期待し拉致問題などと引き換えに「首相訪朝要請」といった揺さぶりを掛けてくることも想定される。
前原誠司外相は28日、「核、ミサイル、拉致が解決されなければ日朝平壌宣言に基づく国交正常化の前提は整わない」とくぎを刺した。今後、経済再建の失敗や、健康不安説がくすぶる総書記の突然の死などで混乱が起き、対外的な強硬姿勢を強める可能性もある。
:2010:09/29/09:15 ++ 日本との結束優先、米国防次官補会見、中国をけん制(解説)
グレグソン米国防次官補が米軍普天間基地の年内決着にこだわらない考えを示したのは、尖閣諸島沖の衝突事件で日中の対立が深まるなか、日米同盟の結束を優先するためだ。台頭する中国への懸念が米国の柔軟姿勢を引き出したともいえるが、普天間問題の決着に見通しがついたわけではない。(1面参照)
「日本の対応を全面的に支持する」。グレグソン氏は衝突事件について、こう繰り返した。漁船の船長が釈放された後も強硬姿勢を崩さない中国側をけん制する狙いだ。
米政府は今回の事件が偶発的に起きたとはみていない。「中台関係が改善しているにもかかわらず、中国が軍拡を続けている」(グレグソン氏)ことが、一因と受け止めている。
衝突事件での中国の主張を認めれば、アジア海域で中国軍の攻勢が強まりかねないとの懸念もある。普天間問題の年内決着を追求し、同盟の亀裂を深めるのは得策ではないと判断したようだ。
アフガニスタン問題などで消耗する米国は、いま、中国との深刻な対立は招きたくないとの思いもある。グレグソン氏は、尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象かどうかについて「尖閣諸島は1972年に沖縄県と一緒に日本に復帰した」と答えるにとどめた。クリントン米国務長官は23日の日米外相会談で、同諸島が安保条約の対象になると言明した。今回は発言が直接、表に出るインタビューだったことから、グレグソン氏はより慎重な言い回しになったとみられる。
普天間問題も楽観できない。米国は来年初めを最終決着の期限にする意向とみられるが、沖縄知事選を経て、菅政権が地元の理解を得られるかどうか。その道筋はまったく見えてこない。
「日本の対応を全面的に支持する」。グレグソン氏は衝突事件について、こう繰り返した。漁船の船長が釈放された後も強硬姿勢を崩さない中国側をけん制する狙いだ。
米政府は今回の事件が偶発的に起きたとはみていない。「中台関係が改善しているにもかかわらず、中国が軍拡を続けている」(グレグソン氏)ことが、一因と受け止めている。
衝突事件での中国の主張を認めれば、アジア海域で中国軍の攻勢が強まりかねないとの懸念もある。普天間問題の年内決着を追求し、同盟の亀裂を深めるのは得策ではないと判断したようだ。
アフガニスタン問題などで消耗する米国は、いま、中国との深刻な対立は招きたくないとの思いもある。グレグソン氏は、尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象かどうかについて「尖閣諸島は1972年に沖縄県と一緒に日本に復帰した」と答えるにとどめた。クリントン米国務長官は23日の日米外相会談で、同諸島が安保条約の対象になると言明した。今回は発言が直接、表に出るインタビューだったことから、グレグソン氏はより慎重な言い回しになったとみられる。
普天間問題も楽観できない。米国は来年初めを最終決着の期限にする意向とみられるが、沖縄知事選を経て、菅政権が地元の理解を得られるかどうか。その道筋はまったく見えてこない。
:2010:09/29/09:06 ++ 米・豪州・カザフなど、レアアース生産拡大、中国依存脱却へ動く
【ワシントン=大隅隆】レアアース(希土類)生産で9割以上のシェアを持つ中国が輸出管理を強化していることを受け、他の埋蔵国が相次いで生産拡大に乗り出す。米国企業が休止していた鉱山での採掘を再開するほか、来年生産を始めるオーストラリア企業は能力倍増する。カザフスタンでは住友商事が参加してレアアースを回収する事業に着手する。自動車や軍事など最先端技術を支えるだけに、中国依存から脱却する動きが世界的に広がってきた。
米国は世界有数のマウンテン・パス鉱山(カリフォルニア州)で採掘・生産を本格的に再開する。同鉱山を傘下に持つモリコープ社のスミス最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞に「採掘は来年から再開し、2012年末までに年2万トンを生産する」と述べた。
生産するのはセリウムやランタン、ネオジムなどハイブリッド車や光学レンズ生産に不可欠な9種類のレアアース。レアアースの09年の世界生産量は約12万4000トン。同鉱山が2万トンを生産すれば一定の需給緩和効果が期待できる。
豪鉱山企業ライナス社は11年後半から西オーストラリア州で初めてレアアースを生産する。年1万1000トン生産する計画だったが、このほど2億豪ドル(約160億円)を投じ、12年末からは生産量を2万2000トンに倍増する方針を決めた。
日本企業も調達先の多様化を急ぐ。中央アジアのカザフスタンでは住友商事が6月に国営原子力会社と合弁企業を設立し、ウラン採掘後の残存物からレアアースを回収する新事業に参入。12年にフル稼働し年3000トンを生産する。東芝も同様の事業をカザフで計画しており、年内にも合弁会社を設立する。
先端技術に欠かせないレアアースの安定調達は安全保障の面からも国家的な課題だ。特に尖閣諸島沖での衝突事件を契機に中国から日本向けの輸出が滞っていることで危機感は高まっている。
日本政府は海外の権益確保、リサイクル推進、代替材料開発、国家備蓄を柱とした「レアメタル確保戦略」を打ち出し、具体化に動いている。中国依存を避けるため、カザフスタンなどと外交交渉を進め、日本企業の権益確保を支援していく考え。米政府も27日、国内のレアアース生産を支援することなどを視野に入れた新戦略を年内に打ち出すと明らかにした。
▼レアアース 17種類の異なる元素の総称。かつては米国などでも生産していたが、人件費増や環境汚染などの懸念が台頭。埋蔵量で世界の約3分の1の中国が安値攻勢を掛け、ほぼ全量を生産する構造になっている。旧ソ連諸国や米国などの埋蔵量は多い。
米国は世界有数のマウンテン・パス鉱山(カリフォルニア州)で採掘・生産を本格的に再開する。同鉱山を傘下に持つモリコープ社のスミス最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞に「採掘は来年から再開し、2012年末までに年2万トンを生産する」と述べた。
生産するのはセリウムやランタン、ネオジムなどハイブリッド車や光学レンズ生産に不可欠な9種類のレアアース。レアアースの09年の世界生産量は約12万4000トン。同鉱山が2万トンを生産すれば一定の需給緩和効果が期待できる。
豪鉱山企業ライナス社は11年後半から西オーストラリア州で初めてレアアースを生産する。年1万1000トン生産する計画だったが、このほど2億豪ドル(約160億円)を投じ、12年末からは生産量を2万2000トンに倍増する方針を決めた。
日本企業も調達先の多様化を急ぐ。中央アジアのカザフスタンでは住友商事が6月に国営原子力会社と合弁企業を設立し、ウラン採掘後の残存物からレアアースを回収する新事業に参入。12年にフル稼働し年3000トンを生産する。東芝も同様の事業をカザフで計画しており、年内にも合弁会社を設立する。
先端技術に欠かせないレアアースの安定調達は安全保障の面からも国家的な課題だ。特に尖閣諸島沖での衝突事件を契機に中国から日本向けの輸出が滞っていることで危機感は高まっている。
日本政府は海外の権益確保、リサイクル推進、代替材料開発、国家備蓄を柱とした「レアメタル確保戦略」を打ち出し、具体化に動いている。中国依存を避けるため、カザフスタンなどと外交交渉を進め、日本企業の権益確保を支援していく考え。米政府も27日、国内のレアアース生産を支援することなどを視野に入れた新戦略を年内に打ち出すと明らかにした。
▼レアアース 17種類の異なる元素の総称。かつては米国などでも生産していたが、人件費増や環境汚染などの懸念が台頭。埋蔵量で世界の約3分の1の中国が安値攻勢を掛け、ほぼ全量を生産する構造になっている。旧ソ連諸国や米国などの埋蔵量は多い。
:2010:09/28/10:18 ++ 【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 五星紅旗が翻る尖閣を見たいか
菅直人首相は、尖閣諸島侵犯の中国人船長を中国の理不尽で無礼な恫喝(どうかつ)に屈して釈放、日本人を辱め、国威を失墜した。中国皇帝の足下に跪(ひざまず)く朝貢国使節のようで、小沢一郎元幹事長の朝貢団体旅行同様、許し難い。しかも、その突然の決定と発表は那覇地検次席検事によって行われ、仙谷由人官房長官は「捜査に当たっている那覇検察庁の独自の判断によって決定し、政府はこれを了とした」由。訪米中の菅首相も、所管大臣の前原誠司外相も柳田稔法相も官房長官も決定には関与していない、と記者会見で平然として述べた。
≪地検任せは政治主導の自殺≫
あれだけ政治主導を高々と掲げて官僚を批判、官僚から国会答弁権も記者会見権も奪った民主党内閣が一体、どういうことか。大阪地検特捜部主任検事、前田恒彦容疑者の証拠改竄(かいざん)事件という信じ難い暗黒司法で国民の信頼を裏切ったばかりの検察庁に、国民の安危にかかわる国家危機管理を押し付けるなどまさに政治主導の自殺行為で国民を愚弄(ぐろう)するものだ。
国家行政組織法の役割分担をどう読んでも、それは「那覇地検」の検事正でもない次席検事ごとき中級官僚の任務ではない。それは首相以下関係閣僚の職務放棄、「敵前逃亡」であり、那覇地検次席検事の小さな背中に検事総長も含む大勢の高官が折り重なり、ひしめき合って隠れようとしている、政治風刺漫画の題材である。
恥ずべき決定は、暗黒検事を出した検事総長以下上層部の保身、生き残りのための親中派内閣への阿諛(あゆ)迎合も加わってのことか。昔懐かしい「巨悪を眠らせない」(故伊藤栄樹検事総長)と誓った検察庁だったら、「船長釈放は政治が決め、政治の責任で発表しろ」と峻拒(しゅんきょ)したはずだから…。
≪「安保適用」の金星も無駄に≫
この日朝、前原外相は、ニューヨークでヒラリー・クリントン米国務長官から「日米安保条約第5条は尖閣諸島にも適用される」との確約を得る“金星”をあげていた。尖閣が日中の争点になりキナ臭い情勢下、日本外交の成果だ。昔、ビル・クリントン大統領時代のモンデール駐日米大使(元副大統領)の「適用されない」という大失言があった。今でも、それは未解決の重大課題で、オバマ大統領もクリントン長官も対中配慮で明言を避け、鳩山由紀夫前首相は全国知事会議席上で石原慎太郎都知事に追及され、「領有権については中国と協議」「第5条の適用についてはアメリカに聞いてみる」と重大失言をし、中国側に間違ったメッセージを送っていた。
続くオバマ・菅会談でも暗黙の了解を得た。筆者は「これを後ろ盾に菅首相は対中強硬姿勢を貫くもの」と思い、拍手しかかっていたが、午後に舞台は暗転、同次席検事が「日本国民への影響と日中関係を考えて」中国人船長を釈放すると発表、落胆し激怒した。
菅首相、仙谷官房長官は政治家失格だ。中国のアジア戦略、海洋覇権国への強い願望、13億人のための資源獲得努力、特に島を領有して漁業資源や海底油田などの資源を得ようとする民族のパワープロジェクション(力の投射)が目に入らないのだろうか。その担い手たる数億人は、江沢民前国家主席時代の教育で反日感情を刷り込まれたインターネット世代で、胡錦濤現国家主席の政権もその負の遺産に困り果てている。
