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:2010:09/08/09:16 ++ 尖閣沖海保船接触、日中に再び火種、政府、中国の意図分析急ぐ。
尖閣諸島付近での海上保安庁の巡視船と中国漁船の接触を巡り日中両国政府は7日、相手国の大使に抗議を伝えるなど応酬を繰り広げた。日本政府は領海内での中国漁船の行動を問題視し、船長を逮捕する方針。東シナ海から太平洋にかけて中国艦船の動きが活発化している事実とも併せ、意図や背景の分析を急ぐ。中国側も強い姿勢を打ち出しており、両国関係に再び険しさが漂っている。(1面参照)
7日夜、首相官邸では仙谷由人官房長官、外務省、法務省、海上保安庁など関係省庁の幹部らが協議し、船長逮捕の方向を確認した。中国漁船への立ち入り調査も踏まえ、領海内での一連の行為は放置できないと判断した。
■自衛隊も情報収集 これに先立ち、杉本正彦海上幕僚長は記者会見で海上自衛隊の哨戒機が現場の情報収集に当たったことを明らかにした。
中国海軍の日本近海での活発な行動も、日本側が神経をとがらせる一因だ。2008年12月、中国の海洋調査船が尖閣諸島付近の日本領海内に侵入。今年も沖縄本島と宮古島の間の公海上を潜水艦、駆逐艦など10隻の艦隊が航行、中国の艦載ヘリコプターが海自護衛艦に異常接近した。
東シナ海ではガス田開発問題を巡り日中が長く対立。共同開発などを柱とする日中合意が成立したとはいえ、最近の中国の動きは同海域での海洋権益の確保を見据えた動きとみられている。
外務省幹部は7日、中国側の主張に関し「尖閣が自国領だとする中国のいつもの反応だ」と指摘。防衛省は「一義的には海保が対応する」としている。外国の軍艦による領海侵犯ではないため海自の護衛艦などが対応する段階ではなく、通常の警戒監視を続ける方針だ。
■ネットには対日批判 尖閣諸島を巡っては、クローリー米国務次官補が8月、日米安全保障条約による米国の日本防衛の義務が及ぶかどうかに関して「尖閣諸島が条約に適用されるかと問われれば、答えはイエスだ」と表明。適用対象であるとの見解を明確にしている。
中国側は記者会見で「さらなる対応を取る権利を保留する」と述べている。中国のインターネット上では「我が領土を守れ」などと対日批判の書き込みが殺到。胡錦濤指導部の弱腰姿勢を批判する意見も出始めた。対日関係を重視する胡指導部は火種の拡大を望まないものの、国内を意識して一段と強い姿勢を示さざるを得なくなる可能性もある。
中国は海洋権益を確保するため東アジアや南アジアでの監視活動を一層強化している。ただ、胡指導部も日本との間の不測の事態を懸念。8月28日の日中外相会談では、防衛当局間の海上連絡体制づくりや捜索救助協定の早期妥結に向けて努力することを確認していた。
米国防総省は、軍事訓練を受けた中国の海上民兵が民間人の姿を借りて漁船に乗り込むことがあるとみている。昨年3月、南シナ海で米海軍調査艦の妨害事件を起こした中国漁船は海上民兵だった可能性が高いとされる。
尖閣諸島を巡っては台湾も領有権を主張している。中台関係が改善するなか台湾の態度も注目されるが、7日夜現在、声明なども発表せず、今のところ目立った反応はしていない。
7日夜、首相官邸では仙谷由人官房長官、外務省、法務省、海上保安庁など関係省庁の幹部らが協議し、船長逮捕の方向を確認した。中国漁船への立ち入り調査も踏まえ、領海内での一連の行為は放置できないと判断した。
■自衛隊も情報収集 これに先立ち、杉本正彦海上幕僚長は記者会見で海上自衛隊の哨戒機が現場の情報収集に当たったことを明らかにした。
中国海軍の日本近海での活発な行動も、日本側が神経をとがらせる一因だ。2008年12月、中国の海洋調査船が尖閣諸島付近の日本領海内に侵入。今年も沖縄本島と宮古島の間の公海上を潜水艦、駆逐艦など10隻の艦隊が航行、中国の艦載ヘリコプターが海自護衛艦に異常接近した。
東シナ海ではガス田開発問題を巡り日中が長く対立。共同開発などを柱とする日中合意が成立したとはいえ、最近の中国の動きは同海域での海洋権益の確保を見据えた動きとみられている。
外務省幹部は7日、中国側の主張に関し「尖閣が自国領だとする中国のいつもの反応だ」と指摘。防衛省は「一義的には海保が対応する」としている。外国の軍艦による領海侵犯ではないため海自の護衛艦などが対応する段階ではなく、通常の警戒監視を続ける方針だ。
■ネットには対日批判 尖閣諸島を巡っては、クローリー米国務次官補が8月、日米安全保障条約による米国の日本防衛の義務が及ぶかどうかに関して「尖閣諸島が条約に適用されるかと問われれば、答えはイエスだ」と表明。適用対象であるとの見解を明確にしている。
中国側は記者会見で「さらなる対応を取る権利を保留する」と述べている。中国のインターネット上では「我が領土を守れ」などと対日批判の書き込みが殺到。胡錦濤指導部の弱腰姿勢を批判する意見も出始めた。対日関係を重視する胡指導部は火種の拡大を望まないものの、国内を意識して一段と強い姿勢を示さざるを得なくなる可能性もある。
中国は海洋権益を確保するため東アジアや南アジアでの監視活動を一層強化している。ただ、胡指導部も日本との間の不測の事態を懸念。8月28日の日中外相会談では、防衛当局間の海上連絡体制づくりや捜索救助協定の早期妥結に向けて努力することを確認していた。
米国防総省は、軍事訓練を受けた中国の海上民兵が民間人の姿を借りて漁船に乗り込むことがあるとみている。昨年3月、南シナ海で米海軍調査艦の妨害事件を起こした中国漁船は海上民兵だった可能性が高いとされる。
尖閣諸島を巡っては台湾も領有権を主張している。中台関係が改善するなか台湾の態度も注目されるが、7日夜現在、声明なども発表せず、今のところ目立った反応はしていない。
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:2010:09/08/09:11 ++ 小菅の御輿を担ぐ人(2)閣僚たちの忠誠と計算――農相山田氏、財務相野田氏。
7日の閣議後の記者会見。争点はやはり「小沢」だった。
会見が主戦場に
「財源をどうするかというところが少し粗っぽい」「積算の根拠がよくわからない」――。財務相の野田佳彦(53)は前幹事長、小沢一郎(68)が代表選で唱える子ども手当の満額支給や地方自治体への補助金の一括交付金化を批判。一方、農相の山田正彦(68)は「戸別所得補償をできるだけ早く本格実施していきたい」と小沢を援護射撃した。
今回の代表選の特色の一つは首相、菅直人(63)の推薦人に閣僚が7人も名を連ねたことだ。国土交通相の前原誠司(48)、行政刷新相の蓮舫(42)らは官僚から仕入れた情報も活用しながら閣議後の記者会見を反小沢のプロパガンダに活用。野田は財源の面から小沢を徹底的に攻める。
共に当選5回。鳩山内閣で副大臣に就き、菅内閣で閣僚に――。野田と山田の数少ない共通点だ。「小沢」を対称軸に2人の政治信条や歩みは大きく異なる。
山田は新生党で初当選し、新進党、自由党、民主党で小沢と政治行動を共にしてきた。弁護士で法律に明るく、スキャンダル処理にも強いというのが大方の山田評。新進党時代には国会で不正融資疑惑に絡めて自民党を追及する先頭に立ち、民主党議員としてパチンコ業界の不況問題を国会で取り上げたこともある。
「いつか必ず小沢を首相にさせたいと思っている」と周囲に語ってきた山田。小沢が菅を破った2006年代表選では小沢の推薦人に名を連ねた。菅内閣の一員として迎えた今回の代表選は表だって汗をかけないジレンマがあるが、地元では小沢支持を示唆。閣議後の記者会見は小沢を側面支援できる数少ない場だ。
トロイカに反発
「心底怒りを感じる」。1日夜、東京・赤坂の中華料理店。野田の鋭い語気に、同席した議員は思わず箸(はし)を置いた。憤りの理由はトロイカ体制の復活論。「小沢さんが発言し、鳩山(由紀夫前首相、63)さんが追随する。そして輿石(東参院議員会長、74)さんがうなずく。菅さんは少しだけモノを言う。トロイカとは、小沢さんの顔色を見て物事を決める体制だ」。「反小沢」を政治信条とする野田は一気にまくし立てた。
02年代表選で鳩山、菅らと相まみえ「ポスト・トロイカ」の先頭に立ったはずの野田。気がつけば松下政経塾の後輩たちが先を走る。前原は05年に代表に就き、今年6月の代表選では自らのグループにかつて属した樽床伸二(51)が菅の対抗馬に名乗りを上げた。
菅、鳩山と野田の年齢差は10歳。とはいえ、野心を封じ、菅の応援団に徹する守りの戦略が吉と出る保証はない。(
会見が主戦場に
「財源をどうするかというところが少し粗っぽい」「積算の根拠がよくわからない」――。財務相の野田佳彦(53)は前幹事長、小沢一郎(68)が代表選で唱える子ども手当の満額支給や地方自治体への補助金の一括交付金化を批判。一方、農相の山田正彦(68)は「戸別所得補償をできるだけ早く本格実施していきたい」と小沢を援護射撃した。
今回の代表選の特色の一つは首相、菅直人(63)の推薦人に閣僚が7人も名を連ねたことだ。国土交通相の前原誠司(48)、行政刷新相の蓮舫(42)らは官僚から仕入れた情報も活用しながら閣議後の記者会見を反小沢のプロパガンダに活用。野田は財源の面から小沢を徹底的に攻める。
共に当選5回。鳩山内閣で副大臣に就き、菅内閣で閣僚に――。野田と山田の数少ない共通点だ。「小沢」を対称軸に2人の政治信条や歩みは大きく異なる。
山田は新生党で初当選し、新進党、自由党、民主党で小沢と政治行動を共にしてきた。弁護士で法律に明るく、スキャンダル処理にも強いというのが大方の山田評。新進党時代には国会で不正融資疑惑に絡めて自民党を追及する先頭に立ち、民主党議員としてパチンコ業界の不況問題を国会で取り上げたこともある。
「いつか必ず小沢を首相にさせたいと思っている」と周囲に語ってきた山田。小沢が菅を破った2006年代表選では小沢の推薦人に名を連ねた。菅内閣の一員として迎えた今回の代表選は表だって汗をかけないジレンマがあるが、地元では小沢支持を示唆。閣議後の記者会見は小沢を側面支援できる数少ない場だ。
トロイカに反発
「心底怒りを感じる」。1日夜、東京・赤坂の中華料理店。野田の鋭い語気に、同席した議員は思わず箸(はし)を置いた。憤りの理由はトロイカ体制の復活論。「小沢さんが発言し、鳩山(由紀夫前首相、63)さんが追随する。そして輿石(東参院議員会長、74)さんがうなずく。菅さんは少しだけモノを言う。トロイカとは、小沢さんの顔色を見て物事を決める体制だ」。「反小沢」を政治信条とする野田は一気にまくし立てた。
02年代表選で鳩山、菅らと相まみえ「ポスト・トロイカ」の先頭に立ったはずの野田。気がつけば松下政経塾の後輩たちが先を走る。前原は05年に代表に就き、今年6月の代表選では自らのグループにかつて属した樽床伸二(51)が菅の対抗馬に名乗りを上げた。
菅、鳩山と野田の年齢差は10歳。とはいえ、野心を封じ、菅の応援団に徹する守りの戦略が吉と出る保証はない。(
:2010:09/08/08:58 ++ 尖閣沖海保船接触、中国船船長を逮捕へ、公務執行妨害容疑、日中双方が抗議。
7日午前、尖閣諸島の久場島から北北西約12キロメートルの海上で、海上保安庁第11管区海上保安本部の巡視船「よなくに」などと中国の底引き網漁船が接触した問題で、同庁は7日夜、公務執行妨害容疑で中国漁船の船長(41)の逮捕状を請求した。(関連記事3面に)
中国漁船は「よなくに」と接触した後、停船命令に従わなかった上、さらに巡視船「みずき」に接触。同庁は一連の行為が公務執行妨害容疑にあたると判断したもようだ。
8日午前1時現在、中国漁船は洋上で同保安本部の監視下にあり、石垣島に向かっているとみられる。
外務省の北野充アジア大洋州局審議官は7日夕、漁船接触について在日中国大使館の劉少賓公使参事官を呼び、遺憾の意を伝えて抗議。夜には斎木昭隆アジア大洋州局長が中国の程永華駐日大使に電話し、強く抗議したうえで「日本の国内法、国内手続きに従って対応する」と伝えた。
一方、中国外務省の姜瑜副報道局長は同日午後の記者会見で「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領土で、日本の巡視船は『権益保護活動』をしてはならず、中国の船舶や人員に危険を及ぼす行為をしてはならない」と要求。中国国営の新華社によると、中国の宋濤外務次官は同日、丹羽宇一郎駐中国大使と会い、日本の巡視船による中国漁船の停船に抗議した。
中国漁船は「よなくに」と接触した後、停船命令に従わなかった上、さらに巡視船「みずき」に接触。同庁は一連の行為が公務執行妨害容疑にあたると判断したもようだ。
8日午前1時現在、中国漁船は洋上で同保安本部の監視下にあり、石垣島に向かっているとみられる。
外務省の北野充アジア大洋州局審議官は7日夕、漁船接触について在日中国大使館の劉少賓公使参事官を呼び、遺憾の意を伝えて抗議。夜には斎木昭隆アジア大洋州局長が中国の程永華駐日大使に電話し、強く抗議したうえで「日本の国内法、国内手続きに従って対応する」と伝えた。
一方、中国外務省の姜瑜副報道局長は同日午後の記者会見で「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領土で、日本の巡視船は『権益保護活動』をしてはならず、中国の船舶や人員に危険を及ぼす行為をしてはならない」と要求。中国国営の新華社によると、中国の宋濤外務次官は同日、丹羽宇一郎駐中国大使と会い、日本の巡視船による中国漁船の停船に抗議した。
:2010:09/08/08:58 ++ 尖閣沖海保船接触、中国船船長を逮捕へ、公務執行妨害容疑、日中双方が抗議。
7日午前、尖閣諸島の久場島から北北西約12キロメートルの海上で、海上保安庁第11管区海上保安本部の巡視船「よなくに」などと中国の底引き網漁船が接触した問題で、同庁は7日夜、公務執行妨害容疑で中国漁船の船長(41)の逮捕状を請求した。(関連記事3面に)
中国漁船は「よなくに」と接触した後、停船命令に従わなかった上、さらに巡視船「みずき」に接触。同庁は一連の行為が公務執行妨害容疑にあたると判断したもようだ。
8日午前1時現在、中国漁船は洋上で同保安本部の監視下にあり、石垣島に向かっているとみられる。
外務省の北野充アジア大洋州局審議官は7日夕、漁船接触について在日中国大使館の劉少賓公使参事官を呼び、遺憾の意を伝えて抗議。夜には斎木昭隆アジア大洋州局長が中国の程永華駐日大使に電話し、強く抗議したうえで「日本の国内法、国内手続きに従って対応する」と伝えた。
一方、中国外務省の姜瑜副報道局長は同日午後の記者会見で「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領土で、日本の巡視船は『権益保護活動』をしてはならず、中国の船舶や人員に危険を及ぼす行為をしてはならない」と要求。中国国営の新華社によると、中国の宋濤外務次官は同日、丹羽宇一郎駐中国大使と会い、日本の巡視船による中国漁船の停船に抗議した。
中国漁船は「よなくに」と接触した後、停船命令に従わなかった上、さらに巡視船「みずき」に接触。同庁は一連の行為が公務執行妨害容疑にあたると判断したもようだ。
8日午前1時現在、中国漁船は洋上で同保安本部の監視下にあり、石垣島に向かっているとみられる。
外務省の北野充アジア大洋州局審議官は7日夕、漁船接触について在日中国大使館の劉少賓公使参事官を呼び、遺憾の意を伝えて抗議。夜には斎木昭隆アジア大洋州局長が中国の程永華駐日大使に電話し、強く抗議したうえで「日本の国内法、国内手続きに従って対応する」と伝えた。
一方、中国外務省の姜瑜副報道局長は同日午後の記者会見で「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国領土で、日本の巡視船は『権益保護活動』をしてはならず、中国の船舶や人員に危険を及ぼす行為をしてはならない」と要求。中国国営の新華社によると、中国の宋濤外務次官は同日、丹羽宇一郎駐中国大使と会い、日本の巡視船による中国漁船の停船に抗議した。
:2010:09/07/09:34 ++ 私はこう見る―東大教授北岡伸一氏、「頼りなさ」と「非現実性」(民主代表選)
