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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2008:12/04/10:03  ++  ビッグ3再建いばらの道、3.2兆円、米政府に支援要請―市場回復が前提。

 【ニューヨーク=武類雅典、小高航】米政府に金融支援を要請中のビッグスリー(米自動車大手三社)が二日、米議会に再建計画を提出した。計画で示した支援必要額は三社合計で最大三百四十億ドル(約三兆二千億円)に達するが、再建への道はなお険しく、公的融資の返済がなるかどうかは米市場の今後の回復に頼る部分も多い。再生への道筋が見えないまま政府支援に踏み切れば、過剰生産能力が温存され国際競争をゆがめる恐れも否定できない。
 「(政府以外の)資金調達先が思い当たらない」。再建計画についてメディア各社と電話での質疑に応じたゼネラル・モーターズ(GM)のリチャード・ワゴナー会長は危機の深刻さを訴えた。計画では百二十億ドルの「つなぎ融資」に加え、需要が一段と落ちた場合に備えて六十億ドルの融資枠設定を政府に求めた。
 米議会が注視するのは再建が可能かどうか。赤字の垂れ流しが続くなら政府支援も砂漠に水をまくだけになる。
 GMは再建計画で九万六千五百人の米国従業員を二〇一二年までに六万五千―七万五千人に削減。一〇年から三社の医療保険債務を引き継ぎ、車一台当たり千ドル程度のコストを削減することに合意している全米自動車労組(UAW)とも追加策を協議するとした。
 一連の施策により今後四年で北米でのコストを〇八年比で七十億ドル強(約二三%)削減。一二年までに政府融資を完済するとの見通しを示した。
 ただ、その前提は米自動車市場が〇九年に年千二百万台に縮小した後、一二年に千五百万台以上に回復するというシナリオだ。そもそも米市場が千六百万―千七百万台で推移したのは住宅バブルによる資産効果に助けられた部分も多く千五百万台まで回復するかどうかは不透明。GMも一二年の市場が千二百八十万台にとどまる悲観シナリオの場合は融資返済が進まないと認めている。
 それでもある程度踏み込んだ追加策を示したGMに対しフォード・モーターなどは新たな人員削減には触れずじまい。三社は〇六年に約三十万人いた米国従業員を現在までに約二十万人に削減。これ以上は難しいとの姿勢だが、市場回復が遅れれば過剰人員などを囲い続けることにもなる。
三社体制の見直しも避けられない。クライスラーは「戦略提携や統合を進めることに注力し続ける」と明記。提携・統合効果は年三十五億―九十億ドルに達すると試算した。同社の場合、さらに規模を削れば開発費などの確保が困難。再編が生き残りへのカギとなる。
 ただ一時は合併を交渉したGMも自らの再建で手いっぱい。提携候補とされる日産自動車のカルロス・ゴーン社長も最近は慎重な姿勢を示す。
 米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、米議会などにはGMとクライスラーに事前調整型の破産法を適用、約四百億ドルの公的資金を投じて早期再建を狙う案も浮上しているという。
三社の中でも資金不足が深刻なGMは金融機関、社債などを持つ債権者に事実上の“債権放棄”を求め、六百億ドル超の債務の約半分を削減する方針も盛り込んだ。ただ、金融機関などとの交渉は難航も予想される。
 GMは債務を同社株と交換する「債務の株式化」を想定しているとみられるものの、それでも同社は直近で約六百億ドルもの債務超過の状態。仮に債務を半減できても債務超過は解消できず、民間から資金を調達するのは困難な状況が続く。
 フォードも約二十億ドルの債務超過。一九八〇年代に政府支援を受けて再建したクライスラーは金融機関などから返済延期や利払い免除などの支援を引き出したが、金融危機のいまは当時より銀行などの台所事情も苦しい。GMなどの債務削減に応じれば、他の企業からも同じ要請が殺到しかねず簡単には応じにくいとみられる。
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:2008:12/04/09:10  ++  主観客観

遅れが目立つ政府の景気対策

 12月2日、日銀は企業融資への支援を目的に金融機関に対し資金供給を実施すると発表した。2009年4月までの実施期間中に約3兆円の供給が見込まれる。

 「貸し渋り」や「日本列島総不況」が流行語となるほどの問題となった98年末にも同様の政策が実施されており、この時には銀行の貸出残高の伸び率が約3ポイント改善した実績がある。低金利政策とあわせて中央銀行の金融政策としては、やるべき手を打っていると言える。

 問題は政府の景気対策である。いま重要なのは、麻生首相も唱えていたスピードであったはずだ。

 しかし、生活者支援として大々的に打ちだした追加経済対策を実施するための第2次補正予算は年明けに先送りされた。高速道路料金の引き下げや迷走する定額給付金は年度内の実現すら疑問視されており、景気対策としても選挙対策としても、当初見込まれた効果は大きく棄損してしまったのが現状だ。

 中小企業や小売店への現地視察、得意の漫画ネタなどでパフォーマンスの多い麻生首相であるが、国民の関心はすでに薄れ内閣支持率は急低下。ねじれ国会による政局の混迷や相次ぐ失言なども、これに拍車をかけている。

 一方、欧米の景気対策には危機意識の高さがうかがえる。特に、11月25日に発表されたイギリスの付加価値税(消費税)減税はインパクトが大きかった。時限措置としてこの12月から2009年末まで減税が実施され、低所得者層を考慮した消費環境の改善を図っている。

 その3日後の11月28日、麻生・小沢両氏の党首討論が行われたが、現状を打開するきっかけになったとは到底言えない。

 世界的な金融危機への懸念が高まるなか、金融政策だけでは最大の効果を上げることはできない。政府・与党は支持率低下で内部対立が表面化しているが、争っている場合ではない。生活者支援・中小企業支援の視点に立ち返って、短期的には減税・融資などの金融支援、中長期的には省エネ・代替エネルギーや年金・医療改革などの政策に一段と踏み込んでいかなければ、景気後退は加速し、その影響はさらに拡大・長期化する。これ以上の遅れは許されない。

(大和)


内需の動向を計る年末

 2008年も師走となり、各業界で繁忙期となっている企業は多いだろう。毎年、年末は各企業の取引量も増加する時期であり、決算を迎える企業にとっては追い込みもかねて、経済活動が活発になる。街を歩けば、クリスマス商戦や、商店街「年の瀬市」などの歳末商戦など小売業界も活気づくシーズンである。

 しかし、今年は、肝心な消費者の可処分所得の伸び悩みが広まっており、ボーナスにも期待が持てない。また、それを受けて、小売店における客の購入単価の低下は避けられそうになく、厳しい年末を迎えることになりそうである。企業・消費者はともに、来年に向けた期待よりも先に懸念を抱いてしまうのではないだろうか。TDBの「2009年の景気見通しに対する企業の意識調査」でも7割超の企業が2009年の景気を「悪化」局面と見込んでいる。

 11月28日に発表された完全失業率は6カ月ぶりに4%台を割ったものの非労働力人口(15歳以上の人口から、就業者や求職活動をしていた人を除いた人口)は9カ月連続で増加しており、求職活動をしても就職できないとあきらめる人も増えている。先行きに希望を持ちづらくなった社会に生活不安や不満を払拭するような、消費を明るくするニュースは今のところ見当たらない。政府の内需拡大に向けた定額給付金も国民に希望をもたらすどころか、むしろ3年後の消費税率アップへの懸念材料となっている。

 年末需要に高いウエイトを置く企業も多く、今後の動向次第では経営の命取りとなりかねない。この年末商戦の結果は、2009年1月末に発表される商業販売統計(経済産業省・速報)で浮き彫りとなるであろう。実際の消費がどれほど落ち込んでいるのか、消費者が何にお金を費やしているのかなど消費の動向を測るだけではなく、2009年度の内需をも計る指標として注目される。

(小夏)


地域経済の疲弊に拍車をかける自動車産業の不振

 日本自動車販売協会連合会が12月1日に発表した2008年11月の国内新車販売台数は前年比27.3%減、4カ月連続で前年実績を下回るとともに、11月としては39年ぶりの低水準となった。

 2008年11月のTDB景気動向調査でも、「自動車・同部品小売」(16.3)は前月比2.9ポイント減と大幅に悪化し、8カ月連続の前月割れとなった。前年同月(34.7)の半分にも満たない水準まで落ち込み51業種中で最低となるなど、景況感の悪化が深刻だ。8カ月悪化の間には、ガソリン価格の低下というプラス材料はあったものの、少子化や先行き不安から高まる生活防衛意識により、需要回復には結びついていない。

 自動車業界の減産が各社から発表されているなか、TDB景気座談会を全国7カ所で開催しているが、自動車産業の影響が大きい東海、中国、九州では、「自動車の減産の影響がどれだけ響くかと危惧している」「年明け以降、来期の設備投資計画を大幅に見直さざるを得ない」(自動車部品メーカー)などの厳しい状況を訴える声が多く聞かれた。

 減産の影響は、鉄鋼・非鉄・ガラスなど素材メーカーから部品製造の下請企業、販売店などの直接的な業種のみならず、工場の存在する地場経済の建設・不動産・小売など関連業種まで多岐にわたる。

 また、雇用の面では、2006年に発覚した偽装請負問題を機に、メーカーは規制が厳しい請負から派遣へシフトしたが、その契約期間3年の契約が一斉に訪れる2009年問題と減産が重なる。メーカーは、販売不振による減産という背景もあり、人員減を一気に着手し始める構えだ。

 減産は、製造・流通・消費の多くの面で地域経済にとって大きな打撃となる。雇用不安は先行きの生活不安を生み、自動車を含めた耐久消費財全体の消費低迷は避けられそうにない。特に自動車産業を擁する東海、中国、九州での地域経済の落ち込みが懸念される。

:2008:12/03/17:42  ++  日立、HDD代替品参入、「SSD」、インテルと開発。

日立製作所は二日、フラッシュメモリーを使う新型の記憶装置「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)」に本格参入すると発表した。米インテルと共同開発し、インテルが生産する企業向け製品を二〇一〇年から独占的に販売する。日立はハードディスク駆動装置(HDD)大手。将来のHDDの代替製品といわれるSSDを品ぞろえに加えることで、記憶装置事業全体の強化をはかる。
 日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST、カリフォルニア州)がサーバーやデータセンター向けの高速伝送型SSDの販売を担当する。
 HGSTとインテルが制御技術や基本ソフト(OS)との整合性などを共同で開発する。一般パソコン向けは従来通り、インテルが独自に販売する。SSDはHDDより処理速度が速く、消費電力が低い。現時点では容量や価格についてはHDDが優れており、データの検索用はSSD、蓄積用はHDDというすみ分けも始まっている。
 日立グループでは日立超LSIシステムズ(東京都国分寺市)も産業機器向けのSSDを手掛けている。

