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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2011:03/24/11:16  ++  リビア空爆、NATOに指揮権、米の中東政策、転換点に。

オバマ米大統領はリビア空爆の軍事指揮権を北大西洋条約機構(NATO)に委ね、米軍はイスラム圏の動乱にできるだけかかわらない方針を鮮明にした。英国、フランスだけでリビアのカダフィ政権軍を制圧するのは容易ではない。米軍という主軸を失い、中東・北アフリカ情勢は混迷を深めかねない。
 リビアで反政府運動が盛り上がり始めた3月上旬以降、オバマ大統領はホワイトハウスにいない日も逐一、報告を上げさせた。ブッシュ前政権から引き継いだアフガニスタンやイラクでの戦いと異なり、参戦するかどうかを自身が決断しなければならなかったいわば「オバマの戦争」。無関心で距離を置いてきたのではない。
 グレアム上院議員「早く空爆しないと手遅れにならないのか」
 バーンズ国務次官「アラブ諸国も参加するよう説得中です」
 米誌フォーリン・ポリシーなどによると、17日に米議会であった与野党首脳への非公開説明会でこんな会話があった。
宗教戦争を懸念
 チュニジアに端を発した一連の動乱でオバマ大統領が最も懸念したのは、欧米の介入でキリスト教とイスラム教の宗教戦争の構図になり、報復テロの危険を高めること。リビア空爆へのアラブ諸国の参加は譲れない一線だった。
 イスラム原理主義組織ヒズボラを抱えるレバノンが空爆の前提となる国連決議の提案国となったのはアラブ諸国の暗黙の了解の表れ――。英仏とのすきま風を懸念する国務省がこう説き、オバマ大統領もいったんは空爆を許可した。だが、イスラムの大国トルコなどが多国籍軍に加わりそうもないのをみて、すぐに早期撤収に傾いた。
 「民主主義の尊重」。ブッシュ前政権は普遍的理念を世界に広めると称してグルジアなどに親米政権を樹立した。言葉遣いは同じでもオバマ氏の世界観はその対極にある。世界を従わせようとすればするほど敵をつくる、というものだ。理想論に走るあまり地域の安定は二の次となった。
 米国という後ろ盾が弱まることで、イスラエルが焦燥感から敵対するイラン攻撃へと暴発する可能性も否定できない。オバマ大統領は9日、側近のシャピロ米国家安全保障会議(NSC)中東部長を次期イスラエル大使に指名した。
世界経済にも影
 動乱の拡大・長期化の影響が及ぶのは安全保障面だけではない。内戦状態に陥ったリビアでは日量160万バレル(世界の約2%)だった産油量が3分の1に減少、原油価格は1バレル100ドルを超えた。世界経済はエネルギー不足と物価上昇の影におびえ始めた。
 日量350万バレルの余剰生産能力を持つ最大の石油輸出国サウジアラビアなどが増産に動き出し、米エネルギー業界では今のところ「原油は市場に十分供給されている」(エクソンモービルのレックス・ティラーソン最高経営責任者)などの楽観論が多い。
 とはいえ、日本の原子力発電所事故を受けた世界的な反原発運動の拡大などを考慮すれば原油価格の高止まりは必至だ。
 オバマ大統領の内向き志向は中国にとっても予想外だった。リビア原油の大口輸入国として早期決着を期待し、国連決議に拒否権を発動しなかったが、当てが外れた。
 国民国家の意識がなお希薄な中東・北アフリカで動乱を野放しにして新秩序が生まれる保証はない。今回のオバマ大統領の決断が米国の中東政策の歴史的転換点になったことだけは間違いない。
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:2011:03/18/11:00  ++  「東電のバカ野郎が!」官邸緊迫の7日間 貫けなかった首相の「勘」 またも政治主導取り違え

 東日本大震災の発生から18日で1週間。東京電力福島第1原子力発電所の放射能漏洩事故に対する政府の対応は後手に回り、菅直人首相は与野党双方から「無策」と批判された。首相が自らの「勘」を信じ、押し通していれば、放射能漏れの危機を回避できた可能性もあったが、またも政治主導を取り違え、有効な施策をなお打ち出せないまま現在に至った。(今堀守通)


意外な自信


 「外国籍の方とは全く承知していなかった…」

 大地震が発生した11日、首相は参院決算委員会で野党の激しい攻撃にさらされていた。前原誠司前外相に続いて政治資金規正法が禁じる外国人からの献金が発覚し、退陣の一歩手前に追い詰められた。

 ところが、この日午後2時46分の地震発生で一気に政治休戦となった。

 決算委は急遽中断され、首相は直ちに首相官邸に戻り、危機管理センターの巨大モニターから流れるメディア映像を食い入るように見た。目にとまったのが、第1原発だった。

 大津波をかぶって自動冷却装置が破損し、炉内の冷却が思うようにいかない、との報告が上がってきた。官邸内に緊張が走ったが、首相には野党の追及から逃れた安堵感とはまた別種の「意外な自信」(政府関係者)がみなぎっていた。

 「まず、安全措置として10キロ圏内の住民らを避難させる。真水では足りないだろうから海水を使ってでも炉内を冷却させることだ」

 首相の意向は東電に伝えられた。「これが政治主導だ」。首相はそうほくそ笑んだのではないか。


外に響いた怒声


 だが、東電側の反応は首相の思惑と異なっていた。

 10キロの避難指示という首相の想定に対しては「そこまでの心配は要らない」。海水の注入には「炉が使い物にならなくなる」と激しく抵抗したのだ。

 首相も一転、事態の推移を見守ることにした。東電の“安全宣言”をひとまず信じ、当初は3キロ圏内の避難指示から始めるなど自らの「勘」は封印した。

 「一部の原発が自動停止したが、外部への放射性物質の影響は確認されていない。落ち着いて行動されるよう心からお願いする」

 首相は11日午後4時57分に発表した国民向けの「メッセージ」で、こんな“楽観論”を表明した。

 ところが、第1原発の状況は改善されず、海水注入の作業も12日午後になって徐々に始めたが、後の祭りだった。建屋の爆発や燃料棒露出と続き、放射能漏れが現実のものとなった。

 15日早朝、東電本店(東京・内幸町)に乗り込んだ首相は東電幹部らを「覚悟を決めてください」と恫喝した。直前に東電側が「第1原発が危険な状況にあり、手に負えなくなった」として現場の社員全員を撤退させたがっているとの話を聞いていたからだ。

 「テレビで爆発が放映されているのに官邸には1時間連絡がなかった」

 「撤退したとき、東電は百パーセントつぶれます」

 会場の外にまで響いた首相の怒声は、蓄積していた東電への不信と初動でしくじった後悔の念を爆発させたものだ。官邸に戻った後も「東電のばか野郎が!」と怒鳴り散らし、職員らを震え上がらせたという。


「原子力に強いんだ」


 初動のつまずきで「勘」が鈍ったのか。その後の政府の対応は一貫して後手後手かつちぐはぐだった。

「現場第一主義」を掲げる首相は、大震災発生翌日の12日早朝、官邸から自衛隊ヘリコプターで第1原発の視察に向かった。現地の状況を目で確かめ、午後の与野党党首会談で第1原発を「危機的状況にはならない」と言い切ったその最中に1号機で水素爆発が起き建屋が崩壊した。

 「16日に自衛隊による放水ができなかったのは、首相の決断が半日遅れたためだ。その間に放射線量が上がった可能性がある」

 放水オペレーションにかかわる政府高官は指摘する。だが、首相の頭は東電への不満でいっぱいだ。

 「東電の危機感が薄い。だから乗り込んだ」

 首相は16日夕、官邸を訪ねた内閣特別顧問の笹森清元連合会長に向かって、こう胸を張った。続けて東京工大応用物理学科卒の経歴を誇るように言った。

 「ぼくはものすごく原子力に強いんだ」

 東電出身の笹森氏は会談後、記者団に「(首相は)原子力について政府の中で一番知っていると思っているんじゃないか」と述べた。皮肉交じりなのは、半可通の口出しほど危険で邪魔なものはないと内心考えたからかもしれない。

 笹森氏は、首相が「ここから第1原発の方も収まりそうなので、原発の問題で枝野(幸男官房長官)さんや福山(哲郎官房副長官)さんの荷を軽くさせたい」と述べたことも明かした。

 この「収まりそうだ」との発言も波紋を呼んだ。官邸筋は「とてもそんな状況じゃない」と驚愕した。

何事にも官邸主導を見せようと首相と枝野氏ばかりが表に出て、大震災の直接の担当責任者であるはずの松本龍防災担当相はほとんど官邸内にとめ置かれている。平成7年の阪神淡路大震災では、権限を与えられた当時の小里貞利特命相が現地で陣頭指揮を執ったり、テレビで被災者への呼びかけや政府の対策のPRを積極的にしたりしていたのとは対照的だ。

 当時の政府対策を知る自民党議員は14日、「東日本大震災の被災者らを西日本で受け入れる態勢が必要ではないか」という話を持ち込もうとした。

 最初に厚生労働省社会・援護局に持ち込んだら、「内閣官房で対応しているでしょう」。内閣官房からは「厚労省の仕事でしょう」との答えが返った。

 自民党議員は「これは責任のなすり合い以前の機能停止状態だ。すべて官邸でやろうとする菅政権の弊害が出ている」とあきれた。

 16日になって総務省から西日本の都道府県や市町村に公営住宅の空き状況などを調査する指示が出た。だが、この指示の背景や理由説明はなかったため、西日本の自治体は「第1原発が相当深刻なのか」という不安を増幅させた。

 17日、首相は参院で問責決議され、官房長官職を交代した仙谷由人民主党代表代行を官房副長官として再び首相官邸に迎えた。

 「震災対策や被災者支援は政治力を要する仕事だ。仙谷新副長官が適任だと首相が判断した」

 枝野氏は記者会見でこう説明したが「陰の首相」の復活により混乱は収拾できるのか。それとも…。

:2011:03/11/11:57  ++  甘すぎる政治家の領土意識(社説)