――民主党代表選で戦う菅直人首相と小沢一郎前幹事長の外交・安全保障問題をめぐる主張をどうみますか。
「菅さんは率直に言って、ちょっと頼りないなあと感じる。一方の小沢さんの主張には、一見もっともらしいが、非現実的な政策が少なくない」
同盟の将来示せ
――例えば、どのあたりですか。
「米軍普天間基地の移設問題などについて、小沢さんが沖縄の気持ちを大切にしなければならないというのは分かる。米軍基地がなくてすむなら、そのほうが良いに決まっている。だが、中国の軍事費は20年間で約20倍に増え、東シナ海や南シナ海での中国海軍の行動は大胆になってきている。こうした中国軍の膨張にどう対応していくのか。そんな疑問に答える政策を示してほしい」
――小沢氏は自前の防衛力を整えれば米海軍の第7艦隊だけでも日本の安保は成り立つとの考え方です。
「それなら、具体的に自衛隊をどのように強化していくのか。国内総生産(GDP)に占める日本の防衛費は約0・8%で、米国と同盟を組んでいる英国や韓国の約3分の1、ないしはそれ以下だ。米軍への依存を減らすならこの比率を上げるのか。消費税を上げないで、そのための財源をまかなえると考えているのか。そのあたりを教えてもらいたい」
――一方の菅首相はどうですか。
「もっと捨て身でやってほしい。日本が置かれた厳しい安全保障の環境を、どこまで真剣に受け止めているのか疑問だ。日米同盟の亀裂を防ぐために何らかの手を打つべきなのに、普天間問題も含めて何もやっていないに等しい」
「首相になった以上、安全保障や外交が苦手ではすまされない。もっと、必死になって勉強してもらいたい。これから大事なのは、年内にまとめる新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)だ。有識者の懇談会から武器輸出三原則や集団的自衛権の解釈の一部見直しが提起されたが、逃げずに真剣に検討してほしい」
幕末と似る混乱
――民主党の行方をどう占いますか。
「菅さんは当初、小沢さんとの対決を避け、あいまいな格好で乗り切ろうとした。だが、日米同盟や消費税、政治倫理のあり方など、両者の立場はあまりにも違いすぎる。民主党全体でみても、基本路線が大きく異なる人たちが集まっている。いつまでも一緒にはいられないだろう」
――政治の混乱が続くいまの状況は、比較すると過去のどの時代に似ていると思いますか。
「幕末に似ている。当時、幕府は外国や国民にいろいろと約束するが、全然、実現できない状況に陥っていた。そうした体制を改革したのが、薩長による武力討幕だった。もちろん、いまはそんな手法はとれない。だからこそ、政党がしっかりしてくれないと困る」
「菅さんは率直に言って、ちょっと頼りないなあと感じる。一方の小沢さんの主張には、一見もっともらしいが、非現実的な政策が少なくない」
同盟の将来示せ
――例えば、どのあたりですか。
「米軍普天間基地の移設問題などについて、小沢さんが沖縄の気持ちを大切にしなければならないというのは分かる。米軍基地がなくてすむなら、そのほうが良いに決まっている。だが、中国の軍事費は20年間で約20倍に増え、東シナ海や南シナ海での中国海軍の行動は大胆になってきている。こうした中国軍の膨張にどう対応していくのか。そんな疑問に答える政策を示してほしい」
――小沢氏は自前の防衛力を整えれば米海軍の第7艦隊だけでも日本の安保は成り立つとの考え方です。
「それなら、具体的に自衛隊をどのように強化していくのか。国内総生産(GDP)に占める日本の防衛費は約0・8%で、米国と同盟を組んでいる英国や韓国の約3分の1、ないしはそれ以下だ。米軍への依存を減らすならこの比率を上げるのか。消費税を上げないで、そのための財源をまかなえると考えているのか。そのあたりを教えてもらいたい」
――一方の菅首相はどうですか。
「もっと捨て身でやってほしい。日本が置かれた厳しい安全保障の環境を、どこまで真剣に受け止めているのか疑問だ。日米同盟の亀裂を防ぐために何らかの手を打つべきなのに、普天間問題も含めて何もやっていないに等しい」
「首相になった以上、安全保障や外交が苦手ではすまされない。もっと、必死になって勉強してもらいたい。これから大事なのは、年内にまとめる新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)だ。有識者の懇談会から武器輸出三原則や集団的自衛権の解釈の一部見直しが提起されたが、逃げずに真剣に検討してほしい」
幕末と似る混乱
――民主党の行方をどう占いますか。
「菅さんは当初、小沢さんとの対決を避け、あいまいな格好で乗り切ろうとした。だが、日米同盟や消費税、政治倫理のあり方など、両者の立場はあまりにも違いすぎる。民主党全体でみても、基本路線が大きく異なる人たちが集まっている。いつまでも一緒にはいられないだろう」
――政治の混乱が続くいまの状況は、比較すると過去のどの時代に似ていると思いますか。
「幕末に似ている。当時、幕府は外国や国民にいろいろと約束するが、全然、実現できない状況に陥っていた。そうした体制を改革したのが、薩長による武力討幕だった。もちろん、いまはそんな手法はとれない。だからこそ、政党がしっかりしてくれないと困る」
:2010:09/07/08:58 ++ CO2排出枠、家庭の削減分、企業に売却、国が回収し取引。
政府は2011年度から、太陽光発電や電気自動車などの導入によって家庭で二酸化炭素(CO2)の排出を減らした分を排出枠として集め、企業に売却する事業を始める。環境関連機器の購入に補助金を出す見返りに排出枠を国が取得したとみなす。排出枠を購入した企業は自社が減らした分として計算できる。
経済産業省によると、家庭の排出枠に経済価値を付けて取引するのは国レベルでは世界で初めてという。国全体の約2割を占める家庭部門のCO2排出を抑えるとともに、国の排出削減目標にも貢献できる仕組みをつくるのが狙いだ。
同省は11年度、導入促進の補助金として10年度の当初予算に比べ約3割増の890億円の予算を要求。この金額が通ると太陽光発電機は約17万、電気自動車は約3万台の普及につながる。各家庭でのCO2排出量はそれぞれ年間約1トン減るといい、計20万台がフル稼働すれば年間20万トン余りの排出枠を集められる。
これを国がまとめ、購入を希望するエネルギーや素材などの企業に売却する。企業は京都議定書の目標達成などに排出枠を活用できる。
売却額は市場価格を参考に決める。最近は排出枠1トン当たり1000~2000円で、来年度に家庭が導入した太陽光発電機や電気自動車の計20万台がその後10年稼働すると、累計で最大40億円の排出枠の売却が見込める。売却益は国庫に納める。
補助金は太陽光発電の平均的な機器(1基200万~250万円)で30万円弱、約380万円の電気自動車では114万円。家庭用燃料電池や高効率給湯器なども対象となる。補助金を受け取るには各家庭の申請が必要となる。
20万トンは家庭部門の排出の約0・1%にすぎないが、今回の仕組みをきっかけに国内で排出枠を取引する仕組みを広げ、国としての温暖化ガス削減につなげる考えだ。
経済産業省によると、家庭の排出枠に経済価値を付けて取引するのは国レベルでは世界で初めてという。国全体の約2割を占める家庭部門のCO2排出を抑えるとともに、国の排出削減目標にも貢献できる仕組みをつくるのが狙いだ。
同省は11年度、導入促進の補助金として10年度の当初予算に比べ約3割増の890億円の予算を要求。この金額が通ると太陽光発電機は約17万、電気自動車は約3万台の普及につながる。各家庭でのCO2排出量はそれぞれ年間約1トン減るといい、計20万台がフル稼働すれば年間20万トン余りの排出枠を集められる。
これを国がまとめ、購入を希望するエネルギーや素材などの企業に売却する。企業は京都議定書の目標達成などに排出枠を活用できる。
売却額は市場価格を参考に決める。最近は排出枠1トン当たり1000~2000円で、来年度に家庭が導入した太陽光発電機や電気自動車の計20万台がその後10年稼働すると、累計で最大40億円の排出枠の売却が見込める。売却益は国庫に納める。
補助金は太陽光発電の平均的な機器(1基200万~250万円)で30万円弱、約380万円の電気自動車では114万円。家庭用燃料電池や高効率給湯器なども対象となる。補助金を受け取るには各家庭の申請が必要となる。
20万トンは家庭部門の排出の約0・1%にすぎないが、今回の仕組みをきっかけに国内で排出枠を取引する仕組みを広げ、国としての温暖化ガス削減につなげる考えだ。
:2010:09/06/09:31 ++ 大空位時代に入る政治―弱い“王”で改革は進まず(核心)
来週の民主党代表選で誰が選ばれようとも、その先の日本の姿は見えてきたように思える。
菅直人氏と小沢一郎氏の確執は続くし、民主党は参院で過半数に達しておらず、政権は二重の弱さを抱える。小沢氏側では野党の一部とも組み新しい政治勢力をつくる動きもあるようだが、改革への強い志と指導力がなければ日本をよくする政権はできない。
あえてたとえるなら大空位時代の到来か。日本経済の力が衰えていくなかで、必要な決断をできない。そうなれば悲劇だが、それを避ける道はまことに狭い。
13世紀半ば、今のドイツの神聖ローマ帝国では2人の皇帝候補がいたが、ともに即位できず、空位が20年近く続いた。国内は麻のごとく乱れ、諸侯や聖職者は好き勝手に領土の拡張や権力獲得に動く。元祖、大空位時代である。
戦前の日本では第2次若槻礼次郎内閣の下、関東軍が主導し満州事変を起こした。若槻は前任の浜口雄幸ほど指導力がなく軍部の暴走を抑えきれなかった。これも大空位に似ている。
独裁者の専横は論外だがリーダーの力が弱すぎるとさまざまな勢力が自己主張を強めて、国は道を誤る。歴史の教訓である。
もう一つ例を挙げれば、サッチャー英元首相の前任者、労働党のキャラハン首相だ。苦労人で人気はあったが、充実した社会保障や基幹産業の国有化などに起因する英国病が高じてストが多発。医師や看護師も加わって病院も機能しないありさま。それに対し労働党内の抗争もあり有効な対策を取れなかった。
わが民主党政権も同じ道に迷い込むかにみえる。
すでに菅首相は弱いリーダーだ。参院選敗北後、小沢氏らの批判を受けて、消費税増税をめぐる発言のトーンを弱めたほか、何かと口を慎んでいる。
もし菅氏が代表選に勝っても党内の対立を修復するのは容易でない。新勢力を結集する小沢氏の動きが加速するという見方もある。政権運営が難航するようなときに首相を脅かす存在となる可能性もあろう。
一方、小沢氏が民主党の代表、首相に選ばれれば、「政治とカネ」の問題を野党に追及され国会は荒れる。党内対立も深まる。
さらに小沢氏が首相になっても、政権基盤の弱さが劇的に変化しない限りは、ばらまき色の強いその政策も変わるまい。今の日本に必要な種々の改革実行へ強いリーダーシップを発揮できるか、大いに疑問だ。
先週の公開討論会でも、経済成長に欠かせない規制緩和や、農業市場の開放と自由貿易協定などに具体的には触れなかった。
小沢氏はテレビ朝日の番組で、法人税を減税するならば社員への配分を増やすべしという考えを述べた。企業が国際競争に生き残れるよう負担を軽くするという発想では必ずしもない。
同氏のいう補助金の一括交付金化の方向はよいが、
補助金には教育など減らしにくい経費も多く、歳出の削減効果は限られる。
菅首相も成長や財政再建の道筋とそのための改革を明確に述べていない。どちらがこの国を担うとしても行き詰まり感が強い現状を打破する強いリーダーにはならないとみる。
過去2年で名目国内総生産は8%近く減り、パソコン、液晶パネル、粗鋼などで世界3位以内に日本企業はいない。財政状況は南欧諸国もびっくりの悪さ。
坂本龍馬ではないが、日本の洗濯、それもゴシゴシと脂やアカをこすり取る大洗濯が今こそ要る。
強い指導力を確立するにはどんな手があるのか。歴史に範をとってみよう。
戦後、フランスの第4共和制は大統領の権限が弱いうえ、小党が乱立し政局が不安定だった。それを変えたのがドゴール元大統領。国民投票で憲法を改正して大統領の権限を強め、アルジェリア独立問題の解決などに手腕を発揮した。
日本国憲法は簡単には変えられないので、同じ手法は難しい。
あまり期待されていなかったサッチャーさんが強い首相になったきっかけは、フォークランド紛争だ。南米にある英領の島に近くのアルゼンチン軍が上陸すると同首相は1万2000キロ離れた本国から兵を送って徹底的にたたき、国内で絶大な信頼を得た。
これもしかし、現代日本で使える手ではない。
財政再建に成功したカナダの例はどうか。クレティエン元首相は野党党首だった1993年、果敢にも財政赤字の削減を公約に掲げて選挙に勝ち、政権に就いて赤字を大幅に減らした。
最近では今春の総選挙で過半数に満たなかった英保守党のキャメロン首相が、自由民主党と連立を組み、増税や歳出削減、学校・警察制度などの見直しを大車輪で進めている。
これらに共通するのは、国力が衰えることへの危機感と、改革をいとわない指導者の気概である。
ともに日本の指導者に欠けているもの。多くの有権者にも欠けているとあればやむを得ない面もある。
そうであれば、この際、すべてを放置して落ちるところまで落ちるのも手かもしれない。暴論と言うなかれ、お手本はある。
アジア通貨危機で経済が大混乱に陥ったものの、危機感を強めた政府と企業の努力で、電機と自動車を中心に立ち直った韓国だ。
弱いリーダーにあえて利点を見いだすとすれば、国民の危機感が高まること。リスクは大きいが……。
菅直人氏と小沢一郎氏の確執は続くし、民主党は参院で過半数に達しておらず、政権は二重の弱さを抱える。小沢氏側では野党の一部とも組み新しい政治勢力をつくる動きもあるようだが、改革への強い志と指導力がなければ日本をよくする政権はできない。
あえてたとえるなら大空位時代の到来か。日本経済の力が衰えていくなかで、必要な決断をできない。そうなれば悲劇だが、それを避ける道はまことに狭い。
13世紀半ば、今のドイツの神聖ローマ帝国では2人の皇帝候補がいたが、ともに即位できず、空位が20年近く続いた。国内は麻のごとく乱れ、諸侯や聖職者は好き勝手に領土の拡張や権力獲得に動く。元祖、大空位時代である。
戦前の日本では第2次若槻礼次郎内閣の下、関東軍が主導し満州事変を起こした。若槻は前任の浜口雄幸ほど指導力がなく軍部の暴走を抑えきれなかった。これも大空位に似ている。
独裁者の専横は論外だがリーダーの力が弱すぎるとさまざまな勢力が自己主張を強めて、国は道を誤る。歴史の教訓である。
もう一つ例を挙げれば、サッチャー英元首相の前任者、労働党のキャラハン首相だ。苦労人で人気はあったが、充実した社会保障や基幹産業の国有化などに起因する英国病が高じてストが多発。医師や看護師も加わって病院も機能しないありさま。それに対し労働党内の抗争もあり有効な対策を取れなかった。
わが民主党政権も同じ道に迷い込むかにみえる。
すでに菅首相は弱いリーダーだ。参院選敗北後、小沢氏らの批判を受けて、消費税増税をめぐる発言のトーンを弱めたほか、何かと口を慎んでいる。
もし菅氏が代表選に勝っても党内の対立を修復するのは容易でない。新勢力を結集する小沢氏の動きが加速するという見方もある。政権運営が難航するようなときに首相を脅かす存在となる可能性もあろう。
一方、小沢氏が民主党の代表、首相に選ばれれば、「政治とカネ」の問題を野党に追及され国会は荒れる。党内対立も深まる。
さらに小沢氏が首相になっても、政権基盤の弱さが劇的に変化しない限りは、ばらまき色の強いその政策も変わるまい。今の日本に必要な種々の改革実行へ強いリーダーシップを発揮できるか、大いに疑問だ。
先週の公開討論会でも、経済成長に欠かせない規制緩和や、農業市場の開放と自由貿易協定などに具体的には触れなかった。
小沢氏はテレビ朝日の番組で、法人税を減税するならば社員への配分を増やすべしという考えを述べた。企業が国際競争に生き残れるよう負担を軽くするという発想では必ずしもない。
同氏のいう補助金の一括交付金化の方向はよいが、
補助金には教育など減らしにくい経費も多く、歳出の削減効果は限られる。