:2008:12/03/17:33  ++  経済同友会代表幹事桜井正光氏に聞く、賃上げ、非常に難しい。

雇用拡大、経済活性が必須
 麻生太郎首相はこのほど、経済界に賃金引き上げを要請した。国内需要を下支えするための異例の申し出だが、業績が低迷する企業に余力はあるのか。経済同友会の桜井正光代表幹事に聞いた。
中長期的視点で
 ――首相の賃上げ要求をどう受け止めたか。
 「企業は業績を上げ、売上高を伸ばし、経費を減らして利益を出し、それを投資や株主、社員に分配する。今は景気後退の波が日本に押し寄せ、設備投資にもお金がほとんど回らない。賃金だけ上げるのは非常に難しい。円高を享受する企業も一部にあるが、金融不安がなくなるのは早くても来秋になる。企業が必死になってやるのは賃上げよりも雇用維持だ」
 ――首相は新たな雇用対策作成も指示した。
 「雇用というのは短期の問題ではない。いかに雇用が拡大するかを考えるのが雇用対策で、すなわち有効な経済活性化策を打てるかがカギになる。定額給付金と同様に、足元にとらわれすぎるのはどうかと思う。雇用については政府と企業で役割が違う。政府は中小企業や低所得者層対策をやるとともに、今こそ中長期的な視点で社会保障制度や循環型社会を構築して将来の経済活性化につなげないといけない」
企業に圧迫感
 ――経済界は雇用確保を掲げているが、実際には非正規雇用の削減が猛スピードで進んでいる。
 「問題は大きく、企業も必要以上に削減してはならない。ただ工場が一部止まるなど、やむを得ないケースもある。企業は雇用多様化の一環で非正規を受け入れており、苦しいときは調整するが、景気が上り調子ならば採用を拡大している。学生の内定取り消しについては、よほど厳しい企業だけがやっているのだと思う」
 ――連合も物価上昇率に見合うベースアップを要求した。
 「企業間取引の物価は消費者物価の数倍に上昇しており、企業への圧迫感が強い。最終価格は上げられないが、中間財の仕入れ価格が上がって利益が減っている。連合の要求をすんなり受け入れるのは難しい。なお増益で余力ある大企業については、収益を賃金に回すのが社会的な責務になる」

:2008:12/03/17:11  ++  ビッグスリー救済問題から見えてくるもの( 08/12/1)

第44代合衆国大統領に当選したバラク・オバマ氏だが、来年1月20日の正式な就任を待たずして、早くも難題が持ち上がっている。米自動車業界大手3社のゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、クライスラー、いわゆるビッグスリーを救済するかどうか。労組は民主党の基盤のひとつであり、オバマ当選にも一役買っている。となれば無下にはできないところだし、仮にビッグスリーがツーやワンになった場合には、そのたびに300万人規模の雇用が失われる恐れがある。なにしろ自動車産業は裾野が広いのだ。

政府が貸し出す“サブプライムローン”

 大統領選挙後に再開された米議会では、さっそく自動車業界の救済問題が協議された。上院民主党が提示したのは、ビッグスリーへの250億ドルの融資。期間10年で当初5年は金利5%、それ以降は9%というから、ほとんど政府によるサブプライムローンみたいなもの。正直なところ、これでビッグスリーが復活するとは考えにくい。

 救済案に対して、共和党議員からはさっそく反対の声が飛び出した。それもアラバマ州選出のリチャード・シェルビー議員、ジェフ・セッションズ議員などが中心となっている。アラバマには、ホンダと現代自動車とダイムラーベンツの工場があり、「別に外国企業でも構わない」とのこと。この辺りに、日米通商摩擦がやかましかった1990年代との決定的な違いがあるようだ。

 任期が残り少なくなったブッシュ政権も自動車業界支援には消極的で、不良債権買い取りのために用意した7000億ドルの枠組みを使うべきではないとの見解である。金融機関を救済することはあっても、製造業を救済するつもりはない。それではわれもわれもと申請が相次いで、線引きができなくなる。自動車ローンを扱う金融部門を銀行持ち株会社にして、公的資金を入れるというのがギリギリの線だということになる。

 そもそも経営陣はベストを尽くしたといえるのか。公聴会の席上、ビッグスリーの最高経営責任者(CEO)たちに対して、「ワシントンに来るときに使った、プライベートジェット機をまず売り払え」という厳しい声も飛んだ。世論は明らかに彼らに対して逆風である。

 議会は審議を12月2日に先送りしたが、この間にもビッグスリーの株価は低迷している。新政権発足を前に、まだまだ予断を許さない状況が続きそうだ。

「企業は救わないが労働者は救う」という視点

 そもそもビッグスリーの経営状況が悪いのは、退職者に払われている膨大なレガシーコストが主な原因である。GMはかつて60年代の黄金時代に、退職者向けの医療給付制度を創設した。ところが、医療費負担はインフレの3倍の速度で増大し、退職者数は現従業員数の3倍に膨れ上がった。このハンディが、彼らの経営を苦しくしている。

 幸いなことに日本では、医療や年金を公的部門が支えているから、企業はそこまで社員の面倒を見なくていい。ゆえに日米の自動車会社が競争すると、日本が有利になる。実はクルマ作りの技術だけでは、あれだけの差はつかないのである。その証拠に、北米市場が急速に冷え込んだら、トヨタ自動車が利益の1兆円下方修正をやっている。

 レガシーコストを切り離すのに、一番手っ取り早いのは「チャプター11」(連邦破産法)の申請である。日本では考えにくいことだが、「倒産は経営者の権利である」というのがアメリカの常識だ。航空会社などは実際にこの手を使って、過去の退職者給付をぶった切っている。ビッグスリーがそれをやらないのは、「チャプター11と同時に、社債が全部デフォルトになってしまう」のと、「消費者は、一度つぶれたエアラインに乗ることはあっても、一度つぶれた会社のクルマは買ってくれない」という読みがあるからだ。

 そこでGMなどが考えたのは、UAWとの間でVEBA(Voluntary Employee Beneficiary Association)という一種の企業信託のような制度を作り、退職者への債務を移管してしまうことだ。時間をかけた交渉の結果、ようやく労使の合意が成立した。しかるにGMは、10月の米新車販売台数がなんと45%減。しかも自社株が下落したために、VEBAへの資金拠出が覚束なくなってしまった。ということで、VEBAの合意は宙に浮いている。

 ここオバマ次期政権にふさわしいのは、「企業は救わないが、労働者は救う」というアプローチではないかと筆者は考える。すなわちVEBAに政府資金を拠出して、ビッグスリーの退職者医療給付の重荷を取り除く。さらにUAWに対して、レガシーコストの軽減を説得する。それであれば、米国の自動車産業に復活の目が残る。単なる企業救済策では、それこそ「焼け石に水」となってしまう公算が大である。

ピンチの裏にチャンスあり

 もうひとつの可能性は、「グリーン・ニューディール」である。もともとオバマは選挙戦中に、「向こう10年で1500億ドルの投資」「米国産ハイブリッド車の生産」「500万人のグリーンカラー雇用を創出」といったエネルギー政策を提唱した。つまり環境と雇用を一致させ、そこから米自動車産業を立て直そうという提案だ。財政苦しき折から、どれだけのことができるかは未知数なるも、これは全世界にとって望ましいシナリオといえる。

 実は今年はGM発足の100周年であり、T型フォードが誕生してからも100年である。まことに不思議なことに、自動車という商品は1世紀にわたってその姿の根本を変えていない。つまりガソリンを燃やして、エンジンの上下運動を回転運動に変え、4つのタイヤを回して走らせるという構造は、T型フォードもレクサスもほとんど違いはない。自動車産業ほど技術革新のめまぐるしい業界はないし、ここ十数年でもカーナビあり、ETCあり、レクリエーションビークルありと、いろんな新製品や新機能が誕生した。けれども、商品の本質はそれほど進歩していないのである。

 おそらくこれから到来するであろう自動車産業の受難の時代において、自動車は1世紀ぶりに生まれ変わるのではないだろうか。動力をガソリンから電気にかえて、環境に優しく省エネにもなるという形で。

 かつて経済学者シュンペーターは、不況は次の好況の懐妊期間と喝破(かっぱ)した。不況期こそ「創造的破壊」が生じ、次なるイノベーションの種がまかれると。とすれば、この先数年でクルマに新しい可能性が誕生するかもしれない。言い古されたことではあるが、ピンチの裏にチャンスありである

:2008:12/02/08:58  ++  内定取り消し最悪ペース 331人「山一危機」上回る可能性

景気低迷で採用内定を取り消された来春卒業予定の学生は、全国で331人にのぼることが28日、厚生労働省の調査で分かった。企業の倒産、リストラで今年10月から来年3月末までに契約解除や契約満了時に契約更改をしない「雇い止め」などで失業したり、失業する見通しの非正規労働者が3万67人に達することも判明。米国発の金融不況に端を発した景気急減速が日本の雇用情勢にも大きく影響を及ぼし始めたことが浮き彫りとなった。

 厚労省は同日付で緊急雇用対策本部を本省と都道府県労働局に設置し、新卒の内定取り消しや非正規労働者の雇い止めの状況把握、内定を取り消された学生や離職を余儀なくされる非正規労働者に対する再就職支援体制を拡充する。

 具体的には、学生に対しては全国のハローワークに併設されている学生職業センターに採用内定取り消し通知を受けた大学生の就職相談にのる特別相談窓口を設置。希望者には求人情報の提供など就職支援を行う。内定取り消しを行おうとする事業主に対する指導も強化する。

 ハローワークから企業や経営者団体に「採用内定取り消しを防止するために最大限の経営努力をすること」「内定取り消しは解雇と同様に合理的理由がないと無効」などの指針を記したパンフレットを配布する。内定通知後に学生が承諾書を提出済みだと内定取り消しは解雇と同様とみなされる。

