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:2008:08/12/10:34 ++ 第2部イノベーション再び(1)トップ企業の決断(価値を創る停滞を越えて)
安住捨て モデル自ら
原油高に揺れる石油元売り最大手、新日本石油が総合エネルギー企業に変身する――。壮大な試みが福岡県前原市で十月から始まる。第一弾としてLPガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電する燃料電池を百五十家庭に設置、電力を供給する。
需要先細り直視
将来は太陽光発電などに蓄電池を組み合わせて必要な電力を確保する構想。地域全体を「ミニ発電所」とすることで、巨額の費用がかかる大規模な発電所や送変電設備を持たないのが特徴だ。
この実証実験に技術を提供するのが新日本石油だ。一万弱の系列ガソリンスタンドを抱えるが、自動車の燃費効率の向上などでガソリン需要は三年連続で減った。今後は電気自動車の普及も見込まれる。もはや「ガソリン販売が減ることは前提」と社長の西尾進路(67)。先細りする需要には社員も不安感を募らせていたが、トップが危機を直視する姿勢を示すことで創業百二十年の老舗の転身に弾みがつく。
四月に三洋電機から家庭用燃料電池事業を事実上買収するなど、要素技術の確保には布石を打った。エネルギー事業が軌道に乗れば、顧客は十億世帯以上とされる世界中の家庭に広がる。システムを売ってほしい――。早くもインドなどからラブコールがかかる。
アナログからデジタルへの転換や資源高など、企業の競争環境は従来の延長線上にはない。これまでリストラや海外市場の開拓で利益を伸ばしてきたが、収益環境も厳しさを増す。自ら事業モデルを作り、競争力を高めることが、今こそ日本企業に問われる。
インターネットの日本語検索サービスの先駆者「goo(グー)」には苦い経験がある。
ネット普及期の一九九八年、米社の検索システムにNTT研究所の日本語解析技術を組み合わせたグーの技術は画期的な検索効率を誇った。日本における検索サービスのデファクトスタンダード(事実上の標準)の獲得に迫っていた。
ただ、当時はネット広告ビジネスの夜明け前。事業主体のNTTは電話事業など、規制に守られた通信が本業だ。赤字覚悟で先行投資する意欲も、検索技術でネット事業の覇権を握ろうという気概もなかった。通信市場をほぼ独占していた強さが逆に弱みになった。
ネット界の激流の中でグーだけが足を止め、間げきを縫ったヤフーが日本の五割弱の検索シェアを確保。さらに後発のグーグルは米国でシェア六割超の巨大企業に成長した。今やグーグルの株式時価総額は日本円換算で約十六兆円と、NTTのほぼ二倍に達する。
成熟市場を席巻
筆記具で国内最大手のパイロットコーポレーション。背中のラバー部分でこすると、書いた文字が消えるボールペン「フリクションボール」を成熟市場の欧州、日本で大ヒットさせた。さらに今春からは最大市場の米国でも販売を始めた。
中心となって開発した常務の中筋憲一(65)は「摩擦による温度でインクの色を透明に変える」と謎解きをする。インクは色が変わらないほど高品質という業界の常識を覆して製品化したことがヒットの秘訣だ。
さらに「他社も類似商品を出してくるはず」と見て「消せる」技術をプリンターのトナーなどに転用し「消せる印刷物」の開発を始めた。印字関連に事業を広げ、付加価値の高いインク製品の販売事業を確立する狙い。
経済のグローバル化が進み、ネット経由で瞬く間に世界に情報が伝わる現在、強力なモデルにも新しい挑戦者がすぐに現れる。「デファクトは簡単に取って代わられる時代」(日本総合研究所主任研究員の藤田哲雄=42)になった。小さな成功体験に安住せず「破壊と創造」を繰り返すことが一段と重要になる。
◇
資源・原料高にあおられ、世界で景気後退の不安感が高まりつつある。いかに価値を創(つく)り、成長を実現するか。伝統、常識、成功体験など革新を阻む壁を乗り越えて、イノベーションの力を取り戻そうとする企業の姿を追った。=敬称略
