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:2010:09/24/09:21 ++ 日本の金型技術を守るのは当然だが、科学予算に若手の目を(社説)
自動車用金型のメーカーの事業統合を、官民の共同出資で設立した企業再生支援機構が公的資金で後押しすることになった。モノ作りの基となる生産要素技術を、どう守り強化したらよいか。日本の製造業が直面する課題が試されるケースである。
金型は金属の圧縮加工やプラスチック成型などに欠かせない。何百万個という単位で均一な製品を作るうえで、決定的な役割を果たす。
それは文字通り日本のモノ作りの基盤のような存在だ。日本の製造業が生産拠点を海外に移転しても、手作りの精密製品の多い金型の海外生産は容易でないことから、日本で作って海外に輸出する例も多い。
支援機構が乗り出すのは、そんな産業としての重要性を考慮したからだろう。最大手のオギハラが2009年にタイの自動車部品大手タイサミットの傘下に入り、工場の1つが中国の自動車メーカーBYDオートに売却された。その際、要素技術の流出が問題になった経緯もある。
統合するのは、自動車用金型で国内2位の富士テクニカと、3位の宮津製作所(群馬県大泉町)だ。富士テクニカは特別清算する宮津製作所から事業を譲り受け、支援機構が53億円を出資する。富士テクニカへの支援機構の出資比率は8割となる。
金型産業を支援するのはよいとして、メーカーを支援機構の傘下に収める形となる今回の決定は、これまでの支援機構側の説明で十分な納得が得られるかどうか疑問が残る。再建を政府が手助けするからには、2社の金型技術が他社にはないほど貴重なことを示す必要がある。とりわけ宮津製作所は債務超過だ。
支援を決めるまでの過程にも、課題を残した。支援に税金を使うことの是非について、事前に様々な議論にさらすべきではなかったか。
両社の低迷は自ら招いた面が大きい。記者会見で宮津製作所の宮村哲人社長は「原価管理がうまくできなかった」と認め、富士テクニカの糸川良平社長からは「金型業界はこの50年間、環境変化に対応してこなかった」との反省の弁があった。
筆頭株主となる支援機構の責任は重い。リストラを確実に実施し、競争力を回復させることで、出資金が焦げ付くことのないようにするのが、最低限の努めだ。
支援機構は金型以外の分野でも自ら触媒役になり、企業再編を促そうとしている。約1万社もある金型業界の再編が進むならよいが、国の介入で競争をゆがませ、市場から退出すべき企業を温存するようなことだけは、避けるよう心がけてほしい。
政府の科学技術予算の配分に、若手の研究者の声を反映させる仕組みが動き出した。新しい試みであり、成果に注目したい。
内閣府の総合科学技術会議は毎年、各省庁の来年度予算概算要求に含まれる科学技術予算について、専門家の目からどの研究を取り上げるべきか優先度を決めている。これまでは年長で影響力の大きい研究者が中心となり官僚とともに配分を決めてきた。今年は20歳代から40歳ごろまでの若い研究者が参加している。
世界と競い、年齢的にも創造性が高い若手世代の選択眼を政策判断に加える。そうすれば、資金の配分をより研究最前線の現実に即し、効率的なものにできるはずだ。
参加する若手は政府の研究費を得た実績を持つ独り立ちした研究者だ。総合科技会議は全国の約千人に文書で意見を求め、約40人が優先度判定の会議に加わる。会議のメンバーのおよそ3割が若手になった。
若手に求められるのは、自らの研究の宣伝ではない。いま日本がどの分野に優先して予算を投入すべきかを見極める見識だ。専門家の資質を試される試練でもあり、しっかり意見を述べてほしい。総合科技会議や省庁は若手の考えを誠実に受け止め、反映に努めるべきだろう。
首相が議長を務める総合科技会議は、科学技術政策を決める司令塔の役割を担うべき組織だ。現実には役所の要望を束ねる程度の機能しか果たしていなかった。若手参加の試みは評価できるが、これで本来の任務をこなしたとは到底言えない。
経済成長を実現し地球環境問題などに対処するため技術革新への期待が高い。財政を考えれば、約3・6兆円の科学技術関係予算を大きく増やせる状況ではない。過去に投じた研究資金が有効に使われたのか。効果の判定を踏まえ、慣例やしがらみに縛られない配分が求められる。