 派遣社員などの雇い止めに関しても同日付で、派遣会社に対して派遣労働者の雇用維持や雇用安定に努めるよう指導することを求める通達を都道府県労働局長あてに出した。

 厚労省の調査では、2009年3月卒業予定の大学生で内定を取り消された人数は25日現在で302人(75事業所)。高校生も29人(15事業所)が内定を取り消された。内定取り消しの理由は、倒産が64人、民事再生法適用が52人、経営悪化・事業縮小が212人など。昨年度実績はハローワークへの報告分だけで、今年は大学からの情報収集分や取り消し撤回を指導中の分も含まれている。

 このため、単純比較はできないが、「このままでは北海道拓殖銀行や山一証券が破綻(はたん)した97年度末の922人を超える可能性もある」(厚労省)と警戒感を強めている。

 一方、10月から来年3月までの期間で、契約の中途解除や契約満了時に更新しないなど「雇い止め」で仕事を失う非正規労働者数は25日までに把握できた分だけで3万622人(477件)に達している。雇用形態別の内訳は、派遣社員が1万9775人(292件)、期間工など契約社員が5787人(89件)、請負契約が3191人(36件)、その他が1314人(60件)だった。

:2008:12/01/10:41  ++  景気後退(4)財政出動、速さ・実効性カギ――持ち越しの日本、周回遅れ(終)

「一分も無駄にできない」。オバマ米次期大統領は十一月二十四日の記者会見で経済の緊急事態を強調し、次期財務長官にガイトナー・ニューヨーク連銀総裁を指名した。二十六日には経済再生諮問会議の新設と、ボルカー元米連邦準備理事会(FRB)議長のトップ就任も発表した。
 現大統領のブッシュ氏が就任前の二〇〇〇年に財務長官を選んだのは十二月下旬だった。矢継ぎ早の決定に、オバマ氏の強い危機感がにじむ。
「止血」では限界
 米当局が決めた融資や保証、資本注入など金融危機対策は総額で八兆ドル(約七百六十兆円)を超す。額は大きいが、どれも金融機関の破綻の連鎖や信用収縮を止める手段で、金融面の「止血策」の段階といえる。
 国際通貨基金(IMF)は過去三十年に十七の先進国で発生した百例を超す金融危機を分析。危機の後の景気後退では、「危機がなかった場合に比べ、累計の経済損失が二―三倍に膨らみ、期間も二―四倍に延びる」と結論づけた。とくに米国のように住宅価格が高騰し、家計が借金に頼りすぎた場合、反動で実体経済が急激に悪化する。
 米国の実質国内総生産(GDP)は十―十二月期も大幅なマイナス成長が見込まれる。危機の第二波で景気が底割れするのを防ぐには、財政出動で民需に直接てこ入れする景気対策が不可欠。オバマ次期大統領は一月の就任直後に大型の財政支出を伴う景気対策を打ち出す可能性が大きい。
 一九八〇年代以降、「小さな政府」を志向した米国の経済政策は主に金融政策を景気てこ入れ策の軸にした。減税は規制緩和と組み合わせて経済活性化を狙う供給側(サプライサイド)重視の政策が中心で、需要追加策には慎重だった。
 景気後退に直面するオバマ次期政権や民主党は中産階級への減税や失業対策、社会資本の整備を通じた本格的な需要追加策を検討。「ケインズ型」の財政政策が復活しつつある。
 民主党内では景気対策について「資本注入などに使う公的資金枠七千億ドル(約六十六兆円)と並ぶ規模にすべきだ」との声が強い。調査会社IHSグローバル・インサイトのゴールト氏は政権交代に伴う空白をつくらないため「来年初めにかけて合計二千億ドルの財政出動がある」と予想する。
 十一月下旬には欧州連合(EU)が総額二千億ユーロ(約二十五兆円)の経済対策を提案。輸出鈍化で沿海部の中小企業が破綻し、「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者の失業が深刻化する中国も総投資額四兆元(約五十七兆円)の景気刺激策を表明した。二十七兆円の対策を示した日本と米国を合わせると、今後、百五十兆円を超す対策がとられる公算が大きい。
180兆円の需要減
 IMFの見通しでは世界のGDP成長率は〇七年までの実質五%前後から、〇九年には二%台に下がる。約百八十兆円分の需要が落ちる計算だ。各国一斉の財政出動は景気悪化とのスピード競争になる。
 各国の対策には二つの問題点がある。第一は需要創出効果。「EUの提案は域内GDPの一・五%規模でマイナス成長見通しを好転させる効果はあまりない」(英調査会社キャピタル・エコノミクス)。日本も定額給付金など実質的な財政支出となる「真水」は全体の五分の一の約五兆円。中国の対策も四川大地震の復興など既存事業が含まれ、「真水」は半分程度との見方が少なくない。
 もう一つは対策実行の確実性とスピードだ。欧州では英国が付加価値税(消費税)引き下げを柱とする約二百億ポンド(約二・九兆円)の対策を表明。発表の一週間後の税率下げという実行の速さが注目を集めた。
 しかし日本はねじれ国会の与野党対立で政策の実行が持ち越されたままだ。二次補正予算案の臨時国会提出が見送られ、二兆円の定額給付金など追加経済対策のメドが立っていない。金融機能強化法改正案もなお審議中だ。年末に向け、世論は中小企業の資金繰り支援など景気対策の早期実施を求めているのに、このままでは周回遅れになりかねない。(景気動向研究班)
=おわり
【図・写真】中国・広東省から成都北駅に戻ってきた農民工

:2008:11/28/12:05  ++  【田母神前空幕長インタビュー】「自国を悪く言う外国人将校に会ったことはありません」

 先の大戦を日本の侵略とする見方に疑問を示す論文を公表し、更迭された航空自衛隊田母神俊雄・前幕僚長は27日までに産経新聞のインタビューに応じ、心境を語った。(野口裕之)

 --論文騒動から約1カ月経過したが

 「このような大騒ぎになって解任される事態になるとはまったく予想していませんでした。判断力がなかったといわれればそうかもしれません。しかし、弁明の機会も与えられぬまま『辞表を書け』と言われたときに考えたのです。文民統制だからクビを切られるのは構わないが、辞表を書くのは自分が間違ったことをしたと認めることになると。辞表を書かねば懲戒処分にかけたい、といわれたので『結構です。ぜひやってください』と言いました」

 --懸賞論文を書くきっかけと時期は

 「懸賞論文の存在は知っていましたが、書く気になったのは自衛隊の支援者に薦められたからです。職務に関するものではないので、通知義務はないと理解し、渡米した8月15日より前に書いて送りました。官房長との雑談で投稿を話したのは15日より前でしたが、通知しようとしたのではありません。論文で言いたかったのは、米露英仏などが侵略国家といわれないのに、なぜ日本だけがいわれるのか。よその国が侵略国家でないなら、日本も侵略国家でないということが言いたかったのです」

 

 --論文執筆で「村山談話」は念頭にあったか

 「村山談話に強い違和感を覚えていましたが、在任中は講演でも批判をしたことはありません。論文でも村山談話には触れていません。直接的な批判でなければ、談話と異なる見解を表明しても構わないと思っていました。もし村山談話に沿わない意見を言うことができないならば、言論弾圧の道具といえるのではないでしょうか。談話があるために、自由にものを言えない雰囲気があり、外交文書にも引用されている。日本は自ら手足を縛って、外交をする前に負けている。退官した今は、こんなものはぜひなくしてもらいたいと確信を持って言います。再検討の動きすら政治にないのはおかしなことです」

 --更迭への思いは

 「変なのは『日本は、侵略国家ではない。よその国に比べてよい国だった』と言ったら、『日本は政府見解で悪い国となっている』との理由でクビにされたことです。裏を返せば『日本はろくな国でなかった』と考えている人を、航空幕僚長にせよということではないか。外国の将校は、まず自国を弁護する。自分の国を悪く言う外国人将校に会ったことはありません」

 --航空自衛隊のトップは、どこまで発言が許されると思うか

 「空自トップですからある程度、『表現の自由』に制限があるのはやむを得ないでしょう。しかし、憲法では『思想・信条の自由』が保障されているわけで、政府見解から逸脱することを一切言ってはいけない、というのは民主主義社会ではないと思います」
 

 

 --11月11日の参議院外交防衛委員会参考人招致されたが

 「国会で私の意見を正々堂々と述べようと思っていました。しかし、民主党の北沢俊美委員長は私が話す前から発言を制限した。だったら何のために私を呼んだのか。私から発言を引き出して政府や防衛相を攻撃する格好だった。言論の自由を掲げる立法府とメディアがそろって異なる意見を封じ込めようとした。立法府とメディアの自殺行為ではなかったでしょうか」

 --各党の対応をどう見たか

 「野党は政府を攻撃したいだけで、『日本の国益がどれだけ損なわれようと知ったことはない』といった風でした。国益が党利党略の犠牲になるのはいかがなものでしょうか。民主党の鳩山由紀夫幹事長は、私や懸賞論文を主催したアパグループの元谷外志雄代表との会食を中座したように言っていますが、まったくのウソですね。鳩山さんと相当の時間、楽しく懇談させていただきました。自民党も『左』に寄ってしまいました。左をなだめようと左に少し寄ると次の出発点はそこになる。これを繰り返していると日本に保守政党がなくなってしまう」

 --「左」の陣営を勢いづかせたとの批判もある 

 「55年体制の時代から、左をなだめるために発言を控え、ちょっと彼らの言い分を飲む、というやりかたでやってきたが、日本は良い方向にはきてない。私の論文が左を勢いづかせたという人は、今までと同じように対応しなさいといっているに等しい」
 

 

 --「文民統制崩壊か」という議論が国会やメディアでも盛んだったが

 「ほとんどは、文民統制の意味を理解していないものでした。文民統制の根幹は、外交問題などが生じたときに、軍を使って解決するかどうか、その決定権を政治が握っているということです。民主主義国家では戦闘機や戦車、護衛艦、隊員の数は、政治のコントロールを受けて決まります。そのモノとカネと人を使って最強の軍隊をつくるのはミリタリーの専門分野だと思います。防衛省には内部部局(内局=背広組)がありますが、日本ほど、文民統制が細部まで徹底している軍隊はないでしょう」

 

「この国のために命をかけることが正しいんだという気持ちがないと軍は動けない」 

 

