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:2008:10/30/10:10 ++ 特集―健康と医療フォーラム2008、医療現場、ITが開く、ネットワーク活用。
医師不足、医療費の増大、安全管理――。医療現場が抱える問題は山積している。解決策として、IT(情報技術)を活用した新たな仕組みづくりが進んでいる。複数の病院や診療所が連携して一人の患者の治療にあたる体制構築も各地で進む。診療記録の電子データ化で病院内の業務効率改善や医療ミス防止も進みつつある。生活や産業を大きく変えたITは医療のあり方にも変容を迫っている。
日本の医療制度が直面している様々な課題を解決する切り札としてITが注目を集めている。厚生労働省が掲げる「地域医療連携」は、大学病院や公立病院といった大規模な医療機関と、地域の病院や診療所をネットワークでつなぎ、診療記録や患者情報を共有するシステムを軸に問題を克服しようとする取り組みだ。大手のIT各社が手がけるシステムの活用例も全国に広がっている。
ITを活用した地域連携を国内で初めて実現したのは富士通だ。一九九九年に島根県立中央病院(島根県出雲市)と組み、撮影したエックス線などの画像をやりとりして遠隔診断に利用できる仕組みを整えた。その後、電子カルテに連動させてネットワークともつなぐなど、システムの規模を拡大してきた。
地域連携システムが目指すのは、診療所やクリニックといった地域密着で患者の健康を支える「かかりつけ医」と、入院や手術、救急救命にも対応できる大規模病院の医師が役割を分担しながら連携することによる医療の質の向上だ。
日ごろ診てもらっている診療所のかかりつけ医が精密検査や手術が必要と感じた患者を地域の中核病院に紹介する。病院ではネットワークを通じて、診療所での過去の病歴や投薬歴などを確認したうえで、正確な診療ができる。カルテを共有すれば、病院側も手術や退院後の経過観察など、患者の状況をかかりつけ医に引き継ぎやすくなる。
地域連携システムでは、患者データを中核病院側に設置した大型データベース(DB)に蓄積する。かかりつけ医はネットワークにつないだ診療所のパソコンからDBにアクセスし、電子カルテなどのデータを引き出して閲覧する。患者のプライバシーに配慮し、データをやりとりする回線には、ネット上に構築した仮想私設網(VPN)を使うなど、高いセキュリティー対策も施している。
地域連携システムは医療現場の問題解決に光を差す技術だ。例えば、増大する国民医療費の問題。かかりつけ医と病院側の医師の間で患者の情報をうまく共有していれば、同じような検査や診察が複数の医療機関で重複することを避けられるため、結果として医療費の抑制にもつながる。
大病院に集中しがちな患者を、軽症だったり生活習慣の管理が必要だったりするケースでは、診療所に任せるといった地域の医療機関の役割分担も可能となることから、地域によっては深刻な医師不足の解消に役立つとの期待感もある。
IT各社もシステムの販売拡大に力を入れ始めている。富士通は二〇〇七年、これまで全国で構築してきたシステムのノウハウを集約し、パッケージシステムとして発売した。日本ユニシスも〇八年八月、診療所やクリニックが地域の中核病院のシステムと情報共有するための電子カルテシステムを発売した。
NTTデータも糖尿病の治療に特化し、患者の生活支援をしやすくするシステムの販売拡大を進めている。NECや日立製作所といったシステム構築事業を手がける他の企業もこの分野に力を入れている。
ただ、経営がふるわないためIT投資に手が回らない医療機関も多く、普及は限定的との見方もある。
診察や検査といったそれぞれの診療行為には、症例などに応じた「診療報酬」という全国共通の価格が定められている。収益悪化で経営難に陥ったとしても、医療機関は自らの判断でサービスの単価を引き上げることができない。
高齢化を背景に膨張する一方の医療費を抑制するため、政府は原則二年に一度の改定のたびに診療報酬を引き下げるか実質横ばいに抑えてきたことから、現状では収入が大幅に増えることを期待しにくい。