政府内には、総合科技会議のほかにも、宇宙開発戦略本部や情報通信技術戦略本部など、科学技術に関係する分野で司令塔的な役割をもつ組織がある。相互に政策や予算の調整が十分ではなく、省庁の縦割りを許している。政策全体を見渡し、針路を示せる真の司令塔をつくるべき時でもある。
金型は金属の圧縮加工やプラスチック成型などに欠かせない。何百万個という単位で均一な製品を作るうえで、決定的な役割を果たす。
それは文字通り日本のモノ作りの基盤のような存在だ。日本の製造業が生産拠点を海外に移転しても、手作りの精密製品の多い金型の海外生産は容易でないことから、日本で作って海外に輸出する例も多い。
支援機構が乗り出すのは、そんな産業としての重要性を考慮したからだろう。最大手のオギハラが2009年にタイの自動車部品大手タイサミットの傘下に入り、工場の1つが中国の自動車メーカーBYDオートに売却された。その際、要素技術の流出が問題になった経緯もある。
統合するのは、自動車用金型で国内2位の富士テクニカと、3位の宮津製作所(群馬県大泉町)だ。富士テクニカは特別清算する宮津製作所から事業を譲り受け、支援機構が53億円を出資する。富士テクニカへの支援機構の出資比率は8割となる。
金型産業を支援するのはよいとして、メーカーを支援機構の傘下に収める形となる今回の決定は、これまでの支援機構側の説明で十分な納得が得られるかどうか疑問が残る。再建を政府が手助けするからには、2社の金型技術が他社にはないほど貴重なことを示す必要がある。とりわけ宮津製作所は債務超過だ。
支援を決めるまでの過程にも、課題を残した。支援に税金を使うことの是非について、事前に様々な議論にさらすべきではなかったか。
両社の低迷は自ら招いた面が大きい。記者会見で宮津製作所の宮村哲人社長は「原価管理がうまくできなかった」と認め、富士テクニカの糸川良平社長からは「金型業界はこの50年間、環境変化に対応してこなかった」との反省の弁があった。
筆頭株主となる支援機構の責任は重い。リストラを確実に実施し、競争力を回復させることで、出資金が焦げ付くことのないようにするのが、最低限の努めだ。
支援機構は金型以外の分野でも自ら触媒役になり、企業再編を促そうとしている。約1万社もある金型業界の再編が進むならよいが、国の介入で競争をゆがませ、市場から退出すべき企業を温存するようなことだけは、避けるよう心がけてほしい。
政府の科学技術予算の配分に、若手の研究者の声を反映させる仕組みが動き出した。新しい試みであり、成果に注目したい。
内閣府の総合科学技術会議は毎年、各省庁の来年度予算概算要求に含まれる科学技術予算について、専門家の目からどの研究を取り上げるべきか優先度を決めている。これまでは年長で影響力の大きい研究者が中心となり官僚とともに配分を決めてきた。今年は20歳代から40歳ごろまでの若い研究者が参加している。
世界と競い、年齢的にも創造性が高い若手世代の選択眼を政策判断に加える。そうすれば、資金の配分をより研究最前線の現実に即し、効率的なものにできるはずだ。
参加する若手は政府の研究費を得た実績を持つ独り立ちした研究者だ。総合科技会議は全国の約千人に文書で意見を求め、約40人が優先度判定の会議に加わる。会議のメンバーのおよそ3割が若手になった。
若手に求められるのは、自らの研究の宣伝ではない。いま日本がどの分野に優先して予算を投入すべきかを見極める見識だ。専門家の資質を試される試練でもあり、しっかり意見を述べてほしい。総合科技会議や省庁は若手の考えを誠実に受け止め、反映に努めるべきだろう。
首相が議長を務める総合科技会議は、科学技術政策を決める司令塔の役割を担うべき組織だ。現実には役所の要望を束ねる程度の機能しか果たしていなかった。若手参加の試みは評価できるが、これで本来の任務をこなしたとは到底言えない。
経済成長を実現し地球環境問題などに対処するため技術革新への期待が高い。財政を考えれば、約3・6兆円の科学技術関係予算を大きく増やせる状況ではない。過去に投じた研究資金が有効に使われたのか。効果の判定を踏まえ、慣例やしがらみに縛られない配分が求められる。
政府内には、総合科技会議のほかにも、宇宙開発戦略本部や情報通信技術戦略本部など、科学技術に関係する分野で司令塔的な役割をもつ組織がある。相互に政策や予算の調整が十分ではなく、省庁の縦割りを許している。政策全体を見渡し、針路を示せる真の司令塔をつくるべき時でもある。
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