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:2011:05/02/12:00 ++ 第1部危機からの再出発(1)政官民、甘かった備え(新しい日本へ)
巨大地震、大津波、そして原発事故――。東日本大震災は想像を絶する被害をもたらし、危機は今なお進行中だ。それでも、少しずつ、復興への営みが始まった。元どおりにするのではない。教訓を生かして創り上げるのは、新しい国、新しい日本だ。(敬称略、「新しい日本へ」取材班)
津波の被害が深刻だった岩手県山田町の船越地区。地元の主婦、竹内伸子(48)は思い出す。「子どものころ、防波堤のあたりには家を建てちゃいけないって先生から教えられた。津波は戦争より恐ろしい、と」
同地区は1896年の明治三陸地震で津波被害を受け、当時の助役が住民を高台に移住させた。水産養殖業の山崎冨美男(63)は言う。「みんなね、昔のことは忘れちゃうんだよ」。いつしか便利な海辺近くに再び町営住宅がたち、住居が集まった。その大半が今回の津波にのみ込まれた。
同県宮古市の姉吉地区。明治、昭和に大津波で2度全滅した集落には、海から数十メートルの高さにある細道に石碑がたつ。「想へ惨禍の大津浪/此処より下に家を建てるな/(中略)/幾歳経るとも要心あれ」
刻まれた先人の教えを住民は守り、今回の津波で住宅被害はなかった。ただ、姉吉のように教訓が生きる例は少ない。誰しもが「まさかここまでは来るまい」と考える。
指摘された危険
日本は安全な国、とみなが思っている。「安全神話にすぎない」と戒めを込めても、具体的な備えには至らない。
自民党政権時の2009年6月、経済産業省で開いた総合資源エネルギー調査会。「869年の貞観地震で、想定とは比べものにならない巨大な津波が来ている」。産業技術総合研究所の活断層・地震研究センター長、岡村行信(56)は福島第1原子力発電所の危険性を繰り返し指摘した。
東京電力の担当者の答えは「研究的な課題としてとらえるべきだ」という素っ気ない内容だった。それから2年足らず。福島第1原発事故の原因を東電は「想定外」とした。だが「想定」は間違いなくあった。直視してこなかっただけだ。
失敗学で有名な東大名誉教授の畑村洋太郎(70)は言う。「見たくないものは見ない。考えたくないことは考えない。米国は考えようと努力する国。日本は考えないままにしておく国」
訓練役に立たず
想定を厳しくすれば、対応策にコストと時間がかかる。危険性を正面から取り上げれば、地元に「絶対安全」と説明してきた建前が崩れる。資源のない日本で、国策である原発推進を担う東電にとっても、政府にとっても、これ以上「見たくないもの」はなかった。
最悪を考えない危機対策には限界がある。「福島原発が全電源を失ったらどうなるか」。昨年11月、東電は福島県でそんな想定の避難訓練をした。ただ、原子炉の冷却機能を失ってから数時間後には非常用電源が回復するというシナリオだった。住民からは「訓練なんて何の役にも立たなかった」との声がもれる。
地元が求めていた避難用道路の整備も進んでおらず、今回の避難では15分ほどで行ける道が渋滞で2時間以上かかった。
ひとたび危機が起きれば、日本各地に、世界に連鎖する。震源から距離がある首都圏も、帰宅難民や物資の買いだめなど、思わぬ混乱に悩まされた。
震災直後、東京証券取引所には投資家の換金売りが殺到。東証1部の売買高は3月15日には過去最高の約58億株に達した。処理能力を超えればシステムは突然止まる。市場機能が停止すれば混乱は世界に及ぶ。「もしシステムを更新していなかったら……」。東証幹部らは冷や汗を流した。処理能力を大幅に高めた新システムを稼働したのは1年前のことだった。
危機管理の基本は平時における危機の認識と事前の準備にある。そして想定外の事態が起きても被害を最小化する柔軟な「構え」が欠かせない。
政治家も、官僚も、企業も甘かった。次の世代へ教訓を刻むのは今しかない。
(上から)3月11日、宮城県の沿岸をのみ込む大津波/同日、歩いて都心の職場から帰宅する人たち/同24日、爆発で建屋が壊れている福島第1原発4号機=無人機で撮影、エアフォートサービス提供
福島第1原子力発電所の復旧作業に従事する東京電力の協力会社社員が、社長にあてた手紙がある。4月中旬のことだ。「免震重要棟は狭くて息苦しい。食事も立ったまま。(トイレの水が流せず)臭気もきつく、つらい……」
現場では今も約1400人が作業にあたる。環境は少しずつ、改善しているというが、被曝(ひばく)の危険と背中合わせの作業が続く。自己犠牲に頼る危機対応は本来、あるべき姿ではない。
首相の菅直人(64)は原発事故の調査委員会を5月中旬をメドに発足させる。政府の中央防災会議は地震・津波対策強化の検討に入った。甘かった想定の見直しは必要だが、あらゆる災害を防潮堤などの社会資本だけで防ぐのには限界がある。コストとの兼ね合いを直視し、非常時の訓練や法整備など、ハードとソフトを組み合わせた取り組みが、危機に強い国をつくる。
事故後指揮委員会――。原発大国、フランスにある組織だ。放射能漏れ事故などが起これば電力公社に代わって対応に当たる。各省庁や軍を指揮下に置き、住民の避難から放射性廃棄物の処理まで一元的に担う。仏原子力安全委員会副委員長のラショム(51)は「事故は必ず起きるという考え方こそが危機管理」と話す。それは原発に限らない。
米大統領のオバマ(49)は4月末、アラバマなど南部3州の知事の要請を受け、大規模災害宣言を出した。この地域を襲った竜巻の被害に対処するためだ。
宣言により、医療費やがれきの片付けなどへの連邦予算の予備費の支出が自動的に認められる。事態が悪化すれば知事は州軍による戒厳令を敷くことも可能。戒厳令下では私権は停止され、住民の強制排除、建物の事前許諾なしの取り壊しなどができる。
戦争や内乱でなく大規模な自然災害を「国家の非常事態」として、政府の強い権限行使を包括的に認める国は少なくない。しかし、日本にはそうした規定が事実上、ない。
「災害対策基本法で国が強制して生活物資を配給できないか」。大震災の被災地でガソリンや医薬品の不足が叫ばれた際、与野党内で一時、こんな案がでた。ただ同法が政令による強権発動を認めているのは国会閉会中だけ。国民の私権制限への慎重論もあって立ち消えになった。
「東海、東南海、南海の連動地震や首都直下地震が起きたとき、現行制度のままで対応できるのか」。拓殖大大学院教授の森本敏(70)は、民間から物資やタンクローリーなどの輸送手段を強制的に集めることなどができる緊急事態基本法の制定を提唱する。
新型インフルエンザの大流行や朝鮮半島有事――。想定すべき事態はほかにもある。危機への備えは社会全体で取り組むテーマだ。タブーを排して議論を進めないと、万が一の時、超法規的措置で対応せざるを得なくなる。
津波の被害が深刻だった岩手県山田町の船越地区。地元の主婦、竹内伸子(48)は思い出す。「子どものころ、防波堤のあたりには家を建てちゃいけないって先生から教えられた。津波は戦争より恐ろしい、と」
同地区は1896年の明治三陸地震で津波被害を受け、当時の助役が住民を高台に移住させた。水産養殖業の山崎冨美男(63)は言う。「みんなね、昔のことは忘れちゃうんだよ」。いつしか便利な海辺近くに再び町営住宅がたち、住居が集まった。その大半が今回の津波にのみ込まれた。
同県宮古市の姉吉地区。明治、昭和に大津波で2度全滅した集落には、海から数十メートルの高さにある細道に石碑がたつ。「想へ惨禍の大津浪/此処より下に家を建てるな/(中略)/幾歳経るとも要心あれ」
刻まれた先人の教えを住民は守り、今回の津波で住宅被害はなかった。ただ、姉吉のように教訓が生きる例は少ない。誰しもが「まさかここまでは来るまい」と考える。
指摘された危険
日本は安全な国、とみなが思っている。「安全神話にすぎない」と戒めを込めても、具体的な備えには至らない。
自民党政権時の2009年6月、経済産業省で開いた総合資源エネルギー調査会。「869年の貞観地震で、想定とは比べものにならない巨大な津波が来ている」。産業技術総合研究所の活断層・地震研究センター長、岡村行信(56)は福島第1原子力発電所の危険性を繰り返し指摘した。
東京電力の担当者の答えは「研究的な課題としてとらえるべきだ」という素っ気ない内容だった。それから2年足らず。福島第1原発事故の原因を東電は「想定外」とした。だが「想定」は間違いなくあった。直視してこなかっただけだ。
失敗学で有名な東大名誉教授の畑村洋太郎(70)は言う。「見たくないものは見ない。考えたくないことは考えない。米国は考えようと努力する国。日本は考えないままにしておく国」
訓練役に立たず
想定を厳しくすれば、対応策にコストと時間がかかる。危険性を正面から取り上げれば、地元に「絶対安全」と説明してきた建前が崩れる。資源のない日本で、国策である原発推進を担う東電にとっても、政府にとっても、これ以上「見たくないもの」はなかった。
最悪を考えない危機対策には限界がある。「福島原発が全電源を失ったらどうなるか」。昨年11月、東電は福島県でそんな想定の避難訓練をした。ただ、原子炉の冷却機能を失ってから数時間後には非常用電源が回復するというシナリオだった。住民からは「訓練なんて何の役にも立たなかった」との声がもれる。
地元が求めていた避難用道路の整備も進んでおらず、今回の避難では15分ほどで行ける道が渋滞で2時間以上かかった。
ひとたび危機が起きれば、日本各地に、世界に連鎖する。震源から距離がある首都圏も、帰宅難民や物資の買いだめなど、思わぬ混乱に悩まされた。
震災直後、東京証券取引所には投資家の換金売りが殺到。東証1部の売買高は3月15日には過去最高の約58億株に達した。処理能力を超えればシステムは突然止まる。市場機能が停止すれば混乱は世界に及ぶ。「もしシステムを更新していなかったら……」。東証幹部らは冷や汗を流した。処理能力を大幅に高めた新システムを稼働したのは1年前のことだった。
危機管理の基本は平時における危機の認識と事前の準備にある。そして想定外の事態が起きても被害を最小化する柔軟な「構え」が欠かせない。
政治家も、官僚も、企業も甘かった。次の世代へ教訓を刻むのは今しかない。
(上から)3月11日、宮城県の沿岸をのみ込む大津波/同日、歩いて都心の職場から帰宅する人たち/同24日、爆発で建屋が壊れている福島第1原発4号機=無人機で撮影、エアフォートサービス提供
福島第1原子力発電所の復旧作業に従事する東京電力の協力会社社員が、社長にあてた手紙がある。4月中旬のことだ。「免震重要棟は狭くて息苦しい。食事も立ったまま。(トイレの水が流せず)臭気もきつく、つらい……」
現場では今も約1400人が作業にあたる。環境は少しずつ、改善しているというが、被曝(ひばく)の危険と背中合わせの作業が続く。自己犠牲に頼る危機対応は本来、あるべき姿ではない。
首相の菅直人(64)は原発事故の調査委員会を5月中旬をメドに発足させる。政府の中央防災会議は地震・津波対策強化の検討に入った。甘かった想定の見直しは必要だが、あらゆる災害を防潮堤などの社会資本だけで防ぐのには限界がある。コストとの兼ね合いを直視し、非常時の訓練や法整備など、ハードとソフトを組み合わせた取り組みが、危機に強い国をつくる。
事故後指揮委員会――。原発大国、フランスにある組織だ。放射能漏れ事故などが起これば電力公社に代わって対応に当たる。各省庁や軍を指揮下に置き、住民の避難から放射性廃棄物の処理まで一元的に担う。仏原子力安全委員会副委員長のラショム(51)は「事故は必ず起きるという考え方こそが危機管理」と話す。それは原発に限らない。
米大統領のオバマ(49)は4月末、アラバマなど南部3州の知事の要請を受け、大規模災害宣言を出した。この地域を襲った竜巻の被害に対処するためだ。
宣言により、医療費やがれきの片付けなどへの連邦予算の予備費の支出が自動的に認められる。事態が悪化すれば知事は州軍による戒厳令を敷くことも可能。戒厳令下では私権は停止され、住民の強制排除、建物の事前許諾なしの取り壊しなどができる。
戦争や内乱でなく大規模な自然災害を「国家の非常事態」として、政府の強い権限行使を包括的に認める国は少なくない。しかし、日本にはそうした規定が事実上、ない。
「災害対策基本法で国が強制して生活物資を配給できないか」。大震災の被災地でガソリンや医薬品の不足が叫ばれた際、与野党内で一時、こんな案がでた。ただ同法が政令による強権発動を認めているのは国会閉会中だけ。国民の私権制限への慎重論もあって立ち消えになった。
「東海、東南海、南海の連動地震や首都直下地震が起きたとき、現行制度のままで対応できるのか」。拓殖大大学院教授の森本敏(70)は、民間から物資やタンクローリーなどの輸送手段を強制的に集めることなどができる緊急事態基本法の制定を提唱する。
新型インフルエンザの大流行や朝鮮半島有事――。想定すべき事態はほかにもある。危機への備えは社会全体で取り組むテーマだ。タブーを排して議論を進めないと、万が一の時、超法規的措置で対応せざるを得なくなる。
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:2011:04/26/09:14 ++ 民主「反菅ムード」まん延、地方選敗北で執行部責任論、代表解任決議提出も。
統一地方選後半戦から一夜明けた25日、民主党内の小沢一郎元代表に近い議員を中心に、菅直人首相(党代表)や岡田克也幹事長らの責任を追及する動きが加速してきた。元代表系の議員は執行部をただすための両院議員総会開催を求め、26日にも署名集めを始める。27日には衆院当選1回の新人議員が党内グループを横断する形で増税反対の会合を開く。与党として初めて臨んだ地方選の敗北で、執行部責任論が党内各層に広がりつつある。
岡田幹事長は25日の役員会で「地方選の結果責任を感じている」と陳謝しながらも「いま与党としては東日本大震災と原発事故への対応を優先すべきだ」と語った。記者会見では「衆院選、参院選に勝てる態勢をつくらなければならない」と辞任を否定し、現体制のままで今後も政権運営にあたると表明した。
岡田氏が自らの責任に言及しながら続投の意向を強調したのは、すでに反執行部派の動きが顕在化していたからだ。
「菅政権が国民の支持を失っているのは明らかだ」「公明党との連携を軸とした連立政権を構築しなければならない」。25日、首相退陣を迫り、政権の枠組み変更を唱える「震災に対応できる連立政権に向けた総調和の会」の趣意書が議員会館に出回った。呼びかけ人には山岡賢次副代表のほか、筒井信隆農林水産副大臣ら政務三役、平田健二参院幹事長など党執行部も名を連ねる。
同日夜は小沢元代表が参院議員との会合で「与野党の枠を超えてなすべきことをすべきだ」と語った。
26日に初会合を開く「総調和の会」は両院議員総会の開催を求めることを申し合わせる見通しだ。党所属国会議員の3分の1以上の署名があれば両院総会は開会できるとの規定がある。
反執行部派は両院総会の開会要求が通れば、菅首相の党代表解任決議案を提出し、可決することを狙う。
27日には衆院当選1回議員が「『増税なき復興』を求める緊急会合」を開く。22日の党代議士会で執行部を批判した網屋信介衆院議員や、野田佳彦財務相を支持するグループの議員が呼びかけ人となり「消費税率引き上げは震災に乗じた財政当局によるドサクサ紛れの増税だ」と意思統一する構えだ。
地方代表を辞任することで執行部に圧力をかける動きもある。大阪府連の樽床伸二代表や熊本県連の松野頼久代表がすでに辞意を表明しており、今後も同様の例が続くとみられる。
これまでは小沢元代表に近いグループが中心だった執行部責任論は、統一地方選の敗北で一気に広がった。25日の党役員会では統一地方選を担当した石井一選挙対策委員長が辞表を提出したものの、慰留されて取り下げた。石井氏の辞任を認めれば、幹事長や代表にまで行きつきかねない「辞任ドミノ」に神経をつかったためだ。
被災地の復旧に必要な今年度第1次補正予算案が成立すれば、野党は一段と攻勢を強める構えをみせる。与党と野党の挟み撃ちにあう形で、首相の政権運営は険しさを増す。
岡田幹事長は25日の役員会で「地方選の結果責任を感じている」と陳謝しながらも「いま与党としては東日本大震災と原発事故への対応を優先すべきだ」と語った。記者会見では「衆院選、参院選に勝てる態勢をつくらなければならない」と辞任を否定し、現体制のままで今後も政権運営にあたると表明した。
岡田氏が自らの責任に言及しながら続投の意向を強調したのは、すでに反執行部派の動きが顕在化していたからだ。
「菅政権が国民の支持を失っているのは明らかだ」「公明党との連携を軸とした連立政権を構築しなければならない」。25日、首相退陣を迫り、政権の枠組み変更を唱える「震災に対応できる連立政権に向けた総調和の会」の趣意書が議員会館に出回った。呼びかけ人には山岡賢次副代表のほか、筒井信隆農林水産副大臣ら政務三役、平田健二参院幹事長など党執行部も名を連ねる。
同日夜は小沢元代表が参院議員との会合で「与野党の枠を超えてなすべきことをすべきだ」と語った。
26日に初会合を開く「総調和の会」は両院議員総会の開催を求めることを申し合わせる見通しだ。党所属国会議員の3分の1以上の署名があれば両院総会は開会できるとの規定がある。
反執行部派は両院総会の開会要求が通れば、菅首相の党代表解任決議案を提出し、可決することを狙う。
27日には衆院当選1回議員が「『増税なき復興』を求める緊急会合」を開く。22日の党代議士会で執行部を批判した網屋信介衆院議員や、野田佳彦財務相を支持するグループの議員が呼びかけ人となり「消費税率引き上げは震災に乗じた財政当局によるドサクサ紛れの増税だ」と意思統一する構えだ。
地方代表を辞任することで執行部に圧力をかける動きもある。大阪府連の樽床伸二代表や熊本県連の松野頼久代表がすでに辞意を表明しており、今後も同様の例が続くとみられる。
これまでは小沢元代表に近いグループが中心だった執行部責任論は、統一地方選の敗北で一気に広がった。25日の党役員会では統一地方選を担当した石井一選挙対策委員長が辞表を提出したものの、慰留されて取り下げた。石井氏の辞任を認めれば、幹事長や代表にまで行きつきかねない「辞任ドミノ」に神経をつかったためだ。
被災地の復旧に必要な今年度第1次補正予算案が成立すれば、野党は一段と攻勢を強める構えをみせる。与党と野党の挟み撃ちにあう形で、首相の政権運営は険しさを増す。
:2011:04/26/09:09 ++ 大震災日本を立て直す(7)東大教授吉川洋氏―財政の懸案、棚上げせず。
