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:2011:02/03/09:00 ++ 「物価高で政情不安」の広がりをどう防ぐ(社説)
世界経済が全体として金融危機後の落ち込みから回復を続ける中で、想定外の乱気流が広がってきた。米国などの空前の金融緩和は、新興国のインフレに火を付けた。食料価格高騰を引き金にチュニジアで政変が起き、アラブの大国エジプトに飛び火した政治危機は国際政治情勢を大きく揺さぶる可能性をはらむ。
ロンドン先物市場の原油相場は1バレル100ドルを突破し、資源価格の一段の上昇は、世界景気の足を引っ張る要因にもなる。こうした先行きの不確実性が強まるのをいかに抑えるかが、世界の緊急の課題である。
過大な変動抑える知恵
金融危機後の世界では先進国の金融や財政が抱えるリスクが焦点になり、成長のエンジンとして新興国に頼る傾向が強まった。その新興国のリスクも強く意識されるようになったのが、最近の大きな変化だ。
1日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は1万2000ドルの大台を回復し、2日の東京市場の日経平均株価も大幅高だった。その一因は昨年10~12月期の企業業績が好調なことだが、グローバル化した有力企業は収益の多くを新興国で稼ぐ経営に変わりつつある。
新興国に共通する懸念は急激な物価の上昇だ。中国の消費者物価上昇率も5%前後で推移している。多くの新興国で、昨年11月に米連邦準備理事会(FRB)が金融の量的緩和第2弾を打ち出してからインフレが加速した。先進国から新興国への投資資金の流入に加え、穀物や原油などの相場上昇の影響が大きい。
商品相場上昇の材料は新興国の需要増加に伴う需給逼迫の懸念だが、いま世界で深刻な供給不安が生じているわけではなく、在庫もかなりある。一方、2008年に商品価格が高騰した時のピークと比べて、直近のシカゴ先物市場の小麦の建玉は19%、ロンドン先物市場の北海ブレント原油の建玉は48%も多い。
米国がデフレ回避のため実施した超金融緩和に伴って先物市場への資金の流入が増え、金融要因で相場変動が増幅したことは否定できない。
先進国が自らのリスクに対応するためにとった策が、新興国のリスク拡大につながり、それは先進国側の新たなリスクになって跳ね返る。
日本は円高で商品相場上昇の影響をある程度吸収しているが、欧州のユーロ圏ではエネルギー、食料を中心に1月の消費者物価指数は前年同月比2・4%上昇し、欧州中央銀行が物価安定の目安とする「年2%未満」を2カ月連続で上回った。
ギリシャ、アイルランドなどの財政危機と一体になった域内金融機関の信用不安への対応に加えて、物価への目配りも必要になり、欧州の金融政策のかじ取りは難しくなった。
こうした状況下で、フランスのサルコジ大統領は商品先物投資の規制強化を提唱し、20カ国・地域(G20)が今年取り組むべき優先課題の一つに位置付けている。
08年に1バレル140ドル以上まで高騰した原油価格が30ドル前後まで急落、いま再び100ドル水準に上昇するなど、金融要因に左右されやすくなった商品相場の変動は確かに極端だ。
米国の先物市場の監督機関はヘッジファンドなど実需と関係ない投資家の建玉の上限設定に加えて、取引所外での相対取引にも制限を設けようとしている。相対取引をどこまで把握して規制できるか実効は微妙で、反対論もあるが、過大な相場変動を抑える対策は必要である。主要国はこの点で知恵を絞るべきだ。
人材育成の協力拡充を
中東・北アフリカの政治のきしみの最大の要因は、人口急増で膨張する若年層の雇用機会が足りないことだ。多くの若者に職がない中で、支出のうちの大きな比率を占める食料の価格が急騰し、独裁への不満が一気に爆発する結果になった。
言論の自由、汚職の追放、公正で透明な選挙の実現……。民主化の進展は大いに歓迎すべきだ。ただし、独裁政権が急激に崩壊して「力の空白」が生じ、社会の混乱が長期化して過激派の活動が強まるような事態は、避けなければならない。
民主化の過程でイスラム原理主義組織が影響力を強める例も多いが、穏健なイスラム勢力の政治参加は中長期的な安定に欠かせないだろう。
エジプトでは、野党勢力も含めて自由選挙に至るまでの政治体制の大枠について早急に合意を形成する必要がある。事態がまだ切迫していない国でも、段階的な民主化の道筋を国民に示していく必要がある。主要国は政治体制の円滑な移行の側面支援を求められる。その必要性は中東・北アフリカに限らない。