かつて厚労省の補助金を得て地域連携システムを導入したが、運用コストが賄えないために今では使うのをやめてしまった病院もあるという。ITに関する専門知識を持つスタッフを置く医療機関も少なく、自分たちではシステムを管理しきれない事情もある。
厚労省は振興策として、〇六年四月の診療報酬改定では大腿(だいたい)骨の骨折、〇八年四月の改定では脳梗塞(こうそく)について、地域の医療機関がIT活用による連携で診療計画を策定した場合に、報酬点数を特別加算する制度を取り入れた。今後も状況に応じて適用症例を順次増やしていく方針だ。
重点計画の一つとして「医療機関のIT化」を推し進める厚労省。地域連携医療ネットワークを拡大するには医療機関に対する支援が欠かせないようだ。
病院の中でもITを活用した業務改善が進む。政府が診療記録を電子データで保存することを認めたのは一九九九年四月。それ以来、電子カルテを導入する病院や診療所は急増した。ITの進展に伴い、医療の電子化は経営効率を高めていくだけではなく、医師と患者の相互理解を助けるツールにもなり得るとの考え方が広がりつつある。
医療法人鉄蕉会が運営する亀田総合病院(千葉県鴨川市)は、パソコンや携帯電話を介して患者が自分の電子カルテをいつでも閲覧できるシステムを導入している。利用登録しておけば、医師が書いた治療方針や検査結果などを確認できる。専門用語で記載されているため、患者自身もある程度の医学知識が必要だが、自分がどのような状態で、治療の目的が何かを確かめられるため、治療の満足度を高める効果があるという。
カルテと併せて電子化が進んでいるのはエックス線診断装置などで撮影した画像だ。従来のフィルムに代わり、電子データとしてサーバーに記録するシステムの導入が進む。
東京都の臨海副都心にある癌研有明病院(東京・江東)は、医用画像情報ネットワークシステム(PACS)を使い、医療現場からフィルムを無くした。電子カルテと連動し、病歴や過去の検査結果を参照しながら読影医が画像を判断する。画像は診察室など院内各所でいつでも見られるようにした。
病院内の安全管理にもITは活用されている。薬の瓶や医療機器にバーコードを付け、院内の薬や医療機器の使用状況や在庫を管理。読み取り機を看護師が使いこなすことで、誤って違う患者に薬を投与するといった医療ミスを防ぐことが可能。
特別医療法人財団董仙会の恵寿総合病院(石川県七尾市)は心疾患の治療に使うカテーテル(医療用細管)をはじめとする高額な医療機器をICタグで管理している。非接触型のICタグを読み取り機にかざし、使った技師や医師を記録する。どの患者に使ったのかも記録に残して医療事故の再発防止に加え、診療報酬の請求漏れも防ぐ効果などを期待している。
政府は、病院が従来は紙で社会保険診療報酬支払基金に申請してきたレセプトの電子化も促しており、二〇一一年度からは全医療機関にオンライン請求が義務づけられる見通しだ。
ITの進展で医療機器も大きく様変わりした。撮影にフィルムを使っていたエックス線や胃カメラも、電子データで記録するのが一般的になってきた。これに伴いデータ量も年々増大する一方だ。画像処理技術の応用により、検査結果の使い方も多様化しており、装置の維持・メンテナンス手法も進化している。
体内を輪切りに撮影するコンピューター断層撮影装置(CT)。撮影機構が一回転する間に撮れる枚数は最高で三百二十枚までに増えた。画像のきめ細かさを示す分解能も一ミリメートル以下まで向上している。
さらに技術の進歩で、撮影データをもとに一部の臓器だけを取り出して立体画像に再構成したり、一定部位の血流を動画で表示したりできるようになった。例えば、がんの病巣部に流れ込む血管の場所を特定する、心臓が脈動する様子を見ながら心筋の動きを確かめるなどが可能となり、新たな診断・治療方法を生み出す源泉となっている。
装置の運用支援や保守管理にもITが活用されている。通信網を使い、病院に設置されたCTや磁気共鳴画像装置(MRI)の稼働状況をメーカーの保守管理拠点で把握する仕組みも一般的になりつつある。
米系医療機器メーカーのGE横河メディカルシステムは病院内に設置してあるのと同じシステムを閲覧しながら、検査方法や不具合の調整を電話で支援するサービスを手がけている。CTに内蔵するエックス線管球の異常を察知し、部品の受発注や技術者の現場派遣を自動で手配するシステムも年内には稼働させる。
