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:2008:06/06/09:17 ++ 物価高の波紋(上)10兆円押しつけ合い―資源高転嫁、再編の圧力。
原油、鉄鉱石など天然資源や穀物など食料品の価格高騰が日本経済を揺さぶっている。海外発の物価高は一九七〇年代の二度にわたる石油危機のような衝撃をもたらすのか。物価上昇が産業界や消費者にもたらす影響度を探る。
鉄鋼大手が主要顧客と繰り広げた鋼材値上げ交渉。決着したかに見えるが火種が残る。英豪系リオ・ティントが豪州産鉄鉱石の値上げを求めているのだ。すでにブラジル産は六五%上げで決着。これを元に鋼材価格が決まったが、豪州産も上がると鉄鋼業界の負担はさらに膨らみ、鋼材再値上げが現実味を帯びる。
終着点が見えない資源高の重圧。企業はぎりぎりのコスト削減で圧力吸収に努めてきたが、それにも限界がある。「潮目は変わった」(トヨタ自動車の渡辺捷昭社長)
例えば原油。中東産ドバイ原油は五月下旬に最高値の一バレル一二八ドル台をつけ、昨年度平均より七割近く高くなった。この水準が今年度いっぱい続くと、年間約十五億バレルの原油を使う日本全体の調達コストは円高効果を差し引いても、前年度に比べ七兆円程度膨らむ見込みだ。鉄鉱石と石炭の高騰で鉄鋼原料のコストも三兆円増える見通し。合わせると二〇〇八年度だけで十兆円の資源高コストが日本にのしかかる。
食料高も直撃。十月に再値上げが見込まれる輸入小麦の場合、今年度のコストは約千二百億円拡大。トウモロコシや製油用大豆・菜種を合わせると四千億円程度になる。
長く続いた買い手優位から売り手優位への世界経済大転換。業種・企業間でコスト増を押しつけ合う攻防が広がる。
鉄鋼各社が一トンあたり三万円前後値上げした鋼材。鉄鋼業界は三兆円のコスト増の八割を顧客に転嫁した計算になる。各業界の負担は建設六千億円強、自動車五千億円弱などとなったもようだ。
原油のコスト増七兆円で同様の試算をすると、今年度の負担増が最も大きいのは、原油使用量が最も多い化学業界で二兆二千億円。電力や紙パが続く。しかしこれだけで十兆円のババ抜きの勝敗は見えない。原料高を製品価格にどれだけ反映できるかがカギを握る。
意外な健闘組が化学。原料高を樹脂価格に自動反映する仕組みを入れているため転嫁が進んでいる。逆に受注時に船価が決まってしまう造船は苦しい。今年度の鋼材コスト増は千百億円と業界全体の利益の二倍近くに達し、「赤字になる会社も出るのでは」(三井造船の岩崎民義常務)。値上げできる業種・企業と、そうでないところでは競争力に大差がつく。
所得流出28兆円
十兆円の資源コスト増はそれだけの富が日本から流出することを意味する。資源以外も勘定に入れると、一―三月期の海外への所得流出(交易損失、年率換算)は約二十五兆円。第一生命経済研究所によると四―六月期には二十八兆円に膨らむ見込みだ。その分国内需要が減りかねないが、見方を変えれば海外にはそれだけの「新市場」がある。コマツは四月、海外で建機を平均三%値上げした。とりわけ「資源国は上げやすい」(野路国夫社長)。海外で値上げできれば資源マネーの一部が日本に環流する。
未曽有の資源高は業種や国をまたぐ歴史的な所得移転を促し、産業勢力図を一変させる。すでに資源高再編の号砲は鳴り、味の素と伊藤ハムは五月末に提携。鉄鋼最大手アルセロール・ミタルは豪州石炭会社に出資し、「我々はもはや単なる鉄鋼会社ではない」(ミタル会長)と宣言した。
原材料費が上がらないことを前提にした経営はもはや成立しないが、需要が低迷する国内市場での価格転嫁も容易ではない。企業間の価格攻防は激化し、そのうねりは産業構造の転換を迫る。
鉄鋼大手が主要顧客と繰り広げた鋼材値上げ交渉。決着したかに見えるが火種が残る。英豪系リオ・ティントが豪州産鉄鉱石の値上げを求めているのだ。すでにブラジル産は六五%上げで決着。これを元に鋼材価格が決まったが、豪州産も上がると鉄鋼業界の負担はさらに膨らみ、鋼材再値上げが現実味を帯びる。
終着点が見えない資源高の重圧。企業はぎりぎりのコスト削減で圧力吸収に努めてきたが、それにも限界がある。「潮目は変わった」(トヨタ自動車の渡辺捷昭社長)
例えば原油。中東産ドバイ原油は五月下旬に最高値の一バレル一二八ドル台をつけ、昨年度平均より七割近く高くなった。この水準が今年度いっぱい続くと、年間約十五億バレルの原油を使う日本全体の調達コストは円高効果を差し引いても、前年度に比べ七兆円程度膨らむ見込みだ。鉄鉱石と石炭の高騰で鉄鋼原料のコストも三兆円増える見通し。合わせると二〇〇八年度だけで十兆円の資源高コストが日本にのしかかる。
食料高も直撃。十月に再値上げが見込まれる輸入小麦の場合、今年度のコストは約千二百億円拡大。トウモロコシや製油用大豆・菜種を合わせると四千億円程度になる。
長く続いた買い手優位から売り手優位への世界経済大転換。業種・企業間でコスト増を押しつけ合う攻防が広がる。
鉄鋼各社が一トンあたり三万円前後値上げした鋼材。鉄鋼業界は三兆円のコスト増の八割を顧客に転嫁した計算になる。各業界の負担は建設六千億円強、自動車五千億円弱などとなったもようだ。
原油のコスト増七兆円で同様の試算をすると、今年度の負担増が最も大きいのは、原油使用量が最も多い化学業界で二兆二千億円。電力や紙パが続く。しかしこれだけで十兆円のババ抜きの勝敗は見えない。原料高を製品価格にどれだけ反映できるかがカギを握る。
意外な健闘組が化学。原料高を樹脂価格に自動反映する仕組みを入れているため転嫁が進んでいる。逆に受注時に船価が決まってしまう造船は苦しい。今年度の鋼材コスト増は千百億円と業界全体の利益の二倍近くに達し、「赤字になる会社も出るのでは」(三井造船の岩崎民義常務)。値上げできる業種・企業と、そうでないところでは競争力に大差がつく。
所得流出28兆円
十兆円の資源コスト増はそれだけの富が日本から流出することを意味する。資源以外も勘定に入れると、一―三月期の海外への所得流出(交易損失、年率換算)は約二十五兆円。第一生命経済研究所によると四―六月期には二十八兆円に膨らむ見込みだ。その分国内需要が減りかねないが、見方を変えれば海外にはそれだけの「新市場」がある。コマツは四月、海外で建機を平均三%値上げした。とりわけ「資源国は上げやすい」(野路国夫社長)。海外で値上げできれば資源マネーの一部が日本に環流する。
未曽有の資源高は業種や国をまたぐ歴史的な所得移転を促し、産業勢力図を一変させる。すでに資源高再編の号砲は鳴り、味の素と伊藤ハムは五月末に提携。鉄鋼最大手アルセロール・ミタルは豪州石炭会社に出資し、「我々はもはや単なる鉄鋼会社ではない」(ミタル会長)と宣言した。
原材料費が上がらないことを前提にした経営はもはや成立しないが、需要が低迷する国内市場での価格転嫁も容易ではない。企業間の価格攻防は激化し、そのうねりは産業構造の転換を迫る。
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