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:2011:01/12/09:19 ++ 第7部日本だからできる(1)ファナックの国産宣言(企業強さの条件)
工作機械の頭脳となる数値制御(NC)装置で世界シェア6割を握るファナック。富士山のふもと、山梨県忍野村に本社を置く同社は有価証券報告書の事業リスクの項目に「富士山噴火」を挙げる。よほどの天変地異でも起きない限り、この地を、そして日本を離れるつもりはない。
150万平方メートルもの敷地に点在する研究所の扉にはこんな言葉が記されている。「WenigerTeile(ベニガー・タイレ)」。ドイツ語で「部品点数の削減」を意味する。「少ない部品でつくればコストが下がり、信頼性は上がる」。実質的な創業者で名誉会長の稲葉清右衛門(85)はこの言葉にもの作りの基本方針を込める。
まず価格を決定
清右衛門は「ありきたりの設計を製造段階で改善しようとしてもどだい無理」と言い切る。円高を乗り切るために、多くの日本企業が工場でのコスト削減に血道をあげる。対するファナックの発想は「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」。
ありきたりではない製品をどう生み出すのか。決めるのはまず価格だ。内外約200カ所に置いた保守サービス拠点を通じて市場の変化や顧客の要望を吸い上げ、競合他社に負けない価格を探る。価格から一定の利益を引いて製造原価を算出する。この原価に収めるのが設計の絶対条件。原価に利益を上乗せし価格を決める手法の逆を行く。
世界最大の工作機械生産国になった中国。最大手の瀋陽機床はNC装置の7割をファナックから購入する。「同じ性能なら世界2位の独シーメンスより1割ほど安い」と瀋陽機床の関係者は説明する。ファナックの海外売上高比率は75%を超えるが、円高の逆風下でも昨年7~9月期の売上高営業利益率が43・8%と過去最高を更新した。
生産も国内に集中する。昨年末、茨城県筑西市の工場で増築が始まった。6月には新棟が完成し、工作機械の生産能力が今より6割増える。ここでつくる機械の大半をスマートフォン(高機能携帯電話)などの増産を急ぐ中国企業が競って買う。昨年秋には本社工場で産業用ロボットの生産量を7割引き上げた。
「1カ所でつくる」
清右衛門の長男で社長の稲葉善治(62)は「1カ所でつくるのが一番いい」と強調する。国内工場は自動化が究極まで進み、少ない部品による設計が生産性を高める。なにより「研究者がすぐに製造現場に行ける。現場から得るものは多い」と善治はいう。
価格、開発期間、仕様――。様々なハードルを越える研究者には重圧がかかる。昼夜を問わない研究者の働きぶりは業界の誰もが知る。最近は中国など世界から研究者が集まる。今でも採用の最終面接をする清右衛門は「これだけの人材を抱えているところは世界にない」と自負する。
ただファナックも金融危機後の市場激変と無縁ではない。自動車や家電の低価格化に伴い、ファナックがつくる高精度のNC装置やロボットを必要としないもの作りが広がる可能性は否定できない。新興国企業の追い上げも急だ。
解はやはり研究開発の強化だ。世界で成長を目指す日本企業は国内で付加価値の低い製品の開発、生産を続けられない。日本だからできる研究開発を突き詰めれば、生産現場の強さが生きてくる。ファナックは将来、研究者の数を従業員の半分に引き上げる腹づもりだ。現預金は年間売上高を上回る5300億円。成長に投じる資金はある。
ファナックは特殊例なのか。日本企業には長年にわたる技術開発の蓄積があり、手元資金もため込んでいる。国内でのもの作りを宣言するファナックの姿はむしろ日本企業の一つの可能性を示す。(敬称略)
◇
次々と世界に飛び出す日本企業。だが日本に足場を置き、ここで育ったからこそ得られる経営資源は多い。技術や人材、市場。どう使いこなすかが、世界で戦う条件となる。