菅首相も成長や財政再建の道筋とそのための改革を明確に述べていない。どちらがこの国を担うとしても行き詰まり感が強い現状を打破する強いリーダーにはならないとみる。
過去2年で名目国内総生産は8%近く減り、パソコン、液晶パネル、粗鋼などで世界3位以内に日本企業はいない。財政状況は南欧諸国もびっくりの悪さ。
坂本龍馬ではないが、日本の洗濯、それもゴシゴシと脂やアカをこすり取る大洗濯が今こそ要る。
強い指導力を確立するにはどんな手があるのか。歴史に範をとってみよう。
戦後、フランスの第4共和制は大統領の権限が弱いうえ、小党が乱立し政局が不安定だった。それを変えたのがドゴール元大統領。国民投票で憲法を改正して大統領の権限を強め、アルジェリア独立問題の解決などに手腕を発揮した。
日本国憲法は簡単には変えられないので、同じ手法は難しい。
あまり期待されていなかったサッチャーさんが強い首相になったきっかけは、フォークランド紛争だ。南米にある英領の島に近くのアルゼンチン軍が上陸すると同首相は1万2000キロ離れた本国から兵を送って徹底的にたたき、国内で絶大な信頼を得た。
これもしかし、現代日本で使える手ではない。
財政再建に成功したカナダの例はどうか。クレティエン元首相は野党党首だった1993年、果敢にも財政赤字の削減を公約に掲げて選挙に勝ち、政権に就いて赤字を大幅に減らした。
最近では今春の総選挙で過半数に満たなかった英保守党のキャメロン首相が、自由民主党と連立を組み、増税や歳出削減、学校・警察制度などの見直しを大車輪で進めている。
これらに共通するのは、国力が衰えることへの危機感と、改革をいとわない指導者の気概である。
ともに日本の指導者に欠けているもの。多くの有権者にも欠けているとあればやむを得ない面もある。
そうであれば、この際、すべてを放置して落ちるところまで落ちるのも手かもしれない。暴論と言うなかれ、お手本はある。
アジア通貨危機で経済が大混乱に陥ったものの、危機感を強めた政府と企業の努力で、電機と自動車を中心に立ち直った韓国だ。
弱いリーダーにあえて利点を見いだすとすれば、国民の危機感が高まること。リスクは大きいが……。
:2010:09/06/09:16 ++ ニッポンを一歩前に―技術立国担う独創心ある若者を育てよ(社説)
技術立国ニッポンを背負って立つ理工系人材をどう育てるのか。
中国など新興国が急速に技術力をつけ、日本は今まで以上に付加価値の高いモノづくりが求められる。環境や医療など成長産業の種を早く生み出さなければならない。原子力や水処理、鉄道などインフラ輸出に携わる国際感覚のある人材も要る。将来の科学技術を担う若い世代の挑戦心をはぐくみ、独創性に富む研究者や技術者を育てる仕組みが必要だ。
柔軟な頭脳を鍛えよう
千葉大学が12年前に始めた「飛び入学コース」から、今春までに39人が巣立った。うち38人が大学院に進み、情報科学や新素材など最先端分野の研究者を志す。日沼洋陽さん(28)は大学院にも飛び入学し、米マサチューセッツ工科大で博士号を取得。今は米国で次世代の電池材料を研究するが、「いずれ日本企業で製品化するのが夢」だ。
科学技術の優れた成果は20、30歳代の柔らかい頭脳から生まれやすい。意欲ある学生に早くから専門分野を学ばせる仕組みを広げたい。
飛び入学は学校教育法で認められているのに、「特別な教程が必要で学校側の負担が重い」などの理由で広がらず、理工系で導入したのは千葉大など4校だけだ。大学や、生徒を送り出す高校が努力すれば、この制度はもっと活用できるはずだ。
一方で、研究者の卵たちには先行きへの不安感が漂う。ポストドクター(博士研究者)の多くが就職難に直面しているからだ。
ポストドクターとは博士号を取得後、3~5年の任期で教授らを手伝いながら、研究者として腕を磨く制度である。文部科学省が若手を即戦力にしようと「支援」に力を入れ、1995年度の4千人から2008年度には1万8千人まで増やした。しかし、大学の正規教員の枠は増えず、35歳をすぎて次の職探しに苦労する研究者が3割を超える。
その対策として、民主党政権は新成長戦略で「博士号取得者の完全雇用」を打ち出した。奨学金の返済に苦労するポストドクターへの経済支援は必要だろう。だが、身分が安定したからといって、優れた研究が生まれるわけでは必ずしもない。
まず取り組むべきは、年功序列が根強い大学の人事制度を見直し、若手を積極的に登用することだ。
東大の工学系研究科は「スーパー准教授」という制度をつくり、29歳の准教授が誕生した。上役の教授はおらず、研究室運営の一切を若い准教授が仕切る。米国の大学のポストドクターから採用された加藤雄一郎さん(33)は年4千万円近い研究費を差配し、ナノテクノロジー(超微細技術)の研究に携わる。こうした仕組みは若手支援の好例だ。
博士が企業に就職し、活躍できるようにすることも大事だ。それには企業の取り組みに加え、博士課程の見直しや学生の意識改革も要る。
大阪大は今年10月、大学院で2つの学位を同時に狙える学科を新設する。新薬の研究では生物学と化学、情報科学では数学と物理という具合に複数分野の知識が不可欠になっている。「専門が狭い博士を採っても機敏な事業展開に即応できない」と、博士の採用に二の足を踏む企業の不満に応える狙いもある。
既存の学問分野を越える成果が生まれれば、「知の拠点」である大学の活性化にも役立つだろう。
大学も「選択と集中」で
独創性や挑戦心をもつ若者は、教える側の価値観や文化が同質な環境からは育たない。米ハーバード大やエール大では教員のうち外国人の比率が25%、英ケンブリッジ大やオックスフォード大では40%を占める。一方、日本の大学では外国人教員は3・5%(08年度)しかいない。
政府はアジアなどからの留学生を13万人(09年度)から、20年度までに30万人に増やす目標を掲げる。英語による授業など留学生向けの教育環境を整えようと、東大が外国人教員の比率を20年度までに10%以上、慶大が同12%などと、数値目標を打ち出す大学も出てきた。だが何を目的に大学の国際化を進めるのか、戦略が見えてこない。
世界の有力大学は「選択と集中」を掲げ、内外から優秀な教員や学生を集めようと競争を繰り広げる。アジアではシンガポール国立大がバイオテクノロジー、香港科技大が経営工学を戦略的に強化し、国外からノーベル賞級学者を引き抜くのも珍しくない。日本の有力大も大学経営にたけた外国人を学長に起用するぐらい大胆な改革が必要ではないか。
日本が技術立国を続けるには「理系離れに歯止めを」といった後手の発想ではだめだ。上の世代が大学改革などでリスクを取ってこそ、挑戦をいとわない若者が育つ。
中国など新興国が急速に技術力をつけ、日本は今まで以上に付加価値の高いモノづくりが求められる。環境や医療など成長産業の種を早く生み出さなければならない。原子力や水処理、鉄道などインフラ輸出に携わる国際感覚のある人材も要る。将来の科学技術を担う若い世代の挑戦心をはぐくみ、独創性に富む研究者や技術者を育てる仕組みが必要だ。
柔軟な頭脳を鍛えよう
千葉大学が12年前に始めた「飛び入学コース」から、今春までに39人が巣立った。うち38人が大学院に進み、情報科学や新素材など最先端分野の研究者を志す。日沼洋陽さん(28)は大学院にも飛び入学し、米マサチューセッツ工科大で博士号を取得。今は米国で次世代の電池材料を研究するが、「いずれ日本企業で製品化するのが夢」だ。
科学技術の優れた成果は20、30歳代の柔らかい頭脳から生まれやすい。意欲ある学生に早くから専門分野を学ばせる仕組みを広げたい。
飛び入学は学校教育法で認められているのに、「特別な教程が必要で学校側の負担が重い」などの理由で広がらず、理工系で導入したのは千葉大など4校だけだ。大学や、生徒を送り出す高校が努力すれば、この制度はもっと活用できるはずだ。
一方で、研究者の卵たちには先行きへの不安感が漂う。ポストドクター(博士研究者)の多くが就職難に直面しているからだ。
ポストドクターとは博士号を取得後、3~5年の任期で教授らを手伝いながら、研究者として腕を磨く制度である。文部科学省が若手を即戦力にしようと「支援」に力を入れ、1995年度の4千人から2008年度には1万8千人まで増やした。しかし、大学の正規教員の枠は増えず、35歳をすぎて次の職探しに苦労する研究者が3割を超える。
その対策として、民主党政権は新成長戦略で「博士号取得者の完全雇用」を打ち出した。奨学金の返済に苦労するポストドクターへの経済支援は必要だろう。だが、身分が安定したからといって、優れた研究が生まれるわけでは必ずしもない。
まず取り組むべきは、年功序列が根強い大学の人事制度を見直し、若手を積極的に登用することだ。
東大の工学系研究科は「スーパー准教授」という制度をつくり、29歳の准教授が誕生した。上役の教授はおらず、研究室運営の一切を若い准教授が仕切る。米国の大学のポストドクターから採用された加藤雄一郎さん(33)は年4千万円近い研究費を差配し、ナノテクノロジー(超微細技術)の研究に携わる。こうした仕組みは若手支援の好例だ。
博士が企業に就職し、活躍できるようにすることも大事だ。それには企業の取り組みに加え、博士課程の見直しや学生の意識改革も要る。
大阪大は今年10月、大学院で2つの学位を同時に狙える学科を新設する。新薬の研究では生物学と化学、情報科学では数学と物理という具合に複数分野の知識が不可欠になっている。「専門が狭い博士を採っても機敏な事業展開に即応できない」と、博士の採用に二の足を踏む企業の不満に応える狙いもある。
既存の学問分野を越える成果が生まれれば、「知の拠点」である大学の活性化にも役立つだろう。
大学も「選択と集中」で
独創性や挑戦心をもつ若者は、教える側の価値観や文化が同質な環境からは育たない。米ハーバード大やエール大では教員のうち外国人の比率が25%、英ケンブリッジ大やオックスフォード大では40%を占める。一方、日本の大学では外国人教員は3・5%(08年度)しかいない。
政府はアジアなどからの留学生を13万人(09年度)から、20年度までに30万人に増やす目標を掲げる。英語による授業など留学生向けの教育環境を整えようと、東大が外国人教員の比率を20年度までに10%以上、慶大が同12%などと、数値目標を打ち出す大学も出てきた。だが何を目的に大学の国際化を進めるのか、戦略が見えてこない。
世界の有力大学は「選択と集中」を掲げ、内外から優秀な教員や学生を集めようと競争を繰り広げる。アジアではシンガポール国立大がバイオテクノロジー、香港科技大が経営工学を戦略的に強化し、国外からノーベル賞級学者を引き抜くのも珍しくない。日本の有力大も大学経営にたけた外国人を学長に起用するぐらい大胆な改革が必要ではないか。
日本が技術立国を続けるには「理系離れに歯止めを」といった後手の発想ではだめだ。上の世代が大学改革などでリスクを取ってこそ、挑戦をいとわない若者が育つ。
:2010:09/06/09:10 ++ 混迷ニッポン民主代表選(5)企業をどう生かすのか。
「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と菅直人首相が語った先週。スズキが静岡で計画していた部品工業団地の建設を断念した。インドには完成車の新工場をつくるという。
届かない悲鳴
円高で自動車の輸出が増やしにくくなり、鈴木修会長兼社長は「官邸に悲鳴は聞こえないのか」と批判を強めていた。このタイミングで決めたのも「民主党代表選にぶつけた」との見方を呼んだ。
その2週間前、パナソニックはプラズマパネルの生産を中国に一部移転すると発表した。同社の幹部は「前の世代の技術だから海外に出して問題ない。だが国内で作り続ける選択肢もあった」と話す。背中を押したのは円高だった。
日本企業が国内投資を控え、海外生産の拡大に軸足を置きつつある。聞こえてくるのは、円高を放置し続けることへの不信感やあきらめだ。
菅首相は6月の就任直後に日本経団連など経済3団体のトップを呼んだ。鳩山由紀夫前首相が門前払いだったのに対し、「10日前に言ってもらえば時間はつくる」と応じた。だがその後、経済界との距離が縮まった様子はない。
6月に「新成長戦略」を閣議決定し、円高が加速した先月30日には経済対策を打ち出した。だが、企業経営者は「補助金を続けたら国内にとどまると思っている」としらけ気味だ。
円高だけではない。高い法人税、雇用形態への規制、二酸化炭素の25%削減……。大企業にも中小企業にも冷たい風が吹く。当たり前のことだが、企業が減れば仕事も減る。海外から来る企業が少ないうえに、日本に根ざした企業までいなくなるような事態を改めず、いくら「雇用」と叫んでも何も生まれない。
日産自動車は今年、タイに主力車「マーチ」の生産を移したが、韓国の双竜自動車に提携先の仏ルノーと出資する計画も並行して進めていた。
タイは東南アジア諸国連合(ASEAN)の域内と豪州、韓国は欧州連合(EU)との間に自由貿易協定(FTA)があり、関税なしで車を輸出できる。最後は入札から降りはしたが、志賀俊之最高執行責任者は「日本は最も投資しにくい国になった」と話す。
日本でなくても品質の高い製品を作れる時代が訪れ、拠点選びのカギは通商政策や税制になろうとしている。政府に求められるのは雇用を連呼することより、雇用を生む企業の目線で政策を考えることではないか。
ハンディ厳しく
新日本製鉄の幹部は「世界でもっとも厳しいハンディ戦を強いられている」と漏らす。海外に出ていける企業はまだいい。高炉を何本も抱える同社は為替や税制、FTAの恩恵がない国内にとどまる以外ない。
鉄鋼は中国の躍進で地位が危うい。新日鉄の2009年の粗鋼生産は前の年の2位から7位以下に後退した。世界でみれば新日鉄のシェアは3%程度だが、再編で規模を追求しようにも独占禁止法の運用が厳しい日本ではそれも容易ではない。
韓国は1990年代の「国際通貨基金(IMF)ショック」を機に法人税や独禁政策を見直し、最近はFTA戦略も活発だ。例えば法人税の実効税率は24%台で日本より15%低い。さらに産業ごとに企業を1、2社に集約し、力を蓄えさせて世界に送り出す。
韓国だけではない。世界で今、官民挙げての国家戦略がぶつかり合う。そんな重要な時期に政府に無関心を決め込まれ、日本が埋没しては困る。
「代表選までは動けない」。そんなため息が経済界を覆う。日本には有力な企業が多い。その企業をどう生かすのか。成長戦略をどう実行するのか。政治の空白は最大のハンディである。
届かない悲鳴
円高で自動車の輸出が増やしにくくなり、鈴木修会長兼社長は「官邸に悲鳴は聞こえないのか」と批判を強めていた。このタイミングで決めたのも「民主党代表選にぶつけた」との見方を呼んだ。
その2週間前、パナソニックはプラズマパネルの生産を中国に一部移転すると発表した。同社の幹部は「前の世代の技術だから海外に出して問題ない。だが国内で作り続ける選択肢もあった」と話す。背中を押したのは円高だった。
日本企業が国内投資を控え、海外生産の拡大に軸足を置きつつある。聞こえてくるのは、円高を放置し続けることへの不信感やあきらめだ。
菅首相は6月の就任直後に日本経団連など経済3団体のトップを呼んだ。鳩山由紀夫前首相が門前払いだったのに対し、「10日前に言ってもらえば時間はつくる」と応じた。だがその後、経済界との距離が縮まった様子はない。
6月に「新成長戦略」を閣議決定し、円高が加速した先月30日には経済対策を打ち出した。だが、企業経営者は「補助金を続けたら国内にとどまると思っている」としらけ気味だ。
円高だけではない。高い法人税、雇用形態への規制、二酸化炭素の25%削減……。大企業にも中小企業にも冷たい風が吹く。当たり前のことだが、企業が減れば仕事も減る。海外から来る企業が少ないうえに、日本に根ざした企業までいなくなるような事態を改めず、いくら「雇用」と叫んでも何も生まれない。
日産自動車は今年、タイに主力車「マーチ」の生産を移したが、韓国の双竜自動車に提携先の仏ルノーと出資する計画も並行して進めていた。
タイは東南アジア諸国連合(ASEAN)の域内と豪州、韓国は欧州連合(EU)との間に自由貿易協定(FTA)があり、関税なしで車を輸出できる。最後は入札から降りはしたが、志賀俊之最高執行責任者は「日本は最も投資しにくい国になった」と話す。
