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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2009:12/07/15:04  ++  日本に成長を(1)企業に「北風」より「太陽」。

日本経済が「成長」の旗印を見失い、漂っている。リーマン・ショックから脱しても、デフレ、円高、株安と危機は尽きない。産業界は「稼ぐ力」を失い、個人は雇用や所得に不安を抱え、国は税収減にあえぐ。成長の道を描き直さないと、活力も豊かさも戻らない。
 不穏な発言と胸に刻むべきだろう。「生産の海外移管を考えなければ」「海外生産拡大でリスクを減らす」「国内工場の投資見直しもありうる」。ホンダやクボタ、東芝などの経営陣の言葉だ。
 会社が置かれた状況が平穏ではない。国内は消費停滞で物価が下がるデフレ。たのみは輸出だが、急激な円高がずっしり重い。企業が予想する今後3年の成長率は年0・2%。「脱・日本」と考えても無理はない。
 派遣労働の禁止、排出ガスの削減、円高志向の為替政策、家計支援が最優先……。民主党政権の大方針は企業に冷たい側面を持つ。ニッポンの製造業への決別状が乱れ飛んでいるようでもある。成長は不要との声も一部にあるが、このままでは子や孫が国の借金を返すために働く国になる。
 家計と企業は二律背反ではない。2007年に電機や自動車など「金属機械産業」が支払った給与総額は約25兆円。2割が海外にシフトしたら子ども手当の財源に匹敵する5兆円が吹き飛ぶ。
 企業業績の不振で7~9月期の賃金総額は年換算で前年より10兆円減。上期の法人税収は初のマイナス転落で国の税収も伸びない。分配優先で企業に負担を課す「北風政策」より、企業を優遇して成長を促す「太陽政策」が必要ではないか。
 11月6日、米国の経済対策でオバマ大統領は法人税減税と輸出促進策を掲げた。企業への手助けは「将来の経済成長へ向けたステップ」と説明。民間が稼いで雇用を増やせとの期待をこめた。
 日本も法人税減税を検討すべきだ。市場機能を生かして経済のパイを増やし、そこから配分の原資を生み出す。KPMGインターナショナルの調査では世界の法人税率は平均25・9%。この10年で7%下がった。日本は40・69%と最高水準だ。
 たとえば日韓を比べると? 韓国はおよそ24%。税率の違いでサムスン電子はシャープより年2千億円分の余裕資金があるとされる。そのサムスン電子は最近、20年までに売上高を4倍にする経営計画を固めた。韓国政府が欧州と結んだ自由貿易協定では薄型テレビで14%、自動車で10%の関税がなくなる。GDPは3%上がるという。グローバルな勝ち組は国内雇用も増やしやすい。
 「国際的な企業間競争ができる環境をつくってほしい」(新日本製鉄の三村明夫会長)。日米欧の競り合いにアジアなど新興国が加わり国際競争は新たな局面にある。企業のはしごを外す時ではない。むしろ冷遇を優遇に切り替えて企業を奮い立たせる時だ。
 急激な円高は企業の輸出競争力を損なう。国内経済のデフレ圧力にもなりかねない。円相場は安定が最優先で、不規則発言など不要である。
 アジア勢が追い上げる中でも、環境やロボットなどの最先端で日本は突き抜けている。日用品や食品分野でグローバル化する企業も多い。日本で積み上げたきめ細かい顧客サービスや商品ノウハウ、ソフトパワーも高い競争力を持つ。
外資も担い手に
 派遣労働の禁止や最低賃金引き上げは少し時間をかけて考えたらどうだろうか。来春の高卒予定者の内定率低下が深刻なのは、規制強化を嫌がる企業が採用を渋っている面がある。柔軟さを欠く労働市場は労使ともにプラスにならない。
 雇用の担い手に外資も動員すればよい。仏プジョーシトロエンの出資受け入れは三菱自動車にとって環境技術を世界に広げる糸口にもなる。成長のために内需も外需も総動員する八方美人でいいんじゃないか。
 日本は何で稼いでいくのか――。「日本のように人口が減る国で家計部門への分配にばかり政策が偏ることはリスクが大きい」。米コロンビア大学のロバート・マンデル教授は言う。
 来年の参院選に縛られる政治の事情があるにせよ、企業が太らないことには家計の回復もままならない。つけを残して今を取り繕うより、雇用の受け皿を育て、未来を拓(ひら)く方がよい。
提言
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:2009:12/07/14:55  ++  クラウド使いシステム共有、自治体向け、IT大手参入、NECや富士通、各地で展開。

「クラウド」使いシステム共有 運用費3~4割減
 NEC、富士通などIT(情報技術)大手は、ネットワーク技術を使って地方自治体の情報システム運用を大幅に効率化する「自治体クラウド」に一斉参入する。国内では住民サービスや税務のデータを管理するため各自治体が個別のシステムを運用しており、年間IT投資は約832億円に及ぶ。機器やソフトを共有する自治体クラウドは運用コストを30~40%削減できるため、各社は財政健全化を急ぐ自治体の需要が増えるとみている。
 ネットワーク経由でソフトウエアや情報サービスを利用する「クラウドコンピューティング」の技術を使う。高性能のコンピューターやソフトを自前で保有する必要がないため、業務の電子化が遅れている小規模な自治体でも導入できる。
 NECは住民情報や税務、国民健康保険など基幹業務システムをクラウド型で提供するサービスを開発した。山形県内の7市町が導入する予定で、4月に一部が稼働した。同社は自治体が提供している電子申請システムをクラウド化する技術も開発。山梨県などの自治体が利用しており、40%以上の運用コスト削減効果が見込めるという。
 富士通は施設予約や電子調達のシステムをクラウド化する。同システムは兵庫県などが先行導入しており、2010年中に新たに4自治体が利用を開始する見込みだ。
 日本IBMは自治体が主催するクラウドの実証実験の入札に参加する。京都府や北海道が、税務など基幹システムを複数市町村で共用する実験を始める予定。日本IBMは個別の参加案件を公表していないが、そのいずれかに入札する。
 日本ユニシスは佐賀県が実施する自治体クラウドの共同実験事業者に選ばれた。日本ユニシスが県内のデータセンターに構築したシステムを武雄市や鹿島市など6市町が共用する。各市町村が個別開発する場合に比べ、総コストを3割以上削減できると試算している。
 調査会社のIDCジャパンによると、自治体のIT投資は08年で約832億円。今後も年率平均2・1%増加し、13年には924億円に達する見通し。申請・届け出手続きのオンライン化などを進めているが、中には電子申請が1%程度の手続きもあり、「無駄遣い」の批判が出ている。自治体のなかには電子申請そのものを廃止する動きもある。
 ▼自治体クラウド 市町村ごとに開発して所有している住民基本台帳や税務など各種の基幹業務システムを県単位のデータセンターに集約し、IT(情報技術)コスト削減や業務効率化につなげる試み。総務省が2015年の稼働を目指した「霞が関・自治体クラウド」構想を提唱しているほか、各自治体が独自に進めるプロジェクトもある。
 現在は全国で約1800の自治体が個別のシステムを運用。多くは財政難でIT投資を抑制しており、業務電子化が大きく遅れた自治体もある。

:2009:12/04/11:47  ++  【正論】拓殖大学大学院教授・森本敏 国家を揺るがす日米同盟の危機

≪米側の明らかな不快感≫

 このところ急速に株価が下落し、円高もすすみ、デフレ現象への危機感が広がっている。政府・日銀はこれに対して、追加的な金融緩和策を取ろうとしている。これは当面の危機に対処するための適切な措置かもしれない。しかし、先般、米議会で海兵隊のグアム移転経費の7割を削減する法案が採決されたり、トヨタのリコール問題が起こったりしたことを合わせ考えると、これら一連の変化の背後に米政府の意図が介在しているような気がしてならない。

 確たる証拠があるわけではないが、米国のアフガン新戦略を同盟諸国や中国、インドにまでオバマ大統領が直接電話をして事前説明しているのに、鳩山首相には電話さえなかったのも、同様の背景要因がある。すなわち、これには明らかに米政府の日本政府に対する不快感とそれに基づく政治的圧力が存在すると見るべきである。

 鳩山政権が誕生して、直後のニューヨークにおける日米首脳会談で、日米双方は日米同盟の重要性を確認し合った。しかし、その後、鳩山政権は普天間基地問題の決断を先延ばしにして、今までの交渉経緯を検証すると言い出した。さらに、インド洋から海自を撤退すると言い、東アジア共同体構想を提案して、岡田外相は、米国をこれには加えないと説明した。米国政府内に日本民主党に対する疑念が出始め、その一方で、少し、忍耐して事態を静観しようという見方が生まれた。

 ≪度重なる裏切りに疑念も≫

 ワシントンではオバマ訪日を延期すべきだという意見さえ一部にあった中で、オバマ大統領は訪日を決断し、11月13日には2回目の首脳会談をやった。実質的な内容のない会談であったが、ともかく日米同盟深化のための政府間協議と普天間問題を話し合う閣僚級会合という2つの枠組みを作ることだけは合意した。その直後、鳩山首相がシンガポールで普天間基地問題に関するオバマ大統領との約束を反故(ほご)にするような発言をした。米国の温情と忍耐もここまでだった。

 ゲーツ国防長官が訪日して、相当に不快感を持って帰ったが、国防長官をなだめることができたのは、キャンベル、グレグソン両次官補など知日派による説得ではなかったのか。しかし、その忍耐も限界に来つつある。こう考えると、最近、日本を取り巻く経済状況の裏に、米政府の意図が介在していても不思議ではあるまい。

 米国にしてみれば、日本は米国の期待を裏切ることばかり重ねているように見える。普天間基地問題は日米間で約束したのに、これを実行するどころか今までの経緯を検証すると言いつつ、決断を先送りしている。沖縄の現状を見ると、事態はますます深刻になりつつある。インド洋から海自を撤退する代わりではないが、5年で50億ドル(約4500億円)の民生支援をコミットして金で済ませようとする。また、日米地位協定の改訂を提起しようともしている。

 在日米軍への接受国支援(HNS)を事業仕分けの対象にして減額しようとする。米国外しの東アジア共同体を提案する。そして、日米間の核密約を暴露しようとしている。これが同盟国の対応なのか。日本民主党は、自民党政治の仕組みだけでなく、日米同盟も排して新しい政治を試み国民人気を取ろうとしているのではないか。日本民主党が主張する「対等」な日米関係というのはこういうことだったのか。