(「価値を創る」取材班)
日経ネットPLUS(http://netplus.nikkei.co.jp)で関連情報を掲載しています。ご意見もこちらへお寄せください。
原油高に揺れる石油元売り最大手、新日本石油が総合エネルギー企業に変身する――。壮大な試みが福岡県前原市で十月から始まる。第一弾としてLPガスから取り出した水素を空気中の酸素と化学反応させて発電する燃料電池を百五十家庭に設置、電力を供給する。
需要先細り直視
将来は太陽光発電などに蓄電池を組み合わせて必要な電力を確保する構想。地域全体を「ミニ発電所」とすることで、巨額の費用がかかる大規模な発電所や送変電設備を持たないのが特徴だ。
この実証実験に技術を提供するのが新日本石油だ。一万弱の系列ガソリンスタンドを抱えるが、自動車の燃費効率の向上などでガソリン需要は三年連続で減った。今後は電気自動車の普及も見込まれる。もはや「ガソリン販売が減ることは前提」と社長の西尾進路(67)。先細りする需要には社員も不安感を募らせていたが、トップが危機を直視する姿勢を示すことで創業百二十年の老舗の転身に弾みがつく。
四月に三洋電機から家庭用燃料電池事業を事実上買収するなど、要素技術の確保には布石を打った。エネルギー事業が軌道に乗れば、顧客は十億世帯以上とされる世界中の家庭に広がる。システムを売ってほしい――。早くもインドなどからラブコールがかかる。
アナログからデジタルへの転換や資源高など、企業の競争環境は従来の延長線上にはない。これまでリストラや海外市場の開拓で利益を伸ばしてきたが、収益環境も厳しさを増す。自ら事業モデルを作り、競争力を高めることが、今こそ日本企業に問われる。
インターネットの日本語検索サービスの先駆者「goo(グー)」には苦い経験がある。
ネット普及期の一九九八年、米社の検索システムにNTT研究所の日本語解析技術を組み合わせたグーの技術は画期的な検索効率を誇った。日本における検索サービスのデファクトスタンダード(事実上の標準)の獲得に迫っていた。
ただ、当時はネット広告ビジネスの夜明け前。事業主体のNTTは電話事業など、規制に守られた通信が本業だ。赤字覚悟で先行投資する意欲も、検索技術でネット事業の覇権を握ろうという気概もなかった。通信市場をほぼ独占していた強さが逆に弱みになった。
ネット界の激流の中でグーだけが足を止め、間げきを縫ったヤフーが日本の五割弱の検索シェアを確保。さらに後発のグーグルは米国でシェア六割超の巨大企業に成長した。今やグーグルの株式時価総額は日本円換算で約十六兆円と、NTTのほぼ二倍に達する。
成熟市場を席巻
筆記具で国内最大手のパイロットコーポレーション。背中のラバー部分でこすると、書いた文字が消えるボールペン「フリクションボール」を成熟市場の欧州、日本で大ヒットさせた。さらに今春からは最大市場の米国でも販売を始めた。
中心となって開発した常務の中筋憲一(65)は「摩擦による温度でインクの色を透明に変える」と謎解きをする。インクは色が変わらないほど高品質という業界の常識を覆して製品化したことがヒットの秘訣だ。
さらに「他社も類似商品を出してくるはず」と見て「消せる」技術をプリンターのトナーなどに転用し「消せる印刷物」の開発を始めた。印字関連に事業を広げ、付加価値の高いインク製品の販売事業を確立する狙い。
経済のグローバル化が進み、ネット経由で瞬く間に世界に情報が伝わる現在、強力なモデルにも新しい挑戦者がすぐに現れる。「デファクトは簡単に取って代わられる時代」(日本総合研究所主任研究員の藤田哲雄=42)になった。小さな成功体験に安住せず「破壊と創造」を繰り返すことが一段と重要になる。
◇
資源・原料高にあおられ、世界で景気後退の不安感が高まりつつある。いかに価値を創(つく)り、成長を実現するか。伝統、常識、成功体験など革新を阻む壁を乗り越えて、イノベーションの力を取り戻そうとする企業の姿を追った。=敬称略
(「価値を創る」取材班)
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