(2007/09/02 05:10
:2025:02/03/21:54 ++ [PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
:2007:09/05/11:43 ++ 【正論】新・安倍内閣発足 拓殖大学海外事情研究所所長・森本敏 テロ特措法は国益に合致
≪与野党にとっての最大争点≫
テロ特別措置法改正は臨時国会で安倍新内閣にとっても与野党にとっても最大争点になる。その背景は小沢民主党代表がこれを廃案とすることにより解散・総選挙に持ち込もうとしているからである。しかし、そうなるかどうかは、海上自衛隊がインド洋から撤退することが国益を損なうか否か、その責任は安倍政権にあるか、反対した小沢民主党にあるかを国際社会や国内世論がどう判断するかによるであろう。
国際社会では米中枢同時テロ事件以降、テロ活動があらゆる地域で続いている。アフガンでは韓国人の人質が漸(ようや)く解放されたものの、アルカーイダやタリバンの残余勢力が活動し不安定な状況にある。米国とNATO諸国などは同時テロ事件の2001年10月からアフガンでの作戦を開始し、37カ国による国際治安支援部隊と米軍の約5万人が対テロ活動を続けている。
アフガン南東部とパキスタン北東部にまたがる国境地域で訓練を受けたイスラム・テログループは陸路、イラン経由で湾岸地域に出る以外に、パキスタン国内を経由してインド洋に出て麻薬を持ち出し、購入した武器弾薬をアフガンに持ち込んだり、欧州・アジアに出てテロ活動に従事している。このインド洋でのイスラム・テロ活動を臨検・拿捕(だほ)するために各国艦艇による阻止活動が行われてきた。
我が国は01年11月にテロ特措法を成立させ、海上自衛隊の補給艦と護衛艦を派遣し、現在までに11カ国の艦艇やへリの燃料、飲料水を補給し各国から大変な評価を受けてきた。海上自衛隊がこの4年半、灼熱(しゃくねつ)のインド洋で頑張ってきた努力に、感謝すべきである。
≪決して対米追随ではない≫
特に、パキスタンのように日本の補給艦のみを頼って活動を続けてきた海軍もあり、先週来日したメルケル・ドイツ首相も安倍総理に日本のインド洋での貢献に謝意を表明し、その活動継続を要請している。
世界の40カ国以上がこのアフガンでの対テロ活動に参加している時に、ここから撤退するような国が国連で重要な地位や役割を占めることができるはずはない。米国は同盟国日本の活動継続に大きな期待を寄せているが、我が方としても北朝鮮や中国を含め日本の安全保障上のリスクに米国の同盟協力なくして対応できないことは現実の問題である。ただ、インド洋での海上自衛隊の活動は決して対米追随ではなく、実態としても海上自衛隊が支援しているのは米国以外にフランス、ドイツ、パキスタンなどを含んでいる。他方、これら各国の海軍艦艇による海上阻止活動は麻薬・テロリスト・武器などの押収に多大の成果を挙げているが、それを具体的に開示することは抑止効果を減少させ、また、日本だけの成果ではないため無理がある。
≪支援継続のための修正案≫
小沢代表はこの特措法がそもそも、国連安保理決議の根拠のない活動であるという指摘をしている。確かにアフガン作戦は当初、米英が自衛権を行使して始めたものだが、この特措法は国連安保理決議の趣旨に基づき、これに参加するためのものであり、国連安保理決議があれば何でも正義だという考え方は間違っている。とりわけこの改正案を廃案にして対テロ活動から撤退するような政党に政権担当能力があるとは、米国を含めどの国も思わないであろう。
とはいえ、民主党が反対する限り国会運営上は改正案成立が困難であることに変わりはない。民主党に理解と協力を得るために政府・与党は柔軟に対応する余地を示しているが、現実の手段としては現行法の内容、特に、活動内容や活動期間を修正するという方法があろう。また、一般法や新規立法による根拠法の変更という考え方もある。イラク復興支援特別措置法と組み合わせて航空輸送をアフガン地方復興支援チーム(PRT)に拡大する代わりにインド洋の活動を一定期間続けるという妥協もあり得る。
海上自衛隊を引く代わりに各国艦艇が困らないように給油・給水の手当てを別の手段で確保するやり方もある。いずれにしても日本が現在の国際社会で各国が努力している対テロ活動に積極的に参加・協力している断固とした姿勢を維持することが国益に合致する事を国民のすべてが理解しなければならない。
11月1日に期限を迎える現行法改正については国会で最後の瞬間まで、十分に議論を尽くして欲しい。この国会での議論が、我が国が国際社会における真の平和と安定を希求し、犠牲を払ってもそのための実質的な貢献を行う勇気と決断力を持っているかどうかを証明するであろう。
(もりもと さとし)
- +TRACKBACK URL+