日本でなくても品質の高い製品を作れる時代が訪れ、拠点選びのカギは通商政策や税制になろうとしている。政府に求められるのは雇用を連呼することより、雇用を生む企業の目線で政策を考えることではないか。
ハンディ厳しく
新日本製鉄の幹部は「世界でもっとも厳しいハンディ戦を強いられている」と漏らす。海外に出ていける企業はまだいい。高炉を何本も抱える同社は為替や税制、FTAの恩恵がない国内にとどまる以外ない。
鉄鋼は中国の躍進で地位が危うい。新日鉄の2009年の粗鋼生産は前の年の2位から7位以下に後退した。世界でみれば新日鉄のシェアは3%程度だが、再編で規模を追求しようにも独占禁止法の運用が厳しい日本ではそれも容易ではない。
韓国は1990年代の「国際通貨基金(IMF)ショック」を機に法人税や独禁政策を見直し、最近はFTA戦略も活発だ。例えば法人税の実効税率は24%台で日本より15%低い。さらに産業ごとに企業を1、2社に集約し、力を蓄えさせて世界に送り出す。
韓国だけではない。世界で今、官民挙げての国家戦略がぶつかり合う。そんな重要な時期に政府に無関心を決め込まれ、日本が埋没しては困る。
「代表選までは動けない」。そんなため息が経済界を覆う。日本には有力な企業が多い。その企業をどう生かすのか。成長戦略をどう実行するのか。政治の空白は最大のハンディである。
:2010:09/03/10:00 ++ 小菅物語首相の座争う2人(上)協調・決裂繰り返し―総決算の対決に。
民主党代表選で一騎打ちを演じる菅直人首相と小沢一郎前幹事長が初めて直接、相まみえたのは1998年の金融国会だった。当時の協調から決裂、成功と失敗の経緯が、2人の原点にある。
最初は金融国会
「私がよく例に出す、あの金融国会で小沢さんに『政局にしないのはおかしい』と言われたが、私の選択は間違っていなかった」。2日、日本記者クラブ討論会で菅氏は振り返った。金融国会には1日もふれている。小沢氏が菅氏を強く認識したのも、この時だったに違いない。
76年、ロッキード選挙で「田中角栄対菅直人」を掲げて菅氏が国政に初挑戦した時、既に小沢氏は田中元首相の秘蔵っ子として知られていた。自民党幹事長として47歳の小沢氏が権勢をふるった80年代末、42歳の菅氏はミニ政党の社会民主連合にいた。党派もキャリアも異なる2人が交わることはなかった。
98年、民主党代表と自由党党首として2人は「自民党打倒」で結びついた。小沢氏は午前2時、3時の党首会談もいとわず菅氏と足並みをそろえた。だが「自民党政権はいつでも倒せる」とみたのか、菅氏は金融再生法を与党に「丸のみ」させて矛をおさめた。菅氏の姿勢に、外からでは自民党を倒せないと判断した小沢氏は「中」から壊す戦略に転換した。自民党との連立である。
合併で再び接近
その後、菅氏も民主党も政権に手が届かない。「政策的には正しかった」と言いつつ、菅氏は小沢氏の手法を「政局的には正しいかもしれない」とも回想していた。政局は小沢氏が上手――。金融国会から5年、民主党と自由党の合併で2人は再び接近し「政権交代のシナリオ」と題した共著まで出した。自民党打倒へ、菅氏は「小沢流」の政局論に乗った。
それから一度は代表選を争ったものの、基本的に2人は鳩山由紀夫前首相を加えた「トロイカ体制」で手を携えてきた。小沢氏が趣味とする囲碁に、菅氏も本腰を入れた。薩摩藩の大久保利通が島津久光に近づくため、囲碁を始めたとされる故事に通じる。
幕末維新の歴史好きなど、2人には重なる部分も多い。菅氏が熱をこめる英国型の政治主導は、小沢氏が自民党を飛び出した際に出版した「日本改造計画」で日本の政界に広まった。今年3月の国会答弁で、菅氏は「議会制民主主義というのは期限を区切って、あるレベルの独裁を認めることだ」との政治観を国会で披露している。
鳩山内閣で副総理に就いた菅氏は「力があるんだよ」と漏らし、小沢氏への評価を変えなかった。周辺は「鳩山さんに何かあったら小沢さんの支持を得て政権をとるつもりだった」と語る。だが土壇場で菅氏は「脱小沢」にカジを切り、首相の座を射止めた。12年前とは逆に、菅氏からの決裂だった。
小沢氏とともに自民党を倒し「脱小沢」で首相になった菅氏と、初めて与党の党首選に出た小沢氏。3度目の巡り合いは、ともに政治生活の総決算になる。
最初は金融国会
「私がよく例に出す、あの金融国会で小沢さんに『政局にしないのはおかしい』と言われたが、私の選択は間違っていなかった」。2日、日本記者クラブ討論会で菅氏は振り返った。金融国会には1日もふれている。小沢氏が菅氏を強く認識したのも、この時だったに違いない。
76年、ロッキード選挙で「田中角栄対菅直人」を掲げて菅氏が国政に初挑戦した時、既に小沢氏は田中元首相の秘蔵っ子として知られていた。自民党幹事長として47歳の小沢氏が権勢をふるった80年代末、42歳の菅氏はミニ政党の社会民主連合にいた。党派もキャリアも異なる2人が交わることはなかった。
98年、民主党代表と自由党党首として2人は「自民党打倒」で結びついた。小沢氏は午前2時、3時の党首会談もいとわず菅氏と足並みをそろえた。だが「自民党政権はいつでも倒せる」とみたのか、菅氏は金融再生法を与党に「丸のみ」させて矛をおさめた。菅氏の姿勢に、外からでは自民党を倒せないと判断した小沢氏は「中」から壊す戦略に転換した。自民党との連立である。
合併で再び接近
その後、菅氏も民主党も政権に手が届かない。「政策的には正しかった」と言いつつ、菅氏は小沢氏の手法を「政局的には正しいかもしれない」とも回想していた。政局は小沢氏が上手――。金融国会から5年、民主党と自由党の合併で2人は再び接近し「政権交代のシナリオ」と題した共著まで出した。自民党打倒へ、菅氏は「小沢流」の政局論に乗った。
それから一度は代表選を争ったものの、基本的に2人は鳩山由紀夫前首相を加えた「トロイカ体制」で手を携えてきた。小沢氏が趣味とする囲碁に、菅氏も本腰を入れた。薩摩藩の大久保利通が島津久光に近づくため、囲碁を始めたとされる故事に通じる。
幕末維新の歴史好きなど、2人には重なる部分も多い。菅氏が熱をこめる英国型の政治主導は、小沢氏が自民党を飛び出した際に出版した「日本改造計画」で日本の政界に広まった。今年3月の国会答弁で、菅氏は「議会制民主主義というのは期限を区切って、あるレベルの独裁を認めることだ」との政治観を国会で披露している。
鳩山内閣で副総理に就いた菅氏は「力があるんだよ」と漏らし、小沢氏への評価を変えなかった。周辺は「鳩山さんに何かあったら小沢さんの支持を得て政権をとるつもりだった」と語る。だが土壇場で菅氏は「脱小沢」にカジを切り、首相の座を射止めた。12年前とは逆に、菅氏からの決裂だった。
小沢氏とともに自民党を倒し「脱小沢」で首相になった菅氏と、初めて与党の党首選に出た小沢氏。3度目の巡り合いは、ともに政治生活の総決算になる。
:2010:09/03/09:26 ++ 混迷ニッポン民主代表選(2)市場の声を聞いているか。
「オザワの影」に債券市場が揺れる。小沢一郎前幹事長が民主党代表選に出馬の意向を示した8月26日。メガバンクのひとつが超長期国債の売りに出ると、他の大手行が続き雪崩を打った。
財政赤字に警鐘
正式出馬を機に債券は再び売られ、2日には10年物国債の利回りは1・1%に乗せた。財政赤字を膨らませかねないのではと、小沢氏の唱える経済政策に、市場が警鐘を鳴らし始めた。
小沢氏の登場前が平常だったのではない。一時1ドル=83円台まで上昇した15年ぶりの円高と、9000円を割った株安で景気失速懸念が広がり、10年物国債の利回りは0・8%台まで低下した。1997~98年の大型金融破綻や2003年のデフレ危機の時をうかがわせる雰囲気だった。
日米株式市場はもともと連動してきたが、6月4日の菅直人氏の首相指名と前後して日経平均株価はニューヨーク・ダウ平均についていけなくなった。6月27日のトロント・サミット以降は、米欧が自国通貨安の容認をにじませたこともあって円高が加速した。
菅氏は市場への感度が鈍い、とみて進んだ円高、株安。それに続き、小沢氏登場で今度は長期金利上昇となると、日本経済はつんのめってしまう。
民主党が約束していたのは、家計への給付拡大などによる経済の内需転換だったはずだ。4~6月の実質成長率は消費の低迷から前期比年率0・4%どまり。円高加速で企業は生産や投資の軸足を一段と海外に移さざるを得なくなっている。
「雇用、雇用、雇用」。菅氏はそう繰り返す。雇用を生み出すのは何よりも成長のはず。
菅氏は就任早々、6月に新成長戦略を打ち出したが、具体化へのスピード感を欠いた。円高、株安に促され、具体化策を急ぐと発表したのは実に8月30日のことだ。目前の景気への対応策もいかにも心もとない。
鳩山政権に続く菅政権の足踏みに内外の市場参加者はしびれを切らし、失望を募らせている。対する小沢氏への市場の受け止め方は真っ二つ。剛腕による経済の閉塞(へいそく)打破を期待する声がある一方で、財政運営に対する危うさを指摘する向きも多い。
小沢氏は子ども手当の満額支給などマニフェスト(政権公約)にこだわる。財源を問われると予算の無駄を削ると答える。昨年の衆院選で民主党は当初7兆円の資金をひねり出すと約束したが、とても足りず10年度予算では44兆円もの国債発行を余儀なくされた。
小沢提案はどこまで現実性があるかと市場はいぶかしむ。「オザワ出馬」を受けた大手行の国債売却は、まさに国債神話のもろさを映していないか。「小沢首相なら債券は売り、株は買い」。一部にそんな声もある。
奇手と紙一重
だがタンス預金をあてにしたような無利子国債に言及するなど、小沢氏の主張は奇手と紙一重だ。国債格付けが下がるような危うい事態に至れば債券も株式も売られ、市場は地滑りを起こす。
そうした点では、財源との見合いでマニフェストの見直しを唱える菅氏の方が現実的だろう。ただ、財政を立て直しつつ、法人税下げなどの成長戦略をどう進めるつもりなのかわからない。
菅政権の下で進んだ国債利回りの低下は、体力の弱った病人の体温が下がるようなもの。株価は低迷から脱却できない。
菅氏、小沢氏ともに、ビジネスや投資を促そうというメッセージが聞こえない。両氏とも政府の役割を強調しがちだが、企業や市場の役割を信頼しないようでは、ヒト、モノ、カネは動かない。
両候補を見つめているのは有権者だけでなく、内外のマーケットでもある。今回の代表選は市場の信任投票でもある。
財政赤字に警鐘
正式出馬を機に債券は再び売られ、2日には10年物国債の利回りは1・1%に乗せた。財政赤字を膨らませかねないのではと、小沢氏の唱える経済政策に、市場が警鐘を鳴らし始めた。
小沢氏の登場前が平常だったのではない。一時1ドル=83円台まで上昇した15年ぶりの円高と、9000円を割った株安で景気失速懸念が広がり、10年物国債の利回りは0・8%台まで低下した。1997~98年の大型金融破綻や2003年のデフレ危機の時をうかがわせる雰囲気だった。
日米株式市場はもともと連動してきたが、6月4日の菅直人氏の首相指名と前後して日経平均株価はニューヨーク・ダウ平均についていけなくなった。6月27日のトロント・サミット以降は、米欧が自国通貨安の容認をにじませたこともあって円高が加速した。
菅氏は市場への感度が鈍い、とみて進んだ円高、株安。それに続き、小沢氏登場で今度は長期金利上昇となると、日本経済はつんのめってしまう。
民主党が約束していたのは、家計への給付拡大などによる経済の内需転換だったはずだ。4~6月の実質成長率は消費の低迷から前期比年率0・4%どまり。円高加速で企業は生産や投資の軸足を一段と海外に移さざるを得なくなっている。
「雇用、雇用、雇用」。菅氏はそう繰り返す。雇用を生み出すのは何よりも成長のはず。
菅氏は就任早々、6月に新成長戦略を打ち出したが、具体化へのスピード感を欠いた。円高、株安に促され、具体化策を急ぐと発表したのは実に8月30日のことだ。目前の景気への対応策もいかにも心もとない。
鳩山政権に続く菅政権の足踏みに内外の市場参加者はしびれを切らし、失望を募らせている。対する小沢氏への市場の受け止め方は真っ二つ。剛腕による経済の閉塞(へいそく)打破を期待する声がある一方で、財政運営に対する危うさを指摘する向きも多い。
小沢氏は子ども手当の満額支給などマニフェスト(政権公約)にこだわる。財源を問われると予算の無駄を削ると答える。昨年の衆院選で民主党は当初7兆円の資金をひねり出すと約束したが、とても足りず10年度予算では44兆円もの国債発行を余儀なくされた。
小沢提案はどこまで現実性があるかと市場はいぶかしむ。「オザワ出馬」を受けた大手行の国債売却は、まさに国債神話のもろさを映していないか。「小沢首相なら債券は売り、株は買い」。一部にそんな声もある。
奇手と紙一重
だがタンス預金をあてにしたような無利子国債に言及するなど、小沢氏の主張は奇手と紙一重だ。国債格付けが下がるような危うい事態に至れば債券も株式も売られ、市場は地滑りを起こす。
そうした点では、財源との見合いでマニフェストの見直しを唱える菅氏の方が現実的だろう。ただ、財政を立て直しつつ、法人税下げなどの成長戦略をどう進めるつもりなのかわからない。
菅政権の下で進んだ国債利回りの低下は、体力の弱った病人の体温が下がるようなもの。株価は低迷から脱却できない。
菅氏、小沢氏ともに、ビジネスや投資を促そうというメッセージが聞こえない。両氏とも政府の役割を強調しがちだが、企業や市場の役割を信頼しないようでは、ヒト、モノ、カネは動かない。
両候補を見つめているのは有権者だけでなく、内外のマーケットでもある。今回の代表選は市場の信任投票でもある。
:2010:09/03/09:20 ++ 民主代表選公開討論会、菅首相、「カネと数」を批判、小沢氏、訴追でも「逃げぬ」。
民主党代表選に立候補した菅直人首相と小沢一郎前幹事長は2日、日本記者クラブ主催の公開討論会に臨んだ。「政治とカネ」の問題に関し、首相は「お金と数の原理が色濃くある」と小沢氏を批判。小沢氏は政治資金問題で検察審査会が「起訴相当」と議決した場合の対応について「逃げません」と明言した。(関連記事2、3面、討論の要旨4面に)
約2時間の討論で、首相と小沢氏は互いの政治手法を批判し合った。首相は「お金にまみれた政治、政治文化を変えないといけない」と主張。小沢氏は菅内閣による2011年度予算編成の進め方を「自民党政権下と同じような官僚主導のやり方ではないか」と断じ、政治家主導の政治の確立を訴えた。
首相と党代表を切り分ける「総・代分離」の可能性などが取りざたされる小沢氏。代表選に勝った場合の対応について「最大与党の党首が首相を務めるのは当たり前。自民党時代も『総・総分離』という話があったが、もってのほかだ」と述べ、首相就任を明言した。
消費税率の引き上げに関し、小沢氏は「税制全般の議論、消費税を含む議論をしていることは構わない。ただ、この(09年衆院選から)4年間は上げない」と述べ、議論は容認するが引き上げはしないとの考えを示した。「所得税、住民税の大幅な減税も頭の中に考えている」と表明した。無利子国債の発行にも言及した。首相は「社会保障と税制全般を一体的に議論するような場が与党・野党の間でできることは望ましい」と超党派による議論の必要性を指摘するにとどまった。
急激な円高への対応について、小沢氏は「何とかして止めないといけないと思うが、日銀の単なる金融政策だけでなんなりする余地は非常に狭まっている」と指摘。「日本だけで、世界が円高を容認している中では、なかなか効果は上がらない」と認めながらも「それぐらいの覚悟で今やるべき急激な速度での円高じゃないかと思う」と述べ、円高阻止へ単独介入を含むあらゆる政策の動員を主張した。
首相は経済政策に関しては「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と述べ、特に社会保障の充実につながる介護・医療・保育の分野で雇用を増やしたいと表明。円高に対しては「危機感はかなり早い段階から持っていた」と対応の遅さに対する批判に反論した。
約2時間の討論で、首相と小沢氏は互いの政治手法を批判し合った。首相は「お金にまみれた政治、政治文化を変えないといけない」と主張。小沢氏は菅内閣による2011年度予算編成の進め方を「自民党政権下と同じような官僚主導のやり方ではないか」と断じ、政治家主導の政治の確立を訴えた。
