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:2011:01/05/08:56 ++ 国を開き道を拓く(4)自由化に耐える改革で農業自滅を防げ(社説)
同じ産業界でも、半導体と自動車では業界内の事情や経営の課題が異なる。同様に農業の中にも、コメ、野菜、酪農など、さまざまな“異業種”がある。兼業農家と専業農家では家計の収入構造が違う。北海道と沖縄の農業は同じではない。
ひと口に農業問題と呼ぶと日本が直面している課題の本質がぼやけてしまう。保護論争にはまり込み、必要な改革が遅れれば、日本を新たな成長に導く道は拓(ひら)けない。
コメ保護を問うTPP
米国主導で交渉が進む環太平洋経済連携協定(TPP)が、日本の農政に転換を迫っている。高い水準の自由貿易の仲間に入るには、これまで聖域だった農産物でも市場開放を進めなければならないからだ。
菅直人首相は交渉への参加に意欲をみせ、昨年末に農業改革の会議を政府内に立ち上げた。だが、これまでの議論を見ると、自由貿易を目指す産業界と、関税撤廃に抵抗する農業関係者の対立ばかりが目立つ。
農業問題の核にあるのはコメ問題だ。コメ農業には零細農家が多く、大半は農業以外で収入を得る兼業農家。こうした非効率な生産構造が、保護政策の下で温存されてきた。
日本のコメ政策は、減反で生産量を抑え、人為的に値段を高く維持することを主眼としてきた。高い価格で農家の所得を確保する一方、負担を消費者に回していた。その方法の前提となるのが、高い関税による国内市場の世界からの隔離である。
これでは土地を集約して規模を拡大したり、面積あたりの収穫量を高めたりする改善の力学が働かない。自立して経営努力するのではなく、生産支援から販売まで農業協同組合に依存するコメ農家が目立つ。
対照的にトマトやネギなどの野菜は関税率が低く、既に国内に外国産が大量に流通している。一方、品質や流通、マーケティングの工夫で、外国産に負けずに消費者の需要をつかんでいる農家は少なくない。鋭いビジネス感覚で成功した営農法人の事例が多いのも、この分野だ。
日本は国土が狭く、山林が多いのは事実だが、それだけが農業の生産性の足かせではない。市場開放に耐えられる強い農業が育たなかった主因の一つは、政策の失敗である。
ここは思い切って方向転換し、コメ農業を輸出産業に育てるほどの高い目標を掲げるべきではないか。現行の所得補償制度を見直し、コメ農家を含めて規模拡大に導く意欲的な改革に踏み切る必要がある。米国主導のTPP交渉は、市場開放にもたつく日本を待ってはくれない。
競争力を高めるには、農地の貸借をしにくくし、農業への新規参入を阻んでいる農地制度を、早急に見直さなければならない。細分化されたコメ農業の上に成り立つ農協組織の改革についても、消費者の視点を含めて議論を深めるべきだ。
農業が国民の食を担う重要な産業であることは間違いない。日本がTPPへの参加を決め、農産物の市場開放に踏み出すとしても、必要な量の国内生産を続け、食糧自給率を維持する支援策は欠かせないだろう。
保護を考える上で重要なのは「守るべき農家とは誰なのか」という視点だ。国内農家の大多数をコメ兼業農家が占める事実からすれば、多くの農家は企業に勤める会社員であり役所で働く公務員であろう。
輸出産業への脱皮も
北海道や和歌山県、高知県など全国の地方議会で、TPP交渉参加に反対する決議が相次いでいる。「参加すれば県産米の生産額は10分の1になる」(高知県)などと主張するが、コメ農業を現状のまま保護するだけでは地域経済は守れない。
農業を収入の柱とする主業農家の数は全国で36万戸。総農家数の14%にすぎない。大企業の工場や中小企業などが地方に立地しているからこそ、農業を続けられるともいえる。
TPPへの参加が遅れ、製造業の国際競争力がさらに低下すれば、工場の閉鎖などで影響を受けるのは、ほかならぬ地方経済だ。一方的に市場開放に反対する姿勢は短絡的すぎる。市場開放に耐えうる改革や、企業との共栄に知恵を絞るべきだ。
農業と輸出産業がにらみ合う姿は、政治がつくり出した虚構ではないか。全国の農家の中には、競争力に自信があり、TPPへの参加や輸出への道を期待する声もある。新興国の食糧需要の膨張を予測し、これからの成長産業として農業への進出を目指す企業もある。
