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ひで坊な日々

主に私の仕事と信条に関わるメディアからの備忘録と私の日常生活から少し・・・                             
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:2011:07/22/10:08  ++  第1部危機脱出の針路(4)10電力、割拠のツケ(エネルギーを問う)

「独立王国」融通阻む
 「電力不足の解消に役立てばと考えたのに……」。電子部品メーカーの幹部はあきれる。東北に工場を持つ同社は震災後、東北電力に風力発電設備の新設による売電を申し入れたが、受け入れを断られた。
 東北電が昨年実施した風力発電の募集では257万キロワット分の応募に対し、実際事業化できるのは約10分の1の27万キロワット。出力が不安定な風力を需要の一定比率以下に抑えるとして事業者を抽選で選んでいるからだ。
 応募者すべての風力発電を東京などの大消費地に回せれば自然エネルギーの有効活用につながる。しかし、それぞれの地域で電力を自前で供給する原則の電力会社にその発想は乏しい。
連系線強化怠る
 周波数の異なる東日本と西日本で融通できる電力は100万キロワットと東京電力のピーク電力の2%弱にすぎない。震災後に東電が計画停電に追い込まれた要因のひとつが脆弱な連系線。能力増強の構想は1990年代からあったが、地元の反対との理由で2004年に立ち消えになった。
 裏側に別の事情が見え隠れする。「トヨタ自動車向け電力を奪われるな」。当時、中部電力の最大顧客であるトヨタグループ企業が集まる愛知県三河地区には東電や関西電力が営業攻勢をかけていた。
 電力を容易に融通できる仕組みがあれば、中部電は東西の電力大手に挟撃される立場だっただけに「東電に(周波数の境目である)富士川を越えられなくてよかった」と中部電OBは振り返る。東電も連系線が拡充されなければ関電などと競争にさらされずに済む。以後電力会社はこの問題を持ち出さなくなった。
 電力会社間競争の実績は九州電力が中国電力管内に供給する1件、新規事業者のシェアは3%にとどまる。競争と改革に背を向け電力10社が築いた「独立王国」。それが残した電力不足というツケを払ったのは国民だ。
 「通信線敷設のコストがかかります」
 「こんな粗雑な説明では不十分だ」
 昨年、経済産業省で開かれた「スマートメーター制度検討会」。東大教授の松村敏弘(46)はスマートメーター(次世代電力計)導入の障害を延々説明する東電や関電の役員を問い詰めた。
 スマートメーターは電力の需給を調整し、再生可能エネルギーの導入を促すスマートグリッド(次世代送電網)構築に欠かせない機器だが、電力各社は様々な理由を持ち出して抵抗した。メーターで把握した情報をもとに、多様な料金メニューを用意して異業種が電力事業に参入してくるとの警戒がある。
 電力のアウトバーン(高速道)――。ドイツ政府が国土を南北に貫く新たな大規模送電網を敷設する。北海やバルト海の洋上に風力発電設備を増設し、大都市や工場が集まる南部に電力を送り込む計画だ。
国境越え送電
 英独仏など10カ国は北海の海底に共同で送電網を張り洋上風力の電力を相互融通する構想で合意した。送電線が域内を縦横無尽に結び、電力を柔軟に融通できる仕組みが国際競争も加速させる。
 日本でも欧州のような競争環境を整備しようと、経産省が2000年代初めに電力会社の発送電分離を目指したが、電力業界の強い抵抗を受けて中途半端な形で終わった。以後、電力会社との協調路線が続く。ある経産省OBによると、国の原子力安全委員会による06年の原発の耐震指針見直し作業では津波対策を重視すべきだという議論を、「経産省幹部が懸命に抑えて回った」。
 事務次官など経産省から、過去50年間に電力会社の役員・顧問に再就職した幹部は68人。エネルギー行政も「独立王国」の存続に深く関わる。
 電力10社体制の原型が誕生し今年で60年。制度疲労を乗り越え、安定的で安価な電力供給を導く仕組みはどうあるべきか。ゼロベースでの再設計が迫られている。(敬称略)
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:2011:07/22/10:07  ++  第1部危機脱出の針路(3)まだ絞れるぞうきん(エネルギーを問う)

省エネという「電源」
 6年前は770万円したものが、今は200万円台に値下がりし、数年後には50万円に――。かつてコンピューターの世界で起きた急速な機器の低廉化、小型化が電源の分野で進んでいる。これはJX日鉱日石エネルギーの手掛ける定置型燃料電池の価格の変遷だ。
天然ガスに脚光
 天然ガスから水素を取り出して発電する燃料電池はエネルギーの利用効率が高い。住宅会社の試算では、5人家族で年間の光熱費が10万円安くなり50万円時代には5年で元が取れる。JX幹部は「低廉化で普及に弾みをつける」と意気込む。
 電力の未来を考えるとき、見過ごせないのが「省エネ」という電源だ。日本は節電が徹底し、これ以上は「乾いたぞうきんを絞るようなもの」という見方があるが、実際はまだまだ余地がある。
 石油天然ガス・金属鉱物資源機構の特別顧問、石井彰(60)は「その代表が火力発電所。従来の方式は資源の持つエネルギーの半分以上を廃熱として捨てていた」と指摘する。高効率化の進む電源は燃料電池だけではない。工場の自家発電に適したガスタービンは過去10年でエネルギー効率が5ポイント以上向上した。
 発電所向け巨大プラントではガスタービン・コンバインドサイクルと呼ばれる技術が注目の的。最初は爆発で、次に残りの熱でタービンを回転させ、天然ガスの内蔵するエネルギーを利用し尽くす。「既存設備を新技術で代替すれば、エネルギー効率は1・5倍以上良くなる」(同)
 近年岩盤層に広く薄く分布するシェールガスの採掘が可能になり、国際エネルギー機関(IEA)は今年6月「天然ガスの黄金時代」というリポートを出した。今後10年程度は天然ガスがエネルギーの「現実解」になる公算が大きい。
 日本企業の生産現場のエネルギー効率は世界最高水準を誇る。一方で省エネや節電の余地が大きいのは川上の発電分野に加えて、川下の一般家庭だ。それも「我慢の節電」ではなく「賢い節電」を後押しする工夫や技術が生まれ始めた。
 「明日は電力が逼迫します。節電にご協力下さい」。新規電力会社のエネットは14日、契約世帯に一斉にメールを送った。単なる節電のお願いでも、政府による強制でもない。契約世帯が節電すれば、その分ポイントを発行し、翌月以降の料金の支払いに使える。併せて昼間は高く、夜は安い「時間差料金」も導入。ピーク時の使用量を2割ほど削減できたという。
電力ピーク抑制
 日本の電力消費はピーク時とそれ以外の差が大きい。東京電力の場合、夏場の2カ月だけのために大型火力10基超にあたる1千万キロワットもの発電設備を抱え、それが高コスト構造の一因だった。
 電力使用量を時間帯ごとに集計できるスマートメーターの普及や、ピークをなだらかにする可変的料金体系で「使用量が平準化すれば、電力供給のコストも下がる」とエネット経営企画部長の谷口直行(44)はいう。
 IEAの予測によると、2050年までに二酸化炭素を削減する手法として、家庭や工場の省エネが最も寄与度が大きく、自然エネルギー導入の2倍以上の効果が見込める。省エネだけで解決するわけではないが、電力消費を「減らす」取り組みは、実力が未知数の再生可能エネルギーを「増やす」よりも確実な方策だ。
 エネルギー戦略は安定確保とともに、経済を強くするという視点が欠かせない。日本経済は石油危機を克服する過程で省エネ技術や低燃費エンジンを生み出し、多くの企業が世界に飛躍した。
 首相の菅直人(64)は再生可能エネルギーが万能であるかのように訴えるが、その他の技術開発支援や競争環境の整備など複眼的な目配りが必要だ。ピンチをチャンスに変えるために官民が歩調を合わせエネルギーのベストミックスを考える時が来た。(敬称略)

:2011:07/22/10:03  ++  第1部危機脱出の針路(2)発展途上の太陽電池(エネルギーを問う)

