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:2010:09/10/11:16 ++ 第5部売る力再興(4)設計図1枚の世界戦略(企業強さの条件)
日本の消費者 特別視せず
「世界160カ国・地域で売る新型『マーチ』の設計図は1枚」。日産自動車で車両開発主管を務める小林毅(51)はこう強調する。
先ごろ国内生産からの撤退を決めたマーチの車台は世界共通。新興4カ国の工場で生産し、部品の多くは現地で調達する。その上で欧州向けならディーゼル、ブラジル向けならバイオ燃料のエンジンを載せるなど味付けを変える。日本にはタイ工場から輸入する。
「低価格車を日本で造り続けるのは難しい」。最高執行責任者の志賀俊之(56)にとって主力車の国内生産撤退は苦渋の決断だった。「日本でタイ製の自動車が売れるのか」。社内にはそんな不安もあった。
しかし心配は杞憂(きゆう)に終わる。新型マーチは発売1カ月半で月間計画の5倍の2万台を受注した。前モデルより燃費を3割以上改善しつつ価格は120万円台を維持。値ごろ感に消費者は飛びついた。
変わる嗜好
日本は最も消費者の目が厳しい市場――。そんな経験則から日本企業は国内向けに高付加価値品を作り、海外でも展開しようとする傾向が強い。だが長引くデフレで日本人の嗜好(しこう)は世界の普及価格帯と近づきつつある。
米ウォルマート・ストアーズ傘下の西友が低価格路線で息を吹き返し、苦戦続きだった外資系流通の中から、会員制卸の「コストコ」や家具の「イケア」が台頭するなど地殻変動が起きている。世界を一つととらえ、コストを磨いた製品が国内でも海外でも潜在需要を掘り起こす。
資生堂は日本の若年層とアジアの中間層の両方を狙った「二正面作戦」に出る。9月中旬に発売する日本・アジア共通ブランド「専科」。980円前後の化粧水など3ケタの値札の低価格帯に本格参入する。
「日本とアジアを一つの商圏ととらえ直す」。社長の前田新造(63)は高価格品中心だったブランド戦略の転換に挑む。アジアの中間層は10年後に4億6000万世帯。ドラッグストアで化粧品を買う日本の若年層に支持されれば、その流行はアジア全域の中間層に広がると読む。
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正(61)は国内市場で成功のジレンマに直面する。日本で好調な定番衣料のデザインは海外では「地味で保守的」と映るケースがある。5年後に海外売上高5割という目標を達成するには、世界に通じるデザインを追求したいが、それは日本の顧客離れを招くリスクを伴う。それでも柳井は商品改革への決意を固める。「日本で売れる製品をワンパターンで展開すれば、いずれ日本でも売れなくなる」
海外売上高比率92%。2010年3月期に東証1部上場の製造業で最も海外で稼ぐ比率が高かったのは、和歌山市に本社を置く島精機製作所だ。コンピューター制御のニット衣料編み機で世界シェア6割を誇る。
世界にない製品
「創業から50年間、世界にない製品作りにこだわってきた」と社長の島正博(73)。1本の糸から縫い目のないセーターなどを編む最新鋭機は欧州高級ブランドがこぞって採用する。島にとっては最初から国内商品も海外商品もない。あるのは「世界一」を作るという執念だけだ。
生産拠点は本社工場のみで海外販売はすべて輸出。「他社にまねできない技術があれば、円高は怖くない」。ネジ・クギ1本まで内製化する製造技術は模倣が難しい。中国では人件費高騰で手編み機から同社製の編み機への移行が進む。
「日本の世帯数が減少に転じる2015年、世界では人口の半分を占める国々が1人当たりGDP(国内総生産)で3000ドルを超える」。野村総合研究所・上級コンサルタントの榊原渉(37)はこう分析する。もはや内需だけに安住するゆとりはない。国情に応じて製品の仕様や売り方を変える必要はあるが、日本の消費者を特別視して高コストに陥る設計思想は改めるべきだろう。それは決して日本を捨てるという選択ではない。(敬称略)
