:2025:02/13/00:21 ++ [PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
:2009:02/20/09:09 ++ 【正論】衆議院議員、弁護士・稲田朋美 公務員改革論議に欠けるもの
政治がポピュリズムに毒されていないか。政治家が世論に迎合し、マスコミからの批判を恐れて言うべきことを言わず、反論すべきことを反論しないようでは、国は危うい。
いま話題の公務員の「天下り」(各府省による再就職のあっせん)「わたり」(2回目以降の天下り)について昨年末、限定的な条件で最長3年間だけ認めた政令がいわれなき非難をあびた。麻生総理は政令はあっても実際には承認しないと答弁し、さらに、今年中に政令上も禁止すると明言した。
総理の判断をとやかく言うつもりはない。だが、その前提として、「法律で禁止された天下りやわたりをこっそり認める政令をつくった」などという全く事実無根の濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)は、きっぱりと晴らすべきである。
安倍政権下の平成19年、改正国家公務員法が成立し、各府省のあっせんによる天下りなどを禁止した。あっせんは新設する「官民人材交流センター」に一本化する。ただし3年間(正確には3年以内で政令で定める日まで)の移行期間に限っては、各府省のあっせんをごく例外的な場合に認めることとした(改正国公法附則5条)。
≪天下り根絶の本質論は≫
これはいわば車が急ブレーキをかけて止まるまでの“制動距離”のようなものである。なお、総理の承認権限は新設する監視委員会に委任する予定であったが、監視委員会の委員が野党の不同意で決まらなかった。委員会が設立されるまでの間は総理自身が承認することとされたが、これとて何の違法性もない。
なぜ、このいわれなき中傷に対し反論しないのか。野党ならともかく自民党内部で政令を批判し、世論迎合の意見ばかりが噴出していることに情けない気持ちでいっぱいになった。いったい、だれがあの改正国公法をつくったのだ、と。
問題は、天下り根絶がなぜ必要なのかという本質論が欠けていることだ。それは官民の癒着や行政のゆがみ(業界偏重)をなくすことだ。
許認可権限の及ぶ業界への再就職が念頭にあれば、どうしても業界に甘くなり、消費者保護、国民目線の行政が劣化する。それが、たとえば「消費者庁」という役所を新たにつくらなければならなくなった理由だろう。国民の行政不信、ひいては政治不信を払拭(ふっしょく)するには、行政の中立公正さを損なう天下りは根絶しなければならない。
しかし、民主党が言うように、天下り根絶で12・6兆円の予算削減ができるというのは真っ赤な嘘(うそ)である。天下り職員のいる公益法人などの公的事業をすべて廃止するという絵空事を前提とした数字である。天下り職員の人件費はその1%ほどにすぎない。
ただ、そのような嘘がまかり通るのも天下りがあるからだ。これを根絶することで、増えゆく社会保障費を賄う消費税増税など国民負担への拒絶反応は緩和されるはずだ。
従来、退職後2年間は許認可の及ぶ営利企業への再就職は自粛とされた。今回、官民人材交流センターへの一元化で2年の縛りがなくなり、特殊技能をもつ官僚はセンターを通じていつでもあっせんを受けられる。とすれば、官民癒着によるゆがみを正すことはできない。
≪真の公僕集団をつくれ≫
さらに、禁止される天下りには、あっせんによらない自分の才覚で見つける再就職は含まないから、その意味でも官民癒着はなくならない。やはり、在職期間の長さに応じた一定期間はいかなるルートであれ、許認可の及ぶ業界などへの再就職を禁止すべきである。
ただし、肩たたきで役所を追い出されながら、許認可の及ぶ先への再就職も事実上禁止され路頭に迷うということではいけない。そんな不安定な職場に有為の人材が集まることは期待し難く、それでは角を矯めて牛を殺す結果になる。定年までは働けることにし、ケースによって給料の据え置きや引き下げにより人件費を抑えることを考えるべきである。
それでも、一時的には人件費の総額は増加するだろう。だが、しかし長期的視野で考えれば、これまで天下りを受け入れさせられた民間企業や公益法人などの人件費は削減できる。国民トータルとしての負担は確実に軽減されるはずだ。
いま一度、公務員制度改革の本旨は何かという原点に立ち戻るべきだ。国民の行政への信頼を回復するための議論をしなければ、国家の行く末を誤ることになる。国家有為の人材が集い、目を輝かせて国益と国民の幸福のために滅私奉公、切磋琢磨(せっさたくま)する公僕の集団をいかにつくるか。これができれば官民人材交流センターも消費者庁も基本的には必要ない。(いなだ ともみ)
- +TRACKBACK URL+