再生エネ、覚悟なき「推進」
 山梨県北杜市。中央高速道路沿いの約10ヘクタールの休耕地を全国の自治体関係者が続々と訪れる。
 目当ては米欧や中国、韓国など9カ国・地域の27種類の太陽電池を並べ、性能を比べるメガソーラー(大規模太陽光発電所)の実証試験。NTTファシリティーズが進めている。「低価格の中国製も性能は日本製と遜色ない」(同社担当者)
 現在の太陽電池は光を電気に変える変換効率が10%台半ばどまり。経済産業省の試算では、発電コストは1キロワット時当たり37~46円と天然ガスや石炭火力の4倍程度する。
 政府は発電した電気の全量の買い取りを電力会社に義務付け、太陽電池の普及を促す方針だ。ただ、太陽電池メーカーの関係者は「新制度の導入で需要が増えても、その多くは中国勢が獲得するのではないか」と警戒している。
規制緩和が必須
 東京工業大学特任教授の黒川浩助(68)は「コスト引き下げには市場拡大と同時に技術革新が重要だ」と指摘する。
 「50%以上の効率も夢ではない」――。豊田工業大学教授の山口真史(65)は化合物半導体を重ね合わせた新しい太陽電池に期待をかける。シャープなどは既に実験室レベルで約39%を達成。同社や東京大学、産業技術総合研究所などは理論上の変換効率が60%以上の「量子ドット太陽電池」を開発中だ。
 問題は夢を現実に変えるまでに必要な時間だ。ここまでくれば発電コストは天然ガスなどの水準に並ぶが、実現は20~30年後。長期的に改善の余地が大きい太陽電池については次世代以降の技術開発を後押ししつつ、当面は発電コストが1キロワット時あたり20円前後の地熱や風力の利用を拡大するのが現実的だ。そのためには大胆な規制の緩和が不可欠になる。
 火山国の日本は地熱資源が豊富。一般的な原発約23基分にあたる約2350万キロワットを得られる潜在力がある。しかし8割が開発規制のかかる国立公園内に集中しているため、使えているのは54万キロワットだけだ。
 そこで環境省は公園区域外から斜めに穴を掘り、公園内の熱源を回収する方式を認める規制緩和に踏み切った。公園の境界から1・5キロメートル未満が開発できれば、利用できる電力は現在の約12倍になるとの試算もある。
 風力発電も日本では適地が少ないなどの理由で伸びが鈍い。環境省は沖合に風車を並べる洋上風力発電なら増やしやすく、約16億キロワットが可能と推定する。問題は漁業権との調整だ。
 再生可能エネルギーによる電気を電力会社が全量買い取る制度は、コストを利用者に転嫁する予定だ。経産省によると導入後、9年目には利用者の負担額が約4900億円に上る。電力供給を安定させるための送変電設備への投資も年2000億~1兆数千億円必要だという。
独の家庭3倍高
 2022年までの「脱原発」を決めたドイツにも送電会社が再生可能エネルギーの電気を買い取る制度がある。その影響もあって、国際エネルギー機関(IEA)の調べによるドイツの家庭用電気料金は1キロワット時0・323ドルと日米欧の主要国で最も高い。産業用に比べると約3倍だ。産業用は英仏などとほぼ同水準にとどめ企業の国際競争力維持に配慮している。
 原発や火力発電に代えて再生可能エネルギーを増やそうとするなら、巨額の資金を投じて太陽光発電の技術革新を急ぎ、大胆な規制緩和で風力や地熱の発電量を拡大する必要がある。長期の視点を持たず、性急に割高な再生可能エネルギーを普及させようとすれば、安価で安定した電力の確保は難しくなる。
 利用者はどこまで負担増を受け入れ、消費者は企業との電気料金格差が広がることを容認できるのか。再生可能エネルギーはそうした覚悟を迫っている。(敬称略)

:2011:07/19/09:38  ++  視界不良の世界経済に備えを怠るな(社説)

世界経済の雲行きが怪しくなってきた。欧州の財政・金融危機がなかなか収束しないうえ、米国経済の回復が予想以上に遅れているからだ。中国をはじめとした新興国はなお力強い成長を続けているものの、その副作用でもあるインフレが深刻になっている。
 世界経済が一段と不安定になり、株安や円高が進めば、東日本大震災から立ち直ろうとしている日本経済にとって大きな痛手になる。政府・日銀は、日本への影響をよく見定め、機敏な対応ができるよう備えを怠らないようにすべきだ。
収束しない欧州危機
 いま最も心配なのはユーロ圏の危機対応が遅れていることだ。震源地であるギリシャの追加支援策を巡って各国や関係機関の意見が集約できていない。
 欧州連合(EU)による大規模な支援の前提として、ギリシャ国債に投資した民間金融機関にも負担を求める声が強まっているのに対して、欧州中央銀行(ECB)などは「強引に負担を求めれば事実上のデフォルト(債務不履行)と判断され、混乱を招く」と反論している。
 ギリシャ問題を巡る不協和音は市場に不安をもたらしており、アイルランドやポルトガルのほか、イタリアの国債の利回りまで急上昇するなど影響が広がっている。欧州の金融機関は欧州各国が発行する国債を大量に保有しており、対応を誤れば金融市場が全面的にまひしたリーマン・ショックの二の舞いになりかねないとの声も出てきた。
 米国も連邦債務の上限の引き上げを巡って、大統領と下院で多数を占める共和党との対立が解けず、このまま妥協が成立しないと8月にデフォルトに陥りかねない状況になっている。最終的には合意に至るとの見方が多いが、市場の大きな不安材料になっている。
 それ以上に気がかりなのは米国経済の回復が遅れている点だ。失業率は9%台に高止まりしており、ガソリン価格の上昇もあって個人消費は低迷している。
 背景には住宅バブル崩壊の後遺症がまだ癒えていないことがある。住宅価格はなお底入れしておらず、消費者は依然として借金の返済に追われている状態だ。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和は景気下支えに一定の役割を果たしたものの、経済のエンジンである消費を元通りにするほどの効果は出ていない。
 思い切った追加政策を打ち出しにくくなっているのも心配な点だ。財政赤字が膨らむ中で、財政支出拡大策は共和党の強い反対もあって難しくなっている。バーナンキFRB議長は追加的な量的緩和の可能性を示唆したが、実現は容易ではない。副作用もある量的緩和策には内外から強い批判があるためだ。
 世界をけん引してきた新興国の経済にもほころびが見えてきた。
 中国はなお9%台の高成長を持続しているが、食料品を中心とした物価上昇が深刻になっている。当局は利上げなどにより金融を一段と引き締める構えで、不動産部門などではその影響がすでに出始めている。
 課題は成長の急速な減速を招かずに経済を軟着陸させることができるかどうかである。地方政府や国有企業は借り入れを大幅に増やして道路などインフラ投資や工場建設を進めてきた。それだけに、金融を大幅に引き締めた場合の影響は大きなものになる可能性がある。
 インドやブラジルも中国と同様、インフレが最大の問題になっている。やはり金融引き締めに動いているものの、海外からの資金流入が止まらないためカネ余り状態が続いており、効果はいまひとつの状況だ。
回復に水さす円高傾向
 世界経済が不安定さを増す中で、金融市場ではリスク回避の動きも強まってきた。欧州単一通貨ユーロが売られやすくなっている一方、金など安全資産を買う動きが出ている。欧州情勢がさらに深刻化すれば、世界的に株安が進む恐れもある。
 日本経済は予想以上に早く震災から立ち直りつつあるが、電力不足の長期化懸念に加えて、世界からも逆風が吹いてくれば、回復持続シナリオは危うくなる。
 当面の心配は相対的には安心な通貨として円が買われ、円高が進みやすくなっていることだ。被災した工場が復旧し、輸出拡大の体制が整ってきただけに痛い。今後中国などアジアの新興国の経済減速が現実のものになれば、アジア依存を高める日本経済にとって大きな打撃になる。
 政府・日銀は当面、円相場の動向を注視していく必要がある。円高がさらに進んだ場合は市場介入も辞さない姿勢で臨むべきだ。復興事業を賄う第3次補正予算の編成は中身を精査しつつ、できるだけ早くする必要があるが、財源を決める際などには、世界経済の動向にも目を配ってほしい。

:2011:07/19/09:28  ++  第1部危機脱出の針路(1)「脱原発」漂流する経済(エネルギーを問う)

 福島第1原子力発電所の事故をきっかけに、日本をエネルギー不安が覆っている。政治の迷走も危機に拍車をかけている。成長につながる基盤を再設計するために、現実に即した冷静な議論が必要だ。(関連記事3面に)
 福島第1原発から約50キロメートル北の新地町。町長の加藤憲郎(64)は事故後、朝7時15分から防災無線で町の放射線量を放送するのが日課となった。
 「国や県の大まかな情報だけでは小さな町の住民は安心しない」と言う。先の見えぬ事故処理、広がる放射性物質による汚染……。原発への国民の不安は高まるばかりだ。
 100%安全というあり得ない前提に立って重大な事故を招いてしまった東京電力の原発。国民の信頼を取り戻すには、不測の事態が起こり得ることを踏まえ、安全を“鍛え直す”ことが必要だ。
 首相の菅直人(64)は浜岡原発の停止要請や突然のストレステスト指示を打ち出したが、場当たり的な手法はかえって不安をかき立てた。産業界も政治の迷走に振り回され、電力不足や電気料金の上昇懸念から、事業の先行きを見通せない。
 神戸市にある理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」。来年の本格稼働へ準備を急ぐが、今は「能力を最大限使うプログラムは流さない」(同研究所)。ネックは3万世帯分を超える電力消費量。世界一の「頭脳」が宝の持ち腐れになりかねない。
15%値上げも
 企業の不安を見透かしたように、海外からの工場誘致も活発になっている。「電気料金は日本の3分の1です」。台湾の行政院(内閣)経済建設委員会主任委員の劉憶如は8月末から、東京と大阪で経営者に進出を訴える。
 みずほコーポレート銀行の試算では、日本の鉄鋼業界が払う電気料金は年6553億円、電子部品業界では3842億円。現状でも韓国、台湾の2~3倍の料金は、原発が停止すれば、火力の燃料費増加で15%上昇するという。円高、法人税の高さなどに加え、競争条件はますます不利になる。三菱ケミカルホールディングス社長の小林喜光(64)は「日本が駄目なら外で稼ぐと腹を固めるしかない」と話す。
 当面の電力危機を克服したうえで、将来にわたって安全で安定し、しかも環境負荷が小さく安価なエネルギーを確保する――。最優先課題のはずだが、実のある議論が進まないのは、政府さえ原子力と火力の正確な発電コストを持たないのが一因だ。「最新」の数値は7年前の試算だ。
 日本経済研究センターは電力各社の有価証券報告書などから独自に発電コストを算出した。原発は1キロワット時あたり5・4~6・4円で7年前とほぼ同水準。5・7兆~20兆円と推計される福島原発事故の処理費用や賠償額を上乗せすると7・4~13・3円になる。
 経済産業省が2009年度のデータを基に試算した再生可能エネルギーのコストと比較すると、風力や地熱は、燃料高の影響を受ける火力に近づいている。太陽光は40円程度と依然割高だ。
 菅の言うような「原発のない日本」はどんな姿になるのか。
 10年度の原発による発電量2882億キロワット時をガス火力、太陽光で半分ずつ賄うと仮定する。日経センターの試算を基にすると、日本の発電コストは1・8倍の約16兆円に膨らむ。
 川崎市の臨海工業地帯に国内有数のメガソーラーが姿を現しつつある。東京電力初の大規模太陽光発電所。東京ドーム6つ分の土地にパネルを敷き詰めているが、出力は2万キロワットにすぎない。すぐそばの火力発電所はほぼ同じ敷地で200万キロワット。その差は100倍だ。
 米民間研究機関のブレークスルー研究所の試算では、原発を太陽光で代替するには、千葉県の面積に当たる5260平方キロメートルの土地と80兆円の建設費用が要る。太陽光が脚光を浴びがちだが、風力、地熱を含め、普及に向けて中長期の現実的な戦略が欠かせない。
産業壊す危険性
 政治経済学者の故村上泰亮は第1次石油危機後に著した「産業社会の病理」で、エネルギー構造の転換について「過渡期を乗り切るためのタイミングを誤れば、産業社会の精妙なマシンが崩壊してしまう危険を決して無視できない」と警鐘を鳴らした。
 目先と中長期の課題を混同したままの性急な「原発是非論」は、日本経済や国民生活の基盤を根底から壊しかねない。原発の安全性を高めつつ、次代のエネルギーを育てていく。英知を集め、危機をバネに変える戦略を描くときだ。=敬称略
(エネルギー問題研究班)
 東日本の大口需要家に15%の節電を義務付ける電力使用制限令。前回の発令は、第1次石油危機の翌年の1974年だった。
 石油危機は資源の少ない日本に省エネルギー革命を促した。国内総生産(GDP)あたりのエネルギー消費は10年で3分の2に低下。世界で群を抜く省エネ社会を実現した。当時75%だった石油依存度は、2008年時点で42%まで落ちている。
 だが、日本経済が負った傷も深かった。74年の消費者物価指数は前年比23%も上昇し、家計を圧迫した。50年代半ば以降、年間平均で約9%成長を続けていた実質経済成長率は、戦後初めてのマイナスに落ち込んだ。
 その後の日本は平均4%ほどの成長率にとどまる安定成長期に入った。日本経済が転換期を迎えた時期に、大きな影響を及ぼしたのが石油危機だった。
 それから約40年。日本はバブル経済崩壊後に低成長に移行。人口減に伴う需要縮小などによる転換期を迎える中で、再びエネルギー制約に見舞われた。石油危機後は鉄鋼などの素材から自動車、電機といった機械へと産業の主力が移った。しかし、現時点では今後の成長を担う産業をまだ見いだせていない。今回の危機への対応を誤れば、衰退への道をたどる恐れもある。