 --監察などによって自衛官の言動に対する監視が強まっている

 「私の一件をきっかけに、防衛省の内局が自衛官の歴史観や思想信条について政府見解に合致しているかをチェックするのだとしたら、それは軍隊を精神的に解体することです。自衛隊の士気を下げ、きっと中国や北朝鮮は大歓迎していることでしょう。軍隊は、自分の命がかかればかかるほど、使命感がなければ動けなくなる。使命感とは、自分たちがやっていることが正義なんだ、という気持ちです。この国のために命をかけることが正しいんだという気持ちがないと軍は動けない。その根本には愛国心があると思います。この国は残虐でろくな国じゃなかった、お前たちは力を持ったらすぐ悪人になるんだ、と言われたんでは使命感は生まれようがない」
 

 

 --田母神氏の発言をとらえて、すぐ「戦前は軍が暴走した…」となる

 「そういう人たちはよっぽど日本人、つまり、自分自身が信用できない人なのではないでしょうか。あるいは、文民統制に自信がないのかもしれません。政治が少しの異論も許さない言語空間に閉ざされていれば、国は弱くなります。徹底的に非核3原則を堅持すべきだという意見もあっていい。だけど民主主義だったら核武装すべきだという意見もあっていい。核兵器を持たない国は、核兵器を持った国の意思に最終的には従属させられることになりかねない」

 --核問題では、北朝鮮に振り回されている

 「北朝鮮が核兵器を持ちたがる理由は、1発でも米国に届く核ミサイルを持てば、北朝鮮を武力で制圧するのは、絶対できなくなるからです。そういった核兵器についての基本が、日本では議論されたことがない。核兵器を持つ意思を示すだけで、核抑止力はぐんと向上します。逆に、はじめから持たないといっただけで、核抑止力は格段に低下するといったことが政治の場で理解されていない」

 --日米同盟も変質しない保障はない 

 「航空自衛隊も少しずつ自立の方向に進むべきでしょう。自前で空軍としての能力を整え、日米が互いに足らない分を協力して補うとことが望ましい。これまでの米国は鉾、日本は盾という考え方は直した方がいい。米国の若者の血は流すが、日本は後ろにいますでは、日米同盟はもたない」

 

:2008:11/28/11:48  ++  屋山氏「自民に起死回生策ない」 群馬「正論」懇話会

群馬「正論」懇話会の第17回講演会が27日、前橋市のマーキュリーホテルで開かれ、政治評論家の屋山太郎氏が「日本に迫る内外の課題」と題して講演した。

 屋山氏は次期衆院選について、「内閣支持率の低さに動揺した麻生太郎首相が選挙をやり損なった」と指摘。「短期政権は汚名との思いもある。少なくとも5月の連休まで解散はない」と述べた。

 また、官僚主導の政治に批判が集まるなか、世論が政権交代への抵抗感を薄めていると分析。「自民党は、年内解散を言い続けた小沢一郎代表の面目をつぶし、敵失や金欠などを待つ状態。起死回生の策はないようだ」とした。

 一方、国際情勢については「米国の一国主義が終わり、画期的な場面を迎えている。日本はまともな軍隊を作り、防衛の地力を付けるべきだ」と訴えた。その上で、「日本は金融危機の波をかぶっていない。モノ作りの力は強く、中国食品への危機感から農業にも可能性がある」と強調した。

:2008:11/28/10:38  ++  インド同時テロ、経済への打撃狙いか、外国人らも標的に、ホテル襲撃、前例ない手口。

 【ニューデリー=小谷洋司】インド西部の商都ムンバイを襲った同時テロは高成長の象徴である経済の中枢を狙い、欧米人も標的とするこれまでにない手口から、印経済への打撃を狙う思惑が読み取れる。少なくとも七カ所を同時襲撃し、複数のホテルで籠城(ろうじょう)した実行犯グループの動きは、高度に組織化された新たな過激派グループの台頭もうかがわせる。テロ続発に内外で危機感が高まってきた。(1面参照)
市場再開は未定
 二十七日に休場したムンバイ、ナショナルの国内二大証券取引所(いずれもムンバイ)が二十八日に取引を再開するかはまだ決まっていない。ムンバイ証取の広報担当者は日本経済新聞の取材に対し「状況を見極めたうえで二十八日朝に決める」と語った。
 今回、襲われたタージ・マハル・ホテルは一九〇三年創業。大手財閥タタグループの創始者ジャムセトジー・タタが設立した老舗で、多くのインドの人々にとって「誇り」といえる存在。ここを標的に選んだことは、武装集団が現在の経済発展のあり方に不満を持っている可能性も示している。
 インドの経済発展を支えてきた原動力の一つは外資による対内直接投資。金融危機の中でも着実に増えており中長期の成長期待の大きさを示すとみられてきた。テロを機に直接投資が滞れば、成長に急ブレーキがかかるのは避けられない。
 「インドのテロは外国人は狙わないという認識があった。(外国人が集まる)名門ホテルが襲撃されたのは大変ショック」。インド在住十年を超える日本人ビジネスマンの一人はこう話す。
新たな過激派か
 国際社会の世論形成で影響力の大きい米英の出身者を狙い撃ちにした犯行は、印政府へのダメージを最大化する効果を狙ったとみられる。外国企業の間では、インド出張を取りやめる動きなど動揺も出始めている。
 銃で武装し、ホテルや飲食店などを襲う手法も以前にはなかったものだ。これまでのインドのテロは一般市民が集まる市場や宗教施設に爆弾を仕掛けたり、人込みの中で自爆したりする手口が大勢。いわば「顔の見えない」犯行だった。
 今回の武装集団は監視カメラなどに映ることも覚悟していたフシもある。撮影されたメンバーはTシャツとジーンズ、背中にリュックサックといういでたち。実行犯の多くは二十歳代に見え、ラフな普段着で自動小銃を抱える姿は戦闘服やマスクで顔を隠した従来のテロリストとは違い、異様さを際立たせる。
 実行犯の男の一人は二十七日、地元テレビに電話で自分たちを「デカン・ムジャヒディン(イスラム聖戦士)」と呼んだ。同じイスラム過激派でも従来とは異なる新たなグループが組織された可能性を指摘する向きもある。
 米国のテロ監視団体「インテルセンター」は同日、今回のテロが「規模の大きさと準備の周到さにおいて先例がない」と位置づけたうえで「欧米人に対する脅威は劇的に増大した」と分析した。インド社会で冷遇されることが少なくない総人口の一割強のイスラム教徒の間では、同八割以上を占めるヒンズー教徒への不満がうっ積しているとされる。
 新興国「BRICs」の一角として世界から注目を集めるインドだが、急速な経済発展の恩恵が社会の隅々まで行き渡っているとはいえない。そうした不満が今後、ムンバイだけでなく、東部コルカタや首都ニューデリーなど他の大都市でのテロ続発につながる懸念も出てきている。
ムンバイ 最大の商都、金融集積
 西部マハラシュトラ州でアラビア海に面するインド最大の商業都市。一九九五年に植民地時代の名称「ボンベイ」から改称した。周辺部を含む人口は二千万人と推定される。インド準備銀行(RBI、中央銀行)のほか、国内の二大証券取引所や国内外の金融機関が集積している。日本外務省のまとめでは、商社や金融機関など百社が拠点を構え、約二百七十人の在留邦人がいる。

:2008:11/28/10:23  ++  景気後退(2)生産・投資、異例の高速調整――危機の深度「未体験ゾーン」。

新日本製鉄は二十五日、下期の粗鋼生産を当初計画より一四%、二百万トン減らすと明らかにした。十月末に百万トンの減産を発表したばかりだが、一カ月足らずで減産幅を二倍にする。「自動車用をはじめ鉄鋼需要は日を追うごとに悪化している」(宗岡正二社長)。昨年度下期に過去最高を記録した粗鋼生産は一気に五年前の水準に落ち込む。
身構える経営者
 ▼トヨタ自動車など国内自動車各社の下期の減産は計百八十万台強と、期初計画比で七%減産になる。今年度の世界生産はアジア危機で前年比九%減だった一九九八年以来、十年ぶりにマイナスに転じそうだ。
 ▼企業の設備投資の急激な減額修正を受け、十月の工作機械受注額は前年同月比四〇%減と六年九カ月ぶりの下落幅を記録し、四年六カ月ぶりに一千億円を割り込んだ。オークマの花木義麿社長は「バブル崩壊後を超す速度で落ち込んでいる」という。
 ▼二年連続で出荷額が最高だった建設機械業界でも今年度の需要が三十二万九千台と七年ぶりに前年割れする見通し。公共工事だけでなく、ビルや工場など民間投資が冷え込んでいる。上期の国内セメント出荷量は前年比一〇%減り、四十年ぶりの低水準になった。
 リーマン・ブラザーズの破綻を機に金融危機が世界を揺さぶった十月以降、産業界を数年から数十年ぶりの環境変化が襲っている。二〇〇一年のITバブル崩壊、日本の不動産バブルが崩壊した九〇年代初め以来の悪い数字が目立つが、状況はもっと異質だ。
 金融危機が猛烈な勢いで実体経済を下押ししているためで、グローバル経済で危機の波及スピードがかつてなく速くなっていることが背景にある。主要企業が次々に投資計画の凍結や減産を決定。いま起きているのは生産・投資の異例の高速調整といえる。
 「今回の危機は石油危機やバブル崩壊より大きな問題。過去の経験が役立つ事態ではなく、もっと深刻だ」(鈴木修スズキ会長)
 「二十世紀の恐慌とは違う未体験ゾーンに入った印象だ」(数土文夫JFEホールディングス社長)
 企業の経営者も従来型の景気循環を超える事態の急変に身構えている。
 HOYAの浜田宏最高執行責任者は九月半ばから、デジタルカメラの販売状況を内外の担当者に毎日報告させている。週次の海外販売データが出るのを、「待っていられなくなった」。昨年買収したペンタックスのデジカメ事業の四―九月期は営業赤字。最新状況を生産計画に即座に反映して在庫管理を徹底し、最需要期の年末商戦は売れ筋商品に絞り込む。
デフレ再燃懸念
 日本の国内総生産(GDP)の実質成長率は四―六月、七―九月期と連続でマイナスになった。景気後退による経済活動の縮小で需要が不足。さらに資源価格の反落で物価が持続的に下がる「デフレ」の再燃懸念も浮上している。深刻なデフレに逆戻りすると小売価格が伸びず、売上高が減って企業業績も悪化する。
 十月の鉱工業生産は民間調査機関の予測平均で前月比二・六%の急減が見込まれる。日興シティグループ証券は十―十二月期が前期比四・二%減と予測。今年一―三月期から〇九年七―九月期まで七・四半期連続で生産が減り、景気後退がさらに深くなるとみる。
 日本企業はバブル崩壊後、有利子負債の削減などで財務体質を改善してきた。三月期決算の東証上場企業(新興三市場・金融を除く千六百二十八社)の自己資本に対する有利子負債の倍率(DEレシオ)をみると、〇八年九月末時点で〇・七九倍と七年前の一・二四倍から改善し、健全性の目安である「一倍割れ」を保っている。しかし危機が深まれば企業の耐久力を超えるおそれがある。
 三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は「景気が急角度で落ちる分、早めに底を打ちやすくなる面はあるが、金融危機という大きなショックの後だけに回復力は弱い」と分析する。一斉減産や投資抑制が連鎖的な需要減少を招き、景気の底が見えなくなる合成の誤謬(ごびゅう)が起こるリスクも否定できない。(景気動向研究班)