表面的な対立の構図にとらわれると、こうした強い農業を育てる政策論から離れ、政治ゲームに陥る危険がある。自ら市場を閉ざして、成長の機会を失うべきではない。
ひと口に農業問題と呼ぶと日本が直面している課題の本質がぼやけてしまう。保護論争にはまり込み、必要な改革が遅れれば、日本を新たな成長に導く道は拓(ひら)けない。
コメ保護を問うTPP
米国主導で交渉が進む環太平洋経済連携協定(TPP)が、日本の農政に転換を迫っている。高い水準の自由貿易の仲間に入るには、これまで聖域だった農産物でも市場開放を進めなければならないからだ。
菅直人首相は交渉への参加に意欲をみせ、昨年末に農業改革の会議を政府内に立ち上げた。だが、これまでの議論を見ると、自由貿易を目指す産業界と、関税撤廃に抵抗する農業関係者の対立ばかりが目立つ。
農業問題の核にあるのはコメ問題だ。コメ農業には零細農家が多く、大半は農業以外で収入を得る兼業農家。こうした非効率な生産構造が、保護政策の下で温存されてきた。
日本のコメ政策は、減反で生産量を抑え、人為的に値段を高く維持することを主眼としてきた。高い価格で農家の所得を確保する一方、負担を消費者に回していた。その方法の前提となるのが、高い関税による国内市場の世界からの隔離である。
これでは土地を集約して規模を拡大したり、面積あたりの収穫量を高めたりする改善の力学が働かない。自立して経営努力するのではなく、生産支援から販売まで農業協同組合に依存するコメ農家が目立つ。
対照的にトマトやネギなどの野菜は関税率が低く、既に国内に外国産が大量に流通している。一方、品質や流通、マーケティングの工夫で、外国産に負けずに消費者の需要をつかんでいる農家は少なくない。鋭いビジネス感覚で成功した営農法人の事例が多いのも、この分野だ。
日本は国土が狭く、山林が多いのは事実だが、それだけが農業の生産性の足かせではない。市場開放に耐えられる強い農業が育たなかった主因の一つは、政策の失敗である。
ここは思い切って方向転換し、コメ農業を輸出産業に育てるほどの高い目標を掲げるべきではないか。現行の所得補償制度を見直し、コメ農家を含めて規模拡大に導く意欲的な改革に踏み切る必要がある。米国主導のTPP交渉は、市場開放にもたつく日本を待ってはくれない。
競争力を高めるには、農地の貸借をしにくくし、農業への新規参入を阻んでいる農地制度を、早急に見直さなければならない。細分化されたコメ農業の上に成り立つ農協組織の改革についても、消費者の視点を含めて議論を深めるべきだ。
農業が国民の食を担う重要な産業であることは間違いない。日本がTPPへの参加を決め、農産物の市場開放に踏み出すとしても、必要な量の国内生産を続け、食糧自給率を維持する支援策は欠かせないだろう。
保護を考える上で重要なのは「守るべき農家とは誰なのか」という視点だ。国内農家の大多数をコメ兼業農家が占める事実からすれば、多くの農家は企業に勤める会社員であり役所で働く公務員であろう。
輸出産業への脱皮も
北海道や和歌山県、高知県など全国の地方議会で、TPP交渉参加に反対する決議が相次いでいる。「参加すれば県産米の生産額は10分の1になる」(高知県)などと主張するが、コメ農業を現状のまま保護するだけでは地域経済は守れない。
農業を収入の柱とする主業農家の数は全国で36万戸。総農家数の14%にすぎない。大企業の工場や中小企業などが地方に立地しているからこそ、農業を続けられるともいえる。
TPPへの参加が遅れ、製造業の国際競争力がさらに低下すれば、工場の閉鎖などで影響を受けるのは、ほかならぬ地方経済だ。一方的に市場開放に反対する姿勢は短絡的すぎる。市場開放に耐えうる改革や、企業との共栄に知恵を絞るべきだ。
農業と輸出産業がにらみ合う姿は、政治がつくり出した虚構ではないか。全国の農家の中には、競争力に自信があり、TPPへの参加や輸出への道を期待する声もある。新興国の食糧需要の膨張を予測し、これからの成長産業として農業への進出を目指す企業もある。
表面的な対立の構図にとらわれると、こうした強い農業を育てる政策論から離れ、政治ゲームに陥る危険がある。自ら市場を閉ざして、成長の機会を失うべきではない。
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