≪志願制で島に自衛隊駐留を≫
尖閣諸島騒動は一過性のものではなく、東シナ海、日本海への中国の脅威は今後、ますます増大すること必至だ。日本海は決して「友愛の海」などではない。
その証拠に、事態沈静化を期待し、那覇地検のせいにして船長を釈放したのに、中国はくみしやすしと見て謝罪と損害賠償を求めてきたではないか。孫の代に日本が中国の属国にされないよう、国家危機管理の諸方策を提言する。
一、温家宝首相声明に応え、菅首相が(1)尖閣諸島は日本固有の領土(2)再発防止努力をせよ、再発すれば、また検挙(3)謝罪と損害賠償は拒否(4)武器の相互不使用-との声明を出す。漁船体当たりビデオは公表する(親書は効果なし)
二、(執拗(しつよう)な船長釈放要求との相互主義で)駐日中国大使を呼びつけ(午前零時でなくてもよいが)、不当逮捕されたフジタ社員の即時釈放と、会議延期、官民交流禁止、レアアース輸出禁止など全報復措置の即時解除を求める
三、現在無人の(かつてかつお節工場もあり住民もいた)魚釣島(個人所有)を国有化、埠頭(ふとう)、ヘリポート、灯台などの諸施設を建設、志願制で自衛隊、灯台守、気象観測士などに給与倍額の僻地(へきち)手当、危険手当を支給し、3カ月交代などで駐留させ実効支配を行う。プレゼンスが主権の最大の証明で、急がないと中国人民解放軍兵士が漁民を装って上陸、五星紅旗を立てかねない情勢だ
四、海上自衛隊のイージス艦を含む一個護衛隊群を、「演習」として近隣海域に定期的に派遣し、海上保安庁を後方支援する。中国は今や、東シナ海をも「核心的利益」を有する地域にしようとしていることを銘記すべきだ。(さっさ あつゆき)
≪地検任せは政治主導の自殺≫
あれだけ政治主導を高々と掲げて官僚を批判、官僚から国会答弁権も記者会見権も奪った民主党内閣が一体、どういうことか。大阪地検特捜部主任検事、前田恒彦容疑者の証拠改竄(かいざん)事件という信じ難い暗黒司法で国民の信頼を裏切ったばかりの検察庁に、国民の安危にかかわる国家危機管理を押し付けるなどまさに政治主導の自殺行為で国民を愚弄(ぐろう)するものだ。
国家行政組織法の役割分担をどう読んでも、それは「那覇地検」の検事正でもない次席検事ごとき中級官僚の任務ではない。それは首相以下関係閣僚の職務放棄、「敵前逃亡」であり、那覇地検次席検事の小さな背中に検事総長も含む大勢の高官が折り重なり、ひしめき合って隠れようとしている、政治風刺漫画の題材である。
恥ずべき決定は、暗黒検事を出した検事総長以下上層部の保身、生き残りのための親中派内閣への阿諛(あゆ)迎合も加わってのことか。昔懐かしい「巨悪を眠らせない」(故伊藤栄樹検事総長)と誓った検察庁だったら、「船長釈放は政治が決め、政治の責任で発表しろ」と峻拒(しゅんきょ)したはずだから…。
≪「安保適用」の金星も無駄に≫
この日朝、前原外相は、ニューヨークでヒラリー・クリントン米国務長官から「日米安保条約第5条は尖閣諸島にも適用される」との確約を得る“金星”をあげていた。尖閣が日中の争点になりキナ臭い情勢下、日本外交の成果だ。昔、ビル・クリントン大統領時代のモンデール駐日米大使(元副大統領)の「適用されない」という大失言があった。今でも、それは未解決の重大課題で、オバマ大統領もクリントン長官も対中配慮で明言を避け、鳩山由紀夫前首相は全国知事会議席上で石原慎太郎都知事に追及され、「領有権については中国と協議」「第5条の適用についてはアメリカに聞いてみる」と重大失言をし、中国側に間違ったメッセージを送っていた。
続くオバマ・菅会談でも暗黙の了解を得た。筆者は「これを後ろ盾に菅首相は対中強硬姿勢を貫くもの」と思い、拍手しかかっていたが、午後に舞台は暗転、同次席検事が「日本国民への影響と日中関係を考えて」中国人船長を釈放すると発表、落胆し激怒した。
菅首相、仙谷官房長官は政治家失格だ。中国のアジア戦略、海洋覇権国への強い願望、13億人のための資源獲得努力、特に島を領有して漁業資源や海底油田などの資源を得ようとする民族のパワープロジェクション(力の投射)が目に入らないのだろうか。その担い手たる数億人は、江沢民前国家主席時代の教育で反日感情を刷り込まれたインターネット世代で、胡錦濤現国家主席の政権もその負の遺産に困り果てている。
≪志願制で島に自衛隊駐留を≫
尖閣諸島騒動は一過性のものではなく、東シナ海、日本海への中国の脅威は今後、ますます増大すること必至だ。日本海は決して「友愛の海」などではない。
その証拠に、事態沈静化を期待し、那覇地検のせいにして船長を釈放したのに、中国はくみしやすしと見て謝罪と損害賠償を求めてきたではないか。孫の代に日本が中国の属国にされないよう、国家危機管理の諸方策を提言する。
一、温家宝首相声明に応え、菅首相が(1)尖閣諸島は日本固有の領土(2)再発防止努力をせよ、再発すれば、また検挙(3)謝罪と損害賠償は拒否(4)武器の相互不使用-との声明を出す。漁船体当たりビデオは公表する(親書は効果なし)
二、(執拗(しつよう)な船長釈放要求との相互主義で)駐日中国大使を呼びつけ(午前零時でなくてもよいが)、不当逮捕されたフジタ社員の即時釈放と、会議延期、官民交流禁止、レアアース輸出禁止など全報復措置の即時解除を求める
三、現在無人の(かつてかつお節工場もあり住民もいた)魚釣島(個人所有)を国有化、埠頭(ふとう)、ヘリポート、灯台などの諸施設を建設、志願制で自衛隊、灯台守、気象観測士などに給与倍額の僻地(へきち)手当、危険手当を支給し、3カ月交代などで駐留させ実効支配を行う。プレゼンスが主権の最大の証明で、急がないと中国人民解放軍兵士が漁民を装って上陸、五星紅旗を立てかねない情勢だ
四、海上自衛隊のイージス艦を含む一個護衛隊群を、「演習」として近隣海域に定期的に派遣し、海上保安庁を後方支援する。中国は今や、東シナ海をも「核心的利益」を有する地域にしようとしていることを銘記すべきだ。(さっさ あつゆき)
:2010:09/28/09:04 ++ 対中外交の巻き返しには何が必要か(社説)
中国政府が尖閣諸島沖の衝突事件で、日本政府の謝罪と賠償を求めている。これに対し、菅直人首相は「全く応じるつもりはない」と拒否した。当然の反応だ。
そもそも、今回の事件は尖閣諸島沖の日本領海に入ってきた中国漁船に対し、海上保安庁の巡視船が退去を促そうとして起きた。
仙谷由人官房長官は衝突で破損した巡視船を原状回復する費用について、外交ルートを通じて中国側に請求する意向も示している。妥当な主張といえる。
だが、日本に謝罪要求を突きつけたばかりの中国側が、直ちに歩み寄る兆しはない。日本から譲歩を引き出そうと、さらに圧力を強める可能性も否定できまい。
菅政権が尖閣諸島における日本の主権を守り、対中外交の巻き返しを図るにはどうすればよいのか。その答えを見つけるには中国がなぜ、ここまで日本に強気に出られるのか、その原因を分析することが先決だ。
ひとつの原因は、鳩山前政権が未熟な外交で日米同盟を傷つけたことにある。鳩山由紀夫前首相は当初、在日米軍による抑止力の意味すら知らなかった。この現実をみて、中国が「日本はくみしやすい」と思ったとしても不思議ではない。
第二に、中国は海軍力の急速な増強によって、アジアの海洋権益をめぐり、自国の主張を押し通せるという自信を強めている。すでに南シナ海の南沙諸島問題では顕著だが、尖閣諸島への対応もその表れだろう。
だとすれば、菅政権がやるべきことは明確だ。まず、尖閣諸島も含めた日本の防衛のあり方についてもっと真剣に検討し、米側との連携を深める必要がある。
もう一つは、中国軍の海洋進出への懸念を共有する東南アジア諸国や、韓国、インドと協力し、多国間で中国に自制を求める構図を築くことだ。菅首相は来月以降の一連の国際会議で、そうした首脳外交を展開してほしい。
こうした外交は国内世論の強い支持がなければ長続きしない。その意味でも、先週、突然船長が釈放された詳しい経緯を明らかにしてもらいたい。検察独自の判断であり、政治介入はなかったという政府の釈明には説得力がない。菅政権はこの点をきちんと説明する責任がある。
中国の台頭が生み出すさまざまな変化に対応するには、日本単独ではなく、国際社会と連携していかなければ難しい。今回の事件をめぐる日中対立は、まさにこんな現実を突きつけている。
そもそも、今回の事件は尖閣諸島沖の日本領海に入ってきた中国漁船に対し、海上保安庁の巡視船が退去を促そうとして起きた。
仙谷由人官房長官は衝突で破損した巡視船を原状回復する費用について、外交ルートを通じて中国側に請求する意向も示している。妥当な主張といえる。
だが、日本に謝罪要求を突きつけたばかりの中国側が、直ちに歩み寄る兆しはない。日本から譲歩を引き出そうと、さらに圧力を強める可能性も否定できまい。
菅政権が尖閣諸島における日本の主権を守り、対中外交の巻き返しを図るにはどうすればよいのか。その答えを見つけるには中国がなぜ、ここまで日本に強気に出られるのか、その原因を分析することが先決だ。
ひとつの原因は、鳩山前政権が未熟な外交で日米同盟を傷つけたことにある。鳩山由紀夫前首相は当初、在日米軍による抑止力の意味すら知らなかった。この現実をみて、中国が「日本はくみしやすい」と思ったとしても不思議ではない。
第二に、中国は海軍力の急速な増強によって、アジアの海洋権益をめぐり、自国の主張を押し通せるという自信を強めている。すでに南シナ海の南沙諸島問題では顕著だが、尖閣諸島への対応もその表れだろう。
だとすれば、菅政権がやるべきことは明確だ。まず、尖閣諸島も含めた日本の防衛のあり方についてもっと真剣に検討し、米側との連携を深める必要がある。
もう一つは、中国軍の海洋進出への懸念を共有する東南アジア諸国や、韓国、インドと協力し、多国間で中国に自制を求める構図を築くことだ。菅首相は来月以降の一連の国際会議で、そうした首脳外交を展開してほしい。
こうした外交は国内世論の強い支持がなければ長続きしない。その意味でも、先週、突然船長が釈放された詳しい経緯を明らかにしてもらいたい。検察独自の判断であり、政治介入はなかったという政府の釈明には説得力がない。菅政権はこの点をきちんと説明する責任がある。
中国の台頭が生み出すさまざまな変化に対応するには、日本単独ではなく、国際社会と連携していかなければ難しい。今回の事件をめぐる日中対立は、まさにこんな現実を突きつけている。
:2010:09/28/09:01 ++ 景気足踏み正念場の日本経済(1)円高が奪う企業の体力、生産・雇用、海外に流れる
「不況といってもいい」。エルピーダメモリの坂本幸雄社長は頭を抱える。汎用メモリー(DRAM)の9月前半の価格は、直近の高値をつけた5月から2割下落した。米欧のパソコン需要が弱く、値下がりに歯止めがかからない。
輸出・生産鈍る
「需要回復のテンポが緩んでいる」。石油化学工業協会の高橋恭平会長(昭和電工社長)は警戒感を強める。8月は食品包装材などに使う低密度ポリエチレンの輸出量が、前年同月に比べて1割減った。中国の買い控えが響いたという。
企業部門の改善にブレーキがかかり始めた。世界経済の減速が輸出や生産を鈍らせる。日本が景気回復局面に移行してから1年半。その重要なエンジンが変調をきたしつつある。
「10月の国内販売台数が9月より2~3割落ちてもおかしくはない」。日産自動車の田川丈二執行役員はこう話す。7日のエコカー補助金終了前に膨らんだ駆け込み需要の反動減も、自動車メーカーには重い。
深刻なのは円高の影響だ。製造業の2010年度下期の平均想定為替レートは1ドル=90円50銭。日本総合研究所の試算によると、85円で推移すれば営業利益を約1割押し下げる。