:2011:07/15/09:31  ++  「3年内に海外移転」4割――電力対策、過半が要望(社長100人アンケート)

円高懸念 景気持ち直し「年内」72%
 日本経済新聞社が14日まとめた「社長100人アンケート」で、約4割の経営者が円高の是正や税制の見直しが進まなければ3年以内に海外へ生産拠点などを移さざるを得ないと回答した。震災に伴う政策課題の棚上げと、エネルギー政策の迷走で電力不足問題が長期化する懸念から、国内生産が維持できなくなるとの危機感が広がっている。(関連記事11面、詳細を15日付日経産業新聞に)
 社長100人アンケートは国内主要企業の社長(会長、頭取など含む)を対象に四半期ごとに実施。今回は140社から回答を得た。国内制度や経営環境が現状のままなら、何らかの機能を海外に移転せざるを得なくなるとの答えが39・3%(55社)あった。
 海外シフトの対象を最大3つまで選んでもらったところ、最多は「主力ではない生産拠点」で20・0%。2番目は「一部の研究開発拠点」で17・1%になった。「一部の本社機能」「主力の生産拠点」との回答も10%台に達し、幅広い分野で海外流出が加速する可能性を示した。
 既に移転の動きはでており、東レは2013年稼働を目標に韓国に主力商品の一つである炭素繊維の工場を新設する。パナソニックは4月に公表した事業計画で調達・物流など一部本社機能をアジアにシフトする方針を掲げている。
 企業が国内拠点や収益力を維持・拡大するため、政府が早期に取り組むべき制度的な課題として、最も多く挙がったのは「電力不足解消策を含む総合的なエネルギー政策」で50・7%。「法人税率引き下げ」が36・4%、「環太平洋経済連携協定(TPP)への参加」が35%で続いた。菅直人首相がいったん優先課題としながら東日本大震災の影響などで棚上げした政策の着実な遂行を求めるとともに、原発再稼働などでの場当たり的な対応に対する不満がみえる。
 三井不動産の岩沙弘道会長は14日、不動産証券化協会の記者懇談会で「短兵急に原子力発電への依存度を減らし、原発を稼働させない方向にする菅首相の対応は非常に危うい」と批判。トヨタ自動車の豊田章男社長は13日の国内生産再編に伴う記者会見で「政府には海外メーカーと同じ土俵で戦える環境整備をお願いしたい」と求めた。
 国内景気の持ち直し時期を聞いたところ、「年内」との回答が72・7%だった。被災した工場などの復旧が予想以上のスピードで進んでいる。ただ、世界景気は「拡大しているがペースが鈍ってきた」との答えが49・3%にのぼり、慎重な姿勢も読み取れる。
 国内景気が持ち直す条件を3つ聞いたところ、最多は「電力不足解消への見通しが立つこと」(64・2%)、2番目は「世界経済の堅調な推移」(54・7%)だった。望ましい為替水準では52・9%が「1ドル85円以上95円未満」を選んだ。

:2011:07/13/09:50  ++  スマートフォンエコノミー(中)ジョブズ氏の予言――パソコン時代に終止符。

「パソコンはまもなくデジタルライフの主役でなくなる」。6月6日、米アップル最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ(56)は、米サンフランシスコで開いた新サービスの発表会で「ポストPC(パソコン)時代」の到来を告げた。
能力が大幅向上
 四半世紀前、パソコンを世に送り出したのは他ならぬジョブズだ。アップルを興し、現在のパソコンの原型とされる「マッキントッシュ」を1984年に発売した。以来、パソコンは常に人々のデジタルライフの中心にあった。
 だがスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の登場で状況が変わった。これまでパソコンでやってきたほとんどのことが、スマホでできるようになる。最新のスマホに入っているCPU(中央演算処理装置)の処理速度は2ギガヘルツ。10年前の大型汎用コンピューターの3倍だ。
 アップルが今秋に始める新サービス「iCloud(アイクラウド)」は、ネット経由でソフトや情報システムを利用する「クラウドコンピューティング」でスマホとインターネットを直結。今までパソコンに保存していた音楽、映像、ゲームのソフトはすべてクラウドに預けられ「パソコン抜き」が現実味を帯びる。
 再びサンフランシスコ。ステージ上のジョブズを食い入るように見つめる日本人がいた。国内でアップルのスマホ「iPhone」を販売するソフトバンク社長の孫正義(53)だ。病気療養中のジョブズが登壇すると聞き日本から駆け付けた。「また世界が変わる」。パソコンソフトの販売で財をなした孫もパソコン時代の終わりを予感している。
 孫はいま、仕事でパソコンを使わない。iPhoneと多機能携帯端末のiPad(アイパッド)で事足りるからだ。孫はグループ社員2万人にもスマホを支給し「脱パソコン」を促す。社員は自宅や出張先、電車の中の「すきま時間」にスマホで仕事をする。残業時間は全社平均で1日あたり32分減った。
部品、日本製4割
 パソコンからスマホへ。変化の波に乗ったのは日本の電子部品メーカーだ。旭化成はスマホの道案内機能などに欠かせない「電子コンパス」という部品で世界シェア8割。必要な電波信号を取り出す表面弾性波フィルターは村田製作所とTDKで世界市場の7割を占める。「スマホ部品の約4割は日本製」(野村総合研究所)とされる。
 乗り遅れたのが電機大手。「中核の液晶事業で4年連続で特別損失が出るというのはどういうことだ」。6月23日、シャープが大阪市内で開いた株主総会で株主が経営陣を問い詰めた。2008年度から11年度計画までの特損は計1000億円を超える。
 打開に向けシャープは液晶テレビの代名詞だった亀山工場(三重県亀山市)のパネル生産設備をスマホなどで使う中小型用に改造する。テレビ事業で3期連続の赤字が続くパナソニック社長の大坪文雄(65)は4月の事業説明会で「(投資判断など)見通しが極めて甘かった」と唇をかんだ。
 東芝、ソニー、日立製作所の3社は官民ファンドの産業革新機構から約2千億円の出資を受け、液晶パネル事業を統合する。「スマホ向けパネルでこれ以上遅れるわけにはいかない」との悲壮感が漂う。
 ジョブズは2度の手術を経て11年1月から3度目の休養に入っている。6月の発表会では舞台を上り下りする際に足元がふらつく場面もあった。だが希代の戦略家が描くスマホエコノミーの未来図は、四半世紀前と同じように日本を含む世界のIT、電機企業を翻弄している

