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:2011:02/03/08:50 ++ 第1部成長と停滞と(中)富は西から東へ―「地球」発想へ転換急務(不均衡な世界)
1月初め、あるネットオークションが欧州の安全保障関係者の注目を集めた。
1982年のフォークランド紛争にも派遣された英空母インビンシブル。退役したこの空母を処分するため英政府は昨年11月から競売にかけていたが、年明け早々、英国在住の中国人実業家が応札したという情報が駆け巡ったのだ。「実業家は空母を中国に運んで学校に使うと説明しているが、軍事転用の可能性がないか英政府が精査している」(在英の外交官)という。
この件に英国が神経をとがらせているのは、89年の天安門事件以来実施している欧州連合(EU)の対中武器禁輸の解禁論がEU内で浮上しているからだ。
新興国依存症
ギリシャの首都アテネ近郊のピレウス港。昨年10月に訪れた温家宝首相は、欧州向けの輸出拠点としてここに投資することを約束した。中国はスペインやポルトガルにも直接投資の拡大と国債の購入を約束。その見返りに武器輸出解禁への支持を各国に求めたとみられている。
米国が借金を膨らませて世界からモノを買い、中国など潤沢な外貨準備を持つ国が米国債を買って資金を供給する。「ブレトンウッズ2」とも呼ばれたこの構造は、2008年のリーマン危機でその持続性に疑問符がついた。
危機後の欧州でみられる光景は、金融も貿易も中国などに頼る「新興国依存症」だ。ギリシャなど南欧の赤字国は中国に国債を買ってもらい金融面で支えてもらう。ドイツなど黒字国は自動車など工業製品を新興国に輸出して稼ぐ。
国際通貨基金(IMF)の予測では11年の世界の実質経済成長率は4・4%。ただ、新興・途上国が6・5%と高い伸びになるのに対し、先進国は2・5%にとどまる。世界経済の「2速構造」は鮮明だ。
国内市場の拡大が見込めない先進国は新興国への輸出にまい進する。日米欧の量的緩和によるマネーも新興国に流れ込む。ヒト、モノ、カネがこぞって「西から東へ」と動く。
1月下旬にスイスのダボスで開いた世界経済フォーラム年次総会。09年は温家宝首相、10年には次期首相候補の李克強副首相を送り込んだ中国だが、今年は首脳級を派遣しなかった。
財政危機に苦しむ欧州各国首脳がダボスに顔をそろえた一方で、中国、インド、ブラジル首脳は姿を見せない。自信を強める新興国首脳らは欧米主導の国際秩序の象徴の一つである「ダボス会議」から、少しずつ距離を置き始めたようにもみえる。
世界貿易機関(WTO)、地球温暖化などの国際交渉の場で、中国、インドはまだ発展途上国の立場で権利を強調し、責任を伴う協調には消極的だ。中国の胡錦濤国家主席は先の訪米時に米ドル主導の国際通貨体制を「過去の遺物」と切り捨てたが、人民元改革には慎重で新通貨体制を主導する準備はない。
失われる資源
「中国の男性が毎週もう1本ビールを余計に飲むだけで、英国の大麦の年間生産量の5分の1が新たに必要になる」。英シンクタンクは、新興国が今のまま成長を続ければ、食料問題だけではなくエネルギーや水資源、地球温暖化への影響が果てしなく大きくなると警告する。
物質的な豊かさを目指して疾走する新興国。先進国は目先の市場の大きさに目を奪われて新興国へのモノの売り込みに血道をあげる。だが新興国がこのまま「資源多消費型」の成長を続ければ、いつか地球はそれを支えきれなくなる。
新興国に省エネ・環境技術を移転し「エコ型」経済への転換を促すことが、中長期でみれば先進国の利益にもなる。希少な資源を節約しながら、先進国と新興国が共存共栄できる新たな国際秩序づくりへ知恵と工夫を積み上げていく。均衡のとれた世界への一歩だ。
1982年のフォークランド紛争にも派遣された英空母インビンシブル。退役したこの空母を処分するため英政府は昨年11月から競売にかけていたが、年明け早々、英国在住の中国人実業家が応札したという情報が駆け巡ったのだ。「実業家は空母を中国に運んで学校に使うと説明しているが、軍事転用の可能性がないか英政府が精査している」(在英の外交官)という。
この件に英国が神経をとがらせているのは、89年の天安門事件以来実施している欧州連合(EU)の対中武器禁輸の解禁論がEU内で浮上しているからだ。
新興国依存症
ギリシャの首都アテネ近郊のピレウス港。昨年10月に訪れた温家宝首相は、欧州向けの輸出拠点としてここに投資することを約束した。中国はスペインやポルトガルにも直接投資の拡大と国債の購入を約束。その見返りに武器輸出解禁への支持を各国に求めたとみられている。
米国が借金を膨らませて世界からモノを買い、中国など潤沢な外貨準備を持つ国が米国債を買って資金を供給する。「ブレトンウッズ2」とも呼ばれたこの構造は、2008年のリーマン危機でその持続性に疑問符がついた。
危機後の欧州でみられる光景は、金融も貿易も中国などに頼る「新興国依存症」だ。ギリシャなど南欧の赤字国は中国に国債を買ってもらい金融面で支えてもらう。ドイツなど黒字国は自動車など工業製品を新興国に輸出して稼ぐ。
国際通貨基金(IMF)の予測では11年の世界の実質経済成長率は4・4%。ただ、新興・途上国が6・5%と高い伸びになるのに対し、先進国は2・5%にとどまる。世界経済の「2速構造」は鮮明だ。
国内市場の拡大が見込めない先進国は新興国への輸出にまい進する。日米欧の量的緩和によるマネーも新興国に流れ込む。ヒト、モノ、カネがこぞって「西から東へ」と動く。
1月下旬にスイスのダボスで開いた世界経済フォーラム年次総会。09年は温家宝首相、10年には次期首相候補の李克強副首相を送り込んだ中国だが、今年は首脳級を派遣しなかった。
財政危機に苦しむ欧州各国首脳がダボスに顔をそろえた一方で、中国、インド、ブラジル首脳は姿を見せない。自信を強める新興国首脳らは欧米主導の国際秩序の象徴の一つである「ダボス会議」から、少しずつ距離を置き始めたようにもみえる。
世界貿易機関(WTO)、地球温暖化などの国際交渉の場で、中国、インドはまだ発展途上国の立場で権利を強調し、責任を伴う協調には消極的だ。中国の胡錦濤国家主席は先の訪米時に米ドル主導の国際通貨体制を「過去の遺物」と切り捨てたが、人民元改革には慎重で新通貨体制を主導する準備はない。
失われる資源
「中国の男性が毎週もう1本ビールを余計に飲むだけで、英国の大麦の年間生産量の5分の1が新たに必要になる」。英シンクタンクは、新興国が今のまま成長を続ければ、食料問題だけではなくエネルギーや水資源、地球温暖化への影響が果てしなく大きくなると警告する。
物質的な豊かさを目指して疾走する新興国。先進国は目先の市場の大きさに目を奪われて新興国へのモノの売り込みに血道をあげる。だが新興国がこのまま「資源多消費型」の成長を続ければ、いつか地球はそれを支えきれなくなる。
新興国に省エネ・環境技術を移転し「エコ型」経済への転換を促すことが、中長期でみれば先進国の利益にもなる。希少な資源を節約しながら、先進国と新興国が共存共栄できる新たな国際秩序づくりへ知恵と工夫を積み上げていく。均衡のとれた世界への一歩だ。
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