液晶パネルで韓国サムスン電子と競合するシャープ。片山幹雄社長は「円高・アジア通貨安が問題だ」と訴える。韓国ウォンの対円相場は金融危機前の最高値から45%下落した。液晶パネルは年率2割のペースで値下がりするだけに、輸出価格の上昇が日本企業の致命傷になりかねない。
8月の産業用大口電力需要は前年同月比12%増で、9カ月連続のプラスとなった。だが設備投資に連動する契約電力は減少が続く。東京電力は「円高もあって増産投資に動けない企業が多い」と分析する。
10年度の平均円相場は現時点で90円。史上最高値(79円75銭)をつけた1995年度の96円よりも高い。企業の円高耐久力が増しているのは確かだが、今回の方が厳しい消耗戦を強いられるとの声も出ている。
円高は中長期的にも日本経済に打撃を与える。経済産業省が8月に実施した緊急調査によると、85円の水準が続けば「生産工場や開発拠点を海外に移転する」と答えた製造業が4割に達した。行き着くところは生産と雇用の空洞化だ。
コスト削減限界
「現地生産を進める」。スズキの鈴木修会長兼社長の視線はインドに向かう。ハリヤナ州マネサールの第2工場が稼働する12年には、インドの年産能力が日本を抜く。第3工場が動き出す13年には、最大170万台の生産体制が整う。
不二サッシはビル用サッシの生産を海外に移管する。千葉工場(千葉県市原市)の規模を縮小し、マレーシア工場に受注の一部を回す計画だ。吉本直史社長は「国内ではコストの削減に限界がある」と語る。
高い法人税、厳しい規制、動かぬ政策……。日本で事業を展開する企業のコストやリスクは高い。「ここに急速な円高が加われば、臨界点を超えた企業の海外移転が加速する」と野村証券の木内登英氏は言う。
「個別テーマについても対話をお願いします」。21日、東京・大手町。日本経団連の中村芳夫副会長・事務総長は、就任のあいさつに訪れた民主党の岡田克也幹事長に頭を下げた。地球温暖化対策などで企業に余分な負担をかけないでほしい――。中村副会長の真意はそこにあった。
6年半ぶりの為替介入で、円高の進行にはひとまず歯止めがかかった。しかしビジネス環境の劣化が止まったわけではない。企業は国の対応を待たず、自力で海外に向かい始めた。国内の生産や雇用を守る成長戦略を急がなければ、日本経済は立ち行かなくなる。
◇
景気回復の勢いが鈍ってきた。円高・株安や世界経済の減速、国内の政策効果の息切れが背景にある。足踏み状態を迎える日本経済の実力を点検する。
輸出・生産鈍る
「需要回復のテンポが緩んでいる」。石油化学工業協会の高橋恭平会長(昭和電工社長)は警戒感を強める。8月は食品包装材などに使う低密度ポリエチレンの輸出量が、前年同月に比べて1割減った。中国の買い控えが響いたという。
企業部門の改善にブレーキがかかり始めた。世界経済の減速が輸出や生産を鈍らせる。日本が景気回復局面に移行してから1年半。その重要なエンジンが変調をきたしつつある。
「10月の国内販売台数が9月より2~3割落ちてもおかしくはない」。日産自動車の田川丈二執行役員はこう話す。7日のエコカー補助金終了前に膨らんだ駆け込み需要の反動減も、自動車メーカーには重い。
深刻なのは円高の影響だ。製造業の2010年度下期の平均想定為替レートは1ドル=90円50銭。日本総合研究所の試算によると、85円で推移すれば営業利益を約1割押し下げる。
液晶パネルで韓国サムスン電子と競合するシャープ。片山幹雄社長は「円高・アジア通貨安が問題だ」と訴える。韓国ウォンの対円相場は金融危機前の最高値から45%下落した。液晶パネルは年率2割のペースで値下がりするだけに、輸出価格の上昇が日本企業の致命傷になりかねない。
8月の産業用大口電力需要は前年同月比12%増で、9カ月連続のプラスとなった。だが設備投資に連動する契約電力は減少が続く。東京電力は「円高もあって増産投資に動けない企業が多い」と分析する。
10年度の平均円相場は現時点で90円。史上最高値(79円75銭)をつけた1995年度の96円よりも高い。企業の円高耐久力が増しているのは確かだが、今回の方が厳しい消耗戦を強いられるとの声も出ている。
円高は中長期的にも日本経済に打撃を与える。経済産業省が8月に実施した緊急調査によると、85円の水準が続けば「生産工場や開発拠点を海外に移転する」と答えた製造業が4割に達した。行き着くところは生産と雇用の空洞化だ。
コスト削減限界
「現地生産を進める」。スズキの鈴木修会長兼社長の視線はインドに向かう。ハリヤナ州マネサールの第2工場が稼働する12年には、インドの年産能力が日本を抜く。第3工場が動き出す13年には、最大170万台の生産体制が整う。
不二サッシはビル用サッシの生産を海外に移管する。千葉工場(千葉県市原市)の規模を縮小し、マレーシア工場に受注の一部を回す計画だ。吉本直史社長は「国内ではコストの削減に限界がある」と語る。
高い法人税、厳しい規制、動かぬ政策……。日本で事業を展開する企業のコストやリスクは高い。「ここに急速な円高が加われば、臨界点を超えた企業の海外移転が加速する」と野村証券の木内登英氏は言う。
「個別テーマについても対話をお願いします」。21日、東京・大手町。日本経団連の中村芳夫副会長・事務総長は、就任のあいさつに訪れた民主党の岡田克也幹事長に頭を下げた。地球温暖化対策などで企業に余分な負担をかけないでほしい――。中村副会長の真意はそこにあった。
6年半ぶりの為替介入で、円高の進行にはひとまず歯止めがかかった。しかしビジネス環境の劣化が止まったわけではない。企業は国の対応を待たず、自力で海外に向かい始めた。国内の生産や雇用を守る成長戦略を急がなければ、日本経済は立ち行かなくなる。
◇
景気回復の勢いが鈍ってきた。円高・株安や世界経済の減速、国内の政策効果の息切れが背景にある。足踏み状態を迎える日本経済の実力を点検する。
:2010:09/27/09:30 ++ ASEAN新たな成長期(下)「世界の工場」へ名乗り―部品産業集積、再び脚光
【バンコク=高橋徹】東南アジア諸国連合(ASEAN)で、拡大する内需とともに双発の成長エンジンを構成するのは輸出だ。製造業の輸出拠点としてはこのところ、中国などの後じんを拝することも多かったが、分厚い部品産業の集積や進んだインフラ、東アジアを中心とする重層的な自由貿易協定(FTA)網などが評価され、「世界の工場」としての存在感が再び高まりつつある。
タイ中部プラチンブリ県。中国家電最大手、海爾集団(ハイアール)の工場で「グローバル・トップ・マウント」(世界最高峰)と銘打ったプロジェクトが始動した。
年内に日韓の競合他社より5~10%安い高機能冷蔵庫6機種の量産を開始。2011年の生産台数を2割増の130万台に増やす。需要増が見込めるドラム式洗濯機も中国から生産移管する。
日本、中東、インド、そして欧州。8割を占める輸出の仕向け地は全方位で「世界への供給基地の役割を担う」(タイ現地法人のアーナット研究開発部長)。中国国外での売上高比率を現在の5割以下から7割へ引き上げる成長戦略を掲げる同社にとり、タイ拠点はその先兵となる。
米フォード・モーターは150億バーツ(約400億円)を投じ、タイ東部で新工場を建設。12年から主力小型車「フォーカス」を年15万台量産する。ジョー・ヒンリッチス副社長は「生産車の85%はアジア太平洋市場へ輸出する」と話す。
ぼっ興する中印の陰で埋没感が否めなかったASEAN。単年の直接投資受け入れ額は中国に早々に追い越され、09年はインドに追いつかれるなど外資の視線は両大国に注がれてきた。
だが、風向きは変わりつつある。日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると主要6カ国(タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム)の今年1~6月の対内直接投資額(認可または実行ベース)は前年同期比で約5割増。約2割増の中国を伸び率で上回った。
進出企業が凝視するのは域外だ。セイコーエプソンがインドネシアのジャカルタ郊外に持つ輸出専用工場はインクジェットプリンターの世界生産の4割を担うが、12年までに2・2倍の年産1300万台へ増強する。
「従業員を採用しやすく定着率も高い」(同社幹部)。一方、ライバルの中国は沿海部を中心に賃金水準が急上昇し労働争議が頻発。人民元の先高観も輸出拠点としての位置付けに影を落とす。
「外資は中国以外の拠点を模索しているが、一足飛びにインドを選ぶのはハードルが高い」。ジェトロの若松勇・海外調査部アジア大洋州課長は「ASEANの魅力は相対的に高まる」とみる。
過去の蓄積も強みだ。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると09年末の直接投資の累計は6665億ドルと中国の1・4倍、インドの4倍。部品産業の集積や道路などのインフラが高水準なことが外資のASEAN回帰を容易にしている。
英製薬大手グラクソスミスクラインはアジア初のワクチン工場の建設地にシンガポールを選んだ。独化学大手ランクセスも同国に自動車用ゴムの巨大工場を建設中。いずれも中印両国への供給拡大が最大の狙いだ。外資にとってのASEANの戦略的位置づけは、中印と並ぶ一大生産拠点になりつつある。
タイ中部プラチンブリ県。中国家電最大手、海爾集団(ハイアール)の工場で「グローバル・トップ・マウント」(世界最高峰)と銘打ったプロジェクトが始動した。
年内に日韓の競合他社より5~10%安い高機能冷蔵庫6機種の量産を開始。2011年の生産台数を2割増の130万台に増やす。需要増が見込めるドラム式洗濯機も中国から生産移管する。
日本、中東、インド、そして欧州。8割を占める輸出の仕向け地は全方位で「世界への供給基地の役割を担う」(タイ現地法人のアーナット研究開発部長)。中国国外での売上高比率を現在の5割以下から7割へ引き上げる成長戦略を掲げる同社にとり、タイ拠点はその先兵となる。
米フォード・モーターは150億バーツ(約400億円)を投じ、タイ東部で新工場を建設。12年から主力小型車「フォーカス」を年15万台量産する。ジョー・ヒンリッチス副社長は「生産車の85%はアジア太平洋市場へ輸出する」と話す。
ぼっ興する中印の陰で埋没感が否めなかったASEAN。単年の直接投資受け入れ額は中国に早々に追い越され、09年はインドに追いつかれるなど外資の視線は両大国に注がれてきた。
だが、風向きは変わりつつある。日本貿易振興機構(ジェトロ)などによると主要6カ国(タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム)の今年1~6月の対内直接投資額(認可または実行ベース)は前年同期比で約5割増。約2割増の中国を伸び率で上回った。
進出企業が凝視するのは域外だ。セイコーエプソンがインドネシアのジャカルタ郊外に持つ輸出専用工場はインクジェットプリンターの世界生産の4割を担うが、12年までに2・2倍の年産1300万台へ増強する。
「従業員を採用しやすく定着率も高い」(同社幹部)。一方、ライバルの中国は沿海部を中心に賃金水準が急上昇し労働争議が頻発。人民元の先高観も輸出拠点としての位置付けに影を落とす。
「外資は中国以外の拠点を模索しているが、一足飛びにインドを選ぶのはハードルが高い」。ジェトロの若松勇・海外調査部アジア大洋州課長は「ASEANの魅力は相対的に高まる」とみる。
過去の蓄積も強みだ。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると09年末の直接投資の累計は6665億ドルと中国の1・4倍、インドの4倍。部品産業の集積や道路などのインフラが高水準なことが外資のASEAN回帰を容易にしている。