――震災が日本経済に大きな影響を与えています。
「すでに輸出が減って消費マインドも冷え込んでいる。原発問題に伴う風評被害で日本製品が敬遠されるなどの影響も出ている。今年前半は経済が下押しされるのは避けられない。ただ影響がパニック的かと言われると、そうではない。年後半からは復興需要も見込まれており、国際機関も来年の成長率は2%程度に戻ると見込んでいる」
「危惧しているのは現在の混乱に伴うマイナス効果が一過性で終わらないことだ。サプライチェーン(供給網)が寸断されて輸出企業は混乱に巻き込まれている。この間にも経済のグローバル化は進んでおり、日本製の部品などが海外製に代替される恐れがある。阪神大震災で打撃を受けた神戸港はシェアを釜山港などに奪われてしまった。復興は時間との闘いだ」
薄れる改革機運
――社会保障制度改革などに取り組む機運も薄れてしまっています。
「震災復興が重要なのは論をまたない。仮設住宅の建設などは最優先されるべきだ。しかし、社会保障制度改革や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題などを話し合う場合ではないという雰囲気でいいものか。こうした声に賛成するわけにはいかない」
「少子高齢化はゆっくりと進む静かな有事だ。1年たてば年金をもらい始める人は確実に増える。日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)比で200%に達しており、経済協力開発機構(OECD)は『未知の領域』という表現で警鐘を鳴らした。日本の中長期的な課題は厳然として我々の目の前にある。震災を理由に棚上げすることは許されない」
破綻の回避を
――復興予算で財政はさらに厳しさを増します。
「政府は第1次補正予算案を決めたが、第2次補正などの編成も予想され、歳出のやり繰りだけでは限界が来る。国債発行もやむを得ないが、長期金利が上昇して財政が行き詰まる事態になってしまっては困る。早いうちに税の裏付けを確保すべきだ」
「税の選択肢は複数ある。時限付きで資産課税や所得課税を強化したり、消費税を引き上げて数年後に社会保障財源に移行したりすることが考えられる。消費税の引き上げは早晩必要になり、議論から逃げてはいけない」
「一般歳出の半分以上を社会保障費が占めており、日本の財政問題は社会保障と裏表の関係にある。雇用保険を非正規社員に広げるなどの社会保障の機能強化は必要だ。その一方で、給付の効率化によって全体の伸びを抑制する視点も重要だ。効率化というと市場原理主義というレッテルを貼られることもあるが、それは建設的な議論の妨げだ。負担の引き上げに限界があるとすれば、どこかで譲る必要がある」
――復興の青写真をどう描きますか。
「関東大震災後の復興の過程で耐震耐火構造の『同潤会青山アパート』が登場した。これが現在のマンションのモデルになっている。帝都復興院を率いた後藤新平が必ずしもすべてをなし遂げたわけではないが、時代を先取りしようという気概で取り組んだ。東北は不幸にして大きな被害を受けたが、住宅や交通、医療も含めて未来を先取りした形で再生を進めなければならない。司令塔となる政治のリーダーシップが重要になる」(聞き手は渡辺康仁)
「すでに輸出が減って消費マインドも冷え込んでいる。原発問題に伴う風評被害で日本製品が敬遠されるなどの影響も出ている。今年前半は経済が下押しされるのは避けられない。ただ影響がパニック的かと言われると、そうではない。年後半からは復興需要も見込まれており、国際機関も来年の成長率は2%程度に戻ると見込んでいる」
「危惧しているのは現在の混乱に伴うマイナス効果が一過性で終わらないことだ。サプライチェーン(供給網)が寸断されて輸出企業は混乱に巻き込まれている。この間にも経済のグローバル化は進んでおり、日本製の部品などが海外製に代替される恐れがある。阪神大震災で打撃を受けた神戸港はシェアを釜山港などに奪われてしまった。復興は時間との闘いだ」
薄れる改革機運
――社会保障制度改革などに取り組む機運も薄れてしまっています。
「震災復興が重要なのは論をまたない。仮設住宅の建設などは最優先されるべきだ。しかし、社会保障制度改革や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題などを話し合う場合ではないという雰囲気でいいものか。こうした声に賛成するわけにはいかない」
「少子高齢化はゆっくりと進む静かな有事だ。1年たてば年金をもらい始める人は確実に増える。日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)比で200%に達しており、経済協力開発機構(OECD)は『未知の領域』という表現で警鐘を鳴らした。日本の中長期的な課題は厳然として我々の目の前にある。震災を理由に棚上げすることは許されない」
破綻の回避を
――復興予算で財政はさらに厳しさを増します。
「政府は第1次補正予算案を決めたが、第2次補正などの編成も予想され、歳出のやり繰りだけでは限界が来る。国債発行もやむを得ないが、長期金利が上昇して財政が行き詰まる事態になってしまっては困る。早いうちに税の裏付けを確保すべきだ」
「税の選択肢は複数ある。時限付きで資産課税や所得課税を強化したり、消費税を引き上げて数年後に社会保障財源に移行したりすることが考えられる。消費税の引き上げは早晩必要になり、議論から逃げてはいけない」
「一般歳出の半分以上を社会保障費が占めており、日本の財政問題は社会保障と裏表の関係にある。雇用保険を非正規社員に広げるなどの社会保障の機能強化は必要だ。その一方で、給付の効率化によって全体の伸びを抑制する視点も重要だ。効率化というと市場原理主義というレッテルを貼られることもあるが、それは建設的な議論の妨げだ。負担の引き上げに限界があるとすれば、どこかで譲る必要がある」
――復興の青写真をどう描きますか。
「関東大震災後の復興の過程で耐震耐火構造の『同潤会青山アパート』が登場した。これが現在のマンションのモデルになっている。帝都復興院を率いた後藤新平が必ずしもすべてをなし遂げたわけではないが、時代を先取りしようという気概で取り組んだ。東北は不幸にして大きな被害を受けたが、住宅や交通、医療も含めて未来を先取りした形で再生を進めなければならない。司令塔となる政治のリーダーシップが重要になる」(聞き手は渡辺康仁)
:2011:04/26/09:09 ++ 大震災日本を立て直す(7)東大教授吉川洋氏―財政の懸案、棚上げせず。
――震災が日本経済に大きな影響を与えています。
「すでに輸出が減って消費マインドも冷え込んでいる。原発問題に伴う風評被害で日本製品が敬遠されるなどの影響も出ている。今年前半は経済が下押しされるのは避けられない。ただ影響がパニック的かと言われると、そうではない。年後半からは復興需要も見込まれており、国際機関も来年の成長率は2%程度に戻ると見込んでいる」
「危惧しているのは現在の混乱に伴うマイナス効果が一過性で終わらないことだ。サプライチェーン(供給網)が寸断されて輸出企業は混乱に巻き込まれている。この間にも経済のグローバル化は進んでおり、日本製の部品などが海外製に代替される恐れがある。阪神大震災で打撃を受けた神戸港はシェアを釜山港などに奪われてしまった。復興は時間との闘いだ」
薄れる改革機運
――社会保障制度改革などに取り組む機運も薄れてしまっています。
「震災復興が重要なのは論をまたない。仮設住宅の建設などは最優先されるべきだ。しかし、社会保障制度改革や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題などを話し合う場合ではないという雰囲気でいいものか。こうした声に賛成するわけにはいかない」
「少子高齢化はゆっくりと進む静かな有事だ。1年たてば年金をもらい始める人は確実に増える。日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)比で200%に達しており、経済協力開発機構(OECD)は『未知の領域』という表現で警鐘を鳴らした。日本の中長期的な課題は厳然として我々の目の前にある。震災を理由に棚上げすることは許されない」
破綻の回避を
――復興予算で財政はさらに厳しさを増します。
「政府は第1次補正予算案を決めたが、第2次補正などの編成も予想され、歳出のやり繰りだけでは限界が来る。国債発行もやむを得ないが、長期金利が上昇して財政が行き詰まる事態になってしまっては困る。早いうちに税の裏付けを確保すべきだ」
「税の選択肢は複数ある。時限付きで資産課税や所得課税を強化したり、消費税を引き上げて数年後に社会保障財源に移行したりすることが考えられる。消費税の引き上げは早晩必要になり、議論から逃げてはいけない」
「一般歳出の半分以上を社会保障費が占めており、日本の財政問題は社会保障と裏表の関係にある。雇用保険を非正規社員に広げるなどの社会保障の機能強化は必要だ。その一方で、給付の効率化によって全体の伸びを抑制する視点も重要だ。効率化というと市場原理主義というレッテルを貼られることもあるが、それは建設的な議論の妨げだ。負担の引き上げに限界があるとすれば、どこかで譲る必要がある」
――復興の青写真をどう描きますか。
「関東大震災後の復興の過程で耐震耐火構造の『同潤会青山アパート』が登場した。これが現在のマンションのモデルになっている。帝都復興院を率いた後藤新平が必ずしもすべてをなし遂げたわけではないが、時代を先取りしようという気概で取り組んだ。東北は不幸にして大きな被害を受けたが、住宅や交通、医療も含めて未来を先取りした形で再生を進めなければならない。司令塔となる政治のリーダーシップが重要になる」(聞き手は渡辺康仁)
「すでに輸出が減って消費マインドも冷え込んでいる。原発問題に伴う風評被害で日本製品が敬遠されるなどの影響も出ている。今年前半は経済が下押しされるのは避けられない。ただ影響がパニック的かと言われると、そうではない。年後半からは復興需要も見込まれており、国際機関も来年の成長率は2%程度に戻ると見込んでいる」
「危惧しているのは現在の混乱に伴うマイナス効果が一過性で終わらないことだ。サプライチェーン(供給網)が寸断されて輸出企業は混乱に巻き込まれている。この間にも経済のグローバル化は進んでおり、日本製の部品などが海外製に代替される恐れがある。阪神大震災で打撃を受けた神戸港はシェアを釜山港などに奪われてしまった。復興は時間との闘いだ」
薄れる改革機運
――社会保障制度改革などに取り組む機運も薄れてしまっています。
「震災復興が重要なのは論をまたない。仮設住宅の建設などは最優先されるべきだ。しかし、社会保障制度改革や環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題などを話し合う場合ではないという雰囲気でいいものか。こうした声に賛成するわけにはいかない」
「少子高齢化はゆっくりと進む静かな有事だ。1年たてば年金をもらい始める人は確実に増える。日本の公的債務残高は国内総生産(GDP)比で200%に達しており、経済協力開発機構(OECD)は『未知の領域』という表現で警鐘を鳴らした。日本の中長期的な課題は厳然として我々の目の前にある。震災を理由に棚上げすることは許されない」
破綻の回避を
――復興予算で財政はさらに厳しさを増します。
「政府は第1次補正予算案を決めたが、第2次補正などの編成も予想され、歳出のやり繰りだけでは限界が来る。国債発行もやむを得ないが、長期金利が上昇して財政が行き詰まる事態になってしまっては困る。早いうちに税の裏付けを確保すべきだ」
「税の選択肢は複数ある。時限付きで資産課税や所得課税を強化したり、消費税を引き上げて数年後に社会保障財源に移行したりすることが考えられる。消費税の引き上げは早晩必要になり、議論から逃げてはいけない」
「一般歳出の半分以上を社会保障費が占めており、日本の財政問題は社会保障と裏表の関係にある。雇用保険を非正規社員に広げるなどの社会保障の機能強化は必要だ。その一方で、給付の効率化によって全体の伸びを抑制する視点も重要だ。効率化というと市場原理主義というレッテルを貼られることもあるが、それは建設的な議論の妨げだ。負担の引き上げに限界があるとすれば、どこかで譲る必要がある」
――復興の青写真をどう描きますか。
「関東大震災後の復興の過程で耐震耐火構造の『同潤会青山アパート』が登場した。これが現在のマンションのモデルになっている。帝都復興院を率いた後藤新平が必ずしもすべてをなし遂げたわけではないが、時代を先取りしようという気概で取り組んだ。東北は不幸にして大きな被害を受けたが、住宅や交通、医療も含めて未来を先取りした形で再生を進めなければならない。司令塔となる政治のリーダーシップが重要になる」(聞き手は渡辺康仁)
:2011:04/25/14:03 ++ 米軍将校も疑問の「逐次投入」 自衛隊、異例10万人動員の舞台裏
首相補佐官に自衛隊将官を任用せよ≫
懇意の米軍将校から質問された。
「東日本大震災の渦中に、日本に害意を抱く国家が侵攻もしくは特殊作戦部隊・工作員による騒擾(そうじょう)を敢行した際の防衛計画は当然、立案済みと思料する。が、大震災に自衛官10万人も動員して対処できるのか」
確かに、全自衛官の半数を大震災とはいえ非有事に関与させている現勢は、軍事合理性に照らし極めて異常な事態だ。「兵力の逐次投入」という、兵法の最下策を勘案しても、だ。自衛隊の名誉にかけて、きちんと説明した。
尋常でない10万人動員
「自衛隊最高指揮官・菅直人首相(64)の単なる大向こう受けを狙ったパフォーマンス=思い付き。動員は元々、大災害時の動員計画を立てていた自衛隊側の積算に依(よ)っていない。従って交代もままならない」
利敵行為になるので詳述できぬが「仮想敵正面」でさえ「かなり」割き、各地に割拠する「偉い自衛官」まで軒並み現地入りしているから驚く。未曽有の大災害に乗じ、某国が火に油を注ぐが如く、特殊作戦部隊や工作員を送り込み、日本各地で騒擾を起こす可能性は決して低くはない。日本経済をさらに劣化させられれば、ただでさえ意図的に減少させられている国防費を、長期にわたり低めに推移させることに成功するからだ。百歩譲って、可能性が低くとも、可能性が残るのであれば、必要な態勢を採らなければならない。それが安全保障の要諦ではないか。
ところが、大東亜戦争に敗れてこの方「起きてはならぬ事は起きぬ」「起きて欲しくない事は起きない」と、安全保障に関し、国家・国民をあげて思考停止してきた。国家・国民規模の思考停止については、今回の大震災をして「予想外」と、国民もメディアも衝撃を受けている惨状でも証明できている。
覚悟の「命令違反」
ここまで書いたとき、阪神・淡路大震災(1995年)で“活躍”した、と或(あ)る指揮官の武人としての覚悟が記憶によみがえった。発生直後、采配を振るった近畿地方などを統括する司令部・中部方面総監部(兵庫県)が隷下(れいか)部隊に「全偵察部隊を被災地に投入せよ」と命令下達した。だが、この指揮官は半分しか被災地に投入しなかった。担任区域は海岸線が長く、敵性国家の特殊作戦部隊・工作員が上陸しやすい環境にあったからだ。明らかに命令違反で、懲戒対象だ。しかし当時、総監部は修羅場(しゅらば)で、意見具申しても聞き入れられる状況ではなかった。この指揮官は「腹を括(くく)った」のであった。
今尚、左翼系市民活動家臭を強く残す菅氏には、こうした一自衛官の苦悩に感動・関心は起きまい。しかし、国家の宰相=自衛隊最高指揮官となると、無関心では済まされない。もっとも、斯(か)くなる安全保障への思考停止は民主党政権だけでなく、自民党を含む戦後歴代政権が放置し続けてきた国家的一大欠陥。具体的には、安全保障面で首相を直接補佐する自衛隊高級幹部=制服組首相補佐官が官邸に常駐していない現実に象徴される。為政者は平時から継続的に、自衛隊の装備・編成、能力とその限界など専門的助言を受けて初めて、有事でも総合力を遺憾なく発揮できる。だが、危機=臨時でさえ、制服組が最高指揮官に直接説明・意見する制度・慣習はもちろん、機会も無いに等しい。
致命的な「制度の欠落」
まともな国家では、軍人も政治をサポートする。例えば米国。大統領を補佐する国家安全保障会議=NSCはじめ▽安全保障に関しホワイトハウスを補佐する軍務室▽国家情報長官室▽国家テロ対策センター▽CIA=中央情報局▽国家安保局・中央安保サービス▽国家地球空間情報局▽国家偵察局などに、オバマ政権発足時には20人近い将軍が出向している。
これに比し、日本では首相の秘書官は官僚、補佐官は主に政治家から任命されるに過ぎぬ。
一方、米上下院で軍歴を有する議員は減少傾向ではあるが2~3割を占め、多くは外交・安保分野で活躍する。日本の国会で自衛官出身者は3人。首相や防衛相を自衛官が支えなければ、立法府も行政府も軍事の素人ばかりになってしまう。
米軍よりは自衛隊に近い規模のフランス軍も、大統領府の▽特別参謀部▽国内治安委員会事務局、首相府の▽軍事官房室▽国防事務総局、環境・持続的開発省の運輸総務監察局などで、調べた限りでは中佐から大将まで16人が勤務していた。特別参謀部は大統領の意思決定に資する軍事関連情報提供や助言を実施、国防省など関係省庁と連携する。国内治安委員会は大統領主宰の国内治安政策決定機関。軍事官房室や国防事務総局は首相を補佐、運輸総務監察局では国防関連分野の輸送について要求・管理・調整を行う。
日本の政治家は、外交・安保政策では「政治主導」を掲げる民主党政権も含め官僚にすがるが、自衛官の専門知識は直接活かさない。自衛官の知見に為政者が直接接する制度・配置の欠落は、国家の危機に際し迅速な決断を阻害する。天下り規制など、公務員制度改革では「官僚に対する政治の優位」が問われているが、自衛官を任用しない政治の在り方は「軍に対する政治の優位=文民統制」に自信がないことの証左でもある。(
懇意の米軍将校から質問された。
「東日本大震災の渦中に、日本に害意を抱く国家が侵攻もしくは特殊作戦部隊・工作員による騒擾(そうじょう)を敢行した際の防衛計画は当然、立案済みと思料する。が、大震災に自衛官10万人も動員して対処できるのか」
確かに、全自衛官の半数を大震災とはいえ非有事に関与させている現勢は、軍事合理性に照らし極めて異常な事態だ。「兵力の逐次投入」という、兵法の最下策を勘案しても、だ。自衛隊の名誉にかけて、きちんと説明した。
尋常でない10万人動員