日本の政治家はどうも、領土問題に対する認識が甘いのではないか。日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)をめぐる民主党の土肥隆一衆院議員の行動は、とりわけ深刻である。
 土肥氏は先月下旬に「日韓キリスト教議員連盟」の日本側会長として韓国を訪問し、同議連の共同記者会見に出席した。その際に、「日本側は竹島の領有権の主張を直ちに撤回すべきだ」とする共同宣言文に署名したという。土肥氏は民主党の菅直人首相のグループの幹部でもある。
 日本政府は一貫して竹島が日本の領土であるとの立場をとってきた。土肥氏は「心から国民におわびする」と陳謝し、衆院政治倫理審査会会長などの役職を辞任すると表明した。領土問題をめぐり、日本と対立する外国側の主張に同調したのだから、当然である。菅政権にとっても、新たな打撃になりそうだ。
 日本政府は竹島について、遅くとも17世紀半ばには領有権を確立していたと主張している。1905年には島根県への編入を閣議決定した。これに対して韓国は、当時の李承晩政権が52年に海洋境界線を設定し、一方的に竹島を取り込んだ。日本は国際司法裁判所に付託して領有権問題を決着するよう提案したが、韓国側が拒否した経緯もある。
 日韓は互いに主要な貿易相手国で経済の結びつきは深い。朝鮮半島の緊張をにらみ、本格的な安全保障協力にも踏み出そうとしている。良好な日韓関係を維持することは、日本の国益にもかなう。
 日本としても竹島問題をめぐって両国の対立が激化する事態は避けるべきだ。だからといって、日本の領有権の主張をあいまいにしてよいということにはならない。
 政治家が領土問題で政府の立場と異なる言動を繰り返せば、日本は国際社会から、領土問題をさほど重視しない国だとみなされても不思議ではないだろう。
 領土問題をめぐる菅政権の対応は失点続きだった。先の尖閣諸島沖での中国漁船の衝突事件や、ロシア大統領の北方領土訪問でも対応が後手に回った。政治家がしっかりした領土意識を持たなければ、中ロからの揺さぶりも再び、強まりかねない。

:2011:03/11/11:51  ++  小売り・卸・メーカー、流通効率化へ大手連携、受発注・決済システム統一。

セブン&アイ・ホールディングスやイオンなど大手小売業や食品・日用品メーカー、卸など主要15社は、商品の注文や代金決済などのデータをやりとりする取引システムの共通化に乗り出す。これまでバラバラだった仕組みをまとめ、受発注や在庫管理にかかる経費や時間を大幅に減らす。取引先の中小企業にも参加を促し、連携して流通の効率化に取り組む。(取引システムの共通化は3面「きょうのことば」参照)
 システム共通化が広く普及すれば流通コストの削減が期待できる。効果的な発注によって店頭での欠品を防げるほか、中長期的には小売価格の引き下げにつながるなど、消費者にとってもメリットは大きい。
 共通化に踏み切るのはこのほかローソン、マツモトキヨシホールディングス、味の素、花王、国分、菱食など。セブン&アイ傘下のイトーヨーカ堂は4月から取引先約700社との間で導入する。
 導入するのは経済産業省などが後押しする「流通BMS」と呼ばれる取引システム。15社を中心に流通の最適化を議論する協議会を5月に発足させ、普及に向け足並みをそろえる。これまで食品スーパーの成城石井など一部が導入済みだが、大手の参加で取引先の中小卸などの間でも導入機運が高まるとみられる。
 イオンの総合スーパー、イオンリテールとセブン&アイ傘下のスーパーを合わせた年間売上高は約4兆4000億円。約17兆5000億円とされるスーパー業界全体の売上高の約4分の1に相当するだけに、2社の参加でシステムの普及に弾みがつきそうだ。
 小売業は現在でもオンラインで発注しているが、一部では電話回線方式が残り、データ容量に限りがある。商品のやりとりでは紙の伝票も使っており、膨大な作業が必要になっている。
 新システムはインターネットを通じて電子データをやりとりし、紙の伝票をなくす。ヨーカ堂の試算では従来は3時間かかっていた発注データの送受信は最短6分まで短縮できるという。天候や需要に合わせて機敏な発注が可能になり、販売効率の向上が見込める。
 メーカーや卸は各小売業がそれぞれ開発したシステムに対応しなければならなかった。共通化によって取引先ごとに用意していた端末は不要となり、システム投資や煩雑なデータ管理から解放される。卸売業では共通化によって受発注に関連するコストが55%削減されるとの試算もある。
 少子高齢化を背景に、国内の消費市場は縮小傾向。2050年までに家庭の食費支出は10年比で30%減るとの推計もある。日本の流通業は欧米企業に比べ収益性が低く、非効率といわれており、システムの共通化で収益向上を急ぐ。

:2011:03/11/11:48  ++  野党側は責任追及 外国人献金問題

野党は11日、菅直人首相の資金管理団体が在日外国人から献金を受けていた疑いが浮上したことに関し、真相解明を求めるとともに首相の責任を厳しく追及する構えだ。各党は外国人献金問題で辞任した前原誠司前外相を巡り首相の任命責任も問題視しており、辞任要求を一層強める見通し。
 自民党の大島理森副総裁は同日午前、党本部で記者団に「首相自身が身の処し方を含めて責任をどう考えるのか明らかにすべきだ」と述べ、進退を含めて早急に責任を明確にすべきだとの認識を示した。「民主党内閣で国政の危機を乗り切る信頼はうせている」とも指摘した。
 逢沢一郎国会対策委員長は国対幹部会で「事実関係の把握が大切だ」としたうえで、公明党など他の野党と早急に対応を協議する考えを示した。参院予算委員会の集中審議などで厳しく追及する構えで、党幹部の一人は「菅政権の先行きが見えた」と強調した。
 公明党の井上義久幹事長は記者会見で「多額の献金を知らなかったというのは極めて不自然だ」と指摘。前原前外相が辞任したことを念頭に「外相よりもはるかに職責が重い。事実関係を明らかにしたうえで出処進退を明確にすべきだ」とも語った。共産党の市田忠義書記局長も「国会で真相を明らかにするのが大事だ。故意ならば重大な責任がある」と指摘した。


菅直人首相の資金管理団体が外国人から献金を受けとっていた疑いが11日、浮上し、政府・与党内に衝撃が走った。献金した男性が在日外国人であれば、辞任した前原誠司前外相とほぼ同様のケースとなり、進退問題に発展する可能性もある。閣僚や党執行部は首相を擁護しているが、野党が追及を強めるのは必至。政権の危機は首相自身にも及び始めた。
 民主党の岡田克也幹事長は同日午前、国会内で安住淳国会対策委員長と断続的に対応を協議。安住氏は国会内で記者団に「日本名での献金で認識がなかった。不注意だったと思うが、故意ではないので心配していない。これからも丁寧に説明すればいい」と強調した。
 民主党執行部内は「本人は知らないと言っている。こんなことで辞めていたら国が滅びる」などと首相が辞任する必要はないとの認識で足並みをそろえている。参院幹部も「外国人だと確認するのは困難で、法のあり方を考えなくてはいけない」と語った。
 安住氏は、前原前外相との違いについて「前原さんは本人も事務所も相手が在日の方だと認識していた」と語った。前原氏は献金した女性が在日外国人との認識は持っていたものの献金を受けていた事実は知らなかったと釈明。「金額の多寡にかかわらず、外国人から献金を受けていたことは重い」として辞任した経緯がある。
 一方、小沢元代表に近い幹部の一人は「この問題で退陣する必要はないが、政権に与える影響は大きい」と指摘。山岡賢次副代表は国会内の会合であいさつし「たとえ菅首相がお代わりになることがあったとしても、郵政改革法案を仕上げる目的は変わらない」と退陣の可能性に言及した。鳩山由紀夫前首相のグループに所属する松原仁氏は「真相を明らかにして国民の理解を得られないなら判断が必要だ」と世論次第では辞任の必要があるとの認識を示した。


:2011:03/08/11:01  ++  HDD事業売却、日立、「最大の課題」決着、社会インフラ分野で攻勢へ。

日立製作所が長く懸案だったハードディスク駆動装置(HDD)事業の売却を決断した。2003年に買収した米IBMのHDD部門を母体とした日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)を巡っては、一時は累積赤字が1200億円規模に達した。これが同社のM&A(合併・買収)の重荷となっていたが今回、区切りをつけた。売却で得た資金を主力事業のIT(情報技術)や社会インフラ分野にどう投じるかが今後の焦点となる。(1面参照)
 「グローバル企業を経営する経験を日立全体として積むことができた」。7日夜、日立本社で会見した中西宏明社長はこう語った。03年の買収直後から赤字が続いたHGSTの再建のため、05年に同社トップとして送り込まれたのが中西氏自身だった。メキシコ拠点の閉鎖などを断行し業績改善への道筋をつけた。
 07年末には当時の古川一夫社長がHGSTの売却を決断、米大手ファンドのシルバーレイクに売却する方向で交渉を進めた。だが、条件がかみ合わずに破談。再び自力再建に挑まざるを得なかった。日立にとって過去最大の買収案件が、数年前まで最大の経営課題になっていた。
 こうした経緯もあり、日立は「HGSTのトラウマが尾を引きM&Aに慎重になっている」(金融関係者)と言われた。実際、昨年に米IT企業を買収しようとしたが、競合していたNTTデータに条件面で敗退した。
 「今回の売却でHGSTのトータル収支はドルベースではかなりプラス。円換算でもプラス」。中西社長は会見の冒頭からこう強調し胸を張った。今回の売却で現金35億ドル(約2900億円)の資金が入り財務も改善に向かう。今後はHGST売却で手にしたキャッシュを主力事業と位置付ける社会インフラとIT領域に投じる方針。「これから(社会インフラなどで)成果を出すには、資金の裏付けが必要。今回の売却は重要な意味を持つ」(中西社長)
 HGSTでは海外企業の経営がいかに難しいかを日立は学んだ。「現地の事情に精通した人材に経営を任せる大切さを痛感した」(三好崇司副社長)。こうした教訓を次の買収に生かせるかが問われる。
 ウエスタン・デジタル 1970年創業。HDDの専業メーカーで2010年の世界シェア(出荷台数ベース)は31%で首位。積極的な買収で成長してきた。10年6月期の売上高は98億5000万ドル。総資産は10年末時点で78億4300万ドル