 米国の疑念はこういう気持ちに要約されよう。われわれは米国が日本の政治に失望しようが、期待はずれの気持ちを持とうが、日本の国益を追求するために必要だと思えば、米国に遠慮なく物を言うべきである。遠慮なく振る舞うべきである。

 ≪首相の勇気ある決断を≫

 しかし、日本の国家の安全と繁栄が、日米同盟に大きく依拠しているという厳然とした事実を忘れるべきではない。国家が直面する危機感と国家のガバナビリティに欠ける政権運営は、国家の安全と国家主権を危うくする。傷ついた日米同盟を修復するには、首相の勇気ある決断力が必要であるが、いまや、それだけではなく、今後、長期にわたる信頼回復への努力とコストを払わねばならない。

 このところ、国際社会における日本の姿が見えなくなっている。国力が低下しているのか、日本が内向きになっているのか分からないが、事態は深刻である。銀行の資金力も低下している。日本に海外から投資しようとする動きが急速に消えつつある。日本の将来と信頼感に対する期待感が低下して、それが指標に出始めている。

 しかし、日本にはまだ、良いところが多い。底力もある。人材も育っている。これを生かすか、殺すかは政治の責任である。その前に、まず、現下の日米関係の危機的状態を救うべきである。自民党も首相の献金疑惑の追及だけでなく、政権与党と超党派を組んで日米同盟の信頼性回復のために立ち上がるべきではないか。今こそ、そうすべきではないか。(もりもと さとし)

:2009:11/27/13:53  ++  日立、英で鉄道大型受注、年度内にも契約、総事業費1兆円――川重は路面電車開発。

米市場向け
 日本の鉄道関連企業が海外進出を本格化する。日立製作所は英高速鉄道の一部区間について今年度中に正式契約し、総事業費約1兆円の過半を1社で受注する見通し。川崎重工業は米国向けの路面電車を開発する。鉄道は中国など新興国では新規需要が見込まれ、先進国でも輸送手段を自動車や航空機から環境負荷の低い鉄道に置き換える「モーダルシフト」が進んでいる。日本勢は国内市場で培った安全・省エネルギー技術を武器に海外市場を開拓する。(モーダルシフトは3面「きょうのことば」参照)
 日立が交渉しているのは英運輸省が計画する「インターシティ・エクスプレス・プログラム(IEP)」。リチウムイオン電池とディーゼルエンジンを組みあわせたハイブリッド車両などが評価され、2月に優先交渉権を得ている。
 日立は正式受注をにらみ、本社にIEP推進本部を新設。2010年2月までに現地工場の用地候補を絞り込む。日立は全1400両の車両製造と保守、運行システムの開発などを請け負う。日立は交通システム事業で現在約2割の海外売上高比率を、15年に7割に高める計画だ。
 川崎重工業は米国市場向けの路面電車を開発する。走行速度を日本の都市仕様である時速40キロメートル程度から、米国の郊外走行向けに80~90キロメートルにする。開発費は5億~10億円。10年度に基本設計を終え、11年度に試作車両を完成させて受注活動を始める。
 川重によると米国では10~14年に400両程度の路面電車需要がある。同社はニューヨーク地下鉄車両でシェア首位の実績や現地工場を生かし、環境意識の高まりで注目される路面電車の米市場に本格参入する。
 東芝はハイブリッド自動車の技術を応用した電気機関車を開発し、海外を中心に売り込む。自社開発のリチウムイオン電池と、既存のモーターに比べエネルギー効率がよく温度上昇が少ない永久磁石式のモーターを搭載。現在4割の鉄道事業の海外売上高比率を15年度に6割に引き上げる予定。
 中国では日本信号が北京の地下鉄15号線向けに無線の列車制御システムを約20億円で受注した。
 鉄道車両の国内生産額は過去10年、2千億~3千億円程度で頭打ち。新幹線や在来線の更新需要が中心で、中長期的にも市場の拡大は期待しにくい。一方、世界の鉄道市場は今後も拡大が続く。欧州鉄道産業連盟は、05~07年の平均で1230億ユーロ(約17兆円)だった世界の鉄道関連産業の市場規模は、16年には1540億ユーロ(約21兆円)に達すると予測している。
 ▼IEP 英国を縦断する複数幹線鉄道の更新プロジェクト。英運輸省が計画している。日立、英ゼネコン大手のジョン・ライン、英バークレイズ銀行傘下の投資会社の3社が年度内に契約するのはロンドンとエディンバラを結ぶ東海岸線、西海岸線など。
【表】日本企業の海外での主な鉄道関連受注      
受注時期   企業名   案 件
08年10月   日立製作所   韓国で都市交通モノレール受注
09年2月   東洋電機製造   中国で高速鉄道用の駆動装置を受注
5月   川崎重工業   シンガポールで地下鉄向け車両を受注
7月   三菱電機   中国で北京地下鉄の車両向け電機品を受注

:2009:11/18/11:37  ++  韓国・現代自動車がトヨタを抜く日

日本車と韓国車のどちらにするか、デービッド・ベイドニーさん(46)には簡単な選択だった。韓国・現代自動車は購入の際に現金3500ドル(約31万8000円)を還元してくれた。赤字のトヨタ自動車には、まねのできない値引きだった。

 「トヨタの販売店に立ち寄ってカムリにも乗った。でも値段は現代で買った車よりも4500ドルも高かった」。ベイドニーさんはニューヨークに住むグラフィックデザイナー。結局「一番良い条件を出してきた」現代のエラントラを購入した。

 為替相場では、円が過去2年の間に、ドルやユーロ、ウォンなど主要16通貨すべてに対し上昇。トヨタの利益は圧迫され、値下げ余地は乏しくなった。一方、ウォンはその間、ドルに対して22%下落。現代は値引き戦略が可能になり、米市場でのシェアは約2倍に膨らんだ。

 現代は、09年4~6月期(第2四半期)で8120億ウォン(約624億円)という記録的な収益を計上した。一方、同時期で778億円の損失を記録したトヨタは、2期連続での赤字となる見通し。過去2年間で急激に進んだ円高ウォン安が、両者の明暗を分けた形だ。
現代は、ウォンの対ドルレートの低さを生かし、米国市場で大幅値下げや多額の販売奨励金支給を実施。米国や日本のメーカーの購買者を取り込み、09年1~9月期にかけて、シェアを1.3%から4.4%に伸ばした。トヨタは17%のシェアを維持しているが、円が16の主要通貨のすべてに対して値上がりするなか、十分な販売促進策を打ち出せず、収益は落ち込んでいる。

 日韓輸出企業の明暗は、そのまま両国の景気回復のペースに反映されることになった。韓国の国内総生産(GDP)は、第2四半期で2.6%上昇し、03年以来最大の増加率を記録。0.6%の成長にとどまった日本経済は、戦後最悪のリセッション(景気後退)からいまだ抜け出せずにいる。韓国総合株価指数も年初来48%上昇し、東証株価指数(TOPIX)の約7倍となる上昇率を記録している。

 苦境に立つ日本の輸出企業だが、政府からの有効な支援はほとんど得られていない。他方、韓国政府は前四半期、ドルに対する値上がりを抑えるためのウォン売りを実施してウォン安の維持に努めるなど、政府当局の対応でも日韓の間で明確な違いがみられる。

好調な韓国経済を背景に、世界の投資資金が同国へ流入することで、今後はウォン高が進む可能性もある。ブルームバーグの調査対象となっている34通貨の中で、ウォンは来年最も堅調に推移すると見込まれているが、市場の予想中央値では、10年9月末までに対ドルで6%上昇する見通し。一方で円は、対ドルで7.8%、ウォンに対しては13%、それぞれ下落すると予測されている。

 米調査会社JDパワー・アンド・アソシエーツが今年行った自動車の長期耐久性調査で、現代は日産やマツダを上回る評価を得ている。日本株リサーチ会社ジャパンインベストのサンディエゴ在勤アナリスト、スティーブン・アッシャー氏は「韓国企業が国際的な競争力を身につけ、日本のメーカーを脅かす存在となるのはいつか。過去5年から10年の間、そうした疑問が常に取りざたされてきたが、とうとうそのときが訪れた」と語った。

:2009:11/16/13:43  ++  日立が4千億円超調達へ 27年ぶり、財務強化で

日立製作所は16日、来月に最大で4千億円超となる資本増強を実施する、と発表した。普通株による公募増資と転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行を組み合わせる。財務基盤の立て直しを図るとともに、中核事業と位置付けている電力や情報通信、リチウムイオン電池事業などの強化を進める。公募増資は1982年に米国で行って以来27年ぶり。

 公募増資は国内外で行う。公募価格は今年12月7日から10日の間に決定する。現在の株価で計算すると、調達額は最大約3156億円。一方、CBの発行額は1千億円。

 日立は2009年3月期連結決算で、7873億円の純損失を計上。10年3月期も2300億円の純損失を見込む。今年9月末の自己資本比率は10・9%と、08年9月末と比べ、半分近くに低下している。