:2011:07/08/10:12  ++  原発再稼働、国が方針転換、知事ら強く批判―経産相が辞意、時期は明言せず。

原子力発電所の安全宣言を撤回した菅直人首相の突然の方針転換に原発立地自治体の批判の声が強まってきた。7日午後、都内で開かれた全国知事会の原子力発電対策特別委員会では、原発再稼働を巡る閣内不一致に対する不満が相次いだ。佐賀県などと調整に動いていた海江田万里経済産業相は7日夕、記者団に対して「いずれ時期が来たら責任を取る」と述べ、改めて辞任する意向を示した。(関連記事3面に)
 全国知事会の会合には、原発立地県から青森、新潟、茨城、島根、佐賀の各知事が出席した。県議会中のため欠席した福井県の西川一誠知事はビデオメッセージを寄せ、全原発を対象に実施するストレステスト(耐性調査)について「立地地域への説明がない」と述べた。
 佐賀の古川康知事は「ストレステストが終わらなければ再稼働できないのか、(政府の)発言が人によって違う。見解が一致しないと信頼できない」と強調。島根の溝口善兵衛知事も「方針を決めたからには、テストの具体的な説明がないといけない」と話した。
 一方、海江田経産相は辞任の理由について「政治家は結果責任。全てのことを含めてだ」と述べた。ただ「今は仕事が山積みだから、これまで以上にしっかりやる」として時期の明言は避けた。
 原発の再稼働を巡る首相と経産相の不一致について、民主党の岡田克也幹事長は同日の記者会見で「(閣内の意思統一が)ちぐはぐと言われても仕方ない。本来なら3月、4月の段階で議論しておくことだ。今ごろになって出てきているのは釈然としない」と首相の姿勢に疑問を呈した。

:2011:06/22/09:34  ++  国会70日延長へ、首相退陣8月以降の公算――国政停滞は人災だ。

編集委員 西田睦美
 菅直人首相と民主党は一体何をやっているのか――。菅政権の惨状は目を覆うばかりである。
 首相の退陣時期が定まらず、21日に予定していた国会の会期延長は議決できなかった。野党には首相への不信感がまん延しており、会期末の22日に8月までの延長が決まっても、不毛な与野党対立が続くだけだろう。
ひたすら延命
 退陣時期の明示を拒む首相に、岡田克也幹事長ら党執行部が鈴をつけようとしてつけられないという極めて異常な展開になっている。
 執行部は赤字国債発行法案と、東日本大震災の復旧策を盛る小型の今年度第2次補正予算案の成立を花道に退陣を表明するよう首相に求めている。しかし首相は再生エネルギー特措法案の成立を条件に持ち出し、ポストへの執着を捨てない。
 政治の混迷を招いている最大の原因は、いったん退陣表明した首相が新たな政策課題を持ち出して、ひたすら延命を策していることにある。
 首相はここにきて急きょ最重要法案に据えた特措法案について「『菅の顔を見たくない』という人も国会にはいる。それならこの法案を通した方がいい」と意気軒高に語った。首相の挑発的発言はこれまでもしばしばあり、野党の反発を招いただけだった。野党との信頼関係を築けなかったのは、首相のこうした政治手法に起因する。
 自民、公明両党は特措法案に慎重姿勢を崩さず、成立のめどは立っていない。民主党内からは「次の世代に任せてほしい」との声も上がる。そもそもこの法案は、首相が「一定のめど」をつけると表明した、大震災からの復旧・復興にかかわるものではない。
 法案が成立するまで、首相はずっと居座るのか。あるいは否決を見越して「脱原発」を争点にした衆院解散に持ち込む腹づもりなのか。いずれも退陣表明した首相がとるべき道でないことは明らかだ。
 首相が退陣時期を明確にしなければ、延長国会でも野党の協力は得られず、法案審議の停滞は避けられまい。2012年度予算編成も、その執行に責任が持てない菅首相が手掛けるのは望ましくない。9月の日米首脳会談だけではなく、今年は首相訪中なども予定されているが、この状況が続けば首脳外交の準備も進まないだろう。
新体制を急げ
 退陣表明した首相の求心力が一気に低下するのは世の常だ。民主党内では増税への反対論が噴き出し、20日に予定していた社会保障と税の一体改革案の決定は先送りせざるを得なくなった。子ども手当の見直しをめぐる民主、自民、公明3党の政調会長協議も中断を余儀なくされた。
 石川県の谷本正憲知事は、首相が定期検査中の原子力発電所の安全性を確認したうえで再稼働を急ぐ方針を示したことについて「極めて気楽に言ったような感じを受けた」と不快感を示した。
 首相は特措法案にこだわる前に、海江田万里経済産業相任せにしないで、まず立地県の知事らに原発の再稼働への協力を求めるべきだろう。再生可能エネルギーを山頂にたとえ「原発推進という過去数十年の路線に再び戻ったという意味ではない」と、釈明している場合ではない。
 首相が提起した環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題など、次の政権に委ねざるを得ない重要課題は少なくない。次期首相選びを急いで、延長国会では与野党が協力できる新たな体制を築く必要がある。
 首相の居座りで国政が停滞する前代未聞の人災は、もういい加減にしてもらいたい。

:2011:06/21/08:39  ++  日本版GPS、活用本格化へ、日立やNEC、共同でシステム―高精度情報、幅広く。

日立製作所やNEC、JR北海道などは1メートル単位で位置情報を確認できる日本独自の衛星測位を使ったシステムの研究開発に乗り出す。鉄道運行や携帯電話などの技術も持ち寄り、高精度の測位情報を幅広い分野で応用できるようにする。原子力発電設備の輸出機運がしぼむなか、人工衛星を活用した社会インフラ輸出を官民一体で育てる。
 6月末をメドに経済産業省が立ち上げる研究会に民間から9社、2団体が参加。5年後をメドに新サービスの開発を目指す。NECや三菱電機といった衛星開発や地上インフラ設備にかかわる企業だけでなく、運輸や機械、物流など幅広い業種が参加。日立やJR北海道が持つ鉄道運行システムと組み合わせて、車両位置を細かく確認し事故を未然に防ぐシステムの開発に道を開く。
 農業機械を手掛けるコマツも参加し、場所ごとに肥料の種類を細かく変えるといった農業の自動化システムも研究。ホンダの技術を活用しカーナビの案内精度をさらに高めたり、車線のはみ出しやカーブ時の減速に警報を出すなど事故防止機能の充実も図る考えだ。
 衛星からの情報を使うシステムは人工衛星の製造・打ち上げのほか、地上で衛星からの情報を受け取る施設建設、位置情報を使う高度なインフラ設備の構築など波及効果が大きい。経産省などは2008年に4兆円規模だった市場が13年に約10兆円に拡大するとみる。
 次世代の全地球測位システム(GPS)は昨年9月に初号機を打ち上げた準天頂衛星を活用する。米国が運用するGPS衛星の補完・補強を目的に日本独自で開発する測位衛星で、日本の準天頂衛星は東南アジアやオーストラリアまでカバーする。3~4機を打ち上げれば24時間のサービス提供が可能。7機まで増えれば米国のGPS衛星などに依存しない自己完結型の測位衛星システムを構築できる。ただ2号機以降の衛星打ち上げについて具体的な計画がまとまるのはこれからだ。
 アジアでは測位衛星の打ち上げ競争が過熱。中国はすでに「北斗」の打ち上げを始め、インドでも開発が進む。アジアでの標準を中国などに奪われると、今後のインフラ輸出で日本が劣勢に立たされる可能性もある。各社は研究を急いで実用性の高さを証明。今後の準天頂衛星の打ち上げを軌道に乗せ、日本版GPSを実現したい考えだ。

:2011:06/21/08:14  ++  震災から100日、基本法成立、迅速復興、実現には壁―「特区」は検討進む。

財源など課題
 東日本大震災の発生から100日以上を経た20日、ようやく復興基本法が成立した。復興政策の企画立案と実施態勢の大枠は固まったが、復興財源を確保するための復興債の償還財源や、復興庁の制度設計などの重要案件は詰め切れず、今後の与野党協議がカギを握る。菅直人首相の退陣問題も絡み、復興政策の実現には多くの壁がある。(1面参照)
 政府は同法成立を受け、首相と全閣僚による復興対策本部を近く設置する。各省庁にまたがる案件を総合調整する「司令塔」の役割を担い、内閣官房に事務局を置く。被災自治体などとの窓口となる現地対策本部は岩手、宮城、福島の3県に設ける。
 ■3本部態勢 これにより、震災・原子力発電所事故に関連する政府の対策本部は(1)災害対策基本法に基づく緊急災害対策本部(2)原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策本部(3)復興対策本部――の3本部の態勢となる。
 基本法は復興構想会議(議長・五百旗頭真防衛大学校長)を、復興対策本部の下部組織として位置付けた。政府筋は「下旬にまとめる復興構想会議の第1次提言の重みが増す」と期待する。復興会議とは別に、原発事故の被災地の復興構想を練る有識者会議の新設に向け、人選を急ぐ。
 事務レベルで進む「復興特区」の検討に弾みがつく。被災自治体が復興計画をつくり、必要な規制緩和や税制優遇をする。津波被害を受けた地域の復興に向け、土地利用や開発許可の手続き緩和も検討している。自民、公明両党も前向きで、関連法案が国会に提出されれば成立する公算が大きい。
 一方「復興債」と「復興庁」は基本法では中身があいまいで、与野党協議の火種になる可能性がある。
 ■増税には抵抗感 復興債は「あらかじめ償還財源の道筋を明らかにする」と定めているが、具体策は先送りした。復興構想会議は第1次提言に消費税や所得税、法人税など「基幹税」の増税を盛り込むが、与野党には抵抗感がある。
 復興債は本格復興に向けた2011年度第3次補正予算案の財源になる。どうやって財源を確保するかを巡って、民自公3党間の調整が難航することも予想される。
 復興政策の企画立案から実施までを担う「復興庁」の制度設計は、復興本部事務局で進む。基本法は「可能な限り早い時期に法制上の措置を講じる」とうたっているが、新しい官庁を設置する時は各省庁が権限維持と人員確保で対立する場合も多かった。復興庁の設置法案の国会提出は来年の通常国会になるとの見方もある。その場合、遅すぎるという批判を浴びる可能性もある。
 ■2カ月遅れ 首相退陣を巡る与野党の駆け引きは続いている。民自公3党が協力して実行できる枠組みがなければ、基本法だけでは復興政策の迅速な実現は難しいのが実情だ。
 1995年の阪神大震災の際には発生から1カ月余りで復興基本法が成立した。今回はすでに2カ月遅れている。