:2011:03/08/10:39  ++  外相辞任も視界ゼロ、「3月危機」懸念の声、総辞職・解散…、突破口見えず。

看板閣僚だった前原誠司氏の外相辞任は混乱収拾につながらず、むしろ政局は緊迫度を強める展開になってきた。菅直人首相が早期退陣か衆院解散に追い込まれるとの見方がくすぶり、政府・与党内の求心力の低下は隠せない。「ポスト菅候補」が相次ぎ傷つく情勢に自民党は攻勢を強める構え。予算関連法案成立のメドは依然、立っておらず「3月危機」を予測する声がやまない。
 「できるだけ早く」。枝野幸男官房長官は7日の記者会見で、前原氏の後任の決定時期を問われ、5度同じ言葉を繰り返した。前原氏が辞任を表明した6日夜から、後任候補として松本剛明外務副大臣、元外相の岡田克也幹事長、直嶋正行元経済産業相などの名前が次々に挙がった。首相も参院予算委員会の合間を縫って7日昼に、輿石東参院議員会長と官邸で会談。早期収拾へ向け、調整を進めた。
 首相は7日の参院予算委で「私自身が時間をとれないと認証手続きなどを進めることができない。今日も明日も外国の賓客が来ている」と人選の遅れを釈明した。ただ、民主党内で、今の菅政権に協力するのは得策でない、との計算が広がっているとの観測もある。一時、外相候補に浮上したある閣僚経験者は「泥舟には乗らない」と周辺に漏らした。
 「ポスト菅」の有力候補だった前原氏の辞任で、党執行部と距離を置く小沢一郎元代表に近い議員グループが勢いづいている。政治資金問題が発覚した野田佳彦財務相、官房長官当時に参院で問責決議を受けた仙谷由人代表代行……。党内で「反小沢陣営」とされる次期代表候補が次々と傷ついているからだ。小沢系議員らは自らが推す候補が代表選で勝つ可能性が高まっていると読む。
勢いづく小沢系
 小沢系議員の一人は「菅政権のままでは民主党への支持は離れていくばかり。立て直すための手を今後打っていく」と話す。小沢元代表も7日夕、事務所を訪れた衆院の新人議員に「外相なんて誰がなったって一緒だ。君でもできる」と軽口をたたく余裕を見せた。
 首相は同日の参院予算委員会で「衆院任期の4年間、マニフェスト(政権公約)の実現などに全力を挙げていく」と強調。退陣論や衆院解散要求をけん制した。一方で岡田幹事長は「追い詰めると、あの人は解散しますよ」と菅首相の解散権をテコに求心力を維持しようと懸命だ。危機に瀕(ひん)しても、民主党内の結束を保てない状況が、首相の立場を何より言い表している。

:2011:03/08/10:25  ++  日立、HDD事業を売却、世界最大手に3500億円で。

日立製作所は7日、パソコンやデジタル家電のデータ記録に使うハードディスク駆動装置(HDD)事業をHDD世界首位の米ウエスタン・デジタル(WD、カリフォルニア州)に売却すると発表した。売却額は約43億ドル(約3500億円)。日立は市況変動で収益が安定しない事業を本体から切り離す成長戦略を推進しており、経営資源を主力の社会インフラ事業に振り向ける。(関連記事12面に)
 全額出資子会社でHDD世界3位の日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST、カリフォルニア州)の全株式を9月末までに売却する。対価として現金35億ドルとWD株2500万株を得る。日立はWDの発行済み株式の10%を保有する筆頭株主となり、2人を取締役として派遣する計画だ。
 日立は今後、WD株の売却による早期の資金回収を目指しており、取締役派遣でWDの経営を支援する。また、HGST従業員の雇用を一定期間守るとの契約をWDが履行するかをチェックする狙いもある。
 日立は2003年に約20億5000万ドルを投じて米IBMのHDD部門を買収。日立の同部門と統合しHGSTを発足させた。日立にとって過去最大の買収案件だったが、07年12月期まで5期連続の営業赤字が続くなど苦戦。リストラ効果などで10年12月期の営業損益は572億円の黒字だったものの、ノートパソコンなどの需要動向次第で今後も市況変動が避けられないと判断した。
 日立は昨年11月にHGSTが米国で上場する準備を始めたと発表していた。だが事業拡大を狙ったWDがそれを上回る好条件を示したことで上場方針を転換した。

:2011:03/07/16:57  ++  消費税増税 社会保障の安定財源に

政府が6月に具体案をまとめる社会保障と税の一体改革は、消費税率引き上げが最大の焦点だ。増え続ける年金や医療などの費用を賄うには、安定的な税収が見込める消費税の増税が欠かせない。ただ、歴代政権を国政選挙で大敗させた“鬼門”で、菅直人首相も政権内外から批判を浴びる八方ふさがりの状況だ。失敗すれば日本の財政再建に対する国際的な信頼まで失いかねない。(田辺裕晶)

 ◆10%が目安

 「国の財政が社会保障に占拠されて身動きが取れなくなる。速やかに10%まで引き上げるべきだ」(日本経団連・森田富治郎副会長)。2月19日に開かれた一体改革の集中検討会議では、経団連や連合など労使4団体から消費税増税を求める声が相次いだ。

 消費税収は平成23年度の見込み額で12.8兆円。4割強は地方自治体の財源に回され、国庫には6割弱の7.2兆円が入る。これを高齢者3経費と呼ばれる基礎年金、老人医療、介護に配分する仕組みだが、3経費全額を賄うには17.2兆円が必要で、10兆円を借金などで穴埋めしている。

 税率を1%上げれば、2.3兆~2.5兆円の増収が見込める。不足分を消費税で穴埋めするなら4~5%のアップが必要で、自民党や経団連などが主張する「10%」は一つの目安だ。

◆逆進性が課題

 消費税増税は国民に大きな負担を強いるため、低所得者対策などの負担軽減策が欠かせない。日本よりも消費税(付加価値税)率が高い欧州各国では、食料品や書籍などの必需品に軽減税率を設けることが多い。

 ただ、複数の税率は線引きが難しい。ドイツのファストフード店でハンバーガーを買うと、持ち帰りなら食料品扱いだが、店内で食べると、「ぜいたく」な外食扱いで標準税率になる。

 複数税率は事務手続きが複雑なため、政府はカナダなどが導入している「給付付き税額控除」を検討。低所得者の基礎的な生活費にかかる消費税額を計算し、その分を所得税から控除するといった制度で、控除額が課税額を上回る場合は現金で支給する仕組みだ。

 ◆政権の“鬼門”

 消費税は導入や税率上げのたびに世論の強い反発を招いた。平成元年に導入した際、自民党は同年の参院選で社会党に敗れ、参院での与野党逆転を許した。9年に税率を3%から5%に上げた際も、10年の参院選で当時の橋本龍太郎首相が「不況下の増税」と批判され、自民党は惨敗した。

それでも増税が必要とされるのは、景気の影響を受けにくく安定した税収が見込める消費税しか「社会保障関係費を支えられない」(財務省幹部)ためだ。

 国・地方の長期債務残高は23年度末に892兆円となる見込みで、財政は悪化の一途。財政再建に懐疑的な米国の格付け会社は日本国債を格下げした。国債価格が暴落し金利が急騰すれば国の利払い費が増え、国債を保有する金融機関の経営悪化を通じて国民生活に悪影響が及ぶ。増税の可否は日本経済の命運を握る。

                    ◇


脱税・不正受給防ぐ共通番号制度


 消費税増税に伴う低所得者対策に不可欠なのが、国民に個別番号をつけ、税金と社会保障の情報を管理する共通番号制度の導入だ。

 番号制度では、住民票コードを利用した新番号を新生児から老人まで全国民に配布。年金、医療、介護などの社会保障分野と、税務分野で、必要な情報を蓄積・共有する。税務当局が収入や財産の状況を把握すれば所得の過少申告ができなくなり、脱税や社会保障の不正受給を防止できる。

 日常生活では健康保険証や介護保険証、年金手帳などの機能を1枚のICカードに集約。税務署でカードを示せば、確定申告の際に領収書がなくても医療費の所得控除が受けられるなど便利になる。逆にプライバシー侵害への懸念もある。

 政府は6月に番号制度の大綱をまとめ、秋の臨時国会に法案を提出する方針。順調にいけば平成27年1月にも利用が始まる。

:2011:03/07/16:47  ++  「ポスト菅」レースも混沌

足下から崩れ去ろうとしている菅直人政権からまた一人、落伍者が出た。前原誠司外相の辞任で、民主党政権は混沌の渦の中へと入り込もうとしている。

 首相に近いある政務三役は「政権にとっては大ダメージだ」と語った。首相に批判的な若手議員からは「挙党態勢を築いてこなかったツケだ」との声があがる。誰もが政権の終幕を予感している。

 前原氏は「次」をうかがうはずだった。産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)の最新の世論調査では、「日本の首相にふさわしいのは誰か」との設問で、前原氏は10・2%でトップ。前原氏を支持する約50人の議員グループ「凌雲会」という後ろ盾もあり、党内基盤も安定していた。

 その前原氏が「政治とカネ」の問題でつまずいた。次期首相レースは「出走取り消し」となった。

 民主党内を見渡すと、実は前原氏以外の「ポスト菅」候補は枚挙にいとまがない。岡田克也幹事長、玄葉光一郎国家戦略担当相、原口一博前総務相、野田佳彦財務相、枝野幸男官房長官、海江田万里経済産業相…。樽床伸二元国対委員長や馬淵澄夫前国土交通相も意欲を見せている。

「多士済々」と言いたいところだが、それぞれが首相候補としては課題を抱えている。

 岡田氏は党幹事長として地方選挙で連戦連敗。野田氏は最近、脱税事件で逮捕された男性が関係する企業がパーティー券を購入していたことが判明した。原口氏は小沢一郎元代表と近い関係であることがネック。その他の候補はいずれも、党内に確固たる支持基盤を持たない。

 「ポスト菅」レースの展開が見通せない中で、民主党議員は「菅首相をいつまで続けさせるか」という選択を迫られる。小沢氏に近い議員らが、首相退陣を求めるのは必至。逆に、小沢氏と距離を置く勢力さえ、そう遠くない「次」を見据え、一気に倒閣に動く可能性もある。