:2009:11/16/10:45  ++  持続回復探る世界経済(中)新興国、輸出頼みの成長―資金流入、バブルの火種。

ベトナム国境に近い中国・南寧。パソコン店が集まるため「電脳城」と呼ばれるビルは午前中から来客でにぎわう。売れ筋は3千元(約4万円)以下のパソコン。男性店員は「農村からの客が増えた」と話す。
8%成長現実味
 政府が農村住民の家電購入に補助金を出す「家電下郷政策」で、昨年末に3億人だった中国のインターネット利用者は9月末に3億6千万人に増えた。消費刺激策や4兆元(約53兆円)の景気対策を背景に、中国の7~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比8・9%増と、通年での8%成長という目標達成が現実味を帯びてきた。
 中国の財政出動で周辺国・地域も潤う。韓国の同期のGDPは対中輸出の増加を受けて前期比2・9%増(年率換算で約12%増)と、7年半ぶりの高水準。台湾液晶大手も1年ぶりに黒字に転換した。
 新興国ではインドが前年同期比6%前後の成長を保ち、資源国ブラジルも4~6月期に3四半期ぶりのプラス成長に転じた。主要株価指数の年初来上昇率をみると、中印、ブラジルが7割前後と突出している。
 もっとも、大きな期待はリスクと裏腹でもある。投資マネーの流入で、実体とかけ離れた資産バブルや通貨高を招く恐れがある。
 10月中旬、香港で「世界一高額」をうたうマンションの販売が始まった。最高価格は4億4000万香港ドル(約51億円)。中国の個人マネーが流れ込むが、相場高騰は行き過ぎだとの警戒感も広がる。
 ブラジルは10月、海外からの株式投資に2%課税する規制を導入。投資マネーの流入を放置すれば通貨レアル高に歯止めがかからないと判断した。中国は人民元相場を維持するため巨額の売り介入を実施、供給過剰になった人民元が不動産市場に流れつつある。世界銀行は3日付で「東アジアへの資本流入が再開し、資産バブルを引き起こす懸念がある」と警告した。
内需拡大に苦慮
 一方、財政出動の陰で、持続成長に欠かせない民需が置き去りにされているとの懸念もある。
 「数字だけつくっても意味がない」。中国の将来の指導者と目される汪洋・広東省共産党委書記は同省の会合で発言。「橋を建てて壊し、再建すればGDPは増えるが、社会の財産にはならない」と、無駄な投資に警鐘を鳴らした。
 「財政規律を立て直したいのだが」。インドのムカジー財務相は3日の記者会見で複雑な表情を見せた。同国政府は昨秋からバス車両購入など大規模な財政出動を続けているが、個人消費は回復していない。逆に財政悪化を受けて長期金利が上昇。自動車ローン金利などに跳ね返り、消費に水を差しかねない。
 新興国は輸出依存度が高く、外需の目減りを懸命な財政出動で支えている。米国は経常黒字国が内需を拡大して世界経済の不均衡を是正するよう求めるが「中国の民需はまだ力不足で、世界経済をけん引できるわけではない」(野村国際の木下智夫エコノミスト)。
 景気減速リスクを内需主導で乗り越えられるかは日中の共通課題でもある。日本の4~6月期のGDPは前期比年率2・3%増(改定値)。押し上げ要因は中国を中心とした外需だ。輸出は前期比6・4%増と、22%減だった1~3月期から改善したが、中国などの成長が減速すれば、新興国に積極的に進出している日本の持続成長も危うい。
 モルガン・スタンレー・アジアのローチ会長は「中国が内需主導の成長を目指すなら、社会保障整備などに政策の軸足を移すべきだ」と指摘する。グローバル市場で存在感を増す新興国だが、世界経済の持続回復を支えるための相応の負担も求められている。

:2009:11/16/10:39  ++  日立、3000億円資本増強 年内にも、財務基盤立て直し

日立製作所は年内にも3000億円を上回る資本増強をする方針を固めた。普通株の公募増資と新株予約権付社債(転換社債=CB)の発行で調達する見込みだ。電力・鉄道など社会インフラや、情報通信といった重点事業への投資や研究開発に資金を振り向けるとともに、昨年来の景気後退で悪化した財務基盤を立て直す。

 資本調達は国内外で募集する。CBで1000億円程度、普通株で2000億円強を調達するとみられる。調達額が4000億円近くになる可能性もある。日立が公募増資をするのは1982年に米国で米預託証券(ADR)形式で実施して以来、27年ぶり。電機大手では東芝が普通株と劣後債の発行で5000億円規模の資本増強をしたほか、NECも約1340億円の公募増資をすると発表している。(15日 07:00)

:2009:11/10/10:24  ++  【正論】東洋学園大学准教授・櫻田淳 「破局」へ歯車を進める鳩山外交

≪オバマ来日と井上成美の言葉≫

 「アメリカがよくあれまで我慢したものだと思う。資金の凍結や油の禁輸などは窮余の策で、まだまだおとなしい方だ。日本のやり方は傍若無人と云うの外はない」

 井上成美(しげよし)は、戦前、日独伊三国同盟の締結や日米開戦への動きには頑強な抵抗を示し、米内光政や山本五十六と並んで、「海軍左派三羽烏」と称された。井上は、戦時中には海軍兵学校校長、海軍次官を務め、帝国海軍最後の大将に昇進した。井上は、海軍兵学校校長在任時、英語が敵性語として扱われた時節に兵学校での英語教育の続行を指示した。

 前に触れたのは、戦後、昭和30年代後半に、井上が日米開戦に至る過程を回顧して語った言葉の一節である。1940年9月の北部仏印進駐から翌年7月の南部仏印進駐を経て日米開戦に至る過程に関して、一つの解釈は、米国が資産凍結、石油・屑(くず)鉄禁輸といった様々な対日圧力を加え、それが日本を真珠湾攻撃に追い込んだというものである。

 しかし、井上は、第二次世界大戦序盤の欧州戦線の状況に乗じた北部仏印進駐には反対したし、南部仏印進駐を「火事場泥棒」と評した。井上は、当時の米国が加えた様々な対日圧力を呼び込んだのは、実は、そうした「国際慣例」にも違背した日本の対応に他ならなかったと指摘し、それ故にこそ、その過程で「我慢をした」のは米国であったと認めたのである。

 井上の述懐は、他国の反応に細心の注意を払わず、結果として井上が「傍若無人」と評した往時の日本の姿勢にこそ、日米開戦の遠因の一つがあったことを説いている。
然(しか)るに、鳩山由紀夫内閣発足後50日余りの対米政策は、誠に支離滅裂なものであると評する他はない。たとえば、岡田克也外務大臣は、バラク・H・オバマ大統領の「核兵器のない世界」演説以降の国際潮流に乗じてか、米国に核先制不使用を要求する意向を示した。しかし、そうした要求は、米国の「核の傘」の恩恵を明らかに受けている日本の安全保障上の立場と整合しないし、そもそもオバマ演説では、「同盟国に対する『核の傘』の提供」は、明言されているのである。

 ≪対外関係に優先する自己都合≫

 また、普天間基地返還に絡む案件に関しても、普天間基地を拠点にする海兵隊部隊は、在日米軍の「抑止力」の中核を占める存在であるけれども、そうした事情への考慮は、鳩山内閣において、どこまで働いているのか。

 鳩山内閣下の対米姿勢における最大の難点は、結局のところは、民主党という一政党としての「自分の都合」が客観的な対外情勢判断の総(すべ)てに優先していることなのであろう。鳩山内閣には、「政権交代」の結果として登場したという自負を反映した故にか、従来の自由民主党主導内閣で展開されてきた対外政策ですらも転換し、新たな対外政策方針を構築できるという幻想が漂っているのかもしれない。

 しかし、米国をはじめとする他の国々が対日関係の文脈で相手にしてきたのは、日本政府であって、自民党という一政党ではない。自民党であれ民主党であれ、日本政府が他の国々と約束したことは、基本的に踏襲されなければならないのである。対外政策には、「独善」ほど忌むべきものはないのである。
≪国家の利益を背負った交渉≫

 因(ちな)みに、井上は、日独伊三国同盟を推し進めた松岡洋右(ようすけ)の構想を「痴人の夢」と評した。

 松岡は、日独伊三国同盟にソ連を引き込む構想を梃子(てこ)として、「対等な日米関係」を実現させようとしたけれども、そうした松岡の「独善」を絵に描いたような構想は、日米関係における「対等性」を実現するどころか、その「破局」に向けた歯車を決定的に進めたのである。

 目下、「東アジア共同体」構想を唱え、「緊密で対等な日米同盟」を標榜(ひょうぼう)する鳩山総理の言動を前にして、奇妙な既視感を覚えるのは、果たして筆者だけであろうか。

 こうした情勢を前にして、オバマ米国大統領が来日する。鳩山総理は、オバマ大統領に対して、どのような言葉を掛けるつもりなのか。オバマ大統領もまた、米国という国家の利害を背負って来日するのであれば、実質的な成果を期待できない「ビジネス」に本来は付き合っている暇もないであろう。そうした実の伴わない「ビジネス」に付き合わせる弊害には、鳩山総理は、自覚的に向き合うべきであろう。

 米国は、日本とは比較にならないほどに、「我慢が出来ない」国家なのである。

 「アメリカ(オバマ政権)がよくあれまで我慢したものだと思う。…日本(鳩山内閣)のやり方は傍若無人と云うの外はない」

 筆者は、往時の井上が痛憤の念とともに回顧した風景が、このような体裁で再現されないことを切に願っている。

:2009:11/09/09:13  ++  天下り禁止の理念がかすむ(社説)

民主党がマニフェスト(政権公約)に掲げた「天下り、渡りのあっせんを全面的に禁止する」という理念がかすんでいる。なし崩し的な方針転換につながらないように、鳩山政権は天下りの禁止について明確な判断基準を示す必要がある。
 鳩山政権は日本郵政の社長に斎藤次郎元大蔵次官を起用したのに続き、谷公士前人事院総裁の後任に江利川毅前厚生労働次官を充てる国会同意人事案を決めた。
 鳩山由紀夫首相は国会審議で、斎藤氏の起用について「斎藤氏は大変有能で世間も認めた方だ。元いた役所に影響力があるから問題だと言ってきた。財務省も調べたが、影響力のない人だ」などと説明した。
 江利川氏に関しても「人事院そのものの存廃の議論が必要なぐらいの人事院改革、公務員制度改革をしないといけない。(官僚制度の)中を知っている人が1人ぐらいいた方が大胆な改革ができる」と述べ、次官OBであっても問題はないとの認識を示した。
 今後、労働基本権問題などの抜本的な制度改革に取り組むためには、行政組織に通じた人事官が必要という首相の説明には一理ある。
 しかし鳩山政権の天下り問題への対応は、ご都合主義と批判されても仕方があるまい。例えば出身省庁への影響力の有無を誰がどのようにして判断するのか。首相は斎藤氏について「退官後に14年間、民間で勤務をした経験がある」とも語ったが、この理屈は江利川氏や日本郵政の副社長に就任した坂篤郎前内閣官房副長官補らには当てはまらない。
 首相らは省庁によるあっせんではなく、内閣や所管大臣の判断で選べば天下りにはならないと主張している。政府は衆院議院運営委員会に、天下りを「府省庁が退職後の職員を企業、団体などに再就職させること」と定義する文書を示し、省庁のあっせんでない再就職を正当化する理論武装をした。
 だが所管大臣らが選べば天下りに該当しないという基準は到底、有権者の理解を得られないだろう。この基準だとOBによるあっせんが抜け穴になる恐れもある、鳩山政権は天下り問題に正面から取り組まなければ、信頼を失うだけである。