首相と党代表を切り分ける「総・代分離」の可能性などが取りざたされる小沢氏。代表選に勝った場合の対応について「最大与党の党首が首相を務めるのは当たり前。自民党時代も『総・総分離』という話があったが、もってのほかだ」と述べ、首相就任を明言した。
消費税率の引き上げに関し、小沢氏は「税制全般の議論、消費税を含む議論をしていることは構わない。ただ、この(09年衆院選から)4年間は上げない」と述べ、議論は容認するが引き上げはしないとの考えを示した。「所得税、住民税の大幅な減税も頭の中に考えている」と表明した。無利子国債の発行にも言及した。首相は「社会保障と税制全般を一体的に議論するような場が与党・野党の間でできることは望ましい」と超党派による議論の必要性を指摘するにとどまった。
急激な円高への対応について、小沢氏は「何とかして止めないといけないと思うが、日銀の単なる金融政策だけでなんなりする余地は非常に狭まっている」と指摘。「日本だけで、世界が円高を容認している中では、なかなか効果は上がらない」と認めながらも「それぐらいの覚悟で今やるべき急激な速度での円高じゃないかと思う」と述べ、円高阻止へ単独介入を含むあらゆる政策の動員を主張した。
首相は経済政策に関しては「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と述べ、特に社会保障の充実につながる介護・医療・保育の分野で雇用を増やしたいと表明。円高に対しては「危機感はかなり早い段階から持っていた」と対応の遅さに対する批判に反論した。
:2010:09/01/14:28 ++ 思惑外れ激突の構図――首相、小沢氏、相互不信消えず(民主代表選)
9月1日告示の民主党代表選で菅直人首相と小沢一郎前幹事長が激突する構図が31日、決まった。両氏は告示前日まで対決回避を探ったものの、崩れた信頼関係を修復するまでに至らず、物別れに終わった。出馬するかどうか最後まで揺れた小沢氏は、望まぬ選挙戦に突入することになる。(1面参照)
「民主的ルールにのっとった代表選なので、正々とお互い頑張ろう」。小沢氏は31日夕、首相にこう宣言。30分間の会談に終止符を打った。首相は人事に触れず、小沢氏も言及しなかった。対決回避の調整は不調に終わった。
26日に出馬表明したはずの小沢氏が迷ったのはなぜか。負けを恐れる首相が「脱小沢」路線の人事を修正し「挙党態勢」に応じるかもしれないと踏んだからだ。
首相は30日夜、鳩山由紀夫前首相に小沢氏を含む挙党態勢を意味する「トロイカ体制の復活」に突然、言及し、小沢、鳩山両氏と輿石東参院議員会長との4者会談にも前向きだった。
ここで妥協して政権を維持しても、自民党時代と変わらぬ密室政治という世論の批判を浴び、回復の兆しのある内閣支持率も急落する――。菅陣営内では疑問の声が広がり、前原誠司国土交通相が「不透明な形で一本化するのは慎むべきだ」とクギを刺した。
「密室人事は嫌」
「密室談合になるから嫌だ。4人で会うのは駄目で、小沢氏と2人がいい」。首相は31日午前、鳩山氏に電話し、小沢氏との会談に条件を付けた。小沢氏から人事で取引を持ちかけられた際、3対1では押し切られると恐れたからだった。鳩山氏が「トロイカは大事だと小沢さんに言ってほしい」と話すと、首相は「人事の話はするつもりはない」と断った。
戸惑う鳩山氏は31日昼、小沢氏と輿石東参院議員会長に「菅さんがちょっと待ってくれと言ってきた」と報告した。小沢氏は「おれはポストなんか求めていない」と怒りを爆発させたとされる。鳩山氏は小沢氏に「和戦両様でもいいから」と、首相との会談を設定すれば応じるよう説得した。
首相も不信感をぬぐえずにいた。議員会館の自室に前原氏ら陣営幹部約20人を勢ぞろいさせると、小沢氏らと会談した鳩山氏から「挙党態勢というならそれなりのポストを考えてほしい」と持ちかけられたと暴露した。前夜に鳩山氏と合意した「トロイカ復活」の真意を問われると「必要な時に相談するという意味だ」と素っ気なく答えた。
首相周辺によると、輿石氏も首相に電話で「4人で会わなければ意味がない。セレモニーじゃないんだ」と、4者会談を求めてきた。警戒した首相が「密室で人事を決めるのだけは絶対したくない」と断ると「それなら政局だ」と突き放した。
「熟慮の結果…」
「4人で会うのが密室で、なぜ2人は密室でないのか」。小沢氏は31日夜、支持議員を前に、首相を批判した。一方、首相は記者会見で「ロッキード事件の憤りから立候補したのが私の原点だ。生い立ちで小沢さんとはかなり違ったところから出発した」として、小沢氏の弱点である政治とカネの問題を争点化する構えをみせた。
「随分、決断をするまでに自分に問いかけながら熟慮した」。会談が決裂し、出馬の意向を改めて表明した小沢氏は記者団に複雑な表情をみせた。選挙戦で世論の厳しい批判を一身に背負うのは目に見えている。「地方回りをやろうかな。地方は比較的、世論の風当たりが強くないから」。小沢氏は周囲に2週間の選挙戦は長いとこぼした。
「民主的ルールにのっとった代表選なので、正々とお互い頑張ろう」。小沢氏は31日夕、首相にこう宣言。30分間の会談に終止符を打った。首相は人事に触れず、小沢氏も言及しなかった。対決回避の調整は不調に終わった。
26日に出馬表明したはずの小沢氏が迷ったのはなぜか。負けを恐れる首相が「脱小沢」路線の人事を修正し「挙党態勢」に応じるかもしれないと踏んだからだ。
首相は30日夜、鳩山由紀夫前首相に小沢氏を含む挙党態勢を意味する「トロイカ体制の復活」に突然、言及し、小沢、鳩山両氏と輿石東参院議員会長との4者会談にも前向きだった。
ここで妥協して政権を維持しても、自民党時代と変わらぬ密室政治という世論の批判を浴び、回復の兆しのある内閣支持率も急落する――。菅陣営内では疑問の声が広がり、前原誠司国土交通相が「不透明な形で一本化するのは慎むべきだ」とクギを刺した。
「密室人事は嫌」
「密室談合になるから嫌だ。4人で会うのは駄目で、小沢氏と2人がいい」。首相は31日午前、鳩山氏に電話し、小沢氏との会談に条件を付けた。小沢氏から人事で取引を持ちかけられた際、3対1では押し切られると恐れたからだった。鳩山氏が「トロイカは大事だと小沢さんに言ってほしい」と話すと、首相は「人事の話はするつもりはない」と断った。
戸惑う鳩山氏は31日昼、小沢氏と輿石東参院議員会長に「菅さんがちょっと待ってくれと言ってきた」と報告した。小沢氏は「おれはポストなんか求めていない」と怒りを爆発させたとされる。鳩山氏は小沢氏に「和戦両様でもいいから」と、首相との会談を設定すれば応じるよう説得した。
首相も不信感をぬぐえずにいた。議員会館の自室に前原氏ら陣営幹部約20人を勢ぞろいさせると、小沢氏らと会談した鳩山氏から「挙党態勢というならそれなりのポストを考えてほしい」と持ちかけられたと暴露した。前夜に鳩山氏と合意した「トロイカ復活」の真意を問われると「必要な時に相談するという意味だ」と素っ気なく答えた。
首相周辺によると、輿石氏も首相に電話で「4人で会わなければ意味がない。セレモニーじゃないんだ」と、4者会談を求めてきた。警戒した首相が「密室で人事を決めるのだけは絶対したくない」と断ると「それなら政局だ」と突き放した。
「熟慮の結果…」
「4人で会うのが密室で、なぜ2人は密室でないのか」。小沢氏は31日夜、支持議員を前に、首相を批判した。一方、首相は記者会見で「ロッキード事件の憤りから立候補したのが私の原点だ。生い立ちで小沢さんとはかなり違ったところから出発した」として、小沢氏の弱点である政治とカネの問題を争点化する構えをみせた。
「随分、決断をするまでに自分に問いかけながら熟慮した」。会談が決裂し、出馬の意向を改めて表明した小沢氏は記者団に複雑な表情をみせた。選挙戦で世論の厳しい批判を一身に背負うのは目に見えている。「地方回りをやろうかな。地方は比較的、世論の風当たりが強くないから」。小沢氏は周囲に2週間の選挙戦は長いとこぼした。
:2010:09/01/14:06 ++ 第11部麻痺(4)与党の資格とは―国民も企業も景気も不在(政権)
日経平均株価が終値で8824円と今年の最安値を更新した31日。民主党代表選は首相、菅直人(63)と前幹事長、小沢一郎(68)の一騎打ちが確定した。密室で人事を決めなかったのはまだよかったが、株安と円高で経済の先行きに不安が広がる中、国民生活と離れた大義なき政争に政権与党の資格が問われている。
□ □
今の2人の関係を象徴する場面だった。30日の首相公邸前。会談後に記者に取り囲まれての取材を終えて車に乗り込む前首相、鳩山由紀夫(63)に菅が駆け寄り、深々と頭を下げた。
「小沢先生を応援するのが大義」。菅にとって26日の鳩山の言葉は衝撃だった。菅の再選支持を繰り返していた鳩山が小沢支持に転じるとは予想だにしていなかったからだ。
鳩山の出方を読み違えて自らの再選シナリオを大きく狂わせた菅。30日の会談で鳩山が提案した「トロイカ体制の原点回帰」を丸のみした姿に、6月の代表選立候補の記者会見で「小沢さんはしばらく静かにしていただきたい」と言い切った面影はなかった。参院選後に消費税率引き上げの旗を降ろし、政権延命が自己目的化しているかのような菅の姿勢は「大義なき戦い」をことさら印象づけた。
選挙による議会第1党と第2党の初めての政権交代――。国民が1年前の衆院選に酔った理由はこの一点に尽きる。ところがわずか1年で衆院選によらない2度目の首相あるいは内閣の交代もあり得る事態だ。大多数の有権者は関与できず、与党の党内事情で決まる「疑似政権交代」。民主党がかつて批判していた自民党そのままだ。
55年体制で野党に転落しない安心感で自民党は派閥抗争に没頭した。最大の見せ場は、首相を決める自民党総裁選。三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫の「三角大福」や安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一の「安竹宮」らの総裁選を巡る駆け引きは激烈を極めた。
それでも世論が自民党を政権与党に長らくとどめたのは、党内で振り子のように疑似政権交代が起き、浄化作用が働く錯覚を与えたからだろう。総裁選を経ず、派閥事情優先で首相が決まる例さえあった。1974年、金脈問題で首相、田中が退陣すると「クリーン三木」が後継に。80年、党内が派閥抗争に疲弊し大平が急死すると「和の政治」を標榜(ひょうぼう)する鈴木善幸を押し上げた。
6月に「政治とカネ」の問題で鳩山が首相、小沢が幹事長を辞め、菅は反小沢系の代表格である仙谷由人(64)を官房長官、枝野幸男(46)を幹事長に起用した。疑似政権交代のセオリーに従えば自然な流れだった。表舞台から去った鳩山は次期衆院選での政界引退を示唆し、小沢は「一兵卒」を宣言した。
□ □
それから3カ月。民主党の参院選大敗は結果的に鳩山、小沢に発言力を与え、2人は息を吹き返した。小沢自身がこれまで語った出馬の理由は「鳩山前総理から支援していきたいというお話をいただいた」だけ。民主党が権力闘争に明け暮れるのも衆院で300を超す議席を保ち、野党になる恐れがない事情からだ。
自民党が派閥抗争を繰り広げた状況と酷似するが、当時と異なるのは、バブル崩壊後の「失われた20年」が展望なく続く経済情勢だ。国民も企業も景気も不在では与党の資格はない。
「野党暮らしが長いと統治能力は落ち、政権交代後の政治は停滞する」。細川護熙(72)の首相秘書官を務めた成田憲彦(64)はこう達観する。「8年ぐらいの周期で政権交代が繰り返されれば円滑な政権運営ができる。我慢して長い目で見るしかない」。しかし、今の日本にその余裕はあるだろうか。=敬称略
(おわり)
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今の2人の関係を象徴する場面だった。30日の首相公邸前。会談後に記者に取り囲まれての取材を終えて車に乗り込む前首相、鳩山由紀夫(63)に菅が駆け寄り、深々と頭を下げた。
「小沢先生を応援するのが大義」。菅にとって26日の鳩山の言葉は衝撃だった。菅の再選支持を繰り返していた鳩山が小沢支持に転じるとは予想だにしていなかったからだ。
鳩山の出方を読み違えて自らの再選シナリオを大きく狂わせた菅。30日の会談で鳩山が提案した「トロイカ体制の原点回帰」を丸のみした姿に、6月の代表選立候補の記者会見で「小沢さんはしばらく静かにしていただきたい」と言い切った面影はなかった。参院選後に消費税率引き上げの旗を降ろし、政権延命が自己目的化しているかのような菅の姿勢は「大義なき戦い」をことさら印象づけた。
選挙による議会第1党と第2党の初めての政権交代――。国民が1年前の衆院選に酔った理由はこの一点に尽きる。ところがわずか1年で衆院選によらない2度目の首相あるいは内閣の交代もあり得る事態だ。大多数の有権者は関与できず、与党の党内事情で決まる「疑似政権交代」。民主党がかつて批判していた自民党そのままだ。
55年体制で野党に転落しない安心感で自民党は派閥抗争に没頭した。最大の見せ場は、首相を決める自民党総裁選。三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫の「三角大福」や安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一の「安竹宮」らの総裁選を巡る駆け引きは激烈を極めた。
それでも世論が自民党を政権与党に長らくとどめたのは、党内で振り子のように疑似政権交代が起き、浄化作用が働く錯覚を与えたからだろう。総裁選を経ず、派閥事情優先で首相が決まる例さえあった。1974年、金脈問題で首相、田中が退陣すると「クリーン三木」が後継に。80年、党内が派閥抗争に疲弊し大平が急死すると「和の政治」を標榜(ひょうぼう)する鈴木善幸を押し上げた。
6月に「政治とカネ」の問題で鳩山が首相、小沢が幹事長を辞め、菅は反小沢系の代表格である仙谷由人(64)を官房長官、枝野幸男(46)を幹事長に起用した。疑似政権交代のセオリーに従えば自然な流れだった。表舞台から去った鳩山は次期衆院選での政界引退を示唆し、小沢は「一兵卒」を宣言した。
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それから3カ月。民主党の参院選大敗は結果的に鳩山、小沢に発言力を与え、2人は息を吹き返した。小沢自身がこれまで語った出馬の理由は「鳩山前総理から支援していきたいというお話をいただいた」だけ。民主党が権力闘争に明け暮れるのも衆院で300を超す議席を保ち、野党になる恐れがない事情からだ。
自民党が派閥抗争を繰り広げた状況と酷似するが、当時と異なるのは、バブル崩壊後の「失われた20年」が展望なく続く経済情勢だ。国民も企業も景気も不在では与党の資格はない。
「野党暮らしが長いと統治能力は落ち、政権交代後の政治は停滞する」。細川護熙(72)の首相秘書官を務めた成田憲彦(64)はこう達観する。「8年ぐらいの周期で政権交代が繰り返されれば円滑な政権運営ができる。我慢して長い目で見るしかない」。しかし、今の日本にその余裕はあるだろうか。=敬称略
(おわり)
:2010:08/11/11:48 ++ 東アジア海の攻防(上)米中、勢力圏巡り示威―黄海や東シナ海、軍事演習で応酬。
東アジアで「海」を巡る攻防が活発になってきた。5~9日には韓国が黄海で大規模な訓練を実施し、北朝鮮が砲撃で応酬。中国は権益保護を目的に活動範囲を広げるとともに、相次ぐ演習で実戦に堪えうる作戦能力を誇示する。対する米軍は、空母も投入した演習などを展開し中国をけん制。東南アジア諸国も海軍力増強に動き、東アジアの安全保障の主戦場は「海」に移りつつある。
「ドーン、ドーン」。7月26日、南シナ海に71発のミサイル発射音が鳴り響いた。「中国版イージス艦」の異名を持つ駆逐艦「海口」が発射した対艦ミサイルは、敵の艦艇に見立てた標的に命中。ロシア製のソブレメンヌイ級駆逐艦「寧波」の対空ミサイルも標的を直撃し、駆逐艦「石家荘」は射程100キロ以上の対空ミサイルを垂直発射筒から打ち上げた。
