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:2008:06/25/09:07 ++ 2007年モバイル広告市場は堆積型・二層式構造だった
これまでのモバイル広告市場の推移は、電通が毎年公表している「日本の広告費」から窺うことができる。
見解相違の背景となるモバイル広告市場の多面性
市場の黎明期から2006年頃までのモバイル広告市場の拡大の原動力となったのは、広告主サイドでは主にキャリア公式サイト上で有料コンテンツをユーザーに提供して収益を得るコンテンツプロバイダ(以下CP事業者)と、消費者金融事業者である。
モバイルインターネット上では、キャリアが運営する公式サイトの存在が、PCインターネットとは異なる、エンタテイメント系課金コンテンツビジネス主導型の独自の市場発展モデルを作り上げた。
CP事業者が公式サイト上で着メロ、着うた、ゲームなど同業カテゴリのコンテンツを提供する事業者と競争する際に、より優位に事業を行うためには、メニューカテゴリリストでいかに上位表示されるかということが命題となった。
CP事業者は、自社サイトが上位表示されるためには、ユーザートラフィックを多く獲得する必要があったため、アフィリエイト広告をはじめとして、様々なモバイル広告によるプロモーションを実施する必要に迫られた。
あるメディアレップによると、当初モバイル広告に出稿をする広告主の8割以上はCP事業者であったとのことである。
これを背景として、キャリア公式サイト上でのコンテンツ課金ビジネスが急拡大し続ける2006年頃までは、CP事業者によるモバイル広告支出は急激に拡大し続けたのである。
従来のモバイル広告市場の拡大は、その意味においては、モバイルコンテンツ市場拡大の波及効果がもたらしたものであり、モバイルコンテンツ課金ビジネスの発展がもたらした副産物であったといえよう。
消費者金融業は、PCインターネットメディア上にも多くの広告出稿を行っている業種であったが、モバイルメディアにも同様に積極的な広告出稿を行ってきた。
モバイルは、ユーザーが常に持ち歩き、パーソナルな情報収集機器であるため、ユーザーの緊急的な金融需要と、それに応えるサービス提供者とのマッチングの場としての効果をもたらす。
また、PCインターネット有力メディアにおける業種出稿規制、出稿枠の限界などにより、プロモーション領域をモバイルメディアに移してきたことも背景とし、消費者金融業のモバイル広告への出稿支出額は、2006年前半頃までは拡大し続けた。
その意味において、モバイル広告市場はPCインターネットの付随的あるいは補足的な媒体として、受動的な市場特性を持ちながら市場を拡大してきたともいえよう。
このように、モバイル広告市場黎明期から2006年頃までは、CP事業者と消費者金融業の2つの業種がモバイル広告市場を牽引し続けてきた。そして、これらの広告主を多く取り込んだ、広告代理店、メディアレップ、メディア媒体社は同時に売上業績を拡大し続けたのである。
モバイル広告市場におけるこの一連の流れが、「市場の第一階層」として位置づけられる。
モバイル広告市場における第二階層の形成
2000年頃に市場が形成されたモバイル広告市場は、2004年頃に大きな市場環境の変化を伴うことになった。
その大きな要因のひとつは、2004年頃よりキャリア各社がパケット定額料金サービスを提供し始めたことである。
各キャリアにおけるパケット定額料金サービスの導入は、潜在的な成長性を期待されながらも、不確実要素を伴っていたモバイル広告市場の成長性の要因を顕在化させることとなった。
それまでは市場の動向を注視しながらも、新規事業参入のタイミングを見定めていた事業者が、その成長性を見越して事業参入を開始した。
また、モバイル広告市場にすでに事業参入をしていた広告代理店などの事業者が、モバイル広告事業への経営資源の配分の比重を高めるようになったのもこの時期である。
2004年を前後として、メディアレップ事業者、メディア媒体社、広告配信事業者などのモバイル広告市場への新参入が相次いだ。
広告主サイドにおいては、既存のCP事業者、消費者金融事業者の広告出稿拡大トレンドの先行きが見定められるようになり、代わってこれまでモバイル広告への出稿をしていなかった新たな業種の広告主がモバイル広告を出稿し始めるようになった。
特に、ナショナルクライアントといわれる大手広告主が、消費者とのコミュニケーションの入り口あるいは到達ポイントとして、モバイルを有力なプロモーションツールと見始めた。
新しい広告主は、PCとは異なるプロモーションツールとしての価値を見出すことで、モバイル独自のプロモーション手法を展開し始めたのである。