:2009:11/06/09:45  ++  壁崩壊から20年変化に追いつけぬ日本(社説)

東西冷戦の終結を象徴した1989年のベルリンの壁崩壊から9日で20年。米国とロシアはかつての米ソのような対立関係ではなくなったが、宗教や民族の違いを背景とする地域紛争は絶えない。北朝鮮など小国も核兵器の開発を進め、国家ではない組織や集団が大規模テロを繰り返すなど、世界の安全保障を揺るがす脅威の源は大きく変わった。
 経済では、旧共産圏も含め一体となった市場を資本や技術が自由に動き回り、企業活動のグローバル化が進んだ。そこに中国、インドなどが参入し競争に拍車をかけている。
民主化促進に貢献を
 この歴史的な変革期に、日本は外交、政治、経済など様々な分野で対応に手間取り、存在感を自ら弱めているように見える。
 米政治経済学者F・フクヤマ氏は旧ソ連崩壊を受けた92年の著書「歴史の終わり」で、個人の自由を尊重するリベラルな民主主義が最終的な統治の形という見方を示した。その見方は正しいとしても、現実にはミャンマーで軍事政権が居座り、スーダンや中国のチベットなどで人権抑圧の問題が続く。またインド、パキスタン、北朝鮮が核兵器を開発し、イランにも核開発疑惑がある。
 世界の民主主義と安全は冷戦時代と別の形で脅かされ、それへの対応が先進国に求められている。
 日本は91年の湾岸戦争で資金協力にとどめ、小切手外交という批判を浴びた。その後、イラク戦争で自衛隊が民生支援に加わり、カンボジアや東ティモールなどの平和構築に協力したが、欧米に比べ消極的だ。
 情けは人のためならず。冷戦後は他国に好かれる力、ソフトパワーが自らの安全に重みを増した。特に中国が21年続けて国防費を増やし、北朝鮮の核の脅威が存在する今日、日本は米国との関係を保ちつつ国際貢献を通じ仲間を増やす必要がある。
 国際貢献のお手本はカナダだ。スエズ戦争の際、ピアソン外相(後に首相)の提唱で発足したのが国連平和維持軍の前身である。近年では対人地雷禁止や、100人以上の犠牲者を出したアフガンでの平和活動などで各国から尊敬されている。
 海上自衛隊のインド洋での給油活動は小泉政権下で始まった。鳩山政権はそれをやめ、代わりにアフガン支援に自衛官数人を派遣することを検討中という。43カ国が7万人強の兵員を送るなか、自衛官数人で中身のある貢献をできるのだろうか。
 経済でも日本の変革力の弱さが目立つ。冷戦後に投資の安全性が増した旧共産圏や新興国に資本や技術が流入した。特に中国は「社会主義市場経済」を掲げる〓小平氏の下で92年から改革開放を加速し、ドル表示の国内総生産(GDP)はこの20年間で11倍弱になった。今年か来年に日本を抜いて世界第2位になる。
 市場経済への過信は米欧の金融機関を暴走させ、不況を招いた。このため市場経済やグローバル化を責める声がある。しかし米欧とも政府介入で経済の崩壊を免れ、中国、インドは高い成長を続ける。市場経済化とグローバル化は今後も続く。
 日本はグローバル化に適応を進めた部門とそうでない部門に分かれている。自動車や電機などの業界は消費地や賃金の低い国で生産するなど流れに乗って次の展開に備えている。半面、農業や医療、教育、電力など規制に守られた内需型産業は生産性の伸びが低い。雇用の面では、賃金が低い中国などとの競争で単純な労働の賃金が下がり、所得格差の拡大にもつながっている。
内向きで経済改革滞る
 グローバル競争を生き抜くには、市場を開放し規制を緩めて、内需型産業を含めた企業全体を内外の競争にさらすことが第一に重要だ。加えて教育・訓練や研究・開発に国も企業も力を入れ、日本人の事業機会と仕事を確保する必要がある。
 この点で見習うべきは英国だ。今は銀行経営の失敗で不況に陥っているが、サッチャー政権以来、国営事業の民営化、規制緩和、行政・税制改革など、経済構造を市場経済に合うよう改造してきた。不況を克服すれば再び力強く成長するだろう。
 日本も小泉内閣が構造改革に向かったが、郵政民営化の後退が示すように停滞している。それもあり名目GDPはバブル崩壊後の92年度から16年間で3%しか増えていない。
 一方、欧州は93年に欧州連合(EU)を発足させ、99年からは単一通貨ユーロを導入。経済の統合を進め、地域としての力を増した。日本は東アジアでの経済連携を唱えるが、農産物市場を十分に開かないため相手国も関税を大幅に下げない。この地域では、独特の磁力を持つ中国が通商の中心になりつつある。
 冷戦後、日本は小選挙区導入を経て政権交代を実現させた。だが政策をめぐる政治家の発想や行動は内向きで、冷戦時代とそれほど大きく変わっていない。これでよいのか。

:2009:11/06/09:34  ++  世界は後戻りしない(冷戦終結20年未完の新秩序)

東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩れてから9日で20年がたつ。この20年で、ヒト、モノ、カネが自由に動き回るグローバル化が進み、ロシア・東欧、中国などが市場経済に仲間入りした。だが、マネーの暴走や核拡散の不安をどう制御するかなど冷戦後の新秩序づくりは道半ばだ。
マネー解き放つ
 「今考えても奇跡としか思えない」。ドイツ連銀総裁として欧州通貨統合を主導したハンス・ティートマイヤー氏は自分にとっての「ベルリンの壁崩壊」をこう振り返る。
 1989年11月9日夜。当時、西独大蔵次官だった同氏が「第1報」を聞いたのは西独の首都ボンの執務室。現地からの情報収集にあたりながら、部屋にいた閣僚や議員らとともに祈ったという。「どうか何も起こりませんように」。東独やソ連の警察や軍隊が、壁を壊す群衆に発砲でもすれば大混乱が起こりかねない。だが銃声は鳴らず。28年間、東西を隔てた壁は崩れ去った。
 「奇跡」はさらに続く。コール西独首相は壁崩壊から3週間足らずで悲願の東西ドイツ統合を表明。それと歩調を合わせるように、欧州の通貨統合、さらには旧共産圏の民主化、市場経済改革が「ドミノ倒し」のように広がっていった。
 冷戦終結は、世界の経済構造に大変革をもたらした。東西に分断されていたヒト、モノ、カネの流れが自由になり、グローバル化と呼ばれる地球規模の市場統合が始まった。90年代のIT(情報技術)革命が連動し、企業は賃金コストなど最適な国に生産拠点をつくり、投資資金もより利回りが高い市場を求めて急回転するようになった。
 解き放たれたマネーは旧共産圏などの新興国に流れこみ、成長を促進した。世界の名目国内総生産(GDP)は89年の20兆ドルから2008年には60兆ドルに拡大。このうち新興国を含む途上国のシェアは23%から31%に上昇した。
 中国など新興国は低賃金を武器に輸出を拡大。稼いだ外貨(ドル)を米国債に投資し、米国はその借金に頼って住宅バブルを拡大した。そのツケが回ってきたのが今回の世界的な経済・金融危機だ。冷戦終結は市場経済を広げ成長を高める「光」をもたらすと同時に、貯蓄と消費(投資)の不均衡を地球規模で拡散しマネー暴走のリスクを増す「影」も広げた。
核・テロの不安
 冷戦後は軍縮が進み世界はより安全になると期待されたが、20年後の世界は必ずしもそうとは言い切れない。冷戦の勝者とされた米国はイラク戦争でつまずき、核拡散やテロの不安は消えない。オバマ米大統領は「核なき世界」の旗を振るが、その道筋を築くのはこれからだ。
 だが冷戦終結がもたらした世界的な市場化・民主化・グローバル化の流れは今後も後戻りはしないだろう。世界的に統合した市場経済をどううまく機能させ、グローバル化の光の部分をいかに生かすかの国家間の競争はより激しくなる。
 バブルの頂点で冷戦終結を迎えた日本。その後の20年は経済低迷と政治の漂流期に入った。89~08年の日本の名目GDP成長率は年平均1・4%と、この間の世界平均(5・8%)を大きく下回り、20年で13人の首相を「量産」した。
 鳩山由紀夫首相は日本を消費者重視、内需主導の経済にするとしているが、グローバル化にどう対応し成長力を高めるかは明確ではない。冷戦終結から20年。世界は大きく変わった。日本も新しい現実に即した戦略再構築を迫られている。