この3隻は北海・東海・南海の3個艦隊の主力艦。過去最高の難度とする今回の演習は「南シナ海の領土保全への決意を示す」(軍関係者)狙いがあった。中国は今春から台湾やチベット問題に使う「核心的利益」という表現を南シナ海にも用い始め、権益確保への国家意思を強調する。
中国軍に浸透する安保観は「中国は地域大国からグローバル大国に脱皮し、利益と影響力は世界に向かっている」(楊毅・海軍少将)との認識だ。空母建造に加え、軍以外の政府機関も含む総力戦で海洋戦略を強化。国家海洋局は2020年までに「中レベルの海洋強国入り」を目指す。
東シナ海では、中国海軍の艦艇10隻が4月、沖縄本島と宮古島の間を往復。7月3日にも艦艇2隻がこの間を再び通過した。「調査船↓軍艦」の順で地ならしを進め、回数を重ねて勢力圏づくりを既成事実化する――。南シナ海で実践した戦術を東シナ海でも踏襲しようとしている。
海空統合で対抗
7月下旬、米韓が過去最大規模の合同演習を日本海で始めると、中国軍は「『第1列島線』の中に中国を抑え込む狙い」(羅援少将)と警戒。第1列島線は中国の「国防圏」の概念で、沖縄、台湾、フィリピンをつなぐ線。中国本土を取り囲むように位置している。中国は第1列島線の枠を超え、日本列島からサイパン、グアムをつなぐ「第2列島線」までの影響力の浸透を狙う。
米政府も戦略を見直す。2月発表の「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」で海空戦力の一体運用に重点を置いた「統合エアシーバトル構想」を提唱した。米軍の展開を阻止する力を持ちつつある中国を念頭に、精密誘導兵器を搭載した攻撃型原潜やステルス爆撃機などを組み合わせて対抗。1970年代にさかのぼるエアランドバトル構想の後継戦術で、米韓演習はこれを実践する内容だ。
「朝鮮半島と北東アジアの安定への米国の高い関心を裏付ける」。7月26日、米韓演習に初めて投入した最新鋭戦闘機F22を前に、米第7空軍のレミントン司令官は同戦闘機投入の意義を強調した。「北東アジア」への言及は中国へのけん制がにじむ。米中の攻防は単に黄海の縄張り争いにとどまらず、より広い「海」の支配圏を巡る駆け引きでもある。
「ドーン、ドーン」。7月26日、南シナ海に71発のミサイル発射音が鳴り響いた。「中国版イージス艦」の異名を持つ駆逐艦「海口」が発射した対艦ミサイルは、敵の艦艇に見立てた標的に命中。ロシア製のソブレメンヌイ級駆逐艦「寧波」の対空ミサイルも標的を直撃し、駆逐艦「石家荘」は射程100キロ以上の対空ミサイルを垂直発射筒から打ち上げた。
この3隻は北海・東海・南海の3個艦隊の主力艦。過去最高の難度とする今回の演習は「南シナ海の領土保全への決意を示す」(軍関係者)狙いがあった。中国は今春から台湾やチベット問題に使う「核心的利益」という表現を南シナ海にも用い始め、権益確保への国家意思を強調する。
中国軍に浸透する安保観は「中国は地域大国からグローバル大国に脱皮し、利益と影響力は世界に向かっている」(楊毅・海軍少将)との認識だ。空母建造に加え、軍以外の政府機関も含む総力戦で海洋戦略を強化。国家海洋局は2020年までに「中レベルの海洋強国入り」を目指す。
東シナ海では、中国海軍の艦艇10隻が4月、沖縄本島と宮古島の間を往復。7月3日にも艦艇2隻がこの間を再び通過した。「調査船↓軍艦」の順で地ならしを進め、回数を重ねて勢力圏づくりを既成事実化する――。南シナ海で実践した戦術を東シナ海でも踏襲しようとしている。
海空統合で対抗
7月下旬、米韓が過去最大規模の合同演習を日本海で始めると、中国軍は「『第1列島線』の中に中国を抑え込む狙い」(羅援少将)と警戒。第1列島線は中国の「国防圏」の概念で、沖縄、台湾、フィリピンをつなぐ線。中国本土を取り囲むように位置している。中国は第1列島線の枠を超え、日本列島からサイパン、グアムをつなぐ「第2列島線」までの影響力の浸透を狙う。
米政府も戦略を見直す。2月発表の「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」で海空戦力の一体運用に重点を置いた「統合エアシーバトル構想」を提唱した。米軍の展開を阻止する力を持ちつつある中国を念頭に、精密誘導兵器を搭載した攻撃型原潜やステルス爆撃機などを組み合わせて対抗。1970年代にさかのぼるエアランドバトル構想の後継戦術で、米韓演習はこれを実践する内容だ。
「朝鮮半島と北東アジアの安定への米国の高い関心を裏付ける」。7月26日、米韓演習に初めて投入した最新鋭戦闘機F22を前に、米第7空軍のレミントン司令官は同戦闘機投入の意義を強調した。「北東アジア」への言及は中国へのけん制がにじむ。米中の攻防は単に黄海の縄張り争いにとどまらず、より広い「海」の支配圏を巡る駆け引きでもある。
:2010:08/11/11:42 ++ 個人の短期売買、株式市場で増加、信用取引20年ぶり高水準、長期投資家の育成課題。
株式市場で現物や指数先物を頻繁に取引する手法が、個人投資家のあいだで広がっている。個人の短期売買が市場に流動性を与えている面はあるものの、個別企業への長期投資が根づかないという構造的な問題も浮き彫りになっている。
多い月は数百回
都内の男性投資家(36)は「経済指標や企業業績をまったく見ない」と言い切る。チャートという過去の株価推移を示すグラフから取引の機会を探っており、先物を中心に毎日、数千万円の売買をしている。多い月には取引が数百回に及ぶともいう。
こうした投資家は増えているとみられ、株式相場が低迷するなかでも先物売買の落ち込みは相対的に小さい。
個人による7月の日経平均先物の売買代金は約3兆2000億円と、2009年の1カ月間平均に比べ5%減にとどまった。一方で個人の株式売買は8兆1300億円と同33%も減った。
少ない元手で多額の売買をする信用取引も目立つ。個人全体の株式売買に占める信用取引の割合(信用取引比率)は急上昇しており、7月は買い取引で約20年ぶりに63%を超えた。
先物や信用取引の短期売買に徹する投資家を「デイトレーダー」と呼ぶことが多い。証券各社は先物や信用取引の手数料を下げることにより、デイトレーダーの取り込みに動き始めた。
7月は大和証券や岡三オンライン証券が信用取引の手数料を大幅に下げた。カブドットコム証券も大口取引の投資家に対する無料枠を拡大。楽天証券なども先物取引の手数料を安くした。
市場復調見えず
外国為替証拠金(FX)取引の規制強化が、株式市場の短期売買をさらに増やすとの見方もある。8月からFX取引の証拠金に掛けられる倍率の上限が50倍に制限され、来年8月にはさらに同倍率が25倍に下がる。
こうした規制の強化を嫌って「デイトレーダーがFXから株式に移ってくる可能性がある」(松井証券)という。
今後も短期取引の個人は活発に動きそうだが、市場全体の売買は回復の兆しがなかなか見えない。9日は東証1部の全体の売買代金が今年3番目の低水準となる8700億円まで落ち込んでしまった。
株式市場は多様な見方を持つ投資家が取引に参加し、企業の価値を発見する場でもある。
「短期売買ばかりでは市場の価格発見機能が弱まる」と懸念する声は強まっている。企業の業績や戦略をじっくり分析する投資家を育てることが、証券会社の課題として改めて浮上している。
多い月は数百回
都内の男性投資家(36)は「経済指標や企業業績をまったく見ない」と言い切る。チャートという過去の株価推移を示すグラフから取引の機会を探っており、先物を中心に毎日、数千万円の売買をしている。多い月には取引が数百回に及ぶともいう。
こうした投資家は増えているとみられ、株式相場が低迷するなかでも先物売買の落ち込みは相対的に小さい。
個人による7月の日経平均先物の売買代金は約3兆2000億円と、2009年の1カ月間平均に比べ5%減にとどまった。一方で個人の株式売買は8兆1300億円と同33%も減った。
少ない元手で多額の売買をする信用取引も目立つ。個人全体の株式売買に占める信用取引の割合(信用取引比率)は急上昇しており、7月は買い取引で約20年ぶりに63%を超えた。
先物や信用取引の短期売買に徹する投資家を「デイトレーダー」と呼ぶことが多い。証券各社は先物や信用取引の手数料を下げることにより、デイトレーダーの取り込みに動き始めた。
7月は大和証券や岡三オンライン証券が信用取引の手数料を大幅に下げた。カブドットコム証券も大口取引の投資家に対する無料枠を拡大。楽天証券なども先物取引の手数料を安くした。
市場復調見えず
外国為替証拠金(FX)取引の規制強化が、株式市場の短期売買をさらに増やすとの見方もある。8月からFX取引の証拠金に掛けられる倍率の上限が50倍に制限され、来年8月にはさらに同倍率が25倍に下がる。
こうした規制の強化を嫌って「デイトレーダーがFXから株式に移ってくる可能性がある」(松井証券)という。
今後も短期取引の個人は活発に動きそうだが、市場全体の売買は回復の兆しがなかなか見えない。9日は東証1部の全体の売買代金が今年3番目の低水準となる8700億円まで落ち込んでしまった。
株式市場は多様な見方を持つ投資家が取引に参加し、企業の価値を発見する場でもある。
「短期売買ばかりでは市場の価格発見機能が弱まる」と懸念する声は強まっている。企業の業績や戦略をじっくり分析する投資家を育てることが、証券会社の課題として改めて浮上している。
:2010:08/11/11:42 ++ 個人の短期売買、株式市場で増加、信用取引20年ぶり高水準、長期投資家の育成課題。
株式市場で現物や指数先物を頻繁に取引する手法が、個人投資家のあいだで広がっている。個人の短期売買が市場に流動性を与えている面はあるものの、個別企業への長期投資が根づかないという構造的な問題も浮き彫りになっている。
多い月は数百回
都内の男性投資家(36)は「経済指標や企業業績をまったく見ない」と言い切る。チャートという過去の株価推移を示すグラフから取引の機会を探っており、先物を中心に毎日、数千万円の売買をしている。多い月には取引が数百回に及ぶともいう。
こうした投資家は増えているとみられ、株式相場が低迷するなかでも先物売買の落ち込みは相対的に小さい。
個人による7月の日経平均先物の売買代金は約3兆2000億円と、2009年の1カ月間平均に比べ5%減にとどまった。一方で個人の株式売買は8兆1300億円と同33%も減った。
少ない元手で多額の売買をする信用取引も目立つ。個人全体の株式売買に占める信用取引の割合(信用取引比率)は急上昇しており、7月は買い取引で約20年ぶりに63%を超えた。
先物や信用取引の短期売買に徹する投資家を「デイトレーダー」と呼ぶことが多い。証券各社は先物や信用取引の手数料を下げることにより、デイトレーダーの取り込みに動き始めた。
7月は大和証券や岡三オンライン証券が信用取引の手数料を大幅に下げた。カブドットコム証券も大口取引の投資家に対する無料枠を拡大。楽天証券なども先物取引の手数料を安くした。
市場復調見えず
外国為替証拠金(FX)取引の規制強化が、株式市場の短期売買をさらに増やすとの見方もある。8月からFX取引の証拠金に掛けられる倍率の上限が50倍に制限され、来年8月にはさらに同倍率が25倍に下がる。
こうした規制の強化を嫌って「デイトレーダーがFXから株式に移ってくる可能性がある」(松井証券)という。
今後も短期取引の個人は活発に動きそうだが、市場全体の売買は回復の兆しがなかなか見えない。9日は東証1部の全体の売買代金が今年3番目の低水準となる8700億円まで落ち込んでしまった。
株式市場は多様な見方を持つ投資家が取引に参加し、企業の価値を発見する場でもある。
「短期売買ばかりでは市場の価格発見機能が弱まる」と懸念する声は強まっている。企業の業績や戦略をじっくり分析する投資家を育てることが、証券会社の課題として改めて浮上している。
多い月は数百回
都内の男性投資家(36)は「経済指標や企業業績をまったく見ない」と言い切る。チャートという過去の株価推移を示すグラフから取引の機会を探っており、先物を中心に毎日、数千万円の売買をしている。多い月には取引が数百回に及ぶともいう。
こうした投資家は増えているとみられ、株式相場が低迷するなかでも先物売買の落ち込みは相対的に小さい。
個人による7月の日経平均先物の売買代金は約3兆2000億円と、2009年の1カ月間平均に比べ5%減にとどまった。一方で個人の株式売買は8兆1300億円と同33%も減った。
少ない元手で多額の売買をする信用取引も目立つ。個人全体の株式売買に占める信用取引の割合(信用取引比率)は急上昇しており、7月は買い取引で約20年ぶりに63%を超えた。
先物や信用取引の短期売買に徹する投資家を「デイトレーダー」と呼ぶことが多い。証券各社は先物や信用取引の手数料を下げることにより、デイトレーダーの取り込みに動き始めた。
7月は大和証券や岡三オンライン証券が信用取引の手数料を大幅に下げた。カブドットコム証券も大口取引の投資家に対する無料枠を拡大。楽天証券なども先物取引の手数料を安くした。
市場復調見えず
外国為替証拠金(FX)取引の規制強化が、株式市場の短期売買をさらに増やすとの見方もある。8月からFX取引の証拠金に掛けられる倍率の上限が50倍に制限され、来年8月にはさらに同倍率が25倍に下がる。
こうした規制の強化を嫌って「デイトレーダーがFXから株式に移ってくる可能性がある」(松井証券)という。
今後も短期取引の個人は活発に動きそうだが、市場全体の売買は回復の兆しがなかなか見えない。9日は東証1部の全体の売買代金が今年3番目の低水準となる8700億円まで落ち込んでしまった。
株式市場は多様な見方を持つ投資家が取引に参加し、企業の価値を発見する場でもある。
「短期売買ばかりでは市場の価格発見機能が弱まる」と懸念する声は強まっている。企業の業績や戦略をじっくり分析する投資家を育てることが、証券会社の課題として改めて浮上している。
:2010:08/11/11:37 ++ 併合100年首相談話、摩擦回避へ韓国に配慮、官房長官が主導
両政府、直前まで調整
「痛切な反省と心からのおわび」。日韓併合100年の菅直人首相の首相談話は、村山談話以降、繰り返してきた表現を踏襲する一方、(1)韓国だけに向けたメッセージとする(2)植民地支配の強制性を事実上、認める――などで、韓国への配慮を示した。日韓摩擦の芽を摘み歴史問題に区切りをつけたい菅内閣の狙いがにじむが、国内での評価は割れている。
民主党内でも慎重論が根強かった首相談話を主導したのは、仙谷由人官房長官だった。仙谷氏は7月下旬、来日した李明博(イ・ミョンバク)大統領の実兄、李相得(イ・サンドゥク)韓日議員連盟会長と会談。首相談話の内容を協議した。発表直前まで、日韓は内容を擦り合わせたフシがある。
日本が終戦記念日を迎える8月は韓国にとっても歴史の季節。反日感情が高まりやすい。首相談話で日本側が誠意を見せれば、韓国政府も国内世論を説得しやすいとの判断だ。日韓関係筋によると、李相得氏は「村山談話を超える踏み込んだ表現」を要求したという。
菅内閣にとっても歴史問題での日韓摩擦の芽はできれば摘んでおきたい。人権派弁護士でもあった仙谷氏はかねて歴史問題では韓国に融和的。「自分たちの世代でけじめをつけるべきだ、が持論。何度も長官自身が文言を書き直した」。仙谷氏の外交ブレーンの一人はこう明かす。
民主党内の慎重派には、小沢一郎前幹事長に近いグループの議員もいる。複雑な構図のなかで、首相在任時から日韓関係に前向きだった鳩山由紀夫前首相が、仙谷氏をバックアップした。
「基本的に村山談話を踏襲する」「朝鮮王朝の古文書は返還でなく渡す、という表現にする」などの方針はこうして固まっていった。一方で、「意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ……」など、韓国に配慮した表現も盛り込まれた。
ただ、歴史問題は一気に解決はしない。談話を巡っては韓国内で「強制性だけでなく違法性に言及すべきだ」(与党ハンナラ党)といった不満が残っている。日本国内では自民党などが「謝罪外交だ」「様々な個別補償に飛び火する」などと批判を強めている。民主党内にも「早い段階で相談があってしかるべきだった」(玄葉光一郎公務員制度改革担当相=民主党政調会長)といった声がある。