英製薬大手グラクソスミスクラインはアジア初のワクチン工場の建設地にシンガポールを選んだ。独化学大手ランクセスも同国に自動車用ゴムの巨大工場を建設中。いずれも中印両国への供給拡大が最大の狙いだ。外資にとってのASEANの戦略的位置づけは、中印と並ぶ一大生産拠点になりつつある。
:2010:09/27/09:23 ++ 中国、「領土問題」を誇示、反論の応酬で国際社会に周知。
尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡り、日中両政府が互いに自らの「固有の領土」と応酬を繰り広げる展開は、中国にとって尖閣諸島に領有権問題が存在することを誇示できる利点がある。日本政府は「領有権の問題は存在しない」との立場だが、菅直人首相までが直接言及したことで、中国政府は国際社会に領有権問題の存在を周知させる効果を狙うとみられる。
まず領有権問題の存在を認めさせ、2国間の外交交渉で議題に上げる。話し合いの一方で、漁船保護などを名目に海軍などが進出、相手国の実効支配を弱めさせる――。中国の海洋戦略はこんな戦術が基本とされる。
26日付の香港各紙によると、釈放された中国人船長は25日、「釣魚島に行って漁がしたい。(日本政府は)怖くない」と語った。尖閣海域での中国漁船の操業が増え、中国当局の監視強化につながる可能性もある。
中国政府は領土問題で強硬姿勢を崩さない半面、対立収拾も探る。中国共産党の機関紙、人民日報は26日付で、菅首相の24日のニューヨークでの記者会見を「日本首相が一段の日中関係発展を呼び掛け」との見出しで報道。日本への反発を和らげる環境整備とも読める。
まず領有権問題の存在を認めさせ、2国間の外交交渉で議題に上げる。話し合いの一方で、漁船保護などを名目に海軍などが進出、相手国の実効支配を弱めさせる――。中国の海洋戦略はこんな戦術が基本とされる。
26日付の香港各紙によると、釈放された中国人船長は25日、「釣魚島に行って漁がしたい。(日本政府は)怖くない」と語った。尖閣海域での中国漁船の操業が増え、中国当局の監視強化につながる可能性もある。
中国政府は領土問題で強硬姿勢を崩さない半面、対立収拾も探る。中国共産党の機関紙、人民日報は26日付で、菅首相の24日のニューヨークでの記者会見を「日本首相が一段の日中関係発展を呼び掛け」との見出しで報道。日本への反発を和らげる環境整備とも読める。
:2010:09/27/09:15 ++ 対中国、次の一手見えず、省庁、官邸へ不満も、野党は攻勢必至。
尖閣諸島沖での中国漁船と海上保安庁巡視船との衝突事件を巡って、日本政府が次の一手を探りあぐねている。菅直人首相は26日、中国が求める謝罪と賠償に「全く応じるつもりはない」と明言したが、関係修復の糸口は見つからない。関係省庁からは明確な指示をしない首相官邸への不満も漏れる。野党も10月1日召集の臨時国会で厳しく追及しようとしている。(1面参照)
首相は26日夜、首相公邸で仙谷由人官房長官や古川元久官房副長官らと約1時間、協議した。臨時国会の所信表明演説やその後の審議での、日中関係への言及などを話し合ったとみられる。同日夜、米国から帰国した前原誠司外相は外務省で、斎木昭隆アジア大洋州局長らと対応を協議した。
首相発言は「領有権問題は存在しない」という政府の立場を改めて示す内容だ。25日の外務報道官談話と同じだが、中国は同日中に再反論している。首相は「戦略的互恵関係を深めようと温家宝首相や胡錦濤国家主席と話をした。中国側は今も姿勢を変えないと言っている」と語るが、国連総会の機会を利用した温首相との会談は実現せず、事務レベルの折衝もままならない。
拘束されているフジタの日本人社員4人の身柄についても十分な情報がない。政府内では船長の釈放で中国が軟化するとの見方が多かったため、対応が遅れている面は否めない。外務省幹部は「米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携し、中国の理不尽さを訴えていくくらいしかない」と長期戦も視野に入れる。
関係省庁からは不満の声も漏れる。政府は東シナ海のガス田「白樺」(中国名・春暁)で中国側がドリルのような機材を搬入したことを受け、中国側が単独掘削に踏み切った場合(1)海洋探査船を現場海域に派遣(2)国際海洋法裁判所へ提訴――などの対抗措置を確認しているが「官邸からゴーサインが出ない限り動きようがない」(政府関係者)という。
海上保安庁内には衝突の様子を撮影したビデオ映像について「当初から公開すべきだと主張してきたのに、官邸と検察が証拠採用を理由に公開しないように求めた」(幹部)という憤りもある。
臨時国会でも日中摩擦が焦点になりそうだ。
自民党の谷垣禎一総裁は26日、東京・JR有楽町駅前での街頭演説で、中国人船長の釈放について「実態は隠れた指揮権発動があったと思う」と政府の責任を強調。石原伸晃幹事長はNHK番組で検察関係者の証人喚問を要求。与党の国民新党の下地幹郎幹事長も「政府は証人喚問や参考人招致を通して説明するのが大切だ」と同調した。
首相は26日夜、首相公邸で仙谷由人官房長官や古川元久官房副長官らと約1時間、協議した。臨時国会の所信表明演説やその後の審議での、日中関係への言及などを話し合ったとみられる。同日夜、米国から帰国した前原誠司外相は外務省で、斎木昭隆アジア大洋州局長らと対応を協議した。
首相発言は「領有権問題は存在しない」という政府の立場を改めて示す内容だ。25日の外務報道官談話と同じだが、中国は同日中に再反論している。首相は「戦略的互恵関係を深めようと温家宝首相や胡錦濤国家主席と話をした。中国側は今も姿勢を変えないと言っている」と語るが、国連総会の機会を利用した温首相との会談は実現せず、事務レベルの折衝もままならない。
拘束されているフジタの日本人社員4人の身柄についても十分な情報がない。政府内では船長の釈放で中国が軟化するとの見方が多かったため、対応が遅れている面は否めない。外務省幹部は「米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)と連携し、中国の理不尽さを訴えていくくらいしかない」と長期戦も視野に入れる。
関係省庁からは不満の声も漏れる。政府は東シナ海のガス田「白樺」(中国名・春暁)で中国側がドリルのような機材を搬入したことを受け、中国側が単独掘削に踏み切った場合(1)海洋探査船を現場海域に派遣(2)国際海洋法裁判所へ提訴――などの対抗措置を確認しているが「官邸からゴーサインが出ない限り動きようがない」(政府関係者)という。
海上保安庁内には衝突の様子を撮影したビデオ映像について「当初から公開すべきだと主張してきたのに、官邸と検察が証拠採用を理由に公開しないように求めた」(幹部)という憤りもある。
臨時国会でも日中摩擦が焦点になりそうだ。
自民党の谷垣禎一総裁は26日、東京・JR有楽町駅前での街頭演説で、中国人船長の釈放について「実態は隠れた指揮権発動があったと思う」と政府の責任を強調。石原伸晃幹事長はNHK番組で検察関係者の証人喚問を要求。与党の国民新党の下地幹郎幹事長も「政府は証人喚問や参考人招致を通して説明するのが大切だ」と同調した。
:2010:09/27/09:06 ++ 景気足踏み、回復力に不安、長引く円高、企業圧迫――鈍る外需、不透明感増す
2009年4月から続く景気回復の勢いが鈍ってきた。世界経済の減速と国内の政策効果の息切れが重なり、輸出や生産の拡大にブレーキがかかる。円高・株安が企業や家計の心理を冷やし、設備投資と個人消費を下押しする恐れも出てきた。7~9月期の日本経済は猛暑やエコカーなどの特需で高めの成長率を維持するが、年末にかけて足踏みの状態に陥る公算が大きい。
08年9月のリーマン・ショックから2年。日本経済の急速な回復をけん引してきた企業部門に不透明感が広がる。
「10~12月期の国内粗鋼生産量は、7~9月期より数%減るかもしれない」。日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は危機感を隠さない。過剰生産の中国などで在庫が増え、アジア向けの輸出が減速しているという。
7~9月は
実力超える
「生産の状況に合わせて慎重に判断している」。キヤノンの田中稔三副社長の表情も険しい。10年12月期の設備投資は前期比7%減の2000億円。当初は2%増やす計画だったが、円高の進行も踏まえて減額した。
家計部門も事情は同じだ。三越日本橋本店(東京・中央)が8月下旬に開いた「ワールドウォッチフェア」。ここでは高級時計の売上高が1年前より10%近く落ち込んだ。上向きだった高額品の消費に、株安が水を差したといえる。
それでも7~9月期の実質経済成長率は前期比年率で2~3%に達するとの予測が多い。4~6月期の1・5%を上回るペースだ。猛暑やエコカーなどの特需が膨らみ、足元の成長率を実力以上にかさ上げする。
3つの逆風
日本に重く
東芝のエアコン生産子会社、東芝キヤリアは8月に予定していた期間従業員の一部削減を見送った。猛暑とエコポイント制度の恩恵を受け、国内生産台数を当初計画より2割増やしたためだ。
資生堂の制汗シート「エージープラス」。8月の出荷は前年同月に比べて5割伸びた。全身をふける大判タイプが女性の人気を集め、厳しい残暑に見舞われた9月も好調な売れ行きが続く。
しかし10~12月期以降は「3つの逆風」が日本経済を確実にむしばむ。特需に隠れた地力の弱さが表面化しかねない。
長引く円高がもたらす輸出競争力の低下と企業業績の悪化。第1の懸念はそこにある。「為替相場の違いだけで販売価格に2割以上のハンディがついてしまう」。三菱重工業の佃嘉章常務は、発電用ガスタービンの国際的な受注競争で劣勢に立たされていると嘆く。
円高で日本企業の海外移転が加速し、国内の産業が空洞化するリスクも高まる。ホンダは国内で四輪車を生産する際に、海外製の部品を増やすことを決めた。インドから国内に二輪車を輸入することも視野に入れる。
第2の懸念は米中経済の減速だ。「4月末に住宅減税が打ち切られ、売り上げのペースが鈍った」。米住宅大手レナーのスチュアート・ミラー最高経営責任者はこぼす。6~8月期の受注件数は前年同期比15%減。住宅市場にもろさを残す米国の悩みは深い。
中国のテレビ大手TCLマルチメディア。8月の販売台数は前年同月より24%減った。政府が導入した家電購入支援策の効果は一巡しつつある。米国に続いて中国の停滞感が強まるようなら、外需頼みの日本経済にも黄信号がともる。
第3の懸念は国内の政策効果の息切れだろう。トヨタ自動車は10月から国内生産を約2割減らす。愛知県の元町工場(豊田市)や田原工場(田原市)などが対象だ。7日のエコカー補助金終了前に膨らんだ駆け込み需要の反動減は大きい。
政府・日銀
遅れる対応
10月にはたばこの大幅な増税が控える。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏によると、自動車とたばこの駆け込み需要は7~9月期の実質消費を0・6%押し上げる。10~12月期はその反動減が1・0%の押し下げ要因になるという。猛暑特需の反動減が加われば、消費はさらに落ち込む。
尖閣諸島沖の漁船衝突事件で深まった日中の溝、根深い欧州の信用問題、不安定な国内の政局――。日本経済の回復力に影を落とす不安材料を数えればきりがない。
景気の回復が途切れる確率はまだ低い。新興国の成長力は強く、輸出や生産の減速には一定の歯止めがかかる。だが10~12月期の実質成長率は0~1%にとどまるとの見方が多い。みずほ総合研究所の山本康雄氏は「景気の回復が一時的に足踏みする『踊り場』に入る可能性がある」と話す。
