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:2009:02/23/11:09 ++ 【朝鮮半島ウオッチ】北朝鮮、やせこける兵士たち 金総書記の健康問題、「変化」に期待する住民
密貿易、収奪、利権
異変説以降、昨秋は毎月のように中朝国境周辺で情報収集してきた石丸氏だが、1400キロに及ぶ国境は統制が極端に強化され、親戚(しんせき)訪問など合法の人の出入りも制限を受け、北朝鮮側では盛んに中国製携帯電話狩りが行われていたという。
北朝鮮は盧武鉉前政権下で年間約40-50万トンあった韓国の食糧支援を昨年来、李明博政権の対北政策を理由に拒否。その影響で次第に深刻な状況が進んでいる。
「国境では北朝鮮の貿易会社が食糧確保のため中国の密輸業者と取引を始めた。中国は食糧輸入国となり対北食糧支援や正規の輸出が減った。特に北朝鮮軍の食糧難は深刻だ。内部で撮影された写真やビデオでみると若い兵士がひどくやせているのが目につく。軍用米を収奪されている農村の疲弊がひどい。北朝鮮は90年代後半のような飢餓ではないが、いまは市場経済の広がりで金を出せば食糧に誰でもアクセスできる。ところが政府が食べさせなければならない軍隊に対しては、経済破綻(はたん)のため食糧配給を満足にできなくなった。このままでは春以降に農村から食糧危機が起きるかもしれない」
配給制度の崩壊で、北朝鮮全土にできた闇市場は2003年に数百とも推定される公設市場に整理統合されて合法化された。市場は現金とモノの動く実体経済となり、計画経済を飲み込む勢いで利権構造も生んだ。
「配給制度で手に入れることのできない薄型テレビを、地方の末端党幹部が市場での商売でもうけて手に入れるケースが珍しくなくなっている。市場活動で生み出される権力が従来の権力構造を浸食する現象が起きている。この動きは止められないだろう」
「変化」への渇望
昨秋9月、建国60周年式典を欠席したことで一気に真実味を帯びた金正日総書記の健康異変説。石丸氏はこの時期、国境の中国側、鴨緑江沿いで越境してきた北朝鮮住民を取材し、敏感な反応ぶりを直接聞いた。
「彼らには大きな衝撃だったようだ。絶望のなか待ちに待った社会変化がついに訪れるかもしれないとの期待だ。金総書記の健康異変を『やった!』と露骨に喜ぶ人も少なくなかった。仲間内では露骨に話すが、密告が恐ろしくて公には話せない。しかし、外国人の私には興奮を隠せない口ぶりで『次の時代』への関心を話す人もいた」(同氏)。だがその後、金総書記の写真公開など官制メディアによる「健在キャンペーン」が効果を奏し、いまや「興奮」や「期待」はしぼみつつあるようだともいう。
一方、北朝鮮当局は市場に対して昨夏から再編・統制を開始。市場の場所や商売人の年齢制限、商品の量や種類を限定などで制約を増やすなど取り締まり強化に乗り出している。政治的な内部引き締めと市場からの経済利権を独占しようという奪取が目的とみられる。
石丸氏によると、北朝鮮住民の多くが「戦争でも起きればいい」と話す。金日成主席の死後15年を経てますます疲弊する北朝鮮社会は、「戦争でも起きない限り変わらない」という絶望からの心情吐露だ。
北朝鮮ジャーナリストたち
石丸氏は90年代前半から朝鮮半島取材を開始し中朝国境での50回を超える取材で北朝鮮を逃れた脱北者、難民600人以上にインタビューしてきた。そのなかから「北の内情を世界に伝えたい。世界の情報を北内部に伝えたい」と考えていた李準(リ・ジュン)氏と出合ったことが、北の内部情報誌「リムジンガン」(アジアプレス出版部刊 季刊誌、2008年創刊)のきっかけとなった。
北朝鮮内へのアクセス・ルートを開拓し、現在は北朝鮮の記者8人が「北朝鮮からの通信」を石丸氏にあらゆる方法で届けている。
取材は隠し撮りのビデオ撮影、インタビューの秘密録音、記者リポートなど生素材が中心だ。韓国語、日本語版があり、英語版も計画している。北朝鮮国内にも50部ほど持ち込んでいるほか、日本から郵送で金総書記にも送っている。
「日本で北朝鮮は金総書記がすべてを支配しているという理解が支配的だが、現実は金政権の弱体化は著しく、社会も人々の意識もどんどん変化している。そんな北朝鮮の実像を伝えようとする記者たちは生命をかけての仕事だが、活動はどんどん活発になっている」(石丸氏)
韓国には北朝鮮専門メディアがあるが、「北朝鮮からのリポート」だけで編集している専門誌は同誌だけだ。3号となる「リムジンガン」最新号(20日発行、日本語版)は「金正日『異変発生』後の北朝鮮」を特集している。
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