「各省からの回答は不十分。折衝はこれから十日間がヤマ場だ」。十月三十一日朝、渡辺喜美行政改革担当相は経団連会館で七十人弱の企業トップらを前に独立行政法人改革で熱弁を振るった。
報告は焼き直し
会合は同相の申し入れによるもので、経済界側からは「一定の期間がたてば組織を見直すのは当たり前」(前田晃伸みずほフィナンシャルグループ社長)などの檄(げき)が飛んだ。
「小さな政府」を目指して小泉・安倍政権が路線を敷いた独法改革は福田政権になって風前のともしびだ。原因は与党の参院選大敗で激変した政治状況と官僚の露骨なサボタージュ。
九月末、政府の行政改革推進本部は福田政権発足を待って独法の整理合理化の検討状況を所管省庁に報告を求めた。
ところが返ってきたのは「検討継続」やすでに決まっている見直し案を焼き直した報告が大半で、新たな統廃合はゼロ回答。再三の催促にもかかわらず霞が関は石のように動かない。
経済官庁幹部は「衆院解散がささやかれるなかで、真剣に独法改革に取り組む役所などない」と言い切る。民主党に政権が移れば計画が根底から覆りかねない。永田町の関心が政局に集中しつつあるのを見透かしているのだ。
行革本部と役所の溝は深まるばかり。国立印刷局・造幣局が整理合理化のやり玉に挙がっている財務省。「貨幣の信認は国が守るべきで、行革本部の民営化議論は問題です」。与野党を問わず分厚い反論資料を携えた財務省幹部が議員に「ご説明」に回る姿は、国会周辺で今や日常風景だ。
業を煮やした渡辺行革相は、もはや役所に頼らず、独法事業の買収・廃止提案を民間から募る戦略に切り替えた。
三十一日の経団連スピーチでも都市再生機構など個別名をあげ、役所との対決姿勢を強めるが、永田町・霞が関では孤立無援の行革本部が年末に決める整理合理化計画に向け、どこまで切り込めるかは不透明だ。
資料も出さず
安倍政権で重要課題だった公務員制度改革でも、独法への天下り人数の総量規制や、複数の公益法人への退職を繰り返す「渡り」の禁止は、官僚の抵抗で宙に浮く。
構造改革の大きな柱の規制改革の先行きにも暗雲が垂れ込めている。
「必要ならおれが文部科学大臣と掛け合ってやる」。規制改革を担当する内閣府の岸田文雄特命担当相が先週、怒りを爆発させた。事務方が文科省の対応放棄ともとれる態度を説明したからだ。
規制改革会議で教育・研究分野は、金融や労働、競争政策などと並ぶ重点テーマ。事務局は指導要領見直しなどの進ちょく状況を問い合わせているのに、同省は「八月から説明にも来ず、資料も出さない」(会議筋)という。
規制改革会議は政令に基づき省庁に資料や説明要求できる強い権限が与えられている。協力拒否が行き過ぎれば政令違反で告発もできるのだが、各省庁の動きは鈍い。最近は新たな改革に取り組まないばかりか「過去に閣議決定した規制改革の方針を骨抜きにしようとする役所さえある」(同)という。
官から民に仕事を移す行政改革や規制改革は、政府を小さく効率よく運営するためには不可欠な政策だ。その改革が逆走してしまえば、日本の成長力強化も財政再建もおぼつかない。
【図・写真】規制改革も官のサボタージュで暗雲が…
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:2007:11/02/16:13 ++ 逆走ニッポン(3)「小さな政府」どこへ――政局にらみ、官僚動かず。
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