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:2009:03/04/10:33 ++ SaaSの真実 CIOはバズワードに惑わされるな
その5つの仮説と真実とは、次のようなものである。
1.SaaSは自社内運営ソフトより廉価である | |
真実:最初の2年間は廉価であっても、5年間のTCO(総コスト)では大半の場合はNOだ。SaaSは企業に資本投資を要求しない(サービスモデルだから)ため、最初の2年はTCOが低いが、3年目からは会計的には自社運営ソフトの方が低廉になる。 |
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2.SaaSは自社開発ソフトより迅速に運営を開始できる | |
真実:単純な要求に対しては真実だが、複雑なビジネスプロセスやインテグレーションに対応させようとすれば、両者の差は小さくなる。ベンダーは30日間で利用開始できるというが、7カ月以上もかかっているケースがあることを忘れたがる。カスタマイズや複雑なシステム構成に対応するには、どちらの方法をとっても手間がかかるものだ。 |
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3.SaaSの価格モデルは従量課金制である | |
真実:大半の場合はNOだ。電力使用のように従量課金と説明されることがあるが、従量課金制とは別の固定費がかかるような契約を結ばされることが多い。 |
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4.SaaSは自社運営のアプリケーションやデータソースと連携できない | |
真実:バッチ連携やWebserviceを使ったリアルタイム連携によって実現可能だ。 |
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5.SaaSは単純で基本的な業務にしか向かない | |
真実:誤りだが、限界もある。SaaSはメタデータレベルで高度なカスタマイズ機能を提供できる。しかし、複雑なワークフローやビジネスプロセスマネジメントを要求する場合への対応には限界がある。 |
同じガートナーの2008年10月の調査によると、世界のSaaS売上高は、07年の51億ドルが08年には27%増の64億ドルへ伸びるという。さらに12年には2倍以上の148億ドルに達すると見込まれている。どのような範囲のサービスをSaaSと呼ぶかによって市場規模は異なるが、アプリケーションのユーティリティー化が相当の速度で進行するのは間違いないだろう。
ここでバズワード「SaaS」の定義の議論をするつもりはないが、この未定義語に関してあまりにも多様な評判が流布し過ぎているのではなかろうか。企業のCIOもそれらの真偽を見極めるのが困難になっている。場合によっては、誤った認識に基づいたままSaaSを展開している企業もあるという。
そういう現状を見て出されたのが先のレポートだが、この5つの仮説と真実、かなり当たり前のことが述べられている。こんなことで悩んでいるとすれば、業務内容とITの両面で、対象となるサービスの評価がきちんとできていないCIOが多すぎるということだ。単なるバズワードを聞いて、どう対処すべきか悩むだけなら能力、専門性が疑われる。
■「ERP」や「ASP」で置き換えてみよう
たしかに、新しい技術やサービスに対する評価は難しいものだが、意表を突くような新しいものが続出してくるわけではない。ITの歴史的発展過程をきちんと理解していれば、対処方法も分かるというものだ。
例えば、先のレポートの中の「SaaS」を「ERP」や「ASP」に置き変えて読んでみてはいかがか。「3」の従量課金についてはやや違うところがあるかもしれないが、他は何となく当てはまる。ERPやASPの出始めのころもこのような議論が盛んだった。時間とともに単なるバズワードとしての論点は減少し、適切な利用に関する議論へと転換していったと思う。
ERPについて言えば、初期段階のERP万能説は影を潜め、従ってシステムを一気に入れ替える「ビッグバン導入」なる言葉も流行らなくなった。ERPの可用性と限界が明らかになるにつれ、ERPという衣に企業の形を合わせるという「無理」を行うケースは少なくなり、可能性と限界を見極めながらうまく使うことができるようになってきた。
もちろんトップマネジメント指揮の下、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)という「無理」を利かせてERPをはめ込むというケースは散見される。また、ERPベンダーも、カスタマイズの容易性やコンポーネント化、テンプレート化、アプリケーションライブラリー化を進展させ、各種利用シーンに容易に適合できる進化を遂げてきた。
SaaSも、今後ERPのような進化が見られるであろう。ただし、今のSaaSに関する議論の中では、インフラのユーティリティー化と、その上で展開されるアプリケーションのユーティリティー化が区別して議論されていない。「クラウド」というバズワードも同様だ。
ややもすると、ユーティリティーとして厳格に運営されるべきインフラプラットフォームの詳細が、アプリケーションの話で覆い隠され、どこまで真にユーティリティー化されているか判明しない点が不安だ。まだグーグルにしても、セールスフォース・ドットコムやアマゾンにしても、この点が明確になっているとはいえない。
■グーグルのインフラは「真のインフラ」ではない
たとえば先日のグーグルの「Gmail」のトラブルがよい例だ。以下のようにグーグルは公表している。
Gmail 復旧についてのご報告
2008年2月25日
(中略) Gmail の不具合は日本時間(24日) 18:30 からおよそ 2 時間 30 分間続きました。皆さまにご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳なく思っています。今回の不具合の根本的な原因については、現在も Gmail のエンジニアが調査しています。
Gmail 復旧についてのご報告(2)
2月26日
(中略)ヨーロッパのあるデータセンターで定期メンテナンスが行われていました。通常、定期メンテナンスが行われている間は他のデータセンターに処理が引き継がれるため、Gmail としてサービスが中断することはありません。
しかしながら、今回、システムの処理速度を向上する動作の不具合が、定期メンテナンスに支障をきたし、サービスの中断を招きました。影響範囲につきましては、Gmail のみとなっており、カレンダーなどその他の機能に関してはご利用頂ける状況でした。また、この障害によるデータの損失はありません。
24日のトラブル報告が翌25日になることも、定期メンテナンスのトラブルが全世界に影響を及ぼすことも、業務システムを運用する場合であれば、まずい対応である。Gmailは無料のサービスであるから文句も言いにくいが、企業がグーグルのアプリケーションをSaaSとして日常業務で利用している時に、インフラプラットフォームがトラブルになったら大問題だ。
全世界で一斉に止まってしまうようなインフラは、インフラとは言えない。となると現在のグーグルの(もっと言えば他の業者も同様)「クラウド的」アプローチは間違っているかもしれない。電力は欧州で起きた停電で日本が停電することはない。真のインフラになるにはまだまだ詰めが足りないというところである。
今後、業務アプリケーション市場におけるSaaS導入は、既存業者(ERPベンダーなど)に対する新規参入業者(SaaS業者)の挑戦や、SaaSビジネスモデルへの関心の高まりなどが要因となって急速に進行するであろう。しかし依然として、業務アプリケーションの可用性、セキュリティー、サービスの運用性能や機能といった問題は残っている。
これらの懸念が徐々に解決されれば、現在の経済状況からくるITコスト削減の機運もあり、アプリケーションとインフラプラットフォームのユーティリティー化という新しい時代の到来が促進されることにはなろう。
[2009年3月4日]
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