女性上回れども現実は…
男は仕事一筋といった古い考え方が崩れてきた。職に就く既婚男女の働く意識を比べると、この傾向がはっきりする。(1面参照)
内閣府が二〇〇六年に実施した「男女の働き方と仕事と生活の調和に関する調査」。二十五―四十四歳の約六千四百人に家事、プライベートな時間、仕事のどれを優先するか聞いた。
「家事優先」「プライベートな時間を優先」「家事とプライベートを優先」の三つを選んだ人をここでは「生活尊重」派とみなす。自分の希望としてこの三項目を選んだ男性の割合は四八%と半数近く。女性の四〇%を八ポイントも上回った。
なぜこのような結果になったのか。東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は「長時間労働が当たり前となっている反動で、男性の間に『プライベートを充実させたい』という気持ちが芽生えているのではないか」と分析する。仕事一筋に疲れ生活とのバランスを重視したいオトコの本音の表れ、というわけだ。
願望と現実の溝も深い。「生活尊重」の三項目を実践する男性はわずか一〇%で、女性の二五%を下回った。〇五年から従業員三百一人以上の企業は子育て支援の行動計画をつくる法的な義務を負ったが、仕事と生活の両立は進まない。昨年の男性の育児休暇取得率はわずか〇・六%だった。
男性がひそかに抱く生活優先の願望。雇い主が周囲への遠慮を解き放つ一押しをすれば、口にしにくい望みがかない、仕事への意欲を高める人も増えそうだ。
:2025:04/22/17:47 ++ [PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
:2007:12/04/15:15 ++ 第2部さらば同族職場(2)現場発――主流に背向ける男(働くニホン)
生活も仕事も秘めた熱意
来春入社に向けて「一般職」の採用を再開した会社で異変が起きた。
九年ぶりに一般職採用を復活した丸紅。採用・人材開発課長の小山秀明(44)は応募者の名簿を見て目を丸くした。約千人の応募者の中に男子学生が数十人含まれていたからだ。最終的に内定を出した二十九人はすべて女性だったが、今後は「男性でも適性が合えば採用する」。十年ぶりに採用する朝日生命保険でも説明会に来た三百五十人の中に男性の姿が目立った。
主に補助的業務につき、原則転勤がない一般職。会社も働き手も女性に向いた職種とみてきた。そんな暗黙の了解が崩れ始めた背景には男性の意識変化がある。就職情報会社ディスコが来春卒業する大学生千人に聞いたら、一般職への応募経験がある男性は一割に達した。リストラに苦しむ親を見て育った世代。仕事一筋でなく生活を大事にする考えも浸透、総合職にこだわらない男性が増える。
出世は気になれど
日本企業は職場の「主流」として男性を採用。雇用や高い処遇を保証する代わりに頻繁な転勤や配置転換を強いてきた。そんな慣行に女性でなく男性がノーをつきつけ、会社は戸惑う。
東広島市にある年商三百五十億円の精米機器会社サタケ。転勤はないが管理職になれないエリア職を導入したところ、男性の実に四割弱にあたる三百人が同職を選んだ。営業の原田慎吾(37)もその一人。課長になった同期もおり「気にならないと言ったらウソになる」が、高齢の母がいる広島での生活を優先させた。
会社側は複雑な心境だ。多様な働き方には道を開くべきだが、予想以上の反応に「適材適所の配置ができない」と幹部から悲鳴が上がった。このまま「主流離脱」が続いたら誰が会社を引っ張っていくのか――。
働く意識が分裂するのは女性側も同じだ。
「子供がいないとダメなの」。松下電器産業の総合職、千葉礼子(32、仮名)は今春、賃上げ原資をすべて育児手当に回し、手当を増やす会社の説明に首をかしげた。会社は育児支援に力を入れるというメッセージを送ったが、未婚の千葉は「私に恩恵はない」。色とりどりのモザイク職場を束ねるのは容易ではない。
男性中心の職種に女性が進出するなど一方通行で進んできた職場のモザイク化。最近は主流とされた側から離脱する動きも加わり「同族職場」の解体が進む。学歴を巡る常識も薄れ、中卒や高卒が多かった製造現場に身を投じる大卒も増えた。変化が一様でなくなり、企業はきめ細かな対応を迫られる。
育児休業4割取得
年二百人以上の男性が育児休業を取る会社がある。化学大手の旭化成。昨年、上司に口頭で伝えるだけで有給休暇を五日取れるように制度改定。子供ができた男性の四割にあたる二百三十六人が取得した。これまで気持ちのハードルが高かったが「短期」「事前申請なし」「有給」の仕組みにしたら、物言わぬ家庭重視派が一斉に手を挙げた。