政府・日銀は追加的な経済対策や金融緩和に動き、6年半ぶりの為替介入にも踏み切った。その対応は小出しでスピードを欠く。法人課税の軽減を含む成長戦略の核心には踏み込んでいない。
「有言実行内閣」。菅直人首相は17日発足した改造内閣をこう呼んだ。10年越しのデフレを克服し、日本の成長基盤を固める政策論争を長引かせる余裕はない。為替介入で稼いだ時間を生かし、手つかずの「宿題」をやりとげる必要がある。
08年9月のリーマン・ショックから2年。日本経済の急速な回復をけん引してきた企業部門に不透明感が広がる。
「10~12月期の国内粗鋼生産量は、7~9月期より数%減るかもしれない」。日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は危機感を隠さない。過剰生産の中国などで在庫が増え、アジア向けの輸出が減速しているという。
7~9月は
実力超える
「生産の状況に合わせて慎重に判断している」。キヤノンの田中稔三副社長の表情も険しい。10年12月期の設備投資は前期比7%減の2000億円。当初は2%増やす計画だったが、円高の進行も踏まえて減額した。
家計部門も事情は同じだ。三越日本橋本店(東京・中央)が8月下旬に開いた「ワールドウォッチフェア」。ここでは高級時計の売上高が1年前より10%近く落ち込んだ。上向きだった高額品の消費に、株安が水を差したといえる。
それでも7~9月期の実質経済成長率は前期比年率で2~3%に達するとの予測が多い。4~6月期の1・5%を上回るペースだ。猛暑やエコカーなどの特需が膨らみ、足元の成長率を実力以上にかさ上げする。
3つの逆風
日本に重く
東芝のエアコン生産子会社、東芝キヤリアは8月に予定していた期間従業員の一部削減を見送った。猛暑とエコポイント制度の恩恵を受け、国内生産台数を当初計画より2割増やしたためだ。
資生堂の制汗シート「エージープラス」。8月の出荷は前年同月に比べて5割伸びた。全身をふける大判タイプが女性の人気を集め、厳しい残暑に見舞われた9月も好調な売れ行きが続く。
しかし10~12月期以降は「3つの逆風」が日本経済を確実にむしばむ。特需に隠れた地力の弱さが表面化しかねない。
長引く円高がもたらす輸出競争力の低下と企業業績の悪化。第1の懸念はそこにある。「為替相場の違いだけで販売価格に2割以上のハンディがついてしまう」。三菱重工業の佃嘉章常務は、発電用ガスタービンの国際的な受注競争で劣勢に立たされていると嘆く。
円高で日本企業の海外移転が加速し、国内の産業が空洞化するリスクも高まる。ホンダは国内で四輪車を生産する際に、海外製の部品を増やすことを決めた。インドから国内に二輪車を輸入することも視野に入れる。
第2の懸念は米中経済の減速だ。「4月末に住宅減税が打ち切られ、売り上げのペースが鈍った」。米住宅大手レナーのスチュアート・ミラー最高経営責任者はこぼす。6~8月期の受注件数は前年同期比15%減。住宅市場にもろさを残す米国の悩みは深い。
中国のテレビ大手TCLマルチメディア。8月の販売台数は前年同月より24%減った。政府が導入した家電購入支援策の効果は一巡しつつある。米国に続いて中国の停滞感が強まるようなら、外需頼みの日本経済にも黄信号がともる。
第3の懸念は国内の政策効果の息切れだろう。トヨタ自動車は10月から国内生産を約2割減らす。愛知県の元町工場(豊田市)や田原工場(田原市)などが対象だ。7日のエコカー補助金終了前に膨らんだ駆け込み需要の反動減は大きい。
政府・日銀
遅れる対応
10月にはたばこの大幅な増税が控える。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏によると、自動車とたばこの駆け込み需要は7~9月期の実質消費を0・6%押し上げる。10~12月期はその反動減が1・0%の押し下げ要因になるという。猛暑特需の反動減が加われば、消費はさらに落ち込む。
尖閣諸島沖の漁船衝突事件で深まった日中の溝、根深い欧州の信用問題、不安定な国内の政局――。日本経済の回復力に影を落とす不安材料を数えればきりがない。
景気の回復が途切れる確率はまだ低い。新興国の成長力は強く、輸出や生産の減速には一定の歯止めがかかる。だが10~12月期の実質成長率は0~1%にとどまるとの見方が多い。みずほ総合研究所の山本康雄氏は「景気の回復が一時的に足踏みする『踊り場』に入る可能性がある」と話す。
政府・日銀は追加的な経済対策や金融緩和に動き、6年半ぶりの為替介入にも踏み切った。その対応は小出しでスピードを欠く。法人課税の軽減を含む成長戦略の核心には踏み込んでいない。
「有言実行内閣」。菅直人首相は17日発足した改造内閣をこう呼んだ。10年越しのデフレを克服し、日本の成長基盤を固める政策論争を長引かせる余裕はない。為替介入で稼いだ時間を生かし、手つかずの「宿題」をやりとげる必要がある。
:2010:09/24/09:24 ++ 日米関係改善、双方が模索、外相会談、普天間なお「トゲ」に。
【ニューヨーク=山内菜穂子】前原誠司外相とクリントン米国務長官による初会談は、菅直人改造内閣の発足を機に関係改善へ踏み出そうとする姿勢が双方ににじんだ。クリントン氏は日中関係で日本の立場に理解を示し、日本は米国産牛肉の輸入制限の見直し検討を表明した。しかし、日米間で最大の課題である沖縄の米軍普天間基地移設問題は、実現の見通しが立たないまま。決着が長引けば再びすき間風が吹きかねない。(1面参照)
前原外相「様々な課題を乗り越えて戦略的対話を通じて日米協力関係をさらに強めたい」
クリントン長官「まったく同感だ」
日米両政府は日米安保条約改定50年を踏まえた同盟深化に向けた協議を始めている。具体的な成果は来年以降にずれ込む可能性が高いが、まずはお互いに同盟深化の重要性を確認しあった。
会談ではさらに、尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で「国内法で粛々と対応する」とした前原氏にクリントン氏が理解を表明。クリントン氏は「(尖閣諸島に)日米安全保障条約は明らかに適用される」と明言した。前原氏も米国産牛肉の輸入制限緩和を「一つの方向性として検討したい」と表明し米側への配慮を示した。
背景にあるのは、中国の存在だ。鳩山政権時代にぎくしゃくした日米関係の足元を見透かすように中国は海洋進出への動きを活発化させた。前原、クリントン両氏が中国の動きに「注目するとともに緊密に連携する」と確認しあったのも、日米同盟が揺らげば、東アジア情勢が不安定になるとの危機感にほかならない。
しかし、こうした歩み寄りの努力も、両国関係の「トゲ」となっている普天間問題の扱い次第では水泡に帰す可能性もある。前原氏は会談で、鳩山政権での迷走を振り返り「沖縄には様々な面で迷惑をかけた。おわびしながら理解をいただくように努力したい」と語ったが、具体論には踏み込まず、クリントン長官も言及を避けた。
普天間問題の次の節目は11月13日から横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の機会を利用した3度目の日米首脳会談。だが、決着は2011年以降に先送りとなる公算が大きい。沖縄側に辺野古移設受け入れの環境が整うメドはまったくたっていないからだ。
9月の名護市議選では、移設に反対する市長派が過半数を占めた。11月28日投開票の沖縄県知事選に向けて移設反対の声が強まるのは必至だ。両国間の最大の懸案が中ぶらりんの状態が続けば、同盟深化は総論ばかりで具体論に進まない。
米側説明によると、尖閣諸島沖の漁船衝突事件についてクリントン氏は「この問題が早期に解決するよう望む」とも語った。米中の経済交流が進む中、日中対立の長期化は好ましくないとする米国のもう一つの本音ともいえる。
前原外相「様々な課題を乗り越えて戦略的対話を通じて日米協力関係をさらに強めたい」
クリントン長官「まったく同感だ」
日米両政府は日米安保条約改定50年を踏まえた同盟深化に向けた協議を始めている。具体的な成果は来年以降にずれ込む可能性が高いが、まずはお互いに同盟深化の重要性を確認しあった。
会談ではさらに、尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件で「国内法で粛々と対応する」とした前原氏にクリントン氏が理解を表明。クリントン氏は「(尖閣諸島に)日米安全保障条約は明らかに適用される」と明言した。前原氏も米国産牛肉の輸入制限緩和を「一つの方向性として検討したい」と表明し米側への配慮を示した。
背景にあるのは、中国の存在だ。鳩山政権時代にぎくしゃくした日米関係の足元を見透かすように中国は海洋進出への動きを活発化させた。前原、クリントン両氏が中国の動きに「注目するとともに緊密に連携する」と確認しあったのも、日米同盟が揺らげば、東アジア情勢が不安定になるとの危機感にほかならない。
しかし、こうした歩み寄りの努力も、両国関係の「トゲ」となっている普天間問題の扱い次第では水泡に帰す可能性もある。前原氏は会談で、鳩山政権での迷走を振り返り「沖縄には様々な面で迷惑をかけた。おわびしながら理解をいただくように努力したい」と語ったが、具体論には踏み込まず、クリントン長官も言及を避けた。
普天間問題の次の節目は11月13日から横浜で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の機会を利用した3度目の日米首脳会談。だが、決着は2011年以降に先送りとなる公算が大きい。沖縄側に辺野古移設受け入れの環境が整うメドはまったくたっていないからだ。
9月の名護市議選では、移設に反対する市長派が過半数を占めた。11月28日投開票の沖縄県知事選に向けて移設反対の声が強まるのは必至だ。両国間の最大の懸案が中ぶらりんの状態が続けば、同盟深化は総論ばかりで具体論に進まない。
米側説明によると、尖閣諸島沖の漁船衝突事件についてクリントン氏は「この問題が早期に解決するよう望む」とも語った。米中の経済交流が進む中、日中対立の長期化は好ましくないとする米国のもう一つの本音ともいえる。
:2010:09/24/09:21 ++ 日本の金型技術を守るのは当然だが、科学予算に若手の目を(社説)
自動車用金型のメーカーの事業統合を、官民の共同出資で設立した企業再生支援機構が公的資金で後押しすることになった。モノ作りの基となる生産要素技術を、どう守り強化したらよいか。日本の製造業が直面する課題が試されるケースである。
金型は金属の圧縮加工やプラスチック成型などに欠かせない。何百万個という単位で均一な製品を作るうえで、決定的な役割を果たす。
それは文字通り日本のモノ作りの基盤のような存在だ。日本の製造業が生産拠点を海外に移転しても、手作りの精密製品の多い金型の海外生産は容易でないことから、日本で作って海外に輸出する例も多い。
支援機構が乗り出すのは、そんな産業としての重要性を考慮したからだろう。最大手のオギハラが2009年にタイの自動車部品大手タイサミットの傘下に入り、工場の1つが中国の自動車メーカーBYDオートに売却された。その際、要素技術の流出が問題になった経緯もある。
統合するのは、自動車用金型で国内2位の富士テクニカと、3位の宮津製作所(群馬県大泉町)だ。富士テクニカは特別清算する宮津製作所から事業を譲り受け、支援機構が53億円を出資する。富士テクニカへの支援機構の出資比率は8割となる。
金型産業を支援するのはよいとして、メーカーを支援機構の傘下に収める形となる今回の決定は、これまでの支援機構側の説明で十分な納得が得られるかどうか疑問が残る。再建を政府が手助けするからには、2社の金型技術が他社にはないほど貴重なことを示す必要がある。とりわけ宮津製作所は債務超過だ。