東芝メディカルシステムズはMRIの稼働状況を個別に把握し、国内の標準的な病院との比較や運用改善のアドバイスを提供する体制を整えている。
日本の医療制度が直面している様々な課題を解決する切り札としてITが注目を集めている。厚生労働省が掲げる「地域医療連携」は、大学病院や公立病院といった大規模な医療機関と、地域の病院や診療所をネットワークでつなぎ、診療記録や患者情報を共有するシステムを軸に問題を克服しようとする取り組みだ。大手のIT各社が手がけるシステムの活用例も全国に広がっている。
ITを活用した地域連携を国内で初めて実現したのは富士通だ。一九九九年に島根県立中央病院(島根県出雲市)と組み、撮影したエックス線などの画像をやりとりして遠隔診断に利用できる仕組みを整えた。その後、電子カルテに連動させてネットワークともつなぐなど、システムの規模を拡大してきた。
地域連携システムが目指すのは、診療所やクリニックといった地域密着で患者の健康を支える「かかりつけ医」と、入院や手術、救急救命にも対応できる大規模病院の医師が役割を分担しながら連携することによる医療の質の向上だ。
日ごろ診てもらっている診療所のかかりつけ医が精密検査や手術が必要と感じた患者を地域の中核病院に紹介する。病院ではネットワークを通じて、診療所での過去の病歴や投薬歴などを確認したうえで、正確な診療ができる。カルテを共有すれば、病院側も手術や退院後の経過観察など、患者の状況をかかりつけ医に引き継ぎやすくなる。
地域連携システムでは、患者データを中核病院側に設置した大型データベース(DB)に蓄積する。かかりつけ医はネットワークにつないだ診療所のパソコンからDBにアクセスし、電子カルテなどのデータを引き出して閲覧する。患者のプライバシーに配慮し、データをやりとりする回線には、ネット上に構築した仮想私設網(VPN)を使うなど、高いセキュリティー対策も施している。
地域連携システムは医療現場の問題解決に光を差す技術だ。例えば、増大する国民医療費の問題。かかりつけ医と病院側の医師の間で患者の情報をうまく共有していれば、同じような検査や診察が複数の医療機関で重複することを避けられるため、結果として医療費の抑制にもつながる。
大病院に集中しがちな患者を、軽症だったり生活習慣の管理が必要だったりするケースでは、診療所に任せるといった地域の医療機関の役割分担も可能となることから、地域によっては深刻な医師不足の解消に役立つとの期待感もある。
IT各社もシステムの販売拡大に力を入れ始めている。富士通は二〇〇七年、これまで全国で構築してきたシステムのノウハウを集約し、パッケージシステムとして発売した。日本ユニシスも〇八年八月、診療所やクリニックが地域の中核病院のシステムと情報共有するための電子カルテシステムを発売した。
NTTデータも糖尿病の治療に特化し、患者の生活支援をしやすくするシステムの販売拡大を進めている。NECや日立製作所といったシステム構築事業を手がける他の企業もこの分野に力を入れている。
ただ、経営がふるわないためIT投資に手が回らない医療機関も多く、普及は限定的との見方もある。
診察や検査といったそれぞれの診療行為には、症例などに応じた「診療報酬」という全国共通の価格が定められている。収益悪化で経営難に陥ったとしても、医療機関は自らの判断でサービスの単価を引き上げることができない。
高齢化を背景に膨張する一方の医療費を抑制するため、政府は原則二年に一度の改定のたびに診療報酬を引き下げるか実質横ばいに抑えてきたことから、現状では収入が大幅に増えることを期待しにくい。
かつて厚労省の補助金を得て地域連携システムを導入したが、運用コストが賄えないために今では使うのをやめてしまった病院もあるという。ITに関する専門知識を持つスタッフを置く医療機関も少なく、自分たちではシステムを管理しきれない事情もある。
厚労省は振興策として、〇六年四月の診療報酬改定では大腿(だいたい)骨の骨折、〇八年四月の改定では脳梗塞(こうそく)について、地域の医療機関がIT活用による連携で診療計画を策定した場合に、報酬点数を特別加算する制度を取り入れた。今後も状況に応じて適用症例を順次増やしていく方針だ。