 党内で敵と味方が入り乱れ、誰が敵か、誰が味方か分からない闇夜の乱戦状態に陥るかもしれない。

 小沢氏は5日、地元・岩手県一関市の街頭演説で、こう予言していた。

 「首相も国会で衆院解散ということを答弁で触れたようだ。そういう意味で、非常に政治の状況が難しく、混沌となりつつある」(

:2011:02/15/13:07  ++  第3部さまよう政党(6)反圧政の受け皿どこに(民主主義を考える)終

 赤白黒の国旗が舞い、花火が上がる。29年間にわたる圧政を続けたエジプト大統領、ムバラク(82)が辞任した11日夜。反政府デモの象徴となった首都、カイロのタハリール広場は、歴史の舞台となった。
 広場でデモを続けていた医学生モハメド・ガマル(23)とインターネットメディアのフェイスブックでつながった。「愛国心が皆を一つにしたんだ。狂ったような大騒ぎだった」。喜びの表現が躍る。
 ムバラクが見誤ったのは若者を中心とした民衆の力だ。生活苦、失業、汚職、人権侵害。治安当局がにらみをきかす中、積もりに積もった怒りをつないだのは、インターネットだった。
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 全権を移譲された軍最高評議会は憲法を停止。6カ月をめどに新政権に移行するという。しかし、民主化プロセスは予断を許さない。ムバラク辞任前、ガマルから届いた言葉が現状を言い表している。「広場に集まる市民を代表する野党なんて、存在しないよ」
 ポーランドのワレサ、韓国の金大中、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー……。これまでの民主化運動にはシンボルとなる指導者と、支持者らが集う「野党」の存在があった。圧政が続いたエジプトの野党勢力は求心力に欠け、若者たちは政治経験に乏しい。
 日大教授の岩崎正洋(45)は「受け皿がないままでは、独裁打倒の後、民主化が順調に進むかどうかわからない」と指摘する。中南米などの民主化では軍の政治関与を排除する仕組みづくりがうまくいかず、軍政に戻ってしまった例もある。
 「新しい政党を立ち上げる時だ」。エジプトの与党、国民民主党の幹事長で改革派のバドラウィは11日、離党を表明した。国民に人気のある元外相のムーサも新たな政治勢力の結集に動く。若者グループらによる新党結成構想もある。複数政党制と自由選挙は民主化の必須条件だ。実現すれば、イスラム圏で政教分離のトルコのような民主国家の誕生が視野に入る。
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 ただ、イスラム教が生活に根を張る地域で「欧米型の民主制」が定着するかどうかは見通せない。民衆はデモの最中でも1日5回、聖地メッカに向かって祈りをささげる。ナセル、サダト、ムバラク過去3代の政権もイスラム教を敵に回すことはなかった。世俗主義が定着したともいわれるエジプトだが、社会に閉塞感がまん延したとき、穏健派イスラム原理主義組織、ムスリム同胞団がかつて掲げた「答えはイスラムにある」のスローガンが民衆の心をつかむ可能性はある。
 1979年のイラン革命。国王追放の後、実権を握ったイスラム教シーア派のグループがつくったのは、宗教法学者が最高権力を持つイスラム共和制だ。大統領選や議会選はあるが、改革派の集会を禁じるなど民主主義上の課題を残す。
 イスラム教徒の人口は16億人。イスラム型の民主主義があってもいいとの指摘はある。ただ、それは基本的人権などの価値観を具現できるかにかかる。
 「文明の衝突」で知られるハンティントンによれば、民主化には歴史上、3つの大きな波があった。19世紀から20世紀にかけての米欧、主に戦後の西独や日本など、1970年代以降の韓国や東欧などだ。
 チュニジアで始まった「反圧政」は新しい波になるのか。地域安保への影響を懸念する米国、民主化のうねりに無関心でいられないアラブ諸国や中国。歓喜のエジプトを世界が見つめている。=敬称略
(第3部おわり)

:2011:02/08/10:26  ++  第3部さまよう政党(1)理念なき政治家集団(民主主義を考える)

権謀術数 民意運べず
 1月26日昼。官房長官を退いた民主党代表代行の仙谷由人(65)は、議員会館の自室で丼の昼食をほおばりながら、訪れた知人に漏らした。「ごたごたがあっても、政党は綱領があればまとまるもんなんだがなあ」
 会社でいえば定款にあたるのが党綱領。結党12年の民主党にそれがない。自民党から旧社会党まで、出身基盤の異なる寄り合い所帯で、安全保障や憲法観などの違いによる摩擦を避けてきたからだ。
 あえて言えば、民主党の理念は「反自民党」だった。だが、批判する相手は野党になり、マニフェスト(政権公約)は見直しを迫られている。目指す国家像とは――。ようやく綱領づくりに乗り出した民主党の自問は「親小沢か反小沢か」といった権力闘争が、分裂含みになりかねないもろさの告白でもある。
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 存在意義が問われているのは「進歩する保守」を綱領に掲げる自民党も同じだ。ピーク時に500万人を超した党員は2009年に100万人を割りこんだ。そして、既存政党への不信は欧米でも広がっている。
 ▼米大手メディアの10年5月調査で、民主、共和両党による二大政党制が機能しているとした回答はわずか15%
 ▼英国の保守党と労働党の合計得票率は1950年代の9割超から10年には6割台にまで低下
 冷戦の終結でイデオロギー対立を背景にした政党支持の意味が薄らぐ一方で、幅広い支持を集めるために政策が中道路線に収束し、大きな違いが出せなくなっていったためだ。
 「フランスの二大政党は我々の意見をすくいあげてくれなくなった」。パリ郊外に住むタクシー運転手、アラン・パケ(60)は昨年、学生時代から支持してきた社会党から少数政党、欧州エコロジー党に乗り換えた。緑の党が台頭するドイツ、自由民主党が連立参加した英国。第三極が注目されるのは、みんなの党が登場した日本だけではない。
 米国の政治学者で中央大教授、スティーブン・リード(63)は政党の使命を選挙に勝つことと政策を動かすことだと指摘する。政治不信の背景にあるのは、民意をくみ上げ、複雑な利害関係を調整し、議会を動かして政策を実現する政党機能の劣化にほかならない。
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 「それでも、その役割を果たすことができるのは政党しかない」。パリ政治学院客員教授の吉田徹(36)は力説する。「だから政党が進化できるかどうかが、その国の民主主義の将来を左右する」。政策立案能力を磨き、優れた人材を集めないと政党の未来はない。
 民間シンクタンク、構想日本代表の加藤秀樹(61)は、憲法にも明確な記述がない日本の政党を「政党法」で位置付け直すべきだと提言する。党幹部や党機関の役割と責任を明確にし、情報公開や候補者選びを透明化するなどの内容だ。「結社の自由」などの観点から立法措置には是非論があるが、自己統治能力を高める改革は待ったなしだ。
 理念なき政党政治の最後はどうなるか。
 事実上の二大政党制だった戦前の日本。政友会と民政党は政策論議そっちのけで権力争いを繰り広げた。数合わせの議員引き抜きは日常茶飯事。スキャンダル追及合戦も絶えず、浜口内閣から1940年の大政翼賛会発足までの約11年間で首相は12回も交代した。
 昭和史に詳しい麗沢大教授の松本健一(65)は最近、民主党議員と会うたびに警鐘を鳴らす。「政党は汚い、国益を守ってくれない、という失望感が迎合主義(ポピュリズム)を生み、軍部の台頭を招いた。今は当時にそっくりです」(敬称略)
「政党は、一方の端を社会に、他方の端を国家にかけている橋である」
(英国の政治学者、E・バーカー)

:2011:02/08/10:20  ++  農地集約へ取引仲介、売却・賃貸情報を一元化、政府検討――大規模化や新規参入促す。

政府は農地の集約を進めるため、売買や賃貸借を仲介する「農地バンク」を設立する検討に入った。農地に関する情報を一括管理し、規模拡大や新規参入を目指す農家や農業生産法人に提供。農地の大規模化を促す。農地集約は環太平洋経済連携協定(TPP)をにらんだ農業改革の柱の一つ。規模拡大を進めた生産者への所得補償上積みや、参入規制の緩和とあわせ、農業分野の競争力強化を進める。(農業生産法人は3面「きょうのことば」参照)
 「農地バンク」は地方自治体や農業委員会などから農地情報を集めてデータベースを構築し、農地の売買取引や賃貸借を全国規模で仲介する仕組みとなる。運営は国の外郭団体や生産者団体などが受け持つ見込みだ。
 自治体や農業協同組合が農地売買を仲介する事例はすでにあるが、いずれも地域内の農地を対象とした取引にとどまっている。全国規模で情報を集めて農地取引を仲介する組織はない。
 日本の農家は平均年齢が約65歳と高齢化が進み、農業をやめて農地を売却・賃貸したい生産者も増えている。遊休農地も多く、耕作放棄地は38万ヘクタール程度と、埼玉県に相当する面積に膨らんでいる。一方、農業参入を計画する企業などにとっては売買や賃貸借の対象となる農地の情報は少ない。
 農業強化策を検討する政府の「食と農林漁業の再生実現会議」(議長・菅直人首相)でも、農地の集約に関して「どこにどんな農地があるのか分からない」との指摘が出されていた。
 政府が6月に取りまとめる農業改革の基本方針では、農家の規模拡大を促し、競争力をどう付けるかが大きな課題となっている。農業生産法人の新規参入を促す規制緩和、戸別所得補償制度を通じた大規模生産者への交付金の一層の上積みなどが検討される見込みだ。これに加えて、農地情報の一元管理や農地取引の仲介で遊休農地の流動化や集約を進める。
 ただ、政府が農地取引の仲介などにどこまで関与できるかは不透明。農地の情報などを握るのは市町村ごとの農業委員会であり、ここが積極的に農地バンクに協力しなければ遊休農地の集約や大規模化は進まない。政府の再生実現会議では、農業委員会の構成メンバーや運営方法にまで踏み込んだ改革が求められるという意見も出ている。
 ▼農地の売買と貸借 農地の売買や賃貸借、住宅地などへの転用は農地法で規制されており、自由に取引はできない。2009年の農地法改正では一般企業が農地を借りられるようになったが、農地所有は認められなかった。農業生産法人を設立すれば所有できるが、企業の生産法人への出資は50%未満に制限されるなど、さまざまな条件がある。
 農地法の条件を満たしても、農地を売買・賃貸借するには各市町村にある農業委員会から許可を得る必要がある。農業委員会は地方自治体の組織の一つで、地域の農家の代表者、農協や市町村議会の推薦者らで構成される。地域によっては既存農家が委員の大半を占めており、新規参入を阻んでいるとの指摘もある。

:2011:02/03/09:00  ++  「物価高で政情不安」の広がりをどう防ぐ(社説)