転勤がない代わりに給与の低い地域限定正社員制を四月に導入したユニクロ。千九百人の同職の四割が男性だ。東京・池袋で女性向け売り場を統括する大塚太造(25)は「家族や恋人との関係を大事にしたい。地元に愛着もある」と話す。
育休を取る男性が増えれば同僚にしわ寄せがいき、地域社員が増えれば人事の柔軟性を損ないかねない。それでも旭化成やユニクロは踏み出した。新たな価値観を持つ社員が、仕事への熱意に欠けているとは限らないからだ。富士通総研主任研究員の渥美由喜(39)は「幅広い業種で地域限定職があるフランスなどの労働生産性は日本より高い」と指摘する。
仕事か生活か。正社員か非正社員か。そんな型通りの二者択一を迫らず、仕事も生活も大事にする新主流派の秘めた熱意に応える。業種や規模により答えは違うが、懐の深い会社が人材を吸い寄せ、少子化時代を勝ち抜く。=敬称略
来春入社に向けて「一般職」の採用を再開した会社で異変が起きた。
九年ぶりに一般職採用を復活した丸紅。採用・人材開発課長の小山秀明(44)は応募者の名簿を見て目を丸くした。約千人の応募者の中に男子学生が数十人含まれていたからだ。最終的に内定を出した二十九人はすべて女性だったが、今後は「男性でも適性が合えば採用する」。十年ぶりに採用する朝日生命保険でも説明会に来た三百五十人の中に男性の姿が目立った。
主に補助的業務につき、原則転勤がない一般職。会社も働き手も女性に向いた職種とみてきた。そんな暗黙の了解が崩れ始めた背景には男性の意識変化がある。就職情報会社ディスコが来春卒業する大学生千人に聞いたら、一般職への応募経験がある男性は一割に達した。リストラに苦しむ親を見て育った世代。仕事一筋でなく生活を大事にする考えも浸透、総合職にこだわらない男性が増える。
出世は気になれど
日本企業は職場の「主流」として男性を採用。雇用や高い処遇を保証する代わりに頻繁な転勤や配置転換を強いてきた。そんな慣行に女性でなく男性がノーをつきつけ、会社は戸惑う。
東広島市にある年商三百五十億円の精米機器会社サタケ。転勤はないが管理職になれないエリア職を導入したところ、男性の実に四割弱にあたる三百人が同職を選んだ。営業の原田慎吾(37)もその一人。課長になった同期もおり「気にならないと言ったらウソになる」が、高齢の母がいる広島での生活を優先させた。
会社側は複雑な心境だ。多様な働き方には道を開くべきだが、予想以上の反応に「適材適所の配置ができない」と幹部から悲鳴が上がった。このまま「主流離脱」が続いたら誰が会社を引っ張っていくのか――。
働く意識が分裂するのは女性側も同じだ。
「子供がいないとダメなの」。松下電器産業の総合職、千葉礼子(32、仮名)は今春、賃上げ原資をすべて育児手当に回し、手当を増やす会社の説明に首をかしげた。会社は育児支援に力を入れるというメッセージを送ったが、未婚の千葉は「私に恩恵はない」。色とりどりのモザイク職場を束ねるのは容易ではない。
男性中心の職種に女性が進出するなど一方通行で進んできた職場のモザイク化。最近は主流とされた側から離脱する動きも加わり「同族職場」の解体が進む。学歴を巡る常識も薄れ、中卒や高卒が多かった製造現場に身を投じる大卒も増えた。変化が一様でなくなり、企業はきめ細かな対応を迫られる。
育児休業4割取得
年二百人以上の男性が育児休業を取る会社がある。化学大手の旭化成。昨年、上司に口頭で伝えるだけで有給休暇を五日取れるように制度改定。子供ができた男性の四割にあたる二百三十六人が取得した。これまで気持ちのハードルが高かったが「短期」「事前申請なし」「有給」の仕組みにしたら、物言わぬ家庭重視派が一斉に手を挙げた。
転勤がない代わりに給与の低い地域限定正社員制を四月に導入したユニクロ。千九百人の同職の四割が男性だ。東京・池袋で女性向け売り場を統括する大塚太造(25)は「家族や恋人との関係を大事にしたい。地元に愛着もある」と話す。
育休を取る男性が増えれば同僚にしわ寄せがいき、地域社員が増えれば人事の柔軟性を損ないかねない。それでも旭化成やユニクロは踏み出した。新たな価値観を持つ社員が、仕事への熱意に欠けているとは限らないからだ。富士通総研主任研究員の渥美由喜(39)は「幅広い業種で地域限定職があるフランスなどの労働生産性は日本より高い」と指摘する。
仕事か生活か。正社員か非正社員か。そんな型通りの二者択一を迫らず、仕事も生活も大事にする新主流派の秘めた熱意に応える。業種や規模により答えは違うが、懐の深い会社が人材を吸い寄せ、少子化時代を勝ち抜く。=敬称略
PR
- +TRACKBACK URL+