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:2011:07/19/09:38 ++ 視界不良の世界経済に備えを怠るな(社説)
世界経済の雲行きが怪しくなってきた。欧州の財政・金融危機がなかなか収束しないうえ、米国経済の回復が予想以上に遅れているからだ。中国をはじめとした新興国はなお力強い成長を続けているものの、その副作用でもあるインフレが深刻になっている。
世界経済が一段と不安定になり、株安や円高が進めば、東日本大震災から立ち直ろうとしている日本経済にとって大きな痛手になる。政府・日銀は、日本への影響をよく見定め、機敏な対応ができるよう備えを怠らないようにすべきだ。
収束しない欧州危機
いま最も心配なのはユーロ圏の危機対応が遅れていることだ。震源地であるギリシャの追加支援策を巡って各国や関係機関の意見が集約できていない。
欧州連合(EU)による大規模な支援の前提として、ギリシャ国債に投資した民間金融機関にも負担を求める声が強まっているのに対して、欧州中央銀行(ECB)などは「強引に負担を求めれば事実上のデフォルト(債務不履行)と判断され、混乱を招く」と反論している。
ギリシャ問題を巡る不協和音は市場に不安をもたらしており、アイルランドやポルトガルのほか、イタリアの国債の利回りまで急上昇するなど影響が広がっている。欧州の金融機関は欧州各国が発行する国債を大量に保有しており、対応を誤れば金融市場が全面的にまひしたリーマン・ショックの二の舞いになりかねないとの声も出てきた。
米国も連邦債務の上限の引き上げを巡って、大統領と下院で多数を占める共和党との対立が解けず、このまま妥協が成立しないと8月にデフォルトに陥りかねない状況になっている。最終的には合意に至るとの見方が多いが、市場の大きな不安材料になっている。
それ以上に気がかりなのは米国経済の回復が遅れている点だ。失業率は9%台に高止まりしており、ガソリン価格の上昇もあって個人消費は低迷している。
背景には住宅バブル崩壊の後遺症がまだ癒えていないことがある。住宅価格はなお底入れしておらず、消費者は依然として借金の返済に追われている状態だ。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和は景気下支えに一定の役割を果たしたものの、経済のエンジンである消費を元通りにするほどの効果は出ていない。
思い切った追加政策を打ち出しにくくなっているのも心配な点だ。財政赤字が膨らむ中で、財政支出拡大策は共和党の強い反対もあって難しくなっている。バーナンキFRB議長は追加的な量的緩和の可能性を示唆したが、実現は容易ではない。副作用もある量的緩和策には内外から強い批判があるためだ。
世界をけん引してきた新興国の経済にもほころびが見えてきた。
中国はなお9%台の高成長を持続しているが、食料品を中心とした物価上昇が深刻になっている。当局は利上げなどにより金融を一段と引き締める構えで、不動産部門などではその影響がすでに出始めている。
課題は成長の急速な減速を招かずに経済を軟着陸させることができるかどうかである。地方政府や国有企業は借り入れを大幅に増やして道路などインフラ投資や工場建設を進めてきた。それだけに、金融を大幅に引き締めた場合の影響は大きなものになる可能性がある。
インドやブラジルも中国と同様、インフレが最大の問題になっている。やはり金融引き締めに動いているものの、海外からの資金流入が止まらないためカネ余り状態が続いており、効果はいまひとつの状況だ。
回復に水さす円高傾向
世界経済が不安定さを増す中で、金融市場ではリスク回避の動きも強まってきた。欧州単一通貨ユーロが売られやすくなっている一方、金など安全資産を買う動きが出ている。欧州情勢がさらに深刻化すれば、世界的に株安が進む恐れもある。
日本経済は予想以上に早く震災から立ち直りつつあるが、電力不足の長期化懸念に加えて、世界からも逆風が吹いてくれば、回復持続シナリオは危うくなる。
当面の心配は相対的には安心な通貨として円が買われ、円高が進みやすくなっていることだ。被災した工場が復旧し、輸出拡大の体制が整ってきただけに痛い。今後中国などアジアの新興国の経済減速が現実のものになれば、アジア依存を高める日本経済にとって大きな打撃になる。