:2009:10/29/09:32  ++  ウィンドウズ7変わる競争軸(上)パソコン、MS頼み脱却――低価格競争に拍車。

米マイクロソフト(MS)がパソコン用基本ソフト(OS)の最新版「ウィンドウズ7」を発売した。インターネット経由で様々なソフトや機能を提供する「クラウドコンピューティング」を背景に高機能路線を転換、動作を軽快にした。だがパソコンに求められる機能が変わり、MSの優位性は揺らぎ始めた。IT(情報技術)の攻防は新たな局面を迎えている。
エイサー2位に
 「パソコンメーカーはウィンドウズに“おんぶに抱っこ”ではやっていけない時代になった」。台湾エイサー日本法人の幹部はこう話す。新OSが喚起する需要をパソコン各社が一様に享受するのではなく、戦略によって勝ち負けがはっきりするという意味だ。
 「7」搭載パソコンは必要なソフトや機能をネット経由で利用する使い方を重視する。機構を簡素化すればコスト競争力がものをいう。エイサー日本法人のボブ・セン社長は「パソコン市場はいよいよ価格勝負になる」とみる。
 エイサーは2008年6月に低価格の「ネットブック」を発売し、その波に乗って今年7~9月期に米デルを出荷台数で上回り世界2位に浮上した。11年までに「ノートブックで世界1を目指す」(王振堂グループCEO)と鼻息は荒い。首位の米ヒューレット・パッカード(HP)と火花を散らす米国ではネットブックが300~400ドルで販売されているが、さらに低価格化が進みそうだ。
 一方、法人部門を強みにしてきたデルは企業の情報化投資削減の影響で、5~7月期のデスクトップパソコンの売上高が前年同期比約3割減少。今月、米ノースカロライナ州のパソコン工場を閉鎖すると発表した。直販と効率の高い受注生産方式を組みあわせて世界を席巻した「デルモデル」にも陰りがでてきた。
 そのデルも巻き返しを図る。「実はウィンドウズOSとは別にリナックスベースのソフトを載せた。高速起動はそのおかげ」。9月に米国で発表した新製品は会議の合間のわずかな時間でも、ボタンを押せば数秒でネット接続してメールや資料をチェックできる機能が売りだ。その機能は主OSを「スキップ」することで実現したという。
グーグルと協力
 ITの主役が大型コンピューターから、サーバーやパソコンへと変わり始めたのは1987年のブラックマンデー前後。東芝が世界初のノートパソコン「ダイナブック」を発表したのは89年。以来、東芝はマイクロソフトのOSに、インテルのCPU(中央演算処理装置)を載せた「ウィンテル」を世界で売ってきた。
 昨秋の金融危機をはさんでクラウドの普及が始まり、パソコンのビジネスは転機を迎えた。ダイナブックの誕生から20年、東芝も新たな一歩を踏み出す。
 米グーグルが無償で提供する基本ソフト「クロームOS」搭載パソコンの開発だ。日本のパソコンメーカーでは唯一、開発への協力を表明している。東芝の深串方彦執行役上席常務は「マイクロソフトの独占状態は決して良いことではない」と語る。「消費者のニーズがあれば(ウィンドウズもクロームも)どちらもやっていく」
 東芝は新興国などで販売攻勢をかけ、米HPやエイサーなどと同じ土俵で戦う正面突破型の作戦を練る。グーグルOSを採用するパソコンは10年にも発売され、成長市場を開拓する先兵となる可能性がある。かつて東芝はハードディスクなど部品や周辺機器の小型化で先駆け、ノートパソコンの業界標準をつくった。新市場を創出する力が再び問われている。

:2009:10/29/09:27  ++  ウィンドウズ7変わる競争軸(下)情報端末、進む融合―ソフト収益化が課題。

「パソコンという呼び名は無くなるかもしれない」。日本ヒューレット・パッカードの小出伸一社長は、米マイクロソフトのパソコン用基本ソフト(OS)の最新版「ウィンドウズ7」を搭載したパソコンの発表会でこう語った。
「クラウド」転機
 インターネット経由で様々なソフトや情報サービスを提供する「クラウドコンピューティング」が普及すれば、携帯電話やパソコンという商品カテゴリーはあまり意味をなさなくなる。クラウドを想定した「7」の登場は「変化の扉を一気に開く」(小出社長)との見方だ。予兆はある。
 「成長市場でノキアの新たなテリトリーを築きたい」。9月上旬、携帯電話世界最大手のノキアがドイツで開いた経営戦略発表会。カラスブオ最高経営責任者(CEO)はパソコン市場参入への意気込みをこう語った。ウィンドウズ7を搭載した小型パソコン「ブックレット3G」は年内の発売予定。スケジュールや住所録などをネット経由で携帯電話と連動させることができる。
 ノキアは2009年7~9月期に四半期ベースとして初の最終赤字に転落した。主因は通信インフラ部門の低迷だが、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」などに押され、高機能携帯電話(スマートフォン)のシェア低下が響いた。携帯電話との連携を強めたパソコンの発売で、反攻に出る。
 日本勢の中でパソコンと携帯電話の「融合領域」に活路を見いだそうとしているのがNECだ。システム手帳ほどの7型液晶画面があり、会社の業務をこなせるパソコン並みの機能と、起動時間の速さなど携帯電話並みの使い勝手を兼ね備えた端末――同社が2010年秋にも発売する新製品のイメージだ。
海外勢、開発主導
 しかし携帯とパソコンの融合を先取りした新端末で利益を生み出せるかといえば、課題は多い。
 シャープが9月に発売した携帯情報端末「ネットウォーカー」(店頭価格4万5000円前後)は、パソコン並みの機能で重さはネットブックのほぼ半分。実はMPU(超小型演算処理装置)やOSなどの構成は、半導体メーカーの米フリースケール・セミコンダクタが自社製品の顧客向けに提案したものと同じだ。シャープは自社製の液晶パネルや日本語フォントなどで独自色を出すが、端末の心臓部を握られている点はパソコンと変わらない。
 端末の性能を左右するMPUは、フリースケールやクアルコムなど米国勢の独壇場。その中枢回路は英アーム製だ。インテルがアームに、ウィンドウズがリナックスに変わっただけとも言える。「ウィンテル」が支配してきたパソコンの事業モデルから脱却するには、端末の機能で新味を打ち出すだけでは不十分だ。
 アップルは7~9月期決算で、純利益が前年同期比47%増の16億6500万ドル(約1500億円)と過去最高を更新した。iPodやアイフォーンで音楽や映像を取り込み、手軽に編集するには「iチューンズ・ストア」や「アップストア」といった配信サービスが不可欠。そんな利用者に便利なパソコン「マッキントッシュ」がまた人気を呼ぶ好循環に入っている。
 端末を売り切って終わるのではなく、購入者にソフトやサービスを提供する仕組みが欠かせない。

:2009:10/29/09:23  ++  ニッポンの競争力(3)楽天社長三木谷浩史氏―IT推進で地方に活力。

 ――IT(情報技術)と国の競争力の関係は。
 「米国のオバマ政権をはじめ、どの国もITを国家戦略の中核に据えている。ITを競争力強化にどう活用するかという視点で鳩山政権を評価すると、自公政権と同様に合格点はつけられない」
 「投資家の育成を含め、ネット分野で起業を後押しする環境が欠かせない。公正な競争を促す通信政策とは何か、もっと議論すべきだ。米連邦通信委員会(FCC)は通信大手が回線を支配すべきでないとする『ネット中立性』を明確に打ち出している。ネットビジネスの推進に必要な政策を提言するため、関連する事業者を集めて11月に『eビジネス推進連合』を設立する計画だ」
倫理の欠如懸念
 ――新政権に求めることは。
 「最低賃金引き上げや製造業派遣の禁止を掲げているが、グローバル競争の中で産業が勝ち残らないと雇用も創出できない。高校教育や高速道路の無料化は時代錯誤ですらある。何でもタダとなれば、いたる所でモラルハザード(倫理の欠如)を起こしかねない。教育が大事というなら、どこからでも一流の教育を受けられるeラーニングを整備すればいい」
 「日本がもの作りだけでリードできる時代はもうすぐ終わる。米国の競争力の源泉は世界の頭脳を輸入している点にある。日本もいろんな人の知恵を集めて面白いサービスを作る枠組みを整えるべきだ。会計や商法などを国際基準に合わせる必要もある」
 ――楽天はサイトへの出店者を含め内需型だった。どう変える。
 「台湾に次いでタイへの進出を決めた。中国も重要なマーケットだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)はかつての日本のような活気があり、非常に大きなネット通販市場に成長すると予測している。アジア全域に進出し、各国をまたいでネット通販を展開したい。富裕層向けに日本の農産品も売れるだろう」
 「経営の在り方も変わる。インドや中国で技術系の新卒学生を採用しており、外国人採用を大量に増やす。技術センターなどを中国やインド、米国などに置いても構わないと考えている」
選別の目厳しく
 ――国際競争を勝ち抜くには何が必要か。
 「企業による二極化がさらに進んでいる。付加価値があまり無いのに、何となく高いお金を払っていた商品やサービスは苦戦している。これに対し付加価値が高かったり非常に低価格だったりするもの、ニッチな市場をとらえた商品は好調だ。ネット通販は便利で安い商品を世界から探し出せる。消費者の選別の目は一段と厳しくなる」
 ――苦境にある中小や地方企業も多い。
 「ネットビジネスは大きい会社だけが勝つ弱肉強食のイメージがあるが、そうではない。ネットの活用で地方の中小店舗の商品やホテルなどのサービスが全国に売れるようになった。楽天は地方の出店者を開拓するため、全国に支社を設立している。ITの発展が地方の活力を生む」
 ――冷え込む国内消費をどう喚起するか。
 「楽天は蓄積した会員情報に基づくマーケティングの手法を開発している。顧客1人ひとりに合ったサービスを展開することで新たな市場を作り出せる。自分にぴったりで、買う喜びや物語性を感じられるなら、100円の商品に喜んで110円や120円を払う顧客はいる。ITは消費市場を活気づける力も持つ」(聞き手は高橋香織)

:2009:10/29/09:04  ++  法人申告所得減少率最大に、08年度35%減、景気悪化影響黒字、初の30%割れ。

今年7月末までに申告した2008年度決算法人の所得金額が、前年度比20兆8370億円(35・4%)減の37兆9874億円と6年ぶりの低水準になったことが28日、国税庁のまとめで分かった。減少額・率とも集計可能な1967年度以降で最大。黒字申告した法人の割合も初めて30%を割り込んだ。景気後退で企業の業績が大きく悪化したのが響いた。
 国税庁によると、08年度決算(08年4月期~09年3月期決算)で09年7月末までに申告した法人は約280万5千法人。申告所得は2年連続の減少で、申告税額も前年度比4兆8244億円(33・2%)減の9兆7077億円にとどまった。
 黒字申告(繰越欠損控除後)は約81万6千法人で、全体に占める割合は前年度より3・3ポイント低下し29・1%となった。黒字申告1件当たりの平均所得は4652万8千円で同28・1%減った。
 給与所得や配当所得などに課税される源泉所得税は、今年6月までの1年間で前年度比9116億円(6・1%)減の14兆811億円と2年連続で減少。給与所得の税額が9兆4783億円と4・2%減り、配当所得の税額が2兆718億円と9・7%減った。
 09年度決算の申告について、野村証券金融経済研究所の木内登英経済調査部長は「景気は最悪期を脱し、企業の売り上げは回復していく。コスト削減効果も寄与し、09年度の法人申告所得はプラスに転じる」と予測する一方、「給与所得はさらに落ち込み、源泉所得税は減少が続く公算が大きい」と指摘している。