:2008:11/28/10:22  ++  景気後退(1)世界同時不況の影――連続マイナス成長、現実味。

金融危機が各国経済を下押しし、世界同時不況の様相が広がっている。日本も景気後退局面に入り、二〇〇九年に日米欧がそろって戦後初のマイナス成長に陥るとの観測が浮上。企業は減産と設備投資の減額を急ぎ、消費者心理も冷え込んでいる。景気停滞が深く長くなるおそれが出てきた。
 危機の震源地、米国でなお強い逆風が吹いている。
 ▼自動車大手ビッグスリーの本拠、デトロイトを抱えるミシガン州の十月の失業率は九・三%と、全米最高になった。三社は関連業界も含めて四百万人以上を雇用しており、同州の苦境はいまの米国を象徴する。
 ▼ウォール街の混乱にも歯止めがかからない。シティグループは五万人削減などリストラを打ち出しても危機を止められず、政府に救済されることになった。
負の連鎖鮮明に
 米国では民間エコノミストだけでなく米連邦準備理事会も景気後退の長期化を予想。十―十二月期の実質国内総生産(GDP)は大幅に落ち込むとみられ、〇九年も通年でマイナス成長の恐れがある。来年中に出口が見えなければ、景気後退が四十三カ月続いた一九三〇年代の大恐慌以来の長さとなる可能性もある。
 リーマン・ブラザーズが破綻した九月中旬以降、世界的な金融危機と景気減速の負の連鎖が鮮明になっている。外需頼みの日本も例外でなく、製造業の現場は変調をきたしている。
 十月から七年ぶりの二割減産を始めた森精機製作所の三重県・伊賀事業所。生産ラインから通路にはみ出すようにして増産していた九月までの活況が一変し、歯の抜けたような空きスペースが目立つ。主力顧客の自動車産業の不振を受け、国内工場の派遣社員三百人の削減にも着手した。
 家計の生活防衛にも拍車がかかる。首都圏でクリーニング店を百六十店展開する喜久屋(東京・足立)は十―十一月の売上高が前年比で五―一〇%減った。「客数は変わらないのに持ち込む数が減っている」。美容室チェーンのアルテサロンホールディングスも得意客の来店頻度が四カ月に一回と、まる一カ月延びた。
 十月以降の景気悪化は経済指標をみても鮮明だ。貿易統計の輸出総額は七年ぶりの減少幅を記録し、鉱工業生産の予測指数も大幅なマイナスになった。
 日本の景気後退はどのくらい深刻になるのか。国際通貨基金(IMF)は世界経済の〇九年の実質成長率見通しを二・二%に下方修正した。成長ペースは〇七年までの半分で、世界不況の目安といわれる三%割れになる。日本はマイナス〇・二%と予想しており、〇八、〇九年度にかけ、戦後二度目の二年連続マイナス成長が現実味を帯びる。
 日本経済は山一証券破綻やアジア通貨危機で九七、九八年度にマイナス成長に見舞われた。九八年度は実質GDPが前年比一・五%減少。法人企業統計でみた企業全体の純損益も五千三百億円の赤字に陥った。日本経済研究センターは今回も二年間で実質GDPが一・一%減ると予想する。
大企業には体力
 だが大企業はバブル崩壊後に過剰な設備・雇用・債務を解消し、稼ぐ力をつけている。収支がトントンになる売上高の水準を示す損益分岐点比率(金融を除く資本金十億円以上の全産業)をみると、九三年度の八八%から、経営効率化で〇七年度は七〇%に改善した。売上高が減っても一定の利益を確保できる。
 原材料高で〇八年度の損益分岐点は八〇%前後になるとみられるが、いまの企業体力なら「〇九年度に売上高が五%減っても、二〇%弱の減益ですむ」(野村証券の松浦寿雄氏)。
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は特別声明で世界経済について「十八カ月で危機を克服できる」と強調した。地方や中小企業の景況はより厳しいものの、世界同時不況が一年半ですめば大企業を中心に持ちこたえられる。
 年末にかけ中小企業の資金繰りなど金融面の不安が高まる中で、政治の機能不全のリスクは残る。審議中の金融機能強化法改正案など経済対策が実行できなければ、危機を増幅する懸念がある。(景気動向研究班)

:2008:11/26/10:34  ++  1000人規模の人員削減へ=正規雇用にもリストラの波-日本IBM

日本IBM(東京)が1000人規模の正社員削減を進めていることが25日、明らかになった。金融不安による世界的な景気後退のあおりを受け、自動車業界などを中心に派遣社員や期間従業員など非正規雇用従業員を削減する動きが広がっているが、リストラの波が正規雇用社員にも及んできた格好だ。
 関係者によると、同社は2007年10-12月期から08年7-9月期にかけて4・四半期連続で減益に陥ったことに加え、08年通期(1-12月期)の業績も減益になる見通し。金融危機が深刻化する中、本社である米IBMは世界的規模で事業の見直しを進めており、日本でも人員削減を含め事業立て直しを迫っている。 

:2008:11/25/11:30  ++  地方のIT企業と中小企業、全国に「出会いの場」、経産省、地域活性へ仲介。

経済産業省が地方のIT(情報技術)サービス提供企業と、ITの活用に悩む中小企業を仲介する事業に乗り出す。十二月にも全国九地域ごとに「出会いの場」を提供する新たな組織を発足。地域経済の低迷で疲弊する中小企業を支援する。
 新組織は「地域イノベーションパートナーシップ」。中小企業がITを利用して経営効率を高めるため、経産省はこれまで全国で研修会の開催などの支援をしてきた。新組織ではITサービスを提供する中小企業も支援し、売り手と買い手の間の仲介に乗り出す。
 国内のITサービス産業のほとんどは中小企業。特に地方に拠点のある企業は優れたサービスを持っていても、販路が限られる。一方、ITを利用する側の中小企業も、ITを使ってどのように経営の無駄をなくせばいいのか分からないところが多い。提供企業の販路拡大と、利用企業の収益力強化につなげる。
 二十六日には都内で「地域イノベーションパートナーシップ全国大会」を開き、新組織の発足を正式に表明する。

:2008:11/25/09:12  ++  大き過ぎてつぶせない 米政府、シティの3000億ドル“肩代わり”

米銀大手シティグループは、保有する3060億ドル(約29兆1893億円)の不良資産について、損失の一部を米政府が補填(ほてん)する保証を得た。政府は同行に対する追加救済措置により、金融安定化を目指す。

 米財務省とFRB(米連邦準備制度理事会)、米連邦預金保険公社(FDIC)が23日深夜(日本時間24日午後)に発表した共同声明文によると、シティは財務省から200億ドルの資本注入も受ける。また、シティは損失補填の保証の見返りとして、財務省とFDICに対し、優先株を発行。これにより政府はシティの優先株270億ドル相当を得る。優先株の配当利回りは8%。同行はすでに、問題債権購入計画(TARP)に基づき250億ドルの資本注入を受けている。

 米当局は2兆ドルの資産を持つシティの株価急落が預金引き揚げにつながり金融システムの安定を脅かすことを恐れた。AMPキャピタル・インベスターズのストラテジスト、ネーダー・ナエイミ氏は「必要な措置だった」として、「シティが倒れれば影響は壊滅的だ」と話した。

 優先株にはシティ株2億5400万株を1株当たり10.61ドルで購入する権利が付いている。シティ株が上昇すればこの投資から利益が出る。シティは四半期配当を1セントと、従来の16セントから大幅に引き下げる。

 資産保証の条件によれば、シティは3060億ドルの不良資産について発生する損失の最初の290億ドルは負担。これを超える損失については政府が90%を補填する。複数の当局者によると、政府はシティの経営陣の交代は求めない。

 株価急落に見舞われている米銀大手シティグループは、1000億ドル超の不良資産から今後見込まれる損失に歯止めをかけるための計画について、監督当局と週末から協議を行っていた。

 米投資会社キャンビア・インベストメントのブライアン・バリッシュ社長は、「『トゥー・ビッグ・トゥー・フェイル』(規模が大き過ぎてつぶせない)とはまさにシティのことだ」と述べた。

 ただ、アルパイン・ウッズ・キャピタルのポートフォリオマネジャー、ピーター・コバルスキ氏は「シティは一息ついたが、長期的には事態がさらに悪化し損失が膨らむ可能性はある。新興市場低迷の影響がシティのアキレス腱(けん)だ」と話した。

                   ◇

 ■シティ救済共同声明

 米政府は、活力ある経済成長を取り戻すために不可欠な金融市場の安定性確保に全力を尽くしている。この姿勢の下、米政府は23日、シティグループ(以下シティ)に対して政府保証、流動性、資本を一括して供与することを承諾した。

 この合意の一環として、財務省およびFDICは、シティの貸借対照表に計上され続けるであろう住居用・商業用不動産およびその他の資産による3060億ドル規模の負債と証券から、著しく大きな損失が出る可能性に対する保護策を講じる。この見返りとして、シティは財務省とFDICに対して優先株を発行する。加えて、必要となれば、FRBは政府の公的資金を用いて、シティの資産になお残るリスクに対処する用意ができている。

 また財務省は、配当利回り8%の優先株と引き換えに、TARPからシティに対して200億ドルを拠出する予定である。シティは強化された役員報酬の制限を受け入れ、FDICの住宅ローン改良計画を実行することになる。