世界経済が全体として金融危機後の落ち込みから回復を続ける中で、想定外の乱気流が広がってきた。米国などの空前の金融緩和は、新興国のインフレに火を付けた。食料価格高騰を引き金にチュニジアで政変が起き、アラブの大国エジプトに飛び火した政治危機は国際政治情勢を大きく揺さぶる可能性をはらむ。
 ロンドン先物市場の原油相場は1バレル100ドルを突破し、資源価格の一段の上昇は、世界景気の足を引っ張る要因にもなる。こうした先行きの不確実性が強まるのをいかに抑えるかが、世界の緊急の課題である。
過大な変動抑える知恵
 金融危機後の世界では先進国の金融や財政が抱えるリスクが焦点になり、成長のエンジンとして新興国に頼る傾向が強まった。その新興国のリスクも強く意識されるようになったのが、最近の大きな変化だ。
 1日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均は1万2000ドルの大台を回復し、2日の東京市場の日経平均株価も大幅高だった。その一因は昨年10~12月期の企業業績が好調なことだが、グローバル化した有力企業は収益の多くを新興国で稼ぐ経営に変わりつつある。
 新興国に共通する懸念は急激な物価の上昇だ。中国の消費者物価上昇率も5%前後で推移している。多くの新興国で、昨年11月に米連邦準備理事会(FRB)が金融の量的緩和第2弾を打ち出してからインフレが加速した。先進国から新興国への投資資金の流入に加え、穀物や原油などの相場上昇の影響が大きい。
 商品相場上昇の材料は新興国の需要増加に伴う需給逼迫の懸念だが、いま世界で深刻な供給不安が生じているわけではなく、在庫もかなりある。一方、2008年に商品価格が高騰した時のピークと比べて、直近のシカゴ先物市場の小麦の建玉は19%、ロンドン先物市場の北海ブレント原油の建玉は48%も多い。
 米国がデフレ回避のため実施した超金融緩和に伴って先物市場への資金の流入が増え、金融要因で相場変動が増幅したことは否定できない。
 先進国が自らのリスクに対応するためにとった策が、新興国のリスク拡大につながり、それは先進国側の新たなリスクになって跳ね返る。
 日本は円高で商品相場上昇の影響をある程度吸収しているが、欧州のユーロ圏ではエネルギー、食料を中心に1月の消費者物価指数は前年同月比2・4%上昇し、欧州中央銀行が物価安定の目安とする「年2%未満」を2カ月連続で上回った。
 ギリシャ、アイルランドなどの財政危機と一体になった域内金融機関の信用不安への対応に加えて、物価への目配りも必要になり、欧州の金融政策のかじ取りは難しくなった。
 こうした状況下で、フランスのサルコジ大統領は商品先物投資の規制強化を提唱し、20カ国・地域(G20)が今年取り組むべき優先課題の一つに位置付けている。
 08年に1バレル140ドル以上まで高騰した原油価格が30ドル前後まで急落、いま再び100ドル水準に上昇するなど、金融要因に左右されやすくなった商品相場の変動は確かに極端だ。
 米国の先物市場の監督機関はヘッジファンドなど実需と関係ない投資家の建玉の上限設定に加えて、取引所外での相対取引にも制限を設けようとしている。相対取引をどこまで把握して規制できるか実効は微妙で、反対論もあるが、過大な相場変動を抑える対策は必要である。主要国はこの点で知恵を絞るべきだ。
人材育成の協力拡充を
 中東・北アフリカの政治のきしみの最大の要因は、人口急増で膨張する若年層の雇用機会が足りないことだ。多くの若者に職がない中で、支出のうちの大きな比率を占める食料の価格が急騰し、独裁への不満が一気に爆発する結果になった。
 言論の自由、汚職の追放、公正で透明な選挙の実現……。民主化の進展は大いに歓迎すべきだ。ただし、独裁政権が急激に崩壊して「力の空白」が生じ、社会の混乱が長期化して過激派の活動が強まるような事態は、避けなければならない。
 民主化の過程でイスラム原理主義組織が影響力を強める例も多いが、穏健なイスラム勢力の政治参加は中長期的な安定に欠かせないだろう。
 エジプトでは、野党勢力も含めて自由選挙に至るまでの政治体制の大枠について早急に合意を形成する必要がある。事態がまだ切迫していない国でも、段階的な民主化の道筋を国民に示していく必要がある。主要国は政治体制の円滑な移行の側面支援を求められる。その必要性は中東・北アフリカに限らない。
 雇用創出は一朝一夕には進まないが、社会の安定には不可欠だ。日本も近年、各国の人材育成への協力を中東外交の柱の一つに据えるようになった。中小企業の育成などもあわせ、こうしたソフトパワーによる支援をさらに拡充していくべきだ。

:2011:02/03/08:54  ++  無線通信で省エネ管理、次世代電力計100万世帯に、12年度中、専用周波数を設定。

電力各社は情報技術を使って電力を効率的に供給する次世代送電網(スマートグリッド)の実現に向け、2012年度から家庭の電力消費を無線通信で常に把握できる次世代電力計(スマートメーター)を本格導入する。総務省が12年夏にスマートメーター専用の周波数帯を割り当てる方針を固めたことを受け、12年度中に約100万世帯に設置する。20年をメドに全国の約5000万世帯に普及させる計画だ。(スマートグリッドは3面「きょうのことば」参照)
 スマートメーターの導入は消費者にとって利点が大きい。例えば、電気料金が高い昼間は自宅の太陽光発電による電力を優先的に使い、料金が安い夜間は電力を電気自動車(EV)の蓄電池にためておくといった効率的な使用が可能になる。電力会社が各家庭の電力使用量や太陽光発電の有無などを勘案して最適の料金プランを提示する仕組みが想定される。
 電力会社は検針業務を自動化することで人件費を削減できるほか、効率的な電力利用ができるため、中長期的に家庭の電気料金引き下げにつながる可能性もある。
 欧米などでスマートメーターの導入が加速するなか、総務省の情報通信審議会(総務相の諮問機関)は2月からスマートメーターに利用する専用周波数帯の割り当ての議論を始め、6月にも結論を出す。欧米と同じ915~928メガヘルツ帯を割り当てる方針で、省令改正を経て12年夏から利用できる見通しだ。
 さらに経済産業省はスマートメーターの通信規格を統一するため、年内にも官民研究会を立ち上げる。政府としてスマートグリッドの導入で先行する欧米と専用周波数帯や通信規格を合わせることで、関連企業の海外展開を後押しする。
 政府の動きに合わせ、電力各社は導入を本格化させる。東京電力は13年までの実証実験で東京都小平市と清瀬市の約9万世帯にスマートメーターを設置する。実験結果を検証後に都心部にも設置を広げる。関西電力は他社よりも早く08年度から実証実験を開始。昨年末までに既存の電力計の期限が過ぎた64万世帯に導入し、11年度も数十万台を設置する計画だ。
 中部電力も4月から愛知県春日井市の約1500世帯に導入。九州電力は09年11月から導入を始め、昨年9月時点で約3万3000世帯に設置した。各社とも専用周波数の利用に前向きで、12年度以降にも既存の電力計を次世代型に順次置き換える方針だ。
 スマートメーター市場の拡大に備え、関連メーカーも対応に乗り出す。大崎電気工業は昨年、日立製作所と実証実験や研究開発で提携。富士電機ホールディングスは今月1日、米ゼネラル・エレクトリック(GE)と合弁でメーター製造新会社を設立した。

:2011:02/03/08:50  ++  第1部成長と停滞と(中)富は西から東へ―「地球」発想へ転換急務(不均衡な世界)

1月初め、あるネットオークションが欧州の安全保障関係者の注目を集めた。
 1982年のフォークランド紛争にも派遣された英空母インビンシブル。退役したこの空母を処分するため英政府は昨年11月から競売にかけていたが、年明け早々、英国在住の中国人実業家が応札したという情報が駆け巡ったのだ。「実業家は空母を中国に運んで学校に使うと説明しているが、軍事転用の可能性がないか英政府が精査している」(在英の外交官)という。
 この件に英国が神経をとがらせているのは、89年の天安門事件以来実施している欧州連合(EU)の対中武器禁輸の解禁論がEU内で浮上しているからだ。
新興国依存症
 ギリシャの首都アテネ近郊のピレウス港。昨年10月に訪れた温家宝首相は、欧州向けの輸出拠点としてここに投資することを約束した。中国はスペインやポルトガルにも直接投資の拡大と国債の購入を約束。その見返りに武器輸出解禁への支持を各国に求めたとみられている。
 米国が借金を膨らませて世界からモノを買い、中国など潤沢な外貨準備を持つ国が米国債を買って資金を供給する。「ブレトンウッズ2」とも呼ばれたこの構造は、2008年のリーマン危機でその持続性に疑問符がついた。
 危機後の欧州でみられる光景は、金融も貿易も中国などに頼る「新興国依存症」だ。ギリシャなど南欧の赤字国は中国に国債を買ってもらい金融面で支えてもらう。ドイツなど黒字国は自動車など工業製品を新興国に輸出して稼ぐ。
 国際通貨基金(IMF)の予測では11年の世界の実質経済成長率は4・4%。ただ、新興・途上国が6・5%と高い伸びになるのに対し、先進国は2・5%にとどまる。世界経済の「2速構造」は鮮明だ。
 国内市場の拡大が見込めない先進国は新興国への輸出にまい進する。日米欧の量的緩和によるマネーも新興国に流れ込む。ヒト、モノ、カネがこぞって「西から東へ」と動く。
 1月下旬にスイスのダボスで開いた世界経済フォーラム年次総会。09年は温家宝首相、10年には次期首相候補の李克強副首相を送り込んだ中国だが、今年は首脳級を派遣しなかった。
 財政危機に苦しむ欧州各国首脳がダボスに顔をそろえた一方で、中国、インド、ブラジル首脳は姿を見せない。自信を強める新興国首脳らは欧米主導の国際秩序の象徴の一つである「ダボス会議」から、少しずつ距離を置き始めたようにもみえる。
 世界貿易機関(WTO)、地球温暖化などの国際交渉の場で、中国、インドはまだ発展途上国の立場で権利を強調し、責任を伴う協調には消極的だ。中国の胡錦濤国家主席は先の訪米時に米ドル主導の国際通貨体制を「過去の遺物」と切り捨てたが、人民元改革には慎重で新通貨体制を主導する準備はない。
失われる資源
 「中国の男性が毎週もう1本ビールを余計に飲むだけで、英国の大麦の年間生産量の5分の1が新たに必要になる」。英シンクタンクは、新興国が今のまま成長を続ければ、食料問題だけではなくエネルギーや水資源、地球温暖化への影響が果てしなく大きくなると警告する。
 物質的な豊かさを目指して疾走する新興国。先進国は目先の市場の大きさに目を奪われて新興国へのモノの売り込みに血道をあげる。だが新興国がこのまま「資源多消費型」の成長を続ければ、いつか地球はそれを支えきれなくなる。
 新興国に省エネ・環境技術を移転し「エコ型」経済への転換を促すことが、中長期でみれば先進国の利益にもなる。希少な資源を節約しながら、先進国と新興国が共存共栄できる新たな国際秩序づくりへ知恵と工夫を積み上げていく。均衡のとれた世界への一歩だ。