「世界160カ国・地域で売る新型『マーチ』の設計図は1枚」。日産自動車で車両開発主管を務める小林毅(51)はこう強調する。
先ごろ国内生産からの撤退を決めたマーチの車台は世界共通。新興4カ国の工場で生産し、部品の多くは現地で調達する。その上で欧州向けならディーゼル、ブラジル向けならバイオ燃料のエンジンを載せるなど味付けを変える。日本にはタイ工場から輸入する。
「低価格車を日本で造り続けるのは難しい」。最高執行責任者の志賀俊之(56)にとって主力車の国内生産撤退は苦渋の決断だった。「日本でタイ製の自動車が売れるのか」。社内にはそんな不安もあった。
しかし心配は杞憂(きゆう)に終わる。新型マーチは発売1カ月半で月間計画の5倍の2万台を受注した。前モデルより燃費を3割以上改善しつつ価格は120万円台を維持。値ごろ感に消費者は飛びついた。
変わる嗜好
日本は最も消費者の目が厳しい市場――。そんな経験則から日本企業は国内向けに高付加価値品を作り、海外でも展開しようとする傾向が強い。だが長引くデフレで日本人の嗜好(しこう)は世界の普及価格帯と近づきつつある。
米ウォルマート・ストアーズ傘下の西友が低価格路線で息を吹き返し、苦戦続きだった外資系流通の中から、会員制卸の「コストコ」や家具の「イケア」が台頭するなど地殻変動が起きている。世界を一つととらえ、コストを磨いた製品が国内でも海外でも潜在需要を掘り起こす。
資生堂は日本の若年層とアジアの中間層の両方を狙った「二正面作戦」に出る。9月中旬に発売する日本・アジア共通ブランド「専科」。980円前後の化粧水など3ケタの値札の低価格帯に本格参入する。
「日本とアジアを一つの商圏ととらえ直す」。社長の前田新造(63)は高価格品中心だったブランド戦略の転換に挑む。アジアの中間層は10年後に4億6000万世帯。ドラッグストアで化粧品を買う日本の若年層に支持されれば、その流行はアジア全域の中間層に広がると読む。
ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正(61)は国内市場で成功のジレンマに直面する。日本で好調な定番衣料のデザインは海外では「地味で保守的」と映るケースがある。5年後に海外売上高5割という目標を達成するには、世界に通じるデザインを追求したいが、それは日本の顧客離れを招くリスクを伴う。それでも柳井は商品改革への決意を固める。「日本で売れる製品をワンパターンで展開すれば、いずれ日本でも売れなくなる」
海外売上高比率92%。2010年3月期に東証1部上場の製造業で最も海外で稼ぐ比率が高かったのは、和歌山市に本社を置く島精機製作所だ。コンピューター制御のニット衣料編み機で世界シェア6割を誇る。
世界にない製品
「創業から50年間、世界にない製品作りにこだわってきた」と社長の島正博(73)。1本の糸から縫い目のないセーターなどを編む最新鋭機は欧州高級ブランドがこぞって採用する。島にとっては最初から国内商品も海外商品もない。あるのは「世界一」を作るという執念だけだ。
生産拠点は本社工場のみで海外販売はすべて輸出。「他社にまねできない技術があれば、円高は怖くない」。ネジ・クギ1本まで内製化する製造技術は模倣が難しい。中国では人件費高騰で手編み機から同社製の編み機への移行が進む。
「日本の世帯数が減少に転じる2015年、世界では人口の半分を占める国々が1人当たりGDP(国内総生産)で3000ドルを超える」。野村総合研究所・上級コンサルタントの榊原渉(37)はこう分析する。もはや内需だけに安住するゆとりはない。国情に応じて製品の仕様や売り方を変える必要はあるが、日本の消費者を特別視して高コストに陥る設計思想は改めるべきだろう。それは決して日本を捨てるという選択ではない。(敬称略)
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