当の首相は「5~6日に広島を訪問するまで、談話を出すか悩んでいた」(政府筋)。「成果がなければ代表選にマイナスでしかない」(周辺)との懸念があったようだ。首相就任後は8月訪韓で一気に外交で得点を稼ぐ案も取りざたされたが、首相は「訪米を優先させたい」と拒否したという。
談話が評価されるかどうかは、今後の日韓関係が左右する。北朝鮮問題での連携、日韓経済連携協定(EPA)、竹島(韓国名・独島)問題……。戦略的な友好関係をどう築くか。首相の指導力が問われる。
「痛切な反省と心からのおわび」。日韓併合100年の菅直人首相の首相談話は、村山談話以降、繰り返してきた表現を踏襲する一方、(1)韓国だけに向けたメッセージとする(2)植民地支配の強制性を事実上、認める――などで、韓国への配慮を示した。日韓摩擦の芽を摘み歴史問題に区切りをつけたい菅内閣の狙いがにじむが、国内での評価は割れている。
民主党内でも慎重論が根強かった首相談話を主導したのは、仙谷由人官房長官だった。仙谷氏は7月下旬、来日した李明博(イ・ミョンバク)大統領の実兄、李相得(イ・サンドゥク)韓日議員連盟会長と会談。首相談話の内容を協議した。発表直前まで、日韓は内容を擦り合わせたフシがある。
日本が終戦記念日を迎える8月は韓国にとっても歴史の季節。反日感情が高まりやすい。首相談話で日本側が誠意を見せれば、韓国政府も国内世論を説得しやすいとの判断だ。日韓関係筋によると、李相得氏は「村山談話を超える踏み込んだ表現」を要求したという。
菅内閣にとっても歴史問題での日韓摩擦の芽はできれば摘んでおきたい。人権派弁護士でもあった仙谷氏はかねて歴史問題では韓国に融和的。「自分たちの世代でけじめをつけるべきだ、が持論。何度も長官自身が文言を書き直した」。仙谷氏の外交ブレーンの一人はこう明かす。
民主党内の慎重派には、小沢一郎前幹事長に近いグループの議員もいる。複雑な構図のなかで、首相在任時から日韓関係に前向きだった鳩山由紀夫前首相が、仙谷氏をバックアップした。
「基本的に村山談話を踏襲する」「朝鮮王朝の古文書は返還でなく渡す、という表現にする」などの方針はこうして固まっていった。一方で、「意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ……」など、韓国に配慮した表現も盛り込まれた。
ただ、歴史問題は一気に解決はしない。談話を巡っては韓国内で「強制性だけでなく違法性に言及すべきだ」(与党ハンナラ党)といった不満が残っている。日本国内では自民党などが「謝罪外交だ」「様々な個別補償に飛び火する」などと批判を強めている。民主党内にも「早い段階で相談があってしかるべきだった」(玄葉光一郎公務員制度改革担当相=民主党政調会長)といった声がある。
当の首相は「5~6日に広島を訪問するまで、談話を出すか悩んでいた」(政府筋)。「成果がなければ代表選にマイナスでしかない」(周辺)との懸念があったようだ。首相就任後は8月訪韓で一気に外交で得点を稼ぐ案も取りざたされたが、首相は「訪米を優先させたい」と拒否したという。
談話が評価されるかどうかは、今後の日韓関係が左右する。北朝鮮問題での連携、日韓経済連携協定(EPA)、竹島(韓国名・独島)問題……。戦略的な友好関係をどう築くか。首相の指導力が問われる。
:2010:08/11/11:37 ++ 併合100年首相談話、摩擦回避へ韓国に配慮、官房長官が主導
両政府、直前まで調整
「痛切な反省と心からのおわび」。日韓併合100年の菅直人首相の首相談話は、村山談話以降、繰り返してきた表現を踏襲する一方、(1)韓国だけに向けたメッセージとする(2)植民地支配の強制性を事実上、認める――などで、韓国への配慮を示した。日韓摩擦の芽を摘み歴史問題に区切りをつけたい菅内閣の狙いがにじむが、国内での評価は割れている。
民主党内でも慎重論が根強かった首相談話を主導したのは、仙谷由人官房長官だった。仙谷氏は7月下旬、来日した李明博(イ・ミョンバク)大統領の実兄、李相得(イ・サンドゥク)韓日議員連盟会長と会談。首相談話の内容を協議した。発表直前まで、日韓は内容を擦り合わせたフシがある。
日本が終戦記念日を迎える8月は韓国にとっても歴史の季節。反日感情が高まりやすい。首相談話で日本側が誠意を見せれば、韓国政府も国内世論を説得しやすいとの判断だ。日韓関係筋によると、李相得氏は「村山談話を超える踏み込んだ表現」を要求したという。
菅内閣にとっても歴史問題での日韓摩擦の芽はできれば摘んでおきたい。人権派弁護士でもあった仙谷氏はかねて歴史問題では韓国に融和的。「自分たちの世代でけじめをつけるべきだ、が持論。何度も長官自身が文言を書き直した」。仙谷氏の外交ブレーンの一人はこう明かす。
民主党内の慎重派には、小沢一郎前幹事長に近いグループの議員もいる。複雑な構図のなかで、首相在任時から日韓関係に前向きだった鳩山由紀夫前首相が、仙谷氏をバックアップした。
「基本的に村山談話を踏襲する」「朝鮮王朝の古文書は返還でなく渡す、という表現にする」などの方針はこうして固まっていった。一方で、「意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ……」など、韓国に配慮した表現も盛り込まれた。
ただ、歴史問題は一気に解決はしない。談話を巡っては韓国内で「強制性だけでなく違法性に言及すべきだ」(与党ハンナラ党)といった不満が残っている。日本国内では自民党などが「謝罪外交だ」「様々な個別補償に飛び火する」などと批判を強めている。民主党内にも「早い段階で相談があってしかるべきだった」(玄葉光一郎公務員制度改革担当相=民主党政調会長)といった声がある。
当の首相は「5~6日に広島を訪問するまで、談話を出すか悩んでいた」(政府筋)。「成果がなければ代表選にマイナスでしかない」(周辺)との懸念があったようだ。首相就任後は8月訪韓で一気に外交で得点を稼ぐ案も取りざたされたが、首相は「訪米を優先させたい」と拒否したという。
談話が評価されるかどうかは、今後の日韓関係が左右する。北朝鮮問題での連携、日韓経済連携協定(EPA)、竹島(韓国名・独島)問題……。戦略的な友好関係をどう築くか。首相の指導力が問われる。
「痛切な反省と心からのおわび」。日韓併合100年の菅直人首相の首相談話は、村山談話以降、繰り返してきた表現を踏襲する一方、(1)韓国だけに向けたメッセージとする(2)植民地支配の強制性を事実上、認める――などで、韓国への配慮を示した。日韓摩擦の芽を摘み歴史問題に区切りをつけたい菅内閣の狙いがにじむが、国内での評価は割れている。
民主党内でも慎重論が根強かった首相談話を主導したのは、仙谷由人官房長官だった。仙谷氏は7月下旬、来日した李明博(イ・ミョンバク)大統領の実兄、李相得(イ・サンドゥク)韓日議員連盟会長と会談。首相談話の内容を協議した。発表直前まで、日韓は内容を擦り合わせたフシがある。
日本が終戦記念日を迎える8月は韓国にとっても歴史の季節。反日感情が高まりやすい。首相談話で日本側が誠意を見せれば、韓国政府も国内世論を説得しやすいとの判断だ。日韓関係筋によると、李相得氏は「村山談話を超える踏み込んだ表現」を要求したという。
菅内閣にとっても歴史問題での日韓摩擦の芽はできれば摘んでおきたい。人権派弁護士でもあった仙谷氏はかねて歴史問題では韓国に融和的。「自分たちの世代でけじめをつけるべきだ、が持論。何度も長官自身が文言を書き直した」。仙谷氏の外交ブレーンの一人はこう明かす。
民主党内の慎重派には、小沢一郎前幹事長に近いグループの議員もいる。複雑な構図のなかで、首相在任時から日韓関係に前向きだった鳩山由紀夫前首相が、仙谷氏をバックアップした。
「基本的に村山談話を踏襲する」「朝鮮王朝の古文書は返還でなく渡す、という表現にする」などの方針はこうして固まっていった。一方で、「意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ……」など、韓国に配慮した表現も盛り込まれた。
ただ、歴史問題は一気に解決はしない。談話を巡っては韓国内で「強制性だけでなく違法性に言及すべきだ」(与党ハンナラ党)といった不満が残っている。日本国内では自民党などが「謝罪外交だ」「様々な個別補償に飛び火する」などと批判を強めている。民主党内にも「早い段階で相談があってしかるべきだった」(玄葉光一郎公務員制度改革担当相=民主党政調会長)といった声がある。
当の首相は「5~6日に広島を訪問するまで、談話を出すか悩んでいた」(政府筋)。「成果がなければ代表選にマイナスでしかない」(周辺)との懸念があったようだ。首相就任後は8月訪韓で一気に外交で得点を稼ぐ案も取りざたされたが、首相は「訪米を優先させたい」と拒否したという。
談話が評価されるかどうかは、今後の日韓関係が左右する。北朝鮮問題での連携、日韓経済連携協定(EPA)、竹島(韓国名・独島)問題……。戦略的な友好関係をどう築くか。首相の指導力が問われる。
:2010:08/11/11:35 ++ 国の借金904兆円、6月末、GDPの1.9倍、悪化傾向今後も。
財務省が10日発表した2010年6月末の国債や借入金などを合わせた「国の借金」は904兆772億円となり、900兆円を初めて突破した。3月末から21兆1538億円増え、過去最高を更新。10年度末には973兆円に達する見通しで、11年度中に1000兆円の大台も視野に入る。長期金利は低位安定しているものの、財政は悪化する一方だ。
国の借金は国際通貨基金(IMF)の基準に沿って財務省が四半期ごとに公表している。3カ月間での借金の増加額は05年3月末以来の高水準。10年度の一般会計予算では92・3兆円の歳出に対して、税収は37・4兆円にとどまり、残りは44・3兆円の国債発行などで賄う計画。
当初予算で国債発行額が税収を上回るのは、戦後の混乱期以来の事態だ。11年度予算でも新規国債発行額を44兆円以下にする方針だが、国債頼みの財政運営で、借金が増える状態は当面続く見通しだ。
借金総額は名目国内総生産(GDP)の1・9倍。7月時点の人口推計(概算値)で計算すると、1人あたり約710万円となる。3月末時点では693万円だった。
IMFによると、国の借金から財投債などを除き、さらに地方債を加えたベースでの債務残高のGDP比は09年末に218%に達する。米国(83%)や英国(68%)、ドイツ(73%)など主要国に比べて突出して高い水準にあり、財政危機に陥ったギリシャ(115%)も大きく上回る。
それでも長期金利(新発10年物国債の利回り)が1%前後の水準で推移しているのは、国債の9割以上を国内投資家が保有しているためだ。ただ高齢化に伴う貯蓄率の低下などで、安定消化が今後も続くとは限らない。
国の借金は国際通貨基金(IMF)の基準に沿って財務省が四半期ごとに公表している。3カ月間での借金の増加額は05年3月末以来の高水準。10年度の一般会計予算では92・3兆円の歳出に対して、税収は37・4兆円にとどまり、残りは44・3兆円の国債発行などで賄う計画。
当初予算で国債発行額が税収を上回るのは、戦後の混乱期以来の事態だ。11年度予算でも新規国債発行額を44兆円以下にする方針だが、国債頼みの財政運営で、借金が増える状態は当面続く見通しだ。
借金総額は名目国内総生産(GDP)の1・9倍。7月時点の人口推計(概算値)で計算すると、1人あたり約710万円となる。3月末時点では693万円だった。
IMFによると、国の借金から財投債などを除き、さらに地方債を加えたベースでの債務残高のGDP比は09年末に218%に達する。米国(83%)や英国(68%)、ドイツ(73%)など主要国に比べて突出して高い水準にあり、財政危機に陥ったギリシャ(115%)も大きく上回る。
それでも長期金利(新発10年物国債の利回り)が1%前後の水準で推移しているのは、国債の9割以上を国内投資家が保有しているためだ。ただ高齢化に伴う貯蓄率の低下などで、安定消化が今後も続くとは限らない。
:2010:08/11/11:32 ++ 公約の1年後(3)国民は負担増、自らは…――定数・カネ「痛み」避ける。
3日、首相官邸で開かれた政府・民主党首脳会議。「参院では既に議論が始まっている。前向きに取り扱っていただきたい」。枝野幸男幹事長が国会議員定数の削減について出席者に協力を要請すると、特に異論は出なかった。
民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)に衆院比例代表の80削減を明記し、参院選では参院で40程度削減の項目を追加した。菅直人首相は具体的な削減案を8月中に党内でまとめ12月までに与野党合意をめざす考えを表明している。
国会運営を優先
自ら身を切る姿勢を示す定数削減は「数少ない政権浮揚の材料」(参院幹部)だ。既に参院では各会派でつくる協議会が議論に着手したが、実現への道は平たんではない。
4日夜、東京・赤坂の日本料理店。「これからは野党の協力も得ないといけないのに、定数削減を言い出すなんてどうかしてるんじゃないか」。小沢一郎前幹事長に近い1年生議員が集まった会合で、首相の方針に冷淡な意見が噴出した。
少数政党にとって、比例代表の削減は党の存亡にかかわる死活問題になる。菅内閣は参院で与野党が逆転した国会運営を乗り切るため各党の協力を求めているが、定数削減論議はそれに水をかけかねない。
まるで人ごと
実際、野党からの反応は厳しい。「民主党に比例だけの削減なんてさせない」。今月上旬、公明党本部で開かれた幹部会合ではこうした方針を確認した。社民党の重野安正幹事長も5日の記者会見で「同意できない」と改めて反対姿勢を表明。共産党も比例代表の定数削減に反対する各党に共闘を呼びかけた。
政治改革でもう一つの柱である「政治とカネ」の問題への対応も遅々として進まない。民主党は衆院選マニフェストで企業・団体献金の禁止を掲げた。先の通常国会の党首討論では公明党の山口那津男代表が実現に向けた政治資金規正法改正を検討する与野党協議機関の設置を呼びかけ、当時の鳩山由紀夫首相は応じる姿勢を示した。
自民党には企業・団体献金禁止に慎重論が根強い。菅首相も3日の衆院予算委員会で企業・団体献金禁止について「多くの党の合意を得て法案が成立することを期待している」とまるで人ごとのように答弁した。
何より、鳩山政権退陣につながった小沢氏の資金管理団体の土地購入事件は未決着のままだ。「役職を辞任したのは政治家として最大級のけじめのつけ方だ」。首相は5日の参院予算委で、鳩山・小沢両氏の問題についてこう語った。自らの痛みを伴う改革は避け続ける国会。消費増税など国民に負担増を訴えるには、説得力を欠く。
民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)に衆院比例代表の80削減を明記し、参院選では参院で40程度削減の項目を追加した。菅直人首相は具体的な削減案を8月中に党内でまとめ12月までに与野党合意をめざす考えを表明している。
国会運営を優先
自ら身を切る姿勢を示す定数削減は「数少ない政権浮揚の材料」(参院幹部)だ。既に参院では各会派でつくる協議会が議論に着手したが、実現への道は平たんではない。
4日夜、東京・赤坂の日本料理店。「これからは野党の協力も得ないといけないのに、定数削減を言い出すなんてどうかしてるんじゃないか」。小沢一郎前幹事長に近い1年生議員が集まった会合で、首相の方針に冷淡な意見が噴出した。
少数政党にとって、比例代表の削減は党の存亡にかかわる死活問題になる。菅内閣は参院で与野党が逆転した国会運営を乗り切るため各党の協力を求めているが、定数削減論議はそれに水をかけかねない。
まるで人ごと
実際、野党からの反応は厳しい。「民主党に比例だけの削減なんてさせない」。今月上旬、公明党本部で開かれた幹部会合ではこうした方針を確認した。社民党の重野安正幹事長も5日の記者会見で「同意できない」と改めて反対姿勢を表明。共産党も比例代表の定数削減に反対する各党に共闘を呼びかけた。
