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:2010:12/15/10:15 ++ 改革迷走瀕死の社会保障(下)漂流する「政権野党」――増税も給付減も不可避。
11月29日夕、東京・永田町の議員会館で厚生労働省の政務三役が民主党厚労部門会議の幹部と向き合っていた。介護保険の改革案に理解を得るためだった。
給付費の増加を抑えようと利用者負担を並べた厚労省案。厚労部門会議座長の石毛〓子は「負担を求めれば国民に支持されない」と首を縦に振らなかった。1時間に及ぶ議論は平行線で、与党が承認しない厚労省案は宙に浮いた。「何でも反対するだけの政権野党」。同省幹部はこぼす。
民主党が公約で「廃止」を約束した高齢者医療制度の改革論議も迷走している。厚労省案の高齢者の負担増に同党議員が反発。「成立しないかもしれない法案を統一地方選前に国会に出す意味はあるのか」。7日の同党会合では法案提出の見送り論まで飛び出した。
人気取りを優先
昨年の衆院選で「年金、医療、介護の安心」を公約に掲げ、政権交代の原動力とした民主党。与党になると高齢者の負担軽減策を次々と求めた。2012年度から3年間、65歳以上の介護保険料を平均月額5千円以下に抑える。ただ、その財源は積立金を取り崩す場当たり策で、全体の改革案は手つかずだ。目前の人気取りを優先し、長期的に制度をどう維持するかの視点は欠いている。
今年6月、北九州市を基盤とする百貨店、井筒屋の健康保険組合が解散した。高齢者医療制度に支払う負担金が膨らみ、支出の半分弱に達したのが引き金だ。自立をあきらめ、公費助成で保険料の安い中小企業向け協会けんぽに移った。
協会けんぽも加入者のボーナス減で09年度は4700億円の赤字だ。厚労省は健保組合からの財政支援を進めるが、全国に約1500ある健保組合も8割は赤字。高齢者医療を支える負担で健保組合が衰弱し、公費に頼ろうと協会けんぽに駆け込む動きが今後、加速しそうだ。自助努力の民間健保は縮み、公営制度が肥大化していく。
「社会保障と税制(の改革)は、なんとしても取り組みたい」。政府・与党が10日開いた社会保障改革検討本部。首相の菅直人は社会保障の財源確保へ税制改革に取り組む姿勢を示した。ただ、報道陣の前では「消費税」に触れなかった。
この直前、菅は「消費税を社会保障の主たる財源に」とする有識者の提言を受け取った。幅広い世代が負担する消費税が社会保障の有力な財源という考えは政府与党も共有する。それでも直後に政府・与党が決めた基本方針は「消費税」の表記を避けた。今夏の参院選の敗北は消費税増税論が原因との思いが背景だ。
参院選後は消費税を財源とする新年金制度の議論もタブー視されている。看板の年金制度改革は今年6月に「最低限の年金額を支給」など7原則を決めただけで検討を棚上げした。
選択肢示すべき
膨らむ公的給付を抑える発想も乏しい。年7千億円近い国民医療費の伸びの大半は新薬や治療技術の高度化による。高価な治療をどこまで公費で賄うかは議論の余地があるが、検討する土俵はない。英国には専門家機関が薬や検査の費用対効果を判定する仕組みがある。効果に比べ公費がかかりすぎる場合は公的医療の適用から外す。
「強い社会保障」の実現は、支える経済が強いことが条件となる。消費税の増税や給付カットを含めた抜本改革で経済の活力を弱めないよう社会保障政策のかじをきる必要がある。目先の人気取りに走らず、選択肢を国民に明示する。政治がその責任を果たさなければ、「高負担・低福祉」の明日が待ち受ける。
給付費の増加を抑えようと利用者負担を並べた厚労省案。厚労部門会議座長の石毛〓子は「負担を求めれば国民に支持されない」と首を縦に振らなかった。1時間に及ぶ議論は平行線で、与党が承認しない厚労省案は宙に浮いた。「何でも反対するだけの政権野党」。同省幹部はこぼす。
民主党が公約で「廃止」を約束した高齢者医療制度の改革論議も迷走している。厚労省案の高齢者の負担増に同党議員が反発。「成立しないかもしれない法案を統一地方選前に国会に出す意味はあるのか」。7日の同党会合では法案提出の見送り論まで飛び出した。
人気取りを優先
昨年の衆院選で「年金、医療、介護の安心」を公約に掲げ、政権交代の原動力とした民主党。与党になると高齢者の負担軽減策を次々と求めた。2012年度から3年間、65歳以上の介護保険料を平均月額5千円以下に抑える。ただ、その財源は積立金を取り崩す場当たり策で、全体の改革案は手つかずだ。目前の人気取りを優先し、長期的に制度をどう維持するかの視点は欠いている。
今年6月、北九州市を基盤とする百貨店、井筒屋の健康保険組合が解散した。高齢者医療制度に支払う負担金が膨らみ、支出の半分弱に達したのが引き金だ。自立をあきらめ、公費助成で保険料の安い中小企業向け協会けんぽに移った。
協会けんぽも加入者のボーナス減で09年度は4700億円の赤字だ。厚労省は健保組合からの財政支援を進めるが、全国に約1500ある健保組合も8割は赤字。高齢者医療を支える負担で健保組合が衰弱し、公費に頼ろうと協会けんぽに駆け込む動きが今後、加速しそうだ。自助努力の民間健保は縮み、公営制度が肥大化していく。
「社会保障と税制(の改革)は、なんとしても取り組みたい」。政府・与党が10日開いた社会保障改革検討本部。首相の菅直人は社会保障の財源確保へ税制改革に取り組む姿勢を示した。ただ、報道陣の前では「消費税」に触れなかった。
この直前、菅は「消費税を社会保障の主たる財源に」とする有識者の提言を受け取った。幅広い世代が負担する消費税が社会保障の有力な財源という考えは政府与党も共有する。それでも直後に政府・与党が決めた基本方針は「消費税」の表記を避けた。今夏の参院選の敗北は消費税増税論が原因との思いが背景だ。
参院選後は消費税を財源とする新年金制度の議論もタブー視されている。看板の年金制度改革は今年6月に「最低限の年金額を支給」など7原則を決めただけで検討を棚上げした。
選択肢示すべき
膨らむ公的給付を抑える発想も乏しい。年7千億円近い国民医療費の伸びの大半は新薬や治療技術の高度化による。高価な治療をどこまで公費で賄うかは議論の余地があるが、検討する土俵はない。英国には専門家機関が薬や検査の費用対効果を判定する仕組みがある。効果に比べ公費がかかりすぎる場合は公的医療の適用から外す。
「強い社会保障」の実現は、支える経済が強いことが条件となる。消費税の増税や給付カットを含めた抜本改革で経済の活力を弱めないよう社会保障政策のかじをきる必要がある。目先の人気取りに走らず、選択肢を国民に明示する。政治がその責任を果たさなければ、「高負担・低福祉」の明日が待ち受ける。
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