「自衛隊最高指揮官・菅直人首相(64)の単なる大向こう受けを狙ったパフォーマンス=思い付き。動員は元々、大災害時の動員計画を立てていた自衛隊側の積算に依(よ)っていない。従って交代もままならない」
利敵行為になるので詳述できぬが「仮想敵正面」でさえ「かなり」割き、各地に割拠する「偉い自衛官」まで軒並み現地入りしているから驚く。未曽有の大災害に乗じ、某国が火に油を注ぐが如く、特殊作戦部隊や工作員を送り込み、日本各地で騒擾を起こす可能性は決して低くはない。日本経済をさらに劣化させられれば、ただでさえ意図的に減少させられている国防費を、長期にわたり低めに推移させることに成功するからだ。百歩譲って、可能性が低くとも、可能性が残るのであれば、必要な態勢を採らなければならない。それが安全保障の要諦ではないか。
ところが、大東亜戦争に敗れてこの方「起きてはならぬ事は起きぬ」「起きて欲しくない事は起きない」と、安全保障に関し、国家・国民をあげて思考停止してきた。国家・国民規模の思考停止については、今回の大震災をして「予想外」と、国民もメディアも衝撃を受けている惨状でも証明できている。
覚悟の「命令違反」
ここまで書いたとき、阪神・淡路大震災(1995年)で“活躍”した、と或(あ)る指揮官の武人としての覚悟が記憶によみがえった。発生直後、采配を振るった近畿地方などを統括する司令部・中部方面総監部(兵庫県)が隷下(れいか)部隊に「全偵察部隊を被災地に投入せよ」と命令下達した。だが、この指揮官は半分しか被災地に投入しなかった。担任区域は海岸線が長く、敵性国家の特殊作戦部隊・工作員が上陸しやすい環境にあったからだ。明らかに命令違反で、懲戒対象だ。しかし当時、総監部は修羅場(しゅらば)で、意見具申しても聞き入れられる状況ではなかった。この指揮官は「腹を括(くく)った」のであった。
今尚、左翼系市民活動家臭を強く残す菅氏には、こうした一自衛官の苦悩に感動・関心は起きまい。しかし、国家の宰相=自衛隊最高指揮官となると、無関心では済まされない。もっとも、斯(か)くなる安全保障への思考停止は民主党政権だけでなく、自民党を含む戦後歴代政権が放置し続けてきた国家的一大欠陥。具体的には、安全保障面で首相を直接補佐する自衛隊高級幹部=制服組首相補佐官が官邸に常駐していない現実に象徴される。為政者は平時から継続的に、自衛隊の装備・編成、能力とその限界など専門的助言を受けて初めて、有事でも総合力を遺憾なく発揮できる。だが、危機=臨時でさえ、制服組が最高指揮官に直接説明・意見する制度・慣習はもちろん、機会も無いに等しい。
致命的な「制度の欠落」
まともな国家では、軍人も政治をサポートする。例えば米国。大統領を補佐する国家安全保障会議=NSCはじめ▽安全保障に関しホワイトハウスを補佐する軍務室▽国家情報長官室▽国家テロ対策センター▽CIA=中央情報局▽国家安保局・中央安保サービス▽国家地球空間情報局▽国家偵察局などに、オバマ政権発足時には20人近い将軍が出向している。
これに比し、日本では首相の秘書官は官僚、補佐官は主に政治家から任命されるに過ぎぬ。
一方、米上下院で軍歴を有する議員は減少傾向ではあるが2~3割を占め、多くは外交・安保分野で活躍する。日本の国会で自衛官出身者は3人。首相や防衛相を自衛官が支えなければ、立法府も行政府も軍事の素人ばかりになってしまう。
米軍よりは自衛隊に近い規模のフランス軍も、大統領府の▽特別参謀部▽国内治安委員会事務局、首相府の▽軍事官房室▽国防事務総局、環境・持続的開発省の運輸総務監察局などで、調べた限りでは中佐から大将まで16人が勤務していた。特別参謀部は大統領の意思決定に資する軍事関連情報提供や助言を実施、国防省など関係省庁と連携する。国内治安委員会は大統領主宰の国内治安政策決定機関。軍事官房室や国防事務総局は首相を補佐、運輸総務監察局では国防関連分野の輸送について要求・管理・調整を行う。
日本の政治家は、外交・安保政策では「政治主導」を掲げる民主党政権も含め官僚にすがるが、自衛官の専門知識は直接活かさない。自衛官の知見に為政者が直接接する制度・配置の欠落は、国家の危機に際し迅速な決断を阻害する。天下り規制など、公務員制度改革では「官僚に対する政治の優位」が問われているが、自衛官を任用しない政治の在り方は「軍に対する政治の優位=文民統制」に自信がないことの証左でもある。(
:2011:04/25/09:13 ++ 統一地方選、民主退潮、首相求心力、一段と低下、「菅降ろし」再燃も。
2009年の政権交代後、初の統一地方選の前・後半戦と衆院愛知6区補欠選挙を通じて、民主党の不振が浮き彫りになった。菅直人首相の求心力が一段と低下するのは必至。民主党内の小沢一郎元代表に近い議員らの間では「菅降ろし」の機運が再燃しつつある。野党との協調により東日本大震災の復旧・復興を進めるという政府・与党の戦略も不透明感を増している。(1面参照)
首相は24日夜、首相公邸で民主党の岡田克也幹事長、輿石東参院議員会長らと会談した。東日本大震災の復旧費を盛り込んだ2011年度第1次補正予算案について野党側の協力を求め、5月2日までに成立させる方針を確認した。
●樽床氏、府連代表辞任の意向 民主党の石井一選挙対策委員長は24日夜、首相や岡田氏の責任論について「責任を取ることで党内が混乱する」と述べ、引責辞任を否定した。首相周辺は「国民は政局より大震災への迅速な対応を求めている」と指摘し「菅降ろし」の動きをけん制する。
ただ「菅降ろし」の動きは広がり始めている。民主党大阪府連の樽床伸二代表は25日未明、記者団に「目標にはるかに及ばなかった結果を重く受け止め、責任を取る覚悟だ」と述べた。敗北の責任を取るという名目で自ら身を引き、首相や党執行部にも自発的辞任を促す思惑がある。追随の構えを見せる議員もいる。
●小沢元代表、亀井氏と会談 小沢系議員は党両院議員総会の開催を求めて25日にも署名集めを開始する。開催には党所属国会議員の3分の1以上の署名が必要で、小沢系議員の一人は「人数確保にメドが付いている」としている。
元代表は24日夜、国民新党の亀井静香代表と都内で会談した。今後の政局を巡り意見交換したとみられる。
民主党内では「菅離れ」の雰囲気がじわりと広がりつつある。衆院補選では、民主党議員の辞任に伴う選挙であるにもかかわらず候補者を擁立できない「不戦敗」となった。
今回の統一選で民主党は当初、自民党の金城湯池である地方議会を切り崩し、支持基盤を強める作戦を描いていた。大阪府吹田市長選では民主党が推薦した現職が敗れるなど、国会議員にとって集票活動の手足となる地方議員や首長を増やせないことで、首相ら執行部への不満は少なくない。
ただ、「菅降ろし」戦略は決め手に欠く。福島第1原発の安定にはなお、6~9カ月は必要とされ、政治空白を作りにくいという事情に加え、「ポスト菅」の本命候補も不在。野党が提出する内閣不信任決議案が可決されるには、民主党から約80人が造反する必要があり、ハードルは高い。
1次補正を5月2日をメドに成立させたとしても、その後の復旧に関連した特別立法の審議や2次補正予算案の編成は先行きが見通せない。菅首相が自民党に呼び掛けた「大連立」は、自民党にとって菅首相の退陣が前提。底流に大連立構想が絡みながら、首相の進退を巡る党内抗争が激しさを増しそうだ。
首相は24日夜、首相公邸で民主党の岡田克也幹事長、輿石東参院議員会長らと会談した。東日本大震災の復旧費を盛り込んだ2011年度第1次補正予算案について野党側の協力を求め、5月2日までに成立させる方針を確認した。
●樽床氏、府連代表辞任の意向 民主党の石井一選挙対策委員長は24日夜、首相や岡田氏の責任論について「責任を取ることで党内が混乱する」と述べ、引責辞任を否定した。首相周辺は「国民は政局より大震災への迅速な対応を求めている」と指摘し「菅降ろし」の動きをけん制する。
ただ「菅降ろし」の動きは広がり始めている。民主党大阪府連の樽床伸二代表は25日未明、記者団に「目標にはるかに及ばなかった結果を重く受け止め、責任を取る覚悟だ」と述べた。敗北の責任を取るという名目で自ら身を引き、首相や党執行部にも自発的辞任を促す思惑がある。追随の構えを見せる議員もいる。
●小沢元代表、亀井氏と会談 小沢系議員は党両院議員総会の開催を求めて25日にも署名集めを開始する。開催には党所属国会議員の3分の1以上の署名が必要で、小沢系議員の一人は「人数確保にメドが付いている」としている。
元代表は24日夜、国民新党の亀井静香代表と都内で会談した。今後の政局を巡り意見交換したとみられる。
民主党内では「菅離れ」の雰囲気がじわりと広がりつつある。衆院補選では、民主党議員の辞任に伴う選挙であるにもかかわらず候補者を擁立できない「不戦敗」となった。
今回の統一選で民主党は当初、自民党の金城湯池である地方議会を切り崩し、支持基盤を強める作戦を描いていた。大阪府吹田市長選では民主党が推薦した現職が敗れるなど、国会議員にとって集票活動の手足となる地方議員や首長を増やせないことで、首相ら執行部への不満は少なくない。
ただ、「菅降ろし」戦略は決め手に欠く。福島第1原発の安定にはなお、6~9カ月は必要とされ、政治空白を作りにくいという事情に加え、「ポスト菅」の本命候補も不在。野党が提出する内閣不信任決議案が可決されるには、民主党から約80人が造反する必要があり、ハードルは高い。
1次補正を5月2日をメドに成立させたとしても、その後の復旧に関連した特別立法の審議や2次補正予算案の編成は先行きが見通せない。菅首相が自民党に呼び掛けた「大連立」は、自民党にとって菅首相の退陣が前提。底流に大連立構想が絡みながら、首相の進退を巡る党内抗争が激しさを増しそうだ。
:2011:04/25/09:06 ++ パソコン3割節電、マイクロソフト、自動プログラム配布―明るさ4割に抑制。
IT(情報技術)大手が夏場の電力不足に備えパソコンの節電策を打ち出す。日本マイクロソフトは消費電力を3割減らす自動変更プログラムを開発。NEC、富士通などと連携して企業や家庭に普及させる。東京電力管内には同社の基本ソフト(OS)を使うパソコンが2455万台あり、全てに導入すれば消費電力を33万キロワット減らせる。IT機器はオフィスビルのエネルギー消費の20%以上を占める。夏場に15%程度の節電を求められる企業はITの消費電力削減を急いでいる。(ITの消費電力は3面「きょうのことば」参照)
マイクロソフトと財団法人電力中央研究所の推計では、東電管内にある2455万台のパソコンの全消費電力は111万キロワット。全てのパソコンが省電力プログラムを導入すればその3割を節約できる。東電管内にある清涼飲料の自動販売機87万台を全て止めた場合を上回る節電が期待できるという。
東電は今夏の電力供給を5500万キロワットまで高めたい考えだが、昨年並みの猛暑となれば、なお500万キロワットが不足する。東電管内にあるパソコンが3割節電すれば不足分の約7%を捻出できる。IT機器の中では、業務継続のため停止や節電が難しいサーバーより、操作環境を細かく調節できるパソコンの方が節電余地は大きい。
マイクロソフトは電力中央研と協力し、OS「ウィンドウズ」を搭載したパソコンで、業務に支障がない範囲で最も省電力となる設定を割り出した。
画面の明るさを4割に抑制し、利用者の使い方に応じて電源を完全に落とす「シャットダウン」と、すぐ使える待機状態の「スリープ」を使い分ける。マイクロソフトはこうした省電力設定を自動で実行するプログラムを開発し、近く無償提供を始める。企業の場合、情報システム部門が社内のパソコンを一斉に省電力設定に切り替えることもできる。
NECや富士通などウィンドウズ搭載のパソコンを販売しているIT大手と連携し、東電管内のオフィスや家庭で普及させる。インターネットを介しマイクロソフトの自社サイトでプログラムを配布することも検討している。東電管内以外でも利用できるようにする。
NEC、富士通は独自の節電サービスも展開する。NECはITや空調機器の使用電力をリアルタイムで管理しオフィスの消費電力を2~3割削減できるパッケージ製品を開発する。
富士通は5月末に夜間に充電して昼間は内蔵バッテリーの電源に切り替える「ピークシフト機能」の専用ソフトを無償配布し、同社のほとんどの企業向けノートパソコンで同機能を利用できるようにする。
マイクロソフトと財団法人電力中央研究所の推計では、東電管内にある2455万台のパソコンの全消費電力は111万キロワット。全てのパソコンが省電力プログラムを導入すればその3割を節約できる。東電管内にある清涼飲料の自動販売機87万台を全て止めた場合を上回る節電が期待できるという。
東電は今夏の電力供給を5500万キロワットまで高めたい考えだが、昨年並みの猛暑となれば、なお500万キロワットが不足する。東電管内にあるパソコンが3割節電すれば不足分の約7%を捻出できる。IT機器の中では、業務継続のため停止や節電が難しいサーバーより、操作環境を細かく調節できるパソコンの方が節電余地は大きい。
マイクロソフトは電力中央研と協力し、OS「ウィンドウズ」を搭載したパソコンで、業務に支障がない範囲で最も省電力となる設定を割り出した。
画面の明るさを4割に抑制し、利用者の使い方に応じて電源を完全に落とす「シャットダウン」と、すぐ使える待機状態の「スリープ」を使い分ける。マイクロソフトはこうした省電力設定を自動で実行するプログラムを開発し、近く無償提供を始める。企業の場合、情報システム部門が社内のパソコンを一斉に省電力設定に切り替えることもできる。
NECや富士通などウィンドウズ搭載のパソコンを販売しているIT大手と連携し、東電管内のオフィスや家庭で普及させる。インターネットを介しマイクロソフトの自社サイトでプログラムを配布することも検討している。東電管内以外でも利用できるようにする。
NEC、富士通は独自の節電サービスも展開する。NECはITや空調機器の使用電力をリアルタイムで管理しオフィスの消費電力を2~3割削減できるパッケージ製品を開発する。
富士通は5月末に夜間に充電して昼間は内蔵バッテリーの電源に切り替える「ピークシフト機能」の専用ソフトを無償配布し、同社のほとんどの企業向けノートパソコンで同機能を利用できるようにする。
:2011:04/11/10:11 ++ 集―東日本大震災1ヵ月の闘い、原発、誤算重ね長期戦、想定以上の巨大津波、他。
東京電力福島第1原子力発電所の事故は3月11日の地震から1カ月を経て、なお収束の兆しが見えない。「冷温停止」と呼ばれる安定状態にするのに欠かせない冷却システムの復旧は周辺の高い放射線量に邪魔され、手間取っている。炉心の冷却水の水位低下による、まさかの燃料棒露出と破損、水素爆発、大量の汚染水の漏出――。誤算続きの展開に対応は後手に回った。負の連鎖を断ち切れるか、緊迫した状態は続く。
原子炉に本来備わっていた冷却機能を奪ったのは、地震後約30分で原発を襲った巨大津波による電源喪失だ。津波の高さは14~15メートル。福島第1原発で東電が想定していた高さ5・4~5・7メートルの2倍以上だった。今回、被害が最も大きかった1~4号機の原子炉建屋は海抜10メートル。同5、6号機の同13メートル、第2原発の同12メートルより低く、弱点を突かれた形となった。
地震で揺れを感じて原子炉は緊急自動停止し、発電のための核分裂反応は止まった。だが津波のために非常用発電機が使用不能となった。冷却機能を保つための電源をすべて失う緊急事態に陥ったのは約40年に及ぶ日本の原発商業利用史上、初の出来事だ。
緊急炉心冷却装置(ECCS)も、一度は起動したが電源喪失と同時にダウン。東電の事故対応策は最初から大きくつまずいた。にもかかわらず東電や原子力安全・保安院は「8時間は蓄電池で冷却水を循環させることができる。その間に電源車を配備する」と事態を楽観視していた。
東電は12日午前2時に「午前1時の炉心の水位は燃料棒より高く、安全水域」と説明。1号機で1・3メートル、2号機は3・6メートル、3号機は4・1メートル、それぞれ燃料棒よりも上にあるとしたが、計測器が正しい値を示していたか疑問は残る。
その後、原子炉内の圧力が上がり、放射性物質を含む水蒸気を外に放出する作業(ベント)を検討。ただ実際に1号機で放出したのは約9時間後の12日午前10時過ぎ。スイッチ1つで操作できるはずの弁は電源喪失で動かず、手動の作業は通常の1千倍という放射線量のために手間取った。
状況は悪化し、午後3時半過ぎに1号機で水素爆発が発生。3号機も水素爆発を起こし、2号機の圧力抑制室からも爆発音が聞かれた。関係者は事後対応に追われるばかりだった。
水素爆発などが発生源とみられる放射性物質は大気中や敷地内に飛散した。原発敷地内では猛毒のプルトニウムも検出された。風向きや降雨などの条件が重なって東京都の浄水場の水からも一時放射性ヨウ素が検出され、ペットボトルの水が買い占められる騒ぎになった。福島県や千葉県、茨城県産の葉物野菜が出荷停止に追い込まれた。
原子炉を冷やすため海水を注入したが、その弊害への懸念も浮上した。配管の目詰まりや腐食、こびりついた塩のために燃料棒が冷えにくくなるなどの問題を米国の専門家らも指摘。そこで真水に切り替えて1日600トン近くを注入し続けた。
ところが注いだ水が炉内から建屋、そして外部へと漏れるという問題が発覚。原子炉建屋の隣のタービン建屋地下、配管や電源ケーブルが通るトレンチ(坑道)、地下水があふれるのを防ぐサブドレインなどで、放射性物質で汚染された水が大量に見つかった。
汚染水は通常の冷却水の1万~100万倍の高濃度放射性物質を含む。4月2日、この汚染水がケーブルなどを収めた2号機のピット(立て坑)付近の亀裂から勢いよく海に注いでいるのを発見。ピットにコンクリートを流し込んだほか吸水性樹脂や新聞紙、おがくずまで入れたが流れは止まらなかった。冷却のために原子炉への注水を増やせば海の汚染も進む――。作業は難しさを増した。
汚染水はピットの中ではなく、その下の石の層を流れていたと判明するまでにほぼ3日を要した。4月6日になって、ようやく海への流出を止めた。しかし周辺の海からは一時、国の基準値の最高750万倍という高濃度の放射性物質が見つかり、漁業関係者らは懸念を深めた。
原発施設内にたまった汚染水約6万トンを減らさないと放射線量が高くて作業は危険すぎ、冷却システムの復旧など次の段階には進めない。東電は既存のタンクを「玉突き」で空にして処理する計画を進めた。さらに、汚染水の新たな保管先として海釣り公園として利用されていた人工浮島「メガフロート」を静岡市から譲り受けた。ただ、汚染水を入れるには水漏れがないよう改良も必要だ。