政府・日銀は当面、円相場の動向を注視していく必要がある。円高がさらに進んだ場合は市場介入も辞さない姿勢で臨むべきだ。復興事業を賄う第3次補正予算の編成は中身を精査しつつ、できるだけ早くする必要があるが、財源を決める際などには、世界経済の動向にも目を配ってほしい。
世界経済が一段と不安定になり、株安や円高が進めば、東日本大震災から立ち直ろうとしている日本経済にとって大きな痛手になる。政府・日銀は、日本への影響をよく見定め、機敏な対応ができるよう備えを怠らないようにすべきだ。
収束しない欧州危機
いま最も心配なのはユーロ圏の危機対応が遅れていることだ。震源地であるギリシャの追加支援策を巡って各国や関係機関の意見が集約できていない。
欧州連合(EU)による大規模な支援の前提として、ギリシャ国債に投資した民間金融機関にも負担を求める声が強まっているのに対して、欧州中央銀行(ECB)などは「強引に負担を求めれば事実上のデフォルト(債務不履行)と判断され、混乱を招く」と反論している。
ギリシャ問題を巡る不協和音は市場に不安をもたらしており、アイルランドやポルトガルのほか、イタリアの国債の利回りまで急上昇するなど影響が広がっている。欧州の金融機関は欧州各国が発行する国債を大量に保有しており、対応を誤れば金融市場が全面的にまひしたリーマン・ショックの二の舞いになりかねないとの声も出てきた。
米国も連邦債務の上限の引き上げを巡って、大統領と下院で多数を占める共和党との対立が解けず、このまま妥協が成立しないと8月にデフォルトに陥りかねない状況になっている。最終的には合意に至るとの見方が多いが、市場の大きな不安材料になっている。
それ以上に気がかりなのは米国経済の回復が遅れている点だ。失業率は9%台に高止まりしており、ガソリン価格の上昇もあって個人消費は低迷している。
背景には住宅バブル崩壊の後遺症がまだ癒えていないことがある。住宅価格はなお底入れしておらず、消費者は依然として借金の返済に追われている状態だ。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和は景気下支えに一定の役割を果たしたものの、経済のエンジンである消費を元通りにするほどの効果は出ていない。
思い切った追加政策を打ち出しにくくなっているのも心配な点だ。財政赤字が膨らむ中で、財政支出拡大策は共和党の強い反対もあって難しくなっている。バーナンキFRB議長は追加的な量的緩和の可能性を示唆したが、実現は容易ではない。副作用もある量的緩和策には内外から強い批判があるためだ。
世界をけん引してきた新興国の経済にもほころびが見えてきた。
中国はなお9%台の高成長を持続しているが、食料品を中心とした物価上昇が深刻になっている。当局は利上げなどにより金融を一段と引き締める構えで、不動産部門などではその影響がすでに出始めている。
課題は成長の急速な減速を招かずに経済を軟着陸させることができるかどうかである。地方政府や国有企業は借り入れを大幅に増やして道路などインフラ投資や工場建設を進めてきた。それだけに、金融を大幅に引き締めた場合の影響は大きなものになる可能性がある。
インドやブラジルも中国と同様、インフレが最大の問題になっている。やはり金融引き締めに動いているものの、海外からの資金流入が止まらないためカネ余り状態が続いており、効果はいまひとつの状況だ。
回復に水さす円高傾向
世界経済が不安定さを増す中で、金融市場ではリスク回避の動きも強まってきた。欧州単一通貨ユーロが売られやすくなっている一方、金など安全資産を買う動きが出ている。欧州情勢がさらに深刻化すれば、世界的に株安が進む恐れもある。
日本経済は予想以上に早く震災から立ち直りつつあるが、電力不足の長期化懸念に加えて、世界からも逆風が吹いてくれば、回復持続シナリオは危うくなる。
当面の心配は相対的には安心な通貨として円が買われ、円高が進みやすくなっていることだ。被災した工場が復旧し、輸出拡大の体制が整ってきただけに痛い。今後中国などアジアの新興国の経済減速が現実のものになれば、アジア依存を高める日本経済にとって大きな打撃になる。
政府・日銀は当面、円相場の動向を注視していく必要がある。円高がさらに進んだ場合は市場介入も辞さない姿勢で臨むべきだ。復興事業を賄う第3次補正予算の編成は中身を精査しつつ、できるだけ早くする必要があるが、財源を決める際などには、世界経済の動向にも目を配ってほしい。
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