:2009:10/06/11:40  ++  「鳩山献金」追及自民が本腰、要所にベテラン、国会で反攻狙う。

予算委筆頭や「影の内閣」
 鳩山由紀夫首相の資金管理団体の政治資金収支報告書を巡る問題で東京地検が捜査を始めたことを受け、自民党は疑惑追及を強める構えだ。国会の要所にベテラン議員らを配置し、追及の体制を整える方向だが、どこまで反転攻勢につながるかは不透明だ。
 石破茂政調会長は5日、日本経済新聞社などのインタビューで「自分のカネだからいいじゃないかという考えがあるならば誤りだ。違法性はかなり重い」と首相の対応を厳しく批判した。大島理森幹事長も同日、記者団に「首相が自らの責任で国民に説明できないなら、われわれが国会の場でしっかり聞かなければならない」と強調した。
 自民党は疑惑追及の舞台となる衆院予算委員会の筆頭理事に町村信孝元官房長官を充てる方向で調整中だ。新設する「影の内閣」(仮称)のメンバーと国会の常任委員会の筆頭理事をベテラン議員に兼務させる構想も検討している。閣僚のほとんどが初入閣の鳩山内閣に対し「ベテラン勢を並べ、経験の違いを見せる」戦術だ。
 自民党が首相の疑惑追及に重心を置く背景には、かつての成功体験もある。同党が初めて下野した際、自民党は深谷隆司元通産相らが衆院予算委で細川護熙首相(当時)の東京佐川急便からの1億円借入問題を徹底追及。若手有望株だった谷垣禎一氏(現総裁)や町村氏も衆院の代表質問などに立ち、70%の高支持率で誕生した政権を約9カ月で退陣に追い込んだ。
 ただ鳩山首相の献金問題が発覚したのは今年6月。自民党は衆院選前にも疑惑追及を試みたが、不発に終わった。政府・与党は臨時国会の召集時期を10月下旬とする方針。自民党幹部は「25日投開票の参院補選前に野党に追及の場を与えず、逃げ切りを図るつもりだ」と焦りを募らせる。
 谷垣氏は「できるだけ早く国会を開くべきだ」と強調。自民党は6日、公明党と国会対策協議会の初会合を開き、臨時国会の早期召集を政府・与党に求めることで合意したい考えだ。自民党内には「高支持率の首相を追い込むには、新事実を発掘できるかどうかにかかっている」との声もある。
 これに対し、首相は5日、首相官邸で記者団に「捜査当局が調べていく段階で影響がある発言は避けなければならない」と述べるにとどめた。
 ▼鳩山由紀夫首相の個人献金虚偽記載 鳩山首相の政治資金管理団体「友愛政経懇話会」が、故人などからの実体のない献金を政治資金収支報告書に記載。鳩山氏本人と会計責任者の政策秘書、事務担当の元公設秘書の3人が政治資金規正法違反容疑で告発された。
 首相は6月の記者会見で、当時の公設第1秘書が独断で首相から預かった個人資金を同懇話会の資金に充てていたと謝罪。2005~08年の4年間で193件、金額では2100万円を超える虚偽記載があったと説明している。鳩山首相はこの秘書をすでに解任し、収支報告書を訂正した。

:2009:10/06/11:36  ++  雇用で緊急対策本部、雇調金、要件緩和を検討、本部長に菅氏。

鳩山由紀夫首相は5日、緊急雇用対策について「雇用環境が改善したとは思っていない。いずれかの時点で対策本部的なものを立ち上げる必要がある」と述べ、緊急雇用対策本部を設置する考えを表明した。首相官邸で記者団に語った。政府は同日、今年度内にも実施する短期的対策として職業訓練の充実や雇用調整助成金の要件緩和などの検討に着手した。中長期の政策では、介護労働者の月給の4万円引き上げも視野に入れる。
 失業率が5・5%と高止まりしていることから、雇用情勢の悪化に早急に対応する狙いだ。首相は対策本部長に菅直人副総理・国家戦略担当相を充てる意向も示した。
 これに先立ち、戦略相は長妻昭厚生労働相と協議し、緊急雇用対策を検討することで一致。戦略相は終了後、記者団に「年末から新年度の雇用情勢が非常に心配だ。何らかの雇用対策、雇用創造が必要ではないか」と強調。「厚労相を中心に、色々な関係者の意見を聞いてつくる」と語った。
 短期的な雇用対策では失業者が増えて職業訓練コースが足りない状況に対応するため、介護や医療事務などの訓練を増やす。雇用調整助成金の要件緩和では、直近3カ月間の売上額などが一定以上に減少することを支給要件にしているが、現行より小幅の減少でも適用する案が浮上している。
 一方、介護労働者の月給の4万円の増額は中長期の政策に位置付ける方向。介護現場へ失業者を誘導する狙いだが、財源の手当てが課題になる。

:2009:10/02/10:43  ++  10年ぶりの軍事パレード “異質な中国”を国際社会に発信

【北京=矢板明夫】中国で10年ぶりに実施された軍事パレードは、国際社会に“異質な中国”のイメージを植え付ける結果にもなった。今や国内総生産(GDP)規模で米国に次ぐ2位の座をうかがおうとする中国は、10年前とは国際社会に占める地位が明らかに異なっている。「中国脅威論」の払拭(ふっしょく)に努める一方で、安定のために軍の協力・支援に頼らざるを得ない胡錦濤国家主席のジレンマがそこにはある。

 昨年、中国のGDPは1999年の3・4倍に増大した。GDPで米国、日本に次ぐ世界3位に浮上する中、建国60年を祝う一連の式典が、国力にふさわしい大規模なものとなることは予想されていた。

 軍事科学院の羅援少将も、軍事パレードの目的を「敵対勢力に対する威嚇。世界中に中国の実力を見せつけることは非常に重要なことだ」と語っていた。

 実際、10年前のパレードで披露された弾道ミサイルの数は36基だったが、今回は108基と3倍となり、軍が近代化、ハイテク化されたことを印象づけた。

 しかし、国際社会と協調し経済発展に専念したい胡指導部は「平和発展」の方針を掲げ、「中国脅威論」の一掃に懸命だ。

 胡主席はこの日の式典でも、中国が外交や経済、貿易、環境問題などさまざまな分野において、「責任ある大国」としての役割を果たしていく決意を表明している。

 一方で、中国の軍事予算は21年続けて2けた超の伸び率を示す。今回、最新兵器を披露することで“透明性”をアピールする狙いもあったといわれているが、逆に周辺国に対し中国の脅威を強く印象づけたことは否めず、中国のイメージ低下は避けられない。

 中国では軍の発言力が強いうえ、最近、暴動や少数民族の独立運動が相次ぎ、その鎮圧に軍の力を頼らざるをえない。軍歴を全く持たずに最高指導者となった胡主席が今回、軍への配慮を優先しなければならなかった背景にはこうした事情があったとみられる。

 ただし、この日、国産車「紅旗」から閲兵した胡主席は、軍関連の行事に出席する際にいつも着ている、軍人をイメージする緑の人民服ではなく、灰色の中山服を着ていた。

 「文民による軍の指導」を国際社会にアピールし、周辺国の不安を少しでも和らげようとする思惑があったとみる向きもある。

:2009:10/02/09:06  ++  セブン&アイ、再構築急ぐ、3~8月、純利益35%減、スーパー・百貨店不振。

セブン&アイ・ホールディングスの業績が悪化している。1日発表した2009年3~8月期連結決算は純利益が前年同期に比べ35%減り、436億円にとどまった。傘下のイトーヨーカ堂や百貨店の販売低迷が鮮明で、収益をけん引してきたコンビニエンスストア事業にも陰りが出てきた。ヨーカ堂の店舗閉鎖など事業の再構築が避けられない状況。総合的な小売りグループを目指した持ち株会社設立から丸4年。小売業のトップ企業が転機を迎えた。
 売上高は11%減の2兆5464億円、営業利益は20%減の1181億円だった。収益減少の最大の要因はヨーカ堂を含むスーパー事業と、そごう・西武の百貨店事業の苦戦。2事業の営業利益は合計で197億円減少し、連結ベースの営業減益額の66%を占めた。
 中でも苦戦したのは創業事業であるスーパーのヨーカ堂。単独ベースの営業損益は43億円の赤字(前年同期は80億円の黒字)と、初の営業赤字に転落。衣料品や日用品が不振で、在庫処分の値下げにより採算が悪化した。ヨーカ堂はピーク時の1993年2月期は839億円の営業利益を計上するグループの稼ぎ頭だったが、グループ内での地盤沈下は著しい。
 セブン&アイの村田紀敏社長は会見でヨーカ堂がグループの社是である「『変化への対応』ができていない」と認め、特に「価格下落に対応する仕入れなどのコスト低減が遅れた」と話した。
 持ち株会社セブン&アイが発足したのは4年前。子会社のセブン―イレブン・ジャパンからの配当利益に頼るヨーカ堂に自立を促す狙いだった。06年に巨額投資でそごう・西武を買収したが、統合効果の発揮に手間取る間に、ヨーカ堂の経営環境は一段と悪化した。
 環境の激変に追いつけないのは、そごう・西武も同様。百貨店事業の営業利益は85%減。地方店を中心に売上高が落ち込んだ。
 グループの新たな懸念材料は、収益をけん引してきたコンビニ事業にも陰りが出てきたことだ。同部門の営業利益は10%減の989億円。セブン―イレブン・ジャパンは加盟店の支援費用が膨らんだ。加盟店が負担していた弁当などの廃棄損失を一部肩代わりしたことにより、15億円の減益要因も発生した。
 10年2月期通期では連結営業利益が前期比11%減の2500億円となる見通し。ヨーカ堂は経費削減額を期初計画の80億円から約200億円に拡大する。ただ個人消費の先行きは不透明感が強い。消費者の低価格志向は強まる一方で、業績の先行きは厳しそうだ。