原発敷地内にもともとある集中廃棄物処理施設の活用も決めた。中に入っていた低濃度の汚染水を海に放出、代わりに高濃度汚染水を入れる前代未聞の手段に踏み切った。韓国やロシアから、事前の連絡が不十分だったと批判が相次いだ。
今後、汚染水対策が進んでも、原子炉の配管や設備が破損していれば期待通りに既存の冷却機能が戻らない懸念がある。その場合、仮設の冷却ルートを別途作り上げる必要がある。東電は外付けの熱交換器とつなげられる配管があるかどうかなど、調査を始めた。原子炉を冷温停止させるには、まだ数カ月はかかるとの見方が大半だ。
一方、米国の原子力規制委員会は「新たな水素爆発の危険性」を指摘。東電は原子炉格納容器の水素爆発を防ぐ目的で、不活性ガスの窒素を入れる作業を始めた。海外の情報も活用し、珍しく先手を打った行動に出たともいえる。
第1原発の事故を受け、電力各社は原発に新たに電源車の配備に動くなど非常時の電源確保策を強化し始めた。福島第1原発の事故が「夢であってくれたらいいのに」と原子力安全・保安院幹部は漏らすが、目の前で事態はなお進行しており長期戦は必至だ。もはや誤算は許されない。想像力を働かせ、少しでも先回りして対応する必要がある。
核分裂反応を利用してエネルギーを取り出す原子力発電所の中核装置。得られた熱エネルギーで大量の水を沸騰させ、発生する水蒸気でタービンを回して電気を得る。
炉の心臓部の炉心には核燃料をペレット状に固め、ジルコニウム合金製の筒に入れた燃料棒を多数束ねた燃料集合体が並ぶ。放射性物質が外に出ないよう、原子炉には何重もの「壁」がある。核燃料は厚さ約16センチメートルの鋼鉄製圧力容器に収め、その外側を鋼鉄製格納容器が囲い、それをコンクリート建屋で覆っている。
核燃料棒は原子炉で核分裂反応が進んでいる時はもちろん、運転停止後も熱を発し続けるため冷却水で過熱を防ぐ。電源喪失などにより水の供給が途絶えて温度が3000度近くに達すると燃料棒が溶け出し、崩れてどろどろになる炉心溶融が起きる恐れがある。
福島第1原発では1、2号機で燃料棒が激しく損傷し、一部溶融している可能性がある。溶け落ちた燃料が圧力容器を傷めて格納容器に達し、配管などを通して外部に大量の放射性物質を出している可能性もある。
水素は空気中の酸素と反応して爆発する。水素の濃度が4%以上になると爆発を起こす可能性が高まる。水素爆発を防ぐため、通常運転中の原子炉の格納容器は化学的に安定した窒素で満たされている。
福島第1原発の1号機や3号機では原子炉内が過熱、燃料棒を包むジルコニウム合金と高温の水蒸気が反応して水素が発生した。建屋の上部にたまった水素が爆発し、天井などを破壊した。水素は強い放射線と反応した水からも発生する。
原子炉の格納容器内にたまった水蒸気を、配管を通して建屋の外に排気すること。放射性物質を含んだ水蒸気が環境中に放出されるため、原子炉内の圧力を下げて損傷を防ぐ緊急措置といえる。
水蒸気を圧力抑制室の水に通して排気する「ウエット(湿式)ベント」と、そのまま排気する「ドライ(乾式)ベント」がある。ウエットベントだと水蒸気に含まれる放射性物質を減らせる。福島第1原発1号機などの水素爆発はベントの遅れが一因とされる。
原子炉の運転を止めて内部の温度がセ氏100度以下に下がり、圧力が大気圧近くになると原子炉は安定的に停止したことになる。原子炉が暴走する危険はなくなる。福島第1原発では地震発生時に定期点検中で止まっていた5、6号機は冷温停止状態にある。
ただ冷温停止後も燃料棒は崩壊熱を出し続ける。過熱による燃料棒の損傷などを防ぐために、冷却水を使って炉心だけでなく使用済み核燃料プールも冷やし続けなければならない。
原子炉に本来備わっていた冷却機能を奪ったのは、地震後約30分で原発を襲った巨大津波による電源喪失だ。津波の高さは14~15メートル。福島第1原発で東電が想定していた高さ5・4~5・7メートルの2倍以上だった。今回、被害が最も大きかった1~4号機の原子炉建屋は海抜10メートル。同5、6号機の同13メートル、第2原発の同12メートルより低く、弱点を突かれた形となった。
地震で揺れを感じて原子炉は緊急自動停止し、発電のための核分裂反応は止まった。だが津波のために非常用発電機が使用不能となった。冷却機能を保つための電源をすべて失う緊急事態に陥ったのは約40年に及ぶ日本の原発商業利用史上、初の出来事だ。
緊急炉心冷却装置(ECCS)も、一度は起動したが電源喪失と同時にダウン。東電の事故対応策は最初から大きくつまずいた。にもかかわらず東電や原子力安全・保安院は「8時間は蓄電池で冷却水を循環させることができる。その間に電源車を配備する」と事態を楽観視していた。
東電は12日午前2時に「午前1時の炉心の水位は燃料棒より高く、安全水域」と説明。1号機で1・3メートル、2号機は3・6メートル、3号機は4・1メートル、それぞれ燃料棒よりも上にあるとしたが、計測器が正しい値を示していたか疑問は残る。
その後、原子炉内の圧力が上がり、放射性物質を含む水蒸気を外に放出する作業(ベント)を検討。ただ実際に1号機で放出したのは約9時間後の12日午前10時過ぎ。スイッチ1つで操作できるはずの弁は電源喪失で動かず、手動の作業は通常の1千倍という放射線量のために手間取った。
状況は悪化し、午後3時半過ぎに1号機で水素爆発が発生。3号機も水素爆発を起こし、2号機の圧力抑制室からも爆発音が聞かれた。関係者は事後対応に追われるばかりだった。
水素爆発などが発生源とみられる放射性物質は大気中や敷地内に飛散した。原発敷地内では猛毒のプルトニウムも検出された。風向きや降雨などの条件が重なって東京都の浄水場の水からも一時放射性ヨウ素が検出され、ペットボトルの水が買い占められる騒ぎになった。福島県や千葉県、茨城県産の葉物野菜が出荷停止に追い込まれた。
原子炉を冷やすため海水を注入したが、その弊害への懸念も浮上した。配管の目詰まりや腐食、こびりついた塩のために燃料棒が冷えにくくなるなどの問題を米国の専門家らも指摘。そこで真水に切り替えて1日600トン近くを注入し続けた。
ところが注いだ水が炉内から建屋、そして外部へと漏れるという問題が発覚。原子炉建屋の隣のタービン建屋地下、配管や電源ケーブルが通るトレンチ(坑道)、地下水があふれるのを防ぐサブドレインなどで、放射性物質で汚染された水が大量に見つかった。
汚染水は通常の冷却水の1万~100万倍の高濃度放射性物質を含む。4月2日、この汚染水がケーブルなどを収めた2号機のピット(立て坑)付近の亀裂から勢いよく海に注いでいるのを発見。ピットにコンクリートを流し込んだほか吸水性樹脂や新聞紙、おがくずまで入れたが流れは止まらなかった。冷却のために原子炉への注水を増やせば海の汚染も進む――。作業は難しさを増した。
汚染水はピットの中ではなく、その下の石の層を流れていたと判明するまでにほぼ3日を要した。4月6日になって、ようやく海への流出を止めた。しかし周辺の海からは一時、国の基準値の最高750万倍という高濃度の放射性物質が見つかり、漁業関係者らは懸念を深めた。
原発施設内にたまった汚染水約6万トンを減らさないと放射線量が高くて作業は危険すぎ、冷却システムの復旧など次の段階には進めない。東電は既存のタンクを「玉突き」で空にして処理する計画を進めた。さらに、汚染水の新たな保管先として海釣り公園として利用されていた人工浮島「メガフロート」を静岡市から譲り受けた。ただ、汚染水を入れるには水漏れがないよう改良も必要だ。
原発敷地内にもともとある集中廃棄物処理施設の活用も決めた。中に入っていた低濃度の汚染水を海に放出、代わりに高濃度汚染水を入れる前代未聞の手段に踏み切った。韓国やロシアから、事前の連絡が不十分だったと批判が相次いだ。
今後、汚染水対策が進んでも、原子炉の配管や設備が破損していれば期待通りに既存の冷却機能が戻らない懸念がある。その場合、仮設の冷却ルートを別途作り上げる必要がある。東電は外付けの熱交換器とつなげられる配管があるかどうかなど、調査を始めた。原子炉を冷温停止させるには、まだ数カ月はかかるとの見方が大半だ。
一方、米国の原子力規制委員会は「新たな水素爆発の危険性」を指摘。東電は原子炉格納容器の水素爆発を防ぐ目的で、不活性ガスの窒素を入れる作業を始めた。海外の情報も活用し、珍しく先手を打った行動に出たともいえる。
第1原発の事故を受け、電力各社は原発に新たに電源車の配備に動くなど非常時の電源確保策を強化し始めた。福島第1原発の事故が「夢であってくれたらいいのに」と原子力安全・保安院幹部は漏らすが、目の前で事態はなお進行しており長期戦は必至だ。もはや誤算は許されない。想像力を働かせ、少しでも先回りして対応する必要がある。
核分裂反応を利用してエネルギーを取り出す原子力発電所の中核装置。得られた熱エネルギーで大量の水を沸騰させ、発生する水蒸気でタービンを回して電気を得る。
炉の心臓部の炉心には核燃料をペレット状に固め、ジルコニウム合金製の筒に入れた燃料棒を多数束ねた燃料集合体が並ぶ。放射性物質が外に出ないよう、原子炉には何重もの「壁」がある。核燃料は厚さ約16センチメートルの鋼鉄製圧力容器に収め、その外側を鋼鉄製格納容器が囲い、それをコンクリート建屋で覆っている。
核燃料棒は原子炉で核分裂反応が進んでいる時はもちろん、運転停止後も熱を発し続けるため冷却水で過熱を防ぐ。電源喪失などにより水の供給が途絶えて温度が3000度近くに達すると燃料棒が溶け出し、崩れてどろどろになる炉心溶融が起きる恐れがある。
福島第1原発では1、2号機で燃料棒が激しく損傷し、一部溶融している可能性がある。溶け落ちた燃料が圧力容器を傷めて格納容器に達し、配管などを通して外部に大量の放射性物質を出している可能性もある。
水素は空気中の酸素と反応して爆発する。水素の濃度が4%以上になると爆発を起こす可能性が高まる。水素爆発を防ぐため、通常運転中の原子炉の格納容器は化学的に安定した窒素で満たされている。
福島第1原発の1号機や3号機では原子炉内が過熱、燃料棒を包むジルコニウム合金と高温の水蒸気が反応して水素が発生した。建屋の上部にたまった水素が爆発し、天井などを破壊した。水素は強い放射線と反応した水からも発生する。
原子炉の格納容器内にたまった水蒸気を、配管を通して建屋の外に排気すること。放射性物質を含んだ水蒸気が環境中に放出されるため、原子炉内の圧力を下げて損傷を防ぐ緊急措置といえる。
水蒸気を圧力抑制室の水に通して排気する「ウエット(湿式)ベント」と、そのまま排気する「ドライ(乾式)ベント」がある。ウエットベントだと水蒸気に含まれる放射性物質を減らせる。福島第1原発1号機などの水素爆発はベントの遅れが一因とされる。
原子炉の運転を止めて内部の温度がセ氏100度以下に下がり、圧力が大気圧近くになると原子炉は安定的に停止したことになる。原子炉が暴走する危険はなくなる。福島第1原発では地震発生時に定期点検中で止まっていた5、6号機は冷温停止状態にある。
ただ冷温停止後も燃料棒は崩壊熱を出し続ける。過熱による燃料棒の損傷などを防ぐために、冷却水を使って炉心だけでなく使用済み核燃料プールも冷やし続けなければならない。
:2011:04/11/10:02 ++ 幻の国産原子力災害ロボット、安全神話でお蔵入り。
原発事故への国際協力で米国やフランスから原子力災害用のロボット提供の申し出があった。この知らせを東京工業大学のロボット研究者、広瀬茂男教授は歯がみする思いで聞いた。
実は1999年に茨城県東海村で起きた核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)の臨界事故の時も当時のクリントン米大統領からロボット貸与の申し出があり、ロボット大国を自負する日本のロボット研究者らは悔しい思いをした。
JCO事故の後に経済産業省は遠隔操作の災害対応ロボットの開発プロジェクトを発足させ、2000年の補正予算で30億円を投じたものの、約1年後に試作機をつくっただけで打ち切りとなった。「原子力災害ロボットが必要になる事態は日本では起きないから、必要ないと言われた」と広瀬教授は話す。
このとき参加したのは三菱重工業や東芝、日立製作所など原発関連企業で、6台が試作されたという。いま、1台は東北大学工学部の玄関にモニュメントとして飾られている。もう1台は「仙台市科学館に無理を言って引き取ってもらった」(田所諭・東北大教授)。残りは分解・廃棄されたかもしれない。
今回の福島の事故で、日本の技術者がやっているのは紙おむつ用樹脂やおがくずをトレンチ(坑道)に流して汚染水の流れを止めようとするような作業だ。ロボット研究者でなくても、「これが日本の技術水準の実態か」と嘆息する。
原子力災害の現場で働くロボットは放射線から電子回路を守る特殊な技術が要る。放射線を浴びると大規模集積回路(LSI)などは誤作動するためだ。耐放射線用LSIは注文生産的な色彩が濃く、普通の素子に比べ10倍以上高価だといわれる。
日本でおなじみの二足歩行ロボットはこうした部品を採用しておらず、使い物にならない。そもそも二足歩行は足場の不安定な場所での作業には向かない。原子力災害ロボットを実用化するには一度きりの試作では足りず、現実に近い環境で繰り返し試験、改良をしていかなければならない。
日立の中西宏明社長は「軍事技術を手掛けない日本は(核戦争への備えがある)米仏やロシアに比べてハンディキャップがある」と話す。米国などでは放射線だけでなく高温や、がれきだらけの場所など厳しい使用環境で働く軍事ロボットが数多くつくられている。
田所教授によると「フランスには耐放射線用のLSI専用工場まであり、国がロボット製造を支援する態勢がある」という。日本のメーカーも大きな開発費を得ていながら技術をお蔵入りさせたままなのは情けない。
原子力関係者はいわゆる「安全神話」を広めてきた。深刻な事故に至る前の段階でトラブルを食い止める手法はいろいろ工夫してきたかもしれない。しかし、起きてしまった後の対応については手薄だった。原子力災害ロボットの開発中断でも同じことが言える。
日本ロボット学会などロボット関連研究に携わる学術団体が4月4日に共同声明を出した。「東日本大震災と福島原子力災害への対策およびそれからの復興に対して国内外のロボット技術を早急に役立てるべく、日本ロボット技術関連団体は最先端のロボット技術とそれに関与する科学者・技術者を総動員」するという。ロボット研究者の自負と踏ん張りに期待したい。
実は1999年に茨城県東海村で起きた核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)の臨界事故の時も当時のクリントン米大統領からロボット貸与の申し出があり、ロボット大国を自負する日本のロボット研究者らは悔しい思いをした。
JCO事故の後に経済産業省は遠隔操作の災害対応ロボットの開発プロジェクトを発足させ、2000年の補正予算で30億円を投じたものの、約1年後に試作機をつくっただけで打ち切りとなった。「原子力災害ロボットが必要になる事態は日本では起きないから、必要ないと言われた」と広瀬教授は話す。
このとき参加したのは三菱重工業や東芝、日立製作所など原発関連企業で、6台が試作されたという。いま、1台は東北大学工学部の玄関にモニュメントとして飾られている。もう1台は「仙台市科学館に無理を言って引き取ってもらった」(田所諭・東北大教授)。残りは分解・廃棄されたかもしれない。
今回の福島の事故で、日本の技術者がやっているのは紙おむつ用樹脂やおがくずをトレンチ(坑道)に流して汚染水の流れを止めようとするような作業だ。ロボット研究者でなくても、「これが日本の技術水準の実態か」と嘆息する。
原子力災害の現場で働くロボットは放射線から電子回路を守る特殊な技術が要る。放射線を浴びると大規模集積回路(LSI)などは誤作動するためだ。耐放射線用LSIは注文生産的な色彩が濃く、普通の素子に比べ10倍以上高価だといわれる。
日本でおなじみの二足歩行ロボットはこうした部品を採用しておらず、使い物にならない。そもそも二足歩行は足場の不安定な場所での作業には向かない。原子力災害ロボットを実用化するには一度きりの試作では足りず、現実に近い環境で繰り返し試験、改良をしていかなければならない。
日立の中西宏明社長は「軍事技術を手掛けない日本は(核戦争への備えがある)米仏やロシアに比べてハンディキャップがある」と話す。米国などでは放射線だけでなく高温や、がれきだらけの場所など厳しい使用環境で働く軍事ロボットが数多くつくられている。
田所教授によると「フランスには耐放射線用のLSI専用工場まであり、国がロボット製造を支援する態勢がある」という。日本のメーカーも大きな開発費を得ていながら技術をお蔵入りさせたままなのは情けない。
原子力関係者はいわゆる「安全神話」を広めてきた。深刻な事故に至る前の段階でトラブルを食い止める手法はいろいろ工夫してきたかもしれない。しかし、起きてしまった後の対応については手薄だった。原子力災害ロボットの開発中断でも同じことが言える。
日本ロボット学会などロボット関連研究に携わる学術団体が4月4日に共同声明を出した。「東日本大震災と福島原子力災害への対策およびそれからの復興に対して国内外のロボット技術を早急に役立てるべく、日本ロボット技術関連団体は最先端のロボット技術とそれに関与する科学者・技術者を総動員」するという。ロボット研究者の自負と踏ん張りに期待したい。
:2011:04/11/09:53 ++ 統一地方選、民主惨敗、菅政権に打撃、知事選、民自対決で全敗―東京、石原氏
2009年の政権交代後、初めてとなる第17回統一地方選は10日、前半戦の12都道県知事選と4政令市長選、41道府県議選、15政令市議選が一斉に投開票された。民主党は自民党と実質的に対決した3知事選をすべて落とし、道府県議選でも獲得議席数で自民党を大幅に下回る惨敗を喫した。菅政権は大きな打撃を受けた。(統一地方選は3面「きょうのことば」参照)=関連記事3、4面、社会面に
都道県知事選では、東京で石原慎太郎氏(78)が4選、北海道で高橋はるみ氏(57)が3選するなど9人の現職が全員当選した。
民主は奈良、島根、大分の3知事選で候補者擁立を見送った。民主、自民対決型の東京、北海道、三重の3知事選は民主が全敗した。地域政党が勢いを増すなか、既存政党が選挙戦略を描きにくい背景もあった。
東京では石原氏を自民が実質支援。前宮崎県知事の東国原英夫氏(53)は無党派層の票をまとめきれず、都議会の民主会派が支援した居酒屋チェーン創業者の渡辺美樹氏(51)も支持を広げられなかった。