政治改革でもう一つの柱である「政治とカネ」の問題への対応も遅々として進まない。民主党は衆院選マニフェストで企業・団体献金の禁止を掲げた。先の通常国会の党首討論では公明党の山口那津男代表が実現に向けた政治資金規正法改正を検討する与野党協議機関の設置を呼びかけ、当時の鳩山由紀夫首相は応じる姿勢を示した。
自民党には企業・団体献金禁止に慎重論が根強い。菅首相も3日の衆院予算委員会で企業・団体献金禁止について「多くの党の合意を得て法案が成立することを期待している」とまるで人ごとのように答弁した。
何より、鳩山政権退陣につながった小沢氏の資金管理団体の土地購入事件は未決着のままだ。「役職を辞任したのは政治家として最大級のけじめのつけ方だ」。首相は5日の参院予算委で、鳩山・小沢両氏の問題についてこう語った。自らの痛みを伴う改革は避け続ける国会。消費増税など国民に負担増を訴えるには、説得力を欠く。
:2010:08/11/11:23 ++ 韓国の請求権解決済み、首相会見、公約修正には含み。
菅直人首相は10日、官邸で記者会見し、日韓併合100年に際して閣議決定した首相談話に関連し「(韓国側の)請求権はすでに完全に解決済みとの立場だ」と述べ、1965年の日韓基本条約の締結時に結んだ関連協定により、請求権などは既に消滅しているとの考えを示した。(会見要旨5面に)
昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)については「実行が難しいもの、修正が必要なものはきちんと国民に説明し理解してもらう。誠実な対応を取っていきたい」と表明。説明責任を果たしたうえでマニフェストを修正する可能性を示唆した。
公約を予定通り実現するには、来年度予算で5・5兆円の新規財源が必要。これ以外に社会保障費の自然増が1・3兆円に上るなど実現は容易ではない。首相の発言はこうした厳しい財政状況を踏まえたとみられる。
首相は、国会議員の歳費(給与)の自主返納を認める法案が成立したことなどを挙げて「しっかり議論して合意すれば物事がきちんと決まる一つの事例」と指摘した。
昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)については「実行が難しいもの、修正が必要なものはきちんと国民に説明し理解してもらう。誠実な対応を取っていきたい」と表明。説明責任を果たしたうえでマニフェストを修正する可能性を示唆した。
公約を予定通り実現するには、来年度予算で5・5兆円の新規財源が必要。これ以外に社会保障費の自然増が1・3兆円に上るなど実現は容易ではない。首相の発言はこうした厳しい財政状況を踏まえたとみられる。
首相は、国会議員の歳費(給与)の自主返納を認める法案が成立したことなどを挙げて「しっかり議論して合意すれば物事がきちんと決まる一つの事例」と指摘した。
:2010:08/10/10:20 ++ 帰省土産はネットで手ぶら―機内持ち込み規制も影響(comコムシューム最前線)
帰省の手土産を駅や空港の売店で買わず、ネット通販で買って実家に送る人が増えている。混雑する移動中の荷物を減らすのが狙いだが、時間を気にせずに幅広い商品から選べ、帰省時の会話のきっかけにできる点も人気の要因だ。まとめ買いで送料が無料になるケースもあり利用が拡大。帰省のほか旅先の土産品に活用する人も多い。空の便で荷物の機内持ち込みが制限された影響もあるようだ。
「1歳10カ月の子供を連れているので荷物が多い。だから手土産はネットで注文しています」。東京都大田区の女性会社員(32)は7月に福岡の実家に帰省した際も、百貨店のネット通販でスイーツを購入し、届け日を到着日に指定した。
この女性が利用したのは高島屋のネット通販。7月から帰省向けのコーナーを開設し、売り上げは前年の2・4倍と大きく伸びた。通販の送料は全国一律315円。送り先ごとに料金が変わる店舗からの配送依頼に比べると、総じて割安だ。
楽天、ヤフーの仮想商店街も帰省向けの特設ページを設け、売れ行きは前年を上回る。一定額を購入すれば、送料無料になるショップもある。都内の会社員、森岡康一さん(33)は「大阪の実家に帰る際は、親せきまわりの分も含めて1回の注文が2万~3万円になるので送料は払ったことがない」と話す。
駅や空港の土産物店と同じ商品を販売する通販サイトも好調だ。JR東日本リテールネットは7月以降の土産物のネット売り上げが前年比9%増だ。羽田空港の土産物を扱う日本空港ビルデングでは7月が前年の2倍、大阪空港の商品を販売する関西国際空港産業も同2割増となっている。
空路で帰省する人の間で土産のネット通販利用が増えている背景には、「国内線の航空各社が昨年12月に機内に持ち込める荷物のサイズを厳格に適用した影響もある」(関西国際空港産業)。基準を超えた荷物を預け直すなどの手間を敬遠してネット通販に流れている面もあるようだ。
ネット通販での土産品は店頭と異なり、出発地の名産品が売れ筋というわけではない。「話のタネになるものがいいので、東京名物にはこだわらずに帰省先で手に入りにくいものを選んでいる」というのは東京都中央区の30代主婦。夫の実家がある北海道に帰省する際は、広島県の名菓「ひとつぶのマスカット」をよく買うという。
ヤフーによると7月1日から8月3日までの帰省土産全体の売り上げは前年比42%増だが、東京土産に限れば22%増にとどまる。
土産品のネット購入は帰省先に向かう際だけでなく、Uターン時や一般の旅行でも利用が拡大している。「会社への土産もネットで買う人が増えている」(楽天)
「1歳10カ月の子供を連れているので荷物が多い。だから手土産はネットで注文しています」。東京都大田区の女性会社員(32)は7月に福岡の実家に帰省した際も、百貨店のネット通販でスイーツを購入し、届け日を到着日に指定した。
この女性が利用したのは高島屋のネット通販。7月から帰省向けのコーナーを開設し、売り上げは前年の2・4倍と大きく伸びた。通販の送料は全国一律315円。送り先ごとに料金が変わる店舗からの配送依頼に比べると、総じて割安だ。
楽天、ヤフーの仮想商店街も帰省向けの特設ページを設け、売れ行きは前年を上回る。一定額を購入すれば、送料無料になるショップもある。都内の会社員、森岡康一さん(33)は「大阪の実家に帰る際は、親せきまわりの分も含めて1回の注文が2万~3万円になるので送料は払ったことがない」と話す。
駅や空港の土産物店と同じ商品を販売する通販サイトも好調だ。JR東日本リテールネットは7月以降の土産物のネット売り上げが前年比9%増だ。羽田空港の土産物を扱う日本空港ビルデングでは7月が前年の2倍、大阪空港の商品を販売する関西国際空港産業も同2割増となっている。
空路で帰省する人の間で土産のネット通販利用が増えている背景には、「国内線の航空各社が昨年12月に機内に持ち込める荷物のサイズを厳格に適用した影響もある」(関西国際空港産業)。基準を超えた荷物を預け直すなどの手間を敬遠してネット通販に流れている面もあるようだ。
ネット通販での土産品は店頭と異なり、出発地の名産品が売れ筋というわけではない。「話のタネになるものがいいので、東京名物にはこだわらずに帰省先で手に入りにくいものを選んでいる」というのは東京都中央区の30代主婦。夫の実家がある北海道に帰省する際は、広島県の名菓「ひとつぶのマスカット」をよく買うという。
ヤフーによると7月1日から8月3日までの帰省土産全体の売り上げは前年比42%増だが、東京土産に限れば22%増にとどまる。
土産品のネット購入は帰省先に向かう際だけでなく、Uターン時や一般の旅行でも利用が拡大している。「会社への土産もネットで買う人が増えている」(楽天)
:2010:08/10/09:53 ++ 移植医療の新たな出発点に(社説)
脳死になったときに臓器を提供するかどうか。本人の意思が書面などに明らかに記されていなくても家族の承諾があれば提供できる。
7月17日に施行された改正臓器移植法は、臓器移植を前提とした脳死判定と臓器提供に必要な条件を、こう緩めた。国内で一例でも多く移植手術を実施し、臓器移植でしか助からない患者の命を救うためだ。
その改正法の下で初めて、交通事故にあった20代の男性が臓器提供を前提に脳死と判定された。本人の提供意思を書面で確認はできないが、家族が承諾しているという。
脳死になった男性は生前に提供意思を口にしていたとされる。移植について会話を交わしたことが、家族の承諾の土台になったようだ。それにしても家族の決断には重く貴いものがある。心の負担も大きいはずだ。医療関係者による精神的な支援が要る。提供意思を生かす移植手術の成功が何よりの朗報になろう。
今回の提供を契機に、善意の臓器提供が着実に増えてほしい。そのためには、家族の意思確認や脳死判定などの一連の手続きが適切に進められたかどうか、これから専門家による検証が必要だ。かりそめにも臓器提供に医師などからの圧力があってはならない。情報をできるだけ開示することが移植医療についての理解を広め、普及につながる。
旧臓器移植法は1997年に施行されたが、13年間で脳死移植は86例にとどまる。心臓や肝臓の重い病気で移植手術を待つ患者は400人を超す。待機中に亡くなる患者や、高い費用をかけて海外で移植手術を受ける患者が後を絶たなかった。
改正法は国内でも移植医療の定着を目指し昨年に成立したが、施行までの1年で医療現場の体制が十分に整ったとはいえない。脳死者の家族に臓器提供について説明し、移植を待つ患者との仲立ちをする移植コーディネーターがかなめとなるが、現状では人員が足りない。
15歳未満の子どもの臓器提供も家族の承諾で可能になったが、大人より難しい脳死判定や、虐待死ではないことの確認などで的確な判断を下せるか不安を漏らす医師もいる。命を大切にする医療の実現に体制充実が欠かせない。
7月17日に施行された改正臓器移植法は、臓器移植を前提とした脳死判定と臓器提供に必要な条件を、こう緩めた。国内で一例でも多く移植手術を実施し、臓器移植でしか助からない患者の命を救うためだ。
その改正法の下で初めて、交通事故にあった20代の男性が臓器提供を前提に脳死と判定された。本人の提供意思を書面で確認はできないが、家族が承諾しているという。
脳死になった男性は生前に提供意思を口にしていたとされる。移植について会話を交わしたことが、家族の承諾の土台になったようだ。それにしても家族の決断には重く貴いものがある。心の負担も大きいはずだ。医療関係者による精神的な支援が要る。提供意思を生かす移植手術の成功が何よりの朗報になろう。
今回の提供を契機に、善意の臓器提供が着実に増えてほしい。そのためには、家族の意思確認や脳死判定などの一連の手続きが適切に進められたかどうか、これから専門家による検証が必要だ。かりそめにも臓器提供に医師などからの圧力があってはならない。情報をできるだけ開示することが移植医療についての理解を広め、普及につながる。
旧臓器移植法は1997年に施行されたが、13年間で脳死移植は86例にとどまる。心臓や肝臓の重い病気で移植手術を待つ患者は400人を超す。待機中に亡くなる患者や、高い費用をかけて海外で移植手術を受ける患者が後を絶たなかった。
改正法は国内でも移植医療の定着を目指し昨年に成立したが、施行までの1年で医療現場の体制が十分に整ったとはいえない。脳死者の家族に臓器提供について説明し、移植を待つ患者との仲立ちをする移植コーディネーターがかなめとなるが、現状では人員が足りない。
15歳未満の子どもの臓器提供も家族の承諾で可能になったが、大人より難しい脳死判定や、虐待死ではないことの確認などで的確な判断を下せるか不安を漏らす医師もいる。命を大切にする医療の実現に体制充実が欠かせない。
:2009:12/07/15:13 ++ 米、「普天間」二転三転に嫌気、鳩山政権を相手にせず?
米オバマ政権が沖縄県の米軍普天間基地の移設を巡る鳩山政権の対応に不信感を強めている。現行の移設計画の履行に応じないことへの不満のみならず、年内決着を目指すのかどうかなどで方針が二転三転してみえたことにあきれ気味。12月に入りオバマ大統領は気候変動問題などを協議するため、主要国首脳に相次ぎ電話したが、日本にはかけなかった。鳩山政権を相手にせず。そんな雰囲気も漂い始めた。
(1面参照)
憤りに近い反応をみせているのが国防総省だ。イラクとアフガニスタンの二正面作戦に必要な兵力を賄うため、在日、在韓米軍からも派遣中。そのため移設を前提に老朽化を放置してきた普天間の施設改修を制服組は迫っており、同省は「移設がさらに遅れるのであれば、日本が費用を負担すべきだ」と怒り心頭だ。
5日付の米紙ワシントン・ポストは「米、日本への対応に苦闘」との記事を掲載。「日本には定まった外交方針がない」と酷評した。
国務省はやや冷静だ。1989年から93年まで駐日大使を務めたアマコスト氏が「ミスター外圧」と呼ばれ、「嫌米感」を生んだことを意識。日米交渉は慎重に進めるべきだとの立場だ。
ただ、11月のオバマ大統領の訪日までに普天間問題は決着するとの見通しをホワイトハウスに伝えていたキャンベル米国務次官補はその後、発言を控えざるを得ない状況。知日派ほど肩身が狭いという。
年内決着に一肌脱ごうと日本側が要望した沖縄の基地負担の軽減に動いたルース駐日大使もはしごを外され、政権内で面目を失った一人だ。
米政府は普天間問題の越年見通しを表立っては論評していない。難航する医療保険改革。はかばかしくないアフガニスタンでのテロ掃討戦。内憂外患の中で、日本の動向にいちいちかまっている余裕はない。
それだけに求めているのは結果だ。米政府関係者は「日本のために普天間返還を決めた。なぜ我々がこれ以上の妥協をする必要があるのか」と言い切る。
特に社民党を連立政権から外せない政治状況を説明したがる日本からの訪問者にはへきえき状態だ。鳩山由紀夫首相と親しい寺島実郎多摩大学長が最近、ワシントンを訪れたが、国務省は事前に「現職は会わない」と申し合わせた。
カーネギー財団のデビン・スチュアート上級研究員は「日米関係はかつてないほど悪い」と分析。ある米軍人は「沖縄県民は米軍を占領軍と思っているかもしれないが、出て行けというならば在日米軍は出て行く」と話す。在日米軍のグアム移転の可能性をほのめかす鳩山首相の発言を米側は「本音は自主防衛論なのか」といぶかしがる。
(1面参照)
憤りに近い反応をみせているのが国防総省だ。イラクとアフガニスタンの二正面作戦に必要な兵力を賄うため、在日、在韓米軍からも派遣中。そのため移設を前提に老朽化を放置してきた普天間の施設改修を制服組は迫っており、同省は「移設がさらに遅れるのであれば、日本が費用を負担すべきだ」と怒り心頭だ。
5日付の米紙ワシントン・ポストは「米、日本への対応に苦闘」との記事を掲載。「日本には定まった外交方針がない」と酷評した。
国務省はやや冷静だ。1989年から93年まで駐日大使を務めたアマコスト氏が「ミスター外圧」と呼ばれ、「嫌米感」を生んだことを意識。日米交渉は慎重に進めるべきだとの立場だ。
ただ、11月のオバマ大統領の訪日までに普天間問題は決着するとの見通しをホワイトハウスに伝えていたキャンベル米国務次官補はその後、発言を控えざるを得ない状況。知日派ほど肩身が狭いという。
年内決着に一肌脱ごうと日本側が要望した沖縄の基地負担の軽減に動いたルース駐日大使もはしごを外され、政権内で面目を失った一人だ。
米政府は普天間問題の越年見通しを表立っては論評していない。難航する医療保険改革。はかばかしくないアフガニスタンでのテロ掃討戦。内憂外患の中で、日本の動向にいちいちかまっている余裕はない。
それだけに求めているのは結果だ。米政府関係者は「日本のために普天間返還を決めた。なぜ我々がこれ以上の妥協をする必要があるのか」と言い切る。
特に社民党を連立政権から外せない政治状況を説明したがる日本からの訪問者にはへきえき状態だ。鳩山由紀夫首相と親しい寺島実郎多摩大学長が最近、ワシントンを訪れたが、国務省は事前に「現職は会わない」と申し合わせた。
カーネギー財団のデビン・スチュアート上級研究員は「日米関係はかつてないほど悪い」と分析。ある米軍人は「沖縄県民は米軍を占領軍と思っているかもしれないが、出て行けというならば在日米軍は出て行く」と話す。在日米軍のグアム移転の可能性をほのめかす鳩山首相の発言を米側は「本音は自主防衛論なのか」といぶかしがる。