:2011:06/21/08:11  ++  国産スパコン世界一を奪還、7年ぶり、理研・富士通の「京」。

理化学研究所と富士通は20日、共同で開発を進めている次世代スーパーコンピューター「京」(けい)が、同日公開された世界のスパコン性能ランキングで1位になったと発表した。日本勢が1位となったのは7年ぶり。スパコンは自動車部品の設計や新材料の開発などに威力を発揮し、世界一奪還は日本の産業競争力向上を後押しすると期待される。(関連記事12面に)
 スパコンの性能ランキング「TOP500」は米国の大学などが毎年6月と11月に発表し、今回が37回目。京は2012年度に完成予定だが、一部を稼働した性能試験で、1秒間に8162兆回の計算能力を達成した。前回1位で今回は2位だった中国の「天河1号A」の性能の3倍以上となった。日本のスパコンが世界1位になるのは、02~04年に首位だった海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」以来となった。
 スパコンの開発競争では、米IBMなども京とほぼ同じ性能の装置を開発中。11年の稼働を目指していたが開発が遅れ、京が首位となった。記者会見した理研の野依良治理事長は「世界に圧倒的な差をつけての1位だ。我が国の産業技術がいまだ健在であることの証しで大変うれしく思う」と話した。京は完成時には1秒間に1京(1兆の1万倍)回の計算ができる。
 京の開発経費は総額1120億円の見通し。09年の事業仕分けの際には、民主党の蓮舫参院議員(現・行政刷新相)が「なぜ世界1位を目指すのか、2位ではだめなのか」と質問して注目を集めた。予算削減が検討されたがノーベル賞学者らが猛反発して復活した。

:2011:06/17/09:58  ++  製造業追い込む電力不足を放置するな(社説)

定期検査中の原子力発電所が再稼働する見通しが立たず、電力需給の逼迫が全国に拡大しつつある。円高に加え電力不足が深刻になれば企業の海外生産移転が加速しかねない。
 中長期のエネルギー政策のなかで原発への依存度をどう考えるかは国民的な議論が要る。だが当面、経済への影響を抑えるには、検査を終えた原発で安全を確保できる場合は運転を再開する必要がある。政府や電力会社は原発の安全性判断の基準について早急に、地元自治体や住民に説明を尽くす必要がある。
 東京電力福島第1原発の事故と、政府による中部電力浜岡原発の停止要請で原発への不安が広がっている。3~4月に検査を終え運転再開予定だった関西電力などの原発が、自治体から安全性の説明が不十分とされ、再稼働を認められないでいる。
 夏場の電力不足の懸念から関電は企業や家庭に15%の節電を求めている。節電要請は北陸電力も決め、九州電力も検討している。
 電力不足が東電、東北電力や中部電管内以外にも波及する影響は産業界で大きい。東日本での生産減を西日本での増産で補う予定の企業は計画の抜本的見直しを強いられる。
 円高や高い法人税率に電力不足が加わり、国内生産を維持してきた企業が海外へ積極的に生産移管し始める可能性がある。トヨタ自動車からは「日本でものづくりを続ける限界を超えている」との声が出ている。
 国際協力銀行によると、日本企業の海外生産比率は2000年度の23%から10年度は31・8%に高まった。第一生命経済研究所の試算では海外生産比率が1%上がると製造業の就業者数が28万人減る。海外生産移転が加速すれば雇用不安が広がる。
 原発は電力供給の3割を占め、休止中の火力発電所の再稼働や太陽光などの自然エネルギーでは補いきれない。当面の電力不足の拡大を防ぐには原発を再稼働させるしかない。
 そのための地元への説明が現在は足りない。大地震や津波への備えは十分か、非常用電源などの対策で事故発生の危険をどれだけ減らせるのか。政府や電力会社は安全性判断の根拠となる基準などを丁寧に説明しなければならない。
 「15%」といった節電の数値目標がどんな根拠からか明確でなく、電力会社への不信感を招いているとの指摘もある。透明で丹念な情報開示が信頼を得る第一歩だ。
 このままでは1年以内に国内で54ある原発がすべて止まる。経済も国民生活も影響は甚大だ。政府と電力会社は危機感を強めてほしい。

:2011:06/13/10:21  ++  新中国へ生みの苦しみ(けいざい解読)

インフレに不動産バブルに10%近い成長率――。中国経済は相変わらず過熱退治と減速懸念の間で揺れているように見えるが、実は根底で先の見えない変化が始まりつつある。
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 中国株の上海総合指数は4月に3000を超えてから下がり始め、最近は2700台で低迷している。中国の証券会社に聞くと「金融引き締めのせい」。
 足元はそれで説明がつく。ただ2007年秋に6000を超えた上海指数は世界同時不況で1600台に落ちた後、3000を超すとはじき返され続けている。株価が景気の先行指標なら、一貫してさえない指数は何を示すのか。
 社会には奇妙なムードが漂う。「共産党がなければ新しい中国はない」。5月上旬、内陸の中核都市、重慶の大学で学生の歌声が響いた。毛沢東時代に歌われた革命の歌である「紅歌」だ。キャンペーンを進めているのは重慶市共産党委員会の薄熙来書記。来秋の党大会で党の中枢に入ると目されている一人だ。
 「紅い重慶」の動向は全中国の注目を集めている。昨年11月には大学生が農民と寝食を共にして働き、工場で汗を流し、軍隊で訓練する制度を始めると重慶市政府が発表した。時代錯誤にみえるこうした動きが必ずしも猛反発を受けないのは、党の圧力のせいだけではない。庶民に広がる「昔は貧しくても平等だった」という思いがある。
 中国はリーマン・ショック後に経済規模で日本を抜き、一段と存在感を強めた。だが巨額の景気対策は格差を増幅し、不平等な社会の実態をあからさまにした。2ケタ近い高成長を続ける国が、年5%前後の物価上昇に神経をとがらすのも、庶民の不満の高まり抜きには理解しにくい。
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 一方でいくら昔が懐かしくても、計画経済に戻れるわけではない。
 中国人民銀行(中央銀行)は今年4月から「社会融資総量」という指標を公表し始めた。一定期間に社会に供給された資金の総額と内訳を指す指標で、1~3月は融資の比率が全体の約5割にとどまった。
 かつては大半が融資だった。代わって増えたのは株式や社債、保険などを通じたマネーだ。人民銀の幹部は「融資量だけで金融と経済の関係を示すことはできなくなった」と強調する。行政命令で融資を増減させるだけでは経済をコントロールしにくくなる。
 中国はおよそ10年ごとに大きな節目を迎えてきた。1989年の天安門事件で国際的に孤立したが、92年の〓小平の南巡講話で市場経済へカジを切った。01年には世界貿易機関(WTO)に加盟した。「世界の工場」が姿を現した。
 さらに10年。ファンネックス・アセット・マネジメント(東京・千代田)の肖敏捷チーフ・エコノミストは株価の低迷について「人々が興奮するような明るい材料がない。中国は次の時代への生みの苦しみの中にある」と語る。
 課題ははっきりしている。平等な社会、効率的で公平な経済を目指す。「安くて豊富な労働力」は過去のものになり、成長率さえ高ければよしとする時代は終わりつつある。中国と切り離せなくなった世界経済もまた、中国の歴史的な変化の影響を免れない。

:2011:06/13/10:05  ++  家庭充電式ハイブリッド車、スズキ、13年投入。

スズキは家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)を2013年をメドに市場に投入する。小型・高出力のリチウムイオン電池を搭載。電気だけで30キロメートル程度走行でき、その後はガソリンエンジンを発電機代わりに使う。PHVはトヨタ自動車、ホンダなどが12年に発売する予定。トヨタが価格を300万円程度に設定する一方、スズキは200万円未満に抑え、割安感を武器に拡販する。
 同社の主力小型車「スイフト」をベースに独自開発する。価格はガソリン車のスイフトに比べて50万円ほど高い水準。まず国内で年数千台の販売を目指し、将来は輸出も計画している。
 電気をエンジンの補助として使う通常のハイブリッド車に対し、PHVは電気自動車(EV)と同様に電気だけで一定距離を走れる。EVのように大量の高性能電池を積まずに済み、価格を抑えながらガソリン消費量を減らす実用的なエコカーとして期待されている。
 通勤や通学に自動車を使う人の6割は1日の走行距離が20キロメートル未満とされる。スズキは電気だけで30キロメートル走れば実用性は高いとみている。