 以上の取引により、米政府は金融制度を強化するために必要な行動を起こし、米国納税者と米経済を保護する。

 われわれは引き続き、あらゆる資源を使って金融機関の強固さを保持し、その修復および再生を促進し、リスク管理を行う。そのために以下に記した原則に基づいた取り組みを行う。(1)各世帯、各企業にとって健全な信用の流れを回復させるために行動する(2)納税者からの資金を用いる局面では、慎重な監督と報告の責務を実行する(3)金融に関する政府の関与を慎重に制限する(4)各金融機関が民間から資本調達できるように支援をする。(Bradley Keoun、Alison Vekshin)

:2008:11/17/09:45  ++  【正論】米新政権を占う 京都大学大学院教授・中西寛

■日本に「実」を求めるオバマ氏

 アメリカ大統領選はオバマ民主党候補が大勝を収めた。大統領選の終盤になって急浮上した経済危機への対応が最後に勝敗を分けたとはいえ、基本的にはオバマ候補の選挙運動家としての資質が勝利したと言える。共和党よりも結束力が弱いとされる民主党にあって、陣営内でのスキャンダルをほぼ完全に回避して若者、無党派層に着実に支持を広げ、大本命だったヒラリー・クリントンを破り、更にはマケイン共和党候補を引き離した。

 最大の武器は衆目の一致する高い弁舌能力で、2年近くの異例の長期戦の節目節目で人々を感動させる演説を行って選挙活動の勢いを持続させた。中でも今年3月、自らが師と仰いできた黒人牧師の白人攻撃発言を取り沙汰(ざた)されたとき行った「さらに完全な結束に向けて」演説と、7月にベルリンを訪問した際の「ベルリン演説」は、名文句で彩られ、演説のお手本ともいうべき内容であった。

 前者では旧師の発言を批判しつつ、人種対立の克服がアメリカの残された課題であるとして、「過去に関して人々は異なる物語を持つけれども、アメリカ人は共通の希望を抱いている」と述べた。後者ではベルリンの壁になぞらえ、ブッシュ政権期に生じた米欧間の亀裂を克服し、アフガニスタンでのテロとの戦いに向けた結束を訴えた。いずれも、対立よりも融和を訴える基本的立場を守りつつ、微妙な問題から逃げない姿勢を示した点で、すぐれた政治感覚を表現することに成功した演説だったと言える。

 ≪対東アジアは未知数だが≫

 しかし演説能力だけでこなせるほどアメリカの大統領の職はたやすくないし、とりわけ今は困難が山積している。金融危機への対応は選択肢が限られている点で、不良債権処理や景気対策などできることをする他ないが、医療、年金、雇用、移民といった社会経済問題はクリントン、ブッシュ政権が共に解決できなかった難問に取り組むことが期待される。

 外交的には、イラクからの撤退とアフガニスタン作戦への注力は方針として出されているが、核拡散、テロ支援、エネルギー問題などが重層的に関(かか)わるイラン問題や、グルジア紛争をめぐって対立が激化したロシアとの関係など、外交政策では厳しい交渉が控えている。

 こうした状況の中でオバマ政権の対東アジア政策はそれほど優先度が高そうではないし、その具体的内容もまだ見えてはいない。この点では日本を含めた東アジア諸国にとっては共和党政権の方が与(くみ)しやすかったことは否定できない。伝統的に共和党政権はアジア太平洋を重視し、安保関係を基軸としながら自由貿易体制を主導してきたからである。安保人脈を中心に共和党政権と親密な関係を築いてきた日本に限らず、中国にとっても、共和党の政策は予測可能性が高い点で対応がしやすかった面はある。

 オバマ民主党政権は相対的に中国重視となるとの観測がある一方で、貿易、環境、人権などで摩擦が起きる可能性も共和党政権の時よりも高い。

 ≪政権の国内基盤の強化を≫

 日本に対してはアジア最大の同盟国として重視する姿勢は共和党政権と共通するが、同盟の「実(じつ)」を求めてくるであろう。ブッシュ・小泉政権下でまとめられた同盟再編政策について、普天間基地移転、海兵隊グアム移動問題などが懸案として残されているし、ミサイル防衛構想についても技術および予算面から一定の見直しがなされる可能性がある。

 アフガン重視の観点からして、日本の貢献はインド洋での海上給油にとどまらず、アフガンや隣国パキスタンの政治安定化支援が期待されるかも知れない。他方、北朝鮮についてはブッシュ政権の対北対話路線を自ら変更することはせず、金正日総書記の動静を含め、相手の出方を窺いながら慎重に進めていく姿勢をとるのではないか。

 経済面ではクリントン政権のような貿易摩擦再燃の可能性は低い。それほど日米両国の経済体質は変わった。むしろ金融面で、円高と内需中心の成長を求めると共に、東アジアの貿易秩序の構築を働きかけてくるのではないか。また、環境政策重視を看板にしている点から、ポスト京都議定書に向けて大胆な提案をしてくる可能性もある。

 ただ、現時点では日本は慌てず、新政権との信頼関係の構築を目指すべきである。そのためには日本が世界、とりわけアジアにおいて責任を果たす姿勢を示し、また政権が国内で安定した政治基盤をもつことが前提となろう。(なかにし ひろし)

:2008:11/11/23:49  ++  10月倒産 6年ぶり高水準 上場企業は最多8件

民間調査機関の東京商工リサーチが11日発表した10月の倒産件数(負債1000万円以上)は、前年同月比13・4%増の1429件で今年最多となった。金融危機が深刻化した9月からさらに21件増加し、10月では6年ぶりの高水準。また、上場企業の倒産は過去最多の8件を記録した。

 負債総額は前年同月と比べ約2・2倍の1兆77億円に急増した。大和生命保険(負債2695億円)、不動産投資信託のニューシティ・レジデンス投資法人(同1123億円)の大型倒産2件で全体の4割近くを占めた。1~10月の負債総額は累計11兆円を超え、昨年1年間の累計と比べても2倍近くに達している。

 倒産企業の従業員数は前年同月比26・4%増の1万6883人となり、9カ月連続で1万人を超えた

 倒産増加の背景には、企業の資金繰りの悪化も影響している。このため政府は10月の追加経済対策で、中小企業向け信用保証枠を総額20兆円に拡大した。資金需要が活発になる年末に向けて効果が期待されるが、東京商工リサーチでは「景気対策が浸透するまで、企業倒産は高水準で推移する可能性が高い」とみている。

:2008:11/11/23:47  ++  10月の企業倒産は1231件…05年4月以降で最多

民間信用調査会社の帝国データバンクが11日発表した10月の企業倒産件数(負債総額1000万円以上)は前年同月比13・7%増の1231件となり、集計基準を改めた2005年4月以降で最多となった。

 1月からの累計は1万524件に達し、年間でも05年以降、過去最高となる可能性が強まっている。

 負債総額は前年同月比約2・2倍の約9790億円で、基準変更後ではリーマン・ブラザーズの大型破綻(はたん)などで過去最高となった前月(5兆3197億円)に次いで2番目の高水準となった。10月は世界的な金融危機の影響で、中堅生命保険の大和生命保険が更生特例法の適用を申請するなど、負債100億円以上の大型倒産が12件発生した。

:2008:11/11/11:13  ++  【正論】政治評論家・屋山太郎 公務員改革に消極的な麻生政権

≪政官癒着理解しない首相≫

 麻生太郎首相は就任直後から世界的な金融危機に直面し、27兆円弱に及ぶ追加景気対策を打つなど機敏に対処しているようにみえるが、この人の政治感覚や財政改革は見当違いなのではないか。

 その理由の一つは日本経済を「全治3年」と診断して財政再建計画を3年先延ばしにしたことだ。日本の財政赤字が800兆円にも達したのは政・官癒着の体質がもたらしたものといえる。いってみればメタボリック症候群の治療中に経済危機という傷を負った。外傷の手当ては必要だが、メタボ治療を休止していいことにはならない。

 なぜこのような見当違いをするかといえば、首相は政・官癒着の体制がいかにひどいかを全く理解していないからだ。1981年の土光臨調以来、歴代内閣は懸命に行政改革を進めてきた。しかし国鉄の民営化以外目ぼしい成果が出ないのは官僚の抵抗とその仕組みにぶら下がって利益を貪(むさぼ)っている族議員との癒着のせいだ。道路族が道路特定財源の一般財源化になぜあれほど反対したかを見れば一目瞭然(りょうぜん)だろう。

 首相は組閣人事を自ら発表し全閣僚に「官僚は使うもの」「省益でなく国益を追求させよ」と伝えたと述べた。首相や閣僚の指示に官僚が従うなら、臨調以来この27年間の努力は全く不要なのだ。首相や閣僚の寿命はせいぜい1、2年だが、官僚内閣制は140年連綿として続いている。一内閣の指示など聞いた振りをして嵐が過ぎるのを待てば官僚の利益は永続する。

 ≪民主党顔負けのバラ撒き≫

 与謝野馨氏に代表される財政規律派は埋蔵金など存在しないと主張した。民主党が掲げた児童手当2万6000円や農家所得補償など20・5兆円に及ぶマニフェストをバラ撒(ま)きだと批判し、財源はどうするのかと責めた。しかし自民党がまとめた追加景気対策は26兆9000億円に及び、首相は「赤字国債を財源としない」と明言した。ではその財源はどこから持ってくるのか。対策の主要な項目は民主党と似通っているが、これはバラ撒きではないのか。

 首相は追加景気対策発表に当たって「大胆な行政改革を行ったのち、3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と述べた。与謝野経済財政相はテレビで「2010年の中ごろには10%程度の引き上げが必要だ」と述べた。英、仏、独など欧州主要国の付加価値税(消費税)はいずれも15%程度だから、日本も欧州並みの社会保障政策をとるなら、あと10%程度の引き上げは不可避だろう。そういう事情は日本国民も十分に心得ていて、世論調査ではいずれの調査も「消費税の引き上げやむなし」が6割前後を示している。英、仏では政府の一存で引き上げることができるが、それには、政府には無駄がないという国民の認識が前提にある。

 麻生氏や与謝野氏が増税をいうことは勇気ある行動のように見えるが、官僚制度について無知すぎる証拠でもある。小泉純一郎元首相は「任期中は消費税は引き上げない」と言明した。塩川正十郎元財務相は日本の財政について「母屋ではかゆを食っているが、離れではすき焼きを食っている」と評した。小泉、安倍晋三両元首相が「上げる」といわなかったのは、財政需要が逼迫(ひっぱく)すれば官僚は自ら「離れのすき焼き」を母屋に持ってくることを知っていたからだ。