:2011:02/02/09:01  ++  天然ウナギの卵発見、東大など、世界初、マリアナ沖で、完全養殖へ前進。

東京大学の塚本勝巳教授らと水産総合研究センターなどの研究チームは、天然ウナギの卵を採集することに世界で初めて成功した。太平洋のマリアナ諸島付近で産卵することは知られていたが、卵を捕まえたのは初めて。ウナギの生態解明や完全養殖の実現に道を開くと期待される。
 卵を採集したのは、日本から約2500キロ離れたミクロネシア連邦の経済水域であるマリアナ諸島の海域。2009年5月、海洋研究開発機構が所有する調査船「白鳳丸」からトロール網で海中をすくったところ、産卵から1日後のウナギの受精卵が得られた。
 卵のサイズは直径約1・6ミリメートル。全部で31個の卵があった。遺伝子を調べたところ日本列島の近海を回遊するニホンウナギと断定した。分析などに手間がかかり公表までに時間がかかった。卵は水深200メートル付近で産卵されたとみられ、10キロメートル四方の狭い海域で採れたことから、産卵場はごく限られた場所にあることも分かった。
 これまでニホンウナギは毎年5~9月にマリアナ諸島付近で産卵し、成長しながら黒潮に乗って日本近海にやってくることは知られていた。ただ、産卵からふ化まで約1日半と短いため、卵を捕まえた例はなかった。
 今回の成果は卵から成魚までを人工的に育てる「完全養殖」の実用化にも近づくと期待される。水産総合研究センターは水槽で、オスの精子とメスの卵を人工授精した受精卵から成魚を育てる完全養殖には成功している。ただ、受精卵から稚魚のシラスウナギに育てる効率が極めて悪く、かば焼きなどとして安定供給する実用化には程遠い。
 今後、卵を見つけた海域の水温や成分などを手掛かりにすれば、稚魚を育てるのに最も適したエサなどが割り出せる可能性があるという。水産総合研究センターの田中秀樹グループ長は「今後、エサを改良して効率よく育てられるようになるかもしれない」と話している。
 研究成果は2日、英オンライン科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
ウナギの稚魚、シラスウナギは不漁となる年が増えている。主産地の南九州では、今シーズンの水揚げ量が過去5年平均の4割程度にとどまる。このため、養殖業者への出荷価格は1キロ55万円と例年の約2倍に跳ね上がった。稚魚の高騰を受けて、養殖ウナギの価格も高止まりしている。
 水産庁がまとめたシラスウナギの国内漁獲量(推定)は、1963年の232トンをピークに減っている。2010年は前年比6割減の9・2トンと集計開始以来の最低になった。
 価格も上昇。10年は一時1キロ150万円以上を付け、史上最高値を更新した。活ウナギの出荷価格は現在、1キロ2650円と昨年春に比べ2割近く高い。全国鰻蒲焼商組合連合会の湧井恭行理事長は「このままではかば焼き店の経営が成り立たなくなる」と話す。
 不漁の原因として考えられるのが気候変動の影響だ。東京大学などがマリアナ諸島の海域を調べたところ、産卵場が90年代と比べて200~300キロメートル南下していた。
 東大の木村伸吾教授は「(海水温が変化する)エルニーニョなどの影響だ」と指摘する。生まれたウナギは稚魚に育つものの、産卵場が本来の場所より南側にあるため日本へ来る海流に乗れず、南の方へ流れて死んでしまうとみられる。

:2011:02/01/09:59  ++  国富、2年連続マイナス、09年末3.4%減、デフレ・地価下落で―初の負債超過。

内閣府が31日発表した2009年度の国民経済計算(確報)によると、土地などの資産から負債を差し引いた国全体の正味資産(国富)は09年末に前年比3・4%減の2712兆4千億円となった。マイナスは2年連続。特に国、地方を合わせた「一般政府」の正味資産の減り方が大きく、1980年の統計開始以降、初めて負債が資産を上回った。
 デフレや地価の下落で国全体の資産価値が減少した一方、政府部門は経済対策による国債の大量発行で負債が増大した。国富は00年代に入り、一進一退を続けており、ピークの1990年の約4分の3の水準まで落ち込んでいる。
 09年末の国富の内訳を分野別に見ると、土地などの資産が前年末に比べ4・1%減の1208兆円。企業の設備や橋や建物など公的資産など有形固定資産が6・2%減の1131兆円となった。一方、海外債券投資の拡大や円安の進行などを背景に、対外純資産は18・1%増の266兆円と過去最高となった。
 国富を主体別に見ると、正味資産の減り方が最も目立っていたのは国、地方、公的な医療保険や年金などの社会保障基金で構成される一般政府。09年末は負債が資産を48・8兆円上回る「負債超過」に陥った。
 土地の価値が下落したことなどから、一般政府が保有する期末資産の時価は前年比約20兆円減の970兆円になった。一方、09年度はリーマン・ショックによる景気落ち込みを背景に経済対策を実施。これに伴って国債が増発され、負債残高は同35兆円増の1018兆円となった。
 財務省の28日の発表によると、国は09年3月末時点で372兆円の負債超過になった。国だけであるにもかかわらず、財務省試算の方が国民経済計算より負債超過額が大きいのは、将来、支払う必要がある公的年金も負債に含めているためだ。
 企業の債務超過と違い、一般政府が負債超過になってもすぐに資金調達に支障が出るわけではない。日本は将来の消費税引き上げ余地が大きいことなどから長期金利が上昇しにくいとも指摘される。ただ、財政再建期待がはげ落ちたりすれば、財政運営が難しくなる可能性は残っている。
 内閣府によると、日本と同様の国富統計を算出しているのはカナダやオーストラリア。09年末の一般政府の正味資産の名目国内総生産(GDP)比を見ると、カナダが1・0%の負債超過。オーストラリアが同72・4%の資産超過。今回の日本の負債超過額の名目GDP比は10・4%だった。
 ▼国富 一般政府(国、地方合計。公的な年金や医療保険含む)、企業、家計など国全体が保有する資産(時価)から負債を差し引いた指標。ある時点の国全体の純資産総額で、1年間に新たに生み出された価値である国民所得とは異なる。資産には住宅や工場などのほか、土地や森林も含まれる。日本の国富の4割以上を土地が占めており、地価の影響を受けやすい。

:2011:02/01/09:55  ++  小沢元代表強制起訴、民主、処分でも迷走、首相強硬貫けず、党内対立の激化恐れる

強制起訴された民主党の小沢一郎元代表が離党や議員辞職を拒んだことで、党執行部は週内に処分問題の議論に着手する。菅直人首相は強い態度で臨む姿勢を示してきただけに、決断の時機を逸し、迷走している印象は否めない。浮上している党員資格停止や離党勧告にも小沢系議員の反発は必至で、執行部は世論の反応も見極めつつ慎重に判断する方針だ。野党側は証人喚問を求めて攻勢を強めており、2011年度予算案や関連法案の審議の行方にも不透明感が漂う。(1面参照)
 ■首相「役員会で協議」 民主党の倫理規則による処分は軽い順に(1)党員資格停止(2)離党勧告(3)除籍、の3つ。執行上の措置には「厳重注意」など5種類ある。
 元代表の処分に積極的だったのは菅直人首相だ。年頭会見では「『政治とカネ』の問題にけじめをつける年にする」と表明。「起訴が行われたときには政治家としての出処進退を明らかにし、裁判に専念されるべきだ」と議員辞職の可能性に言及していた。
 その首相は31日、「役員会などで協議する」と述べただけ。役員会も「まずは小沢元代表の判断を待つ」との岡田克也幹事長の説明を了承しただけで約20分で終了した。執行部には厳しい処分を断行すれば世論の支持を得られるとの期待がある半面、党内対立の激化は政権の命運を握る来年度予算案の審議に影響するとの慎重論も根強い。
 ■制度改正は民主も賛成 処分理由も対立点。執行部には元代表の元秘書、石川知裕衆院議員が起訴後に自ら離党した経緯から「少なくとも離党勧告」との声があるが、元代表は「検察審の強制起訴と検察当局の起訴は全く異質」と主張した。
 岡田氏は週内に役員会を開き、起訴された国会議員の処分例、衆院政治倫理審査会での説明がない事実などを総合的に検討する意向を示した。
 検察審査会が2度、起訴議決すれば「強制起訴」となる現制度は04年5月の法改正後、09年5月に施行された。改正法の採決では民主党も賛成しており、江田五月法相は31日、記者団に「強制起訴でも刑事裁判手続きが始まるのは同じだ」と正当性を強調した。
 ■証人喚問には慎重 党内が割れる厳しい処分を一気に決めるのは難しい。政府・与党内では「党員資格停止が落としどころ」との声もある。小選挙区の支部長権限がなくなり、党の活動費支給も止まるが、「原則、最長6カ月」を経れば党員の権利を回復できる。小沢氏が予算成立後の政倫審出席を否定していないため、手続きが簡素な「執行上の措置」にとどめるとの見方もある。
 野党が求める証人喚問は虚偽答弁の場合、偽証罪に問われる重い決定のため、全会一致が慣例。国民新党が反対する以上、壁は厚い。岡田氏も現時点では「政倫審に出席していただけると期待している」と口を濁す。