北海道の高橋氏は自民が推薦し、公明も支援。民主、社民、国民新各党が推薦した元農林水産省職員の木村俊昭氏(50)らとの争いを制した。民主の岡田克也幹事長の地元の三重では、自民、みんなの党が推薦した元経済産業省職員の鈴木英敬氏(36)が、民主推薦の前津市長の松田直久氏(56)を破った。
民主、自民両党の相乗りは12知事選の半数の6人に上り、全員が当選した。
新人では福岡で前内閣広報官の小川洋氏(61)、神奈川でジャーナリストの黒岩祐治氏(56)がそれぞれ共産党やみんなの党の推薦候補を破った。
政令市長選では札幌市で上田文雄氏(62)が3選。相模原市で加山俊夫氏(66)が再選した。静岡市で自民推薦の田辺信宏氏(49)、広島市で元厚生労働省職員の松井一実氏(58)の両新人が当選した。
東日本大震災の影響で、24日投開票の後半戦を含め全部で60の選挙を延期した。
都道県知事選では、東京で石原慎太郎氏(78)が4選、北海道で高橋はるみ氏(57)が3選するなど9人の現職が全員当選した。
民主は奈良、島根、大分の3知事選で候補者擁立を見送った。民主、自民対決型の東京、北海道、三重の3知事選は民主が全敗した。地域政党が勢いを増すなか、既存政党が選挙戦略を描きにくい背景もあった。
東京では石原氏を自民が実質支援。前宮崎県知事の東国原英夫氏(53)は無党派層の票をまとめきれず、都議会の民主会派が支援した居酒屋チェーン創業者の渡辺美樹氏(51)も支持を広げられなかった。
北海道の高橋氏は自民が推薦し、公明も支援。民主、社民、国民新各党が推薦した元農林水産省職員の木村俊昭氏(50)らとの争いを制した。民主の岡田克也幹事長の地元の三重では、自民、みんなの党が推薦した元経済産業省職員の鈴木英敬氏(36)が、民主推薦の前津市長の松田直久氏(56)を破った。
民主、自民両党の相乗りは12知事選の半数の6人に上り、全員が当選した。
新人では福岡で前内閣広報官の小川洋氏(61)、神奈川でジャーナリストの黒岩祐治氏(56)がそれぞれ共産党やみんなの党の推薦候補を破った。
政令市長選では札幌市で上田文雄氏(62)が3選。相模原市で加山俊夫氏(66)が再選した。静岡市で自民推薦の田辺信宏氏(49)、広島市で元厚生労働省職員の松井一実氏(58)の両新人が当選した。
東日本大震災の影響で、24日投開票の後半戦を含め全部で60の選挙を延期した。
:2011:04/11/09:50 ++ 東日本大震災1ヵ月、続く危機、復興へ総力を、再生の青写真迅速に。
東日本大震災が起きてから1カ月になる。突然の地震や津波は被災地に深い爪痕を残し、日本を痛めつけた。東北地方、そして日本経済のダメージは計り知れず、危機克服の見通しもはっきりしない。足元の状況と課題を直視し、二歩先、三歩先の展望を描き始めるときだ。
4月上旬。東北地方の中堅部品メーカーの社長が日産自動車にやってきた。「これ以上、迷惑はかけられませんから……」。静かに差し出したのは、長年蓄積してきた開発・製造ノウハウが詰まった大切な仕様書だ。
震災の被害はあまりに大きく、自社工場の復旧をあきらめざるを得なかった。「せめて日産の足を引っ張るまい」。代替生産を依頼した。
そんな被災企業は一つや二つではない。自動車各社は中小企業の重みをかみしめている。バッテリーの電解質、ゴムの弾性を強化する添加剤、塗料の顔料。ハイテクでも高額でもないが「それがないと品質が保てない」(日産幹部)。
部品と素材生産の集積地を襲った大震災。トヨタ自動車は部品が一時、500点不足した。在庫が切れるか、部材メーカーが立ち直るか。各社手探りの果て、産業構造そのものが崩れかねない。
地域には大胆で速やかな復興策が必要だ。とりわけ苦境の「東北」に何を興すか。大企業、中小企業、サービス業、そして大切な地域産業である農業や水産業。燃料はあるか。資金繰りは大丈夫か。担い手の目線で対策を急がねばならない。
部品や電力
重い足かせ
働き手たちは今、震災という自然災害とは違う肌寒さを感じている。
「日本の半導体会社はサプライチェーン(供給体制)をやられた。あと1年は立ち直れない」。ライバル会社が吹き込む不確かな情報が、世界のデジタル機器メーカーの危機感をあおっている。
半導体大手エルピーダメモリは疑心暗鬼の海外顧客からの質問攻めに苦しんだ。「東北から何を調達しているのか全て教えてほしい」。坂本幸雄社長は4月上旬、米西海岸のアップル本社に乗り込んだ。「日本は大丈夫」と念を押すためだ。
震災を境に、海外から日本を訪れる人はめっきり減った。食品だけでなく、工業製品も海外から敬遠されている。グローバル化へ新たに歩み出そうとした矢先、震災はとても痛い。インフラ輸出や環境技術などを柱にした経済活性化策も見通しにくくなった。
潜在する危機にも目を凝らさないと、未来が台無しになる。安全なら安全と、政府が内外に表明しないと、風評に日本がむしばまれる。産業立地の支援を早く打ち出さないと、脱ニッポンに拍車がかかる。
足元にはなお厄介な問題がある。「電力」だ。原子力発電所の事故により、東京電力の管内では夏にかけ最大25%の電力が不足する。これでは日本は得意の“ものづくり”の力をふるえない。
第一生命経済研究所によると電力不足で今年度の実質国内総生産は最大0・7%落ち込む。損失額は3兆円余り。「復興そのものの足かせになる」(永浜利広主席エコノミスト)。政府は計画停電の原則終了を宣言したが、不足解消のメドが立ったわけではない。電力不足への対応にはもう一段上の精度が求められる。
「不要不急の商品の買い控えが、拡大して長期化する恐れはないか」。セブン&アイ・ホールディングスの村田紀敏社長は不安を口にする。
この1カ月、日本人はうつむきがちな日々を過ごした。小売りや旅行、外食は軒並み低調だ。家計心理が悪化し、あちこちに自粛の動きが広がり、消費はふるわない。
世界の不安
解消を急げ
経済活動の正常化が急がれる。まずは原発不安の解消だ。危機がくすぶったままでは本格的な復興モードに移れない。日本を称賛した世界も原発の行方に不安を抱く。それが不信に変わるのは時間の問題。原子炉の冷却機能の回復、廃炉への段取り、再発防止の抜本策など、危機封じ込めに英知を注ぎ、具体的な工程表を示す必要がある。
先行きの展望が見えないままでは、将来の不安はぬぐえない。
被災地ではすでに仮設住宅への被災者受け入れや、壊れた施設の建て直しが始まっている。被災者の平穏を一刻も早く取り戻す必要がある。「もっと素晴らしい東北、日本をつくる」。菅直人首相は11日に「復興構想会議」を立ち上げる。
必要なのは中身だ。いつ、どこで、なにをするか。壊れた道路や港をどう修復し、地域の生活基盤をどう復旧するか。こちらにも工程表がいる。政府の対応は後手に回っている。司令塔がふらついたまま会議ばかり増やしても意味はない。
復興財源の調達方法も焦点になる。いたずらに国債を増発すれば市場の信認を失う。国際基督教大の八代尚宏教授は「子ども手当など民主党の政策を棚上げし、財源を捻出すべきだ」と話す。
民主党内には「この時点で予算を組み替えるなら内閣総辞職だ」と事態を政局がらみでとらえる向きもある。与党内も、対野党も、対立は後回しにして、今こそ聖域なく予算を見直すときだ。
1995年の阪神大震災の直接的な被害は約10兆円だった。今回は16兆~25兆円と内閣府は試算する。
間接的な被害はどれほどだろうか。阪神では復旧が遅れ、神戸港が担っていた貨物機能を近隣国に奪われた。
日本を再建するためのグランドデザインを早く描かねばならない。成長戦略や税財政改革の方向も見据えた新しい海図が要る。誰がやるのか。政治はもちろん、官僚の知恵も総動員しないと間に合わない。そして民間の力も。政官民の知恵と工夫を編みだし、積み上げるときだ。
関東大震災後、帝都復興院総裁を務めた後藤新平は「復旧」ではなく「復興」という言葉を使った。古きに戻すのではなく、新たに創る――。国を高める機会にもなる。
4月上旬。東北地方の中堅部品メーカーの社長が日産自動車にやってきた。「これ以上、迷惑はかけられませんから……」。静かに差し出したのは、長年蓄積してきた開発・製造ノウハウが詰まった大切な仕様書だ。
震災の被害はあまりに大きく、自社工場の復旧をあきらめざるを得なかった。「せめて日産の足を引っ張るまい」。代替生産を依頼した。
そんな被災企業は一つや二つではない。自動車各社は中小企業の重みをかみしめている。バッテリーの電解質、ゴムの弾性を強化する添加剤、塗料の顔料。ハイテクでも高額でもないが「それがないと品質が保てない」(日産幹部)。
部品と素材生産の集積地を襲った大震災。トヨタ自動車は部品が一時、500点不足した。在庫が切れるか、部材メーカーが立ち直るか。各社手探りの果て、産業構造そのものが崩れかねない。
地域には大胆で速やかな復興策が必要だ。とりわけ苦境の「東北」に何を興すか。大企業、中小企業、サービス業、そして大切な地域産業である農業や水産業。燃料はあるか。資金繰りは大丈夫か。担い手の目線で対策を急がねばならない。
部品や電力
重い足かせ
働き手たちは今、震災という自然災害とは違う肌寒さを感じている。
「日本の半導体会社はサプライチェーン(供給体制)をやられた。あと1年は立ち直れない」。ライバル会社が吹き込む不確かな情報が、世界のデジタル機器メーカーの危機感をあおっている。
半導体大手エルピーダメモリは疑心暗鬼の海外顧客からの質問攻めに苦しんだ。「東北から何を調達しているのか全て教えてほしい」。坂本幸雄社長は4月上旬、米西海岸のアップル本社に乗り込んだ。「日本は大丈夫」と念を押すためだ。
震災を境に、海外から日本を訪れる人はめっきり減った。食品だけでなく、工業製品も海外から敬遠されている。グローバル化へ新たに歩み出そうとした矢先、震災はとても痛い。インフラ輸出や環境技術などを柱にした経済活性化策も見通しにくくなった。
潜在する危機にも目を凝らさないと、未来が台無しになる。安全なら安全と、政府が内外に表明しないと、風評に日本がむしばまれる。産業立地の支援を早く打ち出さないと、脱ニッポンに拍車がかかる。
足元にはなお厄介な問題がある。「電力」だ。原子力発電所の事故により、東京電力の管内では夏にかけ最大25%の電力が不足する。これでは日本は得意の“ものづくり”の力をふるえない。
第一生命経済研究所によると電力不足で今年度の実質国内総生産は最大0・7%落ち込む。損失額は3兆円余り。「復興そのものの足かせになる」(永浜利広主席エコノミスト)。政府は計画停電の原則終了を宣言したが、不足解消のメドが立ったわけではない。電力不足への対応にはもう一段上の精度が求められる。
「不要不急の商品の買い控えが、拡大して長期化する恐れはないか」。セブン&アイ・ホールディングスの村田紀敏社長は不安を口にする。
この1カ月、日本人はうつむきがちな日々を過ごした。小売りや旅行、外食は軒並み低調だ。家計心理が悪化し、あちこちに自粛の動きが広がり、消費はふるわない。
世界の不安
解消を急げ
経済活動の正常化が急がれる。まずは原発不安の解消だ。危機がくすぶったままでは本格的な復興モードに移れない。日本を称賛した世界も原発の行方に不安を抱く。それが不信に変わるのは時間の問題。原子炉の冷却機能の回復、廃炉への段取り、再発防止の抜本策など、危機封じ込めに英知を注ぎ、具体的な工程表を示す必要がある。
先行きの展望が見えないままでは、将来の不安はぬぐえない。
被災地ではすでに仮設住宅への被災者受け入れや、壊れた施設の建て直しが始まっている。被災者の平穏を一刻も早く取り戻す必要がある。「もっと素晴らしい東北、日本をつくる」。菅直人首相は11日に「復興構想会議」を立ち上げる。
必要なのは中身だ。いつ、どこで、なにをするか。壊れた道路や港をどう修復し、地域の生活基盤をどう復旧するか。こちらにも工程表がいる。政府の対応は後手に回っている。司令塔がふらついたまま会議ばかり増やしても意味はない。
復興財源の調達方法も焦点になる。いたずらに国債を増発すれば市場の信認を失う。国際基督教大の八代尚宏教授は「子ども手当など民主党の政策を棚上げし、財源を捻出すべきだ」と話す。
民主党内には「この時点で予算を組み替えるなら内閣総辞職だ」と事態を政局がらみでとらえる向きもある。与党内も、対野党も、対立は後回しにして、今こそ聖域なく予算を見直すときだ。
1995年の阪神大震災の直接的な被害は約10兆円だった。今回は16兆~25兆円と内閣府は試算する。
間接的な被害はどれほどだろうか。阪神では復旧が遅れ、神戸港が担っていた貨物機能を近隣国に奪われた。
日本を再建するためのグランドデザインを早く描かねばならない。成長戦略や税財政改革の方向も見据えた新しい海図が要る。誰がやるのか。政治はもちろん、官僚の知恵も総動員しないと間に合わない。そして民間の力も。政官民の知恵と工夫を編みだし、積み上げるときだ。
関東大震災後、帝都復興院総裁を務めた後藤新平は「復旧」ではなく「復興」という言葉を使った。古きに戻すのではなく、新たに創る――。国を高める機会にもなる。
:2011:04/11/09:42 ++ 石原氏、民主党政権を批判「無知で未熟な連中」「役人いかに使うかが政治家」
4選を決めた石原慎太郎氏(78)は10日夜の記者会見などで、東日本大震災の復興支援や福島第1原子力発電所の事故の対応で、民主党が掲げる「政治主導」が省庁の統制や政策決定に大幅な遅れを生んでいると指摘し、「(現政権は)無知で未熟な連中が集まって、役人を使わない。何をうぬぼれているのか」と痛烈に批判した。
政府は原発事故で電力の供給不足が生じ、計画停電や節電を呼びかけたが、石原氏は「日本の電力消費は世界的に見たら奇形だよ。パチンコと自動販売機で合わせて1千万キロワット近い量が使われている。自動販売機は便利かもしれないが自分の家で冷やせばよい」と持論を展開した。
その上で、「国全体でやらなければならないことは、国で出さなかったら国民は動かない。政府はきちっと政令を出すべきだ。オイルショックのときは出した」と、その場しのぎで対応を変える民主党政権を批判した。
「役人の言うことを聞かないで、『政治家で、政治家で』と役人を使わない。この事態になぜ一番ノウハウ持っている事務次官会議をやらないのか。役人をいかに使うかが政治家の力量。いまだに事務次官会議を開かない、こんな政府は前代未聞だ」と“石原節”で断じた。
大震災の影響で、首都圏を中心に買いだめによる物品の品薄などが問題となった際に、都内のコンビニエンスストアを視察した蓮舫節電啓発担当相にも触れ、「担当大臣が報道陣をたくさん引き連れてニコニコやってる場合じゃない」とパフォーマンス先行の対応に疑問を呈した。
政府批判は自民党政権時代の政策にもおよんだ。
石原氏は「福田バカ内閣のときに、バカ財務省が、法人事業税の分割基準を変更した。これにより大きな予算が取られたが、それをとりかえし、東京をさらにしっかりしたい」と毎年拠出してきた法人事業税約3600億円を取り戻し、全額を震災対策にあてる考えを示した。
復興支援には巨額の財源が必要な事態が想定されるが、「これだけの大災害が起きれば、当然予算の組み直しをしなかったらだめ。東京が自腹を切り、国をサポートするが東京は首都であって政府じゃない。国が復興資金の調達をどうするのかを考えないと。国債だけで、あるいは増税だけで、とてもうまくいかないと思う」と話した。
政府は原発事故で電力の供給不足が生じ、計画停電や節電を呼びかけたが、石原氏は「日本の電力消費は世界的に見たら奇形だよ。パチンコと自動販売機で合わせて1千万キロワット近い量が使われている。自動販売機は便利かもしれないが自分の家で冷やせばよい」と持論を展開した。
その上で、「国全体でやらなければならないことは、国で出さなかったら国民は動かない。政府はきちっと政令を出すべきだ。オイルショックのときは出した」と、その場しのぎで対応を変える民主党政権を批判した。
「役人の言うことを聞かないで、『政治家で、政治家で』と役人を使わない。この事態になぜ一番ノウハウ持っている事務次官会議をやらないのか。役人をいかに使うかが政治家の力量。いまだに事務次官会議を開かない、こんな政府は前代未聞だ」と“石原節”で断じた。
大震災の影響で、首都圏を中心に買いだめによる物品の品薄などが問題となった際に、都内のコンビニエンスストアを視察した蓮舫節電啓発担当相にも触れ、「担当大臣が報道陣をたくさん引き連れてニコニコやってる場合じゃない」とパフォーマンス先行の対応に疑問を呈した。
政府批判は自民党政権時代の政策にもおよんだ。
石原氏は「福田バカ内閣のときに、バカ財務省が、法人事業税の分割基準を変更した。これにより大きな予算が取られたが、それをとりかえし、東京をさらにしっかりしたい」と毎年拠出してきた法人事業税約3600億円を取り戻し、全額を震災対策にあてる考えを示した。
復興支援には巨額の財源が必要な事態が想定されるが、「これだけの大災害が起きれば、当然予算の組み直しをしなかったらだめ。東京が自腹を切り、国をサポートするが東京は首都であって政府じゃない。国が復興資金の調達をどうするのかを考えないと。国債だけで、あるいは増税だけで、とてもうまくいかないと思う」と話した。
:2011:04/08/11:07 ++ 特集――3月12日20時20分、原子炉に海水注入、廃炉恐れ決断遅れる。
1号機原子炉に海水注入が始まった。背景には菅の指示を受けた海江田の命令があった。それまで、東電は海水注入をずっと渋っていたとみられる。
建設に巨額の費用を投じた原子炉が、二度と使えなくなるのは目に見えている。東電は給水車で真水を運ぶことを自衛隊に要請。復旧の可能性がわずかでも残る真水での冷却にこだわった。「東電は資産を守りたいと考え、判断が遅れた」――。政府関係者は憤る。
13日午前1時30分。保安院は記者会見で「海水は原子炉に入っている」と公表する。だが、注水すれば目盛りが上がるはずの水位計は下に振り切れたまま。燃料棒が露出した状態が続いているのではないか。
矛盾を突かれると「報告では順調だと聞いているが……」などと返答に詰まる。東電からの情報を客観的に評価する余裕を失っていることがうかがえた。
危機的状況はさらに広がる。午前5時からの保安院の記者会見の最中だった。3号機で緊急時に炉心を冷やす「非常用炉心冷却装置」に異常が起こったとの一報が入る。原子炉への注水が中断しているという。
午前11時55分、消防ポンプによる炉心への真水注入が始まる。午後1時12分からは廃炉を覚悟で海水の注入に切り替える。しかし炉心内の水位は上がらない。1号機と同じように水素爆発の危険性が高まった。