 ≪無知ゆえの消費税引き上げ≫

 衆議院調査局の調査では天下り法人は4600、天下り人数は2万8000人。それに流れる財政支出は2006年度で12兆6000億円。天下りは金融、産業、教育などあらゆる分野に及び、そこの分野に官僚体質がはびこる。官製談合、随意契約、天下り人数に見合う発注と市場は全く不透明だ。同じ構造が地方にも及んでいる。漆間巌官房副長官は「天下りしてどこが悪い」と嘯(うそぶ)いたそうだが、こういう発想が日本の政、財、官界を腐敗させているのだ。

 公務員制度改革基本法に基いて推進本部が設置されている。その目的は(1)公務員を肩叩(たた)きをせず定年まで働かせる。給与体系も民間並みにし、昇給も降格もある(2)幹部の職務評価を「内閣人事局」に一元化し、国益追求の官僚を抜擢(ばってき)する-の2点だ。この構想は安倍内閣時代に生まれ、安倍、福田両内閣を経て、民主党も賛成して基本法が成立した。明治26年に高文試験として官僚制度が始まって以来、120年ぶりの改革で、全官僚が反対している。

 しかし、これを断行する以外には官僚制度は刷新できない。政・官の利権構造の絶滅、年金記録漏れ問題に見る官僚制度の無責任を解消しない限り、国民は増税話に耳を傾けるわけがない。麻生氏や与謝野氏にはその自覚が全くない。(ややま たろう)

:2008:11/10/10:50  ++  主観客観

米新大統領が決定、
世界市民の元に新しい枠組みの構築を

 11月4日に米大統領選挙が行われ、民主党候補のバラク・オバマ上院議員が勝利しました。2009年1月20日に第44代大統領として就任する予定です。

 米大統領選は、過去最高の投票率を記録して米国内外で熱狂のうちに幕を閉じましたが、オバマ氏の真価が問われるのはこれからです。

 サブプライム問題の影響が世界中に広がっているなかで、オバマ氏は大規模減税や公共投資などの景気対策のほか、金融市場の安定に必要な規制を検討していくなど、100年に1度の金融危機と言われる経済情勢を前に、さっそく主要閣僚を決定し特別チームを立ち上げて経済対策を打っていくものとみられます。

 しかし、1929年の株価暴落に端を発した大恐慌時、フランクリン・ルーズベルト大統領(1933年就任)がとったニューディール政策のように、自国内への富の再配分に目を向けるだけでは今回の危機は乗り越えられません。

 強いアメリカが世界の安定につながるというこれまでの構図から脱却し、カントの提唱する「世界市民」としての役割を担うアメリカに変革していくことができるかどうかが重要です。これこそいまの世界に必要な最大の「CHANGE」です。

 政治、経済、環境、エネルギーなどの各分野において、世界各国を新しい枠組みに導くことこそ、20世紀の反省のもとにたった新世紀に求められるネクスト・ニューディールと言えるでしょう。

(大和)


小室容疑者逮捕から見る将来への備え

 音楽プロデューサーの小室哲也氏が著作権譲渡を巡る詐欺容疑で逮捕された。今回の事件は音楽出版社が所有している小室氏が手がけた楽曲の著作権を、個人投資家に多重譲渡した疑い。

 小室容疑者は90年代の音楽市場でミリオンセラーを何作も創りだし、手がけたCDの売り上げは1億7千万枚を超え、96年、97年には高額納税者番付にもランクインされていた。年収は30億を超えていたと言われている。絶頂期には海外進出を目指し、巨額を投じたが事業に失敗、多くの負債を抱えることとなる。資金難に陥ったことで今回の犯行に及んだと言われているが、同情の余地はない。

 現在、消費者の可処分所得が落ち込み、経団連が発表したボーナス妥結状況も前年割れとなるなど、人々が先行きに不安を抱く要素は多い。景況感の悪化とともに、社会保障制度への信頼が揺らいでおり、貯蓄率を高め備えとしているのである。小室容疑者は当時の収入が永遠に続くと考えていたのだろうか。終身雇用制度の崩壊により企業従事者の雇用形態さえも多様化するなか、音楽プロデューサーというより先行き予想が立ちにくい職業に安定を求めることは難しい。将来設計を考慮に入れなかったことが原因ではないだろうか。

 いくら苦況に瀕していたとはいえ、詐欺は許されることではない。今回の小室容疑者の逮捕から、将来を視野に入れた自己資金運用方法の大切さが身にしみたのは私だけだろうか。資金難により、生きていく為なら犯罪もいとわなく思えた時に、すでに人生の転落は始まっているのだと感じた。

(小夏)


融資姿勢の変化

 サブプライム問題以降、企業からは金融機関の融資姿勢の硬化が聞かれることが多くなった。今回の資金繰りに関する調査では、現在資金繰りが「厳しくなっている」と回答した企業は26.3%で4社に1社が資金繰りに厳しさを感じている。

 その資金繰り悪化要因(複数回答)については、「売り上げの低迷」(73.8%)、「仕入れコストの増大」(同43.0%)に次いで、「金融機関の貸し渋り」(同28.5%)は3番目に高かった。

 また、2008年末の資金繰りに関しては、全体の30.7%の企業が、資金繰りが厳しくなると見込んでいる。特に「中小企業」の3社に1社が年末にかけた資金繰り難を懸念しているという結果となった。

 現在、全国7カ所で開催中のTDB景気座談会でも、企業からは「銀行は、今回の金融危機の嵐が去るまで様子を見ているようだ。融資をしないで、回収したお金を手元に置いているため企業にはお金が回らない」「地銀が、どこへ融資していいのかわからない状況で、融資能力が落ちているように感じる」など、金融機関への不満を上げる声が多い。

 新銀行東京のずさんな融資体制が話題になっている。ただ、一部では「十数年特定の金融機関と取り引きしているが、今回、初めて在庫の数を確認しにきた」との声も聞かれる。

 今世紀最大の金融危機という状況下に金融機関の融資審査のスタイルは、これまでの担保主義・システマティック審査から、徐々にその審査方法の見直しも進め、銀行マンとしての資質が求められる時代となっている。

:2008:11/10/10:46  ++  【 なりふり構わぬ中小企業救済策も効果は限定的 】

米国発の金融危機と実体経済の悪化が、中小零細企業を再び、窮地に追い込んでいる。そのキーパーソンは、中小、地方企業の命綱である地銀・第2地銀・信金・信組といった地域金融機関。多くの地域金融機関は、地域経済の地盤沈下と融資先の業績悪化による資金需要の低迷に直面し、頻発する不動産セクターへの焦げ付きや内需型の倒産増加による与信コストの上昇など悪材料が山積。そうしたところへ今回の金融危機によって、リーマン債の損失とともに株安に伴う保有株式の減損処理と実体経済の急降下が追い打ちをかける。

 そこで政府は、中小企業対策として今年3月に期限切れとなった予防的に地域金融機関に公的資金を注入できる「金融機能強化法」の復活や信用保証枠の拡充を決定。さらに、追加対策として法人税率の時限的な引き下げや欠損金繰り越し還付の復活、時価会計の一部凍結など、なりふり構わぬ信用収縮の封じ込めに踏み込もうとしている。

 たしかに、一連の対策によって中小零細企業の資金繰りは一息つく可能性はある。ところが市場の縮小と解消されないオーバープレイヤー状態による「供給過剰」という中小や地方企業が抱える構造的な問題を見るにつけ、抜本的な改善につながるかは懐疑的といわざるを得ない。

 それでなくても、原材料価格の高騰が最終価格への転嫁力の弱い中小業者の売り上げ、収益の悪化に拍車をかけ、事業者向け金融(商工ローン)や消費者金融という中小業者にとっては”最後の砦”さえも、改正貸金業法の改正によって失っている。すでに、ビジネスモデルの行き詰まりと資金調達環境の悪化がさらなる倒産増加を招くという悪循環に陥っているだけに、信用収縮の負の連鎖を断ち切るのは容易ではない。

 一方の金融機関も、公的資金の注入があったとしてもこれだけ中小企業の体力が疲弊しきっていては、一気に資金供給が円滑になるとは思えない。たしかに、国内のみで営業を展開する地域金融機関は公的資金によって自己資本が厚くなる分だけ貸出金などのリスクアセットの拡大は可能になるが、融資の審査基準が変わらなければ中小零細企業にカネは回らず、多くの金融機関ではいまだにリスクテイク能力も備わってはいないのが実状だ。

 今回の公的資金注入は再編促進を目的から除外してはいるが、「実際、単独で手を挙げるところがどれだけあるのか。やはり再編をセットにした注入が現実的」(金融関係者)との見方が大勢を占め、そうであれば融資先の選別は避けられない。さらに、金融機関は前回のバブルの教訓もあってか、極力エクスポージャーを抑えて、早めに貸出先の債務者区分を引き下げて回収するという融資スタンスが定着している。やはり、公的救済策の効果も残念ながら限定的といわざるを得ない。常軌を逸した株下落、円高も相まって不透明感は増幅し、中小零細、地方企業はさらに厳しい状況に立たされそうだ。

:2008:11/08/12:23  ++  ビッグ3、手元資金急減―GM、窮地に(グローバルGLOBAL)