:2011:06/08/09:07  ++  全原発、来春停止の可能性、検査後の稼働難航―再開の是非、国に責任。

原子力発電所が定期検査に入ったまま再稼働できないという状況に陥っている。安全性について地元自治体の理解が得られないためで、このままでは来春にも国内54基の全原発が止まる。電力不足が全国に広がりかねず、早急な対策が必要だ。(関連記事4面に)
 ■負担増、年3兆円超も 今年7月、福井県にある関西電力の高浜、大飯両原発で1基ずつが検査に入る。停止中の同社の原発は全11基中6基に上り、今夏の最大需要見込みに対し、供給力は約10万キロワット不足する計算だ。電力不足は東日本だけの問題ではない。
 全54基が止まれば、来夏には全国各地で電力制限の実施に追い込まれるのは必至だ。海江田万里経済産業相が7日明らかにした試算では、全基停止し、火力発電で代替した場合、燃料費の負担増は年3兆円以上になる。
 原発は13カ月運転するごとに検査が義務づけられている。しかし、再稼働の前提としている地元県知事などの同意が得られない。
 「浜岡ショック」が地元の不安を決定的にした。菅直人首相の中部電力浜岡原発の停止要請は「巨大地震の差し迫った危険」が理由だが、浜岡は経済産業省原子力安全・保安院が指示した地震・津波の短期対策を実施ずみだ。基準を満たしたのに停止という分かりにくさが混乱を招いた。
 経産省は7日、短期対策に続き、全電源を失った場合の対応なども盛り込んだ追加策を発表。これで自治体の理解を得たい考えで、海江田経産相は「私が出向いて説明する」と言う。しかし問題の根本は原発の稼働という重大な決断を事実上、自治体に押しつけている構図にある。福島の事故を踏まえた説得力のある安全基準を基に、国の責任で運転の是非を最終判断する仕組みが要る。
 原発不信は中長期のエネルギー政策も揺さぶる。政府が昨年まとめた「エネルギー基本計画」では、発電量に占める原子力の割合を2009年の3割弱から30年に5割に高めるはずだったが、実現は厳しくなった。
 代わりに菅首相が打ち出したのが自然エネルギーと省エネルギーの2本柱。「20年代の早い時期に自然エネルギーの割合を20%(09年は9%)にする」としたが、有望とされる太陽光の発電コストは火力の数倍。今のままでは電気料金は上がり、企業や家計の負担増を通じ日本経済の成長力を損ないかねない。大幅な省エネも、利用者の消費電力を常に把握するスマートグリッドなど技術的な飛躍が不可欠だ。
 ■政策柔軟に 技術革新とコスト削減を進めるには、電力会社が発電市場をほぼ独占する現状を改め、多くの企業を競わせる仕組みが欠かせない。送配電については公平な電力供給など公益性にも配慮する必要があり、産業界でも「発電と送電の分離を含めた柔軟な政策を検討すべきだ」との声が出ている。
 政府はこうした対応を進める一方、温暖化ガスの排出削減に向けて火力発電への依存を抑えるため、「安全性を高めたうえで、原発を維持する」(菅首相)という方針だ。
 原子力政策の悩みは各国共通の課題だ。22年に全17基を止めると決めたドイツでも電力が足りなければ原発の発電比率が7割超のフランスから買うとみられる。欧州全体では、原子力依存度は日本や米国と大差がない。
 世界の潮流に目配りしつつ、短期、中長期のエネルギー戦略をどうするか。冷静で活発な議論が要る。

:2011:06/08/09:04  ++  グループ人材、世界の適所に、日立、900社の人事共有―海外受注、機動的に。

日立製作所は内外の連結子会社約900社からプロジェクトごとに最適の人材を集める人事制度を導入する。2011年度中をメドに、世界に約36万人いるグループ従業員の人材データベースをつくり、管理職以上の評価基準を統一する。新興国のインフラ事業で現地人材を有効活用している米ゼネラル・エレクトリック(GE)などに対抗するため、グループ全体から機動的に人材を登用。「連結人材」の活用で国際競争力を高める。
 日立には日立金属などの上場子会社18社(うち3社が海外)を含め国内に351社、海外に562社、計913社の連結対象子会社がある。新制度では日立本体や子会社で働く約36万人の中から適材を選び、海外のインフラ事業などに投入できるようにする。
 環境配慮型都市(スマートシティー)の開発など今後の成長が見込めるインフラ事業では、電力、IT(情報技術)、素材のほか、法務、各国政府と交渉する渉外など幅広い分野の専門家が必要とされる。新興国などで受注を競うGEや独シーメンスなどは現地の人材を有効活用している。日立も新制度で組織の機動力を高める。
 日立は連結営業利益の約3割を日立建機、日立金属、日立化成工業の上場3社に依存。これらの子会社は独立性が強く、組織や国境を越えた適材適所の人材登用が難しかった。
 こうした垣根を取り払うため、日立は7月1日付で東京本社に「グローバル人財本部」を新設。連結対象子会社の全従業員36万人を対象とする人事データベースを構築する。所属部署、職位、資格などの情報を集約する。11年度中に全員分の入力を終える。
 世界で5万~6万人のマネジャー(課長相当職)以上の管理職は、職務権限や範囲に応じて世界共通の格付けを導入する。等級数は20前後となる見込み。グループ各社で等級制度を給与などの処遇に連動させることも検討する。
 日立は10年4月までに日立マクセルなど上場子会社5社を完全子会社化したが、その他の上場子会社や海外子会社の人材活用は十分に進んでいなかった。
 日立は10年度に43%だった海外売上高比率を12年度には50%超とする計画。中国やインド、南アフリカなど11カ国・地域に力を入れ、2012年度に同地域での売上高を10年度比25%増の2兆5000億円に引き上げる。
 そのためには人材のグローバル化が不可欠と見ており、新制度で連結人材の活用を急ぐ。

:2011:06/01/11:02  ++  第3部世界が見つめる(2)「トモダチ作戦」日米に絆(新しい日本へ)

「内向き」の誘惑を断て
 「日本の未来」。5月24日、政治家らが集まり、こう題した公聴会を開いた。東日本大震災後の日本の針路を議論するためだ。主催したのは米国の下院議員。場所も東京ではなくワシントンだ。
 そこで聞かれたのは、日本が内向きにならないか、心配する声だった。「日本が世界で指導力を発揮することが、米国の利益になる」。元国務副次官補ランディー・シュライバー(44)はこう発言。元ホワイトハウス高官のマイケル・グリーン(49)も「太平洋地域で何かしようとすれば、同盟国の日本抜きに何も進められない」と訴えた。
 日本では復興の道筋すら定まらないのに、米国が「日本の未来」を熱心に研究するのには理由がある。中国の影響力が強まるなか、日本が引きこもったら、アジアのパワーバランスが揺らぐからだ。震災直後は遠慮もあったが、最近はそうした懸念を日本に直言するようになった。
対中戦略に役割
 「日本は復興に集中し、内向きになっているのではないかと見られている。そんな誤った印象をぬぐい去ることが大切だ」。国務副次官補のジョセフ・ドノバンは5月20日、訪米した前外相の前原誠司(49)にこう語った。
 さらに念押ししたのが、大統領のバラク・オバマ(49)だった。「強い日本であることが重要だ」。26日に仏ドービルで開いた日米首脳会談で首相の菅直人(64)に覚悟を迫った。
 中国の急速な軍拡には、他のアジア諸国も懸念を深めている。朝鮮半島の行方は不透明なままだ。これらに対処できるのは日本との同盟強化しかない――。米国の戦略は明解だ。
 こうした問題意識を抱いているのは米国だけではない。オーストラリアは震災直後、保有する4機のうち3機の大型輸送機C17を日本に派遣。4月には首相のジュリア・ギラード(49)が他の首脳に先がけ、被災地入りした。中国をにらみ、日米同盟と連携を強めたいという明確なメッセージを日本に送った。
 こうした動きをにらみ、中国首脳は対日改善の歯車を回す。
アジア安定左右
 「私がお見舞いに来たのは、中国人民の思い、支持を十分に伝えたかったからです」。中国首相の温家宝(68)は5月21日、原発事故に見舞われた福島県でこう語った。
 日本が福島訪問を打診した当初は、安全面などから中国の事務方に慎重論が強く、色よい反応は返ってこなかった。だが、この話を聞いた温が押し切り、日中韓首脳の福島入りが実現した。
 背景には、国内安定のため、反日感情を鎮めたい思惑もある。だが、視線の先にあるのは、震災で求心力を取り戻している日米同盟の姿だ。日本との対立を和らげなければ、同盟の矛先は中国に向かう。日中外交筋は「中国首脳にはこんな心理が働いている」とみる。
 とはいえ、国益が激しくぶつかる外交の現実が簡単に変わるわけではない。先月22日の日中外相会談では、尖閣諸島をめぐる中国側の姿勢に変化はなかった。
 ロシアも副首相のセルゲイ・イワノフ(58)が北方領土を訪れた。日本からの反対には「3、4度来ているが、文句を言われたのは初めてだ」などと気にとめない。「震災への同情と領土問題は別。そんな立場を日本に知らせる狙いだ」。日ロ関係筋はこう解説する。
 米軍は自衛隊との被災地支援をトモダチ作戦と名づけた。震災下で芽生えた「友情」を育て、同盟の立て直しにつなげられるか。その成否は日本の対中、対ロ外交の行方だけでなく、アジアの安定も左右する。

:2011:06/01/10:57  ++  第3部世界が見つめる(1)「民高政低」マネーの警告(新しい日本へ)