保安院は12日、事故の深刻度を暫定的に「レベル4」と評価していた。8段階ある国際原子力事象評価尺度(INES)のうち、「施設外への大きなリスクを伴わない事故」との位置づけだ。18日には1979年の米国スリーマイル島原発事故と同じ「レベル5(施設外へのリスクを伴う事故)」に引き上げざるを得なくなった。
放射性物質は大気に海に拡散し、農畜産物や魚から暫定基準値をはるかに超える放射性物質が検出される。避難区域の自治体はまるごと移転を余儀なくされ、風評被害は国内ばかりか世界に広がる。
海外の当局者などからは、現在の状況は「レベル6(大事故)」相当だとの指摘も出ている。チェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7(深刻な事故)」へと発展する危険性さえ残る。
東電や政府の初期の対応が後手に回り、危機が長期間に及ぶことは確実となった。現地では今もなお決死の作業が続く。
建設に巨額の費用を投じた原子炉が、二度と使えなくなるのは目に見えている。東電は給水車で真水を運ぶことを自衛隊に要請。復旧の可能性がわずかでも残る真水での冷却にこだわった。「東電は資産を守りたいと考え、判断が遅れた」――。政府関係者は憤る。
13日午前1時30分。保安院は記者会見で「海水は原子炉に入っている」と公表する。だが、注水すれば目盛りが上がるはずの水位計は下に振り切れたまま。燃料棒が露出した状態が続いているのではないか。
矛盾を突かれると「報告では順調だと聞いているが……」などと返答に詰まる。東電からの情報を客観的に評価する余裕を失っていることがうかがえた。
危機的状況はさらに広がる。午前5時からの保安院の記者会見の最中だった。3号機で緊急時に炉心を冷やす「非常用炉心冷却装置」に異常が起こったとの一報が入る。原子炉への注水が中断しているという。
午前11時55分、消防ポンプによる炉心への真水注入が始まる。午後1時12分からは廃炉を覚悟で海水の注入に切り替える。しかし炉心内の水位は上がらない。1号機と同じように水素爆発の危険性が高まった。
保安院は12日、事故の深刻度を暫定的に「レベル4」と評価していた。8段階ある国際原子力事象評価尺度(INES)のうち、「施設外への大きなリスクを伴わない事故」との位置づけだ。18日には1979年の米国スリーマイル島原発事故と同じ「レベル5(施設外へのリスクを伴う事故)」に引き上げざるを得なくなった。
放射性物質は大気に海に拡散し、農畜産物や魚から暫定基準値をはるかに超える放射性物質が検出される。避難区域の自治体はまるごと移転を余儀なくされ、風評被害は国内ばかりか世界に広がる。
海外の当局者などからは、現在の状況は「レベル6(大事故)」相当だとの指摘も出ている。チェルノブイリ原発事故と同じ「レベル7(深刻な事故)」へと発展する危険性さえ残る。
東電や政府の初期の対応が後手に回り、危機が長期間に及ぶことは確実となった。現地では今もなお決死の作業が続く。
:2011:04/08/11:05 ++ 特集――3月12日7時11分、弁開放まだ始まらない、東電対応に不信強まる。
自衛隊のヘリに乗った首相が福島第1原発に着いた。マイクロバスから敷地内を巡回視察後、非常災害対策本部が入る免震重要棟に入る。建物内の廊下には疲れ切った職員の多くが毛布にくるまってへたり込んでいた。胸に簡易な線量計をつけた首相はその中をすり抜けるように会議室に入っていく。
出発前の午前6時8分。首相官邸3階のエントランスホールに防災服と防災靴で現れた菅は記者団に言った。「現地責任者ときちっと話して状況を確認したい」
現地は緊迫の度を増していた。原子力安全・保安院長の寺坂信昭と東電は記者会見で、福島第1原発の正門付近の放射線量が通常時の8倍に、1号機の中央制御室では通常の1千倍に達したことを明らかにした。「原子炉建屋の中でなんらかの損傷があり、放射性物質が漏れている可能性がある」。寺坂は震災で放射性物質が漏れ出たことを初めて認めた。
弁の開放はまだ始まっていなかった。「いつになったらやるんだよ!」と迫る菅。「もうじきやります。なんとか始めます」と答える東電副社長の武藤栄。
「ずっと、そればかり言っているじゃないか!」。菅はさらに激高する。同行した一人は「東電は自ら安全神話を壊すのをためらっているのではないか」とつぶやいた。
現地視察に同行したのは原子力安全委員長の班目春樹、首相補佐官の寺田学、SPや医務官ら総勢10人。最小限の規模にしたのは「大名行列ではだめだ」という菅の指示だ。それでも震災翌日の視察が妥当だったかどうか。「弁の開放など危機対応に東電を専念させるべきだった」との指摘が絶えない。野党は3月29日の参院予算委員会で「政治的パフォーマンスをしたかったのではないか」「現場の邪魔をした」などと批判を浴びせた。
東電社員が弁を開放する作業に向かったのは、菅が福島第1原発を離れた1時間後の午前9時4分。午前10時17分には弁の開放作業が始まった。経産相、海江田万里の発表からは実に7時間かかった。東電が格納容器の圧力降下を確認したのは、さらにこの4時間後の午後2時30分ごろだ。
「吉田所長の話で初めて状況が理解できた」。視察後に菅が謝意を示したのは、副社長の武藤ではなく、現場を指揮していた福島第1原発所長の吉田昌郎だった。首相官邸と東電幹部の間に生じた溝は誰の目にも隠しきれなくなっていた。
出発前の午前6時8分。首相官邸3階のエントランスホールに防災服と防災靴で現れた菅は記者団に言った。「現地責任者ときちっと話して状況を確認したい」
現地は緊迫の度を増していた。原子力安全・保安院長の寺坂信昭と東電は記者会見で、福島第1原発の正門付近の放射線量が通常時の8倍に、1号機の中央制御室では通常の1千倍に達したことを明らかにした。「原子炉建屋の中でなんらかの損傷があり、放射性物質が漏れている可能性がある」。寺坂は震災で放射性物質が漏れ出たことを初めて認めた。
弁の開放はまだ始まっていなかった。「いつになったらやるんだよ!」と迫る菅。「もうじきやります。なんとか始めます」と答える東電副社長の武藤栄。
「ずっと、そればかり言っているじゃないか!」。菅はさらに激高する。同行した一人は「東電は自ら安全神話を壊すのをためらっているのではないか」とつぶやいた。
現地視察に同行したのは原子力安全委員長の班目春樹、首相補佐官の寺田学、SPや医務官ら総勢10人。最小限の規模にしたのは「大名行列ではだめだ」という菅の指示だ。それでも震災翌日の視察が妥当だったかどうか。「弁の開放など危機対応に東電を専念させるべきだった」との指摘が絶えない。野党は3月29日の参院予算委員会で「政治的パフォーマンスをしたかったのではないか」「現場の邪魔をした」などと批判を浴びせた。
東電社員が弁を開放する作業に向かったのは、菅が福島第1原発を離れた1時間後の午前9時4分。午前10時17分には弁の開放作業が始まった。経産相、海江田万里の発表からは実に7時間かかった。東電が格納容器の圧力降下を確認したのは、さらにこの4時間後の午後2時30分ごろだ。
「吉田所長の話で初めて状況が理解できた」。視察後に菅が謝意を示したのは、副社長の武藤ではなく、現場を指揮していた福島第1原発所長の吉田昌郎だった。首相官邸と東電幹部の間に生じた溝は誰の目にも隠しきれなくなっていた。
:2011:04/08/11:02 ++ 特集――3月12日15時36分、1号機建屋が爆発、説明少なく不安を増幅。
「ドーン」。福島第1原発1号機は爆発音とともに白い煙に包まれた。
原子炉建屋は骨組みだけを残して崩落。映像がテレビで繰り返し流れ始める。
経産省内の一室。東電のある課長はこの日実施したベントの成功を報道陣に報告中だった。部屋の脇にあるテレビ画面がふと目に入る。さっと顔が青ざめる。「何が起きたんですか」。記者の質問に言葉が出てこない。「戻って確認します」。別の担当者がそう言うのが精いっぱいだった。
首相官邸では震災発生後、初めての与野党党首会談が開かれていた。菅が野党党首に協力を訴えている時に、爆発は起こった。
ある党首は語る。「首相はその朝原発を視察したことを説明し、心配ないと強調していた」
別の証言もある。「水素爆発が起こった」とのメモが菅に手渡されたが詳細が分からず、会談では触れずにいたという。「東電も状況を把握しておらず、すぐに報告は入らなかった」と話す政府関係者もいる。
直前まで原子炉への注水作業をしていた自衛隊は退避。任務を周辺住民の避難誘導に切り替えた。東電、官邸、保安院……。どこにも詳しい情報が伝わらないまま緊張感は高まる。
原発には放射性物質が漏れるのを防ぐ「5重の壁」がある。分厚いコンクリートでできた原子炉建屋は、最も外側にある「第5の壁」。それが爆発した以上、内部にある鋼鉄製の格納容器(=第4の壁)や圧力容器(=第3の壁)も損傷したのか。もしそうなら、チェルノブイリ原発の事故にも匹敵する、史上最悪の原子力災害になりかねない。
政府が第1報を発表したのは2時間後の午後5時47分。しかも「何らかの爆発的事象があった」(枝野)とだけだ。
午後6時25分。政府は避難区域を半径10キロメートル以内から20キロメートル以内へと拡大する。十分な説明がないまま、避難対象が広がり、不安は増幅される。
「格納容器の損傷はない」。枝野が発表したのは午後8時40分すぎ。原発周辺の放射線量は減少に転じていることが判明した。格納容器と建屋の間に漏れ出た水素が酸素と反応し、爆発が起こったと結論づけた。
枝野が会見に臨む直前。東電は1号機原子炉への海水注入を開始した。冷却装置が止まったなかで原子炉を冷やし続けるには当面これしかない。海水を入れると原子炉の金属がさびてしまう。再び動かすことは難しい。東電には苦渋の決断だ。しかし、午後6時には政府からも海水の注入命令が出ていた。選択の余地はなかった。
原子炉建屋は骨組みだけを残して崩落。映像がテレビで繰り返し流れ始める。
経産省内の一室。東電のある課長はこの日実施したベントの成功を報道陣に報告中だった。部屋の脇にあるテレビ画面がふと目に入る。さっと顔が青ざめる。「何が起きたんですか」。記者の質問に言葉が出てこない。「戻って確認します」。別の担当者がそう言うのが精いっぱいだった。
首相官邸では震災発生後、初めての与野党党首会談が開かれていた。菅が野党党首に協力を訴えている時に、爆発は起こった。
ある党首は語る。「首相はその朝原発を視察したことを説明し、心配ないと強調していた」
別の証言もある。「水素爆発が起こった」とのメモが菅に手渡されたが詳細が分からず、会談では触れずにいたという。「東電も状況を把握しておらず、すぐに報告は入らなかった」と話す政府関係者もいる。
直前まで原子炉への注水作業をしていた自衛隊は退避。任務を周辺住民の避難誘導に切り替えた。東電、官邸、保安院……。どこにも詳しい情報が伝わらないまま緊張感は高まる。
原発には放射性物質が漏れるのを防ぐ「5重の壁」がある。分厚いコンクリートでできた原子炉建屋は、最も外側にある「第5の壁」。それが爆発した以上、内部にある鋼鉄製の格納容器(=第4の壁)や圧力容器(=第3の壁)も損傷したのか。もしそうなら、チェルノブイリ原発の事故にも匹敵する、史上最悪の原子力災害になりかねない。
政府が第1報を発表したのは2時間後の午後5時47分。しかも「何らかの爆発的事象があった」(枝野)とだけだ。
午後6時25分。政府は避難区域を半径10キロメートル以内から20キロメートル以内へと拡大する。十分な説明がないまま、避難対象が広がり、不安は増幅される。
「格納容器の損傷はない」。枝野が発表したのは午後8時40分すぎ。原発周辺の放射線量は減少に転じていることが判明した。格納容器と建屋の間に漏れ出た水素が酸素と反応し、爆発が起こったと結論づけた。
枝野が会見に臨む直前。東電は1号機原子炉への海水注入を開始した。冷却装置が止まったなかで原子炉を冷やし続けるには当面これしかない。海水を入れると原子炉の金属がさびてしまう。再び動かすことは難しい。東電には苦渋の決断だ。しかし、午後6時には政府からも海水の注入命令が出ていた。選択の余地はなかった。
:2011:04/08/11:02 ++ 特集――3月12日15時36分、1号機建屋が爆発、説明少なく不安を増幅。
「ドーン」。福島第1原発1号機は爆発音とともに白い煙に包まれた。
原子炉建屋は骨組みだけを残して崩落。映像がテレビで繰り返し流れ始める。
経産省内の一室。東電のある課長はこの日実施したベントの成功を報道陣に報告中だった。部屋の脇にあるテレビ画面がふと目に入る。さっと顔が青ざめる。「何が起きたんですか」。記者の質問に言葉が出てこない。「戻って確認します」。別の担当者がそう言うのが精いっぱいだった。
首相官邸では震災発生後、初めての与野党党首会談が開かれていた。菅が野党党首に協力を訴えている時に、爆発は起こった。
ある党首は語る。「首相はその朝原発を視察したことを説明し、心配ないと強調していた」
別の証言もある。「水素爆発が起こった」とのメモが菅に手渡されたが詳細が分からず、会談では触れずにいたという。「東電も状況を把握しておらず、すぐに報告は入らなかった」と話す政府関係者もいる。
直前まで原子炉への注水作業をしていた自衛隊は退避。任務を周辺住民の避難誘導に切り替えた。東電、官邸、保安院……。どこにも詳しい情報が伝わらないまま緊張感は高まる。
原発には放射性物質が漏れるのを防ぐ「5重の壁」がある。分厚いコンクリートでできた原子炉建屋は、最も外側にある「第5の壁」。それが爆発した以上、内部にある鋼鉄製の格納容器(=第4の壁)や圧力容器(=第3の壁)も損傷したのか。もしそうなら、チェルノブイリ原発の事故にも匹敵する、史上最悪の原子力災害になりかねない。
政府が第1報を発表したのは2時間後の午後5時47分。しかも「何らかの爆発的事象があった」(枝野)とだけだ。
午後6時25分。政府は避難区域を半径10キロメートル以内から20キロメートル以内へと拡大する。十分な説明がないまま、避難対象が広がり、不安は増幅される。
「格納容器の損傷はない」。枝野が発表したのは午後8時40分すぎ。原発周辺の放射線量は減少に転じていることが判明した。格納容器と建屋の間に漏れ出た水素が酸素と反応し、爆発が起こったと結論づけた。
枝野が会見に臨む直前。東電は1号機原子炉への海水注入を開始した。冷却装置が止まったなかで原子炉を冷やし続けるには当面これしかない。海水を入れると原子炉の金属がさびてしまう。再び動かすことは難しい。東電には苦渋の決断だ。しかし、午後6時には政府からも海水の注入命令が出ていた。選択の余地はなかった。
原子炉建屋は骨組みだけを残して崩落。映像がテレビで繰り返し流れ始める。
経産省内の一室。東電のある課長はこの日実施したベントの成功を報道陣に報告中だった。部屋の脇にあるテレビ画面がふと目に入る。さっと顔が青ざめる。「何が起きたんですか」。記者の質問に言葉が出てこない。「戻って確認します」。別の担当者がそう言うのが精いっぱいだった。
首相官邸では震災発生後、初めての与野党党首会談が開かれていた。菅が野党党首に協力を訴えている時に、爆発は起こった。
ある党首は語る。「首相はその朝原発を視察したことを説明し、心配ないと強調していた」
別の証言もある。「水素爆発が起こった」とのメモが菅に手渡されたが詳細が分からず、会談では触れずにいたという。「東電も状況を把握しておらず、すぐに報告は入らなかった」と話す政府関係者もいる。
直前まで原子炉への注水作業をしていた自衛隊は退避。任務を周辺住民の避難誘導に切り替えた。東電、官邸、保安院……。どこにも詳しい情報が伝わらないまま緊張感は高まる。
原発には放射性物質が漏れるのを防ぐ「5重の壁」がある。分厚いコンクリートでできた原子炉建屋は、最も外側にある「第5の壁」。それが爆発した以上、内部にある鋼鉄製の格納容器(=第4の壁)や圧力容器(=第3の壁)も損傷したのか。もしそうなら、チェルノブイリ原発の事故にも匹敵する、史上最悪の原子力災害になりかねない。
政府が第1報を発表したのは2時間後の午後5時47分。しかも「何らかの爆発的事象があった」(枝野)とだけだ。
午後6時25分。政府は避難区域を半径10キロメートル以内から20キロメートル以内へと拡大する。十分な説明がないまま、避難対象が広がり、不安は増幅される。
「格納容器の損傷はない」。枝野が発表したのは午後8時40分すぎ。原発周辺の放射線量は減少に転じていることが判明した。格納容器と建屋の間に漏れ出た水素が酸素と反応し、爆発が起こったと結論づけた。
枝野が会見に臨む直前。東電は1号機原子炉への海水注入を開始した。冷却装置が止まったなかで原子炉を冷やし続けるには当面これしかない。海水を入れると原子炉の金属がさびてしまう。再び動かすことは難しい。東電には苦渋の決断だ。しかし、午後6時には政府からも海水の注入命令が出ていた。選択の余地はなかった。
:2011:04/08/10:59 ++ 特集―3月11日14時46分、地震、津波が原発襲う、電源失い「冷却不能に」。
その時。首相の菅直人と全閣僚は参院決算委員会に出席、菅は外国人献金問題で野党から追及されているさなかだった。委員会室のシャンデリアが激しく揺れる。委員長の鶴保庸介は質疑を打ち切った。
専用車が着くまで、菅は参院の正面玄関で待ちぼうけを食わされた。官邸地下の危機管理センターに入ると、すでに閣僚や官僚でごった返している。「閣僚は省庁に戻って指揮を執れ」。官房長官の枝野幸男の声が響き渡る。
「女川、スクラム(緊急自動停止)」「1F(福島第1原発)緊急自動停止」「2F(福島第2原発)緊急自動停止」――。
経済産業省別館3階の原子力安全・保安院の緊急対策センター。各原発の現状が次々とホワイトボードに書き出される。「緊急自動停止」は原子炉が大きな揺れを検知して止まり、核分裂反応が進まない状態になったことを意味する。
午後3時32分。保安院による初の記者会見。原子力安全基盤担当審議官の中村幸一郎は「東北地方の全原発は緊急自動停止し、冷却機能が保たれている。火災、故障の情報なし。放射能漏れもなし」と語った。
経済産業相の海江田万里らがほっと胸をなで下ろしたのもつかの間、津波が原発を襲い始める。「津波だ。女川10メートル」「大丈夫か?」「14メートル、14メートル」「どこだ?」。保安院のセンターに怒号が飛び交う。
東京・内幸町の東京電力本店も混乱していた。社長の清水正孝は関西に出張中だった。帰京のめどはつかない。会長の勝俣恒久も中国・北京に滞在中。原子力担当副社長の武藤栄が急きょ、ヘリコプターに飛び乗って福島に向かった。