雇用創出は一朝一夕には進まないが、社会の安定には不可欠だ。日本も近年、各国の人材育成への協力を中東外交の柱の一つに据えるようになった。中小企業の育成などもあわせ、こうしたソフトパワーによる支援をさらに拡充していくべきだ。
ロンドン先物市場の原油相場は1バレル100ドルを突破し、資源価格の一段の上昇は、世界景気の足を引っ張る要因にもなる。こうした先行きの不確実性が強まるのをいかに抑えるかが、世界の緊急の課題である。
過大な変動抑える知恵
金融危機後の世界では先進国の金融や財政が抱えるリスクが焦点になり、成長のエンジンとして新興国に頼る傾向が強まった。その新興国のリスクも強く意識されるようになったのが、最近の大きな変化だ。
1日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は1万2000ドルの大台を回復し、2日の東京市場の日経平均株価も大幅高だった。その一因は昨年10~12月期の企業業績が好調なことだが、グローバル化した有力企業は収益の多くを新興国で稼ぐ経営に変わりつつある。
新興国に共通する懸念は急激な物価の上昇だ。中国の消費者物価上昇率も5%前後で推移している。多くの新興国で、昨年11月に米連邦準備理事会(FRB)が金融の量的緩和第2弾を打ち出してからインフレが加速した。先進国から新興国への投資資金の流入に加え、穀物や原油などの相場上昇の影響が大きい。
商品相場上昇の材料は新興国の需要増加に伴う需給逼迫の懸念だが、いま世界で深刻な供給不安が生じているわけではなく、在庫もかなりある。一方、2008年に商品価格が高騰した時のピークと比べて、直近のシカゴ先物市場の小麦の建玉は19%、ロンドン先物市場の北海ブレント原油の建玉は48%も多い。
米国がデフレ回避のため実施した超金融緩和に伴って先物市場への資金の流入が増え、金融要因で相場変動が増幅したことは否定できない。
先進国が自らのリスクに対応するためにとった策が、新興国のリスク拡大につながり、それは先進国側の新たなリスクになって跳ね返る。
日本は円高で商品相場上昇の影響をある程度吸収しているが、欧州のユーロ圏ではエネルギー、食料を中心に1月の消費者物価指数は前年同月比2・4%上昇し、欧州中央銀行が物価安定の目安とする「年2%未満」を2カ月連続で上回った。
ギリシャ、アイルランドなどの財政危機と一体になった域内金融機関の信用不安への対応に加えて、物価への目配りも必要になり、欧州の金融政策のかじ取りは難しくなった。
こうした状況下で、フランスのサルコジ大統領は商品先物投資の規制強化を提唱し、20カ国・地域(G20)が今年取り組むべき優先課題の一つに位置付けている。
08年に1バレル140ドル以上まで高騰した原油価格が30ドル前後まで急落、いま再び100ドル水準に上昇するなど、金融要因に左右されやすくなった商品相場の変動は確かに極端だ。
米国の先物市場の監督機関はヘッジファンドなど実需と関係ない投資家の建玉の上限設定に加えて、取引所外での相対取引にも制限を設けようとしている。相対取引をどこまで把握して規制できるか実効は微妙で、反対論もあるが、過大な相場変動を抑える対策は必要である。主要国はこの点で知恵を絞るべきだ。
人材育成の協力拡充を
中東・北アフリカの政治のきしみの最大の要因は、人口急増で膨張する若年層の雇用機会が足りないことだ。多くの若者に職がない中で、支出のうちの大きな比率を占める食料の価格が急騰し、独裁への不満が一気に爆発する結果になった。
言論の自由、汚職の追放、公正で透明な選挙の実現……。民主化の進展は大いに歓迎すべきだ。ただし、独裁政権が急激に崩壊して「力の空白」が生じ、社会の混乱が長期化して過激派の活動が強まるような事態は、避けなければならない。
民主化の過程でイスラム原理主義組織が影響力を強める例も多いが、穏健なイスラム勢力の政治参加は中長期的な安定に欠かせないだろう。
エジプトでは、野党勢力も含めて自由選挙に至るまでの政治体制の大枠について早急に合意を形成する必要がある。事態がまだ切迫していない国でも、段階的な民主化の道筋を国民に示していく必要がある。主要国は政治体制の円滑な移行の側面支援を求められる。その必要性は中東・北アフリカに限らない。
雇用創出は一朝一夕には進まないが、社会の安定には不可欠だ。日本も近年、各国の人材育成への協力を中東外交の柱の一つに据えるようになった。中小企業の育成などもあわせ、こうしたソフトパワーによる支援をさらに拡充していくべきだ。
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