(2007/09/04 05:16)
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:2007:09/05/11:54 ++ 【正論】新・安倍内閣発足 竹中平蔵 問われる大臣の専門性・戦略性
≪改革力と政治的胆力の強化≫
8月27日内閣改造が行われた。今回の改造には、2つのポイントがあった。第1は、参院選挙における政府・与党への厳しい評価を受けて、「政策力・改革力」を強化すること。第2は、政治資金疑惑や閣僚失言などの反省に立って、「政治的胆力」を強化することである。
結果を見ると、派閥領袖クラスのベテランを登用するなど、「政治的胆力」の強化が重視された布陣となった。しかし「政策力・改革力」の強化という観点では、従来よりもむしろ後退する内閣となった。そのなかであえて期待される点を挙げるなら、専門性・戦略性を有する幾人かの新大臣の奮起である。
参院選における与党敗退については、都市・地方を問わずセーフティー・ネットの拠り所である年金に関する不祥事への怒り、閣僚失言への怒りなどが、与党への批判票となった。ただ都市においては、無党派層を中心に改革への支持は根強い。これに対し地方では、地域活性化のための政策が不十分であることへの不満が、与党へのさらなる批判票となった。
地方の批判に応えるには、政策面でいくつかのことを行わねばならない。もちろん財政のばらまきではない。まず、地域活性化に繋(つな)がる農業の構造改革である。地域の再生は、地方の基盤産業である農業の競争力強化なくしてはありえない。このためには従来のように保護・規制による農政ではなく、農地法改正を含む規制緩和型の抜本的改革を検討せねばならない。
≪トライアングルとの対決≫
さらに地方に必要なのは、地方の公共投資配分、地域別の経済産業政策を国ではなく道州に委ねるような、大胆な分権の実現である。要するに、改革をより広くより深く進めること、そして貧困対策を含むセーフティー・ネットの強化(これもまた改革の一部である)を進めること以外、国民の不満に応える道はないのである。
その意味で「改革を進めるために続投する」と明言した安倍総理の姿勢は間違っていない。これを人事の面で明確にすることが、今回の内閣改造の目的であった。改革によって地方や中小企業が疲弊したという誤った考え、また改革によって格差が拡大したといったような意味不明な批判にとまどうことなく、堂々とこれを否定する布陣を敷くことが必要であった。
しかしながら今回、塩崎恭久官房長官、菅義偉総務大臣といった安倍内閣における改革の主役が、ことごとく閣外に去る結果となった。代わって、官僚との折り合いを重視する与謝野馨官房長官などベテラン政治家が主要閣僚に就いた。ここで明確にしなければならないのは、官僚・族議員・(既得権をもつ)業界団体というトライアングルと対決することなしに、改革は進められないという点である。こうした既得権益の代弁者の役割を果たしているのが官僚である。したがって官僚依存であるということは、すなわち抜本的な改革はしないということを意味している。郵政省の役人に任せておいて郵政民営化はできないし、厚生労働省の役人に任せておいて真の社会保険庁の改革はありえないのである。
≪“政策通”より政策専門家≫
霞が関には“政策通”という言葉がある。官僚の言うことを理解し、それを実行してくれる政治家である。少なくとも、官僚の言うことを理解できる人という意味では褒め言葉だが、決して政策の専門家であることを意味していない。結局は官僚のシナリオ通りに動いてくれるという意味であり、批判言葉であることを認識すべきだ。安倍総理が続投するのはまさに改革のためであることを考えると、真に改革の実行できる専門性と戦略性を持つ閣僚の登場こそが期待されるのである。官僚と議論しそれを論破できる専門性と、さらに実行する戦略性が、新内閣の閣僚には求められる。
そうした点で言うと、今回の内閣改造で“政策通”といわれる、つまり抜本改革が期待できない閣僚の影響力が強まるとみられる点は、大きな懸念材料である。ただし一方で、岩手県知事を経験した増田寛也氏が総務大臣になったことに象徴されるように、専門性と戦略性に期待できる閣僚も一部にはいる。こうした新閣僚がどこまで頑張れるかによって、改革の行方は大きく左右されることになる。
改革の先送りとポピュリズム的な財政ばらまきが、日本経済の「失われた10年」を生み出した。日本をとりまくグローバル経済の厳しい現状を踏まえ、専門性と戦略性をもち改革を進める閣僚が登場し、それを総理が全面的にバックアップすることを期待したい。(たけなか へいぞう)
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