保安院の2回目の記者会見。午後4時57分、会見場に飛び込んできた担当者が口を開く。「すべての外部電源を失い炉心の冷却機能を喪失した緊急事態(原子力災害対策特別措置法第15条事象)との報告を受けました」。冷却機能を保つための電源をすべて失ったのは、約40年に及ぶ日本の原発商業利用で初めてのことだ。
これに先立つ午後3時42分、東電は冷却機能が失われかねないとして15条の前段階である10条通報をしている。このとき「一番危ないのは原発だ」と叫んだ菅は、夫人の伸子に連絡し、母校である東京工業大学のOB名簿を取り寄せようとした。自らの助言者を探すためだ。報告が遅い――。首相官邸と経産省、東電の関係は、はやくもギスギスし始めていた。
専用車が着くまで、菅は参院の正面玄関で待ちぼうけを食わされた。官邸地下の危機管理センターに入ると、すでに閣僚や官僚でごった返している。「閣僚は省庁に戻って指揮を執れ」。官房長官の枝野幸男の声が響き渡る。
「女川、スクラム(緊急自動停止)」「1F(福島第1原発)緊急自動停止」「2F(福島第2原発)緊急自動停止」――。
経済産業省別館3階の原子力安全・保安院の緊急対策センター。各原発の現状が次々とホワイトボードに書き出される。「緊急自動停止」は原子炉が大きな揺れを検知して止まり、核分裂反応が進まない状態になったことを意味する。
午後3時32分。保安院による初の記者会見。原子力安全基盤担当審議官の中村幸一郎は「東北地方の全原発は緊急自動停止し、冷却機能が保たれている。火災、故障の情報なし。放射能漏れもなし」と語った。
経済産業相の海江田万里らがほっと胸をなで下ろしたのもつかの間、津波が原発を襲い始める。「津波だ。女川10メートル」「大丈夫か?」「14メートル、14メートル」「どこだ?」。保安院のセンターに怒号が飛び交う。
東京・内幸町の東京電力本店も混乱していた。社長の清水正孝は関西に出張中だった。帰京のめどはつかない。会長の勝俣恒久も中国・北京に滞在中。原子力担当副社長の武藤栄が急きょ、ヘリコプターに飛び乗って福島に向かった。
保安院の2回目の記者会見。午後4時57分、会見場に飛び込んできた担当者が口を開く。「すべての外部電源を失い炉心の冷却機能を喪失した緊急事態(原子力災害対策特別措置法第15条事象)との報告を受けました」。冷却機能を保つための電源をすべて失ったのは、約40年に及ぶ日本の原発商業利用で初めてのことだ。
これに先立つ午後3時42分、東電は冷却機能が失われかねないとして15条の前段階である10条通報をしている。このとき「一番危ないのは原発だ」と叫んだ菅は、夫人の伸子に連絡し、母校である東京工業大学のOB名簿を取り寄せようとした。自らの助言者を探すためだ。報告が遅い――。首相官邸と経産省、東電の関係は、はやくもギスギスし始めていた。
:2011:04/08/10:56 ++ 特集――3月11日19時3分、初の緊急事態宣言、対策本部、状況把握遅く。
菅は原子力災害対策特別措置法に基づき、法制定以来初めてとなる原子力緊急事態宣言を発令した。菅はただちに原子力災害対策本部を設置し、関係閣僚や官僚らを首相官邸に招集した。午後7時30分には防衛相の北沢俊美が自衛隊に原子力災害派遣命令を出し、原発付近に部隊を派遣。情報収集などにあたらせた。
緊急事態宣言をしたのは、いったんは作動した福島第1原発の緊急炉心冷却装置が動かなくなったためだ。原子炉内の水が循環しなくなれば燃料棒の熱で水が蒸発し、燃料棒が水から露出すれば損傷してしまう。事態は一気に緊迫した。
首相官邸の執務室に持ち込まれたホワイトボードには状況が次々と書き込まれていく。8席あるソファの一角に陣取った菅は、電話も使いながら指示を出し始めた。「電源車は今どこにいる?」「何台必要なんだ?」「どうやって運べばいいんだ?」
次々と出る細かな質問に周囲は「首相が指示する事柄じゃない」と内心、感じたが、思うような回答がない現状に菅は次第に焦りとイライラを募らせた。「この後考えられるシナリオは何だ。何を用意したらいいんだ」「一体どうなっているんだ。大変なことだよ、これは」――。執務室に大声が響いた。
この時点で菅には「電源さえ確保できれば問題は解決する」との認識が強かった。午後7時45分の記者会見で枝野は「放射能が漏れるような状況ではない。予防的措置だ」と繰り返し、住民らに「特別の行動を起こす必要はない」と呼びかけた。
しかし、事態は悪化に向かう。午後8時半、2号機の原子炉を暫定的に冷やしていた隔離時冷却装置が作動しなくなった。新たな電源はまだ設置されていない。2号機は完全に冷却できない状態に陥った。
午後9時23分。菅は「福島第1原発から半径3キロメートル以内の住民に避難命令、3~10キロメートルの住民に屋内退避」との指示を出した。さらに、午後9時41分には「避難する場合は10キロメートルより遠くに」との指示を追加した。枝野は午後10時、再び記者会見を開き「避難は念のための措置。環境に危険は発生していない」と強調、混乱の回避に力を入れた。
国民に混乱しないように呼びかけた同じ時刻に、原子力安全・保安院は2号機の今後について深刻な予測結果を出していた。
22時50分炉心露出
23時50分燃料被覆管破損
24時50分燃料溶融
報告は午後10時40分、首相官邸の危機管理センターに届いた。最悪の事態ばかりが並ぶ予測だ。
最後に記されていたのは「格納容器のベント(弁の開放)による放射性物質の放出」――。官邸内の危機感は一気に高まった。
緊急事態宣言をしたのは、いったんは作動した福島第1原発の緊急炉心冷却装置が動かなくなったためだ。原子炉内の水が循環しなくなれば燃料棒の熱で水が蒸発し、燃料棒が水から露出すれば損傷してしまう。事態は一気に緊迫した。
首相官邸の執務室に持ち込まれたホワイトボードには状況が次々と書き込まれていく。8席あるソファの一角に陣取った菅は、電話も使いながら指示を出し始めた。「電源車は今どこにいる?」「何台必要なんだ?」「どうやって運べばいいんだ?」
次々と出る細かな質問に周囲は「首相が指示する事柄じゃない」と内心、感じたが、思うような回答がない現状に菅は次第に焦りとイライラを募らせた。「この後考えられるシナリオは何だ。何を用意したらいいんだ」「一体どうなっているんだ。大変なことだよ、これは」――。執務室に大声が響いた。
この時点で菅には「電源さえ確保できれば問題は解決する」との認識が強かった。午後7時45分の記者会見で枝野は「放射能が漏れるような状況ではない。予防的措置だ」と繰り返し、住民らに「特別の行動を起こす必要はない」と呼びかけた。
しかし、事態は悪化に向かう。午後8時半、2号機の原子炉を暫定的に冷やしていた隔離時冷却装置が作動しなくなった。新たな電源はまだ設置されていない。2号機は完全に冷却できない状態に陥った。
午後9時23分。菅は「福島第1原発から半径3キロメートル以内の住民に避難命令、3~10キロメートルの住民に屋内退避」との指示を出した。さらに、午後9時41分には「避難する場合は10キロメートルより遠くに」との指示を追加した。枝野は午後10時、再び記者会見を開き「避難は念のための措置。環境に危険は発生していない」と強調、混乱の回避に力を入れた。
国民に混乱しないように呼びかけた同じ時刻に、原子力安全・保安院は2号機の今後について深刻な予測結果を出していた。
22時50分炉心露出
23時50分燃料被覆管破損
24時50分燃料溶融
報告は午後10時40分、首相官邸の危機管理センターに届いた。最悪の事態ばかりが並ぶ予測だ。
最後に記されていたのは「格納容器のベント(弁の開放)による放射性物質の放出」――。官邸内の危機感は一気に高まった。
:2011:04/08/09:58 ++ 立て直せるか経済政策(4)農業被害すでに5000億円超―復興に併せ農地集約も。
がれきの山、転々と横たわる車、海から流れてきたヘドロ――。大津波などで被害を受けた宮城県名取川周辺の水田地帯を視察した農林水産省の幹部は「復興までいったい何年かかるのか」とつぶやいた。
東日本大震災は農林漁業に甚大な被害をもたらした。水没したり、がれきに埋もれたりした農地は岩手や宮城など6県の合計で約2万4000ヘクタールに達する。首都圏でいえばJR山手線内の約4倍に相当する面積だ。農地や農業施設の損壊は判明分だけで1万2000カ所以上、これに農産物の損失を加えると被害額はすでに5200億円に膨らんでいる。
中間整理先送り
農林漁業政策は足踏み状態にある。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加をにらんで、政府は農地の集約や規模拡大、企業の参入促進などを柱とする農業改革を進める方針だった。3月末には基本方針の中間整理が提示される予定だったが、3月22日、鹿野道彦農相は「中間整理は物理的に難しい」と先送りする意向を示した。
実際、大震災後は閣僚級会議や副大臣級の幹事会などは開催されていない。食料の安定供給が目下の最優先課題であり、6月予定の基本方針の策定も後ずれするとみられる。
農業改革の遅れどころか、食料の供給に支障が出る可能性もある。例えば主食のコメ。被災地の岩手、宮城、福島、茨城4県で年間生産量は156万トンと、全国の約2割を占めている。
これら地域からの農産物の供給が途絶えるわけではないが、東京電力福島第1原子力発電所の事故による風評被害なども考えれば、生産量が落ち込むのはほぼ確実。大震災前の水準に戻るには数年単位の時間がかかりそうだ。
漁業再生も難題
大震災で将来の政策の方向性は見えにくくなったが、被災地の復旧・復興に併せて農業改革を進める案が農水省で出始めた。農水省幹部は「単に被災地を復旧するだけではなく、より強い農業地域をつくる必要がある」と話す。
民主党内には農業の中長期的な復興策として、公的機関が所有者の不明な農地や水没した土地を買い上げる計画などが検討されている。これと並んで農地を集約し、農家当たりの耕地面積を拡大して生産効率を高める案が浮かんでいる。公的機関が買い上げた農地を、企業が設立する農業生産法人などに低価格で譲渡する構想もある。
漁業の再生も課題。大震災では約1万9000隻の漁船が損壊し、施設なども含めた被害額は約3500億円に達している。農水省は主要漁港を中心に大型冷凍設備や水産物の加工・流通網を整備する中長期的な施策を探っている。
八田達夫・大阪大学招聘教授 農業改革は促進すべきだ。例えば、現行の戸別所得補償制度は生産調整(減反)に参加した農家にのみ支払われる形になっている。生産調整をやめ、過去の生産実績に基づいて所得補償する制度に改めれば、東日本大震災で田畑を失った農家への補償制度としても機能する。
東北地方の農業復興には株式会社の参入自由化なども必要だと考える。こうした企業に農地を売却した農家には相続税での恩恵を与えるなどの措置を取れば、農地の集約化を通じて農業の生産性を向上できる。国が被災した農地を買い上げる制度などがあってもよいと考える。大震災で離農した人への支援策も重要だ。
東日本大震災は農林漁業に甚大な被害をもたらした。水没したり、がれきに埋もれたりした農地は岩手や宮城など6県の合計で約2万4000ヘクタールに達する。首都圏でいえばJR山手線内の約4倍に相当する面積だ。農地や農業施設の損壊は判明分だけで1万2000カ所以上、これに農産物の損失を加えると被害額はすでに5200億円に膨らんでいる。
中間整理先送り
農林漁業政策は足踏み状態にある。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加をにらんで、政府は農地の集約や規模拡大、企業の参入促進などを柱とする農業改革を進める方針だった。3月末には基本方針の中間整理が提示される予定だったが、3月22日、鹿野道彦農相は「中間整理は物理的に難しい」と先送りする意向を示した。
実際、大震災後は閣僚級会議や副大臣級の幹事会などは開催されていない。食料の安定供給が目下の最優先課題であり、6月予定の基本方針の策定も後ずれするとみられる。
農業改革の遅れどころか、食料の供給に支障が出る可能性もある。例えば主食のコメ。被災地の岩手、宮城、福島、茨城4県で年間生産量は156万トンと、全国の約2割を占めている。
これら地域からの農産物の供給が途絶えるわけではないが、東京電力福島第1原子力発電所の事故による風評被害なども考えれば、生産量が落ち込むのはほぼ確実。大震災前の水準に戻るには数年単位の時間がかかりそうだ。
漁業再生も難題
大震災で将来の政策の方向性は見えにくくなったが、被災地の復旧・復興に併せて農業改革を進める案が農水省で出始めた。農水省幹部は「単に被災地を復旧するだけではなく、より強い農業地域をつくる必要がある」と話す。
民主党内には農業の中長期的な復興策として、公的機関が所有者の不明な農地や水没した土地を買い上げる計画などが検討されている。これと並んで農地を集約し、農家当たりの耕地面積を拡大して生産効率を高める案が浮かんでいる。公的機関が買い上げた農地を、企業が設立する農業生産法人などに低価格で譲渡する構想もある。
漁業の再生も課題。大震災では約1万9000隻の漁船が損壊し、施設なども含めた被害額は約3500億円に達している。農水省は主要漁港を中心に大型冷凍設備や水産物の加工・流通網を整備する中長期的な施策を探っている。
八田達夫・大阪大学招聘教授 農業改革は促進すべきだ。例えば、現行の戸別所得補償制度は生産調整(減反)に参加した農家にのみ支払われる形になっている。生産調整をやめ、過去の生産実績に基づいて所得補償する制度に改めれば、東日本大震災で田畑を失った農家への補償制度としても機能する。
東北地方の農業復興には株式会社の参入自由化なども必要だと考える。こうした企業に農地を売却した農家には相続税での恩恵を与えるなどの措置を取れば、農地の集約化を通じて農業の生産性を向上できる。国が被災した農地を買い上げる制度などがあってもよいと考える。大震災で離農した人への支援策も重要だ。
:2011:04/08/09:53 ++ 原発事故「レベル6」に見直せ(社説)
原子力安全・保安院は、福島第1原子力発電所の事故の深刻さを直視し、国際的な評価尺度を、レベル5(施設外へのリスクを伴う事故)からレベル6(大事故)にただちに引き上げるべきだ。
保安院は3月18日、福島第1事故の暫定評価として、米スリーマイル島事故と同等のレベル5と発表した。しかし、福島第1原発から外部に放出された放射性物質の量がすでにスリーマイル島事故を上回っていることは、ほぼ間違いない。
評価尺度を「5」でとどめているため、日本政府が事故を実態以上に軽く見せようとしていると、海外から疑いの目でみられている。情報を隠しているという不信の温床になる。信頼回復のため、事故評価の見直しは最低限必要なことだ。
国際原子力事象評価尺度(INES)は、原子力事故やトラブルの深刻さを知る世界共通の物差しだ。原子力施設の外に及ぼした影響の大きさで深刻度を決めている。これまで最大の事故は、広範囲に大量の放射性物質をまき散らした旧ソ連のチェルノブイリ事故で、レベル7(深刻な事故)だった。
福島第1では、水素爆発や火災で大気中に放射性物質が放出された。さらに、原子炉内の壊れた核燃料に接し、強い放射能を帯びた水が外部に漏れ出し、一部は海にも流れ出た。正確な漏出量などは現段階では不明だが、レベル5を超え、少なくともレベル6であると国内外の多くの専門家が指摘している。
保安院は、1~3号機内の核燃料棒の破損状況でも「3%以上」とあいまいな言い方に終始してきた。東京電力が早い段階から、1号機の損傷度合いは「約70%」などと公表、海外の報道を受けて6日にも改めて同じ数字を出した。保安院と東電で情報の共有化ができておらず、保安院の過小評価が際立っている。
気象庁も、原発から出た放射性物質の拡散予測を公表してこなかった。日本気象学会にいたっては、研究者が独自の予測を公表しないよう学会員に呼びかけていた。欧州の気象機関は独自の予測をインターネット上で公開している。「国民の混乱を招く」は理由にならない。情報開示の不足が不信と混乱を招く。
保安院は3月18日、福島第1事故の暫定評価として、米スリーマイル島事故と同等のレベル5と発表した。しかし、福島第1原発から外部に放出された放射性物質の量がすでにスリーマイル島事故を上回っていることは、ほぼ間違いない。
評価尺度を「5」でとどめているため、日本政府が事故を実態以上に軽く見せようとしていると、海外から疑いの目でみられている。情報を隠しているという不信の温床になる。信頼回復のため、事故評価の見直しは最低限必要なことだ。
国際原子力事象評価尺度(INES)は、原子力事故やトラブルの深刻さを知る世界共通の物差しだ。原子力施設の外に及ぼした影響の大きさで深刻度を決めている。これまで最大の事故は、広範囲に大量の放射性物質をまき散らした旧ソ連のチェルノブイリ事故で、レベル7(深刻な事故)だった。
福島第1では、水素爆発や火災で大気中に放射性物質が放出された。さらに、原子炉内の壊れた核燃料に接し、強い放射能を帯びた水が外部に漏れ出し、一部は海にも流れ出た。正確な漏出量などは現段階では不明だが、レベル5を超え、少なくともレベル6であると国内外の多くの専門家が指摘している。
保安院は、1~3号機内の核燃料棒の破損状況でも「3%以上」とあいまいな言い方に終始してきた。東京電力が早い段階から、1号機の損傷度合いは「約70%」などと公表、海外の報道を受けて6日にも改めて同じ数字を出した。保安院と東電で情報の共有化ができておらず、保安院の過小評価が際立っている。
気象庁も、原発から出た放射性物質の拡散予測を公表してこなかった。日本気象学会にいたっては、研究者が独自の予測を公表しないよう学会員に呼びかけていた。欧州の気象機関は独自の予測をインターネット上で公開している。「国民の混乱を招く」は理由にならない。情報開示の不足が不信と混乱を招く。
:2011:04/08/09:50 ++ 首相退陣論に言及、参院議長、震災対応を批判
西岡武夫参院議長は7日の記者会見で、東日本大震災や福島第1原子力発電所の事故への政府の対応について「今の状態で菅内閣が国政を担当することは許されない。(菅直人)首相が聞かないなら何らかのアクションを起こさざるを得ない」と非難した。三権の長である参院議長が首相退陣論に触れるのは異例。
首相が提唱した「復興構想会議」に関しても「会議をつくれば気が済むのか。首相は具体的な復興の方向性を示すべきだ。責任逃れとしか思えない」と断じた。参院議長は菅内閣の政権運営に批判的な立場。7日も「参院議長として黙っていられない」と政府に震災対応の改善を求めた。