:2011:02/01/09:51  ++  小沢元代表を強制起訴―一時代が過ぎ去った。

時代が、小沢一郎元代表の前を過ぎ去った感がある。過去20年余り、元代表は浮沈を繰り返しながらも、政局の中心にいた。政治家が小粒になる中で、大きな決断ができそうな風圧をもっていたのも事実だ。念願の政権交代も実現した。ここでまた、権力ゲームに興じてみても、もはや国の衰退を加速させるだけの「コップの中の嵐」でしかない。
 一般有権者からなる検察審査会の制度的な問題は、小沢元代表のみならず、一部の識者からも指摘されている。ただ、起訴事実を含め、元代表をめぐる政治資金の流れは極めて複雑で、誰の目にも異様に映る。
異様な要塞築く
 昨年10月、検察審の起訴議決を受けた後の元代表の行動も、尋常ではない。手兵を集めて連日のように会合を重ね、忠誠心を測る。「徹底的にクリーンな党に」を理由にダブル辞任を迫った鳩山由紀夫前首相とも、いつの間にか手を握り、現政権批判で歩調を合わせた。
 民主党執行部がなすすべもなく、検察審の強制起訴を待ちわびていたのをいいことに、堀をめぐらし、塀を高くして、裁判の長期化を見越した要塞を築いていたかのようだ。時折、要塞の中から出撃しては、自らの言い分を一方的に発信したのも、焦燥感の表れだろう。
 確かに菅直人政権が早晩、行き詰まるとみる向きは多い。その時、首相が総辞職を選ぶにせよ、勝算のない衆院解散に打って出ようとするにせよ、要塞さえ構えておけば反撃もできる。
 政治家として生存本能が強いのは、政界では美徳かもしれない。が、これが本当に「国民の生活が第一。」の結果をもたらすのかどうかは甚だ疑問だ。
 子ども手当や高速道路無料化に代表される民主党のマニフェスト(政権公約)を実現するには、どれだけ財源確保に無理があるか、すでに明白になっている。菅首相でさえ、にわか仕立てとはいえ「税と社会保障の一体改革」を唱え始めた。
 2009年の衆院選で圧勝した後、元代表が目指したのは翌年の参院選で過半数を取り、衆参両院の多数を握る完全与党をつくることだった。元代表の周辺には「その時、小沢さんは自分一人で泥をかぶり、君子豹変(ひょうへん)して財政健全化を断行するつもりだった」と解説する人もいる。
権力闘争に嫌気
 話半分としても、いまのマニフェスト墨守の主張は、政略のための方便とみられても仕方ないだろう。これまで歯牙にもかけなかった与野党の政治家に正面から切り込まれたような現状は、元代表のプライドが許さないかもしれない。それも、これまで何人もの先輩政治家が、元代表に対して抱いてきた感情と同じである。
 暗たんたる経済、財政状況の中で、昔ながらの内なる権力闘争はもういい加減にしてほしい、というのが世間の偽らざる心情だ。
 小沢元代表が敬愛する西郷隆盛は、いうまでもなく明治維新の立役者の一人だが、西南戦争に敗れ、あたかも古い武士社会に殉じるように自刃した。最期の言葉は「もう、ここらでよか」だった。

:2011:02/01/09:47  ++  小沢元代表を強制起訴、政治資金報告の虚偽記入、議員で初。

民主党の小沢一郎元代表(68)の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、検察官役を務める指定弁護士は31日、小沢元代表を同法違反(虚偽記入)罪で在宅のまま起訴した。検察審査会の起訴議決に基づく国会議員の強制起訴は初めて。刑事被告人となった元代表が離党や議員辞職を否定する一方、党側も厳しい処分を断行できないため、「政治とカネ」が通常国会の焦点となるのは必至だ。(政治資金規正法は3面「きょうのことば」参照)
 小沢元代表はこれまで虚偽記入への関与を一貫して否定している上、元代表の弁護団は強制起訴の効力そのものも争う方針。公判では、指定弁護士と小沢元代表側が全面対決する構図となる。
 指定弁護士は当初、小沢元代表の衆院政治倫理審査会での説明内容を踏まえて起訴状を作成することを検討していたが、政倫審開催が実現しないため起訴手続きに踏み切った。
 小沢元代表に要請していた事情聴取も拒否されたため、東京地検特捜部が収集した証拠に基づいて起訴した形だが、31日の記者会見で、指定弁護士の一人である大室俊三弁護士は「聴取が実現しなかったことは思い通りではないが、必要な捜査は十分できたという認識だ」と語った。
 起訴状によると、小沢元代表は、衆院議員の石川知裕被告(37)ら元秘書3人=規正法違反罪で起訴=と共謀。陸山会が2004年に取得した東京都世田谷区の土地を巡り、購入代金に充てた小沢元代表からの借入金約4億円を04年分の政治資金収支報告書に計上せず、同年の収入を虚偽記入。さらに購入代金約3億5千万円の支出を翌05年分の報告書に計上するなどしたとされる。
 借入金4億円の不記載は市民団体の告発内容には含まれていなかったが、指定弁護士は、検察審の起訴議決書に従い起訴内容に盛り込んだ。
 事件を巡り、東京地検特捜部は昨年2月、石川議員ら元秘書3人を規正法違反(虚偽記入)罪で起訴する一方、小沢元代表を「嫌疑不十分」で不起訴処分とした。
 東京第5検察審の「起訴相当」議決に対し、特捜部が再び不起訴としたのを受け、同検察審は2回目の審査を経て同10月、「起訴すべきだ」との議決を公表。東京地裁が選任した3人の指定弁護士が補充捜査を進めた。
 小沢元代表は07年分の虚偽記入容疑でも刑事告発され東京第1検察審が「不起訴不当」と議決したが、特捜部が改めて不起訴とし、同年分の刑事手続きは終結している。
 強制起訴は、昨年のJR福知山線脱線事故などに続き4件目。
 小沢元代表の弁護人、弘中惇一郎弁護士の話 今回の起訴は、検察の起訴基準と全く異なる基準でなされたのは明らか。早期に無罪判決を得るため最大限の努力を払う。
 ▼強制起訴 検察官が不起訴処分とした被疑者について、検察審査会の「起訴すべきだ」との議決(起訴議決)に基づき強制的に起訴する制度。裁判所が選任した指定弁護士が検察官役を務め、起訴手続きやその後の公判を担当する。検察審は1948年の発足以来、議決に拘束力はなかったが、検察官が独占する起訴権限に市民感覚を反映させるため、2009年5月施行の改正検察審査会法で導入された。
 検察審は有権者名簿から無作為に選ばれた11人で構成し、検察官の不起訴処分を不服とする告発人らの申し立てを受けて審査を開始。8人以上が起訴すべきだと判断すると「起訴相当」と議決する。検察官が再び不起訴するなどした場合は2回目の審査に入り、起訴議決にも8人以上の賛成が必要。

:2011:01/31/10:30  ++  日中パソコン連合NECの決断(上)実った最後のチャンス―交渉1年、社長の執念。

NECと中国レノボ・グループ(聯想集団)がパソコン事業での提携を決めた。日中首位連合の誕生だ。NECはレノボが51%出資し6月にも発足する合弁会社にパソコン事業を移す一方、通信機器やIT(情報技術)サービスなどに経営資源を集中し成長路線への回帰を目指す。看板事業に大ナタを振るったNECの決断の背景を探る。
 「この交渉が最後のチャンスだったかもしれない」。27日のレノボとの共同記者会見から2日後、遠藤信博社長は交渉にかけていた並々ならぬ思いを明かした。
 NECが海外のパソコン市場から完全撤退した2009年夏。同社幹部は「もう勝負が付いた」と漏らした。汎用品化が進むパソコン。安定して利益を稼ぐには規模が必要だ。激しい価格競争の下、世界12位のNECが再びシェアを伸ばすにはコスト先行で年間100億円規模の赤字が数年続く――当時のNECの試算だ。単独でこの負担は無理。パートナー探しが本格的に始まった。
懸命に社内説得
 NECの交渉相手は複数にのぼった。台湾や国内の企業とも交渉したが折り合わない。最終的に最も熱心なレノボに相手が絞られた。両社の本格交渉が始まったのは1年ほど前だ。
 05年に米IBMからパソコン事業を買収し世界3位に躍り出たレノボだが、海外市場の不振で現在のシェアは4位。中国需要で体制を立て直し、再び海外で攻勢に出ようとしていた。同社も世界5位の東芝との提携を模索した経緯がある。「世界3位への復帰」(楊元慶・最高経営責任者)を目標とするレノボにとって世界3大市場の日本で首位に立つNECは魅力的だった。
 しかし、NEC社内はまとまらない。「ブランド力の維持にパソコンは不可欠」「赤字でもない2000億円事業をなぜ切り出すのか」。当初、取締役会メンバーの大半が反対した。ITサービスとの相乗効果が失われるのを懸念する声も出た。遠藤社長ら推進派は粘り強く説いて回った。
 (1)合弁とする(2)パソコン事業会社、NECパーソナルプロダクツ(東京・品川)の雇用を守る(3)NECブランドは継続する(4)経営の主導権にはこだわらない――。交渉の基本線がこうして固まっていった。
 ただ、レノボは当初からパソコン事業を丸ごと買収したいと考えていたフシがある。最大のヤマ場は昨年秋。出資比率を巡り両社の対立は深刻化した。溝はなかなか埋まらず、NEC内部には反対意見が再び巻き起こる可能性もあった。
 「パソコンの件は私に任せてくれ。必ずやりとげるから」。遠藤社長はこう言い切り、社内の慎重論を封じ込めた。遠藤社長の決意の裏にはパソコン事業の将来に対する強い危機感があった。
「損失1000億円も」
 交渉入り当時の遠藤社長はM&A(合併・買収)を立案する経営企画担当の取締役。今は黒字でも世界シェア1%に満たない事業はいずれじり貧になる。いったん赤字になってから提携交渉しても有利な条件を取り付けられない。「最悪の場合、事業の清算時に発生する損失は1000億円」――こんな試算も内部にはあったという。
 基本合意直前の数日間、スタッフが徹夜して合意文書をまとめ上げた。「今回の提携で(レノボから)元気をもらった」。約1年に及ぶ交渉を乗り切った遠藤社長は、27日の記者会見で高揚感を隠せなかった。
 「本音を言えばもう一歩進めてほしかった」。同日夜、NECの主要取引銀行の幹部はこう語った。合弁ではなく売却に踏み込めなかったのかとの思いがにじむ。パソコン事業を移管する対価としてNECが受け取るのは2%分のレノボ株。現金は入らない。主力の通信機器やITサービスへのヒト・モノ・カネの集中度を高め、早く業績を立て直すべきだとの声が外部にはある。
 NECの10年4~12月期の連結決算は535億円の最終赤字。成長を期待するITサービス部門まで営業赤字に転落した。構造改革は成長戦略の土台を築くため。どう成果を生むかが肝心だ。記者会見から一夜明けた28日、東京株式市場でNECの株価は前日比4%下落した。周囲は早くも次の一手を求めている。