 【ニューヨーク=武類雅典】ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターが七日発表した赤字決算で、ビッグスリー(米自動車大手三社)の苦境が浮き彫りになった。両社の手元資金は急速に流出しており、フォードはこの三カ月間で七十七億ドル(約七千五百億円)減少した。戦後最悪の販売不振でGMは窮地に直面している。合併協議中のGMとクライスラーの自力再建も限界に近づこうとしている。米民主党のオバマ次期大統領への権限移譲が始まる政府から公的資金をどれだけ引き出せるかが生き残りの焦点になりつつある。(1面参照)
 「世界の自動車産業にとって困難な時代だ。今の下降局面を乗り切るため、必要な手を打っていく」。フォードのアラン・ムラーリー社長は七日、九月に米国で起きた金融危機後の需要冷え込みに警戒感を示した。
 金融危機の影響が一部しか入っていない同社の七―九月期決算でも、北米販売台数は前年同期比約三割減と大幅に落ち込んだ。全体で九十億ドル(約九千億円)もの大幅減収に陥る最大の原因になった。欧州など他地域にも販売不振が広がることは必至で、先行きは厳しい。
 問題は生き残りを左右する手元資金の減少だ。六月末の二百六十六億ドルから、九月末は百八十九億ドルに減少。運転資金として必要とされる百億ドルは上回っているが、この三カ月間は毎月約二十五億ドル超、計七十七億ドル(約七千五百億円)の手元資金が消えていった計算だ。
 今回の決算発表では、信用融資枠が百七億ドル残っていることを公表。それを含めれば三百億ドルの手元流動性が確保できることを強調した。需要低迷が深刻になる中、「資金ショート」懸念を消し去るため、コスト削減や資産売却で手元資金を百四十億―百七十億ドル増やす計画も打ち出した。
 GMはもっと苦しい。七月に発表した手元流動性改善計画の前提は米新車販売台数が今年も来年も千四百万台。しかし、金融危機後が直撃した十月は年率換算で千五十六万台。一九八三年以来の低水準となり、今年の販売台数は千四百万台を割ることが濃厚だ。
 「戦後最悪の販売状況」(GM)の中、GMの販売台数は十月に前年同月比四五%減少。今まで一カ月で約十億ドルだった現金流出額が膨らんでいくのは確実だ。
 GMは運転資金として百十億―百四十億ドルの資金が必要だ。金融危機が発生してすぐ、四十五億ドルの契約済み融資枠を使い切ったが、米バークレイズ・キャピタルは「今年末には百五十九億ドルに減る」と予測する。新たな資金の出し手も見あたらず、手元資金は予定通り積み増せない。運転資金に事欠くようになるのは時間の問題だ。鳴り物入りで発表したばかりの新型の小型車の投入を遅らせる見方まで浮上している。
 GMは百億ドル超の手元資金を持つクライスラーとの合併協議を続けているが、合併効果を引き出すためのリストラには百億ドルがかかるともみられている。合併という起死回生策を選んでも、資金不安がついて回る。
【図・写真】米GMのテキサス州の工場=AP

:2008:11/08/12:17  ++  電機大手の集約始動、パナソニック、三洋買収方針、世界経済減速の荒波。

パナソニック(旧松下電器産業)による三洋電機の買収が実現すれば、売上高一兆円を超す国内電機大手がM&A(合併・買収)の対象になる初めての例となる。世界経済の急減速が予想されるなか、多数の企業がひしめく国内電機業界の過当競争体制は限界に近づきつつある。事業ごとの合従連衡という形で進んできた国内電機再編は今回の買収を機に大手同士の集約という新たな段階に移る。(1面参照)
 「世界的な優良企業をめざすため、もう一つの成長の柱が必要。三洋の事業領域には魅力ある技術があり、ベストパートナーだと考えた」。七日夜、大阪市で記者会見したパナソニックの大坪文雄社長はこう語った。
 パナソニックはプラズマテレビで世界首位、ビデオカメラで同三位だが、環境・エネルギー分野では出遅れている。リチウムイオン電池など充電池市場で世界首位の三洋を取り込むことで三年後には両社合わせて世界シェアが最大五割程度に達する見通しだ。
 一方の三洋は携帯電話事業の売却などで再建を進めてきた。それでも電池事業などを核に成長を続けるには資金力が不足。「パナソニックの支援を受け相乗効果を発揮する」(佐野精一郎社長)という道を選択した。
 パナソニック、ソニー、シャープ、三洋の家電大手や総合電機の日立製作所、東芝、三菱電機、情報機器が中心のNEC、富士通という大手九社が似た製品を抱えて競い合ってきた国内電機業界。そんな過当競争ぶりが一九八〇年代ごろまでは激しい価格競争を通じて世界シェア拡大に貢献したものの、韓国、台湾勢など低コストのライバル登場で重荷に変わる。
 半導体や薄型テレビパネルなどの個別事業の再編はそうした環境変化への答えだった。しかし米欧発の金融危機を機に企業変革を上回る速度で経済環境が変化。今期の黒字化を見込んだソニーの液晶テレビ事業は数百億円規模の赤字になる見通しとなったほか、東芝の半導体部門は〇八年四―九月期に六百億円近い営業赤字になった。
 成長性が高い分、需要にブレーキがかかれば大幅な供給過剰になり、不況の谷も深くなるのが電機産業の常。そんな業界の中で世界的な「勝ち組」に分類される企業の共通項は不況時にも多額の投資を継続できる財務基盤の強さだ。米インテル、米シスコシステムズ、韓国サムスン電子などはいずれも自己資本比率が六―七割に達する。
 五割超のパナソニックを除けば、二―三割にとどまる国内電機大手は今回の世界景気の失速を乗り越えられるのか。三洋のパナソニック傘下入りは各社にそんな問いを投げかけることになる。

:2008:11/05/09:51  ++   金融危機、「売り手市場」ムード消え、就活一転荒れ模様、内定取り消しも

数年来「売り手市場」とされた就職戦線に金融危機や株式相場の混乱が影を落とし始めた。景気の悪化を心配する企業が一転して求人の絞り込みや内定取り消しに動く事態になっている。危機感を強める大学は就職活動が本格化する三年生向けの講座に急きょ、経営状況を読み取る内容を盛り込むなど逆風への対応を強化。学生からは「影響が読みきれない」と不安の声が相次いでいる。
 「上場企業も経済情勢次第で、どうなるか分からない」「従業員が短期間に急激に減った場合、経営などに問題のある会社と考えた方が適切」――。大阪府立大(堺市)が就職を希望する三年生向けに二十九日開いた講座は、講師の厳しい言葉に緊張した空気が流れた。
 毎年十月から開催する講座は、各業界の特徴や現状を説明する「業界研究」などが中心だった。昨春の卒業生が、就職先の英会話学校の経営破綻に巻き込まれたことから、「危ない企業の見分け方」を新たなテーマに加えたが、世界的な金融危機と重なって注目が高まったためか会場は約二百人の学生であふれた。
 財務諸表などから経営状態をつかむノウハウを教わった女子学生(20)は「金融の世界に関心があったが、このまま活動を進めていいか不安」。食品会社を希望する女子学生(21)は「一つの業種に絞るのはやめて、色々な仕事を選択肢として考えたい」と話す。
 関西学院大(兵庫県西宮市)も十一月、三年生を対象に、景気と企業の採用活動の関連性を題材にしたセミナーを初めて開く予定。「就職が比較的順調だった四年生の体験談は参考にならない。状況が変化したという現実を伝えたい」(同大学キャリアセンター)
 かろうじて「売り手市場」とされた四年生の足元も揺らいでいる。同大学キャリアセンターには十月、地方の大手不動産販売会社に来春の採用が決まっていた学生二人から「経済情勢の変化を理由に内定が取り消された」と報告があった。
 昨年の秋には、採用の追加募集の情報も大学側に寄せられたが、「今年は少ない」という。
 安田女子大(広島市)でも地元の建築関連企業に就職の決まっていた学生の内定が取り消しに。キャリアセンターの谷俊之課長は「景気悪化の影響がさらに広がるかもしれない」と困惑する。
 高校生の状況はより深刻だ。大阪市立鶴見商業高校では、九月にあった求人企業一斉の試験では、就職希望者の七割が希望する会社に内定したが、十月の試験では各企業が採用枠を絞ったことなどから五割に減った。
 進路指導担当の黒田誠教諭(45)は「希望者全員が就職できた昨年と違い、厳しい環境が続きそうだ」と心配する。

:2008:11/05/09:49  ++  経済対策具体化、乱れる足並み、政府・与党内、給付金設計や道路財源配分。

麻生太郎首相自ら発表した追加経済対策を巡り政府・与党内の足並みが乱れている。総額二兆円の定額給付金は全世帯支給の首相方針にばらまき批判の懸念が生じ、所得制限を設ける方向になった。道路特定財源のうち一兆円分を地方に移譲する首相指示も、地方にどれだけ手厚くするかで解釈が紛糾している。衆院解散・総選挙を見据え、細部の詰めなしに急ごしらえで打ち出したツケが回ってきたといえる。(1面参照)
 四日の各閣僚の記者会見はさながら「閣内不一致」の様相となった。
 与謝野馨経済財政担当相が「生活支援を必要としない世帯への支援は論理的におかしい」と所得制限を主張すると、鳩山邦夫総務相は「法改正をやる時間があるのか。スピードを重視すべきだ」と指摘。中川昭一財務・金融相も同調した。
 当の首相は記者団に「生活に困っているところに出すんであって豊かなところに出す必要はない」と理解を示したが、「具体的にどうやるか技術的に難しい」とも。その後、再び記者団に真意をただされると「自主申告するとか、色々なことを考えないといけない。ただスピードは急ぐね。両方うまくやるようにみんなで考えるんだよ」と述べた。
 追加対策取りまとめを実質的に仕切った与謝野氏はさらに動いた。自民党本部で所得制限慎重派の園田博之政調会長代理、柳沢伯夫党国際金融危機対応プロジェクトチーム座長らと談判。政府・与党として正式に検討することで押し切った。
 今後は与謝野氏の提唱するように、地方自治体の窓口で自己申告で所得証明する方式を軸に検討する。ただ線引きをする年収はいくらなのか、窓口確認でどんな要件を設定するのか、など具体案の検討はこれからだ。
 給付金の制度設計が複雑になれば、今年度第二次補正予算案の今国会提出も難しくなる可能性がある。来年の通常国会に来年度予算案とともに提出するなら、首相が視野に入れる「二次補正の今国会提出、会期延長、状況に応じ解散」とのシナリオは消えてしまう。
 首相と与謝野氏らが政治日程も含めた厳密な腹合わせをした形跡は見えない。河村建夫官房長官は四日の記者会見で二次補正の提出時期に関し「まだ決まっていない」と述べるにとどまった。
 一方、来年度予算編成に向け迷走気味になっているのが、一般財源化する道路特定財源から一兆円分を地方に移すとした首相指示の扱いだ。
 鳩山氏は会見で「一兆円と七千億円は完全に別枠という理解で進んでいる」と指摘した。現行では国の財源から約七千億円が地方道路整備臨時交付金として地方に配られているが、それを維持したまま一兆円を別枠として確保する考え方だ。
 だが、与謝野氏は二日のNHK番組で「一兆七千億円だとみんな思うけれど、残るのは一兆円だけだ」と明言。給付金の所得制限問題とは攻守ところを変えた構図だ。
 首相は「地方の取り分が増えるという話でないと意味がない」と述べるだけでやはり「中立」のスタンスだ。
 打ち出しの歯切れの良さにはこだわるが、細部には執着しないのが「麻生流」。だが、政府・与党内で収拾できなければ、ツケを一身にかぶることになる。