このように、2004年前後以降の新規参入事業や、CP事業者や消費者金融事業者以外の新しい広告主が形成する市場が、「市場の第二階層」と位置づけられる。
モバイル広告市場は堆積型・二層式構造で成長
2007年のモバイル広告市場は、市場の黎明期よりその成長を担ってきた第一階層の事業者の収入、広告主の広告費支出に一服感が見られると同時に、第二階層に当たる事業者の収入と広告主の広告費支出が急激に拡大することにより大きな成長を遂げた。
事業者サイドにおける、2007年のモバイル広告市場の成長に貢献した大きな要因の1つが、モバイルリスティング広告市場の成長である。
2006年にモバイル広告市場に参入した「オーバーチュア」と「Google」は、キャリアや有力モバイルメディアとの提携により、広告配信ネットワークを急速に構築した。
その結果、「オーバーチュア」と「Google」は2007年のモバイル広告収入を急激に拡大させて、モバイル広告市場の成長に大きな貢献をしている。
新たなモバイルメディアの成長も2007年のモバイル広告市場の成長に大きな貢献をした。
2004年にモバイルサイトを開設し、2006年末にサイトリニューアルしてモバイル広告市場へ本格参入した「ミクシィ」は、2007年には「mixi モバイル」の広告収入が大幅に拡大した。
モバイルメディアとして、2007年のモバイル広告市場の成長に最も貢献したとされるDeNAの「モバゲータウン」のサイト開設は、2006年2月である。
このように、モバイル広告への新規参入事業者が市場成長に大きく貢献したことが2007年のモバイル広告市場の特徴的なポイントとして挙げられる。
次に、広告主サイドの変化を見るための一例として、ビジュアルワークスが運営する有力CGMサイト「フォレストページ」の広告主の動向を見ることにする。
フォレストページの2007年の広告収入は、2006年対比で大幅に拡大している。
以下は、フォレストページの2006年と2007年の1月から8月までの広告主業種別構成比を示した2つのグラフである。
2006年と2007年を比較すると、ナショナルクライアントの比率が大きく拡大していることが見て取れる。その他にもEコマース事業者の比率が高まっていることがわかる。
フォレストページでナショナルクライアントの広告出稿が拡大した要因は、従来モバイル広告市場で大きな構成比を占めていた「純広告」と呼ばれるメール広告や、ピクチャー広告ではなく、「編集・タイアップ型」の広告商品の企画・開発が、新たな広告主の需要に結びついたためである。
この広告主業種別構成比の変化は、新しい広告主と新しい広告商品が2007年のモバイル広告市場の成長につながった1つの要因を示しているといえよう。
以上のように、2007年のモバイル広告市場は、供給サイドから見た場合には、市場黎明期から参入していた事業者が構成する収入に加え、新たに市場に参入した事業者収入の貢献が加わったことで、大幅な市場の成長が実現されたことが見て取れる。
また、2007年に収入を拡大させた事業者は、従来からのメール広告やピクチャー広告にとどまらず、モバイルリスティング広告や、編集・タイアップ広告など、モバイル広告市場においての新しい広告商品の提供による事業収入の拡大を実現している。
モバイルリスティング広告や編集・タイアップ型広告などの新しい広告商品は、純広告と同様の広告流通プロセスを介さないケースもあることから、事業者の立ち位置によって、これらの広告商品による市場成長の恩恵を受けることがないことも多いに想定される。
その場合には、事業者によって「モバイル広告市場は成長している」と見えるか、「モバイル広告市場は一服感がある」と見えるかに相違が出てくることもあるのであろう。
また、広告主の動向から見た場合には、「フォレストページ」の広告主業種別支出構成比の変化を見てもわかるとおり、従来のCP事業者や、消費者金融事業者に加えて、新たにナショナルクライアントやEコマース事業者のモバイル広告への新規出稿拡大が、2007年のモバイル広告市場の成長の要因となっているのである。
このように、2007年のモバイル広告市場は、従来からの事業者収入と広告商品、広告主が形成する階層(第一階層)の上に、新規参入事業者収入、モバイル広告としての新しい商品、広告主が新たな階層(第二階層)が加わることで、高い成長を遂げたのである。
従って、2007年のモバイル広告市場の構造は、「堆積型・二層式」という言葉で特徴付けることができるのである。(担当:シード・プランニング 野下智之)
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