:2011:01/31/10:25  ++  ダボス会議閉幕、日本経済、世界は「無関心」、論より実行求める声。

2500人を超す政府首脳や企業経営者が出席した世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)が30日閉幕した。先進国の停滞と新興国の台頭という「新しい現実」にどう向き合うかが主題になったが、バブル崩壊から20年たっても経済再生がままならない日本への世界の視線は「不安」から「無関心」に移り変わっている。
米の照準は中国
 ダボス会議の常連で昨年末に米国家経済会議(NEC)委員長を退いたばかりのサマーズ・ハーバード大教授。クリントン政権時代の1990年代に「日本たたき」で名をはせた同氏に中国テレビ局の司会者がたずねた。「どうすれば中国たたきはおさまりますか」
 「両国民の交流促進なども重要だが、(日本たたきがおさまったのは)経済的な地位の変化が大きかった」。サマーズ氏の答えは明確だ。バブル崩壊後の経済低迷で日本は米国の脅威ではなくなり、もはやたたく必要がなくなったのだ。
 そして今の米国の照準は、オバマ大統領が57年に旧ソ連が世界初の人工衛星を打ち上げた「スプートニク・ショック」になぞらえた中国など台頭する新興国だ。
 29日にダボス市内のホテルで開かれた朝食会。中国の学者、起業家、バーグステン米ピーターソン国際経済研究所所長、スティグリッツ米コロンビア大教授らが顔をそろえ、早朝にもかかわらず貸し切ったレストランは満席になった。
 「中国は経常黒字を減らし、世界経済へのビジョンを示すべきだ」と迫るバーグステン氏に、中国社会科学院世界経済政治研究所の余永定所長は「策定中の次の5カ年計画には世界ビジョンを盛り込む」と応じた。中国側出席者からは「中国の立場をもっと発言していくべきだ」という声も出て、世界第2の経済大国になった自信をうかがわせた。
 ダボス会議のもう1つの関心は財政危機に揺れるユーロ圏だった。90年代の日本の不良債権危機のように「世界経済のリスク」という負の意味で注目され、「ユーロ圏は大丈夫か」と熱心な議論が交わされた。
「具体策がない」
 そして日本。昨年はぎりぎりで鳩山由紀夫首相(当時)が出席を見送ったが、今回は菅直人首相が29日に特別演説に立った。「社会をつなぐ絆」「最小不幸社会」などをキーワードにした演説に、社会民主主義志向の強い欧州の出席者からは賛同の声があがったが、「財政再建や経済再生など具体策がない」という辛口の評も少なくなかった。
 何よりも気になったのは、日本経済への関心の低さだ。29日午後の「日本の経済再生」をテーマにした討論会。首相が冒頭あいさつに立ち、海江田万里経済産業相、小島順彦三菱商事会長、緒方貞子国際協力機構理事長らが登壇したが、聴衆の大半は日本人。司会者の米紙コラムニストは「昔は日本討論会はもっと大きな会場が満員だったのに……」と嘆いた。
 この2日前に日本貿易振興機構が主催したレセプションには、すしやおでんなど日本料理を目当てに数百人以上がつめかけ、超満員になった。日本食の国際競争力は高く、大宣伝をしなくても人は集まるのだ。
 「国際社会で日本はもっと発信力を」と叫ばれるが、それは演説の腕を磨くことだけではない。残念ながら「やるべき改革はわかっているのになかなか実行できない日本」というのが世界の共通認識だ。日本の発信力を高めるには、経済を再生し魅力ある国にすることが早道だ。世界は日本の指導者に「論より実行」を求めている。

:2011:01/31/10:19  ++  日本に似た課題、中国直撃、「経済大国の先輩」の40年分、一気に噴出。

【北京=品田卓】中国が不動産対策、人手不足、人民元など広範囲な政策課題に直面している。27日には不動産税導入を決め、1990年前後の日本のバブル対策と類似してきた。人手不足による賃上げや人民元改革などは高度成長期の日本が抱えた課題で、数年後には、労働人口の減少期に入る。中国では、日本がこの40年間に経験した様々な課題がほぼ同時期に噴出しており、政策のかじ取りは一段と難しくなっている。
 「日本のようなバブルの発生・崩壊が起きないよう、どう手を打つかが重要だ」――。中国当局関係者はこう解説する。
 中国政府は2010年から金融緩和路線を徐々に見直し、住宅ローンなど不動産融資規制強化に動き出した。それでも不動産価格の高止まりは続き、27日、地方政府が日本の固定資産税にあたる不動産税を試験的に導入することを認めると発表した。不動産税制のスタートだ。
 日本ではバブルが深刻になり始めた1989年に金融当局が融資自粛を強化する通達を出した。効果が薄く、91年に地価税法が成立した。中国は不動産対策を融資から税制へと一歩前に進めた点で日本の対策と似ている。
 いまの中国経済は日本の80年代半ばから90年代前半にかけてと似ている点が多い。対米摩擦も同様だ。日本の対米貿易黒字が拡大し、自動車輸出問題が生じた。中国でも、胡錦濤国家主席の今回の公式訪米の最大テーマは貿易不均衡問題だった。日本では当時、三菱銀行のバンク・オブ・カリフォルニア買収を先陣に邦銀が相次ぎ米銀を買収。日本脅威論がさらに激しくなった。中国工商銀行は今月、米銀を買収。日本の80年代と同様の道を歩んでいるように見える。
 だが中国は日本の高度成長期に起きた政策課題も消化し切れていない。昨年から本格化した賃上げラッシュ。人材供給源だった農村の余剰供給力が終わり、人手不足になる「ルイスの転換点」が始まったとの見方が出てきた。日本では60年代に起きた現象だ。賃上げが加速すれば、安い労働力という中国の魅力は薄れる。公害など環境対策も始まったばかりで、人民元改革もこれからだ。
 さらに2020年までに中国も労働人口の減少時代が来るとされる。日本がいま直面する経済成熟期の課題も同時に迎えることになる。社会保障などの負担がさらに膨らむ。
 中国は文化大革命で破壊された経済を1978年の改革開放路線への転換をきっかけに立て直し、一挙に30年余りで国内総生産(GDP)世界2位に駆け上がった。成長を最優先にまい進した結果、日本が40年かけて徐々に進めた政策をいま一挙に処理する必要に迫られている。
 経済だけではない。政治改革や人権問題、貧富の格差対策も道半ば。このため成長を続けないと、国民の不満が一挙に噴き出しかねないだけに、高成長維持と、バブル対策、貿易不均衡是正、格差縮小などに同時に取り組む必要がある。
 3月には今後5年の政策運営方針を決める全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開かれる。7月には中国共産党結党90年を迎え、2012年秋には習近平国家副主席が共産党総書記に就任、新体制が発足する見通しだ。政策難題をどの程度処理できるか、この1、2年が重要な節目になる。

:2011:01/31/10:04  ++  エジプト首都機能マヒ、デモ続く――長期独裁政権に限界、中東民主化、試練迎える。

エジプトのムバラク政権が退陣の危機に直面している。チュニジアで発生した「民主化革命」が飛び火。治安維持を理由に独裁による強権政治を長期間、国民に強いてきたひずみが一気に噴出した。「アラブの大国」は民主化に向け大きくかじを切ろうとしているかに見えるが、混乱が続けばテロも辞さないイスラム原理主義者の台頭を招き、中東和平や原油の安定供給にも影響を与えかねない。日本も無縁ではいられない。
退陣後にらむ?
 29日朝、カイロ中心部。ムバラク大統領が総裁を務める国民民主党(NDP)の本部ビルが前夜のデモ隊の放火で黒焦げになった姿を現した。権力基盤の弱体化を象徴する出来事に大統領は同日夕、腹心のスレイマン国家情報庁長官を副大統領に任命。身の安全も含め退陣後をにらんだ動きとみられる。
 ムバラク大統領が就任したのは1981年。サダト前大統領が過激派の凶弾に倒れ、副大統領から昇格した。サダト氏の隣で負傷しながらも難を逃れたムバラク氏が力によるイスラム原理主義勢力の封じ込めに走ったのは当然だった。
 90年代にはカイロでのバス爆破や南部ルクソールで日本人犠牲者も出た銃撃テロなど凄惨な事件が続発。大統領が「イスラムを曲解する者」と呼んだ過激派への強権発動は、欧米からも一定の理解を得ていた。ただ、2000年代に入りテロが減少しても政府は民主化を進めず「統制が自己目的化している」との批判が増大した。
 失業率も約10%と高いまま。90年にクウェートに侵攻したイラク軍を駆逐する多国籍軍への参加の見返りに米国などから受けた債務減免や国営企業の民営化を原動力に経済は上昇軌道に乗ったが、貧富の格差は拡大。特に若年層の失業は深刻だ。
 抑圧、貧困、格差――。インターネットを通じ意見を交換する市民の怒りの矛先は独裁政権に向かった。
 欧米諸国も民主化を後押しする立場を鮮明にし始めた。ギブズ米大統領報道官は28日、ムバラク政権支援見直しを示唆。英独仏首脳も29日共同声明を発表、「ムバラク大統領は国民の要求に応えることが不可欠」と強調し、事実上引導を渡した。
テロ温床の恐れ
 ただ、反政府勢力は徹底的に弾圧されたためデモの中心になった若者グループの政治基盤は弱い。イスラム教では国家という枠を超えて信仰で結びつくウンマ(共同体)を重視する傾向が根強い。現政権が倒れたら、エジプト最大のイスラム系政治組織「ムスリム同胞団」が勢力を伸ばし他国の宗教勢力と結んで「原理主義国家」樹立を模索する可能性がある。
 アフガニスタンなどに逃れた過激派が帰国、デモの目標とは裏腹にテロの温床となる危うさも残る。イスラエルを承認する数少ないアラブ諸国のひとつが揺らぐことへの不安も根強い。
 市場はすでに警告を発している。エジプトの石油生産は小規模だが、サウジアラビアなどに「民主化ドミノ」が及ぶ懸念などから28日、原油価格が上昇した。湾岸産油国でも王族などに権力が集中する構造は同じだ。
 「民主化革命のしぶきは(アラブ諸国のある)大西洋岸からペルシャ湾岸まで飛散している」(英ダーラム大学のハリル・アナーニ上級研究員)。限界を迎えた長期独裁が国民主導の民主化につながり、地域の安定として実を結ぶことができるのか。その道筋は始まったばかりだ。(編集委員 中西俊裕)