アレクサンダー・ローパーズ(52)がニューヨークから東京に飛んできたのは東日本大震災から2カ月がたった5月11日。2000億円規模の資産を運用する米ヘッジファンド、アトランティック・インベストメント・マネジメントの社長だ。
底力への期待感
 訪日の目的は「日本株式会社」の震災後を探ること。機械、化学、サービス……。同僚と手分けし、3日で20社を訪問したローパーズは「勇気づけられた」と満足げに帰国した。収益が回復する手応えを感じたのだ。
 日本株の投資歴は7年。しかも震災の翌週は買い増した。3月10日に約1万400円だった日経平均株価が15日には8600円まで急落。魅力的な企業の株が次々と格安で手に入った。
 同社だけではない。国内投資家とは逆に、外国人は日本株を買い続けた。買い越しは先週まで29週連続に及ぶ。
 日本を襲った未曽有の危機。だが海外マネーが期待したのは、日本の底力だった。
 米ボストン。ウォール街に大量の人材を送り込むハーバード・ビジネス・スクール(HBS)には「逆境に強い日本」の証拠があふれている。
 3月15日。イノベーション(技術革新)が専門の准教授、トム・ニコラス(39)は、HBSのウェブサイトに論評を寄せた。1923年の関東大震災の後、日本では特許登録が3年で7割も増え、復興を支えたという分析だ。「今回も日本は復活する」と念を押した。
 HBSの図書館には、当時のウォール街が日本をどう見ていたのかを示す資料が残っている。「4年で2度の危機を克服したまれな国だ」。27年10月に訪日したJPモルガン首脳陣の見聞記。同年春の昭和金融恐慌も、最悪期を終えていた。
「日本株離れ」も
 歴史はすでに、繰り返しつつある。例えば、サプライチェーン(供給網)の寸断。いま、連日表面化しているのは、生産正常化の前倒しを重ねるトヨタ自動車など企業の踏ん張りだ。
 ただ、海外マネーの期待が的中したとはまだいえない。メリルリンチ日本証券のチーフ株式ストラテジスト、菊地正俊(48)は、16日から訪れた香港とシンガポールで変調に接した。投資家の口から「もう日本株を買う気はない」ということばが漏れ始めたのだ。
 スピード感のある民間とは裏腹にいまだに指導力を発揮できない政府の対応が理由だ。「復興需要は本当に生じるのか」。菊地が聞かされたのは、第2次補正予算編成の遅れなど「民高政低」への不信感だった。
 そして原発への対応。「思考過程がブラックボックス」。9日には、浜岡原発の操業停止を突然求めた政府に日本経団連の会長、米倉弘昌(74)が業を煮やした。「読めない政策」では企業も投資家も萎縮してしまう。
 日本に歩みを止める余裕はない。リーマン・ショックから3年が過ぎ、世界は一足先に危機から抜け出しつつある。
 「出口への重要な一里塚だ」。米財務長官のティモシー・ガイトナー(49)は24日声明を出した。2008年に国有化した保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)株の売り出しだ。6月には、米連邦準備理事会(FRB)も量的緩和を終える。
 歴史が示すとおり、日本は国難を機会に変えるのか。それとも世界の成長から取り残されるのか。グローバル化した市場は、真っ先にその結果を映し出す。

:2011:05/30/10:14  ++  新種ウイルス1.5秒に1つ、サイバー攻撃を防げ、利用者20億人の脅威(@ネット)

世界のインターネット人口は20億人。パソコン一つでどこからでもつながれるサイバー空間を訪れるのは善意の利用者ばかりではない。企業や政府の情報システムを狙うサイバー攻撃は頻度と悪質さを増している。
 セキュリティーソフト大手トレンドマイクロによると、2010年に見つかった新種のコンピューターウイルスは2千万種類。1・5秒に1つがばらまかれた計算だ。
 海外では100ドル(約8千円)も出せばパソコンや高機能携帯電話(スマートフォン)が買える。機器の価格が急降下するデジタルデフレで世界のネット人口は爆発的に増え、中東・北アフリカではネットが民主化運動の推進力となった。
 一方でネット人口の爆発はいつ、誰が、どこからサイバー攻撃を仕掛けてくるか分からない状況も生んだ。4月にゲームなどのオンラインサービスから1億人の個人情報が流出したソニーの事件も、誰の仕業かまだはっきりしない。
 だがその伏線とされる事件がある。ソニーは1月、ある米国人の若者を知的財産権の侵害で提訴した。名前はジョージ・ホッツ(21)。ソニーのゲーム機に関する情報を勝手にネットに公開し、海賊ソフトの利用を可能にしたからだ。
「面白いパズル」
 ホッツは07年、17歳でアップルのスマートフォン「iPhone」のセキュリティーを破った「天才ハッカー」だ。
 ハッカーとはコンピューターに習熟し、企業や政府の枠に縛られずプログラミングなどの技術を追求する人々を指す。「ジェイルブレイク(ろう破り)」と称して企業の情報システムに侵入することもあるが、システムの欠陥を企業に教えることもある。
 ホッツとソニーは3月に和解したが、一部のハッカーが「ソニーは自由な技術の追求を妨げた」と反発してサイバー攻撃を始めたとされる。
 アップルと並ぶ米IT(情報技術)の雄、グーグルも標的になっている。10年夏ごろから、同社が開発したスマートフォン向け基本ソフト「アンドロイド」を狙うウイルスが出回り始めた。
 世界のセキュリティーソフト会社が防御策の開発を急ぐ中、日本では1月に技術者が自主的にウイルスを見張る「Androidセキュリティ部」を立ち上げた。IT企業のプロなど約180人のメンバーが認めたリーダーの丹羽直也は16歳。灘高校の2年生だ。
 丹羽はアンドロイドの設計図を分析して弱点を見つけ出し、メンバーと安全対策を練る。「学校の勉強よりおもしろい」。ホッツと丹羽に共通するのは知的好奇心だ。生まれたときからデジタル機器に囲まれ、コンピューター言語を母国語のように操る「デジタルネーティブ世代」にとって、企業がつくった堅固なセキュリティーは「面白いパズル」だ。
 ハッカーたちは難解なパズルを解いて有名になろうと腕を競う。個人が趣味でゲーム機などのセキュリティーを破っても違法にはならないが、パズルを解く技能は犯罪につながる危険もある。
海外原発も標的
 航空自衛隊の情報セキュリティー担当から民間の研究所に転じた名和利男(40)は「ハッカーの攻撃手段は年々巧妙・悪質になっている」と警告する。10年6月にはイランの原子力発電所の制御システムを狙ったとみられるウイルスが発見された。大企業の機密も常に狙われている。
 「ネットのセキュリティー確保は政府と社会の義務だ」。米大統領のオバマ(49)は5月半ば、サイバー攻撃から国民を守る対策を打ち出した。
 リスクは増したが、ここまで浸透したネットに背を向けるのは現実的でない。米通信機器大手のシスコシステムズは世界7万人の社員のスマートフォンを会社の情報システムと結ぶ。「社員が使いやすい機器を『持ち込むな』といっても始まらない」(日本法人社長の平井康文=50)。代わりに様々な機種のスマートフォンを会社で一元管理する技術の開発に挑む。
 セキュリティー機器開発のネットエージェント(東京)は「ハッカーコンテスト」で新人を選ぶ。サーバーへの侵入時間や手段が選考ポイントだ。社長の杉浦隆幸(36)は「採用したのは世界レベルのハッカー。社業に欠かせない」と話す。
 どんな堅固なシステムも侵入される可能性はある。企業はそのリスクを想定してネットを使いこなすしかない。

:2011:05/27/10:06  ++  節電が変える家計と企業(下)200万人の平日ホリデー――早朝・夕方にも新市場。

自動車業界で働く全国の約60万人、家族も含めるとざっと200万人にとって、今年の7~9月は土・日が「平日」となり、木・金が「休日」となる。静岡県西部のゴルフ場は「週末に集中していた需要が散らばる。新規客を開拓したい」と歓迎する。
 スポーツクラブ「ホリデイスポーツクラブ」を全国で43店運営する東祥(愛知県安城市)は自動車産業が集積する地域で、週末会員が木・金にも利用できるようにする方向で検討に入った。トヨタ自動車の地盤である愛知県や、富士重工業の工場がある群馬県太田市などを想定している。
 NTTドコモは東京電力管内で月・火に、日本ガイシは火・水、日立製作所も平日の2日を休みにするなど、今夏は「平日が閑散期」という常識が覆る。
開店時間前倒し
 逆に週末に法人需要が高まる可能性もある。福岡県内にあるトヨタと日産自動車の工場を営業地域に抱えるタクシー最大手、第一交通産業(北九州市)は週末のタクシー配車を増やす方向で検討する。
 ソニーやリコー、東京証券取引所などは始業と終業時刻を前倒しするサマータイムを導入する。会社員の出勤は早まり、早朝に新たな市場が生まれる。
 日中はカフェ、夜はバーを営業する「プロント」は6月から順次、首都圏のオフィス街にある80店で開店時間を今より30分早める。竹村典彦社長は「家庭の朝食時間の前に家を出る人が増えるのでは」と読む。
 始発時間を午前4時台に繰り上げる方向で検討する東京急行電鉄。日中は使用電力の15%削減に向け運行本数を減らすが、朝は早く出勤する会社員を支援する。最寄り駅までの足を確保するため東急バスの始発も併せて早める見通しだ。
 3月末からサマータイムを導入した森永乳業。本社(東京・港)などで働く約500人の社員が従来より1時間早い午前8時に出社し、まだ日が高い午後4時半に退社する。ある女性社員(25)は「夕方から百貨店巡りをしたり、社内の仲間で飲みに行ったりできる。時間を有効に使えるようになった」と話す。アフター5ならぬ「アフター4」に商機が潜む。
 飲食店運営の際コーポレーション(東京・目黒)は都内の居酒屋数店舗で、ランチタイムの後の中休みをやめ、昼から夜までの通し営業を始めた。サマータイムが広がりそうなオフィス街に立地する店での実施拡大も視野に入れる。
土日の保育課題
 飲食店情報サイトを運営するぐるなびは6月中にも、平日の昼間や夕方に来店を促す優待クーポンを発行する。「平日の夜や土日に偏っていた来店客が分散しチャンスが広がる」(同社)
 ただ「休日の平日化」は働く人の悩みも伴う。ヤマハ発動機で働く浜松市在住の女性(31)は4月に育児休暇から復帰したばかり。「夫の仕事も自動車関連。どちらかが週末に有給を取って子どもの面倒を見ないと……」と困惑する。
 同市は土日の保育需要について緊急調査を始めた。週末保育を拡大する計画だが「職員の確保が難しい」(保育課)。一方、中部地方で55カ所の保育所を運営するトットメイト(名古屋市)は人員を増やして週末の保育や保育士派遣に対応する予定だ。
 第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「生活変化に合ったサービスを迅速に提供できるかで企業の優劣は分かれる。消費環境は厳しいが、こうした企業努力でマイナスは軽減できる」と指摘する。節電は家計にも企業にも発想の転換を迫っている。