:2009:10/02/08:53  ++  景気持続への関門鳩山政権の試練(4)リストラ続く家計―消費刺激の難題消えず。

「この夏までは2リットル入りのミネラルウオーターを月30本買っていた。最近は月10本に減らしている」。東京都目黒区に住む主婦の山下恵美さん(仮名、33)は、休日に飲む水だけを購入するようになった。平日は詰め替え用のボトルをスーパーに持参し、無料の水を入れて帰るという。
「在庫」圧縮進む
 いまの家計部門には強い逆風が吹きつける。最大の問題は雇用・所得環境の悪化だ。7月の失業率は過去最悪の5・7%。8月の現金給与総額は15カ月連続で前年同月より減った。
 輸出や生産の改善でパートなどの採用が増える兆しもみられるが、復元力は弱い。駒沢大の飯田泰之准教授は「失業率が年末に向けて6%を超える可能性もある」と指摘する。
 消費者は雇用や所得の回復に見切りをつけ、企業と同じようなリストラに走る。まず家庭内の「在庫圧縮」。食品包装用のラップを販売する旭化成ホームプロダクツは「買い置きが一時は6本から2本に減った」と話す。シャンプー・リンスの販売額に占める詰め替え商品の割合は6~8月に63%となり、前年同期に比べ6ポイント上昇した。
 次は「コスト削減」。ダイエーは8月、3度にわたって野菜の特売セールを実施した。ジャガイモやタマネギを10~20円値下げしたところ、売上高が普段の7倍に膨れ上がった。必要な品物を少しでも安く買いたいという消費者の姿が浮かび上がる。
 在庫やコストを減らすだけですまなければ、今度は「再編」に乗り出す。「親と子どもの世帯が一緒に暮らすと、家族1人あたりの生活費を月2万4095円も節約できます」。積水化学工業は「同居力の家」と銘打った2世帯住宅を売り出した。親子が経済的に支え合うケースが増えているからだという。
 財政出動の追い風がないわけではない。9月の大型連休「シルバーウイーク」。ヤマダ電機ではエコポイント制度の恩恵もあって、薄型テレビの販売台数が昨年の同じ時期より6割増えた。だが7~9月期でその効果もほぼ一巡したとの見方が出ている。
 新政権はどう動くのか。鳩山由紀夫首相は家計の懐に響く施策を実行したいという。子ども手当の支給、高速道路の無料化、高校教育の無償化などを具体化する作業が始まる。
 「個人消費の押し上げ効果は大きい。子どもの数が増えることも考えられる」。ピジョンの大越昭夫社長は子ども手当の創設を評価する。景気後退と少子高齢化のダブルパンチを受ける育児用品業界では、市場活性化への期待感が強い。
 三菱地所子会社のチェルシージャパン(東京・千代田)は、アウトレットモールを全国8カ所で運営する。高速道路料金の引き下げも手伝って、シルバーウイークの売上高は当初計画を1割上回った。吉村俊秀社長は「無料化が広がれば追い風になる」と語る。
負担増の懸念も
 新政権の家計支援が消費者の苦痛をある程度和らげるのは確かだ。大和総研によると、民主党の経済公約は2009年度の実質経済成長率を0・2ポイント押し下げるが、10年度には0・2ポイント押し上げる要因となる。家計支援などのプラス効果が公共事業削減のマイナス効果を上回る計算だ。
 しかしみずほ総合研究所の中島厚志氏は「家計の所得を自律的に増やさないと、安定的な経済成長につながらない」と懸念する。財源対策のために所得税の配偶者・扶養控除を同時に廃止すれば、子どものいない専業主婦世帯などの負担が増える可能性もある。
 「雇用環境は相当悪化するだろう。経済は一時的に回復しているが、楽観していない」。鳩山首相は25日の20カ国・地域(G20)首脳会議でこう語った。
 金融危機が最悪期を抜けても、家計部門の視界は晴れない。個人消費の刺激という新政権の公約は試練のときを迎える。

:2009:10/01/17:26  ++  防予汽船が再生法申請 瀬戸内のフェリー、高速割引影響

山口県柳井市と松山市を結ぶカーフェリーを運航する防予汽船(本社・柳井市)が1日、山口地裁に民事再生法の適用を申請した。原油高騰やETC利用の高速道路料金値下げにより利用客が激減するなど収益が落ち込み、財政立て直しが困難と判断した。東京商工リサーチ広島支社によると、負債総額は69億円(昨年12月末時点)。運航は継続するという。

 防予汽船は59年の設立で、山口県内の他のフェリー会社と共同で毎日15便前後を24時間態勢で運航している。

 同社によると、3月からの高速道路のETC割引で利用客が大幅に減り、5月の利用台数は昨年同月比35%減となった。6月から片道運賃を値下げするなど対抗策を打ち出してきたが、利用台数の回復にはつながらなかったという。

 7月には旅行業事業からも撤退。9月9日には山口県の二井関成知事に、航路の維持に必要な対策を国に求めるよう要請していた。

:2009:09/17/11:22  ++  経営者に聞く(1)日本電産社長永守重信氏――企業の国際競争力(鳩山政権始動)

政権交代への期待と不安は産業界にも広がる。16日発足した鳩山内閣に何を望むのか。経営者に聞く。
 ――日本企業の国際競争力を高めるにはどんな政策が必要か。
 「我々経営者は政府に対して、企業を守ってほしいなどとはもちろん思っていない。望むのは、海外の企業と競争するうえで、同じ土俵に立たせてもらいたいということだけだ。国際競争力を削(そ)ぐ施策は見直すべきだ。今のままでは日本企業は土俵に上がる前に負けてしまう」
 ――何が問題なのか。
 「為替や労働政策、税制だ。1990年代、為替は急速に円高となり、輸出企業の価格競争力は低下した。世界市場での競争実態におかまいなく厳しい労働規制が敷かれ、各国が法人税を引き下げる中で日本は約40%の高い水準を維持した。海外に展開して利益を上げれば移転価格税制で二重課税の状態のまま放置される。日本から出て行けと言われたも同然だ」
 「実際、多くの企業が海外に工場を移し、空洞化が叫ばれた。会社をつぶすわけにはいかないから、当社も主力の精密小型モーターの工場をすべて海外に移さざるを得なかった。従業員は他の部門に移ってもらい、雇用は維持したが、本来ならば日本でつくり、日本でもっと雇用を増やしたい。経営者はみなそう思っているはずだ。今のままでは日本は再び空洞化に向かうと懸念している」
 ――民主党は内需拡大による景気対策を掲げる。
 「天然資源に乏しい日本で内需を拡大するとはどういう意味なのか。金融立国を目指すとでもいうのか。日本が内需を拡大するには雇用を増やし、賃金を上げ、税収を増やすしか道はない。そのために企業の競争力を高めることが欠かせないのだ」
 「インターネット関連など新たなビジネスもあるが、雇用のすそ野が広いのはものづくりだ。製造業で働く人が増えれば金融やサービス業なども活性化する。メーカーが海外に出て行かざるを得ない政策をとって雇用が減っては景気対策も意味を持たない」
 ――企業が政策を当てにせず、自力で取り組むべき課題は。
 「今回の不況で学んだのは、もっと収益力を高めなければならないということだ。以前は売上高営業利益率が10%あれば多少の風雨には耐えられると思っていたが、それでは不十分だ。生産性をさらに高め、利益を増やし、成長分野に投資していかなければ勝ち残れない」
 「昨年末、このままでは今年1~3月期に300億円の赤字になると分かり、夜中に何度も目が覚めるほど苦しんだ。そこで売上高が過去のピーク時の水準に戻った場合、利益率が2倍になる生産性改善活動『ダブル・プロフィット・レシオ(WPR)』を始めた。足元の売上高の回復度合いは最盛期の70~75%だが、利益率はかつてのピークの11%台に戻った。リーマンショックがなければこれほどの経営革新はできなかった。感謝したいぐらいだ。今回の不況を機に体質を強化できるか、不況のせいにして弱体化するか、企業は二分されるだろう」(聞き手は遠藤淳)

:2009:09/17/11:11  ++  NECエレ・ルネサスが統合契約、半導体世界3位に、NEC、筆頭株主に。

半導体国内2位のルネサステクノロジと同3位のNECエレクトロニクスは16日、来年4月に経営統合することで正式契約した。東証一部上場のNECエレを存続会社とする合併で、統合比率はNECエレ1に対しルネサス1・189。NEC、日立製作所、三菱電機の主要株主3社は新会社から総額2000億円の増資を引き受け、リストラを後押しする。
 新会社の売上高は1兆2000億円(2008年度実績を合算)を超え、東芝の半導体部門を抜いて国内最大、世界3位の半導体メーカーに浮上する。統合新会社はシステムLSI(大規模集積回路)を中核とし、デジタル家電や自動車の制御に使うマイコンでは3割を超える世界シェアを持つ。2位の米フリースケール・セミコンダクタ(11%)以下を引き離し、コスト競争で優位に立つ。
 新社名は「ルネサスエレクトロニクス」で、社長にはルネサスの赤尾泰社長(55)が就任する。NECエレの山口純史社長(58)は会長となる。33・42%を出資するNECが筆頭になり、日立製作所が30・73%、三菱電機が25・14%で続く。
 主要株主3社が実施する資本支援は日立が825億円、三菱電が675億円、NECが500億円。まずルネサスが来年3月末までに日立と三菱電に割当先として780億円の増資を実施。さらに新会社が発足する来年4月、主要株主3社が第三者割当増資を引き受け、1220億円を調達する。新会社は総額2000億円を調達し、財務を改善する。
 NECエレクトロニクスとルネサステクノロジの統合で日立製作所、三菱電機、NECの主要株主が合意したのは4月下旬。それから5カ月、正式契約に向けた交渉は難航。「一度は話がつぶれた」(関係者)局面もあった。焦点は新会社に対する資金支援の分担比率だった。
 NECは当初、ルネサスが抱える巨額の負債について「ルネサスの大株主である日立と三菱電機が処理すべきだ」と考え、両社に2000億円程度の資本注入を求めた。
 東芝や富士通からも事業統合の秋波を送られていたNECエレには、「多くの婿のなか、ルネサスを選んだ」(NEC幹部)という意識があり、強気の姿勢につながった。
 しかし日立と三菱電機は「NECも一定額を負担するのは当然」と主張。交渉は平行線をたどり、8月中旬には事実上の破談を意味する「統合に向けた交渉を終了する」という旨の発表文も用意された。
 破談を救ったのはNECの譲歩だった。自らも増資のタイミングを探るNECに対し「NECエレ・ルネサスの統合をまとめないとNEC本体の増資が難しくなる、と主要取引行が圧力をかけた」(金融関係者)。追い込まれたNECは8月下旬、500億円の出資をのんだ。
 新会社は最初から難しいかじ取りを迫られる。2008年3月末に計25あった回路製造ラインを統合までに計16に削減する計画だが、さらなる構造改革は避けられず「一般的に見て3割ほど多い」(関係者)とされる5万人弱の従業員を絞り込む必要も出てきそうだ。
 03年に日立と三菱電のLSI部門が統合して設立したルネサスは、お互いの出身母体への遠慮から旧型ラインの整理が遅れ、09年3月期に2032億円の巨額最終赤字を計上している。複雑な資本構成を乗り越えて商品集約やリストラで迅速な対応が取れるかどうか。経営のスピード感が問われることになる。