重点計画の一つとして「医療機関のIT化」を推し進める厚労省。地域連携医療ネットワークを拡大するには医療機関に対する支援が欠かせないようだ。
病院の中でもITを活用した業務改善が進む。政府が診療記録を電子データで保存することを認めたのは一九九九年四月。それ以来、電子カルテを導入する病院や診療所は急増した。ITの進展に伴い、医療の電子化は経営効率を高めていくだけではなく、医師と患者の相互理解を助けるツールにもなり得るとの考え方が広がりつつある。
医療法人鉄蕉会が運営する亀田総合病院(千葉県鴨川市)は、パソコンや携帯電話を介して患者が自分の電子カルテをいつでも閲覧できるシステムを導入している。利用登録しておけば、医師が書いた治療方針や検査結果などを確認できる。専門用語で記載されているため、患者自身もある程度の医学知識が必要だが、自分がどのような状態で、治療の目的が何かを確かめられるため、治療の満足度を高める効果があるという。
カルテと併せて電子化が進んでいるのはエックス線診断装置などで撮影した画像だ。従来のフィルムに代わり、電子データとしてサーバーに記録するシステムの導入が進む。
東京都の臨海副都心にある癌研有明病院(東京・江東)は、医用画像情報ネットワークシステム(PACS)を使い、医療現場からフィルムを無くした。電子カルテと連動し、病歴や過去の検査結果を参照しながら読影医が画像を判断する。画像は診察室など院内各所でいつでも見られるようにした。
病院内の安全管理にもITは活用されている。薬の瓶や医療機器にバーコードを付け、院内の薬や医療機器の使用状況や在庫を管理。読み取り機を看護師が使いこなすことで、誤って違う患者に薬を投与するといった医療ミスを防ぐことが可能。
特別医療法人財団董仙会の恵寿総合病院(石川県七尾市)は心疾患の治療に使うカテーテル(医療用細管)をはじめとする高額な医療機器をICタグで管理している。非接触型のICタグを読み取り機にかざし、使った技師や医師を記録する。どの患者に使ったのかも記録に残して医療事故の再発防止に加え、診療報酬の請求漏れも防ぐ効果などを期待している。
政府は、病院が従来は紙で社会保険診療報酬支払基金に申請してきたレセプトの電子化も促しており、二〇一一年度からは全医療機関にオンライン請求が義務づけられる見通しだ。
ITの進展で医療機器も大きく様変わりした。撮影にフィルムを使っていたエックス線や胃カメラも、電子データで記録するのが一般的になってきた。これに伴いデータ量も年々増大する一方だ。画像処理技術の応用により、検査結果の使い方も多様化しており、装置の維持・メンテナンス手法も進化している。
体内を輪切りに撮影するコンピューター断層撮影装置(CT)。撮影機構が一回転する間に撮れる枚数は最高で三百二十枚までに増えた。画像のきめ細かさを示す分解能も一ミリメートル以下まで向上している。
さらに技術の進歩で、撮影データをもとに一部の臓器だけを取り出して立体画像に再構成したり、一定部位の血流を動画で表示したりできるようになった。例えば、がんの病巣部に流れ込む血管の場所を特定する、心臓が脈動する様子を見ながら心筋の動きを確かめるなどが可能となり、新たな診断・治療方法を生み出す源泉となっている。
装置の運用支援や保守管理にもITが活用されている。通信網を使い、病院に設置されたCTや磁気共鳴画像装置(MRI)の稼働状況をメーカーの保守管理拠点で把握する仕組みも一般的になりつつある。
米系医療機器メーカーのGE横河メディカルシステムは病院内に設置してあるのと同じシステムを閲覧しながら、検査方法や不具合の調整を電話で支援するサービスを手がけている。CTに内蔵するエックス線管球の異常を察知し、部品の受発注や技術者の現場派遣を自動で手配するシステムも年内には稼働させる。
東芝メディカルシステムズはMRIの稼働状況を個別に把握し、国内の標準的な病院との比較や運用改善のアドバイスを提供する体制を整えている。
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