支援を決めるまでの過程にも、課題を残した。支援に税金を使うことの是非について、事前に様々な議論にさらすべきではなかったか。
両社の低迷は自ら招いた面が大きい。記者会見で宮津製作所の宮村哲人社長は「原価管理がうまくできなかった」と認め、富士テクニカの糸川良平社長からは「金型業界はこの50年間、環境変化に対応してこなかった」との反省の弁があった。
筆頭株主となる支援機構の責任は重い。リストラを確実に実施し、競争力を回復させることで、出資金が焦げ付くことのないようにするのが、最低限の努めだ。
支援機構は金型以外の分野でも自ら触媒役になり、企業再編を促そうとしている。約1万社もある金型業界の再編が進むならよいが、国の介入で競争をゆがませ、市場から退出すべき企業を温存するようなことだけは、避けるよう心がけてほしい。
政府の科学技術予算の配分に、若手の研究者の声を反映させる仕組みが動き出した。新しい試みであり、成果に注目したい。
内閣府の総合科学技術会議は毎年、各省庁の来年度予算概算要求に含まれる科学技術予算について、専門家の目からどの研究を取り上げるべきか優先度を決めている。これまでは年長で影響力の大きい研究者が中心となり官僚とともに配分を決めてきた。今年は20歳代から40歳ごろまでの若い研究者が参加している。
世界と競い、年齢的にも創造性が高い若手世代の選択眼を政策判断に加える。そうすれば、資金の配分をより研究最前線の現実に即し、効率的なものにできるはずだ。
参加する若手は政府の研究費を得た実績を持つ独り立ちした研究者だ。総合科技会議は全国の約千人に文書で意見を求め、約40人が優先度判定の会議に加わる。会議のメンバーのおよそ3割が若手になった。
若手に求められるのは、自らの研究の宣伝ではない。いま日本がどの分野に優先して予算を投入すべきかを見極める見識だ。専門家の資質を試される試練でもあり、しっかり意見を述べてほしい。総合科技会議や省庁は若手の考えを誠実に受け止め、反映に努めるべきだろう。
首相が議長を務める総合科技会議は、科学技術政策を決める司令塔の役割を担うべき組織だ。現実には役所の要望を束ねる程度の機能しか果たしていなかった。若手参加の試みは評価できるが、これで本来の任務をこなしたとは到底言えない。
経済成長を実現し地球環境問題などに対処するため技術革新への期待が高い。財政を考えれば、約3・6兆円の科学技術関係予算を大きく増やせる状況ではない。過去に投じた研究資金が有効に使われたのか。効果の判定を踏まえ、慣例やしがらみに縛られない配分が求められる。
政府内には、総合科技会議のほかにも、宇宙開発戦略本部や情報通信技術戦略本部など、科学技術に関係する分野で司令塔的な役割をもつ組織がある。相互に政策や予算の調整が十分ではなく、省庁の縦割りを許している。政策全体を見渡し、針路を示せる真の司令塔をつくるべき時でもある。
金型は金属の圧縮加工やプラスチック成型などに欠かせない。何百万個という単位で均一な製品を作るうえで、決定的な役割を果たす。
それは文字通り日本のモノ作りの基盤のような存在だ。日本の製造業が生産拠点を海外に移転しても、手作りの精密製品の多い金型の海外生産は容易でないことから、日本で作って海外に輸出する例も多い。
支援機構が乗り出すのは、そんな産業としての重要性を考慮したからだろう。最大手のオギハラが2009年にタイの自動車部品大手タイサミットの傘下に入り、工場の1つが中国の自動車メーカーBYDオートに売却された。その際、要素技術の流出が問題になった経緯もある。
統合するのは、自動車用金型で国内2位の富士テクニカと、3位の宮津製作所(群馬県大泉町)だ。富士テクニカは特別清算する宮津製作所から事業を譲り受け、支援機構が53億円を出資する。富士テクニカへの支援機構の出資比率は8割となる。
金型産業を支援するのはよいとして、メーカーを支援機構の傘下に収める形となる今回の決定は、これまでの支援機構側の説明で十分な納得が得られるかどうか疑問が残る。再建を政府が手助けするからには、2社の金型技術が他社にはないほど貴重なことを示す必要がある。とりわけ宮津製作所は債務超過だ。
支援を決めるまでの過程にも、課題を残した。支援に税金を使うことの是非について、事前に様々な議論にさらすべきではなかったか。
両社の低迷は自ら招いた面が大きい。記者会見で宮津製作所の宮村哲人社長は「原価管理がうまくできなかった」と認め、富士テクニカの糸川良平社長からは「金型業界はこの50年間、環境変化に対応してこなかった」との反省の弁があった。
筆頭株主となる支援機構の責任は重い。リストラを確実に実施し、競争力を回復させることで、出資金が焦げ付くことのないようにするのが、最低限の努めだ。
支援機構は金型以外の分野でも自ら触媒役になり、企業再編を促そうとしている。約1万社もある金型業界の再編が進むならよいが、国の介入で競争をゆがませ、市場から退出すべき企業を温存するようなことだけは、避けるよう心がけてほしい。
政府の科学技術予算の配分に、若手の研究者の声を反映させる仕組みが動き出した。新しい試みであり、成果に注目したい。
内閣府の総合科学技術会議は毎年、各省庁の来年度予算概算要求に含まれる科学技術予算について、専門家の目からどの研究を取り上げるべきか優先度を決めている。これまでは年長で影響力の大きい研究者が中心となり官僚とともに配分を決めてきた。今年は20歳代から40歳ごろまでの若い研究者が参加している。
世界と競い、年齢的にも創造性が高い若手世代の選択眼を政策判断に加える。そうすれば、資金の配分をより研究最前線の現実に即し、効率的なものにできるはずだ。
参加する若手は政府の研究費を得た実績を持つ独り立ちした研究者だ。総合科技会議は全国の約千人に文書で意見を求め、約40人が優先度判定の会議に加わる。会議のメンバーのおよそ3割が若手になった。
若手に求められるのは、自らの研究の宣伝ではない。いま日本がどの分野に優先して予算を投入すべきかを見極める見識だ。専門家の資質を試される試練でもあり、しっかり意見を述べてほしい。総合科技会議や省庁は若手の考えを誠実に受け止め、反映に努めるべきだろう。
首相が議長を務める総合科技会議は、科学技術政策を決める司令塔の役割を担うべき組織だ。現実には役所の要望を束ねる程度の機能しか果たしていなかった。若手参加の試みは評価できるが、これで本来の任務をこなしたとは到底言えない。
経済成長を実現し地球環境問題などに対処するため技術革新への期待が高い。財政を考えれば、約3・6兆円の科学技術関係予算を大きく増やせる状況ではない。過去に投じた研究資金が有効に使われたのか。効果の判定を踏まえ、慣例やしがらみに縛られない配分が求められる。
政府内には、総合科技会議のほかにも、宇宙開発戦略本部や情報通信技術戦略本部など、科学技術に関係する分野で司令塔的な役割をもつ組織がある。相互に政策や予算の調整が十分ではなく、省庁の縦割りを許している。政策全体を見渡し、針路を示せる真の司令塔をつくるべき時でもある。
:2010:09/24/09:11 ++ 海外生産比率引き上げ加速、日産7割、キヤノン最高―円高重荷、空洞化の懸念も。
大手製造業が海外生産比率を一段と引き上げる。トヨタ自動車や日産自動車の海外生産比率は通年で過去最高に達する見通し。電子部品や精密機器も海外生産が拡大する。2010年4~9月期の実績為替レートは主要輸出企業の平均で前年同期比7円前後の円高・ドル安になるとみられる。海外生産拡大は円高対応力を強めるが、生産能力全体が増えない中での海外拡充は国内の空洞化につながる懸念もある。
電子部品も増強
トヨタは10年(暦年)の海外生産が425万台と前年比19%増える見通し。国内を105万台上回り、海外生産比率は57%と前年より約1ポイント上昇する。昨年12月に豪州、今年6月には英国でハイブリッド車(HV)の生産を開始した。
日産は新興国での生産比率(台数ベース)が11年3月期に前期の3割から4割程度に高まりそうだ。連結の海外生産比率は7割を突破する。ホンダも海外生産比率が7割強になる見通しだ。
ホンダの10年4~9月期の為替レートは1ドル=89円、1ユーロ=114円の見通し。前年同期比ではそれぞれ6円、19円の円高となる。自動車7社でもほぼ同様とみられ、4~9月期には7社合計で円高による利益の目減り分が3000億円程度に達する可能性がある。
一時、1ドル=82円台まで進んだ円高は政府・日銀の介入で小康を保っており、足元では84円台となっている。ただ、消費地生産重視の観点からも海外生産拡大は避けて通れなくなっている。
高付加価値を武器に国内生産を維持してきた一部の電子部品にも円高の影響が及ぶ。村田製作所は現在15%の海外生産比率を13年3月期までに30%程度に引き上げる。富士電機ホールディングスはパワー半導体などの海外生産能力を増強。12年3月期までに海外生産比率を40%程度(10年3月期は25%)に高める。
買収で拠点分散
海外企業の買収によるグローバル化も目立つ。日本電産は米電機大手エマソン・エレクトリックのモーター部門を9月末までに買収する。「世界に生産拠点をバランスよく分散して為替の影響を最小限にする」(永守重信社長)。オランダのプリンター大手、オセを3月に買収したキヤノンは10年1~6月期の海外生産比率が過去最高の48%になった。
経済産業省の調査では1994年度に18%だった製造業の海外生産比率(海外進出企業ベース)は、1ドル=79円台を付けた95年以降急上昇。01年に29%となってからは30%前後で推移していた。
ここへきての円高は、日本企業にとって海外企業買収の好機になっている面もあり、海外生産比率拡大を再加速させる可能性がある。円高対策の継続や法人税率の引き下げなどを求める声が強まっている。
電子部品も増強
トヨタは10年(暦年)の海外生産が425万台と前年比19%増える見通し。国内を105万台上回り、海外生産比率は57%と前年より約1ポイント上昇する。昨年12月に豪州、今年6月には英国でハイブリッド車(HV)の生産を開始した。
日産は新興国での生産比率(台数ベース)が11年3月期に前期の3割から4割程度に高まりそうだ。連結の海外生産比率は7割を突破する。ホンダも海外生産比率が7割強になる見通しだ。
ホンダの10年4~9月期の為替レートは1ドル=89円、1ユーロ=114円の見通し。前年同期比ではそれぞれ6円、19円の円高となる。自動車7社でもほぼ同様とみられ、4~9月期には7社合計で円高による利益の目減り分が3000億円程度に達する可能性がある。
一時、1ドル=82円台まで進んだ円高は政府・日銀の介入で小康を保っており、足元では84円台となっている。ただ、消費地生産重視の観点からも海外生産拡大は避けて通れなくなっている。
高付加価値を武器に国内生産を維持してきた一部の電子部品にも円高の影響が及ぶ。村田製作所は現在15%の海外生産比率を13年3月期までに30%程度に引き上げる。富士電機ホールディングスはパワー半導体などの海外生産能力を増強。12年3月期までに海外生産比率を40%程度(10年3月期は25%)に高める。
買収で拠点分散
海外企業の買収によるグローバル化も目立つ。日本電産は米電機大手エマソン・エレクトリックのモーター部門を9月末までに買収する。「世界に生産拠点をバランスよく分散して為替の影響を最小限にする」(永守重信社長)。オランダのプリンター大手、オセを3月に買収したキヤノンは10年1~6月期の海外生産比率が過去最高の48%になった。
経済産業省の調査では1994年度に18%だった製造業の海外生産比率(海外進出企業ベース)は、1ドル=79円台を付けた95年以降急上昇。01年に29%となってからは30%前後で推移していた。
