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:2007:12/13/08:57 ++ 【正論】帝京大学教授・志方俊之 防衛省の全てを見直す好機
≪3年間で防衛大臣が6人≫
テロ特措法の期限切れで酷暑のインド洋で6年近く給油活動に当たった海上自衛隊が帰国を命ぜられた。わが国がおろそかにしてきた防衛政策が今、その欠陥である曖昧(あいまい)さを曝(さら)け出したのである。
政治的に微妙で外交的に急ぐ必要があったから当初、特措法で切り抜けたのは分かる。しかし、それから何年たっても、しっかりとした恒久法を作らず、最近3年間で6人の防衛大臣(長官)が代わるという状況が続いたのだ。政局が動いて内閣が代わっても外務大臣と防衛大臣だけは頻繁に代えてはならないのだ。
二言目には「文民統制」と言うが、政治不在のままでは、防衛官僚にその真意を明確に自覚させることは難しい。
政軍関係について外国では政治優先(Political Leadership)という表現を使っている。これは政治が軍事に優先するということで、わが国ではなぜかこれを文民統制(Civilian Control)と呼んでいるから、その意味を誤解する者が出てくる。
≪文民統制を誤解する職員≫
そうなると、防衛官僚の中に、文民統制とは背広を着た官僚が制服を着た自衛官を統制することだと思い込む者が出てくる。しばしば制服組と内局官僚間の確執を問題視する向きもあるが、現実には、マスコミが興味本位に取りざたするほどではない。
制服組はこれを仕事を進める上での「秩序」と受け止め極めて冷静に対応している。
制服自衛官には激しい異動があり、しかも中央を離れることが多い。第一線部隊での教育訓練、災害派遣、海外での活動に忙しく、政治に対して細部まで説明するほどの余裕はない。
したがって、背広組の防衛官僚が政治との接点に立ち、予算を取り、装備を取得し、施設を整備し、これらを維持・管理するのが当然なのである。
守屋問題を契機に3日始動した「防衛省改革会議」は、文民統制の徹底、防衛装備品調達の透明化、情報保全体制の厳格化を3本柱として、基本に立ち返り抜本的な改革を行う、としている。現内閣は官房長、外務・防衛両大臣を実務型の人材で固めており、防衛省も人事を刷新したばかりだから、改革のタイミングはこの機を逃してはならない。
徹底的に膿(うみ)を出しきらなければ、当分そのチャンスは巡ってこない、との意気込みで取り組んでもらいたい。
防衛官僚と制服自衛官との関係であるが、トップレベルの調整の場である防衛参事官会議の制度を見直すとき、制服組と文民官僚との役職分担のサンドイッチ構造を防衛省の各局レベルまで拡大して両者の接触面積を大きくすることが必要だ。
≪幹部候補生に現場体験を≫
国家公務員の上級試験に合格すると、現場を知らないまま出世の階段をのぼる。その弊害をなくすため、まず幹部候補生学校に3カ月ないし半年程度の体験課程を新設し、両者の相互理解を深めるシステムを構築することを考えてもよい。
さらに、地方協力本部だけでなく、第一線部隊の何らかの職場、例えば業務隊などを若い文民官僚にも開放し、若いころから制服組と接触させることが重要だろう。防衛装備品の調達見直しでは、現在商社に任せている仕事(情報収集と分析、製造者との折衝、資料整備、アフターケアなど)を省内部に持つとなれば、多くの専門的識見を持つ人材を省内に抱え込む必要がある。
総定員を一定として組織を組み替えると、結局その「しわ寄せ」は第一線部隊に集まる。そうなれば、ただでさえ低い部隊の充足率はさらに低下して訓練することさえ難しくなる。
また、若年定年制を採っている自衛隊は、いま識見を必要とする分野に限って定年後も雇用を続けるケースがあるが、その数は限られている。
特定の装備に関する識見しかない自衛官は、民間では全く「つぶし」が利かないから、定年後に装備を扱う商社勤めをすることは本人にも商社にも一石二鳥である。このほか、地方自治体における国民保護訓練の助言者としても活躍の場は広がっている。
要は癒着体質は監視し、かつ官民協働の実をあげる知恵を出さなければならない。
これを「天下り」と指弾するのは簡単だ。だが、若年定年制をやめれば自衛隊員の超高齢化が進む。もちろん自衛隊といえども公務員ではあるが、第一線部隊の充足を減らすことは何としても避けたい。改革会議が生み出す国家としての知恵に期待する。(しかた としゆき)
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