首相が提唱した「復興構想会議」に関しても「会議をつくれば気が済むのか。首相は具体的な復興の方向性を示すべきだ。責任逃れとしか思えない」と断じた。参院議長は菅内閣の政権運営に批判的な立場。7日も「参院議長として黙っていられない」と政府に震災対応の改善を求めた。
:2011:04/08/09:45 ++ 宮城で震度6強、余震M7.4、東北で広域停電――女川原発の冷却、一時停止。
7日午後11時32分ごろ、東北地方を中心に強い地震があり、宮城県北、中部で震度6強、岩手県沿岸南部や宮城県南部などで震度6弱を記録した。震源は宮城県沖で、震源の深さは約40キロ。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・4と推定される。気象庁は一時、宮城県沿岸に津波警報を発令したが、約1時間20分後に解除した。(関連記事2、3面、社会面に)
気象庁によると、3月11日の本震の余震とみられる。震度6強の余震は初めて。
宮城県によると、仙台市内でガス漏れが13件、火災が5件、救急が多数、自動車内への閉じ込めなど救助が5件あったという。総務省消防庁によると、岩手県一関市で火災が2件発生し、すぐに鎮火したが、けが人が多数出ているという。各地の消防本部には、119番通報が殺到。道路の陥没や水道管の破裂などの被害も寄せられている。
経済産業省原子力安全・保安院と東京電力によると、福島第1・第2原子力発電所で設備などに新たな異常は見つかっていないという。第1原発1~3号機では原子炉への注水は続いており、7日未明から始まった1号機への窒素注入作業も継続している。事故対応にあたる作業員は全員、免震棟に退避するなどしてけが人はいないという。
4基すべてが安定停止状態にある福島第2原発では原子炉の数値に異常はないとしている。
東北電力管内では北海道と本州をつなぐ基幹網の北本連系線が止まり、360万キロワットの電気の供給が停止した。青森、岩手、秋田県の全域で停電し、宮城、山形県の一部で停電している。
東北電力の東通原発(青森県)と、日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場(青森県)では外部電源が止まり、非常用ディーゼル発電機が稼働した。東通原発の使用済み燃料プールの冷却は続いているという。
運転停止中の東北電力の女川原発(宮城県)では、使用済み核燃料プールの冷却がいったん停止したが、その後復旧。外部電源3系統のうち2系統が途絶えたが、1系統から受電が続いている。
北海道電力の泊原発(北海道)では地震の影響で出力を90%に落とし、供給を続けている。
高速道路は東北道白河―盛岡南間や、常磐道柏―いわき勿来間の上下線などで通行止めになっている。
各地の主な震度は次の通り。
震度6強 宮城県栗原市、仙台市宮城野区
震度6弱 宮城県登米市、名取市、大崎市、岩沼市、塩竈市、東松島市、松島町、涌谷町、利府町、蔵王町、岩手県大船渡市、釜石市、一関市、奥州市、矢巾町
気象庁によると、3月11日の本震の余震とみられる。震度6強の余震は初めて。
宮城県によると、仙台市内でガス漏れが13件、火災が5件、救急が多数、自動車内への閉じ込めなど救助が5件あったという。総務省消防庁によると、岩手県一関市で火災が2件発生し、すぐに鎮火したが、けが人が多数出ているという。各地の消防本部には、119番通報が殺到。道路の陥没や水道管の破裂などの被害も寄せられている。
経済産業省原子力安全・保安院と東京電力によると、福島第1・第2原子力発電所で設備などに新たな異常は見つかっていないという。第1原発1~3号機では原子炉への注水は続いており、7日未明から始まった1号機への窒素注入作業も継続している。事故対応にあたる作業員は全員、免震棟に退避するなどしてけが人はいないという。
4基すべてが安定停止状態にある福島第2原発では原子炉の数値に異常はないとしている。
東北電力管内では北海道と本州をつなぐ基幹網の北本連系線が止まり、360万キロワットの電気の供給が停止した。青森、岩手、秋田県の全域で停電し、宮城、山形県の一部で停電している。
東北電力の東通原発(青森県)と、日本原燃の使用済み核燃料の再処理工場(青森県)では外部電源が止まり、非常用ディーゼル発電機が稼働した。東通原発の使用済み燃料プールの冷却は続いているという。
運転停止中の東北電力の女川原発(宮城県)では、使用済み核燃料プールの冷却がいったん停止したが、その後復旧。外部電源3系統のうち2系統が途絶えたが、1系統から受電が続いている。
北海道電力の泊原発(北海道)では地震の影響で出力を90%に落とし、供給を続けている。
高速道路は東北道白河―盛岡南間や、常磐道柏―いわき勿来間の上下線などで通行止めになっている。
各地の主な震度は次の通り。
震度6強 宮城県栗原市、仙台市宮城野区
震度6弱 宮城県登米市、名取市、大崎市、岩沼市、塩竈市、東松島市、松島町、涌谷町、利府町、蔵王町、岩手県大船渡市、釜石市、一関市、奥州市、矢巾町
:2011:04/04/11:42 ++ 震保険、支払い50万件、「阪神」超え最大に―損保、人員投入急ぐ。
壊滅地域の査定、業界統一
東日本大震災で被災した個人向け地震保険の支払件数は50万件に達する見通しだ。阪神大震災時の6万5000件を大幅に上回り、過去最大になる。損害保険会社は今月中にも被災地への支払いを本格化する。被害の状況によって支払い水準が異なるため契約者の一部で混乱も起きている。
3月末時点での請求額は大手5社だけで25万件を突破、さらに増える見込み。支払金額は業界全体で1兆円規模に膨らむ見通しで、阪神大震災時の783億円を大きく上回る巨額補償となる。
個人向けの地震保険は支払額が1150億円を超えると政府と民間保険会社が共同で支払う仕組みがあり、官民の支払い準備金は2兆3000億円ある。このため支払い原資は十分といえる。
ただ、実際に保険金の支払いを受けた人はまだごく一部。「まだ関東近郊の契約者のみ。件数は1000件にも満たない」(大手損保)段階という。大規模な震災で、保険事務が追いついていないのだ。
大手損保は全国から震災対応のために、従業員をそれぞれ1000人規模で集め、現地に調査員を派遣したり、コールセンター要員を増員。早期に支払いできる態勢作りを急いでいる。
さらに、損保業界として「査定」の統一にも乗り出した。日本損害保険協会は航空写真を使い、津波被害が激しい宮城県気仙沼市沿岸部などを「全損」地域とすることを申し合わせた。本来は損保会社が1戸ずつ調査して損壊度合いを査定するルールだが、迅速な支払いを可能にするため業界全体で同一地域の査定をそろえることにした。
特例措置として、保険証券をなくしても免許証などで本人と確認できれば保険金を受けとれるルールも導入した。請求の期間は最長3年。契約した保険会社を忘れても、損保協会が地震保険の加入の有無や保険会社を調べる仕組みという。
東日本大震災で被災した個人向け地震保険の支払件数は50万件に達する見通しだ。阪神大震災時の6万5000件を大幅に上回り、過去最大になる。損害保険会社は今月中にも被災地への支払いを本格化する。被害の状況によって支払い水準が異なるため契約者の一部で混乱も起きている。
3月末時点での請求額は大手5社だけで25万件を突破、さらに増える見込み。支払金額は業界全体で1兆円規模に膨らむ見通しで、阪神大震災時の783億円を大きく上回る巨額補償となる。
個人向けの地震保険は支払額が1150億円を超えると政府と民間保険会社が共同で支払う仕組みがあり、官民の支払い準備金は2兆3000億円ある。このため支払い原資は十分といえる。
ただ、実際に保険金の支払いを受けた人はまだごく一部。「まだ関東近郊の契約者のみ。件数は1000件にも満たない」(大手損保)段階という。大規模な震災で、保険事務が追いついていないのだ。
大手損保は全国から震災対応のために、従業員をそれぞれ1000人規模で集め、現地に調査員を派遣したり、コールセンター要員を増員。早期に支払いできる態勢作りを急いでいる。
さらに、損保業界として「査定」の統一にも乗り出した。日本損害保険協会は航空写真を使い、津波被害が激しい宮城県気仙沼市沿岸部などを「全損」地域とすることを申し合わせた。本来は損保会社が1戸ずつ調査して損壊度合いを査定するルールだが、迅速な支払いを可能にするため業界全体で同一地域の査定をそろえることにした。
特例措置として、保険証券をなくしても免許証などで本人と確認できれば保険金を受けとれるルールも導入した。請求の期間は最長3年。契約した保険会社を忘れても、損保協会が地震保険の加入の有無や保険会社を調べる仕組みという。
:2011:04/04/11:40 ++ 地震保険、支払い50万件―補償、火災保険の3~5割、満額支払いの例は少なく。
損壊部分で査定に差も
個人向けの地震保険は火災保険に入らないと加入できない仕組みだ。補償額は建物で5000万円、家財で1000万円を上限に火災保険の保険金額の3~5割で決める。例えば火災保険で建物に1000万円の保険をかけた場合、地震保険の保険金は300万~500万円から選択する。
ただ、満額で受けとれる例は少ない。建物の時価が基準になるほか、倒壊・傾斜の条件が厳しく、阪神大震災時の支払額は1件当たり平均100万円程度。今回も200万~300万円にとどまる見通しだ。自動車が津波で流された場合も、特約を付けていないと通常の自動車保険だけでは補償の対象にはならない。
宮城県気仙沼市、岩手県大槌町と山田町の沿岸部は地震保険の保険金が契約に応じて満額出る「全損」地域に認められた。一方、液状化現象が起きた千葉県浦安市、東京都江東区、埼玉県久喜市などでは地震保険に加入しているにもかかわらず、補償対象外とされるケースが相次いでいる。
江東区内のマンションに住む男性会社員(43)は震災の被害に頭を悩ませる。建物の外壁の一部ははげ落ち、道路と隔てる塀は傾いたまま。管理組合としてロビーなど共用部分には地震保険をかけているが、建物の柱など「主要構造部」には今のところ被害が見あたらないため、保険金は出ない。この男性は「組合で修理することになるが、費用は数百万円になりそうだ」と肩を落とす。
液状化で建物が傾いたり、沈んだりした場合は地震保険の補償範囲になる。建物の構造によって条件は異なるが、例えば鉄筋コンクリート造りの場合、1メートルを超えて沈んだり、1・2度を超えて傾いたりした場合は全損として扱う。ただ「査定する人によって判断が異なる場合があり得る」(大手損保)のも事実だ。
特にマンションだと保険会社は1棟ごとに損害を認定する。部屋に応じて損害度合いが異なっても、軽い査定に統一される可能性もある。震災後、インターネット上の質問サイトでは地震保険に関する質問が急増している。
個人向けの地震保険は火災保険に入らないと加入できない仕組みだ。補償額は建物で5000万円、家財で1000万円を上限に火災保険の保険金額の3~5割で決める。例えば火災保険で建物に1000万円の保険をかけた場合、地震保険の保険金は300万~500万円から選択する。
ただ、満額で受けとれる例は少ない。建物の時価が基準になるほか、倒壊・傾斜の条件が厳しく、阪神大震災時の支払額は1件当たり平均100万円程度。今回も200万~300万円にとどまる見通しだ。自動車が津波で流された場合も、特約を付けていないと通常の自動車保険だけでは補償の対象にはならない。
宮城県気仙沼市、岩手県大槌町と山田町の沿岸部は地震保険の保険金が契約に応じて満額出る「全損」地域に認められた。一方、液状化現象が起きた千葉県浦安市、東京都江東区、埼玉県久喜市などでは地震保険に加入しているにもかかわらず、補償対象外とされるケースが相次いでいる。
江東区内のマンションに住む男性会社員(43)は震災の被害に頭を悩ませる。建物の外壁の一部ははげ落ち、道路と隔てる塀は傾いたまま。管理組合としてロビーなど共用部分には地震保険をかけているが、建物の柱など「主要構造部」には今のところ被害が見あたらないため、保険金は出ない。この男性は「組合で修理することになるが、費用は数百万円になりそうだ」と肩を落とす。
液状化で建物が傾いたり、沈んだりした場合は地震保険の補償範囲になる。建物の構造によって条件は異なるが、例えば鉄筋コンクリート造りの場合、1メートルを超えて沈んだり、1・2度を超えて傾いたりした場合は全損として扱う。ただ「査定する人によって判断が異なる場合があり得る」(大手損保)のも事実だ。
特にマンションだと保険会社は1棟ごとに損害を認定する。部屋に応じて損害度合いが異なっても、軽い査定に統一される可能性もある。震災後、インターネット上の質問サイトでは地震保険に関する質問が急増している。
:2011:03/24/11:19 ++ 東電賠償、国も負担、避難住民や農家・企業向け、被害長期化、巨額に。
東京電力福島第1原子力発電所の事故で、政府は避難した住民や農作物の出荷を停止した農家などへの補償の検討に入る。補償は本来なら東電の全額負担だが、かなりの巨額に上るため国も一定の割合を負担する方針だ。政府・民主党内には国の負担上限を引き上げる考えも浮上している。国の負担は巡り巡って国民負担になる。東電の責任を明確にしながら国民の理解を得るという難しいかじ取りを迫られそうだ。
原子力事故の補償を規定する原子力損害賠償法は、事故が起きた場合、原則として原子力事業者がすべて賠償すると定めている。併せて損害賠償責任保険の加入と政府補償契約の締結を義務付け、原発1カ所(福島第1原発では全体で1カ所)当たり最高1200億円が保険と補償で賄える。それを超えた額は事業者が払う。
今回の事故では被害の確定に長時間がかかるうえ、対象は農家や避難住民のほか、休業せざるを得なかった企業など広範囲に及ぶ見込み。原子力損害賠償に詳しい中所克博弁護士は「どこまで賠償するかの線引きが非常に難しい」と話す。
1999年の東海村臨界事故(茨城県)では避難した住民は50世帯弱だったが賠償対象は約7000件、支払い総額は約146億円だった。今回は約8万人が避難し、農産物の出荷が幅広い地域で停止。政府内には賠償額が1200億円を大きく上回り、数兆円規模になるとの見方もある。
この超過分について、同法は国が支援できると定める一方、「天災や社会的動乱」の場合は事業者が責任を免れ、国が負担するとの規定もある。こうした中で、枝野幸男官房長官は21日の記者会見で「まずは東電に責任を持ってもらう。十分に補償できない場合は国が担保する」と述べ、官民で賠償を負担する方向を示した。東電の鼓紀男副社長も「(東電の)責任はある」と話し、免責には否定的な見方を示した。
上限見直し検討
政府・民主党も23日、政府補償を含む賠償責任額の上限を引き上げる方向で検討に入った。民主党が同日開いた特別立法調査チームの会合で、中川正春座長は「(現行制度で)東電が持ちこたえられるかは政治的な判断になる」と述べた。
日本原子力産業協会によると、米国では原発事故による電力会社の賠償責任は約100億ドル(約8100億円)が上限。損害額が上限を超える場合は大統領が補償計画をつくり、議会に諮る。ドイツは約25億ユーロ(2870億円)を保険で賄い、超過分も事業者の責任になる。戦争や巨大な自然現象などによる事故の場合は政府が補償する仕組みがあり、この点は日本と似ている。
「東電を見る国民の目は厳しい」(経済産業省幹部)のも事実だが、東電に多くの負担を求めても電力料金引き上げにつながったり、経営不安に陥って電気の供給責任を果たせなくなったりする懸念もある。政府は難しい対応を迫られる。
▼原子力損害賠償法 原子力発電や原発燃料の製造過程などで起きた事故の被害者を救済するため、1961年に制定された。原子力事業者に無限の賠償責任を課す。事業者には原子力損害賠償責任保険への加入などを義務付けている。事故の原因が「天災や社会的動乱」と認定されれば、事業者は免責されて国が責任を負う。賠償金が保険限度額を超えると国が補償する仕組みもある。
原子力事故の補償を規定する原子力損害賠償法は、事故が起きた場合、原則として原子力事業者がすべて賠償すると定めている。併せて損害賠償責任保険の加入と政府補償契約の締結を義務付け、原発1カ所(福島第1原発では全体で1カ所)当たり最高1200億円が保険と補償で賄える。それを超えた額は事業者が払う。
今回の事故では被害の確定に長時間がかかるうえ、対象は農家や避難住民のほか、休業せざるを得なかった企業など広範囲に及ぶ見込み。原子力損害賠償に詳しい中所克博弁護士は「どこまで賠償するかの線引きが非常に難しい」と話す。
1999年の東海村臨界事故(茨城県)では避難した住民は50世帯弱だったが賠償対象は約7000件、支払い総額は約146億円だった。今回は約8万人が避難し、農産物の出荷が幅広い地域で停止。政府内には賠償額が1200億円を大きく上回り、数兆円規模になるとの見方もある。
この超過分について、同法は国が支援できると定める一方、「天災や社会的動乱」の場合は事業者が責任を免れ、国が負担するとの規定もある。こうした中で、枝野幸男官房長官は21日の記者会見で「まずは東電に責任を持ってもらう。十分に補償できない場合は国が担保する」と述べ、官民で賠償を負担する方向を示した。東電の鼓紀男副社長も「(東電の)責任はある」と話し、免責には否定的な見方を示した。
上限見直し検討
政府・民主党も23日、政府補償を含む賠償責任額の上限を引き上げる方向で検討に入った。民主党が同日開いた特別立法調査チームの会合で、中川正春座長は「(現行制度で)東電が持ちこたえられるかは政治的な判断になる」と述べた。
日本原子力産業協会によると、米国では原発事故による電力会社の賠償責任は約100億ドル(約8100億円)が上限。損害額が上限を超える場合は大統領が補償計画をつくり、議会に諮る。ドイツは約25億ユーロ(2870億円)を保険で賄い、超過分も事業者の責任になる。戦争や巨大な自然現象などによる事故の場合は政府が補償する仕組みがあり、この点は日本と似ている。
「東電を見る国民の目は厳しい」(経済産業省幹部)のも事実だが、東電に多くの負担を求めても電力料金引き上げにつながったり、経営不安に陥って電気の供給責任を果たせなくなったりする懸念もある。政府は難しい対応を迫られる。
▼原子力損害賠償法 原子力発電や原発燃料の製造過程などで起きた事故の被害者を救済するため、1961年に制定された。原子力事業者に無限の賠償責任を課す。事業者には原子力損害賠償責任保険への加入などを義務付けている。事故の原因が「天災や社会的動乱」と認定されれば、事業者は免責されて国が責任を負う。賠償金が保険限度額を超えると国が補償する仕組みもある。