ここへきての円高は、日本企業にとって海外企業買収の好機になっている面もあり、海外生産比率拡大を再加速させる可能性がある。円高対策の継続や法人税率の引き下げなどを求める声が強まっている。
:2010:09/24/09:11 ++ 海外生産比率引き上げ加速、日産7割、キヤノン最高―円高重荷、空洞化の懸念も。
大手製造業が海外生産比率を一段と引き上げる。トヨタ自動車や日産自動車の海外生産比率は通年で過去最高に達する見通し。電子部品や精密機器も海外生産が拡大する。2010年4~9月期の実績為替レートは主要輸出企業の平均で前年同期比7円前後の円高・ドル安になるとみられる。海外生産拡大は円高対応力を強めるが、生産能力全体が増えない中での海外拡充は国内の空洞化につながる懸念もある。
電子部品も増強
トヨタは10年(暦年)の海外生産が425万台と前年比19%増える見通し。国内を105万台上回り、海外生産比率は57%と前年より約1ポイント上昇する。昨年12月に豪州、今年6月には英国でハイブリッド車(HV)の生産を開始した。
日産は新興国での生産比率(台数ベース)が11年3月期に前期の3割から4割程度に高まりそうだ。連結の海外生産比率は7割を突破する。ホンダも海外生産比率が7割強になる見通しだ。
ホンダの10年4~9月期の為替レートは1ドル=89円、1ユーロ=114円の見通し。前年同期比ではそれぞれ6円、19円の円高となる。自動車7社でもほぼ同様とみられ、4~9月期には7社合計で円高による利益の目減り分が3000億円程度に達する可能性がある。
一時、1ドル=82円台まで進んだ円高は政府・日銀の介入で小康を保っており、足元では84円台となっている。ただ、消費地生産重視の観点からも海外生産拡大は避けて通れなくなっている。
高付加価値を武器に国内生産を維持してきた一部の電子部品にも円高の影響が及ぶ。村田製作所は現在15%の海外生産比率を13年3月期までに30%程度に引き上げる。富士電機ホールディングスはパワー半導体などの海外生産能力を増強。12年3月期までに海外生産比率を40%程度(10年3月期は25%)に高める。
買収で拠点分散
海外企業の買収によるグローバル化も目立つ。日本電産は米電機大手エマソン・エレクトリックのモーター部門を9月末までに買収する。「世界に生産拠点をバランスよく分散して為替の影響を最小限にする」(永守重信社長)。オランダのプリンター大手、オセを3月に買収したキヤノンは10年1~6月期の海外生産比率が過去最高の48%になった。
経済産業省の調査では1994年度に18%だった製造業の海外生産比率(海外進出企業ベース)は、1ドル=79円台を付けた95年以降急上昇。01年に29%となってからは30%前後で推移していた。
ここへきての円高は、日本企業にとって海外企業買収の好機になっている面もあり、海外生産比率拡大を再加速させる可能性がある。円高対策の継続や法人税率の引き下げなどを求める声が強まっている。
電子部品も増強
トヨタは10年(暦年)の海外生産が425万台と前年比19%増える見通し。国内を105万台上回り、海外生産比率は57%と前年より約1ポイント上昇する。昨年12月に豪州、今年6月には英国でハイブリッド車(HV)の生産を開始した。
日産は新興国での生産比率(台数ベース)が11年3月期に前期の3割から4割程度に高まりそうだ。連結の海外生産比率は7割を突破する。ホンダも海外生産比率が7割強になる見通しだ。
ホンダの10年4~9月期の為替レートは1ドル=89円、1ユーロ=114円の見通し。前年同期比ではそれぞれ6円、19円の円高となる。自動車7社でもほぼ同様とみられ、4~9月期には7社合計で円高による利益の目減り分が3000億円程度に達する可能性がある。
一時、1ドル=82円台まで進んだ円高は政府・日銀の介入で小康を保っており、足元では84円台となっている。ただ、消費地生産重視の観点からも海外生産拡大は避けて通れなくなっている。
高付加価値を武器に国内生産を維持してきた一部の電子部品にも円高の影響が及ぶ。村田製作所は現在15%の海外生産比率を13年3月期までに30%程度に引き上げる。富士電機ホールディングスはパワー半導体などの海外生産能力を増強。12年3月期までに海外生産比率を40%程度(10年3月期は25%)に高める。
買収で拠点分散
海外企業の買収によるグローバル化も目立つ。日本電産は米電機大手エマソン・エレクトリックのモーター部門を9月末までに買収する。「世界に生産拠点をバランスよく分散して為替の影響を最小限にする」(永守重信社長)。オランダのプリンター大手、オセを3月に買収したキヤノンは10年1~6月期の海外生産比率が過去最高の48%になった。
経済産業省の調査では1994年度に18%だった製造業の海外生産比率(海外進出企業ベース)は、1ドル=79円台を付けた95年以降急上昇。01年に29%となってからは30%前後で推移していた。
ここへきての円高は、日本企業にとって海外企業買収の好機になっている面もあり、海外生産比率拡大を再加速させる可能性がある。円高対策の継続や法人税率の引き下げなどを求める声が強まっている。
:2010:09/22/15:47 ++ 菅政権に政治決断迫る=漁船衝突、圧力高める―中国
【北京時事】尖閣諸島(中国名・釣魚島)沖での漁船衝突事件は22日、中国の温家宝首相が逮捕された漁船船長の無条件釈放を強く求めたことで、新たな段階に入った。中国首脳が乗り出し、菅政権に政治決断を迫った形で、中国は日本側への圧力を高めた。
温首相が訪問先のニューヨークで、「釣魚島は中国の神聖な領土」と語り、事件をめぐる日本の対応を批判する場面は、国営中央テレビが昼のニュースのトップで伝えた。22日は家族だんらんで祝う伝統的節句「中秋節」の休日で、中国の毅然(きぜん)とした態度を国民にアピールした。
事件発生から2週間が経過し、中国人船長の拘置期間も延長される中、「解決に時間がかかれば、胡錦濤政権の能力が問われ、批判されかねない」(中国筋)との声も聞かれる。温首相の登場は、事件長期化への中国側の焦りもうかがわせる。
温首相は「平民宰相」として国民の絶大な支持がある。このため、「日本側が温首相の要求を無視すれば、国民は黙っておらず、両国関係は一層悪くなる」(日中関係筋)という懸念もある。中国側は、発足間もない菅政権が、こうした国内事情に配慮した対中外交の道を選ぶのか、かたずをのんで見守っている。
ただ日本側は、「尖閣はわが国固有の領土。国内法にのっとり粛々と対応する」(前原誠司外相)との立場。「現段階では落としどころが見えない」(北京の外交筋)状況だ。
温首相が訪問先のニューヨークで、「釣魚島は中国の神聖な領土」と語り、事件をめぐる日本の対応を批判する場面は、国営中央テレビが昼のニュースのトップで伝えた。22日は家族だんらんで祝う伝統的節句「中秋節」の休日で、中国の毅然(きぜん)とした態度を国民にアピールした。
事件発生から2週間が経過し、中国人船長の拘置期間も延長される中、「解決に時間がかかれば、胡錦濤政権の能力が問われ、批判されかねない」(中国筋)との声も聞かれる。温首相の登場は、事件長期化への中国側の焦りもうかがわせる。
温首相は「平民宰相」として国民の絶大な支持がある。このため、「日本側が温首相の要求を無視すれば、国民は黙っておらず、両国関係は一層悪くなる」(日中関係筋)という懸念もある。中国側は、発足間もない菅政権が、こうした国内事情に配慮した対中外交の道を選ぶのか、かたずをのんで見守っている。
ただ日本側は、「尖閣はわが国固有の領土。国内法にのっとり粛々と対応する」(前原誠司外相)との立場。「現段階では落としどころが見えない」(北京の外交筋)状況だ。
:2010:09/22/08:59 ++ 中国、尖閣巡り強硬姿勢、民主党の外交が試される
人間同士の喧嘩(けんか)では、最初は手加減しているつもりでも、次第に熱くなり、本気の殴り合いになってしまうことがある。尖閣諸島沖での衝突事件への中国の対応にも、そんな危惧を抱かざるを得ない。
「一線越えた反応」
「中国側の反応はこれまでの一線を越えている。その真意が分からない」。尖閣諸島沖の日本領海で7日、中国漁船が日本の巡視船に衝突して以来、政府の外交・安全保障担当者からはこんな声が聞かれる。
小泉純一郎首相の在任中にも、靖国神社参拝のたびに対立が深まった。それでも「中国側には全面衝突に発展する事態だけは防ぐという、あうんの呼吸があった」(日中外交筋)
だが、中国側の反応は、そんな歯止めが吹き飛んでしまったかのようだ。閣僚級以上の交流の暫定停止などを決めたが、さらに「強烈な対抗措置」に出ることもあり得るという。
なぜ、中国はこれほど強硬な姿勢に出るのか。「歴史問題を抱える日本に手ぬるい対応をすれば、中国指導部は国内で激しい『弱腰批判』を浴びる。それが反政府デモに飛び火しかねない」
中国外交専門家はこう説明する。確かに、中国当局者は日本への抗議を繰り返す一方で、反日デモは厳しく抑えようとしている。
「何とか、早期に釈放できないか」。中国政府は民主党の有力議員に非公式に会い、日中対立を防ぐためにも、釈放を実現してほしいと働きかけている。
日米亀裂が誘因
だが、それだけでは、中国内の反日感情をさらに刺激しかねないのに、日本への報復を連発する真意は分からない。もう一つ、中国側にあるとみられるのは、民主党の外交・安全保障政策を試そうという意図だ。
日米同盟には米軍普天間基地問題などで亀裂が入っている。鳩山由紀夫前首相からは「米国への依存を減らす」という発言も出た。
こうしたなか、中国側は東シナ海での軍事演習を拡大したり、尖閣諸島で強気の姿勢を示したりして、どこまで日米同盟が機能するのか、瀬踏みしている――。防衛当局者は日本近海で活動を強める中国軍に、そんな意図をかぎ取る。
中国は外交的にも日米同盟にくさびを打つ球を投げている。8月下旬の北京での日中外相会談には伏せられたやり取りがあった。「日米で安保条約改定50周年の共同文書を用意していると聞いたが、中国に対抗するような文言は書かないでほしい」。楊潔〓外相が席上、こう要求したという。
中国は経済、軍事力を増すにつれ、アジア各国との領土問題についても、自己主張を通しやすくなってきたと判断しているのだろう。中台の融和が進み、台湾問題で忙殺される必要がなくなったことも大きい。
7月にハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムでは、南沙諸島の領有権争いをめぐり、中国軍の行動に各国が懸念を示した。ところが、アジアの外交官によると、中国はその後、一部のASEAN加盟国に多国間会議で再び、同問題を提起しないよう求めている。
中国はASEANに対するように、尖閣問題でもさらに強硬な対日路線を突き進むのだろうか。カギを握るのは日米の結束だ。
米国務省は8月半ば、日米安保条約は尖閣諸島にも適用されると確認した。だが、同省高官は20日、衝突事件で日中の対話も求めた。「アフガニスタン問題にてこずるなか、新たな火種を抱えたくないのが米国の本音だ」(日米外交筋)
米軍幹部は最近、日本政府の知人に不安を漏らした。「日米同盟が強固に映っているうちはいいが、弱まっているとみられたら、中国軍がさらに日本近海に進出してくるだろう」
菅直人首相は23日のオバマ米大統領との会談で、同盟を立て直せるのか。試されているのは軸が見えない民主党政権の外交だ。
「一線越えた反応」
「中国側の反応はこれまでの一線を越えている。その真意が分からない」。尖閣諸島沖の日本領海で7日、中国漁船が日本の巡視船に衝突して以来、政府の外交・安全保障担当者からはこんな声が聞かれる。