:2009:09/17/11:01  ++  鳩山内閣発足、経済政策見直し短期決戦、来年度予算編成迫る、月内に基本方針。

 鳩山由紀夫内閣が16日発足したことを受けて、政権交代に伴う経済政策の見直しが本格的に始まる。衆院選のマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ「子ども手当」創設などを約束通り実行するための来年度予算編成はわずか3カ月あまりの短期決戦を迫られる。地球温暖化対策を巡って早くも経済界などから反発の声が上がるほか、年金問題への対応や日本航空の経営再建など、新政権の経済運営には課題が山積している。(1面参照)
 財務省は鳩山政権発足を受けて、2010年度予算編成の作業を本格化させる。藤井裕久財務相は16日、麻生政権が7月に決定した来年度予算の大枠を定める概算要求基準(シーリング)を撤廃する意向を表明。新政権が月内に策定する来年度予算編成の基本方針に沿って、具体的な作業を進める姿勢を示した。
 基本方針は平野博文官房長官が月内にまとめる方向。藤井財務相は就任後の記者会見で、民主党が衆院選のマニフェストで掲げた政策のうち「10年度から実行するものを着実に予算に反映させていく」と語った。子ども手当創設のほか、ガソリンにかかる揮発油税など暫定税率の廃止、高校授業料の実質無料化などの新規政策が盛り込まれる見通しだ。
 民主党はマニフェスト実現のため、10年度は7兆1千億円の新規財源が必要とみる。最初の課題となるのが09年度補正予算の一部凍結。公益法人などに基金を創設する事業を凍結し、国庫に資金を回収することや、官庁施設の改築・改装の中止などに踏み切る方針を掲げる。藤井財務相はかねて3兆~4兆円程度の財源確保が可能との見方を示しているが、想定通り捻出(ねんしゅつ)できるかが焦点だ。
 週内にも政府として補正予算の一部執行凍結を決定し、各省庁が具体的な凍結事業などをそれぞれ判断する。地方自治体向けの基金や補助金などは地方への影響に配慮し、原則として執行中止はしない方向だ。
 記者会見では財政再建を巡って、基礎的財政収支の黒字化と債務残高の対国内総生産(GDP)比の抑制の両方を目標に据える必要性を強調。具体的な検討は「国家戦略局の大事な仕事だ」と語った。
【図・写真】政策実現へ財源の捻出も焦点(17日未明、記者会見する藤井財務相)
 菅直人副総理・国家戦略担当相は16日の記者会見で、官房長官と財務相、行政刷新担当相、戦略相の4人で予算に関する閣僚委員会を近く開く考えを示した。来年度予算案の編成や今年度補正予算の一部凍結などについて協議する。
 藤井裕久財務相は17日未明に記者会見し、元財務官の行天豊雄・国際通貨研究所理事長を財務省の特別顧問に起用する方針を明らかにした。藤井財務相は行天氏について「間違いなく、日本で最も国際金融で信頼のある人だ」と評価。通貨政策をつかさどる財務省のアドバイザーとして期待する考えを示した。
 行天氏は1985年のプラザ合意時に、旧大蔵省の国際金融局長を、プラザ合意後に急激に円高が進んだ86~89年には財務官を務めた。日本の代表的な「通貨マフィア」とされ、昨年11月の金融サミットでは、日本政府の特使を務めた。
 前原誠司国土交通相がまず直面するのが日本航空の経営再建だ。国交省丸抱えのもと9月末をめざして再建計画策定を進めるが、取引金融機関からは「現状の計画では融資判断に堪えられない」との声が出る。
 再建計画の柱である企業年金減額や人員削減には、民主党の支持基盤である労働組合から強い反対が出る可能性もあり、不透明感が強まっている。国交省は法的整理などの“劇薬”には慎重で、あくまで軟着陸をめざすが、前原国交相は17日未明の記者会見で、日航再建の有識者委員会を白紙に戻す考えを示した。これまでの国交省の経営再建の方針が修正を迫られる可能性がある。
 民主党のマニフェストの目玉である高速道路の無料化にもハードルは多い。
 高速道路6社の料金収入は年間2兆3000億円(2008年度)。民主党は首都高速と阪神高速は無料化の対象外とする方針だが、料金収入の大半がなくなるのは確実。これまでは過去の高速道路の建設債務(3月末で30兆円)を料金収入で返してきたが、返済財源を今後どのように確保していくかが課題となる。
 無料化でマイカー利用が増えれば、二酸化炭素(CO2)の排出量が増える恐れもある。フェリーや鉄道など他の公共交通機関への打撃も避けられそうにない。前原国交相は会見で慎重に進めていく考えを示した。
 長妻昭厚生労働相がすぐに取り組む必要があるのが雇用対策だ。失業率が過去最悪の5・7%に上る厳しい情勢を受け、民主党などは連立政権樹立に伴う政策合意に緊急雇用対策の検討を盛り込んだ。
 国が企業の休業手当の一部を補てんする雇用調整助成金の対象者数は7月に200万人を超え、昨年12月と比べ18倍に膨らんだ。企業からは「現行の300日の助成期間では足りない」との指摘も出ており、対象期間の延長を含め同制度の拡充なども課題になる。
 職業訓練を受ける長期失業者に生活費を支給する制度の再構築も急ぐ必要がある。現在は厚労省所管の中央職業能力開発協会が「緊急人材育成・就職支援基金」事業として実施しているが、民主党は厚労省OBが協会の役員に天下りしていることを問題視している。基金を廃止するなら代わりの枠組みを整えるなど、早急に手を打つことが求められそうだ。
 派遣規制など労働法制の見直しも課題。製造業への派遣を原則禁止することを柱とした労働者派遣法改正案について、民主党と連立政権を組む社民党は、早ければ秋の臨時国会で成立させたい意向を持つ。ただ野党時代の議員立法ではなく、内閣提出法案(閣法)とするには越えなければならないハードルもある。
 民主、社民、国民新の3党は今年6月、製造業派遣や仕事があるときだけ働ける登録型派遣を原則として禁止する労働者派遣法改正案を通常国会に提出。審議未了で廃案となった。新内閣が内閣提出法案を目指すなら、これまで法案づくりに関与してきた労使の審議会の意向との整合性を問われかねない。審議会で再検討するなら、法案提出は通常国会以降に先送りされる可能性が大きい。
 派遣規制では使用者側の反発が必至で「労使の調整が難航するのは間違いない」(厚労省)。ただ民主党内には「前例にとらわれず実施する必要がある」との意見も根強いとされる。
 亀井静香金融担当相は17日未明、金融庁での記者会見で日本航空の経営再建問題について「日本の銀行や企業できちっと支援したり、出資したりするところが出てくるのが一番良い」と述べた。
 直嶋正行経済産業相は17日未明の記者会見で、新政権が掲げる温暖化ガス排出を2020年に1990年比25%削減する目標について、海外からの排出枠購入や森林吸収分なども含めて達成を目指す考えを示した。経産相は「(25%削減は)米中印など主要排出国が国際的な枠組みに参加することが前提」と述べた。
 地球温暖化対策での課題は国内外で山積している。小沢鋭仁環境相、直嶋経産相、岡田克也外相の関係3閣僚で取り組むことになる。国内では25%削減の目標を達成するための道筋を示す必要がある。国際的には13年以降の国際枠組み(ポスト京都議定書)の交渉期限が年末に迫り、実効性のある計画づくりを主導できるかが最大の焦点だ。
 農林水産分野での課題は、衆院選で民主党が目玉政策のひとつとして掲げた農家の戸別所得補償制度の創設をどのように実現していくかだ。主要な農畜産物について販売価格と生産費の差額をもとに農家に一定の所得を補てんする仕組みだが、詳細な制度設計は明らかになっていない。導入するには確認作業などの事務手続きが増えたり、新たな統計が必要だったりするとの指摘もある。
 補償制度の導入は、コメの生産調整(減反)制度の見直しにつながる可能性もある。赤松広隆農相は16日の初閣議後の官邸での記者会見で、減反について「もちろん見直していく。減反をやっていって日本の農業がうまくいくかと言えば誰もがノーと言う」と述べた。ただ減反を見直すには農政の全体像を描く必要もあり議論がスムーズに進むか不透明な部分もある。
 新政権では菅直人副総理が国家戦略担当相と経済財政担当相を兼務し、マクロ経済運営の「司令塔」として手腕を振るうことになる。完全失業率が過去最悪を更新するなど日本経済は厳しい局面が続く。経済官庁には「経済成長と財政再建をどう両立するかなど難題は山積している」としており、政治主導を掲げる菅氏への期待と不安も交錯している。
 「景気には失速懸念がある。経済運営はひとときも気が抜けない」。内閣府の幹部は危機感を隠さない。4~6月期の実質経済成長率はプラスに転じたが、麻生政権下での経済対策が押し上げた部分がかなり大きい。民主党が今年度補正予算の執行の一部停止に踏み切れば、「景気腰折れの懸念が強まる」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏)との見方も残る。
 経済再建は新政権の最優先課題だが、政治主導を旗印とする民主党は16日中の官庁幹部との接触を制限。内閣府幹部は「厳しい経済情勢をお伝えする時間をもらえない」と気をもむ。菅氏は経済官庁から政治主導の代表的存在とみられているが、初閣議後の記者会見でも足元の経済情勢について目立った言及はなく、「マクロ経済にどこまで関心があるか分からない」との戸惑いも出ている。
 経財相の業務は景気判断を総括する「月例経済報告」や日銀の金融政策決定会合への出席など多岐にわたる。日銀は16日から2日間、決定会合を開いている最中。内閣府は両日とも幹部を代理出席させるが、「新政権が政治主導を唱えるなかで、事務方を出してよいのか」と悩む声も聞かれた。