稲葉清右衛門氏のインタビューを電子版「連載・コラム」に掲載。ご意見もこちらから。
【図・写真】ファナックの新製品にアジアの工場が注目する(昨年10月の見本市)
150万平方メートルもの敷地に点在する研究所の扉にはこんな言葉が記されている。「WenigerTeile(ベニガー・タイレ)」。ドイツ語で「部品点数の削減」を意味する。「少ない部品でつくればコストが下がり、信頼性は上がる」。実質的な創業者で名誉会長の稲葉清右衛門(85)はこの言葉にもの作りの基本方針を込める。
まず価格を決定
清右衛門は「ありきたりの設計を製造段階で改善しようとしてもどだい無理」と言い切る。円高を乗り切るために、多くの日本企業が工場でのコスト削減に血道をあげる。対するファナックの発想は「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」。
ありきたりではない製品をどう生み出すのか。決めるのはまず価格だ。内外約200カ所に置いた保守サービス拠点を通じて市場の変化や顧客の要望を吸い上げ、競合他社に負けない価格を探る。価格から一定の利益を引いて製造原価を算出する。この原価に収めるのが設計の絶対条件。原価に利益を上乗せし価格を決める手法の逆を行く。
世界最大の工作機械生産国になった中国。最大手の瀋陽機床はNC装置の7割をファナックから購入する。「同じ性能なら世界2位の独シーメンスより1割ほど安い」と瀋陽機床の関係者は説明する。ファナックの海外売上高比率は75%を超えるが、円高の逆風下でも昨年7~9月期の売上高営業利益率が43・8%と過去最高を更新した。
生産も国内に集中する。昨年末、茨城県筑西市の工場で増築が始まった。6月には新棟が完成し、工作機械の生産能力が今より6割増える。ここでつくる機械の大半をスマートフォン(高機能携帯電話)などの増産を急ぐ中国企業が競って買う。昨年秋には本社工場で産業用ロボットの生産量を7割引き上げた。
「1カ所でつくる」
清右衛門の長男で社長の稲葉善治(62)は「1カ所でつくるのが一番いい」と強調する。国内工場は自動化が究極まで進み、少ない部品による設計が生産性を高める。なにより「研究者がすぐに製造現場に行ける。現場から得るものは多い」と善治はいう。
価格、開発期間、仕様――。様々なハードルを越える研究者には重圧がかかる。昼夜を問わない研究者の働きぶりは業界の誰もが知る。最近は中国など世界から研究者が集まる。今でも採用の最終面接をする清右衛門は「これだけの人材を抱えているところは世界にない」と自負する。
ただファナックも金融危機後の市場激変と無縁ではない。自動車や家電の低価格化に伴い、ファナックがつくる高精度のNC装置やロボットを必要としないもの作りが広がる可能性は否定できない。新興国企業の追い上げも急だ。
解はやはり研究開発の強化だ。世界で成長を目指す日本企業は国内で付加価値の低い製品の開発、生産を続けられない。日本だからできる研究開発を突き詰めれば、生産現場の強さが生きてくる。ファナックは将来、研究者の数を従業員の半分に引き上げる腹づもりだ。現預金は年間売上高を上回る5300億円。成長に投じる資金はある。
ファナックは特殊例なのか。日本企業には長年にわたる技術開発の蓄積があり、手元資金もため込んでいる。国内でのもの作りを宣言するファナックの姿はむしろ日本企業の一つの可能性を示す。(敬称略)
◇
次々と世界に飛び出す日本企業。だが日本に足場を置き、ここで育ったからこそ得られる経営資源は多い。技術や人材、市場。どう使いこなすかが、世界で戦う条件となる。
稲葉清右衛門氏のインタビューを電子版「連載・コラム」に掲載。ご意見もこちらから。
【図・写真】ファナックの新製品にアジアの工場が注目する(昨年10月の見本市)
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