小泉純一郎首相の在任中にも、靖国神社参拝のたびに対立が深まった。それでも「中国側には全面衝突に発展する事態だけは防ぐという、あうんの呼吸があった」(日中外交筋)
だが、中国側の反応は、そんな歯止めが吹き飛んでしまったかのようだ。閣僚級以上の交流の暫定停止などを決めたが、さらに「強烈な対抗措置」に出ることもあり得るという。
なぜ、中国はこれほど強硬な姿勢に出るのか。「歴史問題を抱える日本に手ぬるい対応をすれば、中国指導部は国内で激しい『弱腰批判』を浴びる。それが反政府デモに飛び火しかねない」
中国外交専門家はこう説明する。確かに、中国当局者は日本への抗議を繰り返す一方で、反日デモは厳しく抑えようとしている。
「何とか、早期に釈放できないか」。中国政府は民主党の有力議員に非公式に会い、日中対立を防ぐためにも、釈放を実現してほしいと働きかけている。
日米亀裂が誘因
だが、それだけでは、中国内の反日感情をさらに刺激しかねないのに、日本への報復を連発する真意は分からない。もう一つ、中国側にあるとみられるのは、民主党の外交・安全保障政策を試そうという意図だ。
日米同盟には米軍普天間基地問題などで亀裂が入っている。鳩山由紀夫前首相からは「米国への依存を減らす」という発言も出た。
こうしたなか、中国側は東シナ海での軍事演習を拡大したり、尖閣諸島で強気の姿勢を示したりして、どこまで日米同盟が機能するのか、瀬踏みしている――。防衛当局者は日本近海で活動を強める中国軍に、そんな意図をかぎ取る。
中国は外交的にも日米同盟にくさびを打つ球を投げている。8月下旬の北京での日中外相会談には伏せられたやり取りがあった。「日米で安保条約改定50周年の共同文書を用意していると聞いたが、中国に対抗するような文言は書かないでほしい」。楊潔〓外相が席上、こう要求したという。
中国は経済、軍事力を増すにつれ、アジア各国との領土問題についても、自己主張を通しやすくなってきたと判断しているのだろう。中台の融和が進み、台湾問題で忙殺される必要がなくなったことも大きい。
7月にハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムでは、南沙諸島の領有権争いをめぐり、中国軍の行動に各国が懸念を示した。ところが、アジアの外交官によると、中国はその後、一部のASEAN加盟国に多国間会議で再び、同問題を提起しないよう求めている。
中国はASEANに対するように、尖閣問題でもさらに強硬な対日路線を突き進むのだろうか。カギを握るのは日米の結束だ。
米国務省は8月半ば、日米安保条約は尖閣諸島にも適用されると確認した。だが、同省高官は20日、衝突事件で日中の対話も求めた。「アフガニスタン問題にてこずるなか、新たな火種を抱えたくないのが米国の本音だ」(日米外交筋)
米軍幹部は最近、日本政府の知人に不安を漏らした。「日米同盟が強固に映っているうちはいいが、弱まっているとみられたら、中国軍がさらに日本近海に進出してくるだろう」
菅直人首相は23日のオバマ米大統領との会談で、同盟を立て直せるのか。試されているのは軸が見えない民主党政権の外交だ。
:2010:09/21/08:59 ++ 通貨安競争へ金高騰の警告(社説)
金の国際価格が先週、3カ月ぶりに史上最高値を更新した。ドル資産にもユーロ資産にも不安を感じる投資家や新興国の中央銀行が、金の保有量を増やしている。金高騰は、景気立て直しを焦る各国が輸出に有利な通貨安競争に走ることへの、市場からの警告の意味合いも大きい。
金の国際価格は6月に1トロイオンス(約31グラム)1260ドル台の高値を記録した後、ヘッジファンドなどが利益確定の売りを出して下げ局面に入った。だが、景気回復の足取りが鈍り、デフレ懸念も出てきた米国が8月に追加的な金融緩和を決めると、金価格は再び上昇基調に戻った。
6月まで金価格の上げ材料になった欧州の財政・金融不安も消えていない。さらに、多くの投資家が米国や欧州諸国が通貨安を容認するとみて、ドルやユーロ資産の一部を金投資に振り向けている。
金にも価格変動リスクはある。ただし、実物資産である金には、債務不履行に陥るような信用リスクはない。各国の財政不安が高まるほど、「無国籍通貨」「世界通貨」の性格を持つ金に投資家の関心は向く。
金の調査機関ワールド・ゴールド・カウンシルなどが8月に発表した今年4~6月の世界の金需要は、宝飾品が前年同期比で5%減る一方、投資需要は同42%も増えた。
個人投資家や、年金基金など機関投資家のほか、中央銀行が準備資産として金の保有を増やす動きも目立つ。中国人民銀行は昨年、自国で産出した金を積み増して金保有量を1054トンへと8割増やした。ロシア中央銀行の6月末時点の金準備は668トンで昨年末比で1割増え、フィリピンやベネズエラの中銀も金保有を増やしている。
国際通貨基金(IMF)が昨年秋から売却を進める403トンの保有金も、インド(200トン)やスリランカ(10トン)、モーリシャス(2トン)、バングラデシュ(10トン)といった国々の中央銀行が取得した。
金価格上昇の背景には、欧米の金融機関やヘッジファンドによる活発な商品投資もある。だが新興国による金保有の増加は、ドル、ユーロなどへの信認の低下の裏返しだ。金高騰が発する通貨・経済政策への警告を主要国は無視してはならない。
金の国際価格は6月に1トロイオンス(約31グラム)1260ドル台の高値を記録した後、ヘッジファンドなどが利益確定の売りを出して下げ局面に入った。だが、景気回復の足取りが鈍り、デフレ懸念も出てきた米国が8月に追加的な金融緩和を決めると、金価格は再び上昇基調に戻った。
6月まで金価格の上げ材料になった欧州の財政・金融不安も消えていない。さらに、多くの投資家が米国や欧州諸国が通貨安を容認するとみて、ドルやユーロ資産の一部を金投資に振り向けている。
金にも価格変動リスクはある。ただし、実物資産である金には、債務不履行に陥るような信用リスクはない。各国の財政不安が高まるほど、「無国籍通貨」「世界通貨」の性格を持つ金に投資家の関心は向く。
金の調査機関ワールド・ゴールド・カウンシルなどが8月に発表した今年4~6月の世界の金需要は、宝飾品が前年同期比で5%減る一方、投資需要は同42%も増えた。
個人投資家や、年金基金など機関投資家のほか、中央銀行が準備資産として金の保有を増やす動きも目立つ。中国人民銀行は昨年、自国で産出した金を積み増して金保有量を1054トンへと8割増やした。ロシア中央銀行の6月末時点の金準備は668トンで昨年末比で1割増え、フィリピンやベネズエラの中銀も金保有を増やしている。
国際通貨基金(IMF)が昨年秋から売却を進める403トンの保有金も、インド(200トン)やスリランカ(10トン)、モーリシャス(2トン)、バングラデシュ(10トン)といった国々の中央銀行が取得した。
金価格上昇の背景には、欧米の金融機関やヘッジファンドによる活発な商品投資もある。だが新興国による金保有の増加は、ドル、ユーロなどへの信認の低下の裏返しだ。金高騰が発する通貨・経済政策への警告を主要国は無視してはならない。
:2010:09/21/08:55 ++ 中国は対立激化を抑える冷静な行動を(社説)
尖閣諸島沖の領海での衝突事件を巡り、中国政府が日本への強硬姿勢を一段と鮮明にしている。新たに閣僚級以上の交流の暫定的停止や、航空路線増便に関する交渉中止などを決めた。両国間の様々な交流事業にも中止の動きが広がってきた。
他人に投げた石はやがて自分にはね返ってくる。それは国家間の関係でも同じである。日中が深刻な政治対立に陥るのは、どちらの国の利益にもならない。にわかに激しくなったきしみを早急に抑えるよう、中国政府に冷静な対応を求めたい。
石垣簡裁は19日、海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船の船長の拘置期限を、29日まで延長することを認めた。中国の新たな対抗措置はこの決定への報復だという。
中国側は船長の即時無条件釈放を求めているが、日本は法治国家だ。外国からの圧力や政治的な理由によって、司法判断を曲げることはできない。日本政府は国内法に基づき粛々と対応する立場を示しており、実際にそれ以外の選択肢はない。
だが、中国側は必ずしもそうは考えていないようだ。中国政府はすでに要人の来日中止や東シナ海のガス田共同開発に関する条約締結交渉の延期も通告していた。圧力を強めれば、日本政府が司法に介入し、船長を釈放すると思っているのかもしれない。共産党支配下の中国と異なり、三権分立の民主主義国家では、そのような手法は許されないことを、中国側は理解すべきだ。
日中が成熟した関係を築けるかどうかは、深刻な対立が起きたときの行動で試される。その点、日本側は自制した行動をとってきた。
尖閣諸島周辺の日本領海には8月中旬以降、多い日で約70隻もの中国漁船が出現していたという。だからといって、それらの船長を日本側が次々と逮捕したわけではない。今回逮捕したのは、中国漁船の方から巡視船に衝突してきたからだ。中国国内では、この事実すら正確に報じられていないのは遺憾だ。
中国側には国内で弱腰批判を浴びないためにも、日本に強い姿勢を示さざるを得ない事情があるとみられる。弱気の対応に出れば、反日ムードが反政府運動に転化しかねないと恐れているとの指摘もある。
中国政府が北京、上海などで厳重警備を敷き、反日デモの拡大を抑えようとしているのも、そんな懸念からだろう。だとすれば、中国がとるべき行動は逆ではないか。強硬措置を連発して対立の火に油を注ぐのではなく、深刻になる前に対立を鎮めるよう冷静な行動に徹してほしい。
他人に投げた石はやがて自分にはね返ってくる。それは国家間の関係でも同じである。日中が深刻な政治対立に陥るのは、どちらの国の利益にもならない。にわかに激しくなったきしみを早急に抑えるよう、中国政府に冷静な対応を求めたい。
石垣簡裁は19日、海上保安庁の巡視船に衝突した中国漁船の船長の拘置期限を、29日まで延長することを認めた。中国の新たな対抗措置はこの決定への報復だという。
中国側は船長の即時無条件釈放を求めているが、日本は法治国家だ。外国からの圧力や政治的な理由によって、司法判断を曲げることはできない。日本政府は国内法に基づき粛々と対応する立場を示しており、実際にそれ以外の選択肢はない。
だが、中国側は必ずしもそうは考えていないようだ。中国政府はすでに要人の来日中止や東シナ海のガス田共同開発に関する条約締結交渉の延期も通告していた。圧力を強めれば、日本政府が司法に介入し、船長を釈放すると思っているのかもしれない。共産党支配下の中国と異なり、三権分立の民主主義国家では、そのような手法は許されないことを、中国側は理解すべきだ。
日中が成熟した関係を築けるかどうかは、深刻な対立が起きたときの行動で試される。その点、日本側は自制した行動をとってきた。
尖閣諸島周辺の日本領海には8月中旬以降、多い日で約70隻もの中国漁船が出現していたという。だからといって、それらの船長を日本側が次々と逮捕したわけではない。今回逮捕したのは、中国漁船の方から巡視船に衝突してきたからだ。中国国内では、この事実すら正確に報じられていないのは遺憾だ。
中国側には国内で弱腰批判を浴びないためにも、日本に強い姿勢を示さざるを得ない事情があるとみられる。弱気の対応に出れば、反日ムードが反政府運動に転化しかねないと恐れているとの指摘もある。
中国政府が北京、上海などで厳重警備を敷き、反日デモの拡大を抑えようとしているのも、そんな懸念からだろう。だとすれば、中国がとるべき行動は逆ではないか。強硬措置を連発して対立の火に油を注ぐのではなく、深刻になる前に対立を鎮めるよう冷静な行動に徹してほしい。