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:2007:11/16/11:19 ++ 【溶けゆく日本人】快適の代償(2)“怪物”患者「治らない」と暴力
40代男性患者の病室で怒声が響いた。病室に入った女性看護師が、理由も告げられないまま、1人ずつほおを平手打ちされた。関東にある大学病院でのことだ。
泣きながらスタッフルームに戻ってくる若い看護師の様子を不審に思った看護師長が患者に問いただすと「腎臓病の治療がうまくいかず、透析になったことが受け止められなかった。腹がたって誰かにぶつけたかった」と打ち明けた。
傷害事件として立件も可能なケースだが、この病院では患者に謝罪してもらうことにとどめた。
医療従事者が患者やその家族から暴力や暴言を受けるケースが増えているという。
医療機関のリスクマネジメントを担当する東京海上日動メディカルサービスの長野展久・医療本部長は、「治療がうまくいかないなど、患者にとって不本意な結果になったときに、その怒りを医療従事者にぶつける傾向がある」と指摘する。
患者がこうした怒りを医療従事者にぶつける背景には、医療への過剰な期待がある。かつては「仕方がない」とあきらめるしかなかったことも、医療の進歩で、「どんな病気でも病院に行けば治る」「治らないのは医師の治療方針が間違っていたせいだ」と考えてしまう患者が多くなったという。
医師の説明不足の面もあるだろう。しかし、ある産婦人科医は「妊婦さんに妊娠中の生活上の注意を時間をかけて説明すると、家族から『あまりプレッシャーをかけるな』と叱(しか)られる。一方で、説明を簡潔にすると『もっと詳しく説明しろ』と怒鳴られる。いったいどうすればいいのか」と困惑を隠さない。
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教育現場で教師に理不尽な要求をつきつける親のことを“怪物”にたとえて「モンスター・ペアレント」と呼んでいるが、同じように医療現場でモラルに欠けた行動をとる患者を「モンスター・ペイシェント(患者)」と呼ぶようになっている。
中でも小児科では、学校現場と同様に、非常識な親への対応に頭を痛めている。午前中から具合が悪いのに「夜の方がすいているから」と夜間診療の時間帯に子供を連れてくる▽薬が不要であることを説明しても「薬を出せ」と譲らない▽少しでも待ち時間が長くなると「いつまで待たせるんだ」と医師や看護師をどなりつける-など枚挙にいとまがない。
東京都内で小児科クリニック院長を務める小児科医(35)は、「薬を出せというのも、子供のためというより、自分がゆっくり寝たいためとしか思えないケースがほとんど。すべてにおいて親の都合が優先されている。医療行為は受けて当然、治って当然と思っているから、診察後に『ありがとうございました』の言葉もない」と嘆く。
子供が多い診療科ということでは、耳鼻科も大変だ。
和歌山県立医大の山中昇教授(耳鼻咽喉科)は「中耳炎の症状で受診する子供に耳あかがたまっていることが多く、そのため鼓膜の赤みや腫れがわかりづらい。『子供にとってお母さんの膝(ひざ)の上での耳あか取りは楽しみなもの。親子のスキンシップになりますよ』とお母さんに話すと、『子供の耳あかなんて、怖くて取れません』と平然と答えるんですよ」と話す。
さらに困るのは、診察中にじっとしていられない子供が多いこと。「子供が泣けばこちらがにらまれる。以前は親が『泣いたらだめよ』と子供をたしなめたものだが…」とあきらめ顔だ。
治療費の不払いも大きな問題となっている。日本病院会など4病院団体が平成16年にまとめた調査では、加盟する5570病院での未収金総額は年間推定373億円にのぼり、3年間の累積は853億円だった。とくに救急と産科で未収金が多いという。
生活困窮世帯の増加という面もあるが「最近はお金はあるけど払わないという人も多い。人間ドックを受けて異常がなかったから払わないという人もいます」と長野本部長(東京海上日動メディカルサービス)。
こうした事態を受け、厚生労働省は6月、「未収金問題に関する検討会」を立ち上げた。委員を務める永寿総合病院(東京都台東区)の崎原宏理事長は「日本は皆保険制度で、誰もが医療を受けられるが、それが逆に『治療は受けて当たり前』の意識につながり、診察に対して感謝の気持ちがなくなっている気がする。万が一このまま未収金が増えれば、皆保険制度が崩壊し、病院の閉鎖も増え、治療を受けられない人が増える可能性もある」と警鐘を鳴らしている。(平沢裕子)
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治療費の不払いも大きな問題となっている。日本病院会など4病院団体が平成16年にまとめた調査では、加盟する5570病院での未収金総額は年間推定373億円にのぼり、3年間の累積は853億円だった。とくに救急と産科で未収金が多いという。
生活困窮世帯の増加という面もあるが「最近はお金はあるけど払わないという人も多い。人間ドックを受けて異常がなかったから払わないという人もいます」と長野本部長(東京海上日動メディカルサービス)。
こうした事態を受け、厚生労働省は6月、「未収金問題に関する検討会」を立ち上げた。委員を務める永寿総合病院(東京都台東区)の崎原宏理事長は「日本は皆保険制度で、誰もが医療を受けられるが、それが逆に『治療は受けて当たり前』の意識につながり、診察に対して感謝の気持ちがなくなっている気がする。万が一このまま未収金が増えれば、皆保険制度が崩壊し、病院の閉鎖も増え、治療を受けられない人が増える可能性もある」と警鐘を鳴らしている。(平沢裕子)
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≪メモ≫ 産婦人科の医療現場では近年、妊娠検査を受けずに出産間際になって病院に救急搬送される「飛び込み出産」が問題になっている。
神奈川県産科婦人科医会の集計では、同県内の基幹病院(8施設)での飛び込み出産の件数は、平成15年に20件だったが、18年には44件と倍増、今年は4月までに35件を数えており、年末には100件を超えると推計されている。
飛び込み出産は子供の死亡率が高く、訴訟となるリスクも高いことから、受け入れを拒否する施設も出ている。
経済的な事情がある場合も多く、母親のモラル低下だけが原因ではないとはいえ、そのツケを払わされるのが罪のない新生児というのは、なんともやりきれない。
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