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:2007:12/24/15:43 ++ 電機再編、震源地はテレビ―今年国内、来年は世界規模?(経営の視点)
米ネットサービス会社のAOLの会員数が千七百万人を突破、ピーク時利用者が米CNNのゴールデンタイム視聴者数を上回ったと報じられたのは一九九九年四月のことだ。パソコンが全能の神として君臨し、テレビが茶の間の主役を降板するのは時間の問題と論じる人も多かった。
だが二〇〇七年が終わろうとする現時点でもテレビは依然としてエレクトロニクス産業の王様である。年間一億八千万台の世界需要があり、業界再編やM&A(合併・買収)を誘発する影響力も保持している。
シャープが二十一日に発表した東芝との提携や、九月に合意したパイオニアとの資本・業務提携は、いずれもシャープ製液晶パネルの売り込み先確保の色彩が濃い。シャープの片山幹雄社長は記者会見で「液晶工場の安定操業につながる」と繰り返した。〇三年に韓国サムスン電子が液晶パネルの大口顧客となるソニーと組んだのと似た構図で、テレビ主導型の連携だ。
会見で東芝の西田厚聡社長は日立製作所、松下電器産業と共に設立した液晶パネル製造会社IPSアルファテクノロジについて「出資分を売却する方向で検討中」と明言。十九日に表面化した松下によるIPS子会社化という再編も事実上追認した。
日本ビクターが松下の傘下を離れ、ケンウッドと経営統合すると発表したのは七月。ビクターのテレビ事業が音響機器メーカーのケンウッドを引き寄せた。これに先立ちビクターの引受先として仏電機大手トムソンや外資系ファンドなどが浮上しては消えた。「テレビ技術が海外に流出するのを霞が関や松下が懸念した」とビクターの元役員は語る。業績不振が続く中でも、液晶の倍速表示技術を初めて実用化したビクターは安易に売却できなかった。
三七年、新興財閥を率いる鮎川義介氏が、米電機大手RCAからビクターを買ったのは、四〇年に「幻の東京五輪」(後に戦争のため返上)が開催されればテレビ放送が始まると読んだからだ。戦後、松下幸之助氏がビクター株を引き取ったのも、RCAがビクターを買収して再上陸すれば「テレビ事業は日本では育たなくなる」という危機感ゆえの防戦買いだった。
今も昔も電機再編の震源地はテレビ。ブラウン管式テレビの生産ピークは〇四年の一億六千万台超だが、途上国では今も20型以下のブラウン管式が主力。仏トムソンからブラウン管工場を買い、テレビ分野で存在感を高めたインドのビデオコンは今年三月、横浜に液晶テレビの研究開発拠点を構えた。まずブラウン管で市場を押さえ、次に薄型で攻める筋書きは、製鉄所買収を重ねて高品質の自動車鋼板まで手掛けるようになった鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルと重なる。
〇七年は日本勢同士の電機再編が一気に進んだ。例外はソニーが自社開発した有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビの発売だ。他社への供給余力はまだないものの、パネル調達のサムスン全面依存からソニーが脱した意義は大きい。インドの新興勢力台頭と並び、〇八年に世界規模の電機再編を促す触媒の誕生を予感させる。
(編集委員 竹田忍)
だが二〇〇七年が終わろうとする現時点でもテレビは依然としてエレクトロニクス産業の王様である。年間一億八千万台の世界需要があり、業界再編やM&A(合併・買収)を誘発する影響力も保持している。
シャープが二十一日に発表した東芝との提携や、九月に合意したパイオニアとの資本・業務提携は、いずれもシャープ製液晶パネルの売り込み先確保の色彩が濃い。シャープの片山幹雄社長は記者会見で「液晶工場の安定操業につながる」と繰り返した。〇三年に韓国サムスン電子が液晶パネルの大口顧客となるソニーと組んだのと似た構図で、テレビ主導型の連携だ。
会見で東芝の西田厚聡社長は日立製作所、松下電器産業と共に設立した液晶パネル製造会社IPSアルファテクノロジについて「出資分を売却する方向で検討中」と明言。十九日に表面化した松下によるIPS子会社化という再編も事実上追認した。
日本ビクターが松下の傘下を離れ、ケンウッドと経営統合すると発表したのは七月。ビクターのテレビ事業が音響機器メーカーのケンウッドを引き寄せた。これに先立ちビクターの引受先として仏電機大手トムソンや外資系ファンドなどが浮上しては消えた。「テレビ技術が海外に流出するのを霞が関や松下が懸念した」とビクターの元役員は語る。業績不振が続く中でも、液晶の倍速表示技術を初めて実用化したビクターは安易に売却できなかった。
三七年、新興財閥を率いる鮎川義介氏が、米電機大手RCAからビクターを買ったのは、四〇年に「幻の東京五輪」(後に戦争のため返上)が開催されればテレビ放送が始まると読んだからだ。戦後、松下幸之助氏がビクター株を引き取ったのも、RCAがビクターを買収して再上陸すれば「テレビ事業は日本では育たなくなる」という危機感ゆえの防戦買いだった。
今も昔も電機再編の震源地はテレビ。ブラウン管式テレビの生産ピークは〇四年の一億六千万台超だが、途上国では今も20型以下のブラウン管式が主力。仏トムソンからブラウン管工場を買い、テレビ分野で存在感を高めたインドのビデオコンは今年三月、横浜に液晶テレビの研究開発拠点を構えた。まずブラウン管で市場を押さえ、次に薄型で攻める筋書きは、製鉄所買収を重ねて高品質の自動車鋼板まで手掛けるようになった鉄鋼世界最大手アルセロール・ミタルと重なる。
〇七年は日本勢同士の電機再編が一気に進んだ。例外はソニーが自社開発した有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)テレビの発売だ。他社への供給余力はまだないものの、パネル調達のサムスン全面依存からソニーが脱した意義は大きい。インドの新興勢力台頭と並び、〇八年に世界規模の電機再編を促す触媒の誕生を予感させる。
(編集委員 竹田忍)
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