:2011:05/27/10:05  ++  節電が変える家計と企業(上)電力不足、全国に特需――「省エネ消費」惜しまず。

日本は今年、いつもより暑い夏を迎える。電力不足に対応する節電が全国に広がるためだ。自動車業界は土・日に操業し木・金に休む。サマータイムを取り入れる企業も出てきた。働き方は変わり、家計は省エネに知恵を絞る。
高まる環境意識
 東京都葛飾区の主婦、冨田静江さん(67)は東日本大震災後、節電優先の家計に切り替えた。ためていたエコポイントなどを利用し発光ダイオード(LED)電球を7個購入。居間やトイレなどの電球を付け替えたほか、「夫婦で同じ部屋に居るようにしている」。2カ月間の電気代は震災前から1080円減った。
 東京電力福島第1原子力発電所の事故に端を発した電力不足。政府は今夏、東電と東北電力管内の企業や家庭に一律15%の節電を求めるが、節電意識は全国に浸透し始めた。
 エコポイントが3月に終了し、その反動減が予想された家電販売が4月以降、節電による特需に沸く。日本電機工業会が25日発表した4月のエアコン出荷台数は8割増。扇風機は2・4倍に膨らんだ。
 ヨドバシカメラ新宿西口本店では扇風機の販売台数が3倍近く増え、「1万円を超える機種で品切れも出ている」。政府が「エアコンに比べ消費電力を5割減らせる」と示してから動きは加速。エアコンも10万円以下の機種が売れるこの時期に、今年は20万円前後の省エネ性能の高い機種が売れているという。
 中部地区が地盤の家電量販店、エイデンでは「中部電力が浜岡原発の停止を決めてから節電家電の販売が伸び始めた」。大手のケーズホールディングスでは5月、九州地方の全店売上高が前年同期比43%増と、関東地方の3割増を上回る。九州電力が15%の節電を求めたのがきっかけだ。テレビ通販大手、ジャパネットたかた(長崎県佐世保市)の高田明社長は「消費者の環境意識が一気に深まった」と見る。
メーカーも知恵
 「節電に応える製品を出せないか」。東芝デジタルプロダクツ&サービス社の大角正明社長は3月末に指示を出した。通常は半年かかる開発期間を短縮し、7月に発売するのはバッテリー内蔵型の液晶テレビ。ボタンを押せば電源を家庭用コンセントから内蔵バッテリーに切り替えられる。
 節電優先の消費は売れ筋や買い物する場所にも変化をもたらす。例えば冷蔵庫の開閉時に冷気が外部に漏れるのを防ぐ「冷蔵庫カーテン」。イトーヨーカ堂では震災前にはほとんど売れていなかったが、今や週に1000個も売れる。高層マンションの販売現場では「暑さへの質問が増えている。ガラスの性能などが販売のポイントになっている」(住友不動産)。
 高額品などの販売不振で低迷する百貨店。電車などに乗って出かける都心店に比べ、住宅街に近い郊外店は堅調だ。伊勢丹では新宿本店(東京・新宿)の4月の売上高が前年同月比2・9%減だったのに対し、立川店(東京都立川市)は3・7%増えた。
 イオンの総合スーパーも4月は前年並みに回復した。特に買い物時間を前倒しする動きが目立ち、午前中の売上高は2桁増だ。売れ筋は夏に備えた機能性肌着やクールビズ衣料、冷却シートなど。岡田元也社長は「消費者はできるだけ自宅近くで買い物を済まそうとしている」と指摘する。
 個人消費は「このところ弱い動きがみられる」(5月の月例経済報告)。だが大震災を境に日本人の生活は一変した。4月の家庭向け電力需要は前年同月比4・4%減と16カ月ぶりのマイナス。今夏の15%削減を目指して「節電消費」は勢いを増す。従来のものさしでは計れない消費スタイルが生まれつつある。

:2011:05/25/09:20  ++  ASEAN各国、強気の対中外交、東アジアサミット、米ロ加え圧力、領有権でけん制

【ジャカルタ=野沢康二】東南アジア諸国連合(ASEAN)が、中国に対して強気の外交姿勢を取り始めた。南シナ海の島々の領有権問題を巡り、首脳会議などで中国の動きをけん制。経済面でも対中貿易赤字拡大を受け、一部加盟国では中国との自由貿易協定(FTA)の見直し論もくすぶる。11月の東アジア首脳会議(サミット)には米国とロシアを初めて迎え、対中圧力を高めようとしている。
 「南シナ海問題はASEANと中国で頻繁に協議すれば解決できる」。20日、ASEANと中国の国防相による朝食会でASEAN議長国インドネシアのプルノモ国防相が強調。「南シナ海問題は2国間で処理すべきだ」との立場を説明しようとASEAN国防相会議に合わせて乗り込んだ中国の梁光烈国防相に冷や水を浴びせた。
 前日のASEAN国防相会議では、中国とASEANが紛争の平和的解決などに向け、法的拘束力を持つ「行動規範」作りを始めるべきとの共同宣言を採択した。5月上旬のASEAN首脳会議でも同様の議長声明をまとめたが、今回国防相会議として初めて「行動規範」作りを盛り込んだ。
 南シナ海の南沙諸島などの領有権はベトナム、フィリピンなどASEAN4カ国と中国、台湾が争う。行動規範作りはベトナムがかねて主張。紛争当事国でなく、ASEAN域内での影響力も大きいインドネシアが議長国として後押ししたことで今回実現した格好だ。
 経済面でも、中・ASEANのFTAで大幅な関税撤廃が行われた結果、対中依存への警戒感が出てきた。機械部品などを中国から輸入するベトナムでは2010年の貿易赤字全体に対する対中分の割合が約9割に達した。
 インドネシアも繊維製品などの流入で、10年の対中赤字が前年比88%増の47億ドル(約3800億円)へ急増。中国に対し、一部品目の関税引き下げ撤回を認めるよう要求している。
 中国以外とのFTA交渉も進み始めた。シンガポール、マレーシアはそれぞれ欧州連合(EU)と交渉開始。EUはベトナムとも年内にも本交渉入りする。シンガポール、マレーシアは環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の参加国でもある。
 米ロが東アジアサミットに初参加するのも「ASEAN経済との関係強化」(ロシアのイワノフ駐インドネシア大使)が理由の1つ。サミットでも安保などを主要議題にして中国けん制を狙う。
 ただ加盟国も一枚岩ではない。外交や経済で対中依存度が高いカンボジアやミャンマーは立場が異なる。首脳会議の議長声明には「領有権争いは2国間か関係国間で対処」と中国に配慮する文言が盛り込まれていたが、ベトナムなどの抗議で3日後に削られた。

:2011:05/25/09:13  ++  生活保護、自立支援に軸、厚労省、NPOなど連携拡大。

 厚生労働省は生活保護制度の見直しに着手した。生活保護の受給者は約200万人に急増しているため、自立を促すための仕組みを作る。具体的にはハローワークと市町村が連携し、受給者の就労を後押しする。膨張が続く保護費については不正受給があるとみて適正化を検討する。
 生活保護受給者は2月時点で200万人を突破したとみられ、過去最多だった終戦直後に迫る勢いだ。特に金融危機以降は受給者が急増している。
 厚労省は現在の制度を自立を促すものに転換する必要があると判断。ハローワークと市町村の福祉事務所が連携するほか、非営利組織(NPO)の力を借りて就労を支援することを検討する。
 一部の都市部では最低賃金や基礎年金より保護費の方が高く、「就労を阻害している」との批判が多いことから、基準について検証を進める。厚労省は24日、社会保障審議会を開き、生活保護基準の見直しに向けた本格議論を始めた。
 年々膨らむ医療扶助では、不正受給を排除することで無駄を省く。不必要な医療を受給者に受けさせる貧困ビジネスが問題になっているので、悪徳業者を排除する。生活保護世帯は医療費の自己負担がないため、1人当たりの受診回数が多い傾向がある。電子レセプト(診療報酬明細書)を使って分析を進め、医療費を適正化する。
 30日には実務を担う地方自治体と制度見直しを視野に入れた協議を始める。

:2011:05/25/09:13  ++  生活保護、自立支援に軸、厚労省、NPOなど連携拡大。

 厚生労働省は生活保護制度の見直しに着手した。生活保護の受給者は約200万人に急増しているため、自立を促すための仕組みを作る。具体的にはハローワークと市町村が連携し、受給者の就労を後押しする。膨張が続く保護費については不正受給があるとみて適正化を検討する。
 生活保護受給者は2月時点で200万人を突破したとみられ、過去最多だった終戦直後に迫る勢いだ。特に金融危機以降は受給者が急増している。
 厚労省は現在の制度を自立を促すものに転換する必要があると判断。ハローワークと市町村の福祉事務所が連携するほか、非営利組織(NPO)の力を借りて就労を支援することを検討する。
 一部の都市部では最低賃金や基礎年金より保護費の方が高く、「就労を阻害している」との批判が多いことから、基準について検証を進める。厚労省は24日、社会保障審議会を開き、生活保護基準の見直しに向けた本格議論を始めた。
 年々膨らむ医療扶助では、不正受給を排除することで無駄を省く。不必要な医療を受給者に受けさせる貧困ビジネスが問題になっているので、悪徳業者を排除する。生活保護世帯は医療費の自己負担がないため、1人当たりの受診回数が多い傾向がある。電子レセプト(診療報酬明細書)を使って分析を進め、医療費を適正化する。
 30日には実務を担う地方自治体と制度見直しを視野に入れた協議を始める。